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ボールペン・ポケットナイフによる緊急輪状甲状靱帯切開は有効

e0156318_9104731.jpg 欧米の医師たちのTwitterで話題になっている論文です。部位が違いますが、医龍の第1巻を思い出しました(朝田がミキの緊張性気胸をボールペンで解除)。
 この研究のセカンドオーサーは、8月に「おそらく実施不可能であろう」と結論づけていますが(Emerg Med J. 2016 Aug;33(8):553-6.)、これは市販のボールペンの一択でした。成否はポケットナイフの存在によるのかもしれません。

Braun C, et al.
Bystander cricothyroidotomy with household devices - A fresh cadaveric feasibility study.
Resuscitation. 2016 Nov 1;110:37-41. doi: 10.1016/j.resuscitation.2016.10.015. [Epub ahead of print]


背景:
 いろいろなプロモーション画像、医療テレビ番組、インターネットチャットルームでは、非医療デバイスによる救命目的の輪状甲状靱帯切開が紹介されている。しかしながら、バイスタンダーが家庭用品を用いてそれを実施してガス交換が本当に維持できるかどうか不透明である。この研究は、バイスタンダーがポケットナイフやボールペンなどの家庭用品を用いて緊急輪状甲状靱帯切開を行えるかどうか調べたものである。

方法:
 2つのよく用いられるペンと5つの異なるタイプのポケットナイフが用いられた。解剖学的知識がない、あるいは基本的な知識しかない10人の参加者がペン1本、ポケットナイフ1本を選び、簡単な紹介のあと迅速に緊急輪状甲状靱帯切開を行うよう依頼された(献体患者を用いた)。プライマリアウトカムは、ペン円筒の正しい位置への挿入と口-ペン換気による胸郭拳上(換気)とした。

結果:
 8人(80%)の参加者が正しく上気道アプローチを行い、最終的に換気ができた。5人の参加者は輪状甲状靱帯切開を行い、3人の参加者は気管切開を実施した。筋肉および軟骨の障害がよくみられたが、処置後剖検では大血管の傷害は1人も観察されなかった。しかしながら、平均成功時間は243秒であった。

結論:
 バイスタンダーが実施するボールペンやポケットナイフを用いた献体モデル患者に対する緊急輪状甲状靱帯切開は80%で成功した。大血管の損傷などの重大な合併症はみられなかった。こうした事態は至極まれであろうが、緊急事態では望ましいオプションと考えてよい。アウトカムをよりよくするため、頚部の解剖学的なランドマークと切開技術を救急コースで教育すべきであろう。

by otowelt | 2016-11-28 00:46 | 救急

HOT-ER試験:救急部におけるハイフロー酸素療法は通常酸素療法と比べて人工呼吸器使用を有意に減らさない

e0156318_13512197.jpg ※ご指摘いただき、一部修正しています。
 有意差はありませんが、ハイフロー酸素療法の方が人工呼吸器を回避できるかもしれません。

Jones PG, et al.
Randomized Controlled Trial of Humidified High-Flow Nasal Oxygen for Acute Respiratory Distress in the Emergency Department: The HOT-ER Study.
Respir Care. 2015 Nov 17. pii: respcare.04252. [Epub ahead of print]


背景:
 ハイフロー酸素療法(Humidified high-flow nasal cannula :HFNC)は、通常の酸素療法では効果がみられない呼吸不全に対して救急部やICUにおいて有用性が高いとされている新しい酸素療法である。この研究の目的は、HFNCが通常の酸素療法と比較して急性呼吸不全患者の人工呼吸器装着の頻度を減らすことができるかどうか調べることである。

方法:
 これは、救急部において低酸素血症に陥った成人呼吸不全患者のランダム化比較試験である。プライマリアウトカムは、救急部における人工呼吸器の装着とした。

結果:
 1287人の患者をスクリーニングしたところ、322人が適格基準を満たした。そのうち19人は解析から除外された。残りの患者のうち、165人がHFNCに、138人通常の酸素療法にランダムに割り付けられた。ベースラインの患者背景は同等であった。HFNC群では、3.6%(95%信頼区間1.5-7.9%)の患者が救急部において人工呼吸器装着を余儀なくされた(vs. 通常酸素療法群7.2% 、P = .16)。入院後24時間以内に広げると、HFNC群5.5%(95%信頼区間2.8-10.2%)、通常酸素療法群11.6%(95%信頼区間7.2-18.1%)であった(P = .053)。死亡率や在院日数には有意差はみられなかった。有害事象は総じてまれであったが、HFNC群のほうが通常酸素療法群よりもCO2貯留によるGCSスコアの低下(悪化)が少なかった(0% vs. 2%)

結論:
 救急部において、HFNCは通常の酸素療法と比べて統計学的に有意な人工呼吸器回避効果をもたらすわけではなかった。


by otowelt | 2015-12-04 00:24 | 救急

携帯電話市民ボランティア要請システムはバイスタンダーCPR実施率を上昇させる

e0156318_16193746.jpg 生存までは改善しなかったようです。

Mattias Ringh, et al.
Mobile-Phone Dispatch of Laypersons for CPR in Out-of-Hospital Cardiac Arrest
N Engl J Med 2015; 372:2316-2325


背景:
 バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)は、院外心停止患者の生存率の上昇に関連している。われわれは、携帯電話使用者の位置を即座に特定することが可能な携帯電話の測位システムを用いて、院外心停止患者の近くにいるCPRの訓練を受けた市民ボランティアを現場に派遣することで、CPR実施率が上昇するかどうか検討した。

方法:
 スウェーデンのストックホルムにおいて、2012年4月~2013年12月に盲検ランダム化比較試験を実施した。救急・消防・警察に通報されることで起動される携帯電話測位システムを用い、院外心停止患者から 500m以内にいる訓練を受けた市民ボランティアの位置を特定した。その後、ボランティアを患者のところに派遣する群(介入群)と派遣しない群(コントロール群)にランダムに割り付けた。プライマリアウトカムは、救急・消防・警察が到着前のバイスタンダーCPR実施率。セカンダリアウトカムとして30日生存率などを含んだ。

結果:
 CPR訓練を受けた市民ボランティア5989人が登録され、試験期間中に9828人が登録された。院外心停止667件で携帯電話測位システムが起動した。ボランティア介入群46%(306人)、コントロール群54%(361人)だった。バイスタンダーCPR実施率は、介入群62%(305人中188人)、コントロール群48%(360人中 172人)だった(絶対差13.9%ポイント、95%信頼区間 6~21、p<0.001)。両群における生存率に差はみられなかった(絶対差2.6%ポイント、95%信頼区間−2.1~7.8、p=0.28)。

結論:
 CPR訓練を受けた市民ボランティアを派遣するための携帯電話測位システムは、院外心停止患者におけるバイスタンダーCPR実施率を有意に上昇させた。


by otowelt | 2015-06-15 16:07 | 救急

運転中の携帯電話の使用は交通事故のもと

e0156318_1154946.jpg 警察24時系の番組では携帯電話の使用による高速道路の事故などが取り上げられていますね。

Sheila G. Klauer, et al.
Distracted Driving and Risk of Road Crashes among Novice and Experienced Drivers
N Engl J Med 2014; 370:54-59


背景:
 二次的な作業によって注意が散漫するよそ見運転は、10代~成人の運転者いずれにおいても自動車事故の主たる原因とされている。

方法:
 携帯電話の使用などの二次的な作業が、自動車事故および事故未遂のリスクと関連しているかどうか検証する2試験を行った。客観的に評価を行うため、加速度計、ビデオカメラ、GPSセンサー、その他のセンサーを免許を取得したばかりの運転者42人(16.3~17.0 歳)と、運転経験が豊富な成人109人の自動車に設置した。

結果:
 当該試験期間中に、自動車事故および事故未遂は免許を取得したばかりの運転者で167件、熟練した運転者で518件同定された。初心者では、携帯電話をかける場合(オッズ比8.32、95%信頼区間2.83~24.42)、携帯電話を取ろうとした場合(オッズ比7.05、95%信頼区間2.64~18.83)、携帯電話でメールなどのテキストメッセージを送受信する場合(オッズ比3.87、95%信頼区間1.62~9.25)、携帯電話以外の物を取ろうとする場合(オッズ比8.00、95%信頼区間3.67~17.50)、車外の道路脇の物を見る場合(オッズ比3.90、95%信頼区間1.72~8.81)、何かを食べている場合(オッズ比2.99、95%信頼区間1.30~6.91)に自動車事故および事故未遂のリスクが有意に上昇した。熟練した運転者では、携帯電話をかける行為が自動車事故および事故未遂のリスクの有意な上昇と関連していた(オッズ比2.49、95%信頼区間1.38~4.54)。

結論:
 運転免許を取得したばかりの運転者における自動車事故および事故未遂のリスクは、携帯電話をかけたりメールをするといった二次的な作業によって上昇した。


by otowelt | 2014-01-06 00:53 | 救急

救命救急センターにおける医原性気胸の約半数は中心静脈カテーテル挿入後に起こっている

e0156318_23212340.jpg 報告するにはなかなか勇気の必要な論文です。呼吸器科的には気管支鏡後やCTガイド下生検後の気胸の方がコモンですが、救命救急センターでの気胸については中心静脈カテーテル挿入後の気胸が多いようです。

El Hammoumi MM, et al.
Iatrogenic pneumothorax: experience of a Moroccan Emergency Center.
Rev Port Pneumol. 2013;19(2):65-9.


背景および方法:
 教育病院の救命救急センターでの医原性気胸(IPx)の頻度は、侵襲的な処置が多くなるにつれて増加している。そのため我々はレトロスペクティブ試験において、本センターにおけるIPx症例を同定した。

結果:
 2011年1月から2011年12月までの間、36人の患者が侵襲性処置後のIPxと診断された。平均年齢は38歳(19~69歳)であり、患者のうち21人(58%)が男性、15人(42%)が女性だった。6例が診断的処置後のIPxであり、30例が治療的処置後のIPxであった。8人(22%)が基礎の肺疾患に対する処置であり、28人(78%)が肺以外の疾患に対する処置後のIPxであった。
 IPxを起こした処置として最も多かったものは、中心静脈カテーテル挿入(20人:55%)であり、人工呼吸器装着が8例(22%)であった(そのうち3例は両側気胸)。また胸腔穿刺後のIPxが6例(16%)、救命目的の緊急気管切開後のIPxが2例みられた。
 ほとんどの患者は細径の胸腔ドレーンを留置された。平均ドレナージ期間は3日(1~15日)だった。残念ながら、気管切開後の患者は脳の虚血によって15日後に死亡した。

結論:
 教育病院におけるIPxの頻度は侵襲的な処置が多くなるにつれて増加しているため、十分な監督下でおこなわれるべきである。


by otowelt | 2013-07-29 00:03 | 救急

飛行機内での急変の原因の大半は失神、呼吸器症状、消化器症状

 残念ながら、日本ではアメリカのような「善きサマリア人の法」は適応されません。飛行機内で「お医者様はいらっしゃいますか」という場面で手を挙げて、たとえ機内のあらゆる医療器具を用いても救命できなかった場合、患者家族から訴えられるリスクがある国が日本です。訴訟をおそれて、手を挙げる医師は日本では多くないと言われています(刑法37条第1項、民法698条で責任は免除されるはずだという意見もあります)。

 ―――皆さんは日本国内の飛行機内で急変があった場合、手を挙げますか?

 最近のNEJMはアニメやら動画やら、かなり力を入れているようですね。しかしながら、この動画化の流れが顕著になっていくと、いつの日か、引用が難しくなってくる時代がくるんじゃないかと危惧しています。
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D.C. Peterson, et al.
Outcomes of Medical Emergencies on Commercial Airline Flights
N Engl J Med 2013;368:2075-83.


背景:
 全世界で、毎年27億5000万人が民間航空機を利用するとされており、その飛行中に医学的な緊急事態が生じた場合、医療アクセスは限定されてしまう。われわれは飛行中の医学的緊急事態およびそのアウトカムを報告した。

方法:
 2008年1月1日~2010年10月31日のあいだ、5つのアメリカ国内ないし国際航空会社から、医師が指揮する医療通信センターに通報があった医学的緊急事態の記録をサーベイした。その中で、頻度の高い疾患、機内で提供された医学的支援の種別を同定した。予定外の着陸空港変更、病院搬送、入院発生率、およびこれらに関連する因子を調べ、死亡率を算出。

結果:
 医療通信センターへの通報のあった飛行中の医学的緊急事態は合計11920件あった(飛行604回あたり 1件)。
 このうち、頻度の高かった疾患は、失神または失神前状態(37.4%)、呼吸器症状(12.1%)、悪心または嘔吐(9.5%)だった。心肺停止が最も死亡数が多く、それ以外では失神または失神前状態の死亡が4人と多かった。その他の飛行中の医学的緊急事態の48.1%で、乗り合わせた医師が医療支援を行い、そのうち7.3%では着陸空港が変更された。緊急着陸をおこなう確率は、医師が救援した場合は9.4%(95%信頼区間 8.7〜10.2)、救急医療サービス(EMS)提供者による救援で9.3%(95%信頼区間6.8〜11.7)と高かったものの、乗務員のみで対処した場合は3.8%(95%信頼区間3.1〜4.5)と低い結果であった。多変量解析では、緊急着陸との強い相関があったファクターは自動体外式除細動器(AED)の使用であった(オッズ比3.02、95%信頼区間1.89〜4.83)であった。
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 救援した患者のうち、処方頻度が最も高かったのは酸素で49.9%だった。次いで0.9%生食水の点滴が5.2%、アスピリンが5.0%だった。
 飛行後のフォローアップデータを入手することができた10914人のうち、25.8%が病院に搬送され、8.6%が入院、0.3%が死亡した。入院の原因として、脳卒中の可能性(オッズ比3.36、95%信頼区間1.88~6.03)、呼吸器症状(オッズ比 2.13、95%信頼区間1.48~3.06)、心臓症状(オッズ比 1.95、95%信頼区間1.37~2.77)の頻度が高かった。

結論:
 飛行機内での医学的緊急事態の大半は失神、呼吸器症状、消化管症状によるものであり、医師が任意で医療を提供する頻度が高かった。着陸空港の変更または死亡を起こした医学的緊急事態は少数例であり、飛行中に医学的緊急事態が発生した乗客の4分の1は病院で追加の医学的評価を受けた。



by otowelt | 2013-06-01 00:07 | 救急

東日本大震災における呼吸器疾患の実態

 このブログでも、過去にいくつか東日本大震災関連の論文を紹介しました。

東日本大震災における胸部外傷
東日本大震災における市中肺炎の発生

 Respiratori Investigationからの論文です。とても重要な報告です。

Shinya Ohkouchi, et al.
Deterioration in regional health status after the acute phase of a great disaster: Respiratory physicians' experiences of the Great East Japan Earthquake
Respiratory Investigation, in press. 15 March 2013


背景:
 2011年3月11日に東日本大震災が起こった。引き続いて起こった荒廃は余震によるものではなく、津波によるものであった。
 2012年2月29日現在、15852人が死亡し、いまだ3279人が行方不明の状態である。死亡者のうち、90.6%が溺水、4.2%が破片などの外傷、0.9%が火災による死亡であった。そして、全体の55.7%が65歳以上の高齢者死亡だった。救急医療チームの尽力にもかかわらず十分な援助がいきわたらず、多くの人が彼らの到着前に死亡した。生存したものの避難が必要となった人は宮城県の報告では32万人にのぼったといわれている。
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 そのため、医療従事者の主たる目的は被災地の人の健康状態の悪化を防ぐことにあった。この論文を通して、自然災害の急性期に何が重要であるかを考察したい。

方法:
 地震後の急性期に正確な入院情報を得ることはできなかったため、宮城県内の14の病院からアンケートをに基づいて入院患者の調査をおこなった。これらの病院は宮城県内のベッド数の30%を有していた。呼吸器科に入院した患者に対する調査をおこない、疾患の頻度の変化を調べた。

結果:
 2011年3月11日から4月10日までの患者数は、2010年の同時期と比較して2.7倍に増えていた(1223人 vs 443人)。気管支喘息、COPD急性増悪、市中肺炎は全ての年齢層において2011年のほうが2010年よりも2~3倍増えた(それぞれ98人 vs 32人、117人 vs 46人、443人 vs 202人)。市中肺炎の半数は緊急避難場所から発生したものであった。溺水などの他の呼吸器疾患での入院は少なかった。
 疾患の年齢分布には2010年と2011年で差はみられず、呼吸器疾患での死亡率がこの震災によって有意に増えたわけではなかった。
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結論:
 これらの結果は、避難場所・居住地の劣悪な環境、または避難者過多、基礎資源不足に由来するものである。自然災害の後の急性期の健康被害を予防するために、適切な避難場所、供給システム、ワクチンを含む感染予防策が必要であろう。


by otowelt | 2013-03-25 00:19 | 救急

心肺蘇生に家族が立ち会うことの意義

e0156318_17111674.jpg 愛する家族への心肺蘇生に立ち会った家族のほうが、立ち会わなかった家族よりも心的外傷後ストレス障害症状が少なかったというNEJMからの報告です。
 皆さんは立ち会いたいですか、それとも立ち会いたくないですか。

Patricia Jabre, et al.
Family Presence during Cardiopulmonary Resuscitation
N Engl J Med 2013; 368:1008-1018, March 14, 2013


背景:
 心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:CPR)への家族の立ち会いが家族や医療チームに与える影響について、意見が分かれている。

方法:
 フランスの15の病院で2009年11月から2011年10月までおこなわれたクラスターランダム化試験である。在宅で心停止を起こし、病院到着前CPRを受けた患者家族570人を本試験に登録した。家族にCPRに立ち会う機会を組織的に提供する群と、家族の立ち会いに関して標準的な方法に従うコントロール群のいずれかにランダムに割り付けた。
 CPR後90日目にImpact of Event Scale (IES)およびHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)を用いてアンケート・電話で家族のスコアリングをおこなった。
 プライマリエンドポイントは、90日目に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関連症状(IES 30点以上)を有する家族の割合とし、セカンダリエンドポイントは、不安・抑うつ症状(HADS 10点以上)、家族の立ち会いそのものが現場のCPR努力に与える影響、医療チームの満足度、法医学的な損害賠償請求の発生など。
 なお、ここで定義する家族とは第一親等の人間のみとした。

結果:
 立ち会い介入群では家族266人中211人(79%)がCPRに立ち会ったのに対して、コントロール群では304人中 131人(43%)がCPRに立ち会った。
 95人の家族(17%)がIES解析に同意しなかったため、残りの475人が感度解析に組み込まれた。
 ITT解析では、PTSD関連症状はコントロール群のほうが立ち会い介入群よりも有意に高く(補正オッズ比1.7、95%信頼区間1.2~2.5、P=0.004)、CPRに立ち会わなかった家族のほうが立ち会った家族よりも有意に高かった(補正オッズ比1.6、95%信頼区間1.1~2.5、P=0.02)。
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 CPRに立ち会わなかった家族で不安と抑うつの症状が高頻度にみられた。家族の立ち会いのもとでのCPRは、蘇生内容、患者生存、医療チームの心理的ストレスレベルに影響せず、法医学的な損害賠償請求は発生しなかった。
 なお、これら両群における患者アウトカム(自発循環の再開、生存した状態での入院、28日生存率)に差はみられなかった(それぞれp=0.59, 0.42, 0.64)。

結論:
 患者のCPRへ家族を立ち会わせることは、心理学的パラメータにおける良好なアウトカムに関連し、蘇生内容の障害や医療チームのストレスが増大することもなかった。


by otowelt | 2013-03-15 00:46 | 救急

東日本大震災における市中肺炎の発生

e0156318_16201243.jpg東日本大震災についてはRespiratory Investigationにも報告があり、以前ご紹介しました。

東日本大震災における胸部外傷

今回、Thoraxから肺炎に関する報告がありました。

Hisayoshi Daito, et al.
Impact of the Tohoku earthquake and tsunami on pneumonia hospitalisations and mortality among adults in northern Miyagi, Japan: a multicentre observational study
Thorax Online First, published on February 19, 2013


背景:
 2011年3月11日に東北地方の大地震と津波が東日本海岸一帯を襲った。3週間以内に肺炎の入院や死亡が地方病院で相次いだ。

方法:
 多施設共同サーベイが宮城県北部の気仙沼市(人口7万4000人)の3病院で行われた。18歳以上の成人患者で2010年3月から2011年7月に市中肺炎で入院した患者をデータベースおよび診療録から同定した。
 分割回帰分析(Segmented regression analyses)がおこなわれ、肺炎の頻度がどのように変化したかを検証した。
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 気仙沼市は、65歳以上の高齢者が30.2% (n=22421)を占め、80歳以上の高齢者は8.9% (n=6618)にのぼる。これは全国平均の数値(23%、6.4%)よりも高いものである。

結果:
 合計550人の肺炎の入院があり、325人は被災前、225人は被災後であった。被災後の市中肺炎の90%が65歳以上であり、8例(3.6%)のみが津波による溺水(near-drowning)と関連していた。臨床的パターンと病原菌は被災前後を問わず同定できた。Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniaeが最も多くみられた病原菌であり、被災後はHaemophilus influenzaeによる肺炎が有意に多くみられた。
 被災後3ヶ月の間は肺炎の頻度が右肩上がりであり、週ごとの肺炎による入院および肺炎関連死亡の発生率はそれぞれ5.7倍(95% CI 3.9 to 8.4)、8.9倍(95% CI 4.4 to 17.8)であった。この増加は介護施設の入居者に最も多く、避難場所の患者がそれに次いだ。
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結論:
 東北地方の大地震と津波後の成人に肺炎の発症が多くみられた。この確たる原因は同定できなかったものの、年齢やストレスなどの複数の因子が絡み合い、肺炎のアウトブレイクにつながったのではないだろうか。


by otowelt | 2013-02-20 11:11 | 救急

東日本大震災における胸部外傷

e0156318_16201243.jpg 東日本大震災から2年近く経とうとしているのですね。
 ディスカッションで述べられているように、生存できなかった犠牲者の多さが胸部外傷受診の低さにつながったのではないかと思います。

Kimiaki Sato, et al.
Chest injuries and the 2011 Great East Japan Earthquake
Respiratory Investigation(2013), doi:10.1016/j.resinv.2012.11.002


背景:
 大地震における胸部外傷についてはまだよくわかっていない。われわれは、2011年3月11日の東日本大震災によって診断ないし治療された胸部外傷について患者プロファイルを記載することとした。

方法:
 大震災から最初の1週間の間に石巻赤十字病院を受診した3938人の診療録をレトロスペクティブにレビューした。
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 合計77人の患者が病院到着時死亡していた。残りの3861人のうち42人(1.1%)が胸部外傷を有していた。胸部外傷は身体所見や胸部レントゲン、胸部CTに基づいて診断された。

結果:
 胸部外傷は42人の患者にみられ、22人が男性、20人が女性であった(年齢範囲21-99歳)。胸部外傷の最もよくみられた原因は津波であった(21人)。その次に転落(9人)、交通事故(1人)であった。しかし、11人については情報が喪失していた。
 最もよくみられた胸部外傷の病因は裂傷や挫傷といった表層外傷であった(37人)。5人のみが肋骨骨折をきたしており、胸腔内異常は気胸(3人)、血胸(1人)、誤嚥(1人)といった内訳であった。

ディスカッション:
 Wenchuanにおける地震や、阪神淡路大震災では10%以上の患者に胸部外傷がみられたとされている(World J. Surg. 2010;34:728–32.、Chest 1996;110:759–61.)。今回の東日本大震災における胸部外傷は少なかったが、これは全体の重症度が低かったり地震の規模が小さかったわけではなく、規模の大きさや津波の影響、低体温の影響などによって致死的に陥った犠牲者が多数存在したためではないかと考えられる。

結論:
 胸部外傷の患者数は驚くべきことに少数であった。ほとんどの患者が入院を要さなかった。重篤な胸部外傷による少数生存者は、大地震による津波によって説明される外傷であった。
 

by otowelt | 2013-01-05 10:57 | 救急