ニューモシスティス肺炎 (カリニ肺炎) その1


●ニューモシスティス肺炎の歴史
Millerによれば、pneumocystis jiroveciiは
1909年Chagasによって発見された。
Robert F.Miller:Pneumocystis carinii in non-AIDS patients.
Current Opinions in infectious diseases.1999 Aug;12(4)371-7


人間に対する病原体として認識されたのは、ヨーロッパで1930年代から1940年代
にかけて、未熟児や低栄養状態の子供に、間質性肺炎が多発した事がきっかけ
だった。第二次世界大戦後、栄養状態の改善によってこの現象は一旦消えたが、
1960年代以降、新たに先天性免疫不全の子供や、悪性腫瘍に罹病及び治療を
受ける成人の間で、この肺炎が多く認められる様になった。
そして臓器移植の普及に伴って、更に多く観察された。1981年、アメリカで
AIDSが報告されると、この疾患はAIDS患者に多く見られる日和見感染として、
注目される様になった。


●総論
・pneumocystis cariniiは、現在pneumocystis jiroveciiと呼ぶ。
in honor of the Czech parasitologist Otto Jirovec, 1999
・リボソームとミトコンドリアDNAの性質により、現在は真菌に分類。
・細胞壁にエルゴステロールを欠く
・4歳までに75%がpneumocystis jiroveciiに感染している。
 つまりほとんど常在菌である。
Pifer, LL,et al. Pneumocystis carinii infection: evidence of high prevalence in normal and immunosuppressed children. Pediatrics 1978; 61:35.
・PCR 法を用いた検討では,肺癌などの呼吸器疾患患者の
 18% で肺内にP. jirovecii のcolonization を認めており,
 とくに副腎皮質ステロイドを投与されている患者で高頻度で
 あったと報告されている。
Maskell NA, et al. Asymptomatic carriage of Pneumocystis jiroveci in subjects undergoing bronchoscopy : a prospective study. Thorax 2003 ; 58 : 594-597.

●AIDSとの関連
・AIDSにおける肺感染症で最も多いのがPCPである。
N Engl J Med 2004 Jun 10;350(24):2487-98)
・AIDS全体の 40%はニューモシスチス肺炎で発症する
・急性呼吸不全がAIDS患者のICU入室の50-75%をしめる。
・ACCの症例では、80%がニューモシスチス肺炎を発症後に、
 初めてHIV 感染が判明(“いきなりエイズ“)。
・急性間質性肺炎や異型肺炎と誤診され診断や治療が遅れるケースが多い。
 一方non HIVでは90%以上でステロイド使用中で平均12週間の投与期間。
・細菌性肺炎の多くが、数日あるいは長くても1~2週程度の病歴で
 あるのに対し、ニューモシスチス肺炎では、1~2ヶ月前から咳が続いていた
 などの長い病歴を訴えることがある。
・初発症状として自然気胸を起こすことがあり。
・AIDS に合併したニューモシスチス肺炎ではBAL 中好中球分画の
 上昇がある例で人工呼吸管理を要する重症例・死亡例が多い
Azoulay E, et al. AIDS-related pneumocystis carinii pneumonia in the era of adjunctive steroids. Implication of BAL neutrophilia. Am J Respir Crit Care Med 1999 ; 160 : 493―499.
・BALF中IL-8が重症度,予後と相関することが報告されている。
Benfield TL, et al. Neutrophil chemotactic activity in bronchoalveolar lavage fluid of patients with AIDS-associated pneumocystis carinii pneumonia. Scand J Infect Dis 1997 ; 29 : 367―371.
・その機序としてPneumocystis jiroveciiの菌体がマクロファージや
 上皮細胞,血管内皮細胞等を活性化し,TNF-α,IL-8 等の好中球
 活性化,遊走因子を産生することにより好中球が肺局所に集積
 して肺傷害を引き起こす病態が推定。
Benfield TL. Clinical and experimental studies on inflammatory mediators during AIDS-associated pneumocystis carinii pneumonia. Dan Med Bull 2003 ; 50 : 161―176.

●膠原病との関連
・PCP はリウマチ性疾患患者に対する免疫抑制療法下における
 重篤な日和見感染症であり、非AIDS患者のPCPはAIDS患者に
 比べ急激に悪化しやすい。
Chechani V, Bridges A : Pneumocytis carinii pneumonia in patients with connective tissue disease. Chest 1992 ; 101 : 375.
・従来指摘されている膠原病合併PCP発症の危険因子は
 ステロイド投与,肺疾患の存在,リンパ球数(CD4)減少がある。
Kadoya A, et al : Risk Factors for Pneumocystis carinii Pneumonia in Patient with PolymyositisDermatomyositis or Systemic Lupus Erythematosu. The Journal of Rheumatology 1996 ;237 : 1186―1188.
・リウマチ性疾患患者の4.1% にPCP が合併するとの報告がありその頻度は決して少なくない.
Ward MM, Donald F : Pnumocystis carinii pneumonia in patients with connective tissue disease : the role of hospital of experience in diagnosis and mortarity. Arthritis Rheum 1999 ; 42 : 780.
・RA においてMTX 投与はPCP発症の危険因子と考えられる。
 MTX は葉酸の誘導体で,化学構造が類似しているため
 葉酸代謝を阻害する代謝拮抗薬であるが,ST 合剤の成分
 であるtrimethoprim はMTX 同様に葉酸代謝を阻害し
 一方sulfamethoxazole はMTX の排泄を障害することにより
 骨髄抑制の危険性が増大するとされ,MTX 投与中のRA患者に
 対してST合剤予防投与は通常避けられている。
・海外ではインフリキシマブ使用中RA におけるPCP合併の報告
 は少ないが,本邦のインフリキシマブ使用RA全例調査報告
 (1000例での解析)によればPCP発症は6例である。

文責 "倉原優"

by otowelt | 2009-03-18 11:50 | レクチャー

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