COVID-19:APRONOX研究:アウェイク腹臥位療法は挿管率を減らすか? その2

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以前、PROFLO研究について紹介しましたが、南米の後ろ向き研究がERJから出ました。


腹臥位療法が有効な病態、ARDS・肺水腫・肺炎などで背側肺の含気が少なくなっている場合です。腹臥位にすることでP/F比の改善がみられます。背側障害肺に多く分布した血流が健常肺へ再分配され換気血流比が改善すること、closing volumeの減少、横隔膜運動の変化、心臓により圧排される左肺下葉換気の改善、体位ドレナージによる気道分泌物の排出の改善が主な機序です。

ただ、非常にマンパワーが必要となり、COVID-19においてはルーチンにこれが行えている重症病床は多くないようです。



  • 概要
■ARDSに対するアウェイク腹臥位療法は、低酸素血症を改善するために用いられる安全かつ簡便で費用対効果が高い手法である。われわれは、入院中にアウェイク腹臥位療法を行ったCOVID-19患者における挿管と死亡リスクを評価した。

■メキシコおよびエクアドルの27病院で2020年5月1日~6月12日に実施されたこの後ろ向き多施設共同観察研究では、アウェイク腹臥位療法または仰臥位で管理されたCOVID-19の非挿管患者を対象とし、ロジスティック回帰モデルにより挿管と死亡リスクを評価した。

■COVID-19に罹患した非挿管患者827人を、アウェイク腹臥位療法群(n=505)と仰臥位群(n=322)に分けて解析した。アウェイク腹臥位療法群では、気管挿管が必要となった患者(23.6% vs 40.4%)や死亡患者(20% vs 37.9%)が仰臥位群と比較して少なかった。

■アウェイク腹臥位療法群は、多変量解析によっても気管挿管の独立した保護的因子であり(オッズ比0.39、95%信頼区間0.28-0.56、p<0.0001、E-value=2.01)、傾向スコア解析後もその傾向は変わらなかった(オッズ比0.32、95%信頼区間0.21-0.49、p<0.0001、E-value=2.21)。アウェイク腹臥位療法の気管挿管に関連する主な因子は、年齢の上昇、ベースラインのSpO2/FiO2の低下、非再呼吸マスクによる管理だった。

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. 本研究を含む気管挿管に対するアウェイク腹臥位療法の効果(文献より引用)




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by otowelt | 2021-08-13 00:27 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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