2013年 09月 19日 ( 2 )

吸入ステロイド使用は市中肺炎の再発のリスクを上昇

e0156318_23435524.jpg 日本の場合、気管支喘息で吸入ステロイド薬が活躍することが多いのですが、海外ではCOPDに対しても結構安易に吸入ステロイド薬が処方されていると海外の医師から聞いたことがあります。

Dean T. Eurich, et al.
Inhaled Corticosteroids and Risk of Recurrent Pneumonia: A Population-Based, Nested Case-Control Study
Clin Infect Dis. (2013) doi: 10.1093/cid/cit472


背景:
 吸入ステロイド薬の使用による肺炎のリスク上昇が示唆されているが、その関連性については試験によって一定しない。早期にこのリスクが報告された試験として、TORCH試験がある(New Engl J Med 2007; 356:775–89.)。これによれば、プロピオン酸フルチカゾンは市中肺炎の頻度がプラセボと比較して6%多かった。また、肺炎リスクを増加させたというメタアナリシスもあれば(Curr Opin Pulm Med 2010;16:118–22.、JAMA 2008;300:2407–16.)、減少させたというメタアナリシスもある(Lancet 2009; 374:712–9.、Am J Respir Crit Care Med 2011; 183:589–95)。
 われわれは、肺炎のエピソードから生存した患者というハイリスク集団において、吸入ステロイド薬の使用による再発性肺炎のリスクについて調べた。

方法:
 肺炎を発症した65歳以上の成人患者を登録した。これは吸入ステロイド薬によって最も不利益を被る年代であると推定したからである。この症例対照研究では、最初の肺炎エピソードから30日以上経過して発症した再発性肺炎の症例と、年齢、性別、COPDをマッチさせたコントロール患者を設定した。吸入ステロイド薬は、使用したことがない群、過去に使用していたことがある群(初発肺炎の発症直前の週[remote]あるいは初発肺炎から再発前90日以前)、現在使用者している群(肺炎再発の90日前より最近)に分類された。プライマリアウトカムは、初発の肺炎発症から30日以上経過した後の再発性肺炎とした。これは、患者背景や臨床データで補正した条件付き多変量ロジスティック回帰を用いて解析された。

結果:
 5年のフォローアップ期間の間に、653人の再発性肺炎と6244人のコントロールマッチ患者が本試験に登録された。平均年齢は79±8歳で、3577人(52%)が男性であり、2652人(38%)がCOPDを有しており、2294人(33%)が吸入ステロイド薬を使用した既往があった。
 全体で、吸入ステロイド薬を現行使用していた870人中123人(14%)が再発性肺炎を起こし、非使用者の4603人中395人(9%)が再発性肺炎を起こした(補正オッズ比1.90、95%信頼区間1.45~2.50、p < 0.001、NNH [Number Needed to Harm]:20)。一方で、吸入ステロイド薬の既往使用と再発性肺炎の間に関連性はみられなかった(9% vs. 9%, p = 0.36)。

結論:
 ハイリスク肺炎生存者の集団において、吸入ステロイド薬は90%の再発性肺炎のリスク増加と関連していた。この結果は、吸入ステロイド薬を処方するときや、どの患者に綿密なフォローアップが必要になるのかを決定するときの考慮されるべき内容であろう。


by otowelt | 2013-09-19 12:23 | 感染症全般

メタアナリシス:小細胞肺癌に対する維持療法の有効性

e0156318_21422463.jpg 小細胞肺癌に対する維持療法の論文です。

Zhou H, et al.
Duration of chemotherapy for small cell lung cancer: a meta-analysis.
PLoS One. 2013 Aug 30;8(8):e73805.


背景:
 小細胞肺癌(SCLC)の患者に対して、維持化学療法は広く用いられている。しかしながら、経過観察と比較した維持療法の利益については議論の余地がある。

方法:
 信頼性のある文献を同定するため、われわれはMedline、Embase、Cochraneなどの電子データベースからデータを抽出した。SCLCで維持療法(continuousあるいはswitch)か経過観察を選んだ患者を含む試験が適格になった。プライマリアウトカムは1年死亡率、セカンダリアウトカムは2年死亡率、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)である。

結果:
 665の試験のうち、14の信頼性のある試験(1806人)を同定した。経過観察と比較して、維持化学療法は1年死亡率(オッズ比0.88、95%信頼区間0.66~1.19、p=0.414)、および2年死亡率(オッズ比0.82、95%信頼区間0.57~1.19、p = 0.302)、OS(ハザード比0.87、95%信頼区間0.71~1.06、p = 0.172)、PFS(ハザード比0.87、95%信頼区間0.62~1.22、p = 0.432)と差がみられなかった。
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(文献より引用:1年死亡率)
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(文献より引用:2年死亡率)
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(文献より引用:OS)
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(文献より引用:PFS)

 しかしながら、ED-SCLCのサブグループ解析では維持療法は経過観察よりPFSが延長した(ハザード比0.72、95%信頼区間0.58~0.89、p = 0.003)。加えて、continuous(switchではない)維持療法はPFSという観点では経過観察よりもPFSが短縮した(ハザード比1.27、95%信頼区間1.04~1.54、p = 0.018)。

 出版バイアスはいずれのアウトカム(1年死亡率、2年死亡率、OS、PFS)でも観察されなかった。
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(文献より引用:funnel plots)

結論:
 SCLC患者における維持化学療法は生存アウトカムを改善させない。しかしながら、ED-SCLCにおいてはPFSの延長が観察された。加えて、continuous維持療法は経過観察よりも劣っていることが示唆された。


by otowelt | 2013-09-19 00:23 | 肺癌・その他腫瘍