RSウイルスに対するパリビズマブのアウトブレイク予防の可能性

RSウイルスは小児病棟ではアウトブレイクの原因となる。
しばしばNICUでもアウトブレイクを引き起こす。
早産児や新生児に重大な影響を与える可能性があるため、注意が必要である。

RSウイルスの名の由来は、呼吸器(Respiratory)感染患者から分離され、感染細胞が
多核巨細胞(合胞体(Syncytium))を形成するという特徴から。
Mononegavirales門パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)の
Pneumovirus属に分類される。
パラミクソウイルス科に属するウイルスには、パラインフルエンザウイルス、
麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど。
RSウイルスにはAとBの血清型があり(A型のほうが重症!)、
さらに各血清型に多くの遺伝子型が知られている。

紹介するのは
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 246-252

早産児1例からのRSウイルス検出後に、NICUでのアウトブレイクを
予防した経験を報告した論文。
すべての患児にパリビズマブ15 mg/kgを筋肉内投与したところ、
新規の発症はみられなかった。
従来の感染制御対策にパリビズマブを併用することにより、RSウイルス拡散を
予防できる可能性があるという報告。


・・・・ちなみに、RSウイルスの治療についての一般論。

1.β-blocker
乳幼児症例の50%では吸入β刺激剤に反応して症状改善するとされているが,
meta-analysesでは気管支拡張剤の効果には否定的な結果
 ・Hammer J; J. Pediatrics 1995; 127: p485
 ・Wainwright C; NEJM 2003; 349: p27
 ・Kellner JD; Cochrane 2000; CD001266

2005年の論文では気道RSウイルス感染症に対しては有効とされているものもある。
 ・BMC Pediatr 2005; 5:7.

2.ロイコトリエン拮抗薬
LT 受容体拮抗剤がRSV 細気管支炎の回復期における症状の軽快に有効で、
咳嗽や喘鳴の遷延を防ぐとの報告がある。
RSV 細気管支炎の病態はRSV 特異的IgE を介したⅠ型アレルギー反応
ではなく,自然免疫反応を介したものと理解されるが,局所におけるLT
の出現と作用が確認されていることから、LT受容体拮抗剤の効果は期待できる。

3.リバビリン(レベトール)
微小粒子のエアロゾルとして吸入で用いられる。多数のプラセボ対照研究において、
重症度の軽減と酸素飽和度の改善が認められているが、米国小児科学会では、
ハイリスクの患者においてのみ考慮されるべきであるとしている。
使用方法も煩雑であることから,最近は使用されなくなっている
 Cochrane Database Syst Rev 2004; :CD000181.
リバビリンと免疫グロブリンの併用で生存率は上昇する。
 Pharmacotherapy 2004; 24:932.

4.パリビズマブ(シナジス)
2001年、RSウイルス表面のエンベロープにあるF(Fusion)タンパク質を
特異的に認識するモノクローナル抗体製剤パリビズマブ(Palivizumab)(シナジス)
が承認。月1回 15mg/kgの筋注。
約1500人の乳幼児においての‘IMpact-RSV’スタディと呼ばれる研究では、
RSウイルス感染による入院が、プラセボ投与群で10.6%だったのに
対し、パリビズマブ投与群では4.8%と低かった。
 Pediatrics, September 1998;102:p.531-7.
ちなみに、価格は高い!
 50mg 79442円
 100mg 157709円

5.ステロイド
大規模meta-analysisでは、RSV感染症において
喘息などの閉塞性肺疾患を合併しない限りは、有用でないとされている。
 Cochrane Database Syst Rev 2004; 3:CD004878.

by otowelt | 2009-01-17 14:40 | 感染症全般

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