カテゴリ:抗酸菌感染症( 137 )

BCGワクチンによるツベルクリン反応偽陽性はいつまで続く?

e0156318_17261144.jpg 意外にデータが少ないそうです。

James D. Mancuso, et al.
The Long-Term Effect of Bacille Calmette-Guérin Vaccination on Tuberculin Skin Testing: A 55-Year Follow-Up Study
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.01.001


背景:
 BCGは抗酸菌抗原に交差反応を起こすため、ツベルクリン反応(TST)の偽陽性の原因として良く知られている。しかしながら、BCGの影響がTSTに与える影響はよく分かっていない。この研究の目的は、TST反応性に対する長期的なBCGの影響を調べることである。

方法:
 アメリカインディアン/アラスカ人のTSTデータを前向きに1935~1947年に収集し、その後1946~1998年の間に後ろ向きでデータを収集した。TSTは10mm径以上を陽性とした。Kaplan-MeierおよびCox回帰が用いられ、BCG・プラセボ間でTST陽性化・陰性化までの期間を比較した。

結果:
 新生児がBCG接種を受けると、TSTが初期15年陽性化するリスクを上昇させた(補正ハザード比2.33)。この関連はワクチン接種後16~55年の間をあけても持続していた。しかし、その影響には減衰がみられた(補正ハザード比1.26)。BCGワクチン接種者群の間でTST陽性は、初期15年で陰性化しうるが、その後の期間では陰性化の減少はまれであった。

結論:
 新生児期以降にBCGワクチンを摂取することで、CDCが認めているようにTSTに10年を超える影響を与えるかもしれない。この影響は55年まで続く可能性がある。すなわち、ワクチン接種からどれだけ月日を経ようともTSTの解釈には注意を要する。



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by otowelt | 2017-02-03 00:12 | 抗酸菌感染症

多剤耐性結核におけるベダキリン延長投与の忍容性

e0156318_13203583.jpg MDRTBの治療薬として期待されているベダキリンの長期的安全性に関する報告です。

Lorenzo Guglielmetti, et al.
Long-term outcome and safety of prolonged bedaquiline treatment for multidrug-resistant tuberculosis
European Respiratory Journal 2016; DOI: 10.1183/13993003.01799-2016


背景:
 ベダキリンは最近承認された多剤耐性結核(MDRTB)の治療薬であり、24週間の投与が推奨されている。臨床試験外においてこの薬剤で治療された患者データは不足している。

方法:
 2011年1月から2013年12月31日までの間、MRTBの治療を受けた全患者を登録し、ベダキリンを30日以上投与された患者を多施設観察コホートに組み入れた。

結果:
 45人のMDRTB患者のうち、53%がフルオロキノロンとセカンドライン抗結核注射剤に耐性を示していた。また38%がこれらのいずれかに耐性を示していた。ベダキリン治療期間の中央値は361日で、33人(73%)が190日を超えてベダキリン延長投与を受けていた。総じて、36人(80%)の患者が良好なアウトカムであり、5人は追跡不能、3人は死亡、1人は治療失敗でベダキリン耐性を獲得した。再発は報告されなかった。重度および重篤な有害事象はそれぞれ患者の60%および18%で観察された。補正QT間隔(Fridericia法:QTcF)>500msecが11%の患者に観察されたが、不整脈や有症状の心副作用は観察されなかった。QTcFの延長により3人の患者でベダキリンの中止があった。標準治療とベダキリン延長治療を受けた患者の間に、アウトカムも有害事象の頻度も差は有意差は観察されなかった。

結論:
 ベダキリン含有レジメンは大多数の患者において良好なアウトカムであった。ベダキリンの延長投与はこのコホートにおいて忍容性が良好だった。



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by otowelt | 2017-01-24 00:35 | 抗酸菌感染症

治療抵抗性NTM症に対するアミカシン吸入の追加は喀痰陰性化と6分間歩行距離を改善

e0156318_13334416.jpg 日本ではなかなか実施できないプラクティスです。

Kenneth N Olivier, et al.
Randomized Trial of Liposomal Amikacin for Inhalation in Nontuberculous Mycobacterial Lung Disease
Am J Respir Crit Care Med. First published online 17 Oct 2016 as DOI: 10.1164/rccm.201604-0700OC


背景:
 多剤併用期間の長さやその効果の乏しさから非結核性抗酸菌症(NTM症)のマネジメントには限界がある。

目的:
 この第2相試験では、治療抵抗性NTM症(MACおよびM. abscessus)に対するアミカシン吸入リポソーム製剤(LAI)の効果と安全性を調べた。

方法:
 二重盲検相において、患者はランダムに1日1回のLAI(590mg)あるいはプラセボに84日間割り付けられた。多剤併用療法は継続されたままとした。両群とも追加で84日間オープンラベルのLAIを受けることが可能とされた。プリイマリエンドポイントは、ベースラインから84日までの判定量抗酸菌発育スケールの変化とした。他のエンドポイントとして、喀痰陰性化、6分間歩行距離、有害事象を設定した。

結果:
 修正ITT集団で89人(LAI:44人、プラセボ:45人)が登録された。平均年齢は59歳で、88%が女性、92%が白人だった。80人が二重盲検相、59人がオープンラベル相を完遂した。プライマリエンドポイントは統計学的に有意な結果は示せなかった(P=0.072)。しかしながら、LAI群では1回以上の喀痰培養陰性が有意に多かった(32% [14/44] vs. 9% [4/45]; P=0.006)。またLAI群で84日時点での6分間歩行距離が改善した(+20.6m vs. −25.0m; P=0.017)。治療効果は嚢胞性線維症のMAC患者でより顕著であった。またLAI後も1年その効果を維持できた。ほとんどの有害事象は呼吸器系のもので、何人かは薬剤中断を余儀なくされた。
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(文献より引用:喀痰培養陰性化と6分間歩行距離)

結論: 
 治療抵抗性NTM症に対して多剤併用療法にLAIを追加することで、喀痰陰性化および6分間歩行距離の改善がみられた。

by otowelt | 2016-11-10 00:27 | 抗酸菌感染症

BCGを接種した小児ではツベルクリン反応の特異度が下がる

e0156318_1723467.jpg BCG接種小児では、ツベルクリン反応5mmというカットオフ値は特異度が低くなる可能性があるようです。

James A Seddon, et al.
The impact of BCG vaccination on tuberculin skin test responses in children is age dependent: evidence to be considered when screening children for tuberculosis infection
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-207687


背景および目的:
 結核曝露後、接触者は潜在性結核感染症治療対象かどうかスクリーニングされる。イギリスでは、年齢やBCG接種歴を問わず、ツベルクリン反応(TST)5mmがそのカットオフ値として用いられている。われわれは、結核曝露後のイギリス小児におけるTSTにBCG接種が与える影響を調べた。また、異なるTSTカットオフ値でIGRA陽性の予測パフォーマンスを調べた。

方法:
 15歳未満の小児がイギリスの11施設から登録された。2011年1月から2014年12月までに、家族に喀痰あるいは培養陽性の結核患者がいるものを適格者とした。患者背景が抽出され、TST、IGRAが実施された。IGRA陰性小児において、BCG接種がTST陽性に与える影響を評価した。また、異なるTSTカットオフ値においてIGRA陽性を予測するパフォーマンスを調べた。

結果:
 422人の小児が登録された(年齢中央値69ヶ月、IQR32-113ヶ月)。そのうち300人(71%)がBCG接種歴があった。BCG接種は5歳未満のIGRA陰性小児においてTST反応性に影響を与えた。BCG非接種小児において5mmのカットオフ値は良好な感度と特異度であったが、BCG接種小児では特異度が阻害された(62.7%; 95%信頼区間56.1% to 69.0%)。BCG接種小児では、10mmのカットオフ値にすると高い陰性適中率(97.7%; 95%信頼区間94.2% to 99.4%)が得られた。

結論:
 BCG接種は5歳以上の小児ではTST反応性に影響をほとんど与えない。5mmのカットオフ値は良好な感度であるものの、BCG接種小児では特異度が阻害される。


by otowelt | 2016-07-14 00:07 | 抗酸菌感染症

スタチン使用は活動性結核のリスクを減少させる

e0156318_17311371.jpg スタチンと呼吸器疾患の関連については、そろそろ下火になるかなあと思っていたのですが。

Chih-Cheng Lai, et al.
Statin treatment is associated with a decreased risk of active tuberculosis: an analysis of a nationally representative cohort
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-207052


背景:
 疫学的なデータによれば、スタチンは呼吸器感染症の臨床アウトカムを改善するとされている。われわれは、スタチンが活動性結核のリスクを減少させるかどうか調べた。

方法:
 われわれは1999年~2011年の国民健康保険請求データベースから得られたデータをもとに症例対照研究を実施した。スタチンの使用について層別化を行った(現行使用、直近使用、過去使用、慢性使用)。罹患率比算出のために3つの条件付きロジスティック回帰モデルを用いた。1つ目は補正なしのスタチン使用の影響、2つ目は75の潜在的交絡因子の補正を加えたもの、3つ目はDisease Risk Score (DRS)で補正を加えたもの。

結果:
 8098人の新規結核患者と809800人のコントロール患者を登録した。すべてのスタチン使用タイプにおいて活動性結核のリスクが減少した。慢性使用(年90日を超える)はもっとも非補正リスクが低かった(0.74; 95%信頼区間0.63 to 0.87)。交絡因子やDRSで補正を加えても、活動性結核に対する保護的影響は有意にみられた(0.66; 95%信頼区間0.56 to 0.78および0.62; 95%信頼区間0.53 to 0.72)。慢性的および現行のスタチン使用がもたらす影響は酷似していた。スタチン処方期間が長くなるほど、活動性結核への保護的影響は大きくなった。

結論:
 スタチン使用は活動性結核のリスクを減少させ、その処方の長さが結核の保護的影響に寄与している。


by otowelt | 2016-05-06 00:17 | 抗酸菌感染症

人工呼吸器を要する結核患者は、市中肺炎患者よりも死亡率が高い

e0156318_1641291.jpg 人工呼吸器を装着した結核患者さんは数えるくらいしか診たことがありませんが、やはり全例死亡しています。ベースラインの免疫状態もさることながら、市中肺炎のように侵された肺組織の機能が戻りにくいためだと思います。重症の結核は、何年後も何十年後もその陰影を強く残しています。

Kim S, et al.
Mortality and predictors in pulmonary tuberculosis with respiratory failure requiring mechanical ventilation.
Int J Tuberc Lung Dis. 2016 Apr;20(4):524-9.


目的:
 肺結核による呼吸不全で人工呼吸器を受けた患者の、重症化予測因子と死亡率を調べること。

デザイン:
 市中肺炎で人工呼吸器を要した患者と、結核で人工呼吸器を要した患者をレトロスペクティブに比較。

結果:
 院内死亡率は、両群で有意な差がみられた。結核群95.1%、市中肺炎群62.7%(P < 0.001)。結核患者は30日死亡率が高かったが(P = 0.040)、SOFAスコア中央値(7.0 vs. 6.0, P = 0.842)および平均APACHE IIスコア(20.0 ± 6.7 vs. 21.2 ± 6.7, P = 0.379)に群間差はなかった。結核患者はより肺病変が広範囲で(オッズ比1.307, 95%信頼区間1.042-1.641, P = 0.021)、血清アルブミン値が低く(オッズ比0.073, 95%信頼区間0.016-0.335, P = 0.001)、CRPが低く(オッズ比0.324, 95%信頼区間0.146-0.716, P = 0.005)、CURB-65スコアが低かった(オッズ比0.916, 95%信頼区間0.844-0.995, P = 0.037)。

結論:
 市中肺炎患者と比べて、結核患者はSOFAおよびAPACHE IIスコアは同等だったが死亡率が高かった。高い死亡率は重症度とは関連していなかったが、肺病変の破壊性進行と関連していることが示唆された。


by otowelt | 2016-04-28 00:36 | 抗酸菌感染症

通常の呼吸における結核患者のバイオエアロゾル

e0156318_9552565.jpg 結核患者の呼気中バイオエアロゾルを測定した興味深い報告です。

Fatima B Wurie, et al.
Bioaerosol production by patients with tuberculosis during normal tidal breathing: implications for transmission risk
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-207295


背景:
 呼気バイオエアロゾルの粒子径と濃度は、結核伝播リスクに影響を与えるかもしれない。このパイロット研究では、通常の呼吸でどういったバイオエアロゾルが産生されるかを結核患者において測定した。

方法:
 健常者およびUniversity College London NHS Foundation Trust(UCLH)結核サービスから抽出された結核患者を登録した。15回の通常呼吸において、粒子径カウンター技術を用いてエアロゾルサイズおよびその呼気中濃度(0.3~20μm径)を調べた。

結果:
 治療前(ベースライン)において、188人の被験者のデータが得られた。バイオエアロゾル産生は、個々によって大きく差がみられた。多変量解析では、胸腔内の結核病変は、健常人/非感染者と比較して1~5μm径のエアロゾルの産生のオッズ比を上昇させた(補正オッズ比3.5; 95%信頼区間1.6 to 7.8; p=0.002)。
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(文献より引用:各被験者における粒子径)

結論:
 胸腔内の結核病変は、結核菌を伝播させうる粒子径のバイオエアロゾル産生を増加させることが分かった。ただし、結核患者におけるバイオエアロゾルの感染性の程度にはばらつきがあるかもしれない。


by otowelt | 2016-04-05 00:29 | 抗酸菌感染症

韓国におけるエタンブトールによる視神経症の頻度

e0156318_17532169.jpg 0.7%というのは過去の報告と比べるとやや少なめでしょうか。

Yang HK, et al.
Incidence of toxic optic neuropathy with low-dose ethambutol.
Int J Tuberc Lung Dis. 2016 Feb;20(2):261-4.


目的:
 結核あるいは肺MAC症に対する低用量(15mg/kg/日以下)のエタンブトールによる視神経症の頻度を調べる。

方法:
 結核あるいは肺MAC症と診断された患者でエタンブトールを含む多剤治療を2003年8月から2009年7月までに単一施設で受けた患者を登録した。視力検査はベースラインと定期フォローアップ時に実施された。エタンブトールによる視力障害が評価された。

結果:
 研究に組み込まれた415人の患者のうち、3人(0.7%)が視神経症を発症した。289人の低用量エタンブトール処方患者のうち、視神経症を発症したのは1人(0.3%)のみであった。

結論:
 韓国におけるエタンブトールによる視神経症の頻度は0.7%程度と考えられ、低用量にすることでその頻度が減るかもしれない。


by otowelt | 2016-03-15 00:47 | 抗酸菌感染症

多剤耐性結核に対するエルタペネムの有効性

e0156318_13203583.jpg MDRTBに対するカルバペネムの話題です。

Sander P. van Rijn, et al.
Pharmacokinetics of ertapenem in patients with multidrug-resistant tuberculosis
ERJ DOI: 10.1183/13993003.01654-2015 Published 7 January 2016


背景:
 多剤耐性結核(MDRTB)および超多剤耐性結核(XDRTB)は、セカンドライン抗結核薬が無効である耐性菌のため注目を集めている。抗菌薬として期待されているのがカルバペネム系抗菌薬である。エルタペネムは1日1回の投与が可能な、MDRTBおよびXDRTBに対して期待されているカルバペネムである。

方法:
 これはオランダで実施されたMDR-TBの後ろ向き研究である。2010年12月1日から2013年3月1日までの間にエルタペネム治療を受けた冠者を登録した。安全性と薬物動態が評価された。

結果:
 18人の患者が100mgのエルタペネムを平均77日(範囲5-210日)投与された。喀痰の抗酸菌塗抹・培養はすべての患者で陰転化した。薬剤の有効性を評価されたのは患者12人だった。24時間平均AUCは544.9(309–1130) h·mg·L−1だった。平均最大血中濃度は127.5 (73.9–277.9) mg·L−1だった。

結論:
 エルタペネム治療はMDRTBに忍容性があり、良好な薬物動態/薬力学プロファイルを示した。MDRTBに対してエルタペネムが有効な治療であると思われるが、さらなる研究を要する。

by otowelt | 2016-01-22 00:55 | 抗酸菌感染症

結核性髄膜炎に対する強化治療(リファンピシン増量・レボフロキサシン併用)は生存率を改善させない

e0156318_1302985.jpg 結核性髄膜炎のアウトカムを強化治療で改善させることができるかどうか検証したものです。

A. Dorothee Heemskerk, et al.
Intensified Antituberculosis Therapy in Adults with Tuberculous Meningitis
N Engl J Med 2016; 374:124-134


背景:
 結核性髄膜炎はしばしば致死的となりうる。早期の抗結核療法とグルココルチコイドを用いた補助療法によって結核患者の生存が延長するが、それでもなお3分の1程度は死亡するとされている。われわれは、強化治療により中枢神経系の結核菌に対する殺菌力が高め死亡率が低下するという仮説を立てた。

方法:
 ベトナムにおける2病院のいずれかに入院し、結核性髄膜炎と臨床的に診断されたHIV感染患者よおびHIV非感染患者を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照試験をおこなった。
 標準治療である9ヶ月のレジメン(リファンピシン10mg/kg/dayを含む)と、治療初期8週間に高用量リファンピシン(15mg/kg/day)・レボフロキサシン(20mg/kg/day)を併用する強化レジメンとを比較した。プライマリアウトカムはランダム化から9ヶ月までの死亡とした。

結果:
 817人(HIV感染者349人)が登録された。409人を標準治療群に、408人を強化治療群にランダムに割り付けた。フォローアップ中に、強化治療群113人、標準治療群114人が死亡した(ハザード比0.94、95%信頼区間0.73~1.22、P=0.66)。強化治療によって有意差をもたらす効果は観察されなかったが、イソニアジド耐性結核菌に感染した患者は例外となる可能性はあった。
 治療中断にいたった有害事象にも群間差はなかった(標準治療群64件、強化治療群95件、P=0.08)。

結論:
 結核性髄膜炎患者に強化抗結核治療を導入しても、標準治療と比較して生存率が高くなることはない。


by otowelt | 2016-01-18 00:34 | 抗酸菌感染症