リポイド肺炎


●リポイド肺炎とは
 脂質を貪食したマクロファージが
肺胞腔内に出現することを特徴とする肺炎
・リポイド肺炎は内因性(endogenous)と外因性(exogenous)に分類。
・リポイド肺炎といえば、一般的には外因性を指す。

内因性リポイド肺炎は通常、閉塞部位の遠位の障害肺胞壁
から逸脱した脂質や、気道悪性腫瘍や化膿性病変による肺組織の障害でみられる。
稀ではあるが、内因性リポイド肺炎は脂肪塞栓症、血栓塞栓症、
Wegener肉芽種症、肺胞蛋白症などにより発生することもある。

油脂類を吸入して発症する肺炎を外因性リポイド肺炎という。
外因性リポイド肺炎は,1925 年にLaughlenがパラフィン,点鼻薬などにより
発症した肺炎として初めて報告した。
Laughlen GF. Studies on pneumonia following nasopharyngeal injections of oil. Am J Pathol 1925 ; 1 :407―414.

●原因
海外では外因性リポイド肺炎の原因としては流動パラフィンが全体の約75%で
最も多く、GERD、精神疾患は本症の要素となる。流動パラフィンは無色透明の
液状物質で、誤嚥しても刺激が少ないため咳反射を起こしにくい。
これが流動パラフィンにより外因性リポイド肺炎が発生しやすい原因と
考えられている(日本では流動パラフィンを緩下剤として使用することが少ないため
パラフィノーシスの頻度は少ない)。

●リポイド肺炎を起こしやすい原因
 灯油
 上顎癌術後のDKB 油性ガーゼ(流動パラフィン含有)
 オートバイ整備工
 旋盤工等の職場のガソリン
 鉱物
 中華料理コック

●病態機序
・外因性リポイド肺炎における組織反応は油脂の種類,物理化学的性状,
 量,時間的経過,宿主側の条件などにより規定される。
・動物性油脂はリパーゼで加水分解を受け遊離脂肪酸を生成するため、
 植物性油脂あるいは鉱物油より激しい反応を生じ壊死性出血性肺炎
 (infantile type)を引き起こす。
・殺虫剤に含まれる鉱物油を少量,長期間吸入した場合は症状が乏しく
 末梢肺に限局性腫瘤影を形成する(adult type)が、大量に吸入すれば
 急性の炎症,血管障害を起こし壊死性出血性肺炎や肺化膿症に移行する。
・吸入物質pH 1.7 以下では強い肺障害を起こす。
Soloaga ED, Beltramo MN, Veltri MA, et al : Acute respiratory failure due to lipoid pneumonia. Medicina2000 ; 60 : 602―604(Spanish).

●症状
 41% は無症状か軽微な症状(偶然発見)
 発熱
 体重減少
 咳嗽
 呼吸困難
 胸痛
 喀血
Gondouin A, Manzoni P, Ranfaing E, et al. Exogenous lipid pneumonia :
a retrospective multicentre study of 44 cases in France.
Eur Respir J 1996 ; 9 :1463―1469.


●画像所見
肺胞性陰影,間質性陰影,結節性陰影など、様々な陰影を呈し,
肺門リンパ節腫大や胸膜病変を認めることもある。病変の分布は片側で
下葉もしくは右中葉が多い。これは、就寝時の体位に依存していると考えられている。
・Spickard A III, Hirschmann JV. Exogenous lipoid pneumonia. Arch Intern Med 1994 ; 154 : 686―692.
・Lee KS, Muller NL, Hale V, et al : Lipoid pneumonia :CT Findings. J Comput Assist Tomogr 1995 ; 19 :48―51.

・急性・慢性のいずれも下葉の陰影が多い。
・急性に関して言えば、胸水貯留例が慢性に比べて有意に多い。
・慢性リポイド肺炎患者の67%では、腫瘤影をつくる。
・急性リポイド肺炎の86%はレントゲン上軽快するが、
 慢性リポイド肺炎は67%の例でCT上増悪所見がみられる。
Baron SE, Haramati LB, Rivera VT. Radiological and clinical findings in acute and chronic exogenous lipoid pneumonia. J Thorac Imaging. 2003;18(4):217-24.
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●診断
喀痰の脂肪染色,TBLBなどで,検体内に脂肪を貪食したマクロファージを同定すること

●組織所見
リポイド肺炎の病理組織学的所見
Stage1:吸入部に一致して出血性気管支肺炎
Stage2:脂肪を貪食した肺胞マクロファージが増加し、肺胞壁の上皮下が肥厚し,
       リンパ球,形質細胞浸潤が見られる
Stage3:正常の肺胞壁が破壊され線維化が進む
Stage4:正常の肺構造が失われ線維性瘢痕に置き換わる
Spencer H : Inhalation lipoid pneumonia including liquid paraffin granuloma. In : Pathology of the lung. 4 th ed, Pergamon Press, Oxford, 1985 ; 517―525

●治療
・全肺胞洗浄
Chang HY, et al. Successful treatment of diffuse lipoid pneumonitis with whole lung lavage. Thorax 1993 ; 48 : 947―948.
・ステロイド投与
Ayvazian LF, et al. Diffuse lipoid pneumonitis successfully treated with prednisone. Am J Med 1967 ; 43 : 930―934.

・確立した治療のエビデンスはない

●予後
急性型に関しては予後はよい。慢性型は治療抵抗性。
反復する感染症として、見過ごされるケースが多い。
Brown-Elliott BA, Griffith DE, Wallace RJ Jr. Newly described or emerging human species of nontuberculous mycobacteria. Infect Dis Clin North Am. 2002;16(1):187-220.

文責"倉原優"

by otowelt | 2009-02-17 18:59 | レクチャー

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