カテゴリ:集中治療( 183 )

重症患者において、TRALI発症は長期生存率減少の独立因子である

Long-Term Survival and Quality of Life After Transfusion-Associated Pulmonary Edema in Critically Ill Medical Patients.
CHEST April 2010 vol. 137 no. 4 783-789


背景および方法:
 輸血関連急性肺障害(TRALI)と、輸血関連循環過負荷(TACO)は、
 重症患者においてはよく知られている合併症である。
 TACOとTRALIにしぼった短期間での死亡率のスタディはあるが
 長期間での生存やQOLを観察したものは知られていない。
 TRALIかTACOに陥った患者の生存とQOLを検証した。

結果:
 74のTRALIのケースで入院時、1年後、2年後死亡率をコントロールと比較。
 それぞれ、TRALI vs controlで43.2% vs 24.3% (P = .020)、
 63.8% vs 46.4% (P = .037) 、74.3% vs 54.3% (P = .031)。
 51人のTACOでは同様に、7.8% vs 11.8% (P = .727)、
 38.0% vs 28.0% (P = .371)、44.9% vs 38.8% (P = .512)であった。 
 TRALIは死亡率と有意に相関(HR 1.86; 95% CI, 1.19-2.93; P = .006)。
 TACOは相関しなかった。
 またTRALIもTACOもICUあるいは在院日数に相関。
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結論:
 重症患者において、TRALI発症は長期生存率減少の独立因子である。
 TACOに関連性は認められない。

by otowelt | 2010-04-13 14:00 | 集中治療

ICUせん妄スクリーニングにはCAM-ICUが最も良い

ICUでのせん妄は、本当の意味で永遠のテーマだと個人的に思う。
「何でおとなしくしてくれへんねん!」と
挿管されている患者さんを見ながら思うことがしばしばある。

せん妄と不穏は異なることを知っておく必要がある。
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Cirt Care MedからICUせん妄のスクリーニングとして何が一番良いかという
検討がなされた論文が発表された。
結論としてはCAM-ICUが一番よかった。

Different assessment tools for intensive care unit delirium: Which
score to use?
Crit Care Med 2010; 38:409 – 418


CAM-ICU、Nu-DESC、DDSが有名だがそれらを以下のアルゴリズムの
ごとく検討をおこない、CAM-ICUに軍配をあげている。
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日本語版CAM-ICUというのもあり、出版されている。
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by otowelt | 2010-02-10 12:56 | 集中治療

ICUにおける栄養療法の実際はガイドラインの推奨と差がある

Nutrition therapy in the critical care setting: What is “best achievable”
practice? An international multicenter observational study
Crit Care Med 2010; 38:395– 401


目的:ICUにおける栄養療法の実際を記録することと、EBMに基づく
  Critical Care Nutrition Clinical Practice Guidelinesによる
  ”最大の達成”を究明することである。

デザイン:international, prospective, observational, cohort study

セッティング:158の成人ICU、20ヶ国

患者:2946人の最低72時間以上人工呼吸管理された成人患者

介入:入院時から退院あるいは最大12日の栄養記録の抽出

結果:Clinical Practice Guideline recommendationsの中でも
  アドヒアランスの高いものもみられた。
 ・静脈栄養よりも経腸栄養を使用する傾向にあった
 ・血糖コントロール
 ・アルギニンの少ない製剤
 ・低カロリー非経腸栄養
 しかしながら、他の推奨項目では有意に推奨と実際とに差がみられた。
 ・経腸栄養開始までの平均時間:46.5時間(site average range, 8.2–149.1時間)
 ・胃内残存が多い患者の消化管蠕動薬の使用:58.7%(site average range, 0–100%)
 ・胃内残存が多い患者の小腸栄養:14.7%(site average range, 0%–100%)

 平均の栄養療法の妥当率は59%であった。(site average range, 20.5%–94.4%)
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結論:
 ガイドラインで推奨されている項目のうち、高いアドヒアランスを保っている項目も
 あったが、ICUの栄養療法のうち多くの推奨で実際との差がみられた。

by otowelt | 2010-02-05 09:19 | 集中治療

BMI増加はARDS発症を増加させるが死亡率は増加させない

つまり、肥満が関連するARDSは予後がいいということの裏返しになるわけか。
当院に肥満のARDSがかなり続いた時期があったが、予後は何ともいえなかった。
そもそも肥満のARDSは、本来のDADとは異なるのではないだろうか。
気温が少し上がるだけで、Fが増えてP/F ratioもなんか低くなるし…。

Body mass index is associated with the development of acute respiratory distress syndrome
Thorax 2010;65:44-50


背景:
 body mass index (BMI)とARDSの関係は知られていない。

方法:
 コホートスタディにおいて、ARDSのリスクを抽出。
 BMIは入室時に身長と体重から計算。
 患者はAECCの定義したARDSによって日々スクリーニングされ、
 60日死亡率を計算した。

結果:
 1795の患者のうち83人(5%)はBMI <18.5 kg/m2であり、627人(35%)
 はBMI 18.5–24.9、605人 (34%)はoverweight (BMI 25–29.9)
 364人 (20%) はobese (BMI 30–39.9) 116人(6%) は
 severely obese(BMI ≥40)であった。
 体重増加は若年(p<0.001)、糖尿病(p<0.0001)、高血糖 (p<0.0001)
 lower prevalence of direct pulmonary injury (p<0.0001)
 later development of ARDS (p = 0.01)と関連していた。
 パラメータとしてのBMIはARDS発症と有意に相関していた。
 (OR 1.24 per SD increase; 95% CI 1.11 to 1.39)
 同様に肥満(obesity)は正常体重に比べてこれも有意にARDSに相関
 (OR 1.66; 95% CI 1.21 to 2.28 for obese;
  OR 1.78; 95% CI 1.12 to 2.92 for severely obese)。
  ARDS患者において、BMI増加は入室日数の増加と関連していたが(p = 0.007)、
 死亡率とは関連性がなかった(OR 0.89 per SD increase; 95% CI 0.71 to 1.12)。
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結論:
 BMIはARDS発症のリスクであり、入室日数を増加させる危険性があるが
 死亡率は上昇させない。

by otowelt | 2010-01-30 07:30 | 集中治療

ハロペリドールが必要なせん妄患者へクエチアピンを使用することの有益性

Efficacy and safety of quetiapine in critically ill patients with
delirium: A prospective, multicenter, randomized, double-blind,
placebo-controlled pilot study
Crit Care Med 2010; 38:419–427


目的:
 クエチアピン(セロクエル)とプラセボを比較することによって
 集中治療の現場でハロペリドール(セレネース)が必要な患者への
 せん妄の効果を検証する。

デザイン:
 Prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study

患者: 
 36のICU入室成人患者で検証。
 Intensive Care Delirium Screening Checklist score >4 の
 せん妄患者を対象としている。ただし、経腸栄養が可能で
 神経学的に合併症のない患者を対象とする。

介入:
 クエチアピン50mg12時間ごとあるいはプラセボに割り付け。
 クエチアピンはハロペリドールが前の24時間で1回以上投与された場合に
 24時間ごとに増量していく。
 せん妄が解消したと判断した場合、10日以上の治療、ICU退院
 を満たしたとき介入中止とする。

結果:
 クエチアピンはせん妄初回解消までの期間と有意に相関。
 [1.0day IQR, 0.5–3.0) vs.4.5 days (IQR, 2.0 –7.0; p =.001)]
 また、せん妄期間そのものも短縮した。
 [36hours (IQR, 12–87) vs. 120 hrs (IQR, 60–195; p =.006)]
 Sedation-Agitation Scale score ≧5 を満たす時間も少なかった。
 [6 hours (IQR, 0–38) vs.36 hrs (IQR, 11–66; p =.02)]
 死亡率に関してはクエチアピン11%、プラセボ17%。
 ICU在室日数は16日と同等。
 QTc延長や錐体外路症状は両群とも同等。
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結論:
 ハロペリドールを用いたせん妄管理にクエチアピンを使用することは
 せん妄短縮、退院・リハビリにとって有益である。

by otowelt | 2010-01-28 16:28 | 集中治療

抜管時の喉頭浮腫予防目的のためのステロイド使用

喉頭癌の既往があったり、アナフィラキシーで挿管されたり、、、
といったときに抜管時にステロイドを使うべきかどうかという問題がある。
当院では、全例には行なっていない。

2009年の論文では、以下のものが有名。

Corticosteroids to prevent extubation failure: a systematic review and meta-analysis
Int Care Med 2009


方法:
 Medline、EMBASE、the Cochrane Central Register of Controlled Trials、
 文献、学会の抄録、未発表データベース、これらから検索を実施。
 2人の著者らがそれぞれ別々に、研究の有効性、研究の特徴に関して抽出した
 データの有効性、再挿管率と喉頭浮腫の特徴について評価。

結果:
 14のRCTで2600人の患者が対象となった。
 抜管前の人工呼吸管理期間は平均で3~21日であった。Corticosteroids投与
 により再挿管を減らすことが示された(OR; 0.56, 95%CI; 0.41-0.77, p<0.0005)。  
 Corticosteroidsの効果は、抜管の少なくとも12時間前に投与することで
 顕著になる傾向にあった(OR; 0.41, 95%CI; 0.26-0.64)。またCorticosteroidsを
 投与された場合、喉頭浮腫率も低下(OR; 0.36, 95%CI; 0.27-0.49, p<0.0005)。

結論:
 Corticosteroidsは喉頭浮腫発生を減らし、全年齢層の重症患者での
 extubation failure発生率をも減らす。


ここで問題になるのが、どのくらいのステロイドを使用するか、である。
もっともよく引用されているのがLancetの論文で、
メチルプレドニゾロンを12時間前から4時間ごとに20mgずつ投与するものである。

12-h pretreatment with methylprednisolone versus placebo for prevention of postextubation laryngeal oedema: a randomised double-blind trial
The Lancet 2007; 369:1083-1089


これは698名(プラセボ343名、methylprednisolone群 355名)を検討し、
有意に抜管後喉頭浮腫発生減少(11/355 3% vs 76/343 22% p<0.0001)
させることを示した論文である。

by otowelt | 2010-01-03 01:34 | 集中治療

ARDSにおけるリクルートメント手技は循環動態を変動させる

人工呼吸器でリクルートメント手技というテクニックがあり、
当院でも頻用している。

参照:ARDS/ALIにおけるリクルートメント手技

Journal of Intensive Care Medicine最新号で
リクルートメント手技と循環動態の関連について論文が出ていた。

Acute Hemodynamic Effects of Recruitment Maneuvers in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome
Journal of Intensive Care Medicine, Vol. 24, No. 6, 376-382 (2009)


背景:
 リクルートメント手技は、ARDSにおいて循環動態を変動させうる。
 私たちは、このリクルートメント手技の間の循環動態の変化を評価した。

方法:
 リクルートメント手技として、40cmH2O・30秒のsustained inflation
 を22人のARDS患者におこなった。血圧と心拍数は手技後30秒間の間
 10秒ごとに記録され、また左室径はMモードエコーで計測され、また
 ドプラ心エコーで機能評価した。

結果:
 平均の収縮期および拡張期血圧は20~30秒間減少した。(mean BP: 92 ± 12
 at baseline to 83 ± 18 mm Hg at the end of the RM, P < .05)
 その後、それぞれのパラメータは改善した。心拍数は手技中10~20秒間減少、
 その後改善傾向にあった。左室径は手技中明らかに減少した。
 left ventricular ejection fraction およびpeak velocityは大きな変化なかった。
 静肺コンプライアンスは、平均血圧変動が15%以上の患者の方が、15%未満の患者
 よりも低い傾向にあった(P < .05)。
 
結論:
 リクルートメント手技により平均血圧が減少するが、その程度は
 心機能が保たれていても前負荷の状態に相関する。

by otowelt | 2009-12-08 22:53 | 集中治療

ICUの胸部レントゲンは毎日ルーチンで撮影する必要はない

2号前のLancetに
「ICUの胸部レントゲンは毎日ルーチンで撮影する必要はない」
という論文が掲載されていました。当院は焦げついた患者様ばかり
なので、必然的に毎日撮影しなければならないですが…

Comparison of routine and on-demand prescription of chest radiographs in mechanically ventilated adults: a multicentre, cluster-randomised, two-period crossover study
The Lancet, Volume 374, Issue 9702, Pages 1687 - 1693, 14 November 2009


概要:
 ICU収容の人工呼吸器装着患者に対してルーチンの
 胸部レントゲンを毎日行う群(ルーチン群)あるいは
 患者の病態により必要に応じて胸部X線検査を施行する群
 (オンデマンド検査群)の有効性および安全性を評価する
 クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施。

方法:
 フランスの18病院に付設された21ICUをルーチン群または
 オンデマンド検査群に無作為に割り付けて治療を行い(第1期)、
 その後2つの検査法を入れ替えて治療を実施(第2期)。
 各治療期間は個々のICUに20例の患者が登録されるまでとし、
 患者のモニタリングは退院あるいは人工呼吸器装着期間が
 30日に達するまで実施。

結果:
 ICUには967例が登録され、そのうち人工呼吸器装着期間が
 2日に満たない118例は除外。プライマリエンドポイントは、人工呼吸器
 装着例数×装着日数(人・日)当たりの胸部レントゲン平均施行数。

 第1期には、11のICUがルーチン検査群(222例)に、
 10のICUがオンデマンド検査群(201例)に無作為に割り付け。
 第2期には、第1期のルーチン検査群でオンデマンド検査
 (224例)が、オンデマンド検査群でルーチン検査(202例)が実施。

 全体で424例に4,607件のルーチンの胸部レントゲンが施行、
 平均検査施行数は1.09件/人・日であったのに対し、
 オンデマンドの胸部X線検査は425例に対して3,148件が施行され、
 平均検査施行数は0.75件/人・日であった(p<0.0001)。
 オンデマンド検査では、ルーチン検査に比べ胸部レントゲン数が
 32%低減した。装着日数、入院期間、死亡率は両検査で同等。

ディスカッション:
 これらの結果は、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対する
 胸部レントゲンは毎日ルーチンに行うのではなく、
 病態により必要に応じて施行する戦略を強く支持する。
 膨大な人工呼吸器装着患者の総数からみて、オンデマンド検査は
 日常診療に実質的なベネフィットをもたらす。

by otowelt | 2009-11-30 13:56 | 集中治療

ARDSにおいて腹臥位療法は生存率を改善させない

ARDSの腹臥位療法のランダム化試験の結果が
JAMAから出ている。

ALI/ARDS の患者を安静臥床させて呼吸管理すると、
肺の背側に無気肺が生じるため、腹側には過剰な陽圧が
かかって過膨張になることが知られている。
その状態で肺血流は重力の影響で背側に多くなり、
換気と血流の不均衡が生じる。この状態から体位を
腹臥位に変換すると、無気肺のない腹側肺への肺血流が増多し、
換気/血流のマッチングが改善すると考えられている。

――――これが理論である。

今まで、どちらかといえばARDSにおける腹臥位の
メリットの方が多いという趨勢であり、そのような論文も
多かった。
Prone positioning in patients with acute respiratory distress syndrome.
Respr Care Clin N Am 8: 237-245, 2002.
Prone position in acute respiratory distress syndrome.
Eur Respir J 20: 1017-1028, 2002.


Crit Care Medの有名なメタアナリシスでは、
死亡率は有意差はないものの、酸素化の改善を認めている。
Effect of prone positioning in patients with acute respiratory distress syndrome: A meta-analysis. Critical Care Medicine.2008; 36 (2): 603-609


このJAMAの論文は、生存率におけるベネフィットを否定するものである。
傾向としては、やや効果があるかと思うカーブだが
統計学的には残念ながらP valueは有意差ナシ、である。

Prone Positioning in Patients With Moderate and Severe Acute Respiratory Distress Syndrome  A Randomized Controlled Trial
JAMA. 2009;302(18):1977-1984.


背景:
 腹臥位療法は、ARDSにおける重症低酸素血症患者の生存率を
 改善する可能性があると考えられている。

目的・方法:
 多施設トライアルにより、ランダムにARDS 342人、重症低酸素血症を
 対象に、仰臥位と20時間/日の腹臥位療法に割り付けた。
 28日、6ヶ月死亡率をエンドポイントとした。

結果:
 28日死亡率・6か月死亡率はともに統計学的に同等であった
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結論:
 この試験により、ARDSにおける中等症~重症低酸素血症に対して
 腹臥位療法は生存率改善をもたらさないことがわかった。

by otowelt | 2009-11-11 14:51 | 集中治療

肺血症患者で、ウリナスタチンにチモシンα1を併用すると生存改善の可能性

J Intensive Care Medより。
チモシンα1についての話題。
チモシンα1は、胸腺組織で産生される胸腺因子の一つで、
免疫機能の維持に重要な役割を果たしているT細胞の
分化誘導作用を有するポリペプチドである。

A New Immunomodulatory Therapy for Severe Sepsis: Ulinastatin Plus Thymosin α1.
J Intensive Care Med 2009 24: 47-53


目的:
 肺血症患者においてウリナスタチンにチモシンα1を併用した
 免疫調節療法の効果について調べる。

方法:
 56人の敗血症患者を治療群とプラセボ群にランダム化。
 Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II scores、
 臨床データ、リンパ球分画、免疫インデックス、凝固系データが
 ICU入院3,8,28日目に採血された。

結果:
 治療群は78%が累積生存。プラセボは60%であった。この結果の違いは、
 Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II scores
 とリンパ球、凝固系、サイトカインレベルの早期改善がみられたためと思われる。
 
結論:
 肺血症患者においてウリナスタチンにチモシンα1を併用した
 免疫調節療法では、生存率の改善がみられる可能性があるため
 臨床試験の実施がのぞまれる。

by otowelt | 2009-03-17 14:13 | 集中治療