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喘息性咳嗽に対するFeNOの有用性

e0156318_224778.jpg 現場において、FeNOの使い方に悩む最近です。

Asano T, et al.
Diagnostic utility of fractional exhaled nitric oxide in prolonged and chronic cough according to atopic status.
Allergol Int. 2016 Sep 29. pii: S1323-8930(16)30134-4. doi:10.1016/j.alit.2016.08.015.


背景:
 咳喘息(CVA)および咳嗽優位型喘息(CPA)は日本の遷延性咳嗽の重要な原因である。遷延性咳嗽の鑑別診断に対してFeNO測定が有用であると報告されているが、アトピー素因のようにFeNOが高い場合にFeNOの診断能がどうなのかは定かでない。

方法:
 われわれは後ろ向きに105人の非喫煙者遷延性ないし慢性咳嗽患者を登録した。患者はステロイドやロイコトリエン拮抗薬による治療を受けていないものを対象にした。

結果:
 CPAは37人にみられ、CVAは40人にみられ、非喘息性咳嗽(NAC)は28人にみられた。FeNOはCPA[35.8 (7.0-317.9) ppb]およびCVA [24.9 (3.1-156.0) ppb]においてNAC[18.2 (6.9-49.0) ppb]よりの有意に高かった (p < 0.01 by Kruskal-Wallis test)。NACと喘息性咳嗽(CPA+CVA)を鑑別するための最適なカットオフ値は29.2ppb[AUC0.74, p < 0.01]だった。FeNOが29.2ppbであった人の91%がACだった。一方、ACの40%の患者はFeNOが29.2ppb未満だった。
 アトピー患者ではカットフ値31.1ppb、非アトピー患者ではカットオフ値は19.9ppbだった。

結論:
 ACの存在でFeNOは高かったが、低いFeNOには限られた診断能しかみられなかった。アトピーの存在は遷延性および慢性咳嗽の鑑別診断におけるFeNOの有用性に影響をあたえる。

by otowelt | 2016-11-08 00:01 | 気管支喘息・COPD

LOTT試験:安定期COPDにおける中等度酸素飽和度低下例に長期間酸素療法は有意な利益もたらさず

e0156318_23175684.jpg いやあ、長らくこの結果を待っていた呼吸器内科医は多いでしょう。知らない人はいないはず、Long-Term Oxygen Treatment Trial(LOTT)試験がついに論文化です。
 どうでしょう、色々な意見が出そうですね。

The Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group
A Randomized Trial of Long-Term Oxygen for COPD with Moderate Desaturation
N Engl J Med 2016; 375:1617-1627


背景:
 安静時ないし運動時に中等度の酸素飽和度低下がみられる安定期COPD患者に対する長期酸素療法の有効性は明らかにされていない。

方法:
 LOTT試験の当初のデザインは、安静時に中等度のSpO2低下(89~93%)がみられる安定期COPD患者に長期酸素療法を導入することが、導入しない場合と比較して死亡までの期間が延長するかどうかを検討するものだった。
 7ヶ月後、34人をランダム化した時点で試験デザインを一旦見直し、運動時に中等度のSpO2低下(6分間歩行試験時にSpO2≧80%が5分以上、<90%が 10秒以上続く)がみられる安定期COPD患者をも試験対象に組み入れ、新たに複合プライマリアウトカムとして、全原因による初回入院までの期間を加えた。
 患者を、長期酸素療法を導入する群(酸素投与群)と導入しない群(非酸素投与群)に、ランダムに1:1に割り付けた。酸素投与群においては、安静時にSpO2低下がある患者に24時間酸素療法を処方し、運動時にのみSpO2低下がみられる患者には運動時と睡眠時の間欠的な酸素療法を処方した。割り付けそのものは盲検化していない。
 安静時SpO289~93%であれば酸素投与を処方し、運動時のみにSpO2低下がみられる場合は睡眠時および運動時に酸素を処方した。酸素投与を受けた全患者は基本的に2L/分の流量を投与された。歩行時の流量は個々に年ごとに再設定したが、SpO2>90%あるいは最低2L/分を維持するよう規定した。非酸素投与群では安静時SpO288%以下あるいは運動時SpO280%以下(1分以上)を満たさない限り酸素を処方しなかった。

結果:
 2009年1月から2014年8月までの間、42施設で738人を追跡した。368人が酸素投与群、370人が非酸素投与群に割り付けられた。酸素投与群では220人が24時間酸素投与を受け、148人が運動時および睡眠時の酸素療法を受けた。
 生存時間(time-to-event)解析において、酸素投与群と非酸素投与群とのあいだに死亡または初回入院までの期間に有意差は観察されず(ハザード比0.94、95%信頼区間0.79~1.12、P=0.52)、全入院率(率比1.01、95%信頼区間0.91~1.13)、COPD増悪(率比1.08、95%信頼区間0.98~1.19)、COPD に関連する入院(率比0.99、95%信頼区間0.83~1.17)にも有意差はみられなかった。
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(文献より引用:プライマリアウトカム[死亡あるいは初回入院]あるいは初回入院)
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(文献より引用:死亡)

 酸素投与群の患者で、1~3ヶ月以内にCOPD増悪を経験した患者では死亡あるいは初回入院リスクが低かった(ハザード比0.58、95%信頼区間0.39~0.88、P=0.007)。このリスク低下は、同様に71歳以上の高齢者(ハザード比0.75、95%信頼区間0.57~0.99、P=0.03)、低QOL患者(登録時Quality of Well-Being Scale scoreが0.55点未満)(ハザード比0.77、95%信頼区間0.60~0.99; P = 0.03)でも観察された。しかしながら複数因子の補正後ではこれら交互作用で有意なものはなかった。as-treated analysisでは、16時間を超えて酸素療法を用いた群はそれ以外の全ての酸素投与時間と比べてアウトカムに差はみられなかった。
 QOL、肺機能、6分間歩行距離の測定値に群間差はみられなかった。

結論:
 安静時および運動時に中等度のSpO2低下がみられる安定期COPD患者に長期酸素療法を導入しても、導入しなかった患者と比べて、死亡または初回入院までの期間は延長せず、他の評価項目にも持続的な利益をもたらさなかった。

Discussion:
 われわれのデータは、たとえ運動時に酸素飽和度低下があるケースでも、安静時SpO2が88%を超えているCOPD患者に対する長期酸素療法は、有意な生存期間延長をもたさらないという過去の研究を支持するものである。しかし、酸素投与を受けているCOPD患者や重度の酸素飽和度がある患者における生存期間延長という過去の報告とは乖離した結果でもある。
 肺血管攣縮に対する酸素飽和度の非線形の閾値効果、メディエーター遊走、換気ドライブが乖離の理由として考えられ、それがSpO288%以下で惹起され、慢性低酸素血症患者では重要になるのかもしれない。
 過去のシステマティックレビューでは呼吸困難を軽減する効果があるとされたが、本研究ではQOL、抑うつ、不安、機能ステータスには効果がみられなかった。

Limitations:
 患者の状態が悪すぎたり、明らかに酸素療法による利益を受けていると考えたりする医療従事者の存在があったため、登録しなかった患者がいるのは確か(潜在的バイアス?)。盲検化できなかったため、患者報告アウトカムに影響を及ぼした可能性はある(ただしプライマリアウトカムには影響なし)。酸素デバイスが統一できなかったため、これが酸素投与量に誤差を生んだ可能性がある。本研究は、酸素投与後の早期のアウトカムについては評価していない。

by otowelt | 2016-10-29 00:05 | 気管支喘息・COPD

COPD薬物治療のコントロバーシー

 昨日のFacebookページ「呼吸器内科医」の投稿内容です。

Singh D, et al.
Current Controversies in the Pharmacological Treatment of Chronic Obstructive Pulmonary Disease.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Sep 1;194(5):541-9.


 Singh先生の「COPD薬物治療のコントロバーシー」(Am J Respir Crit Care Med. 2016 Sep 1;194(5):541-9.)を読みました。相変わらず分かりやすい。2014年のLancet Respiratory Medicineで言及されていた「Free-FEV1アプローチ」を紹介していました。これは、重症度分類のA~Dをおおまかに推定して治療方針を決めるというものです。過去はGOLD I~IV期に基づいたアプローチが推奨されていましたが、患者さんの個々に柔軟に対応したガイドラインに変化していく流れになるようです。
 クリニックでCOPD患者さんを診療している医師にとっては実用的ですね。
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by otowelt | 2016-10-07 00:46 | 気管支喘息・COPD

ACOS診断に炎症性バイオマーカーは有用

e0156318_125953.jpg IJCOPDのACOS論文を続けて紹介します。

Kobayashi S, et al.
Inflammatory biomarkers in asthma-COPD overlap syndrome.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016 Sep 7;11:2117-2123.


背景:
 喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の臨床的フェノタイプと基礎メカニズムについては議論の余地がある。この研究は、外来COPD患者コホートにおいてCOPD患者とACOS患者を炎症性バイオマーカーに焦点を当てて比較したものである。

方法:
 この横断研究では、前向きに石巻COPDレジストリからデータが収集された。全ての患者はスパイロメトリーを用いてCOPDと診断された40~90歳の既往喫煙者である。変動する呼吸器症状があり気流閉塞の変動がみられる喘息の特徴を持つ患者をACOSと定義した。また、FeNO、血中好酸球、総IgE、抗原特異的IgE抗体といった炎症性バイオマーカーも測定された。

結果:
 257人のCOPD患者が同定され、37人(14.4%)がACOSと診断された。ACOS患者は若く、喫煙歴が短く、呼吸器系薬剤(吸入ステロイド薬やテオフィリン)を使用している傾向にあった。平均FeNOはACOSのないCOPD患者よりもACOS患者の方が高かった(38.5 ppb vs 20.3 ppb, P<0.001)。血中好酸球数および比率はACOS患者で有意に上昇していた(295/mm3 vs 212/mm3, P=0.032; 4.7% vs 3.2%, P=0.003)。総IgEおよび抗原特異的IgEの存在はACOS患者で有意に多かった。いずれのバイオマーカーも感度・特異度は低かったが、これらのバイオマーカーを組み合わせることでACOS診断に高い特異度が得られた。

結論:
 この研究により、炎症性バイオマーカーを用いるとACOS診断が支持される可能性があることが分かった。


by otowelt | 2016-10-05 00:26 | 気管支喘息・COPD

ACOSはCOPD単独よりもFeNOが高い

e0156318_125953.jpg ACOSというハイブリッドの存在が医学的に必要な概念なのか、いまだに答えを持ち合わせていません。

Goto T, et al.
Fractional exhaled nitric oxide levels in asthma-COPD overlap syndrome: analysis of the National Health and Nutrition Examination Survey, 2007-2012.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016 Sep 7;11:2149-2155.


目的:
 喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の患者では、Th2を介した炎症の関連が示唆されている。しかしながら、ACOS患者とCOPD患者の間でのFeNoの差についてはほとんど分かっていない。このギャップを埋めるべく、アメリカ人におけるACOSおよびCOPD患者でのFeNO値の差を調べた。

患者および方法:
 この横断研究は2007年~2012年に実施された。40歳以上のCOPD患者が同定され、ACOSは過去12ヶ月以内に自己申告の喘鳴を有し気道可逆性がみられたものあるいは医師が喘息と診断したものと定義された。

結果:
 197人のCOPD患者が同定された。このうち、23%がACOSの基準を満たした。FeNO値は、ACOS患者で有意に高かった(非補正平均21.2 ppb vs 13.0 ppb; 差8.2 [95%信頼区間0.2 to 16.2]; P=0.045、補正差8.2 [95%信頼区間0.9 to 15.5]; P=0.03)。現喫煙者の間では有意差はみられなかったが、FeNOは非喫煙者ACOS患者の方が非喫煙者COPD患者よりも高かった(平均31.9 ppb vs 20.3 ppb; 補正差20.5 [95%信頼区間4.4 to 36.6]; P=0.02)。
 ACOSをCOPD単独と鑑別するためのFeNO診断能は十分とは言えず、AUCは0.63だった(95%信頼区間0.54 to 0.72)。

結論:
 COPDのうち23%がACOS基準を満たし、FeNOはACOSの方がCOPD単独よりも高かった。この傾向は特に非喫煙者によくみられた。


by otowelt | 2016-10-04 00:07 | 気管支喘息・COPD

CXCR2阻害剤はコントロール不良喘息患者の発作を減少させない

e0156318_1637713.jpg 期待されていた薬剤の1つであっただけに残念な結果でした。

Paul M O'Byrne, et al.
Efficacy and safety of a CXCR2 antagonist, AZD5069, in patients with uncontrolled persistent asthma: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Lancet Respiratory Medicine, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2213-2600(16)30227-2


背景:
 好中球性気道炎症が病態生理学特徴である重症喘息の患者が存在する。化学受容体CXCR2の刺激は好中球を軌道に誘導する。われわれは、コントロール不良重症喘息患者において、CXCR2阻害剤(AZD5049)の追加治療の効果と安全性を調べた。

方法:
 多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験において、われわれは18歳以上の長時間作用性β2刺激薬および中用量あるいは高用量吸入ステロイド薬の併用下でもコントロールが不良である喘息患者を登録した。患者はランダムに1:1:1:1に5mg、15mg、45mgのAZD5049(1日2回)およびプラセボに割り付けられた。プライマリエンドポイントは、6ヶ月間の重症喘息発作の数とした。安全性は6ヶ月の治療期間で解析された。

結果:
 640人の患者(平均年齢52歳±11.8歳)がランダム化され、478人がAZD5069(5mg群160人、15mg群156人、45mg群162人)、162人がプラセボに割り付けられた。どの用量群のAZD5069もプラセボと比較した重症喘息発作の頻度を減らさなかった(率比、5mg群:1.29, 90%信頼区間0.79–2.11; 15mg群:1.53, 同0.95–2.46; 45mg群:1.56, 同0.98–2.49)。AZD5069治療の忍容性は良好であった。もっともよくみられた有害事象は鼻咽頭炎であったが、プラセボの頻度より少なかった。

結論:
 CXCR2阻害剤は、コントロール不良重症喘息患者の重症発作の頻度を減らさない。


by otowelt | 2016-10-03 00:13 | 気管支喘息・COPD

IMPACT試験:homogeneous emphysemaに対する気管支バルブによる肺容量減量術は肺機能を改善

e0156318_1825266.jpg heterogeneous emphysemaに対してはBeLieVeR-HIFi試験においてその有効性が示されている気管支バルブ。homogeneous emphysemaではどうでしょうか?

Valipour A, et al.
Endobronchial Valve Therapy in Patients with Homogeneous Emphysema: Results from the IMPACT Study.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Aug 31. [Epub ahead of print]


背景:
 気管支バルブ(EBV)は、重度の不均一な気腫性病変(heterogeneous emphysema)を有する患者の肺の生理機能を改善させることが示されている(BeLieVeR-HIFi試験)。均一な気腫性病変(homogeneous emphysema)に対してもEBVが効果的かどうかは限られたデータしかない。

目的:
 側副換気のないhomogeneous emphysemaの患者に対するEBVの効果と安全性を調べること。

方法:
 前向き多施設共同ランダム化比較試験を実施した。プライマリアウトカムは、通常ケアと比較したEBV治療群の3ヶ月後の1秒量変化率(%)とした。セカンダリアウトカムに1秒量、SGRQスコア、6分間歩行距離、標的葉容量減少とした。

結果:
 93人の患者(平均年齢63.7±6.1歳、%1秒量29.3±6.5%、%残気量275.4±59.4%)が登録され、EBV群に43人、通常ケア群に50人が割り付けられた。プライマリアウトカムは、EBV群で13.7±28.2%、通常ケア群で-3.2±13.0%だった(平均差17.0%、p=0.0002)。その他のアウトカムとして、SGRQスコア:-8.63±11.25 vs 1.01±9.36、6分間歩行距離22.63±66.63m vs -17.34±52.8mも3ヶ月後に有意な変化がみられた。3ヶ月時点での標的葉容量減少は-1195±683 mlだった(p<0.0001)。EBV群の97.2%の患者が標的葉の容量減少を達成した(p<0.0001)。処置に起因する気胸は11人に発生した(25.6%)。そのうち5人がバルブの除去や移動を余儀なくされた。

結論:
 側副換気のないhomogeneous emphysemaの患者に対するEBVは臨床的に意義のある肺機能・運動耐容能・QOLの改善をもたらす。


by otowelt | 2016-09-28 00:34 | 気管支喘息・COPD

AZALEA試験:成人喘息発作にアジスロマイシンは無効

e0156318_1637713.jpg 喘息発作に対してすでに抗菌薬を投与されている人が多いのが驚きでした。本研究では除外されていますが。

Sebastian L. Johnston, et al.
Azithromycin for Acute Exacerbations of Asthma:The AZALEA Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online September 19, 2016.


背景:
 ガイドラインでは喘息発作に対する抗菌薬の使用を推奨していない。テリスロマイシンの研究では利益が示されているが、副反応のため使用は限定的である。

目的:
 成人の喘息発作時の標準治療にアジスロマイシンを加えるべきかどうか検証すること。

方法:
 これは、2011年9月から2014年8月まで実施された、成人喘息発作救急を扱っているイギリスの多施設で実施された、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である(AZALEA試験)。6ヶ月を超える喘息既往のある成人で、経口ないし全身性ステロイドを要する喘息発作を呈したものを登録した。

介入:
 3日間のアジスロマイシン500mgあるいはプラセボに割り付けた。

アウトカム:
 プライマリアウトカムはランダム化から10日間の症状スコア記録、治療効果量は-0.3と想定した。セカンダリアウトカムは症状スコア、QOL質問票、肺機能の10日間の変化、症状スコアの50%の減少とした。

結果:
 4582人の患者が31施設からスクリーニングされ、380人のうち199人がランダム化された。非登録の主たる原因は、抗菌薬を投与されていたことであった。症状発現から薬剤投与までの時間は中央値で22時間だった(IQR 14-28時間)。発作背景は治療群間および施設間で差はみられなかった。プライマリアウトカムである症状スコアは、アジスロマイシン群で発作時4.14±1.38、10日後2.09±1.71点、プラセボ群で4.18±1.48点、2.20±1.51点だった。マルチレベル分析を用いると、10日時点の症状スコアの差には両群で有意差は観察されなかった(差−0.166点; 95%信頼区間−0.670 to 0.337)。これは症状発現から10日目のどの時点でも同様の結果だった。QOLや肺機能についても差はみられなかった。

結論:
 このランダム化比較試験では、アジスロマイシンによる治療は喘息発作に臨床的な利益をもたらさなかった。


by otowelt | 2016-09-23 00:14 | 気管支喘息・COPD

TRILOGY試験:COPDに対するトリプル吸入療法は症状を改善しないが肺機能に利益

e0156318_10134879.jpg 言わずと知れたTRILOGY試験について。これはChiesi Farmaceutici SpA社の助成を受けている研究です。

Dave Singh, et al.
Single inhaler triple therapy versus inhaled corticosteroid plus long-acting β2-agonist therapy for chronic obstructive pulmonary disease (TRILOGY): a double-blind, parallel group, randomised controlled trial
Lancet, Volume 388, No. 10048, p963–973, 3 September 2016


背景:
 COPDに対するトリプル吸入療法(2種類の長時間作用性気管支拡張薬[LAMA, LABA]と吸入ステロイド薬[ICS])の効果に関する有用なデータは少ない。われわれは、1つの吸入デバイスで3剤(ベクロメタゾン++グリコピロニウム)(BDP/FF/GB)を吸入する治療と、BDP/FFの2剤を吸入する治療を比較した。

方法:
 このTRILOGY試験は、14ヶ国159施設で実施されたランダム化並行群間二重盲検試験である。これら施設は一次~三次医療機関まで幅広く組み込まれた。登録されたCOPD患者は気管支拡張後1秒量が50%未満で、過去12ヶ月の間に1回以上の中等症~重症COPD増悪を経験しており、CATスコアが10点以上で、BDI focalスコアが10点以下のものとした。また、ICS+LABA、ICS+LAMA、LABA+LAMA、LAMAによる2ヶ月以上の治療歴があることを条件とした。 
 登録患者は、2週間の導入期間(run-in period)においてBDP/FF(100μg/6μg 1日2回)の投与を受けた後、BDP/FF/GB(100μg/6μg/12.5μg 1日2回)のトリプル吸入療法にステップアップする群またはBDP/FF(100μg/6μg 1日2回)の2剤治療を維持する群にランダムに割り付けられ、52週治療が継続された(いずれもpMDIで吸入)。
 吸入前1秒量、吸入2時間後1秒量、TDI focalスコアの3つの複合プライマリエンドポイントによって26週時点で評価された。セカンダリエンドポイントとして、52週時点での中等症~重症のCOPD増悪の割合などを設定した。

結果:
 2015年3月21日から2016年1月14日までの間、1368人の患者がBDP/FF/GB群(687人)、BDP/FF群(681人)のいずれかに割り付けられた。26週時点で、BDP/FF/GB群ではBDP/FF群と比較して吸入前1秒量が0.081L(95%信頼区間0.052-0.109、p<0.001)、吸入2時間後1秒量が0.117L(95%信頼区間0.086-0.147、p<0.001)改善した。26週時点での平均TDI focalスコアはBDP/FF/GB群1.71点、BDP/FF群1.50点で、差は0.21点で有意差はみられなかった(p=0.160)。年間の中等症~重症増悪の頻度はBDP/FF/GB群0.41、BDP/FF群0.53と23%少なかった(率比0.77、95%信頼区間0.65-0.92、p=0.005)。有害事象はBDP/FF/GB群で368人(54%)、BDP/FF群の379人(56%)で観察された。BDP/FF/GB群で重篤な治療関連有害事象(心房細動)がみられた。

結論:
 COPD患者におけるICS/LABA治療からトリプル吸入療法にステップアップすることの臨床的利益を示した。


by otowelt | 2016-09-22 00:39 | 気管支喘息・COPD

RE2SPOND試験:COPDに対するロフルミラストは重症例に対して増悪を減らす効果

 愛読ブログのHospitalistで紹介されていたので、さっそく読みました。
 REACT試験と同じく、重症/超重症のCOPD患者さんを対象にしたランダム化比較試験です。REACT試験は12週フォローアップだったので、52週という長期の研究はこれが初めてです。
 ERSでもロフルミラストのポスターセッションがありましたが、るいそうのあるCOPD患者さんには副作用が強く出ると結構厳しいと思います。欧米のように、下腹部がぷっくりしたCOPD患者さんには耐えうる治療なのかもしれませんが。Twitterでフォローしているヨーロッパのドクターは「体重減少がやはりキツイ」とおっしゃっていました。
 COPDのこの手の研究では、ベースラインのCOPDが軽症(GOLD I)、中等症(GOLD II)、重症(GOLD III)、超重症(GOLD IV)かどうかという切り口と、COPDの増悪が中等症(経口あるいは点滴の全身性ステロイド治療を要するもの)、重症(入院を要したり死亡したもの)かどうかという切り口が幾通りにも設定できるので注意が必要です。

Martinez FJ, et al.
Effect of Roflumilast and Inhaled Corticosteroid/Long-Acting β2-Agonist on Chronic Obstructive Pulmonary Disease Exacerbations (RE(2)SPOND). A Randomized Clinical Trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Sep 1;194(5):559-67.


背景:
 COPD患者に対して最大限の吸入療法をおこなっても、中等症および重症の増悪は完全に予防できない。

目的:
 最大限の吸入ステロイド薬(ICS)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の吸入をおこなっても増悪のリスクがある患者において、ロフルミラストが中等症および重症のCOPD増悪を減らすかどうか同定すること。

方法:
 52週間の第IV相二重盲検プラセボ対照試験(RE2SPOND試験)において、40歳以上の重症/超重症COPD患者、慢性気管支炎患者、過去1年間で2回以上の増悪や入院を経験した患者、毎日のICS/LABAおよびLAMAを3ヶ月以上続けた患者を、ランダムに1日1回のロフルミラスト500μg(1178人)あるいはプラセボ(1176人)に割り付けた。LAMAの使用によって層別化もおこなった。
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(下記IJCOPDより引用)

結果:
 患者1人・1年あたりの中等症あるいは重症の増悪(プライマリエンドポイント)は、ロフルミラスト群でプラセボよりも8.5%減少したが、群間差は統計学的に有意ではなかった(率比0.92; 95%信頼区間0.81-1.04; P = 0.163)。しかしながら、ロフルミラストは肺機能を改善した。
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(文献より引用)

 事後解析では過去1年で3回以上の増悪を経験した患者では中等症あるいは重症のCOPD増悪が39%減少した(率比0.61; 95%信頼区間0.39–0.95;P = 0.030)。過去1年で重症の増悪を経験した患者では中等症あるいは重症のCOPD増悪が25%減少した(率比0.75; 95%信頼区間0.60– 0.93;P =0.010)。また、ロフルミラストは過去に入院を要した増悪を有する患者において中等症のCOPD増悪を有意に減少させた(率比0.78;95%信頼区間0.61– 1.00)。
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(文献より引用改変)

 有害事象による休薬はロフルミラスト群の11.7%、プラセボ群の5.4%にみられた。死亡はそれぞれ2.5%、2.1%にみられた。

結論:
 当研究の全被験者に対してロフルミラストは統計学的に有意なCOPD増悪を減らす効果はなかった。ロフルミラストは肺機能を改善し、頻繁に増悪がみられたり入院歴がある重症例に対して増悪を減らす効果があった。安全性プロファイルは過去の研究と同等であった。

付記:
 試験デザインの詳細については、IJCOPDに同時期に掲載されている。
Rennard SI, et al. Effects of roflumilast in COPD patients receiving inhaled corticosteroid/long-acting β2-agonist fixed-dose combination: RE(2)SPOND rationale and study design. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016 Aug 17;11:1921-8.


by otowelt | 2016-09-12 00:38 | 気管支喘息・COPD