カテゴリ:感染症全般( 348 )

RSウイルスに対するパリビズマブのアウトブレイク予防の可能性

RSウイルスは小児病棟ではアウトブレイクの原因となる。
しばしばNICUでもアウトブレイクを引き起こす。
早産児や新生児に重大な影響を与える可能性があるため、注意が必要である。

RSウイルスの名の由来は、呼吸器(Respiratory)感染患者から分離され、感染細胞が
多核巨細胞(合胞体(Syncytium))を形成するという特徴から。
Mononegavirales門パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)の
Pneumovirus属に分類される。
パラミクソウイルス科に属するウイルスには、パラインフルエンザウイルス、
麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど。
RSウイルスにはAとBの血清型があり(A型のほうが重症!)、
さらに各血清型に多くの遺伝子型が知られている。

紹介するのは
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 246-252

早産児1例からのRSウイルス検出後に、NICUでのアウトブレイクを
予防した経験を報告した論文。
すべての患児にパリビズマブ15 mg/kgを筋肉内投与したところ、
新規の発症はみられなかった。
従来の感染制御対策にパリビズマブを併用することにより、RSウイルス拡散を
予防できる可能性があるという報告。


・・・・ちなみに、RSウイルスの治療についての一般論。

1.β-blocker
乳幼児症例の50%では吸入β刺激剤に反応して症状改善するとされているが,
meta-analysesでは気管支拡張剤の効果には否定的な結果
 ・Hammer J; J. Pediatrics 1995; 127: p485
 ・Wainwright C; NEJM 2003; 349: p27
 ・Kellner JD; Cochrane 2000; CD001266

2005年の論文では気道RSウイルス感染症に対しては有効とされているものもある。
 ・BMC Pediatr 2005; 5:7.

2.ロイコトリエン拮抗薬
LT 受容体拮抗剤がRSV 細気管支炎の回復期における症状の軽快に有効で、
咳嗽や喘鳴の遷延を防ぐとの報告がある。
RSV 細気管支炎の病態はRSV 特異的IgE を介したⅠ型アレルギー反応
ではなく,自然免疫反応を介したものと理解されるが,局所におけるLT
の出現と作用が確認されていることから、LT受容体拮抗剤の効果は期待できる。

3.リバビリン(レベトール)
微小粒子のエアロゾルとして吸入で用いられる。多数のプラセボ対照研究において、
重症度の軽減と酸素飽和度の改善が認められているが、米国小児科学会では、
ハイリスクの患者においてのみ考慮されるべきであるとしている。
使用方法も煩雑であることから,最近は使用されなくなっている
 Cochrane Database Syst Rev 2004; :CD000181.
リバビリンと免疫グロブリンの併用で生存率は上昇する。
 Pharmacotherapy 2004; 24:932.

4.パリビズマブ(シナジス)
2001年、RSウイルス表面のエンベロープにあるF(Fusion)タンパク質を
特異的に認識するモノクローナル抗体製剤パリビズマブ(Palivizumab)(シナジス)
が承認。月1回 15mg/kgの筋注。
約1500人の乳幼児においての‘IMpact-RSV’スタディと呼ばれる研究では、
RSウイルス感染による入院が、プラセボ投与群で10.6%だったのに
対し、パリビズマブ投与群では4.8%と低かった。
 Pediatrics, September 1998;102:p.531-7.
ちなみに、価格は高い!
 50mg 79442円
 100mg 157709円

5.ステロイド
大規模meta-analysisでは、RSV感染症において
喘息などの閉塞性肺疾患を合併しない限りは、有用でないとされている。
 Cochrane Database Syst Rev 2004; 3:CD004878.

by otowelt | 2009-01-17 14:40 | 感染症全般

真菌関連喘息におけるイトラコナゾールの有用性


Ⅰ型アレルギー検査のために使用可能な皮膚テスト用真菌アレルゲンとして、
屋外空中飛散真菌として主要な菌種であるCladosporium、Alternaria、
Aspergillus、 Penicillium、Candidaの5種が広く臨床に使われている。
また、血中IgE 抗体測定が可能なアレルゲンとしては、これらに加えて
Malassezia(Pityrosporum), Mucor 等数種類がある。
近年、屋内環境中の真菌もアレルゲンとして重要であることが認識されており、
この論文では真菌感染がアレルゲンと思われる患者において、
抗真菌薬が喘息を改善させるかどうかをみたものである。

Randomized Controlled Trial of Oral Antifungal Treatment for Severe Asthma with Fungal Sensitization: The Fungal Asthma Sensitization Trial (FAST) Study. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2009; 179: 11-18.

皮膚テストあるいはRASTにおいて、
 Aspergillus fumigatus
 Cladosporium herbarum
 Penicillium chrysogenum (notatum)
 Candida albicans
 Trichophyton mentagrophytes
 Alternaria alternata
 Botrytis cinerea

のいずれか1種に陽性のステロイド依存性喘息に対して抗真菌剤の効果を検討した。

治療薬は、2 armで
oral itraconazole (200 mg twice daily) or placebo for 32 weeks
の比較検討。

結果として、抗真菌剤投与群の喘息症状は有意に改善した。

真菌に関係する喘息といえば、ABPAであるが
これ以外でははっきりとしたエビデンスはまだ存在しない。
この論文もそれをすっ飛ばして、治療の観点から入っているので
実際のところこの皮膚テストやRASTが陽性だからといって
抗真菌薬をホイホイと投与することはどうなのだろう・・・・

by otowelt | 2009-01-11 15:18 | 感染症全般

ICUの全死亡率に対するMRSA菌血症の寄与


ICUとMRSAは切っても切れない関係。

ICUなどのMRSA感染症のリスクの高い領域では、入院患者の保菌率と
感染症患者の発生率に相関があり、保菌検査は一定の意義を持つ。
(改訂された標準予防策、インフェクションコントロール、2004;13:520-522.)

保菌率が上昇している場合、感染対策を実行する。


Contribution of acquired meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia to overall mortality in a general intensive care unit.
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 223-227


上記論文では、MRSA菌血症発生率はICU在室期間の延長に従って上昇し、
25日以上ICUに在室した198例の死亡率37.9%に対するMRSA菌血症の寄与は
3.1%(95%CI 1.1~5.7%)と推定された。
長期在室している患者の初期のMRSA保菌予防の重要性が考察されている。

by otowelt | 2009-01-08 23:17 | 感染症全般

喫煙者は感染しやすい

e0156318_12384754.jpg

Xu et al. BMC Cell Biology 2008 9:19

たばこで感染症が増えるのはなぜなのかよくわかっていなかった。
たばこは好中球を増加させるが、かといって好中球が活躍するワケではない。

ニコチン摂取が直接的に好中球を増加させることはない。
ただ好中球の殺菌機能は低下させるということが研究でわかった。
そのため、好中球は反応性に増加するのかもしれない。

また、ニコチンはMMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ)の分泌促進をうながす。
MMP-9、代謝や血管新生にかかわっている酵素であるが
MMP-9は転移性腫瘍が発生しやすくなるといった副作用がある。


つまりは、たばこはガンにもなりやすいし、感染しやすいし
いいことナシだということです。

by otowelt | 2009-01-07 12:40 | 感染症全般

ICU患者の消化管・中咽頭の除菌


Decontamination of the Digestive Tract and Oropharynx in ICU Patients
N Engl J Med. Vol. 360:(1)20-31 Jan. 1, 2009


選択的消化管除菌(selective digestive tract decontamination:SDD)と
中咽頭の選択的除菌(selective oropharyngeal decontamination:SOD)は
ICU患者の一部に使われる予防策であるが、
エビデンスがいまいち存在していないというのが難点であった。

オランダで行なわれた試験で、プライマリーエンドポイントは28 日死亡率。

SDDとSODのレジメンだが、
SDD は、セフォタキシムの4 日間の静脈内投与に、トブラマイシン、
コリスチン、アムホテリシンBの中咽頭と胃への局所投与。
SOD は、同レジメンの中咽頭のみへの投与。

ちなみに私が個人的に行っていたSDDは、以下の通り。

******************************************************
・口腔内
 2%PVG-ICU軟膏ペースト5gに①~③を混合
 ①ゲンタマイシン100mg
 ②ポリミキシンB100万単位
 ③バンコマイシン100mg   
 これを4回/日  口腔内粘膜に塗布
・腸管
 生食20mlに①~③を混合
 ①ファンギゾンシロップ15ml
 ②ポリミキシンB300万単位
 ③ゲンタマイシン240㎎
 これを1日4回にわけて腸管投与
・全身投与
 最初の4日間のみセフォタックス1g+生食100ml 1日4回
******************************************************


このNEJMの論文の結論としては、ICU患者において
標準治療群28日死亡率は27.5%。
SDD群では3.5%ポイント低下、SOD群では2.9%ポイント低下。

これをどう考えるか、、、、

ちなみに、SDOとSDDの違いについて。
クリックしたらきれいに見えます。
e0156318_1821140.jpg

by otowelt | 2009-01-05 18:03 | 感染症全般

骨髄移植でHIVが消えるかもしれない

e0156318_2138558.jpg

CROI(Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections)2008で発表された
HIV患者のAMLに対する骨髄移植の症例。

HIVウイルスは免疫担当細胞のCCR5受容体を目印に感染する。
本症例での白血病患者でのCCR5受容体が通常と異なった
もの(CCR5 delta 32 mutationのhomozygous)であり、
HIVウイルスに耐性を持つであろう遺伝子を持つドナーからの
骨髄移植を行ったところ、白血病とともにHIVウイルスも消え去ったという。
CCR5-tropic virusによるCD4への侵入を許さないということか。

by otowelt | 2008-11-30 21:49 | 感染症全般

ICUにおける敗血症・VAPにクラリスロマイシンが有用


e0156318_9265838.jpg


Effect of Clarithromycin in Patients with Sepsis and Ventilator-Associated Pneumonia. Clinical Infectious Diseases 2008; 46:1157–64

Clarithromycin (1g)を1日1回3日間投与するメニュー。

インターロイキン8の産生をクラリスロマイシンが減らすから・・・
という理由が書かれたりしているが。

ともかく、VAPに対するクラリスの投与に関しては有用性があるという報告だが
ガイドラインに影響を与えるほどのインパクトがあるとは思えないが。

by otowelt | 2008-11-24 09:30 | 感染症全般

肺炎球菌菌血症は臨床的アウトカムを悪化させない

e0156318_9224046.jpg


The Presence of Pneumococcal Bacteremia
Does Not Influence Clinical Outcomes in Patients
With Community-Acquired Pneumonia: Results From the Community-Acquired Pneumonia Organization (CAPO) International Cohort Study
 Chest 2008;133;618-624


CAPにおける肺炎球菌の血培陽性は、
臨床的アウトカムを変化させないという論文。

血液培養陽性ならそれなりにシビアな所見があると思うのだが
統計学的には死亡率や症状安定に差はないとのこと。

PaO2の低下や呼吸数増加などのシビアな項目に差はあるのに
なぜ臨床的アウトカムだけ差がないのだろう・・・

by otowelt | 2008-11-24 09:21 | 感染症全般