結核性胸膜炎

●疫学
・平均年齢 47歳
・結核感染のうち、5%が胸膜炎である。
Baumann, MH, et al. Pleural tuberculosis in the United States: incidence and drug resistance. Chest 2007; 131:1125.
・55%は右胸腔に起こる。
・胸水は典型例ではそんなに多くないが、18%の症例では3分の2以上の貯留。
Valdés, L, et al. Tuberculous pleurisy. A study of 254 patients. Arch Intern Med 1998; 158:2017.

●結核の初発症状として胸膜炎が生じる機序
 (1) 肺内の初期変化群からの結核菌播種
 (2) 初期変化群とは離れた場所からの結核菌播種
 (3) 肺門リンパ節内の乾酪巣から胸膜リンパ管を介して結核菌播種
 (4) 血行性播種
 (5) 過敏反応

●症状
 乾性咳嗽94%
 胸痛78%
 寝汗
 脱力
 呼吸困難
 体重減少

●なぜ治療が必要か
・約1/4の症例で胸痛がない。閉鎖腔ゆえ、まわりに感染することはない。
・胸膜の反応が無治療で吸収しても,あるいは結核性胸膜炎を治療しないと、
 5年間に65%に肺or肺外結核を発症する
 Am Rev Tuberc Pulm Dis 1955;71:616

●ツベルクリン反応は意外に有用
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●画像
 胸水の量は大量のこともあるが,通常は少量~中等量。
 胸部X線写真で胸水の他に肺内病変があるのは約1/3。

●胸水検査
・80%が淡黄色
Arch Intern Med 1970; 126:269.
・一側性で滲出性のことが多い
Arch Intern Med 1998; 158:2017.
・胸水LDHは75%の患者で上昇、500IU/L以上となることが多い
・pHも胸水糖も下がりうる
・胸水糖は60~100mg/dLであり、 50mg/dL以下になるのは
 7~20%の患者だけである。
・pHは通常7.40以下であり、20%の患者は7.30以下。
・細胞数は1000~6000/mm3が多い。
Arch Intern Med 1998; 158:2017.
・60~90%の患者では、リンパ球優位の胸水。
・5%以上の中皮細胞を含むことはまれである。
・好酸球が10%以上になることもない。
Light,  Pleural Diseases, 2d ed, Lea and Febiger. Philadelphia, 1990, Chap. 10.

●胸水 ADA
カットオフ値45~60で、ADAは87-100%の感度と95-97%の特異度がある。
Arch Intern Med 1998; 158:2017.
Chest 1999; 116:97.
Chest 1993; 103:458.

・ADAのisoenzyme分析を加えると感度・特異度は上がる。
・偽陽性(1~9%)は主として悪性疾患である。
・カットオフ値ADA49U/Lで、感度89.2%、特異度70.4%、
 PPV84.4%、NPV78.4%。
 ADA胸水/血清比は、カットオフ値1.7で、
 感度84.6%、特異度72.2%、PPV81.4%、NPV71.4%
 Lung 21 March 2008

●胸水 lysozyme
・結核性胸膜炎の患者の80%で、胸水lysozymeは15mg/dL以上である。
・膿胸が否定された胸水/血清lysozyme比が1.2以上なら、
 結核性胸膜炎の感度100%、特異度95%。
Chest 1993; 103:458.

●胸水 インターフェロンγ
・胸水中IFN-γが140pg/mL以上ならば、結核性胸膜炎に対する
 感度94%、特異度92%
Chest 1993; 103:458.
・滲出性でリンパ球優位の胸水のある66人の患者では、
 結核性胸膜炎に対する感度95%、特異度96%
 (カットオフ値240 pg/mL) 
Thorax 1999; 54:921.
・2007年のメタアナリシスでは、
 感度89% (95%CI 87-91%) 、特異度97% (95%CI 96-98%)
Jiang, J, et al. Diagnostic value of interferon-gamma in tuberculous pleurisy: a metaanalysis. Chest 2007; 131:1133.

●胸水培養
 胸水での結核菌培養陽性率25%

●胸水細胞診
・細胞診と培養だけで60~95%の診断がつくと言われているので、
 生検はルーチンには必要ないとされている。
Gopi, A, et al. Diagnosis and treatment of tuberculous pleural effusion in 2006. Chest 2007; 131:880.
・細胞診評価は、感度72.2%、特異度70.1%、PPV66.1%、NPV75.8%
Lung 21 March 2008

●胸膜生検
・胸膜生検で肉芽腫は50~97%にみられる 。
Chest 2007; 131:880.
・胸膜生検材料の培養陽性率は90%。
 大規模調査では胸腔鏡下生検でも closed biopyと差はなし。
・closed pleural biopsyは通常Cope針かAbrams針が用いられる。
 術者の経験が成功の鍵である。
Respir Med 1994;88:503
・胸水塗沫で10%、培養では25-70%の陽性率。胸膜生検の培養
 と病理検査を合せると87%の診断率になるが,少なくとも1検体は
 培養に回して,6検体以上を要する。         Chest 1997;112:702
・胸腔鏡下胸膜生検は、感度66.7%、特異度100%、
 PPV100%、NPV78.8%
Lung 21 March 2008

●治療
・リンパ球優位の滲出性胸水がある患者で結核性胸膜炎の
 診断がつかない患者の10~15%では、抗結核薬による治療
 が必要だったという報告がある。
Eur Respir J 2007; 30:1173.
・肺結核症に対する治療と同じレジメンでよく、抗結核剤と同
 時に胸水の排除を図るのが原則とされているが、ルーチンの
 ドレナージについては推奨されていない。
Chest 1996;110:333
・副腎皮質ホルモン剤の併用効果ははっきりしない。
Chest 1996;110:333
Cochrane Database Syst Rev 2000; :CD001876.


●ドレナージ併用はアウトカムを改善しない
61人の患者で、抗結核薬単独とドレナージ併用とをRCT。
呼吸苦軽減は抗結核薬単独の8日とドレナージ併用で4日と
有意に差が出たが、1週間の治療で24週間フォローで症状に
差はなく、胸膜肥厚やレントゲン所見でも差がみられなかった。
Lai, YF, et al. Pigtail drainage in the treatment of tuberculous pleural effusions: a randomised study. Thorax 2003; 58:149.

●予後
・治療開始してから、2週間以内に発熱がおさまり、
 6週間以内に胸水が吸収されると言われている。
・後遺症として、胸膜肥厚が50%の患者で残るとされている。
Chest 1991; 100:1264.
文責"倉原優"

by otowelt | 2009-02-18 09:21 | レクチャー

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