肺MAC症治療によるMAC抗体価の推移


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大阪刀根山医療センターの研究です。

肺MAC症におけるMAC抗体の変化が治療経過とよく相関するという、NTM診療において重要な論文と思います。治療によって抗体価が低下するであろうことはすでに示されていました(Jpn J Infect Dis . 2017 Sep 25;70(5):582-585.)。増悪についても予測因子になることがわかっています(Int J Infect Dis. 2021 Aug;109:155-159.)。

なお、MAC抗体は迅速発育菌で陽性になることがあるため、解釈に注意が必要です。



Fukushima K, et al. Serum GPL core antibody levels are associated with disease activity and treatment outcomes in Mycobacterium avium complex lung disease following first line antibiotic treatment. Respir Med. 2021 Aug 26;187:106585.

  • 概要
■現在、肺MAC症の経過や治療効果を示すための客観的な血清バイオマーカーは存在しない。血清中GPLコアに対するIgA抗体レベル(MAC抗体)は、肺MAC症の診断精度が高い。しかし、第一選択の抗菌薬治療後の肺MAC症の経過や予後予測におけるMAC抗体の有用性は不明である。

■肺MAC症患者133人を対象に、抗菌薬による一次治療後の経過中のMAC抗体の有用性を検討するため、単施設で後ろ向きコホート研究を実施した。

■患者は化学療法後の細菌学的転帰により、治療失敗群[n=46(34.6%)]、再発群[n=19(14.3%)]、治療成功群[n=68(51.1%)]に分類された。治療成功群の治療前のMAC抗体価は、治療失敗群および再発群と同等であった(それぞれP=0.6431、P=0.9045)。治療成功群では、抗菌薬による治療開始後、MAC抗体価が有意かつ継続的に低下した。治療失敗群、再発群のいずれにおいても、MAC抗体価の有意な低下は観察されなかった。抗菌薬治療後のMAC抗体価の低下は、治療成績とよく相関していた(P = 0.0045)。





by otowelt | 2021-09-30 00:47 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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