テオフィリン中毒

●テオフィリンとは
 テオフィリン (theophylline) は茶葉に含まれる苦味成分でアルカロイドの一種。
 キサンチン誘導体に分類される。茶葉に含まれる量は、治療量に比べて非常に少ない。
 1888年にドイツ人の生物学者、コッセルにより茶葉から抽出された。
 1896年ドイツ人の化学者トラウベによって化学合成がなされた。
 1950年代に、呼吸器系疾患の治療に用いられ始めた。

●テオフィリンの作用機序
 テオフィリンの作用は主として、ホスホジエステラーゼ阻害によるセカンドメッセンジャー
 としての細胞内cAMP濃度の増大によるものである。
 心筋や気管支平滑筋などに存在するアドレナリンβ受容体はアデニル酸シクラーゼ
 と共役しているため、テオフィリンの摂取・服用はアドレナリンβ作用を強め、
 気管支平滑筋を弛緩させ、喘息等に効果を示す。

●テオフィリン中毒の疫学
・60歳以上と新生児ではテオフィリンクリアランスが有意に低下する。
Ehlers, SM. Theophylline. In: Clinical Management of Poisoning and Drug Overdose. 2d ed, Saunders, Philadelphia, 1990, pp. 1407-1418.
・死亡率5%
Shannon, M. Predictors of major toxicity after theophylline overdose. Ann Intern Med 1993; 119:1161.

●テオフィリン製剤
テオドール、テオロング、スロービット、アーデフィリン、セキロイド、チルミン、テオスロー、
テオフルマート、テルダン、フレムフィリン、テルバンス、ユニフィル、ユニコン、テオスロー

・テオドール錠100mg
 テオフィリンとして、成人1回200mgを、小児1回100~200mgを、
 1日2回、朝及び就寝前に経口投与する。また、気管支喘息については、
 テオフィリンとして成人1回400mgを1日1回就寝前に投与するのも可。
・テオドールドライシロップ20%
 小児にテオフィリンとして、1回8mg/kg(本剤40mg/kg)を、1日2回、
 朝及び就寝前に経口投与する。
体重別の標準投与量は1回量として下記のとおり。
8~14kg未満 ドライシロップ 0.4g
14~22kg未満 ドライシロップ 0.7g
22kg以上 ドライシロップ 1g

●テオフィリンの薬物動態
・分布容積(Vd) 0.3~0.7
・蛋白結合率 60前後
・半減期 3~20時間(平均8時間)
蛋白結合率はある程度高いが、分布容積が小さいので血液灌流法がかなり有効!!

●テオフィリン中毒の何が問題か??
ずばり、痙攣が起こること!!!
テオフィリン中毒による痙攣は、もっとも治療しにくい痙攣の1つである!

●中毒症状
中毒濃度20μg/ml以上
重症中毒濃度80~100μg/ml以上(急性)
            40~60μg/ml以上(慢性)

症状:30%の患者は15μg/ml以上で症状が出始める
  軽症・・・嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、振戦、不安、頻脈、低K血症、
      低P血症、高K血症、低Mg血症、高血糖、白血球増多
  重症・・・低血圧、横紋筋融解、痙攣(>25μg/ml)、
      心室性不整脈(20~30μg/mlで 痙攣・不整脈は中毒の25%で起こる)
      代謝性アシドーシス
 ※徐放剤を服用していると、中毒症状は遷延する。
Robertson, NJ. Fatal overdose from a sustained-release theophylline preparation. Ann Emerg Med 1985; 14:154.

・低カリウム血症は血清テオフィリン濃度と相関し、服用5時間で値が変動し始める。
・痙攣は急性中毒でも12~16時間たってからしか出ないこともしばしばある。
・小児や若年では血中濃度が80以上でも痙攣などの重篤な症状があらわれないという報告も。
・急性中毒は血中濃度100以上にならないと重篤な症状は出ないといわれている。
 しかし服薬を続けているような人がたまたま大量に服用してしまった場合には
 血中濃度40以上でも重篤な症状が出る。これはリチウム中毒に似ている。


●治療
1.対症療法・・・痙攣や電解質異常などに対して
  前述の重症基準に当てはまる場合には、予防的にフェノバルビタール100mgを筋注する。
2.吸収阻害
  胃洗浄は、不溶性薬剤ゆえ無効
  活性炭50~100g
   引き続き15g/時間を6~12時間 あるいは 20gを2時間ごと
            (血中濃度が20を下回るまで投与しつづける!)
  下剤
  全腸洗浄
3.排泄促進
  重症例には血液灌流法
     (急性中毒では血中濃度80以上、長期投与の中毒では血中濃度60以上が適応の目安)
4.解毒拮抗
  低血圧、頻脈、心室性不整脈に対しては
  インデラル2mg1Aを生食20mlにのばして1~2mlずつ静注

●マクロライド系・キノロン系との併用はダメ
・作用機序はCYP1A2に対する特異的阻害作用。
 メシル酸パズフロキサシン、プルリフロキサシンについて血清中テオフィリン濃度を
 上昇させたとの報告がある
Niki, Y. et al : J. Infect. Chemother., 8(1), 33 (2002)
・他にもアロプリノールやシメチジン、ニフェジピンなどでも血中濃度上昇作用がある。

●テオフィリンとコーヒー
・カフェインはテオフィリンに構造が近く、致死量は10g。コーヒー1杯には
 抽出法によっては異なるが、50~200mg程度のカフェインが含まれているので、
 濃厚なコーヒーであれば50杯ほど服用すれば、かなり有害ということになる。

・健康成人男子6名にアミノフィリン400mgを経口投与し、コーヒー等のカフェイン摂取
 を試験の48時間前から試験期間中禁止した場合と、カフェインを通常通り摂取した場合
 のテオフィリン代謝の差異をクロスオーバー法で比較検討した。
 カフェイン禁止によりテオフィリンの半減期は8.3hrから6.3hrへと有意に短縮し、
 全身クリアランスは42.5mL/hr/kgから55.0mL/hr/kgへと有意に増加した。
文責"倉原優"

by otowelt | 2009-02-18 12:37 | レクチャー

<< 閉経前乳癌に内分泌療法とゾレド... 結核性胸膜炎 >>