2013年 09月 04日 ( 2 )

TIOSPIR試験:スピリーバ®レスピマットとスピリーバ®ハンディヘラーの安全性は同等

e0156318_23175684.jpg 呼吸器内科医が待ちに待っていた臨床試験の1つ。スピリーバ®レスピマットとハンディヘラーを直接比較したTIOSPIR試験です。
 過去のメタアナリシスでは死亡リスクの上昇はレスピマットのソフトミストが細かすぎるから(肺→全身への移行が多い)という理由だと考察されていました。

メタアナリシス:スピリーバ・レスピマットは総死亡・心血管系死亡リスクを有意に上昇

 結果としてTIOSPIRは思惑通り(?)、同等という結果を出すことができました。この臨床試験には、利益相反があり、また敢えて循環器系疾患のリスクを避けているようなスタディデザインでもあります(リスクの高い集団を組み入れない)。実臨床では、循環器系疾患を有する患者は非常に多く、COPD~糖尿病~心血管系疾患なんて合併していることはザラにあります。このTIOSPIR試験によって、レスピマットのプラクティスがどこまで変わるのか注目したいところです。私個人としては、すいませんまだ”保留”の立場です。

 ちなみに、NEJM、全文読めないですね。

Robert WA, et al
Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD.
N Engl J Med 2013.DOI: 10.1056/NEJMoa13033422013


背景:
 COPD患者のプラセボ対照比較試験で、チオトロピウムのレスピマットでの5μgの用量は、同ハンディヘラー18μgと効果は同等であった。また、プラセボに比して、ハンディヘラーは死亡率減少に関連していたが、レスピマットでは死亡率の増加が報告された。

方法:
 40歳以上のCOPD患者17135人を登録したこの多施設共同ランダム化二重盲検ダブルダミー並行群間試験(TIOSPIR試験)において、われわれはチオトロピウムレスピマット2.5μg/日、5μg/日の安全性および有効性を同ハンディヘラー18μg/日と比較検証した。
 プライマリエンドポイントは死亡リスク(非劣勢試験:レスピマット2.5μgあるいは5μg vs. ハンディヘラー)と初回のCOPD急性増悪リスク(優越性試験:レスピマット5μg vs. ハンディヘラー)とした。なお、心血管系疾患が安定している患者の安全性を含む心血管安全性も評価した。

結果:
 TIOSPIR試験は、平均観察期間2.3年であった。その結果、レスピマットはハンディへラーに比して死亡リスクは非劣性であった(レスピマット5μg vs. ハンディヘラー:ハザード比0.96、95%信頼区間0.84-1.09、レスピマット2.5μg vs ハンディヘラー:ハザード比1.000、95%信頼区間0.87-1.14)。また、初回のCOPD急性増悪リスクについては非優越性であった(レスピマット5μg vs. ハンディヘラー:ハザード比0.98、95%信頼区間0.93-1.03)。
 死因や主な心血管系有害事象は3群間で同等でだった。

結論:
 COPD患者における、チオトロピウムレスピマット5μgと2.5μgは、同ハンディヘラーと比較して安全性・有効性ともに同等であった(Boeringer Ingelheim社より基金提供)。


by otowelt | 2013-09-04 09:08 | 気管支喘息・COPD

6分間歩行試験のときは「可能な限り速く歩いて下さい」と指導する方がよい

e0156318_12265965.jpg 6分間歩行距離は、多くの臨床試験のサロゲートマーカーとして使用されていますが、検査精度自体がとても悪く、その日の気分によって簡単に数十mくらい差が出てしまいます。多くの患者さんは初回の6分間歩行距離はとても長いのですが、フォローアップの3~4回目になると“手を抜いて”しまいます。それを病状の悪化と捉えるのは間違いです。

Nargues A. Weir, et al.
The Influence of Alternative Instruction on the Six Minute Walk Test Distance
Chest. 2013. doi:10.1378/chest.13-0287


背景:
 6分間歩行試験(6MWT)は患者に“可能な限り遠くまで”歩くことができるかどうかを調べる機能的試験である。患者に6MWT施行時におこなう指導が検査パフォーマンスにもたらす影響は不明である。

方法:
 肺動脈性肺高血圧症(PAH)、特発性肺線維症(IPF)、他の間質性肺疾患(ILD)の患者を本試験に組み込んだ。標準的な指導法である“可能な限り遠くまで歩いて下さい”という指導法の以外に、“可能な限り速く歩いて下さい”、“あなたの好きなペースで歩いて下さい”、“急がずゆっくり歩いて下さい”という指導法のいずれもに割り付けた。

結果:
 24人の患者(PAH:10人、IPF:8人、ILD:6人)が登録され、全員4セットの6MWTを完遂した。患者は、“可能な限り速く歩いて下さい”と指導された場合に最も長い距離を歩行することができた。これは、標準的な指導法と比較して平均差で+52.7mだった(P<0.001)。サブグループ解析では、PAH患者では平均+41.5m、IPF患者では平均+66.5m、ILD患者では+53m改善した。
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(文献より引用)

ディスカッション:
 より遠くまで歩くことを求められた場合、それを達成する手法は個々で異なってしまう可能性が否めない。しかしながら、より速く歩くことを求められた場合、結果として6分間歩行距離は最大歩行距離とほぼ等しい関係になる。

結論:
 アメリカ胸部疾患学会(ATS)が推奨する6MWTの標準的手法では、患者は遠くまで歩かないだろう。指導法として、“可能な限り遠くまで歩いて下さい”の代わりに、“可能な限り速く歩いて下さい”という声かけを行うことで、より遠くまで歩く努力をするものと考えられる。


by otowelt | 2013-09-04 00:17 | びまん性肺疾患