抗MRSA薬(2)


●テイコプラニン
・基本的にはVCMとほとんど同じ
・VREのうちvanBによるものはTeicoplaninに感受性を残す
(vanAからDまである)
・聴器・腎毒性・Red man 症候群などの副作用はいずれも少ない。
・肺(喀痰)移行性は良いが、骨髄は悪い。
・腎排泄 半減期40~70時間であり1日1回投与でよい
・アメリカではもはや使われていない。

・目標血中濃度  Trough 10~20μg/ml
・血中濃度が安定するまでに時間がかかる

処方例:
初回は12mg/kgを12時間毎に3回投与、以後12mg/kgを24時間毎
日本では初回400mgを12時間毎に2回、以後400mgを24時間毎、と記載。
       

●硫酸アルベカシン(ハベカシン)
・ABKは細胞間液に移行しやすく、病態により血中濃度に差を生じ易い。
・また、ABKに対して耐性を有するMRSAが数%見られるため、
 MRSAにルーチンに投与するべきものではない。
・PK/PD理論に基づいた投与法は、1 日1 回投与。
・胸水、腹水、心嚢液、滑膜液への移行良好であるが
 髄液、疣贅へは移行不良。
・腎障害のある患者に対しては、投与量は変更せず、
 投与間隔をあけることで対処
・アメリカではもはや使われていない。

・目標血中濃度  Trough 9~20μg/ml
・トラフ値2μg/mLを越えると腎機能障害の発生頻度が上昇

処方例:
成人には1日1回150~200mgを30分で点滴静注する


●リネゾリド(ザイボックス)
・オキサゾリジノン系抗菌薬(50Sサブユニットの70S開始複合体に結合)
・VCM耐性の腸球菌(VRE)や黄色ブドウ球菌(VRSA)にも効果がある。
 バンコマイシン耐性Enterococcus.faeciumの第一選択。faecalisにも有効。
・MLSB耐性型にも効果がある。
・細菌のリボソームに結合し、蛋白合成阻害で静菌的作用を有する。
・腸管からの吸収が良く、経口薬も発売されている。
・また、体内の各臓器に良好に移行。Bioavailability=100%。
・他に特徴として腎障害のある患者にも使用量を変えずに使える。
・副作用としては悪心・嘔吐・下痢が多く、血球減少なども。
・2週間以上使うと、不可逆的な神経障害をきたす可能性がある。
・相互作用としてモノアミンオキシダーゼ阻害作用を有し、チラミン含有物
 (チーズ、赤ワイン、ビールなど)と併用することで重症高血圧の出現の恐れ。
 また、アドレナリン作動薬や、セロトニン作動薬、SSRIとの併用で
 それらの効果が増強されてしまうこともあり要注意である。
・リネゾリドは肺への移行性に優れている。
健常ボランティアにリネゾリドを投与して動態をみた結果では、肺胞上皮粘液中
の濃度は24時間後においても血漿中濃度に比べ約4倍も高かった。
・重症VAP患者16例でみた結果では、リネゾリドの肺胞上皮粘液中の濃度は
 このように高くならなかったが、それでも血清中濃度と同レベルに達していた。

処方例:
 リネゾリド400~600mg/回 12時間ごと(経口、静注いずれか)
 ザイボックス錠(600mg) 2T 分2


●キヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド)
・キヌプリスチン(ストレプトグラミンB)とダルホプリスチン(ストレプトグラミンA)が
 30:70で混合されている。(1V500mg ・・・150mg:350mg)
・混合比はあまり関係ない。
・タンパク合成を阻害し、ダルホプリスチンが最初の段階を、
 キヌプリスチンが最後の段階を阻害する。
・主に肝で代謝される。
・髄液移行はよくない。
・心内膜にも、ダルホプリスチンは疣贅の周辺のみにしか浸透しない
 ためあまりすすめられない。
・耐性Enterococcus. faeciumにも効果あり。ただし、faecalisには効果なし。
 (しかしVREのほとんどはfaeciumであるため、問題ない)
・副作用として、静脈炎、消化器症状、筋肉痛、関節痛、QT延長など。

・処方例:
 faecium:7.5mg/kgを8時間ごと60分かけて点滴
 軟部組織感染:7.5mg/kgを12時間ごと60分かけて7日間投与


●セフトビプロール
・抗MRSA作用を持つ、セフェム系抗菌薬。
・院内肺炎(hospital-acquired pneumonia)を対象にした第3相試験では、
 ceftobiprole(セフトビプロール)の治癒率(69%)が
 ceftazidime(セフタジジム)+linezolid(リネゾリド)併用の治癒率(72%)
 に劣らない。

・将来性のある抗菌薬の1つ。


●VAP
バンコマイシンとリネゾリドの2つがATS/ IDSAの院内肺炎ガイドライン
で使用が推奨されている。グラム陽性菌による肺炎治療に対し、
バンコマイシンとリネゾリドを比較した二重盲検試験が二つ公表されている。
両試験のデザインは非劣性試験(non-inferiority trial)であり、2つとも
リネゾリドはバンコマイシンの有効性と劣らないことを証明している。
Clin Infec Dis 2001;32: 401-412.
Clin Ther 2003; 25: 980-982.


Wunderink らによる文献は、二つの臨床比較試験を混合した解析で、
post-hoc 解析の結果、約120名のMRSA肺炎に感染した患者に限って
みると、リネゾリドはバンコマイシンより優れているという内容。
Chest 2003; 124: 1789-1797.
 
しかし、Kollefらが、グラム陽性菌によるVAPの疑いがある患者1019例において
バンコマイシンとリネゾリドを比較した研究の結果では、MRSA・VAP症例の治癒率
はリネゾリド群62.2%、バンコマイシン群21.2%であり、
リネゾリドの優越性が浮き彫りに。

バンコマイシンのMICが2 mcg/mLのMRSA肺炎を治療する場合には、
バンコマイシンの治療効果が得られない場合があるのは当たり前。
ゆえに、それ以外のMRSAに関してはリネゾリドを使う意味はさほどない。
しかしながら、リネゾリドがバンコマイシンよりMRSA肺炎治療薬として
優れているという臨床試験の報告はまだない。

薬剤耐性の面からみると、バンコマイシンは40年前から使用されているのに
2002年までアメリカではバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌の報告がない。
それに対し、リネゾリドは2000年に発売されたが、
2001年にはリネゾリド耐性黄色ブドウ球菌が報告されている。

バンコマイシンによるMRSA肺炎治療の第一選択薬の座を
リネゾリドが奪うにしては、結論が早計すぎやしないか。


●PVL-MRSA
アメリカでは、MRSAを原因菌とするCAPが問題となりつつある。
CAPのMRSAは、院内肺炎の原因菌とは別の菌株であり、病原性、毒性がより強い。
PVL(Panton-Valentine Leukocidin)と呼ばれる毒素を産生、
両側性に壊死性の肺炎を生じる。このMRSA菌株は主に皮膚感染の原因菌で、
肺炎の原因菌となっている例は少ない。しかし、今後、肺炎の原因菌となる例が
増えるかもしれない。

by otowelt | 2009-01-11 21:59

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