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気管チューブカフインフレータは人工呼吸器関連肺炎予防に有用

e0156318_21563989.jpg 私が研修医をしていた時代には、到底考えられないデバイスです。

大城 智哉ら.
人工呼吸器関連肺炎予防における気管チューブカフインフレータによる有用性の検討
日本集中治療医学会雑誌. 25 巻 (2018) 1 号 p. 45-46


方法:
 対象は人工呼吸器管理中の20歳以上の患者で,観察期間はETTc インフレータの院内導入開始と研究終了時期を考慮し,ETTcインフレータ群(以下,自動群)を2015年1月から10月とし,用手的カフ圧調整群(以下:手動群)を2014年1月から10月と設定し各々VAP発生率,VAP発生因子および背景疾患を前向きに観察した。手動群は10 cmH2Oごとのメモリ表示であるVBMカフプレッシャーゲージ®(スミスメディカル・ジャパン)を用いて,20~30 cmH2Oの範囲に調整(口腔ケア前後と,各勤務帯開始時の0時,8時,16時)し,平均気道内圧>20 cmH2Oの場合は実測値を上回るように調整した。一方,自動群は自動カフ圧コントローラ®(コヴィディエン ジャパン)を,気管挿管直後あるいはICU外で緊急気管挿管された場合はICU 入室時に装着した。カフ圧は手動群を考慮し25 cmH2Oに設定し,平均気道内圧>25 cmH2O の場合は+2 cmH2O の値を設定圧とした。なお両群ともにテーパーガードエバック™気管チューブ®(コヴィディエン ジャパン)を使用した。

結果:
 手動群65例,自動群25例に対して,VAP発生数は手動群6例〔心肺停止蘇生後2例,肺炎に伴うARDSによる死亡例,急性膵炎管理中に併発した気胸,痙攣重責,気管支拡張症による喀血に伴う呼吸不全〕,自動群2例(肺炎に伴うARDS)で,VAP発生率は自動群で有意に低かった(手動群vs.自動群[ 平均±標準偏差]:21.30±21.56 vs. 3.40±10.75,P= 0.015)。また全例晩期VAPであり,気管挿管期間(days)は有意に延長していた(VAP 群 vs. 非VAP 群:10±4.21 vs.7.26±8.42,P<0.05)。

結論:
 本邦においてもETTcインフレータはVAP発生予防に有用である。


by otowelt | 2018-01-17 00:06 | 集中治療

血液ガス分析検査値はNPPVの失敗を予測できない

e0156318_21563989.jpg 血液ガス分析の推移で失敗を予測できるわけではなさそうです。

岩井 健一ら
血液ガス分析検査値は非侵襲的陽圧換気療法の失敗を予測できない
日集中医誌 2017;24:625-7.


概要:
 2010 年8 月から2012 年7 月の間に,当院ICUにて,NPPVを用いた呼吸管理を施行された患者を対象に,患者背景と治療予後を後方視的に調査した。NPPVを離脱した患者を「成功群」,NPPV装着後に気管挿管を伴う人工呼吸器管理を必要とした患者を「失敗群」と定義し,両群間で比較した。
 成功群96人と失敗群40人の患者背景には,診療科,NPPV装着の原因病態,APACHEIIスコア以外は差を認めなかった。失敗群でNPPV開始後の血清乳酸値が有意に高く,ICU滞在期間が有意に長く,ICU死亡率が有意に高かったが,NPPV開始後のpH,PaCO2,P/F 比に差を認めなかった
 低いpH,低いP/F比,高いPaCO2などのNPPV開始後の血液ガス分析検査上の特徴は,必ずしもNPPV失敗予測因子にならない可能性が示唆された。


by otowelt | 2017-12-27 00:11 | 集中治療

ICUにおける体重測定は正確か?

e0156318_21563989.jpg 実看護的で興味深く読ませていただきました。

村田洋章ら
ICUにおける体重測定は正確か?
日集中医誌 2017;24:639-40.


概要:
 2013年7月から2014年2月に,スケールベッドで体重測定を行う施設Aと懸架で体重測定を行う施設Bの2施設のICU医師や看護師59名を対象として研究をおこなった。
 調査に同意が得られた対象者は,59名(施設A 29名,施設B 30名)で,男性25名,女性34名であった。スケールベッド・懸架ともに立位に対し相関係数0.99以上の高い相関を示した。スケールベッド・懸架ともに,ライン類装着により測定誤差が平均値で1.0~1.2 kgほど上昇したが,ライン類保持により,ライン類を装着せずに測定したレベルまで低下した。スケールベッドの測定誤差(−0.18±0.23~1.00±0.30)は,すべての測定状況において懸架の測定誤差(0.45±0.45~1.23±0.56)より小さい傾向にあった。
 スケールベッド・懸架による体重測定時に,ライン類を保持しなければ,立位による測定を対照とした体重測定誤差の平均値が1.0 kgを超えたが,ライン類を保持すると測定誤差が減少した。ICUにおける体重測定時に統一された方法でライン類を保持すれば,より正確度の高い体重測定を実施できることが示された。


by otowelt | 2017-12-19 00:57 | 集中治療

定量式フィットテストによるN95マスク選択

e0156318_2374935.jpg かなり興味深い論文です。こういった実臨床にマッチした報告は好きです。

鍋谷大二郎ら
定量式フィットテストによるN95マスク選択:当院の結果とプロトコール項目別解析
日呼吸誌, 6(6): 410-416, 2017


方法:
 2013年9月から4年間に当院で行われたN95マスク(4種)の定量式フィットテストの結果を後ろ向きに解析した.
 定量式フィットテストにはPorta-Count Pro+(TSI)が用いられ,3M1860 S/R(3M):金属ノーズクリップ付きカップ型,3M1870(3M):三面折り畳み構造,興研350(興研):接顔クッション付き・ゴム紐調節可カップ型,Moldex®1500 XS/S(Moldex-Metric):成形型ノーズブリッジ加工・保護シェル付きカップ型,の4種類のN95マスクでテストが行われた.
 フィットテストはPortaCount Pro+ に内蔵されているプログラムに従って行われた.具体的には,テスターに接続されたマスクを着けながら,OSHAプロトコール[①通常呼吸60秒,②深呼吸60 秒,③頭をゆっくり左右に振る60秒,④頭をゆっくり上下に振る60 秒,⑤声を出して指定された文章を読む60秒,※顔をしかめる15秒,⑥前傾姿勢(お辞儀)を繰り返す60 秒,⑦通常呼吸60 秒]に沿ってfit factor(マスク外気の粉塵数をマスク内気の粉塵数で除した数値:FF)の測定を行い,※を除いた各項目のFFから算出される総合FFが100 以上であれば合格,100未満の場合は不合格として判定されるものである.

結果:
 88人で延べ165回行われ,81人がいずれかのマスクで合格した.各マスクの合格率は46〜82%で男女差も認めた.不合格判定されたテストの64%で開始時から漏れを認め,テスト直前に行われていたシールチェックの限界が示唆された.合格判定されたテストの28%でテスト中の漏れを認めたが(特に前屈姿勢),ほとんど漏れを認めないマスクもあった.

結論:
 施設全体の合格率を上げるためには複数種類のマスク導入が望まれる.


by otowelt | 2017-12-01 00:03 | 集中治療

メタアナリシス;急性呼吸不全に対するネーザルハイフローは挿管率・死亡率に影響与えず

e0156318_13512197.jpg ネーザルハイフローに死亡率の改善効果はなく、挿管率にも有意差はないという帰結は、他のメタアナリシスでも同様です(Crit Care Med. 2017 Apr;45(4):e449-e456.)。
 ただ、CEHST誌のメタアナリシスでは挿管率は有意に減少させると報告されています(Chest. 2017 Apr;151(4):764-775. )。
 「どの患者をどこで使用するか」によって変わってくるので、まだ答えは出ていないようにも思います。

Lin SM, et al.
Does high-flow nasal cannula oxygen improve outcome in acute hypoxemic respiratory failure? A systematic review and meta-analysis.
Respir Med. 2017 Oct;131:58-64.


背景:
 急性呼吸不全の患者に対して、ネーザルハイフロー(HFNC)の挿管率や死亡率に対する効果を評価すること。

方法:
 われわれは、PubMedなどの電子データベースを用いて信頼性のある研究を抽出した。通常酸素療法または非侵襲性換気との比較でHFNCを用いた比較試験を2人のレビュアーがデータを抽出し、研究の質を評価した。プライマリアウトカムは挿管率とした。セカンダリアウトカムには院内死亡率が含まれた。

結果:
 8つのランダム化比較試験が登録され、1818人が含まれた。プール解析では、挿管率に有意な差は認められなかった(オッズ比0.79; 95%信頼区間0.60-1.04; P = 0.09; I2 = 36%)。また、院内死亡率にも差はみられなかった(オッズ比0.89; 95%信頼区間0.62-127; P = 0.51; I2 = 47%)。

結論:
 急性呼吸不全に対するHFNCは通常の酸素療法や非侵襲性換気と比較して、挿管率を下げる傾向にはあるが、統計学的には有意とは言えなかった。今後大規模な臨床試験の実施が望まれる。


by otowelt | 2017-10-17 00:10 | 集中治療

ワイヤレスDisposcope®による気管挿管

 Disposcope®は、要はスタイレットのかわりにマイクロカメラを通してリアルタイムに挿管するためのツールです。驚くべきことに、ワイヤレス。時代はここまで来たのですね。

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(YouTube:「DISPOSCOPE ENDOSCOPE INTU SYSTEM 」https://www.youtube.com/watch?v=fotgoFjyAO4より)

Chen PT, et al.
A randomised trial comparing real-time double-lumen endobronchial tube placement with the Disposcope® with conventional blind placement.
Anaesthesia. 2017 Sep;72(9):1097-1106. doi: 10.1111/anae.13984.


背景:
 ダブルルーメン気管内チューブの挿入は時に難しい。この研究は、ワイヤレスDisposcope®を用いて挿管する有用性を調べたものである。

方法:
 正常な気道を有する患者で、胸部外科手術前に挿管を要する人をランダムにワイヤレスDisposcope®群あるいは通常挿管群に割り付けた(各群27人)。挿管できたかどうかは気管支鏡を用いてその後確認した。

結果:
 Disposcope®群は有意に挿入までの時間が短かった(18.6±2.5秒 s vs. 21.4±2.9秒、p < 0.001)、また喉頭鏡使用から処置後聴診までの時間(83.4±3.0秒 vs. 93.9±5.7秒, p < 0.001)およびトータル処置時間(130.7±6.1秒 vs. 154.5±6.3秒, p < 0.001)も有意に短縮できた。Disposcope®群では全例正しい位置にチューブが留置できていたが、通常挿管では挿管位置不良が7.4%にみられた(胸部外科手術患者なので留置位置は通常とは異なる)。

結論:
 ワイヤレスDisposcope®はダブルルーメン挿管チューブを正しい位置に留置することができ、時間も短縮できる。


by otowelt | 2017-09-01 00:47 | 集中治療

12時間以上人工呼吸管理を受けたICU入室患者のストレス経験

e0156318_21563989.jpg 口渇、確かにそうですよね。

高島尚美ら.
12時間以上人工呼吸管理を受けたICU入室患者のストレス経験
日本集中治療医学会雑誌 Vol. 24 (2017) No. 4 p. 399-405


背景および方法:
 12時間以上人工呼吸管理を受けたICU入室患者のストレス経験の実態と関連要因を明らかにするために,ICU退室前に34項目のICU Stressful Experiences Questionnaire日本語版(ICU-SEQJ)を作成し,聞き取り調査をした。

結果:
 その実態は,8割近くが「口渇」を,7割近くが「動きの制限」や「会話困難」,「気管チューブによる苦痛」,「痛み」,「緊張」を中程度~非常に強い主観的ストレスとして経験していた。既往歴がない,緊急入室,有職者は有意にストレス経験が強く,重回帰分析では抜管前のCRP値が最も影響を与えており,気管挿管時間,鎮痛鎮静薬投与量,痛みの訴えは弱い関連があった。96名中,気管挿管に関する7項目の記憶がなかった患者は10名でストレス経験は有意に低く,関連要因はプロポフォール使用の多さと深鎮静と高齢だった。

結論:
 多くのICU入室患者にとってストレス経験は厄介で,入室状況や病歴によっても異なるため,看護師はニーズを予測しながら個別的にアセスメントし,ストレス経験緩和のための介入をする必要がある。


by otowelt | 2017-07-24 00:59 | 集中治療

重症患者に対するramped positionとsniffing positionの比較

 先日のATSでも注目を集めた演題です。
 ramped positionは傾斜体位ともいい、肥満患者で有効とされる体位です。ブログ「麻酔科勤務医のお勉強日記」(Q:ランプ・ポジション(ramp position)とは?)が分かりやすいです。
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Matthew W. Semler, et al.
A Multicenter, Randomized Trial of Ramped Position versus Sniffing Position during Endotracheal Intubation of Critically Ill Adults
Chest. 2017. doi:10.1016/j.chest.2017.03.061


背景:
 低酸素血症は、重症患者の気管挿管時にもっともよくみられる合併症である。ramped positionによる挿管は機能的残気量を増加させることによって低酸素血症を予防し、挿管時間を減らすことができるとされている。しかし、手術室外での評価はされていなかった。

方法:
 これは、気管挿管を適用された260人の成人患者における、ramped positionとsniffing positionを比較した多施設共同ランダム化比較試験である(2015年7月22日~2016年7月19日)。プライマリアウトカムは、挿管中および挿管後2分時の最低SaO2とした。セカンダリアウトカムには喉頭蓋可視Cormack-Lehane分類、挿管困難などが含まれた。

結果:
 最低SaO2の中央値は、ramped positionで93%(IQR84-99%)、sniffing positionで92%(IQR79-98%)だった(p=0.27)。ramped positionはCormack-Lehane分類グレードIIIあるいはIVの増加と関連していた(25.4% vs 11.5%, P = 0.01)。これにより挿管困難(12.3% vs 4.6%, P = 0.04), 初回挿管成功率(76.2% vs 85.4%, P = 0.02)に差がみられた。

結論:
 多施設共同研究では、重症患者に対するramped positionでの気管挿管は、sniffing positionと比較して挿管中の酸素化を改善しなかった。また、ramped positionは、喉頭蓋の可視化を悪化させ初回挿管成功率を低下させる懸念がある。


by otowelt | 2017-05-30 00:58 | 集中治療

ALI/ARDS治療早期にエラスポール®を用いると予後が改善する

e0156318_21563989.jpg 喧々囂々と専門家が議論されている分野なので、ノーコメントです。

Kido T, et al.
Efficacy of early sivelestat administration on acute lung injury and acute respiratory distress syndrome.
Respirology. 2017 May;22(4):708-713.


背景および目的:
 好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタットの急性肺傷害(ALI)・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する有効性はいまだ議論の余地がある。われわれは、ALI/ARDS患者に対するシベレスタット7日間の投与によって投与群・非投与群のエンドポイントを比較した。

方法:
 この研究は日本国内で2012年に実施された研究である。シベレスタット群と非シベレスタット群の死亡率を比較した。

結果:
 4276人の患者が本研究に登録され、入院7日までの間に1997人がシベレスタットで治療され、2279人がシベレスタット治療を受けなかった。交絡因子で補正すると、3ヶ月以内の死亡率はシベレスタット群の方が有意に低かった(重みづけハザード比0.83; 95%信頼区間0.75-0.93; P < 0.002)。多変量回帰分析では若年、非癌、血液透析の必要性がない、高用量メチエルプレドニゾロンの非使用、が有意に治療成功と相関していた。

結論:
 後ろ向きおよび観察研究の結果からは、ALI/ARDS発症から7日以内にシベレスタットを投与することで予後が改善する可能性が示唆される。われわれの知る限り、これは、ALI/ARDSに対するシベレスタットの効果を評価したもっとも大規模な研究である。


by otowelt | 2017-05-11 00:40 | 集中治療

プロカルシトニンはCRPと比べて真の菌血症と偽陽性の鑑別に役立つ

e0156318_22555653.jpg 個人的にはまだあまりプロカルシトニンを使っていません。

波多野 俊之ら.
菌血症診断におけるプロカルシトニンの有効性の検討
日本集中治療医学会雑誌 Vol. 24 (2017) No. 2 p. 115-120


目的:
 菌血症におけるプロカルシトニン(procalcitonin, PCT)の初期診断での有用性について,後方視的に解析した。

方法:
 2012年11月から2013年6月までの8ヶ月間において当院で血液培養検査が陽性となりPCTが測定されていた132例を調査対象とし,検出菌,PCTおよびC反応性蛋白(CRP)との関連性を評価した。

結果:
 感染症専門医により,菌血症102例,contamination(擬陽性)30例と判断された。菌血症と擬陽性でPCT(ng/ml)とCRP(mg/dl)の中央値は,それぞれ2.8と0.3,13.2と7.0であり,菌血症で有意に高かった(P<0.001,P=0.020)。ROC-AUC(95%信頼区間)は,PCT 0.76(0.65~0.86),CRP 0.64(0.52~0.76)だった。一方,菌血症の原因菌別でグラム陽性菌(n=48)とグラム陰性菌(n=54)のPCTは,それぞれ2.1と3.7で有意差を認めなかった(P=0.123)。

結論:
 PCTはCRPと比較して真の菌血症と擬陽性の鑑別に役立つと評価された。しかし,菌血症におけるグラム陽性菌とグラム陰性菌を鑑別できるものではなかった。


by otowelt | 2017-04-13 00:43 | 集中治療