カテゴリ:びまん性肺疾患( 277 )

塵肺は粉塵曝露がない状態でも初期10年で悪化しうる

INTERNAL MEDICINEから塵肺の論文。
塵肺の論文は多くないので、非常に目を引く。

Progression of Pneumoconiosis in Coal Miners after Cessation of Dust Exposure: A Longitudinal Study Based on Periodic Chest X-ray Examinations in Hokkaido, Japan
Inter Med 49: 1949-1956, 2010


背景:
 炭鉱夫を引退した塵肺患者において、10年以上追跡したスタディは日本にはない。

方法:
 レトロスペクティブに1091人のレントゲンによる塵肺診断の患者を
 1985年から2005年まで北海道で調べた。

結果:
 10年間207人(19%)が、20年間85人(8%) が登録できた。
 207人のうち62%、85人のうち29%がその間に塵肺の進行を認めた
 ILOカテゴリー1の31%、カテゴリー2の55%が10年間に複雑性の塵肺へ
 進展し、カテゴリー1および2の6%が20年間に同様の経過をたどった。

結論:
 塵肺は粉塵曝露がない状態でも初期10年で悪化しうる。

by otowelt | 2010-09-15 09:29 | びまん性肺疾患

喫煙関連肺疾患(SR-ILD):DIP、RB-ILD、CPFE、AEF

●SRILD: smoking related interstitial lung disease(喫煙関連間質性肺疾患)
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1.DIP:Desquamative Interstitial Pneumonia
・喫煙者は90%程度で、RB-ILDよりも少ない。
Katzenstein ALA. Surgical pathology of nonneoplastic lung disease. In : Katzenstein ALA, ed. Major Problem in Pathology vol 13. 4th ed. WB
Saunders Company, 2006 ; 61―66.

・好発年齢は40~50歳
・亜急性の咳嗽、呼吸困難がみられる。一般的にRB-ILDより症状は強いとされている。
・男女比は2:1
・半数にばち指がみられる。
※鑑別として以下の疾患が挙げられる
 Subacute extrinsic allergic alveolitis、PCP、Sarcoidosis
 Drug toxicity、Asbestosis、PLCH、UIP、NSIP

●DIPの画像所見
・びまん性GGO
・下葉優位でかつ胸膜直下の陰影
・胸部CT では全例にすりガラス影を認め、
 下肺野優位73%,中肺野優位14%,上肺野優位14%以下
・末梢分布優位は59%
              Radiology 1993 ; 187 :787―790.
・fibrosisはみられない
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●DIPの病理所見(DIPパターン)
肺実質一様におよぶ
・肺胞マクロファージの高度の肺胞腔内の集まり
・肺胞隔壁の軽~中等度の線維性肥厚
・間質への軽度の慢性炎症細胞浸潤
 RB-ILDとDIPの違いは、病変が呼吸細気管支中心性分布かびまん性分布かである。
・末期になると線維化が進行し、DIP/Pの認識は困難となり、
 国際分類ではf-NSIP patternと病理診断される。
              Histopathology 2004; 45: 904-12
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●DIPの治療
・一般的に禁煙によって軽快。
・ステロイド治療に対する反応もUIP に比べて良好と言われている。
・実際には禁煙指導と同時にステロイド治療が行われることが多く、
 DIP に対する禁煙単独の効果を評価することは困難である。
              Chest 2005 ; 127 :178―184.
・10年生存率は70%
              Mayo Clin Proc 1989 ; 64 : 1373―1380.

2.RB-ILD:Respiratory Bronchiolitis Associated Interstitial Lung Disease
●RB-ILDの概念
 1989年、Yousemらが18例のRBに合併する間質性肺炎を
 DIPとは別にRB-ILDとして概念を明確にした。
                 Mayo Clin Proc 1989; 64: 1373-80
 現在、ATS/ERSコンセンサスに準じて、RB-ILDはIIPsの一臨床診断名と
 されており、病理像はRBと認識されている。

●RB-ILDの臨床所見
・通常は無症状で、咳嗽や呼吸困難感がみられることもある。
・DIPよりも症状は軽度であることが多いとされている。
・近年の報告では、RB-ILD VS DIP で
 呼吸困難感 75% VS 87%
 咳嗽    50% VS 43%
 胸痛    8% VS 17%
 肺雑音   42% VS 57%  と差がない。
・40~50歳が好発年齢
・男女比=1:1
・喫煙歴が必ずあり、ex-smokerでも禁煙後半年以内のことが多い。
 また、他のILDよりもheavy smokerのことが多い。
                Chest 2003; 124: 1199-1205
・両側性に吸気時後半のcrackleを聴取する

●RB-ILDの検査所見
・血液検査では特記すべき特徴はない。
・抗核抗体はDIPにおいて陽性例が散見される一方、RB-ILDでは全例陰性である。
                J Bronchol 2004; 11: 160-4
・動脈血液ガス分析は、正常または軽度な低酸素血症
・呼吸機能検査では軽度の混合性換気障害を呈するのみ。
・BALでは肺胞マクロファージ増加が特徴であり、色素沈着をともなった
 マクロファージが認識されることが多い。DIPではリンパ球・好中球・時に好酸球
 上昇がみられるが、RB-ILDでは90%以上が肺胞マクロファージによって構成。
・胸部レントゲンでは以下の通り。
  気管支壁の肥厚75%
  スリガラス陰影57%
  正常14%
・HRCTでは、
  Ill-defined ground glass centrilobular nodules
  斑状のGGO( ⇔ DIPはびまん性)
  スリガラス影(50%)
  気管支壁の肥厚(90%)
  上葉優位の分布( ⇔ DIPは下葉優位)
  LAA
  fibrosisはみられない(honeycombing lungはない) といった特徴がある。
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●RB-ILDの病理学的所見
RBの所見と同じである。
 ①(呼吸)細気管支中心性にみられること
 ②呼吸細気管支、肺胞管ならびに細気管支周囲に褐色調の豊富な細胞質を
  有するマクロファージの集まり
 ③細気管支から連続する肺胞壁での軽度線維化と散在性リンパ球や組織球浸潤
 ④II型上皮や立方状の細気管支上皮の過形成
 ⑤しばしば混在する小葉中心性肺気腫
・基本的に細気管支中心性の病変分布である。
・膜性細気管支のリンパ球や組織球などの炎症細胞浸潤と
 上皮剥離さらに褐色マクロファージ(炭粉貪食マクロファージpigmented
 macrophages)が呼吸細気管支の内腔と周辺の肺胞道、肺胞内にみられる。
・fibrosisはみられない
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●RB-ILDの病理と画像の対比
 ①スリガラス影:
  air spaceのマクロファージと粘液の集積、軽度の間質の炎症
  や線維化、alveolitisを伴う肺胞壁の肥厚に相当
           Radiology 1993; 186: 643-51
 ②(小葉中心性)小葉中心性粒状影:
  細気管支周囲の線維化を伴う細気管支拡張に相当
           Radiology 1993; 186: 643-51
  RBの可能性のほかに、喫煙者としての普遍的所見である
  小葉中心性線維性変化の可能性も示唆されている。
           気管支学 2000 ;22: 337-42

●RB-ILDの治療
・禁煙
・コルチコステロイドは反応性良好
・10年生存率は100%

3.CPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema)
  AEF(airspace enlargement with fibrosis)

 臨床医は、ときに肺気腫と間質性肺疾患の合併例に遭遇するが、
 CHESTの報告によればIPF110例のうち31例に気腫を合併していた。
            Chest 2009, doi:10.1378/chest.08-2306
 2005年にCottinらが上肺野優位に肺気腫、下肺野にILDがみられる61症例を
 取り上げ、combined pulmonary fibrosis and emphysema (CPFE)という
 概念を提唱したのをきっかけに、この病態に注目が集まるようになった。
            Eur Respir J 2005; 26: 586-593

 <Cottinらの報告 Eur Respir J 2005; 26: 586-593>
 画像上IPFあるいはfibrosing NSIPパターンが全体の84%を占め、
 組織があった8例のうち5例はUIPで、その他DIP、OP、分類不能型IPが
 それぞれ1例ずつであった。肺気腫病変については
 centrilobular emphysema が95%、paraseptal emphysemaが93%だった。
 全体の98%がDLCOの低下がみられた。しかし、1秒率が低下していたのは
 49%、拘束性障害を呈していたのは21%であった。これは過去の他の報告でも同様。
            Respir Med 2005; 99: 948-954
            Respiration 2008; 75: 411-417
            Respir Med 2009, doi:10.1016


 終末細気管支より末梢の気腔が拡大している病態を
 RAE:respiratory airspace enlargementと呼ぶが、
 RAEは肺胞構造の破壊のないものと構造破壊を伴うものに分類される。
 明らかな線維化がみられないものを気腫と定義し、線維化を伴うものを
 airspace enlargement with fibrosis (AEF)と呼ばれる。
            Am Rev Respir Dis 1985; 132: 182-185
文責"倉原優"

by otowelt | 2010-08-26 06:28 | びまん性肺疾患

エベロリムスによる肺炎

エベロリムスは、ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)と結合して
抗原により活性化されたT細胞の増殖を抑制し、免疫抑制剤として作用する。
腎細胞癌において使用されることもある。
Efficacy of everolimus in advanced renal cell carcinoma: a double-blind, randomised, placebo-controlled phase III trial.
Lancet. 2008 Aug 9;372(9637):449-56.


エベロリムスによる肺炎が意外に多いという報告が、AJRCCMから出た。

Noninfectious Pneumonitis after Everolimus Therapy for Advanced Renal Cell Carcinoma
Am J Respir Crit Care Med Vol 182. pp 396–403, 2010


背景:
 mTOR阻害薬には非感染性の肺炎が起こることが知られている。

目的:
 この肺炎の頻度、放射線学的パターン、マネジメント、臨床アウトカム
 を進行腎細胞癌患者でエベロリムスを受けている患者で検討した。

方法:
 416人の患者が登録、エベロリムスとプラセボにランダム化割り付けされた。
 全ての患者において、肺炎の発症を文責した。
 8週ごとに放射線学的な検証がおこなわれた。
 
結果:
 274人の患者がエベロリムスをうけ37人(13.5%)に肺炎を発症した。
 プラセボ患者では肺炎はみられなかった。
 肺炎を起こした患者のうち、9人(3.3%)がグレード1、18人(6.6%)が
 グレード2、10人(3.6%)がグレード3で、グレード4はいなかった。
 グレード3の肺炎をおこした10人のうち5人がエベロリムス投与前から
 肺炎を起こす放射線学的な基礎素因があると判断された。
 37人のうち20人(54.0%)がフォローアップ期間中に肺炎は改善した。
 16人でステロイド治療がおこなわれた。
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結論:
 エベロリムスにおける肺炎は、早期発見・早期マネジメントが重要である。

by otowelt | 2010-08-02 12:46 | びまん性肺疾患

黒色胸水の鑑別

●黒色胸水(black pleural effusion)の鑑別
・悪性黒色腫(melanoma)の胸腔内播種
  CMAJ MAY 18 2010 182(8)
  AJR Am J Roentgenol 1981;137:293-8.
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・骨髄移植後のzygomycosis感染症(Rhizopus oryzaeが報告)
  Med Mycol 2006;44:75-8.
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・Aspergillus nigarによる胸膜炎
 Am Rev Respira Dis 1984; 129:501-502

by otowelt | 2010-07-09 10:24 | びまん性肺疾患

自己免疫性PAPに対してGM-CSF吸入療法は有用

今回のAJRCCMに掲載されることがわかっていた重要な論文。

肺胞蛋白症は当院ではcommon diseaseになっている。
臨床試験のために集まるからかもしれないが…
全身麻酔下で全肺洗浄を行うこともあるが、
こちらはまだエビデンスがなかったように記憶している。

Inhaled Granulocyte/Macrophage–Colony Stimulating Factor as Therapy for Pulmonary Alveolar Proteinosis
Am J Respir Crit Care Med Vol 181. pp 1345–1354, 2010


背景:
 吸入GM-CSF治療は、肺胞蛋白症(PAP)の治療の画期的治療であるが、
 まだ適切な臨床試験はおこなわれていない。

目的:
 軽快しない、あるいは進行するPAPに対しての
 吸入GM-CSF治療の安全性と効果について検証する。

方法:
 国際多施設phaseII臨床試験を日本の9の呼吸器センターで実施。
 肺生検および細胞診でPAPと診断された患者において、
 12週間の観察期間の間、GM-CSF抗体が上昇し、PaO2が
 75mmHg未満である症例を登録。
 観察期間中にA-aDo2の改善などがみられたものは除外した。
 登録症例において
 高用量(250 mg Days 1–8, none Days 9–14; ×six cycles; 12 wk)
 低用量(125 mg Days 1–4, none Days 5–14; ×six cycles; 12 wk)
 フォローアップ(52 wk)とした。

結果:
 50のPAP患者がスタディに登録した。
 観察期間のうち、9人が改善、2人が取りやめ、で除外となった。
 35人が高用量→低用量レジメンを施行できたた。
 24人が改善し、ORRは62%であった(ITT解析で24/39)。
 A–aDO2減少は、12.3mmHg (95%CI 8.4–16.2; n=35, P,0.001)。
 重篤な副反応は起こらなかった。血清GM-CSF抗体は変化がみられなかった。
 治療によりみられた点としては、A-aDO2、DLCO、HRCTでのGGO改善
 に関連性がみられた。35人のうち、29人が治療1年をこえて安定している。
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結論:
 自己免疫性PAPに対して、吸入GM-CSF治療は安全性があり効果がある。

by otowelt | 2010-06-24 14:36 | びまん性肺疾患

RA-ILDにおけるUIPパターンは、予後不良因子(IPFと同等の生存期間)

関節リウマチと間質性肺炎の合併は多い。
報告によれば50%などという記載もあるが、臨床上ピックアップされるのは
その5分の1くらいの頻度だと個人的に思う。他の膠原病と異なり、
RA-ILDは、UIPパターン>NSIPパターンというのが特徴的である。

呼吸器内科医をやっているとよく話題になるのが、
関節リウマチとIPFにおけるUIPパターンは違いがあるのか?」という点である。
これに関しては、以下のような答えをされる呼吸器内科医が多いように思う。
関節リウマチのUIPパターンは、IPFとは異なり、気管支血管束周囲の
小葉中心部にも線維化病変を伴う

まぁ、よく知られた模範解答とは思うが、この差というのが臨床的に差を生むのかどうか
ERJで検討された論文が出た。非常に興味深い。

Usual interstitial pneumonia in rheumatoid arthritis-associated interstitial lung disease
Eur Respir J 2010; 35: 1322–1328


背景:
 ILDは、関節リウマチにおいてよくみられる肺病変である。しかしながら、予後に
 関する影響はほとんど知られていない。このスタディの目的は、関節リウマチの
 HRCTのUIPパターンがRA-ILDの予後に重要であるかどうかを検討したものである。

方法:
 RA-ILDのある患者はレトロスペクティブに82人登録可能であった。
 定義されたHRCTにおけるUIPパターンの生存への関連性は、
 臨床的にIPFと診断された51人と比べて、コホートに決定された。

結果:
 UIPと定義されたのは、RA-ILDのある82人の患者のうち20人(24%)であった。
 これらの患者はUIPパターンのない患者と比べると生存期間は悪かった。
  (生存期間中央値は 3.2年 VS 6.6年)
 そして対照群となったIPF患者でも同様の生存期間であった。
  HRCTにおいて定義されたUIPパターンは、明らかに生存期間の減少に関連。(HR 2.3)
 HRCTにおいて確認された、traction bronchiectasisおよび
 honeycomb fibrosisは生存期間の減少に関連していた(それぞれHR2.6、2.1)。
 女性(HR0.30)およびDLCO高値(HR 0.96)は生存期間の延長に関連。
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結論:
 HRCTにおいて定義されたUIPパターンは、RA-ILDの予後を規定する。
 RA-UIPはIPFと同等の生存期間であると考えられる。

※ちなみにhoneycomb fibrosis(蜂巣肺)の定義は
 下の記事のように考えている。

蜂巣肺・蜂窩肺(honeycombing lung)の定義

by otowelt | 2010-06-04 23:25 | びまん性肺疾患

いわゆる、びまん性肺胞出血は原因を問わず入院死亡率24.7%

肺胞出血の大規模なレトロスペクティブスタディがERJから出た。
レトロスペクティブなので、診断基準があやふやなものが混ざっているかもしれない。
死亡率をプライマリエンドポイントにおいて、おおむね予後は同等との結論だった。
個人的にはANCA関連のDAHと、特発性DAHに実臨床でかなり差を感じるのだが・・・。
GGOの改善、臨床症状の改善というエンドポイントも設定してほしかった。

Diffuse alveolar haemorrhage: factors associated with in-hospital and long-term mortality
Eur Respir J 2010; 35: 1303–1311


背景:
 びまん性肺胞出血(DAH)は、免疫あるいは非免疫的にも発症する疾患である。
 予後は不良であり、入院死亡率は20%から100%と考えられている。
 早期発見が適切な治療開始に有用な予後因子かもしれない。

方法:
 われわれはレトロスペクティブに1980年から2008年まで大学病院の
 すべての患者チャートを解析した。入院に関連した項目および長期死亡率は、
 ロジスティック回帰モデルおよびKaplan–Meier法を用いておこなわれた。
 免疫抑制患者は除外した。

結果:
 97人の患者がこのスタディに登録した。入院死亡率は24.7%であった。
 免疫学的肺胞出血は、35人。
  ・血管炎 25人
  ・抗基底膜抗体疾患 4人
  ・膠原病 6人
 非免疫学的肺胞出血は、62人。
  ・肺胞毛細血管圧上昇 26人
  ・その他 22人(感染6人、薬剤6人、塞栓性疾患4人、人工呼吸器関連4人、癌2人)
  ・特発性肺胞出血 14人
 入院死亡率に関連していたのは、
 ショック (OR 77.5, 95% CI 8.9–677.2)、
 GFR 60mL/min未満 (OR 11.2, 95% CI 1.8–68.4)
 血清LDHレベルが正常の2倍をこえるもの(OR 12.1, 95% CI 1.7–84.3)
 であった。退院した患者の死亡率は16.4%であり、フォローアップ期間中央値は
 34ヶ月であった。長期死亡率を増加させる因子としては、60歳をこえる患者(p=0.026)、
 心血管合併症患者(p=0.027)、末期腎不全血液透析患者(p=0.026)であった。
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 ↑ 免疫学的肺胞出血と非免疫学的肺胞出血のK-M曲線

結論:
 免疫的肺胞出血あるいは非免疫的肺胞出血のいずれも同等のアウトカムであった。
 早期のアウトカムは、肺以外の臓器不全に関連していた。
 後期のアウトカムは、年齢、心血管合併症、血液透析に関連していた。

by otowelt | 2010-06-04 18:32 | びまん性肺疾患

IgG4関連疾患

現在日本が確実にリードしている分野であり、海外の文献が少ないのが現状である。
最近IgG関連疾患の本が出版されており、読んでおきたいところである。
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●概念
 近年、IgG4関連疾患と呼ばれる疾患概念が提唱されている。
 涙腺・唾液腺、膵、腎など多臓器に病変を認め、血中IgG4高値と組織の
 IgG4陽性形質細胞の浸潤を特徴とする。組織学的にIgG4陽性形質細胞や
 リンパ球浸潤が涙腺、唾液腺、後腹膜、膵臓、胆管などで起こり、臨床的には
 Mikulicz病、後腹膜線維症、自己免疫膵炎、糖尿病、原発性硬化性胆管炎
 類似の胆管病変などを呈する全身性疾患である。
 以下を満たすものをIgG関連疾患とする、という提唱がなされているが
 現時点では確実な診断基準はまだない。
 ・血清IgG4の高値(135㎎/dl以上)
 ・IgG4関連疾患で特異性の高い臓器(涙腺、唾液腺、膵臓、後腹膜) の異常
 ・組織学的にIgG4陽性形質細胞とリンパ球浸潤の確認
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●歴史
 1978年に両側上眼瞼と顎下腺の腫脹を初発症状とし、ステロイドが著効
 した膵炎を報告している。IgG4関連疾患の膵病変の初報告と考えられる。
             Am J Dig Dis 23(Supple):75S79S, 1978.
 その後の様々な検討により、自己免疫膵炎に高頻度に血清IgG4が高値を示す
 ことが明らかになった。膵以外にも胆道、涙腺、唾液腺、後腹膜などにも病変を認め、
 膵を含むそれらの臓器の免疫組織染色でIgG4陽性形質細胞および
 CD4ないしCD8陽性Tリンパ球がびまん性に浸潤していることが明らかになった。
               N Engl J Med 344:732738, 2001.
               J Gastroenterol 38:982984,2003.

 のちにIgG4関連疾患という疾患概念が提唱され、
 自己免疫膵炎はIgG4関連疾患という全身性疾患の膵病変であると推定された。

●IgG4関連疾患・胆道~膵臓
 膵病変の特徴は膵管の狭細像と膵のソーセージ状の腫大である。
 自己免疫膵炎に合併する胆管狭窄はPSCの合併ではないとされている。
 IgG4関連疾患のPSC様胆管病変とするのが妥当である。
 PSCは閉塞性黄疸で発症するが、IgG関連PSC様胆管病変は軽度の肝障害が
 診断のきっかけとなることが多い。PSCとIgG4関連硬化性胆管炎は異なる組織像
 を示し、病理学的にも鑑別可能である。IgG4関連疾患の胆管病変の合併頻度は
 40%程度である。胆嚢ではIgG4関連疾患では胆嚢壁の肥厚が25%程度認められる。
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●IgG4関連疾患・後腹膜
 IgG4関連疾患では膵に対する画像診断で偶然発見されることが多いため、
 後腹膜線維症が発見されるケースは少ない。大動脈や上腸間膜動脈周囲の
 線維化にとどまっていることが多く、軽症例が多いとされている。
 尿路閉塞による水腎症を呈することがある。
 間質性腎炎を呈することがあり、造影CTが診断に有用である。
               Clin Nephrol. 2007 Nov;68(5):308-14.
 間質性腎炎と腎門部IgG4関連硬化性腫瘤の合併は本症に多く、
 浸潤形質細胞数が少ない場合、間質腎炎合併は重要なIgG4関連疾患の根拠となる。
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●IgG4関連疾患・唾液腺
 両側唾液腺、涙腺の腫脹を来たす症例をMikulicz病という。
 Mikulicz病はIgG4関連自己免疫疾患であるとの報告が多い。
 血清IgG4が高値であり、SS-AおよびSS-B抗体が陰性であるという点、
 またステロイド治療に対して良好な反応性を示すためである。
 顎下腺に後発し、硬く触れる腫瘤を形成する炎症性病変で
 硬化性唾液腺炎という病名を用いることが一般的である。
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●IgG4関連疾患・肺
 IgG関連肺疾患として認知されているのは、炎症性偽腫瘍と間質性肺炎である。
 炎症性偽腫瘍では特発性間質性肺炎に比べ優位にIgG、IgG4 陽性形質細胞が
 多く認められる。
               Human Pathology 2005 ; 36 : 710―717.
 BALでは全例でリンパ球分画の増加を認め、CD4/8ではCD4優位であったと
 いう報告が多い。
 また、肺門部リンパ節腫大を伴うことがあるため、
 サルコイドーシスと間違えられることもある。
 67%の自己免疫性膵炎で肺門部リンパ節腫大を伴うとされている。
               Pancreas 2003;27:20–25.
 アメリカの自己免疫性膵炎36症例の検討で、2例に肺病変が認められた。
               Am J Surg Pathol. 2006 Dec; 30 (12): 1537-45
 一方日本では自己免疫性膵炎30症例の経過中4例に肺病変が認められた。
               Intern Med J. 2006 Jan; 36 ( 1): 58-61
 IgG関連肺疾患の画像上の特徴として、
 (a) solid nodular
 (b) round-shaped GGO
 (c) alveolar interstitial
 (d) bronchovascular

 の4タイプが報告されている。
               Radiology: Volume 251: Number 1—April 2009
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 bronchovascular typeは、multicentric Castleman diseaseに類似する。
                Radiology 1998;209:477–481.
 病理学的に、炎症で閉塞した動脈周囲にIgG陽性形質細胞がみられることが多い。
                 Hum Pathol 2008;39:975–980.
 肺化膿症やWegener肉芽腫でもIgG陽性細胞が浸潤することがあるので
 鑑別に注意が必要であるとも考えられている。
 治療については、IgG関連疾患全般に共通しているが、
 肺病変もステロイドに反応しやすいとされている。
                    Gut 2004;53:770
                    Intern Med J 2006;36:58–61.

文責"倉原優"

by otowelt | 2010-05-09 05:17 | びまん性肺疾患

ピルフェニドンはIPFにおいて肺活量低下を防ぐ (phase III 試験)

ピルフェニドン(ピレスパ)はアメリカで発見された新規の抗線維化薬。
創製当初は抗炎症薬として開発が開始されたが、その途上で
炎症モデルとして検討されたイヌ肺感染症モデルにおいて線維化を抑制した。
日本では1998年10月に希少疾病医薬品の指定を受け、
2008年10月に承認され、同年12 月より発売している。
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作用機序は、図のごとく様々な作用の複合である。

ピレスパのこのphase III試験は以前から知っていたが、
論文化されたのが、このERJということである。

Pirfenidone in idiopathic pulmonary fibrosis
Eur Respir J 2010; 35: 821–829


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は、確固たる治療法のない進行性の肺疾患である。

方法:
 多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化第3相試験が日本の
 IPF患者で行われた。
 効果と安全性を検証するため52週以上にわたり投与された。
 275人の患者が、ピルフェニドン高用量1800mg/日、低用量1200mg/日、
 プラセボに1:2:1に割り振られた。267人がその効果を評価された。
 プライマリエンドポイントは、52週での肺活量(VC)の変化、
 セカンダリエンドポイントはPFSとした。

結果:
 プライマリエンドポイントにおいて、肺活量に有意な差が出た。
 プラセボ:-0.16 L、高用量ピルフェニドン:-0.09 L (p=0.0416)
 セカンダリエンドポイントであるPFSにおいても
 有意に差が出た。(p=0.0280)
 副作用である光線過敏症は、多くの患者で重症度は高くなかった。
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結論:
 ピルフェニドンはIPF患者において認容性があり、
 52週における肺活量減少率を軽減させ、PFSも改善させる。

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副作用の光線過敏症はサンスクリーンによって
ある程度軽減できることがわかっている。

by otowelt | 2010-04-03 22:32 | びまん性肺疾患

IPFにおいてイマチニブは生存率と肺機能を改善しない

イマチニブは、bcr-abl、c-kit、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体の
チロシンキナーゼ阻害活性を有する癌分子標的治療薬であり、
慢性骨髄性白血病、消化管間質性腫瘍に対して承認されている。
その一方で、特発性肺線維症(IPF)における線維化病態にはPDGFが
関与しており、イマチニブの有用性が期待されてきた。
肺線維症モデルにおけるイマチニブの肺線維化抑制効果が報告されていたが、
このランダム化試験によりイマチニブの有用性は否定的となった。

Imatinib Treatment for Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Randomized Placebo-controlled Trial Results
Am J Respir Crit Care Med Vol 181. pp 604–610, 2010


方法:
 119人の患者で検討。
 多施設共同二重盲検臨床試験で、96週間にわたりイマチニブとプラセボを服用。

結果:
 96週間のフォローアップによって、イマチニブはプラセボに比べて
 プライマリエンドポイントであるdisease progression(%FVCの10%減少)
 および死亡までの期間に影響を与えなかった(log rank P = 0.89)。
 イマチニブによって、FVCは48,72,96週におけるどの時点でも
 変化がみられなかった。(P > 0.39 at all time points)
 DLCOも変化なし(P>0.26 at all time points)
 安静時PaO2はイマチニブ群で48週時点ではよかった(P = 0.005) が、
 96週目では変化なし(P = 0.074)。
 96週で、イマチニブ群で8人の死亡、プラセボ群で10人の死亡がみられた。
 29%の患者がプライマリエンドポイントに到達することなくトライアルオフした。
 (イマチニブ, 32%; placebo, 27%; P = 0.51)
 イマチニブ群において有意な有害事象は観察されなかった。
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結論:
 ランダム化プラセボ対照比較試験において、
 mild to moderateのIPF患者では、イマチニブは
 生存率および肺機能に影響しない。

by otowelt | 2010-03-06 14:59 | びまん性肺疾患