2013年 09月 17日 ( 2 )

特発性間質性肺炎の分類:ATS/ERS合同ステートメント

 アメリカ胸部疾患学会(ATS)とヨーロッパ呼吸器学会(ERS)の特発性間質性肺炎に関する合同ステートメントが更新されました。

William D. Travis, et al.
An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Statement: Update of the International Multidisciplinary Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, September 15, 2013, Vol. 188, No. 6 : pp. 733-748



サマリー
1) 特発性非特異性間質性肺炎(NSIP)は今や特異的な臨床病理像を呈する。provisional(暫定的)という言葉を排除し、“特発性NSIP”として一つの疾患単位を提唱することとした。
2) 気腫合併間質性肺疾患を含む、喫煙関連間質性肺疾患に関する新しい知見が集積されてきた。外科的肺生検がなくとも、喫煙関連呼吸細気管支炎の診断に際して臨床情報、画像検査、気管支肺胞洗浄液(BALF)は有効である。胸部画像検査ではスリガラス影や小葉中心性結節影がみられ、BALFでは喫煙マクロファージの存在とリンパ球増多がないことが特徴である。
3) 特発性肺線維症(IPF)の疾患経過は不均一で様々な像を呈する。緩徐に進行する患者もいれば、急速に進行する患者もいる。
4) 慢性線維性特発性間質性肺炎(IPFとNSIP)では急性増悪を呈することがある。
5) 特発性間質性肺炎の患者は肺傷害のパターンによっては分類困難例がある。
6) 外科的肺生検がおこなえず、胸部HRCTも診断的でない場合は、疾患経過に基づいた臨床分類が提唱される。
7) pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)は特異的な稀な病態であり、通常特発性である。acute fibrinous and organizing pneumonia(AFOP)や細気管支中心パターンを呈する間質性肺疾患も稀な間質性肺疾患に含めることがあるが、本ステートメントでは分類としてこれを含めない。
8) 分子マーカーの急速な発展により診断アプローチの改善が可能になるだろう。これらのマーカーは、予後や治療反応性をよく反映する。血清SP-A、SP-D、KL-6、MMP-7、MMP-1、BALF中MMP-8、MMP-9、CCL2、エンドスタチンなどは高いほど予後不良であると考えられている。遺伝子学的研究と分子学的研究の融合によって特発性間質性肺炎の診断と分類のアプローチが進歩するかもしれない。
(文献より引用、一部本文の内容を追加し改変)

 NSIPは、特発性NSIPとして特異的な一疾患概念に位置付けられました。それでも「NonSpecific」という単語が残っている点は、呼吸器科医以外からみればまことに不思議な現象に見えると思います。
 日本では網谷病という名前で知られていますが、ATS/ERSで正式に特発性PPFEという疾患概念(Eur Respir J 2012;40:377–385.)が記載されました。このステートメントではPPFEの疾患概念を確立する上で参考となった過去の文献として、日本の当該文献(Kokyu 1992;11:693–699.)が記載されています。
 AFOPは稀な病理所見(Arch Pathol Lab Med 2002;126:1064–1070.)として記載されていますが、希少特発性間質性肺炎の病名としては加わっていません。



改訂ATS/ERS 特発性間質性肺炎分類(多面的診断)
●主な特発性間質性肺炎
・慢性線維性間質性肺炎
  特発性肺線維症:Idiopathic pulmonary fibrosis
  特発性非特異性間質性肺炎:Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia
・喫煙関連間質性肺炎
  呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患:Respiratory bronchiolitis-interstitial lung disease
  剥離性間質性肺炎:Desquamative interstitial pneumonia
・急性/亜急性間質性肺炎
  特発性器質化肺炎:Cryptogenic organizing pneumonia
  急性間質性肺炎:Acute interstitial pneumonia
●稀少特発性間質性肺炎
 特発性リンパ球性間質性肺炎:Idiopathic lymphoid interstitial pneumonia
 特発性PPFE:Idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis
●分類不能型特発性間質性肺炎
 分類不能の原因:
  1.不適切な臨床、画像、病理データ
  2.臨床、画像、病理の主要所見の解離
(文献より引用)

 分類不能型特発性間質性肺炎は基本的に上記の診断に当てはまらないものが該当しますが、初期診断や治療の導入の修飾によって生じる間質性肺炎も含んでいます。疾患概念の提唱というよりも、どちらかと言えば膠原病や薬剤性による間質性肺疾患を考慮しなければならないという論調であり、呼吸器科医にとって啓蒙的な側面が強いです。



重要な鑑別疾患
1) (慢性)過敏性肺炎
2) 膠原病関連間質性肺疾患
3) 家族性間質性肺炎
4) 混在する間質性肺炎(UIP+NSIP、combined pulmonary fibrosis and emphysema[CPFE]など)
(文献より引用)

 CPFEが鑑別疾患として記載されています。CPFEだけでなく、特発性間質性肺炎そのものが混在することがありうることも知っておかねばなりません。



各疾患の臨床像による分類
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(文献より引用)


by otowelt | 2013-09-17 15:06 | びまん性肺疾患

非HIV患者のニューモシスティス肺炎に対する高用量ステロイドはICU死亡率の増加に関連

e0156318_12163223.jpg HIV感染症がないニューモシスティス肺炎(PCP)に対するステロイドについてはあまりエビデンスはありません。過去に小規模の報告がいくつかありますが(Chest 1998,113(5):1215–1224.、Clin Infect Dis 1999, 29(3):670–672.)、ステロイドがPCPの死亡率を下げる効果は、あったとしてもごくわずかではないかと考えられています。
 ステロイドの使用量と重症度は多変量解析で個別の因子として記載されていますが、レトロスペクティブデザインでなおかつオープンジャーナルという点が気にかかります。
 PCPは少数しか経験したことがありませんが、ステロイドを使ったからといって死亡率が上がった印象は今のところありません。といっても、使わなかったらどうなるのか、という経験もないのですが。

Virginie Lemiale, et al.
Adjunctive steroid in HIV-negative patients with severe Pneumocystis pneumonia
Respiratory Research 2013, 14:87


背景:
 高用量ステロイド治療はAIDSによるニューモシスティス肺炎(PCP)において効果が確立されている。しかし、非AIDSによるPCPの効果はわかっていない。われわれは、HIV陰性のPCP患者におけるステロイドの生存に対する効果を検証した。

方法:
 PCPによる低酸素血症のためICUに入室した患者をレトロスペクティブに同定した。高用量ステロイド(プレドニゾン1mg/kg相当以上)、低用量ステロイド(プレドニゾン1mg/kg相当未満)、ステロイド非使用の3群を比較した。ICU死亡率に関連した独立因子を調べた。

結果:
 139人のHIV陰性PCP患者が登録された。年齢中央値は48歳(40~60歳)だった。主な基礎疾患は血液悪性腫瘍(55人、39.6%)、癌(11人、7.9%)、固形臓器移植(73人、52.2%)などであった。
 ICU死亡率は25%(36人)だった。高用量ステロイド群の死亡は72人(51.8%)、低用量ステロイド群の死亡は35人(25%)、ステロイド非使用群の死亡は32人(23%)だった。
 ICU死亡率の独立予測因子は、ICU入室時のSAPS II(オッズ比1.04、95%信頼区間1.01-1.08, P=0.01)、非血液悪性腫瘍(オッズ比4.06、95%信頼区間1.19-13.09, P=0.03)、血管作動薬の使用(オッズ比20.31、 95%信頼区間6.45-63.9, P<0.001)、高用量ステロイドの使用(オッズ比9.33、95%信頼区間1.97-44.3,
P=0.02)だった。高用量ステロイドは、ICU入室後の感染症とは関連していなかった。
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(文献より引用)

結論:
 HIV陰性のPCP患者において、高用量ステロイドの使用は死亡率増加と関連していた。これは感染リスクの上昇では説明できなかった。


by otowelt | 2013-09-17 00:52 | 感染症全般