カテゴリ:びまん性肺疾患( 296 )

IPF患者の初期評価の遅れは死亡のリスクを上昇させる

IPFのoverall survivalを改善する薬剤がない現状では
下記の結果にはやや懐疑心が残る。
全文を読めないので、詳しくはわからないが・・・。

Daniela J. Lamas, et al. Delayed Access and Survival in Idiopathic Pulmonary Fibrosis
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 184. pp. 842-847, (2011)


背景:
 特発性肺線維症は、しばしば初期診断を誤られる。
 専門ケアへのアクセスの遅れは、IPFのアウトカムを悪くするかもしれない。

目的:
 専門ケアへのアクセスが遅れることと、IPFの生存期間との関連を検証する。

方法:
 われわれは、129人のATS診断基準に合致したIPF患者にたいして
 プロスペクティブコホート試験をおこなった。
 ”遅れ”というのは、呼吸困難がはじまってから紹介施設での初期評価までの
 期間と定義する。

結果:
 平均年齢は63歳で、76%が男性であった。
 ”遅れ”の中央値は2,2年(interquartile range 1.0–3.8 yr)で、
 フォローアップ期間中央値は1.1年であった。年齢と肺機能検査は
 この”遅れ”に影響しなかった。長期の遅れがあるほど、
 死亡のリスクを上昇させた(補正HR1.3, 95%CI 1.03 to 1.6)。
 また上記の遅れは、肺移植の比率を下げるといったこととは関連なかった。

結論:
 専門施設への紹介の遅れは、IPFの死亡リスクを上昇させる。
 早期に紹介することが肝要である。

by otowelt | 2011-10-03 05:56 | びまん性肺疾患

特発性肺線維症に対するBIBF 1120 の有用性

呼吸器内科医の間では有名な話である。

L. Richeldi, et al. Efficacy of a Tyrosine Kinase Inhibitor in Idiopathic Pulmonary Fibrosis
N Engl J Med 2011; 365 : 1079 - 87


背景:
 特発性肺線維症は死亡率の高い進行性肺疾患である。
 複数のチロシンキナーゼ受容体によって活性化される
 シグナル伝達経路と肺線維症の関連があり、この受容体の
 阻害によって特発性肺線維症の進行を遅らせることが
 できるかもしれない。

方法:
 12ヶ月におよぶの第2相試験において、特発性肺線維症患者
 にチロシンキナーゼ阻害薬であるBIBF1120の4通りの用量の
 経口投与をプラセボと比較し有効性と安全性を評価した。
 プライマリエンドポイントは、努力肺活量(FVC)の年間低下率。
 セカンダリエンドポイントは、急性増悪、QOL(SGRQ評価)、
 全肺気量など。

結果:
 合計432例を、BIBF1120の4通りの用量
 1.50 mg 1日1回
 2.50 mg 1日2回
 3.100 mg 1日2回
 4.150 mg 1日2回
 のいずれかを投与する群と、プラセボを投与する群に
 ランダムに割り付け。FVC低下率は、BIBF1120を
 150 mg 1日2回群で0.06 L/年であったのに対して
 プラセボ群では 0.19 L/年であり、BIBF 1120 により
 68.4%抑制された。急性増悪発生率も、150 mg 1日2回群で
 プラセボ群よりも低下した(P=0.02)。
 SGRQ スコアは、150 mg 1日2回群でわずかに低下したが
 プラセボ群では上昇(-0.66 vs 5.46,P=0.007)。
 150 mg 1日2回群では、消化器症状、
 肝アミノトランスフェラーゼ上昇の頻度が高かった。

結論:
 特発性肺線維症に対するBIBF 1120 150mg 1日2回投与は
 プラセボと比較して肺機能低下が抑制される傾向にあり、
 急性増悪は減少し、またQOLは保たれた。

by otowelt | 2011-09-23 20:23 | びまん性肺疾患

GSTT1欠失はアスベスト肺の線維化のリスクを上昇させる可能性

じん肺患者さんには、線維化がhoneycombingのように進む患者さんや
肺内の塵肺結節だけで終わるような患者さんがおられ
その規定因子を遺伝子学的な観点から考察した論文。

Genetic susceptibility to asbestos-related fibrotic pleuropulmonary changes
Eur Respir J 2011; 38: 672–678


1008人のアスベスト曝露のある労働者に
6遺伝子(EPHX1, GSTM1, GSTM3, GSTP1, GSTT1 、NAT2)のうち
9つのポリモルフィズムをジェノタイピング。
このデータを肺の線維化や胸膜肥厚、肺容積やDLCOなどと照らし合わせた。

GSTT1 deletionのポリモルフィズムが
線維化(p=0.003)、DLCO低下(p=0.02)、DLCO/VA低下(p=0.002)と
関連しており、GSTM1 deletionのポリモルフィズムは胸膜プラークの
肥厚と関連していた(p=0.009)。
GSTT1 null genotypeは、線維化の重症変化のリスクを3倍増加
(OR 3.12,95% CI 1.51–6.43)、DLCO低下も2倍近くのリスク上昇
(OR 1.77, 95% CI 1.06–2.95) 、DLCO/VAは
OR 2.37, 95% CI 1.33–4.23であった。
GSTM1 null genotypeは、胸膜肥厚のリスクを上昇
(OR 1.36, 95% CI 1.03–1.80)させた。
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by otowelt | 2011-09-01 12:17 | びまん性肺疾患

iNSIPの50%が自己免疫疾患に関連

ERJ、NSIPの論文。
カルテからの情報をレビューしたもので
seronegativeなものをiNSIPとしているようだ。

Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia: an interstitial lung disease associated with autoimmune disorders?
Eur Respir J 2011; 38: 384–391


背景:
 近年、特発性NSIP(iNSIP)は、他の特発性間質性肺炎の間では
 臨床的に明白に実証される疾患であり、あるデータによれば
 病理学的に自己免疫の役割によって起こっている可能性が示唆されている。
 このスタディの目的は、iNSIPが早期の肺にみられた場合にそれが
 自己免疫疾患の表現であるかどうかを評価したものである。

方法:
 診療録データベースから、NSIP(563人)のキーワードによる
 初期症例レビューから、37人のiNSIP症例が同定された。
 
結果:
 iNISPのうち27人が登録された。平均±SD年齢は54.2±8歳で
 70%が女性、59%が非喫煙者であった。
 フォローアップ(平均±SD59.7±29 months, range 12–138 months)
 において、自己免疫疾患は14人(52%)の患者に起こり
 7人(26%)は自己免疫甲状腺炎、6人(22%)はUCTD、3人(11%)は
 膠原病を発症した。自己免疫疾患を発症した患者は、
 より高齢であり、またより非喫煙者女性である傾向にあった。
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結論:
 iNSIPと診断されたうちの50%が、2年以内に
 自己免疫性疾患にいたる。
 これはiNSIPと自己免疫機能との関連を示唆するものである。

by otowelt | 2011-08-01 19:34 | びまん性肺疾患

BUILD-3試験:IPFに対するボセンタンはIPF悪化までの時間に寄与しない

BUILD-3: A Randomized, Controlled Trial of Bosentan in
Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Am J Respir Crit Care Med Vol 184. pp 92–99, 2011


昨年ATSで発表された、IPFの有名な試験の1つである。
少し難しい試験なので、日本語訳ではなく概要にする。

BUILD-3試験はネガティブスタディなので
そこまで詳細を覚えておく必要はないが、
IPFに対するボセンタンを検証したこの試験において
生存の改善がみられなかったという事実は
呼吸器内科医にとって重要である。

ボセンタンは、第II/III相試験のBUILD-1試験で
IPF悪化または死亡までの時間が延長し、QOLでの改善が示されていた。
BUILD-3試験では、外科肺生検で証明されATS/ERS statementに基づく
IPFの診断を受けた患者を登録してプラセボと比較した。

616人の患者が登録され、ボセンタン407人、プラセボ209人に
ランダムに割り付けられた。
プライマリエンドポイントであるIPF悪化までの時間
(a confirmed decrease from baseline in FVC > 10%
and DLCO>15%, or acute exacerbation of IPF)
について改善がみられなかった(HR 0.85;95%CI0.66–1.10; P=0.2110)。
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forest plotは、なんとなくボセンタン寄りな気もする…。
もし、出版バイアスがあるならメタアナリシスで
差が出るかもしれないが…。
その差があったとしても、いずれにしても
微々たる効果なのだろうと思うところはある。

by otowelt | 2011-07-11 14:47 | びまん性肺疾患

IPF急性増悪の少数例にウイルス感染が関与する可能性

TTウイルスとは懐かしい…。

Viral Infection in Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Am J Respir Crit Care Med Vol 183. pp 1698–1702, 2011


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は、進行性の一様な致死的肺疾患である。
 IPF急性増悪は、特定の疫学的原因の同定がなく急性呼吸不全を
 きたすエピソードである。
 偶発的なウイルス感染が、この原因になっている可能性が示唆される。
 
目的:
 unbiased genomics-based discovery methodsを用いて
 IPF急性増悪にウイルスが関与するかどうかを調べる。

方法:
 IPF急性増悪をきたした患者、安定した病態の患者、
 ALIに至った患者において、BALおよび血清を採取し
 ウイルス核酸PCR、汎ウイルスマイクロアッセイ等で
 ウイルス学的検索をおこなった。

結果:
 45人のIPF急性増悪をきたした患者のうち4人に
 一般的な気道ウイルス感染の同定がなされた
 (parainfluenza [n=1], rhinovirus[n=2], coronavirus [n=1])。
 安定した患者においてはBALでは何も検出されなかった。
 汎ウイルスマイクロアッセイでは、IPF急性増悪患者において
 さらにウイルス感染の根拠を明らかにした
 (herpes simplex virus[n=1], Epstein-Barr virus [n=2],
 torque teno virus [TTV] [n=12])。
 TTV感染症は急性増悪患者において有意に多くみられた(P=0.0003)が、
 ALIコントロール群とは同等であった。
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結論:
 IPF急性増悪において多くの場合ウイルス感染は同定されなかった。
 少数例ではあるがTTV感染は比較的有意にみられ、ALI患者でも
 この傾向があった。

by otowelt | 2011-06-23 05:54 | びまん性肺疾患

間質性肺疾患に続発した気胸には自己血パッチ胸膜癒着が有効

自己血パッチによる胸膜癒着は
1987年にRobinsonによって最初に報告された。
Autologous blood for pleurodesis in recurrent and chronic spontaneous pneumothorax. Can J Surg 30: 428-429,1987.

間質性肺炎に気胸を合併した場合には
よく自己血パッチを使用することがある。
化学的な胸膜癒着より自己血パッチを使用する傾向にあるのは
前者では間質性肺炎の急性増悪のリスクがあるからとされている。
・Serious complications with talc slurry pleurodesis. Respirology 6: 181-185, 2001.
・Percutaneous computed tomography-guided radiofrequency ablation of lung tumors complicated with idiopathic interstitial pneumonia.Ann Thorac Surg 87: 948-950, 2009.


以下、京都大学からの論文。

Efficacy of Blood-Patch Pleurodesis for Secondary Spontaneous Pneumothorax in Interstitial Lung Disease
Intern Med 50: 1157-1162, 2011


目的:
 われわれは、間質性肺疾患(ILD)の患者の気胸の予後関連性と
 自己血パッチ胸膜癒着の効果と安全性を調べた。

方法:
 12年をレトロスペクティブにみて
 34のILD患者に起こった59の気胸をレビューした。
 
結果:
 自己血パッチのあと、エアリークは22気胸中16(72.7%)で消失し、
 化学的胸膜癒着術をおこなったあと、エアリークは
 14気胸中11(78.6%)で消失した。
 治癒率も再発率も、化学的胸膜癒着と比べて自己血パッチで
 同程度であった(p=0.99 and 0.99, respectively)。
 加えて、自己血パッチにおいては有害事象はみられなかった。
 生存期間中央値は、最初に気胸が起こってからIIP患者では9ヶ月未満で、
 他のタイプのILD患者では3年程度であった。
 Kaplan-Meier生存カーブでは、縦隔壁気腫合併例において
 有意に低かった(p<0.05)。多変量Cox回帰分析において
 気胸を起こした数、IIPの診断、縦隔気腫は死亡の独立予測因子であった。

結論:
 ILDに続発した気胸に対して自己血パッチによる胸膜癒着は安全であり
 初期に行う価値があると考えられる。しかしながら、治療にもかかわらず
 気胸発症後の予後はILD患者では不良である。
 加えて、縦隔気腫は予後不良因子である。

by otowelt | 2011-06-14 06:40 | びまん性肺疾患

関節リウマチ関連肺疾患における病態別の生存

当たり前の結果だが…。

Lung diseases directly associated with rheumatoid arthritis and their relationship to outcome
Eur Respir J 2011; 37: 1411–1417


背景:
 関節リウマチ関連肺疾患(RA-LD)の臨床的アウトカムと死因は
 よくわかっていない。

方法:
 レトロスペクティブスタディがRA-LD患者144人に施行された。
 最初の呼吸器的検査の受診からフォローアップ中央値は4.5年であった。

結果:
 臨床、画像、病理学的に以下のように分類。
 合計57人の患者がUIP、31人が気管支拡張症、16人がNSIP、
 11人が細気管支炎、5人がOP、5人がDAD、19人が混合型の肺病変だった。
 5年生存率はUIPで36.6%、気管支拡張症で87.1%、NISPで93.8%、
 細気管支炎で88.9%、OPで60%、DADで20%であった。
 DADの生存は、UIPに比べて悪かった。
 全生存率についてUIPは、気管支拡張症、NISP、細気管支炎より悪かった。
 144人中71人(49.3%)が死亡、うち58人(81.7%)が呼吸器的原因で死亡。
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結論:
 RA-LD患者において、DADは最も高い死亡率であり
 UIPはNSIPなどの患者よりも全生存が悪い。

by otowelt | 2011-06-03 05:17 | びまん性肺疾患

血清periostinレベルはIIPsにおける線維化と関連

感度と特異度の高いバイオマーカーの開発がさかんだが、
いまだ決定的なものは出ていない。
臨床的にはKL-6、SPあたりをよく使っている。

Periostin, a matrix protein, is a novel biomarker for idiopathic interstitial pneumonias
Eur Respir J 2011; 37: 1119–1127


背景:
 特発性間質性肺炎(IIPs)は、組織学的にいくつかに分類され
 usual interstitial pneumonia (UIP)、nonspecific interstitial
 pneumonia(NSIP)、cryptogenic organising pneumonia (COP)
 などがある。われわれは、マトリックスタンパクであるperiostinが
 IIPsの組織病理分類におけるバイオマーカーとして有用かどうか検証した。

方法:
 IIPsの組織型のそれぞれにおいて、免疫組織化学的解析をおこない
 血清periostinレベルを測定し、また血清periostinレベルと
 呼吸機能の関連についてidiopathic pulmonary fibrosis (IPF)患者で
 検証した。

結果:
 periostinは、UIPとfibrotic NSIPの患者において強く発現しており、
 cellular NSIPとCOPの患者において、正常肺と同様発現は弱かった。
 IPFにおける血清periostinレベルは、正常人やCOP患者よりも
 有意に高かった。さらに、IPFにおける血清periostinレベルは
 呼吸機能とも関連していた。
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結論:
 血清periostinレベルはIIPsにおける線維化と関連していると考えられ
 バイオマーカーとして有用である可能性が示唆される。

by otowelt | 2011-05-07 17:37 | びまん性肺疾患

MUC5B発現調節傷害は、肺線維症に関与

すごく大事な論文なのだが、訳してもわずかしか意味がわからなかった…。

A Common MUC5B Promoter Polymorphism and Pulmonary Fibrosis
N Engl J Med 2011;364:1503-12



背景:
 肺線維症の病態にはいくつかの変異が関連しているが、これは
 集団的リスクの部分的な説明にすぎない。

方法:
 全ゲノム連鎖解析により、82家族でIPFおよび11p15の3.4Mb領域との連鎖を
 検出した。また、家族性間質性肺炎83人、IPF患者492人、コントロール322人
 において、肺に発現しているゲル形成ムチン遺伝子の変異評価をおこなった。
 さらに、肺組織においてMUC5B発現を評価。

結果:
 MUC5B転写開始部位の3kb上流に位置するSNP:rs35705950の変異型の
 対立遺伝子の頻度は、家族性間質性肺炎において34%、IPFにおいて38%、
 コントロール群において9%であった。
 このSNPにおける変異型の対立遺伝子が、ヘテロないしホモである被験者の
 疾患ORは、家族性間質性肺炎ではそれぞれ6.8(95%CI 3.9~12.0)、
 20.8(95% CI 3.8~113.7)であった。またIPFにおいてはぞれぞれ
 9.0(95% CI 6.2~13.1)、21.8(95% CI 5.1~93.5)であった。
 IPF肺におけるMUC5Bの発現は、コントロール患者の14.1倍高かった
 (P<0.001)。rs35705950の変異型の対立遺伝子は、コントロール患者の
 肺におけるMUC5B発現のup-regulationに関連。
 (野生型対立遺伝子がホモであるコントロール患者の37.4倍:P<0.001)
 IPFの病変で、MUC5B蛋白が発現した。
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結論:
 MUC5Bのプロモーターにみられるポリモルフィズム:多型は、
 家族性間質性肺炎とIPFに関連していた。また、肺における
 MUC5Bの調節機能障害は、肺線維症の発症に関与しているものと考える。

by otowelt | 2011-04-23 07:03 | びまん性肺疾患