カテゴリ:感染症全般( 361 )

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の急性期治療の比較:プレドニゾロン vs イトラコナゾール

e0156318_16301050.jpg ABPAの大家Agarwal教授の新しい論文です。ステロイド vs ステロイド+イトラコナゾールの比較にしなかった理由として、論文中に純粋にステロイドとイトラコナゾールのガチンコ比較をしたかったと書いておられます。

Agarwal R, et al.
A randomized trial of itraconazole versus prednisolone in acute-stage ABPA complicating asthma.
Chest. 2018 Jan 10. pii: S0012-3692(18)30077-1. doi: 10.1016/j.chest.2018.01.005. [Epub ahead of print]


背景および目的:
 急性期アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)に対するイトラコナゾール単独療法の効果は不明である。本研究において、イトラコナゾール単独療法およびプレドニゾロン単独療法のの効果と安全性を調べた。

方法:
 喘息を合併したABPA患者(イトラコナゾール非投与例)に対して、経口イトラコナゾールあるいはプレドニゾロンを4ヶ月投与した(2012年1月~2013年12月)。なお、本研究は盲検化されなかった。プライマリアウトカムは、6週間後の複合アウトカム(咳嗽・呼吸困難の改善[75%超]、放射線学的所見の改善[50%超]、血清IgEの減少[25%超])6週間後と3ヶ月後の治療後IgE減少率(%)、3ヶ月後と6ヶ月後の完全寛解、1年後と2年後にABPA増悪を経験した患者数とした。セカンダリアウトカムには、初回の増悪までの期間、肺機能変化、治療関連有害事象が含まれた。

イトラコナゾールレジメン:
 200mg1日2回を4ヶ月内服。制酸剤併用は許可しなかった。

プレドニゾロンレジメン:
 0.5mg/kg/dayを4週間、0.25mg/kg/dayを4週間、0.125mg/kg/dayを4週間。その後2週ごとに5mgずつ減量し、中止。合計4ヶ月内服。


※両レジメンとも喘息コントロールのための吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬の使用は許可された。

結果:
 131人(プレドニゾロン63人、イトラコナゾール68人)が研究に組み込まれた。複合アウトカム(咳嗽・呼吸困難の改善[75%超]、放射線学的所見の改善[50%超]、血清IgEの減少[25%超])を満たした患者数は、プレドニゾロン群の方がイトラコナゾール群よりも多かった(100% vs. 88%; p=0.007)。6週間後と3ヶ月後にIgEの減少がみられた頻度、1年後と2年後にABPA増悪を経験した患者数は両群同等だった。増悪までの期間、肺機能検査についても両群同等だった。副作用はステロイド群の方が多かった(多毛、Cushing様体型、体重増加など)。
e0156318_16264292.png
(文献より引用)

結論:
 急性期ABPAの治療においてプレドニゾロンはイトラコナゾールよりも反応が良好であった。しかしながら、イトラコナゾールも効果的であり、プレドニゾロンより副作用が少なかった。そのため、ABPAの初期治療の代替として魅力的である。


by otowelt | 2018-02-02 00:08 | 感染症全般

ヒトメタニューモウイルスはRSウイルスより肺炎が多い

e0156318_12513269.jpg ヒトメタニューモウイルスは咳が強いです(体験談)。

山根 侑子ら.
RSウイルス,ヒトメタニューモウイルス感染症入院例の胸部単純X線写真と重症度の検討
感染症誌 91: 943~947, 2017


背景:
 RSウイルス(RSV)感染症とヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症の胸部単純X線所見や重症度については,まだ一定の見解を得られていない.

方法:
 我々は,2014年4月から2015年3月までの1年間に広島市立舟入市民病院小児科に入院したRSV迅速検査陽性例,hMPV迅速検査陽性例を対象として,両ウイルス感染症の胸部単純X線所見と臨床像を検討した.

結果:
 胸部単純X線写真で肺炎所見を認めた例(肺炎例)は,RSV陽性31/126例(24.6%),hMPV陽性31/73例(42.5%)で,hMPV陽性において有意に多かった(p<0.01).RSV陽性肺炎例とhMPV陽性肺炎例の,努力呼吸の有無,入院時SpO2値,血清CRP値,入院日数を比較すると,いずれもほぼ同様であった.また,RSV陽性とhMPV陽性のそれぞれで,肺炎例と肺炎所見がなかった例に分けて臨床像を比較すると,RSV陽性,hMPV陽性ともに肺炎例の入院時SpO2値が低く,血清CRP値が高い傾向があったが,その差はごくわずかであった.努力呼吸の有無と入院日数は有意差がなかった.

結論:
 以上より,hMPV陽性例はRSV陽性例より肺炎の頻度が高いが,重症度は同程度であり,肺炎の有無によっても重症度に明らかな差は生じないことが示唆された.


by otowelt | 2018-01-12 00:30 | 感染症全般

頻回にサウナを使用すると肺炎リスクが減少する

e0156318_8265125.jpg ほんまでっか論文。
 研究グループのKunutsorらは、フィットネスと組み合わせると循環器系疾患の死亡リスクも減少させるという研究結果も発表しています(Ann Med. 2017 Oct 16:1-8. )。

Setor K. Kunutsor, et al.
Frequent sauna bathing may reduce the risk of pneumonia in middle-aged Caucasian men: The KIHD prospective cohort study
Respiratori Medicine, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.rmed.2017.10.018


目的:
 サウナは、さまざまな健康的利益があるとされている。頻繁にサウナに入ることは、急性・慢性疾患のリスクを軽減することが示されてきた。サウナは呼吸器疾患のリスクを減らす可能性があるが、エビデンスは不透明である。われわれは、サウナと肺炎リスクの関連について調べた。

方法:
 前向きコホートで同定した42~61歳の2210人の男性において、ベースラインのサウナ使用頻度を聴取した。

結果:
 中央値25.6年の追跡期間のなかで、375の肺炎が記録された。年齢で補正すると、週1回以下サウナを使用する人と比べると、1週間に2~3回サウナを使用する人の肺炎リスクはハザード比0.67(95%信頼区間0.53-0.83)、週4回以上サウナを使用する人の肺炎リスクはハザード比0.53(95%信頼区間0.34-0.84)だった。主要なリスク因子でさらに補正しても、ハザード比は統計学的に有意のままであった(それぞれハザード比0.69[95%信頼区間0.55-0.86]、0.56[95%信頼区間0.35-0.88])。さらに、総カロリー摂取量、社会経済的ステータス、身体活動性、CRP値で補すると、ハザード比はそれぞれ0.72(95%信頼区間0.57-0.90)、0.63(95%信頼区間0.39-1.00)となった。

結論:
 白人の中年男性は、頻回にサウナを使用することで肺炎のリスクが減少する。


by otowelt | 2017-11-10 00:09 | 感染症全般

市中肺炎においてクラミドフィラは本当にコモンなのか?

e0156318_12513269.jpg 京都の感染症学会で発表されていたように記憶しています。足を運んだのでよく覚えています。
 実臨床では、自信を持ってクラミドフィラ肺炎ですと言える人に遭遇しません。

Shingo Noguchi, et al.
Frequency of detection of Chlamydophila pneumoniae using bronchoalveolar lavage fluid in patients with community-onset pneumonia
Respiratory Investigation, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.resinv.2017.08.003


背景:
 Chlamydophila pneumoniae(クラミドフィラ)は、下気道感染症の病原微生物であり、健康で若年の患者によくみられるとされている。しかしながら、病原体を保菌している例もあり、気道検体や喀痰検体を用いて急性クラミドフィラ肺炎を評価することは困難である。市中肺炎におけるC. pneumoniaeが同定される頻度についてはデータが不足しており、この研究では気管支肺胞洗浄液を用いてC. pneumoniaeの存在を評価した。

方法:
 147人の肺炎患者のBALF検体を後ろ向きに調べ、C. pneumoniaeはPCRを用いて評価された。

結果:
 異なる2セットの特異的プライマーを用いてもC. pneumoniaeのPCRが陽性になった検体がなかった。
 これらの患者のうち、92人に血清抗体価が測定されているが、シングル血清のクラミドフィラ肺炎の基準を満たした人が8人(14.8%)いた。ただし、ペア血清で評価可能だった37人のうち抗体価の上昇がみられていたのは1人(2.7%)だけだった。しかも、その1人は培養からインフルエンザ桿菌が生育した。
e0156318_1526226.jpg


結論:
 下気道検体の評価によれば、市中肺炎においてC. pneumoniaeは頻度の低い病原微生物であると考えられる。。


by otowelt | 2017-10-30 00:09 | 感染症全般

胸部レントゲン写真が正常の市中肺炎の臨床像

e0156318_12513269.jpg 面白い着眼点の前向き研究です。

Cameron P. Upchurch, et al.
Community-acquired Pneumonia Visualized on Computed Tomography but Not Chest X-Ray: Pathogens, Severity, and Clinical Outcomes
CHEST DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2017.07.035


背景:
 胸部CTで同定できるものの胸部レントゲン写真が正常の肺炎の臨床的重要性については不明である。

方法:
 市中肺炎で入院した成人患者に対する多施設共同前向きサーベイランスにおいて、われわれは胸部CTで同定できるが胸部レントゲン写真が正常の肺炎患者の臨床的特徴・病原微生物・アウトカムを通常の市中肺炎と比較した。

結果:
 2251人の市中肺炎患者が登録され、2185人(97%)が胸部レントゲン写真で肺炎を有しており、66人(3%)が胸部CTのみで肺炎が同定された。胸部CTのみで肺炎が同定された患者の臨床的プロファイルは、通常の市中肺炎と同等だった(合併症、バイタルサイン、入院期間、ウイルス性の頻度[30% vs 26%]、細菌性の頻度[12% vs 14%]、ICU入室[23% vs 21%]、人工呼吸器装着[6% vs 5%]、敗血症性ショック[5% vs 4%]、院内死亡率[0% vs 2%])。

結論:
 胸部レントゲン写真で同定されないものの胸部CTで同定される成人市中肺炎患者の病原微生物・疾患重症度・アウトカムは、通常の市中肺炎患者と同等であった。


by otowelt | 2017-09-06 00:45 | 感染症全般

雑誌の紹介:J-IDEO

 すでにその名を知られるようになった感染症学雑誌、J-IDEO
 錚々たる面子の中、4号目のスペシャルトピックをわたくしめ倉原が書かせていただきました。少しテイストを変えて、堅苦しくない読み物にしました。「呼吸器科の最後の砦で出合う感染症たち」というタイトルにしたところ、それをもとに憧れの石川雅之先生に素敵なイラストを描いていただきました。大好きな漫画家さんだったので、感動のあまり泣きそうになりました。

e0156318_17214973.jpg

発売日:2017年9月10日
出版社 : 中外医学社

e0156318_13141310.jpg中外医学社ページ

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する


by otowelt | 2017-09-02 00:18 | 感染症全般

ベンゾジゼピンは肺炎のリスクを上昇させる

e0156318_12513269.jpg 今後、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬がさらに普及してくるでしょうか。

Chen TY, et al.
The use of benzodiazepine receptor agonists and the risk of pneumonia hospitalization: a nationwide population-based, nested case-control study.
Chest. 2017 Aug 4. pii: S0012-3692(17)31326-0. doi: 10.1016/j.chest.2017.07.030.


背景:
 ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BZRA)の使用と肺炎のリスクの関連性はまだ結論がついていない。この研究は、一般人口集団におけるBZRA使用と肺炎の関連性を調べたものである。

方法:
 2002~2012年の台湾国民健康保険データベースを用いて、コホート内症例対照研究を実施した。われわれは、新規にBZRAを処方された患者のみを登録し、過去に使用歴のあるものは除外した。また、肺炎患者は入院を要した12002人を同定し、リスクスコアをマッチさせたコントロールを別に12002人設定した。ロジスティック回帰モデルを用いてBZRA使用と入院を要する肺炎の関連性を調べた。曝露日、用量反応関係、BZRAのクラスが包括的にアセスメントされた。

結果:
 BZRAの現行使用は、入院を要する肺炎のリスク上昇と関連していた(補正オッズ比1.86; 95%信頼区間1.75-1.97)。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬よりも肺炎のリスクが高かった(補正オッズ比2.42; 95%信頼区間2.16-2.71 vs 補正オッズ比1.53; 95%信頼区間1.44-1.63)。肺炎リスクは、超短時間作用性および短~中時間作用性BZRAを内服している場合、1日用量が多い場合、BZRAの使用種類が多い場合に上昇した。個々のBZRAをみると、ミダゾラムが入院を要する肺炎のリスクが最も高かった(補正オッズ比5.77; 95%信頼区間4.31-7.73)。

結論:
 BZRAの現行使用は入院を要する肺炎のリスクを用量依存的に上昇させた。加えて、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、特にミダゾラムは、入院を要する肺炎のリスクを大きく上昇させた。


by otowelt | 2017-08-18 00:32 | 感染症全般

脳卒中は膿胸のリスクである

e0156318_10322082.jpg リスクは当然高くなりますが、脳出血の方がリスキーのようです。

Shen TC, et al.
Risk of developing pleural empyema in patients with stroke: a propensity-matched cohort study.
Intern Emerg Med. 2017 Jul 11. doi: 10.1007/s11739-017-1707-8.

背景:
 膿胸は肺炎の重要な合併症である。脳卒中は肺炎の高いリスク因子であるが、膿胸との関連は分かっていない。

方法:
 われわれは台湾のNational Health Insurance Research Databaseを用いて、2000年から2010年までに脳卒中の診断を受けた46万6170人と傾向スコアマッチされた同数の非脳卒中群を登録した。膿胸の発生は2011年まで追跡された。Cox比例ハザードモデルを用いて、脳卒中群における膿胸の補正ハザード比が非脳卒中群と比較された。

結果: 
 非脳卒中群と比べて、膿胸は脳卒中群で2.69倍高かった(15.2 vs. 5.59/10,000 人年, p < 0.001、補正ハザード比2.89 [95%信頼区間2.72-3.08])。虚血性脳卒中の場合、補正ハザード比は2.62だった(95%信頼区間2.45-2.79)。また、脳出血の場合、補正ハザード比は4.53だった(95%信頼区間4.14-4.95)。加えて、VPシャントのある脳卒中患者は膿胸のリスクが7倍以上となった。

結論:
 脳卒中は膿胸のリスクを上昇させる。このリスクは、脳出血のほうが虚血性脳卒中よりも高かった。


by otowelt | 2017-07-27 00:32 | 感染症全般

小児の肺炎の診断に肺エコーは有用

e0156318_10322082.jpg 僻地の診療では肺エコーが主流になるかもしれませんね。エコーシステムを確立する方がコストは少ないでしょう。

Ellington LE, et al.
Lung ultrasound as a diagnostic tool for radiographically-confirmed pneumonia in low resource settings.
Respir Med. 2017 Jul;128:57-64.


背景:
 肺炎は小児における罹患・死亡の重要な原因であるが、その診断はとくに専門家や標準画像検査が不足した地域では厳しい。われわれは、小児肺炎の診断における肺エコーを放射線学検査と比較した。

方法:
 2012年1月から2013年9月までの間、われわれは生後2~59ヶ月の呼吸器症状を呈して救急部を受診した外来小児患者を登録した(ペルー・リマ)。全患者は、肺エコーを適用された。また、呼吸器症状を呈していない小児も本研究に登録した。呼吸器症状のある小児は胸部レントゲン写真が撮影された。一部の小児には血液検査もおこなった。

結果:
 453人の肺炎の小児、133人の喘息の小児、103人の細気管支炎の小児、143人の上気道炎の小児が登録された。胸部レントゲン写真は、臨床的に肺炎と考えられた453人のうち191人(42%)で診断が可能だった。肺エコーによるコンソリデーションを肺炎のプライマリエンドポイントとした場合、感度88.5%、特異度100%で、AUC0.94(95%信頼区間0.92-0.97)だった。肺エコーで何かしらの異常がみられた場合、感度92.2%、特異度95.2%、AUCは同じく0.94だった(95%信頼区間0.91-0.96)。

結論:
 肺エコーは胸部レントゲン写真で同定された肺炎に対して高い診断能をもつ。小児の肺炎において肺エコーは有用である。


by otowelt | 2017-07-12 00:16 | 感染症全般

肺アクチノミセス症の臨床的検討

e0156318_95584.jpg まれな呼吸器感染症に関する報告は少ないです。

Zhang, M, et al.
Primary pulmonary actinomycosis: a retrospective analysis of 145 cases in mainland China
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 21, Number 7, 1 July 2017, pp. 825-831(7)

目的:
 肺アクチノミセス症について理解を深めること。

方法:
 後ろ向きに中国で145人の症例を抽出した。

結果:
 男女比は2.7:1で、診断時平均年齢は48±12歳だった。主症状は咳嗽(87.6%)、喀痰(40%)、血痰(37.2%)、発熱(26.9%)、胸痛(24.8%)、喀血(16.6%)だた。88人(60.7%)は基礎疾患を有していなかった。5人のみが初期診断が正しく、60人は肺がん、肺結核、肺膿瘍などと誤認されていた。ほとんどの患者は外科的手術や気管支鏡検査で診断がついた。67人の患者はペニシリンGを受け、1人は外科手術のみで抗菌薬投与を受けなかった。抗菌薬の平均治療期間は4.5±3.7ヶ月で、110人(75.9%)が完全に治癒し、4人が死亡した。平均フォローアップ期間は26±32か月だった。

結論:
 肺アクチノミセス症は稀な疾患であり、しばしば肺がんや肺結核と誤認される。ペニシリンGが標準的治療法であるが、適切な治療期間はこれからの検討課題であろう。


by otowelt | 2017-07-11 00:54 | 感染症全般