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ICUの胸部レントゲンは毎日ルーチンで撮影する必要はない

2号前のLancetに
「ICUの胸部レントゲンは毎日ルーチンで撮影する必要はない」
という論文が掲載されていました。当院は焦げついた患者様ばかり
なので、必然的に毎日撮影しなければならないですが…

Comparison of routine and on-demand prescription of chest radiographs in mechanically ventilated adults: a multicentre, cluster-randomised, two-period crossover study
The Lancet, Volume 374, Issue 9702, Pages 1687 - 1693, 14 November 2009


概要:
 ICU収容の人工呼吸器装着患者に対してルーチンの
 胸部レントゲンを毎日行う群(ルーチン群)あるいは
 患者の病態により必要に応じて胸部X線検査を施行する群
 (オンデマンド検査群)の有効性および安全性を評価する
 クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施。

方法:
 フランスの18病院に付設された21ICUをルーチン群または
 オンデマンド検査群に無作為に割り付けて治療を行い(第1期)、
 その後2つの検査法を入れ替えて治療を実施(第2期)。
 各治療期間は個々のICUに20例の患者が登録されるまでとし、
 患者のモニタリングは退院あるいは人工呼吸器装着期間が
 30日に達するまで実施。

結果:
 ICUには967例が登録され、そのうち人工呼吸器装着期間が
 2日に満たない118例は除外。プライマリエンドポイントは、人工呼吸器
 装着例数×装着日数(人・日)当たりの胸部レントゲン平均施行数。

 第1期には、11のICUがルーチン検査群(222例)に、
 10のICUがオンデマンド検査群(201例)に無作為に割り付け。
 第2期には、第1期のルーチン検査群でオンデマンド検査
 (224例)が、オンデマンド検査群でルーチン検査(202例)が実施。

 全体で424例に4,607件のルーチンの胸部レントゲンが施行、
 平均検査施行数は1.09件/人・日であったのに対し、
 オンデマンドの胸部X線検査は425例に対して3,148件が施行され、
 平均検査施行数は0.75件/人・日であった(p<0.0001)。
 オンデマンド検査では、ルーチン検査に比べ胸部レントゲン数が
 32%低減した。装着日数、入院期間、死亡率は両検査で同等。

ディスカッション:
 これらの結果は、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対する
 胸部レントゲンは毎日ルーチンに行うのではなく、
 病態により必要に応じて施行する戦略を強く支持する。
 膨大な人工呼吸器装着患者の総数からみて、オンデマンド検査は
 日常診療に実質的なベネフィットをもたらす。

by otowelt | 2009-11-30 13:56 | 集中治療

ARDSにおいて腹臥位療法は生存率を改善させない

ARDSの腹臥位療法のランダム化試験の結果が
JAMAから出ている。

ALI/ARDS の患者を安静臥床させて呼吸管理すると、
肺の背側に無気肺が生じるため、腹側には過剰な陽圧が
かかって過膨張になることが知られている。
その状態で肺血流は重力の影響で背側に多くなり、
換気と血流の不均衡が生じる。この状態から体位を
腹臥位に変換すると、無気肺のない腹側肺への肺血流が増多し、
換気/血流のマッチングが改善すると考えられている。

――――これが理論である。

今まで、どちらかといえばARDSにおける腹臥位の
メリットの方が多いという趨勢であり、そのような論文も
多かった。
Prone positioning in patients with acute respiratory distress syndrome.
Respr Care Clin N Am 8: 237-245, 2002.
Prone position in acute respiratory distress syndrome.
Eur Respir J 20: 1017-1028, 2002.


Crit Care Medの有名なメタアナリシスでは、
死亡率は有意差はないものの、酸素化の改善を認めている。
Effect of prone positioning in patients with acute respiratory distress syndrome: A meta-analysis. Critical Care Medicine.2008; 36 (2): 603-609


このJAMAの論文は、生存率におけるベネフィットを否定するものである。
傾向としては、やや効果があるかと思うカーブだが
統計学的には残念ながらP valueは有意差ナシ、である。

Prone Positioning in Patients With Moderate and Severe Acute Respiratory Distress Syndrome  A Randomized Controlled Trial
JAMA. 2009;302(18):1977-1984.


背景:
 腹臥位療法は、ARDSにおける重症低酸素血症患者の生存率を
 改善する可能性があると考えられている。

目的・方法:
 多施設トライアルにより、ランダムにARDS 342人、重症低酸素血症を
 対象に、仰臥位と20時間/日の腹臥位療法に割り付けた。
 28日、6ヶ月死亡率をエンドポイントとした。

結果:
 28日死亡率・6か月死亡率はともに統計学的に同等であった
e0156318_14491729.jpg


結論:
 この試験により、ARDSにおける中等症~重症低酸素血症に対して
 腹臥位療法は生存率改善をもたらさないことがわかった。

by otowelt | 2009-11-11 14:51 | 集中治療

肺血症患者で、ウリナスタチンにチモシンα1を併用すると生存改善の可能性

J Intensive Care Medより。
チモシンα1についての話題。
チモシンα1は、胸腺組織で産生される胸腺因子の一つで、
免疫機能の維持に重要な役割を果たしているT細胞の
分化誘導作用を有するポリペプチドである。

A New Immunomodulatory Therapy for Severe Sepsis: Ulinastatin Plus Thymosin α1.
J Intensive Care Med 2009 24: 47-53


目的:
 肺血症患者においてウリナスタチンにチモシンα1を併用した
 免疫調節療法の効果について調べる。

方法:
 56人の敗血症患者を治療群とプラセボ群にランダム化。
 Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II scores、
 臨床データ、リンパ球分画、免疫インデックス、凝固系データが
 ICU入院3,8,28日目に採血された。

結果:
 治療群は78%が累積生存。プラセボは60%であった。この結果の違いは、
 Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II scores
 とリンパ球、凝固系、サイトカインレベルの早期改善がみられたためと思われる。
 
結論:
 肺血症患者においてウリナスタチンにチモシンα1を併用した
 免疫調節療法では、生存率の改善がみられる可能性があるため
 臨床試験の実施がのぞまれる。

by otowelt | 2009-03-17 14:13 | 集中治療

ALI治療4日目の輸液量制限は院内死亡率を低下

今週のJ Intensive Care Med より。
intensivist創刊号でもARDSが特集されているように、
今ARDSが熱いらしい。
ARDSの輸液管理による、”死亡率低下”という転帰を報告した論文。
survivalに差が出たことが掲載のきっかけになったのだろう。

Review of A Large Clinical Series: Association of Cumulative Fluid Balance on Outcome in Acute Lung Injury: A Retrospective Review of the ARDSnet Tidal Volume Study Cohort
J Intensive Care Med 2009 24: 35-46


目的:
 輸液による体液バランスがALIの予後にどの程度寄与するか調べた。

デザイン:
 prospective cohort studyであり、1996~1999のデータを集積。
 10のクリニカルセンター(24病院、75ICU)で調べられた。
 902人の登録のうち、844人に輸液バランスについての記載があった。
 (他の人のカルテはどこにいったんだろう・・・法律上は問題なし?)
 
方法:
 特に介入したわけでもなく、コホート研究である。
 
結果:
 683人が初日に3.5L以上の輸液をされている(positive fluid balance)
 しかしながら、161人がnegative fluid balance (P<.001)であった。
 治療4日目のnegative fluid balanceは、院内死亡率低下と有意に相関。
 (OR, 0.50; 95% CI, 0.28-0.89; P < .001)
 
結果:
 ALI治療4日目のNegative cumulative fluid balanceは院内死亡率を低下させる。


今回の論文はアブストラクトだけしか読んでいないが、
この内容は以前から言われていること。
NEJMのFACTT試験が有名である。
NEJM 2006. Comparison of Two Fluid-Management Strategies in Acute Lung Injury. The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network)
このFACTT試験では、
 positive balance:6992±502ml
 negative balance:-136±491ml であり、60日死亡率に差はなかったものの
negative群で28日間酸素化の改善、肺損傷改善がみられた。
negative balanceは、CVPが4cm水柱以下、PCWPが8cm水柱以下に保つよう
フロセミドを使用するという概要である。
FACTT試験の結果であと覚えておきたいのは、
肺動脈カテーテルの使用が中心静脈カテーテルの使用に比べて
不整脈などの合併症が2倍多かったこと
である。

今回の論文も示唆しているように、ALI治療開始してから
4日目には輸液量を下げていないと
院内死亡率が上昇する可能性があることになる??
臓器還流を考えた治療をせよ、ということを示唆しているわけだが。

surviving sepsis campaign2008では
ショック出現後6時間までは以下の通りにおこなう。
1.CVP8~12mmHg (人工呼吸器下では12-15mmHg)を目安に輸液
  ・具体的には:300~1000ml/30minで繰り返す
2.平均血圧≧65 mmHg,尿量≧0.5 mL/kg/hr,
  中心静脈酸素飽和度or混合静脈血酸素飽和度≧70%
  を満たすことを目標とする。

エビデンスレベル1Aの記述としては
「人工呼吸管理期間やICU入室期間を短縮する目的で、
臓器灌流低下のないALI患者で輸液を制限する戦略は推奨される。」
とある。


以上をふまえると、ARDS入院時には
敗血症が原因であればsurviving sepsis campaign2008の
early goal directed therapyにのっとった輸液をおこなう。
しかし、ARDSを併発している場合、FACTT試験にのっとって
初期輸液から、”しぼる輸液”へ漸減していく必要があると考えられる。

by otowelt | 2009-03-01 09:38 | 集中治療

ICU敗血症において、ピペラシリンのボーラス投与の方が持続点滴より血清濃度が高い

Critical Care Medicine:Volume 37(3)March 2009pp 926-933
Piperacillin penetration into tissue of critically ill patients with sepsis-Bolus versus continuous administration?


今週のCrit Care Med。
敗血症におけるピペラシリンの投与について、
ボーラス点滴がいいのか持続点滴がいいのかという論文。

目的:
 敗血症におけるピペラシリン投与では、days1、2にボーラスで
 投与することがあり、これが他の投与法より有用であるかどうかはわかっていない。
 Prospective randomized controlled trialで考察。

患者:
 918床ある病院のICU(18床)でおこなわれた。
 13人の患者がピペラシリン/タゾバクタムによる治療が妥当と思われた。
 このデータについて考察。

介入:
 ピペラシリン/タゾバクタムは、持続点滴が6人、ボーラスが7人。
 血清濃度は、day1とday2に測定された。

結果:
 平均ピペラシリン血清濃度(day1, day2)は、ボーラス群で有意に高かった。
 (8.9 vs. 4.9 mg/L; p = 0.078)(16.6 vs. 4.9 mg/L; p = 0.007)
 組織濃度は、day1,day2も特に大きな違いはみられなかった。
 (infusion group 2.4 mg/L vs. bolus group 2.2 mg/L; p = 0.48)
 (infusion group 5.2 mg/L vs. bolus group 0.8 mg/L; p = 0.45)

結果:
 ボーラス点滴のピペラシリンの方が血清濃度が高い。(組織濃度は差がない)


結局MICによるわけだが・・・・

ゾシンのホームページ(http://medical.taishotoyama.co.jp/zosyn/index.html)
4.5g1日3回が実現できたのは大きいかもしれない。重症なら1日4回。
PIPCで12gなので、治療する側としても嬉しいところである。

by otowelt | 2009-02-24 14:10 | 集中治療

ノルアドレナリンは市中発症敗血症性ショックの転帰を増悪させる可能性

sepsis survival campaign 2008では・・・
・ノルアドレナリンかドパミンが推奨されている。
・フェニレフリンとバゾプレシンは初期投与には推奨されていない。
・MAPが65-90mmHgになるように血管作働薬を使用する。
とのことだが、

・NAは他のカテコラミンと比較して死亡率 62% vs 82%
  Crit Care Med 2000;28:2758-65
・バゾプレシンとNAは同等の効果
  NEJM. vol. 358;877-887 Feb. 28 2008

そんな中、ポルトガルからの論文。

Influence of vasopressor agent in septic shock mortality. Results from the Portuguese Community-Acquired Sepsis Study (SACiUCI study). Critical Care Medicine:Volume 37(2)February 2009pp 410-416

目的:
 アドレナリン作用のある昇圧剤の使用のbest agentは、
 sepsis survival campaignでも結局結論という結論は出なかった。
 community-acquired septic shockの患者さんで、昇圧剤の使用による
 それぞれの死亡率への寄与を調査した。
 コホート研究。

患者:
 ICUに入院したseptic shockの患者

方法および結果:
 897人の患者がcommunity-acquired sepsisでICUに入室した。
 (平均63歳、577人が男性、hospiatl死亡率は38%)
 最終的に登録された458人の患者のうち、73%がノルアドレナリン、
 50.5%がドパミンを使用した。
 ノルアド群はドパミン群より死亡率が高かった(52% vs. 38.5%, p = 0.002)
 ノルアドは死亡リスクを上昇させる可能性も指摘
 (HR, 2.501; 95%CI 1.413-4.425; p = 0.002)
 
結論:
 ノルアドレナリンはICUにおける市中発症敗血症性ショック患者の転帰を増悪させる。


まぁ、こういう論文もあるという程度にとどめておくべきか???

by otowelt | 2009-02-12 15:18 | 集中治療