COPDに対するイテペキマブ

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サブグループでどうにか差が出る程度、というのが少し期待薄ではあります。好酸球性フェノタイプがない限り、COPDに対する生物学的製剤はちょっと微妙な結果の臨床試験が多いですね。



  • 概要
■喘息の発症にはIL-33が関連していることが遺伝学的に示されている。IL-33を標的としたモノクローナル抗体であるイテペキマブは、喘息に対して効果がみられ、COPDにも効果が期待されている。

■この研究では、IL-33経路の遺伝子変異がCOPDにも関連するという仮説を検証することを目的とした。IL-33経路の遺伝子が喘息やCOPDなどの肺疾患と強く関連していることを踏まえ、3剤併用療法または2剤併用療法による安定期治療を受けている中等症~重症COPD患者を対象に、イテペキマブの安全性と有効性を評価する第2a相試験を実施した。

■過去の喘息リスクと関連していると想定されたIL-33経路の機能低下型変異および機能獲得型変異の遺伝子解析を行い、COPDのフェノタイプを明らかにした。標準治療を受けている中等症~重症COPD患者を対象にイテペキマブとプラセボを比較する二重盲検第2a試験を10ヶ国83施設で実施した。

■COPDと診断されてから1年以上経過し、3剤併用または2剤併用の安定したレジメンで維持療法を受けている40~75歳の患者を、イテペキマブ300mgまたはプラセボに無作為に1:1の割合で登録し、2週間ごとに2回、24~52週間皮下注射した。

■第2a相試験の主要評価項目は、治療期間中の中等度~重度のCOPD増悪の発生率とした。副次評価項目は、ベースラインから16~24週目までのトラフFEV1の変化とした。有効性および安全性の分析は、割り当てられた治療を少なくとも1回受けたすべての参加者(修正ITT集団)に対して行われた。

■遺伝学的解析により、IL-33の機能低下はCOPDリスクの低下と関連し、IL-33およびIL1RL1の機能上昇はリスクの上昇と関連することが示された。その後、第2相試験において2018年7月16日~2020年2月19日まで、343人の患者をプラセボ(n=171)またはイテペキマブ(n=172)にランダムに割り付けた。

■COPD増悪の年換算率は、プラセボ群で1.61(95%信頼区間1.32-1.97)、イテペキマブ群で1.30(信頼区間1.05-1.61)であり(相対リスク0.81[95%信頼区間0.61-1.07]、p=0.13)、ベースラインから16~24週目までの最小二乗平均トラフFEV1変化量は0.0±0.02L、0.06±0.02L(差0.06L[95%信頼区間0.01-0.10]、p=0.024)だった。既喫煙者に限定した解析では、イテペキマブの投与は、プラセボと比較して、COPD増悪(相対リスク0.58 [95%信頼区間0.39-0.85]、p=0.0061)およびFEV1改善(最小二乗平均差0.09 L [信頼区間0.02-0.15]、p=0.0076)の有意な減少と関連していた。イテペキマブの投与を受けた喫煙者では、増悪(相対リスク1.09 [信頼区間0.74-1.61]、p=0.65)およびFEV1(最小二乗平均差0.02 [信頼区間-0.05~0.09]、p=0.54)について、プラセボと比較して治療効果は認められなかった。

■治療上の有害事象は、イテペキマブ投与群では135例(78%)、プラセボ投与群では136例(80%)に観察された。主な有害事象は、鼻咽頭炎(イテペキマブ群28例[16%]vs プラセボ群29例[17%])、気管支炎(18例[10%]vs 14例[8%])、頭痛(14例[8%]vs 23例[13%]),上気道感染症(13例[8%]vs15例[9%])だった。




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by otowelt | 2021-08-11 00:20 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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