カテゴリ:救急( 38 )

院外CPAにおいてACD-CPRは標準CPRに比べ有効

ACD(Active Compression-Decompression)-CPRは、
①胸部に吸着させる吸引カップ
②胸部の押し下げ・引き上げ用のハンドル
③80拍/minのメトロノーム
④操作中圧迫・減圧の程度を表示するゲージ
によって構成される心肺蘇生用の医療機器である。
見ての通り、通常のCPRでは実現できない陰圧が達成できる。
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Standard cardiopulmonary resuscitation versus active compression-decompression cardiopulmonary resuscitation with augmentation of negative intrathoracic pressure for out-of-hospital cardiac arrest: a randomised trial. Lancet. 2011 Jan 22;377(9762):301-11.

背景:
 院外CPAに対するACD-CPRが、神経機能を温存した生存にどの程度
 影響をおよぼすかあるいは、どの程度安全かを評価する多施設共同
 ランダム化試験を実施。

方法:
 アメリカの都市部、都市周辺部、地方部の46の救急医療施設で
 院外CAPのアウトカムをUtsteinガイドラインに基づいて評価。
 標準CPRあるいはインピーダンス閾値弁装置で胸腔内陰圧を増強させて
 ACD-CPRを施行する群にランダムに割り付けた。
 プライマリエンドポイントは、退院時の神経機能温存率
 (改訂Rankin scaleスコア≦3)とし、初期救助者以外の全研究者に
 割り付け情報は知らされないものとした。

結果:
 2470人がランダムにそれぞれに割り付けられ、標準CPR1201人のうち
 813人(68%)が、ACD-CPR群1269人のうち840人(66%)がCPRを
 施行され、合計1653人が解析された。標準CPR群では6%(47/813人)
 が神経機能を温存したのに対し、ACD-CPR群は9%(75/840人)で
 あった(OR1.58、95%CI1.07~2.36、p=0.019)。
 1年生存率も標準CPR群が6%(48/813人)、ACD-CPR群は
 9%(74/840人)と有意差がみられた(p=0.03)。
 重篤な有害事象の発現率は差はなかったものの、肺水腫は通常CPR群よりも
 CD-CPR群で多くみられた(p=0.015)。

結論:
 ACD-CPRは標準CPRに比べ有効であり、一般化が可能になると考えられる。

by otowelt | 2011-02-11 23:34 | 救急

院外CPAではVFまたはpulseless VTが多い

AEDを公共の場で普及させる上で、かなり重要な試験である。
大阪とコペンハーゲンでも同様の結果が出たことがある。
・Outcome and characteristics of out-ofhospital cardiac arrest according to location
of arrest: a report from a large-scale, population-based study in Osaka, Japan. Resuscitation 2006;69:221-8.
・Differences between out-of-hospital cardiac arrest in residential and public locations and implications for public-access defibrillation. Circulation 2010;122:623-30.


NEJMから。

Ventricular Tachyarrhythmias after Cardiac Arrest in Public versus at Home
N Engl J Med 2011;364:313-21.


背景:
 院外における心停止後、最初に記録される心拍異常としてVFまたは
 pulseless VTが発生する率は、予想以上に低下してきている。
 これは、一般市民によるAEDが普及していることから、VFまたはpulseless VT
 が公共の場での心停止が発生した場合に、頻繁にみられる心拍異常である
 可能性が示唆される。

方法:
 2005年~2007年に、北アメリカの10地域の成人を対象とした
 院外心停止に関する前向きコホート研究をおこなった。
 VFまたはpulseless VT発生率と生存退院率を、心停止が
 自宅で発生した場合と公共の場で発生した場合とで比較。

結果:
 12930の院外心停止のうち、2042が公共の場で発生し、9564が自宅発生。
 自宅で発生した場合のVFまたはpulseless VT発生率は、救急隊員が
 心停止を目撃した場合は25%、一般市民が心停止を目撃した場合35%、
 一般市民がAEDを使用した場合は36%。公共の場で発生した場合は、
 上記はそれぞれ38%,60%,79%。公共の場で発生した場合、
 最初にVFまたはpulseless VTがみられる補正ORは、自宅で発生した場合と
 比べると、一般市民が心停止を目撃した場合は2.28であり
 (95%CI 1.96~2.66,P<0.001)、一般市民がAED を使用した場合は
 4.48(95% CI 2.23~8.97,P<0.001)であった。生存退院率は
 心停止が公共の場で発生し一般市民がAEDを使用した場合34%であったが、
 自宅で発生した場合は12%(補正OR2.49,95% CI 1.03~5.99,P=0.04)。
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結論:
 院外心停止が誰によって目撃されたかどうか、また一般市民により
 AEDが使用されたかどうかを問わず、最初にVFまたはpulseless VTが
 みられる心停止の割合は、発生場所が公共の場の方が自宅よりもかなり高い。

by otowelt | 2011-01-30 06:01 | 救急

胸骨圧迫非中断下のエアウェイスコープは有用である可能性

Resuscitationは救急領域ではそれなりの論文ではある。
impact factorは2.712とやや低いが…。

最近、エアウェイスコープの論文が明らかに多い。
(以下、AWSは商品名への馴染みも含めてエアウェイスコープと訳す)
ERJやCHESTのEBUS-TBNAの論文のような感じで、
新しいモノへの興味がアクセプトに反映されている気がする。

過去にも記載した。
救急におけるGlide Scopeを用いた挿管

当たり前だが、心肺蘇生時に胸骨圧迫の中断は最小限にとどめるよう推奨されている。
push hard, push fast, without interruption
G2000では、CPA時に気管挿管を行うことが推奨されていた。おそらくは
非同期CPRの利点を生かすためでもあったが、G2005では30:2のCPRになって
しまったので、相対的に気管挿管の意義は低下した。そのため、アドバンスな気道
確保器具としてコンビチューブやラリンゲアルマスクエアウェイなどが見直された
経緯がある。コンビチューブ、ラリンゲアルマスクエアウェイ、気管挿管など
2つ以上の高度な気道確保に習熟しcase by caseで適応することがG2005で
推奨された。気管挿管は、挿入操作やチューブ位置確認のための胸骨圧迫の中断と
いったCPRの阻害因子があるため、熟練した蘇生者だけに許された手技になった。

気管挿管時に中断しなければ当然OKだが、現実そうもいかないこともある。
このジレンマを解決するため色々な論文が出てくるわけである。
特にエアウェイスコープなんかはその対象として、格好のモノとなった。
なので、今回のような論文がどんどんと出てくるのである。

Brief reportもチラホラあったのを知っているが。
Tracheal intubation using Macintosh and 2 video laryngoscopes with and without chest compressions
The American Journal of Emergency Medicine, 1 May 2010


以下、今回の論文。
Comparison of three types of laryngoscope for tracheal intubation during rhythmic chest compressions: A manikin study
Resuscitation, 07/08/2010


背景:
 心肺蘇生時の胸骨圧迫時に挿管する際に、胸骨圧迫を中断すると
 生存に関してはあまりよくないと考えられている。
 われわれは、マネキンを使用してエアウェイスコープが胸骨圧迫を中断せずに
 挿管が有用かどうかを検証した。

方法:
 35人のあまり挿管経験のない人間を術者とした。
 喉頭鏡は、マッキントッシュ型、Pentax-AWS(AWS)(エアウェイスコープ)、
 optic laryngoscope Airtraq (ATQ)を用いた。
 胸骨圧迫時の挿管に関して、その成功率と時間を観測した。

結果:
 周期的な胸骨圧迫中に、9人の術者がマッキントッシュで失敗、
 7人がATQで失敗、エアウェイスコープでは一人も失敗しなかった。
 成功率は明らかにエアウェイスコープで高かった。
 マッキントッシュと比較:P < 0.01、ATQと比較:P < 0.05
 挿管に要した時間も、エアウェイスコープがもっとも短かった。

結論:
 胸骨圧迫非中断下での挿管は、マッキントッシュやATQよりは
 エアウェイスコープの方が成功率も時間も良好である。

by otowelt | 2010-07-13 12:42 | 救急

CPAおよび内科非CPAにおける救急隊による院外挿管は生存率を改善する

Out-of-Hospital Endotracheal Intubation Experience and Patient Outcomes
Ann Emerg Med. 2010;55:527-537


目的:
 過去のスタディで、多くの複雑な医療手技を学んだプロバイダー
 による手技は患者のアウトカムを改善させると考えられている。
 院外挿管は難しい手技である。私たちはこの院外挿管が患者の生存に
 どう寄与したかを調べた。

方法:
 ペンシルヴァニア州における救急サービスとリンクして解析。
 患者の退院、死亡率を院外挿管された患者において検索した。
 われわれは、院外挿管を経験した回数によって以下のように定義した。
  2000年~2005年までに
  1~10回挿管したもの:low
  11~25回挿管したもの:medium
  26~50回挿管したもの:high
  51回以上挿管したもの:very high
 また、患者においては、2003年から2005年に挿管されたのちに生存あるいは
 退院した患者を検索した。
 患者の生存と院外挿管の経験数による関連を評価。

結果:
 2003年から2005年に4846人の救急隊が挿管をおこなった。
 2003年から2005年まで33117人の患者に、2000年から2005年に62586人の
 患者に挿管をおこなった。
 21753人のCPAの患者において、very high群によって挿管された場合
 有意に生存率が高かった。ORはlow群と比較して、very high群では
 1.48 (95%CI 1.15 to 1.89)、high群で1.13 (95% CI 0.98 to 1.31)、
 medium群で1.02(95% CI0.91 to 1.15)あった。
 8162人の非CPA内科患者において、high群およびvery high群で有意に
 生存率が高かった。ORは、low群と比較して
 very high群で1.55 (95% CI 1.08 to 2.22)、high群で1.29
 (95% CI 1.04 to 1.59)、medium群で1.16 (95% CI0.97 to 1.38)。
 3202人の外傷非CPA患者において、生存率は経験にかかわらず院外挿管群では
 改善しなかった。ORはlow群と比較して、very high群で1.84
 (95% CI 0.89 to 3.81)、high群で1.25 (95% CI 0.85 to 1.85)、
 medium群で0.92 (95% CI 0.67 to 1.26)であった。
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結論:
 CPAおよび内科非CPAにおける救急隊による院外挿管は生存率を改善する。
 しかしながら、外傷非CPA患者においては生存率を改善しない。

by otowelt | 2010-05-28 14:33 | 救急

挿管後気管狭窄

最近、気管切開後の患者様が、抜管3ヶ月で呼吸困難を訴えてきたので
レントゲン・CTを撮影したが、特に問題なかった。
呼吸器内科医にとって、挿管後気管狭窄というのははナーバスになる疾患の1つである。
抜管した後に起こることが多いのだが、病名はあくまで挿管後気管狭窄、である。

●挿管後気管狭窄概論
 原因として、気管挿管・気管切開後の瘢痕性狭窄がまず挙げられる。
 過去2年以内に挿管・気管切開を受けた患者で呼吸困難を呈する場合に
 まずは気管狭窄を疑わなければならない。
               J La State Med Soc. 2000; 152: 276-80.
 挿管あるいは気管切開後の気管狭窄は、抜管後2か月以内に出現するが
 2年以上経過して出現することもあり得る。
 報告例では10年以上たって、という報告もあるが、本当に挿管が影響したのか
 もはや謎の年月とも言える。
               Br Med J 2001, 322, 362.
 最近では気管挿管チューブの材質が向上し、低圧カフへと改良され
 抜管後に気管狭窄を来す頻度は減少している。

●挿管後気管狭窄の分類
 A proposed classification system of central airway stenosis
 Eur Respir J 2007; 30: 7–12

 挿管後気管狭窄を含めた中枢気道狭窄病変の分類については
 上記ERJの論文がよくまとまっている。
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a) Intraluminar tumour or granulation; b) distortion or buckling; c) extrinsic compression; d) scar stricture; e) scabbard trachea; f) floppy membrane; g) abrupt transition (web stenosis); h) tapered transition (hour glass stenosis)

●挿管後気管狭窄の発生機序
 挿管時の気管軟骨の損傷が気管軟骨周囲炎を起こすことによって
 二次感染あるいは肉芽組織形成を惹起する。
 これによる気道狭窄が本態と考えられている。
 ただ、インパクトファクターを考慮しても、1953年のNEJMの論文しか
 こういった考察がなされていないのが現状である。
                N Engl J Med.1953; 248: 1097-9.
 気管チューブが気管壁を持続的に刺激すること、過剰なカフ圧による局所循環不全
 なども考えられているが仮説に過ぎない。
 ただ、挿管した期間と狭窄に関しては20人の患者を検討した論文があるが、
 関連性はないとされている。
                Surg Radiol Anat 2002, 24, 160-168.

●挿管後気管狭窄の症状
 症状を認めるほどの抜管後気管狭窄の発生率は0.1%とされている。
                Eur Respir J. 1999; 13; 888-93.
 軽度の狭窄においては、反復性肺炎、労作時呼吸困難、
 あるいは成人発症喘息と誤診されることもしばしばみられる。
                Semin Thorac Cardiovasc Surg. 1996; 8: 370-80.
                Am J Respir Crit Care Med. 2004; 169: 1278-97.

 Stridor は気管内径が5mm以下にならないと出現しないため、
 絶対的な指標とするには問題があるだろう。
 また、チアノーゼは狭窄が長期におよび、末期症状として出現するものである。

●挿管後気管狭窄の診断
 胸部レントゲンなどの画像診断を行うことが優先される。
 気管支鏡や喉頭ファイバースコープなども有用である。

●挿管後気管狭窄の治療
 抜管後気管狭窄に対する治療法として、
 レーザー焼灼、ステント留置、バルーン拡張術や根本的外科的治療法がある。
文責"倉原優"

by otowelt | 2010-05-24 23:22 | 救急

小児CPAにバイスタンダーによるhands only CPRはNG

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AHAガイドライン2010で、バイスタンダーCPRで
人工呼吸が省略されることはほぼ確実で、
hands only CPRが主流となると思います。
  Circulation 2008:117;2162-7



ただ、AHAと仲の悪いERCは、
1.心停止が目撃されていない心停止
2.小児の心停止
3.ほとんどの病院内の心停止
4.溺水や気道閉塞などの心臓が原因ではない心停止
5.4分以上続いているCPR
では人工呼吸が大事なので、hands only CPRをガイドラインが出る前に
ステートメントとして出すなとAHAを牽制していました。

日本から素晴らしい論文が出ました。Lancetに掲載されたのがすごいところです。
小児バイスタンダーCPRに対してHands only CPRではなく、
人工呼吸が大事だと言う事を示した初めての論文です。
PALSは受講していないが、覚えておいた方がよさそう。

Conventional and chest-compression-only cardiopulmonary resuscitation by bystanders for children who have out-of-hospital cardiac arrests: a prospective, nationwide, population-based cohort study
The Lancet, Volume 375, Issue 9723, Pages 1347 - 1354, 17 April 2010


背景:
 アメリカ心臓協会(AHA)は、成人の院外心停止例にはその場に居合わせた
 目撃者による(バイスタンダー)胸部圧迫のみのCPRを推奨しているが、
 小児はその限りでない。理由として、成人の心停止は心原性の場合が多く
 従来型CPRと胸部圧迫のみのCPRに生存率の差はないことによる。
 小児の心停止は心原性よりも呼吸器疾患(窒息、溺水など)によるものが多い。

方法:
 小児の院外心停止例に対するその場に居合わせた目撃者(バイスタンダー)に
 よる処置として、胸部圧迫に人工呼吸を併用する従来型CPRと胸部圧迫のみの
 CPRの効果を比較する地域住民ベースのプロスペクティブなコホート試験を行った。
 プライマリエンドポイントは、院外心停止後1ヵ月の時点における神経学的予後
 (Glasgow-Pittsburgh脳機能カテゴリーが1あるいは2)とした。

結果:
 院外で心停止をきたした17歳以下の小児5170例が登録。
 年齢、心停止の原因、目撃者の有無、CPRの種別などが記録された。
 全心停止例のうち、3,675例(71%)が非心原性、1,495例(29%)は心原性。
 バイスタンダーによって、1551例(30%)に人工呼吸を併用する
 従来型CPRが施行され、888例(17%)は胸部圧迫のみのCPRを受けた。
 CPRの有無別の解析では、良好な神経学的予後の割合は、バイスタンダー
 によるCPRを受けた小児が4.5%(110/2,439例)と、CPRを受けなかった
 小児の1.9%(53/2,719例)に比べ有意に高かった
 (補正OR:2.59、95%CI:1.81~3.71)。
 1~17歳の非心原性心停止例の良好な神経学的予後率は、バイスタンダーによる
 CPR施行例が5.1%(51/1004例)と、CPR非施行例の1.5%
 (20/1293例)に比べ有意に優れた(補正OR:4.17、95%CI:2.37~7.32)。
 CPRの種別では、従来型CPRの良好な予後率は7.2%(45/624例)と、
 胸部圧迫単独CPRの1.6%(6/380例)に比べ有意に優れた

 (補正OR:5.54、95%CI:2.52~16.99)。
 1~17歳の小児と比較して、1歳未満の幼児の院外心停止例の神経学的予後は、
 きわめて不良であった。

結論:
 院外における非心原性CPAの小児に対しては、
 バイスタンダーが胸部圧迫に人工呼吸を併用したCPRを行うべきである。

by otowelt | 2010-05-12 16:04 | 救急

救急におけるGlide Scopeを用いた挿管

日本ではAirway scopeがよく用いられているが、
Glide ScopeはAirway scopeほど太くない。
当院の集中治療室ではAirway scopeをしばしば使うことがある。
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Endotracheal intubation using a GlideScope video laryngoscope by emergency physicians: a multicentre analysis of 345 attempts in adult patients
Emerg Med J 2010;27:380-382


目的:
 Glide Scope(GVL)が救急医により発売後2年の間どのように用いられたか調査。

方法:
 5つの救急部において調査をおこなった。
 GVLによる挿管成功率を通常の喉頭鏡と比べた。

結果:
 GVLは3223の挿管のうち10.7%の345症例に用いられた。
 GVLにおけるoverall success rateは、喉頭鏡より有意に高いわけではなかった。
 (79.1% vs 77.6%, p=0.538)
 挿管困難例においては、有意にsuccess rateがGVLで高かった。
 (80.0% vs 50.4%, p<0.001).

結論:
 GVLはそれほど頻繁に用いられておらず、喉頭鏡に比べて成功率を上昇させる
 わけではない。しかしながら、挿管困難例においては有用であると考えられる。

by otowelt | 2010-05-11 03:14 | 救急

急性の腰・頚部のコリには、温パック・冷パックに有意差なし

救急にやってきた”こり”に対して、冷パックがいいのか、温パックがいいのかという
ランダム化比較試験。非常に面白い。
イブプロフェンが邪魔だが、こればかりは救急患者を相手にしているので
仕方ないところか。。。。
結論としては、どちらでもかまわないということになった。

Heat or Cold Packs for Neck and Back Strain: A Randomized Controlled Trial of Efficacy
ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2010; 17:484–489


目的:
 急性の腰部あるいは頚部のこわばりはよくみられる主訴である。
 これに対しては温湿布や冷湿布が使用される。
 この試験の目的は、鎮痛のために温湿布か冷湿布のどちらがよいのかを
 調べるものである。

方法:
 ランダム化比較試験は大学病院の救急部でおこなわれた。(年間9万人ER来院)
 18歳をこえる救急受診患者のうち、急性の腰あるいは頚部のこわばりを主訴に
 来院した患者で検証。
 すべての患者は400mgイブプロフェンを経口投与され、30分間
 ホットパックあるいはコールドパックに割りつけられた。
 アウトカムは、疼痛重症度をVASで計測したもの、レスキュー鎮痛薬を使用した
 割合、VASによる疼痛軽減度、同じようなパックを将来的に行いたいかどうかという点
 とした。

結果:
 60人の患者のうち、31人が温パック、29人が冷パックにあてられた。
 平均年齢は37.8歳、51.6%が女性、66.7%が白人だった。
 両群ともに、疼痛重症度に前後で差がみられなかった
 前:75 mm [95% CI = 66 to 83] vs. 72 mm [95% CI = 65 to 78]; p = 0.56
 後:66 mm [95% CI = 57 to 75] vs. 64 mm [95% CI = 56 to 73]; p = 0.75
 疼痛が改善したと申告した人は、温パックで16/31 (51.6%)、冷パックで
 18/29 (62.1%)であった(p = 0.27)。これも有意差なし。
 将来同じような場合にパック治療をおこないたいかという問いに関しては
 いずれも同程度の回答であった(p = 0.65)。

結論:
 急性の腰部あるいは頚部のこわばりに対してイブプロフェン内服後に30分の
 温あるいは冷パックをおこなっても、いずれも疼痛改善に関しては差がない。
 そのため、いずれを選択しても構わない。

by otowelt | 2010-05-11 02:41 | 救急

世界貿易センターでの粉塵曝露により、その後の1 年間にFDNY救助隊員のFEV1は大きく低下

粉塵暴露災害における肺機能障害というのは意外に重要なのだと思った論文。

Lung Function in Rescue Workers at the World Trade Center after 7 Years
N Engl J Med 2010; 362 : 1263 - 72.


背景:
 2001年9月11日世界貿易センターへのテロ攻撃によって、
 ニューヨーク市消防局(Fire Department of New York City:FDNY)の
 数千人の救助隊員が粉塵に曝露され、隊員の肺機能はその後の1 年間で著しく低下。

方法:
 当時世界貿易センターで救助活動を行ったFDNY救助隊員を対象とし
 1秒量(FEV1)をスパイロメトリーを用いて測定。

結果:
 FDNY隊員13,954人のうち、計12,781人(91.6%)がこの研究に参加。
 質で選別されたスパイロメトリー測定値 61,746 件を対象とした。
 最初の1年間で、全例の平均FEV1は有意に低下しており、喫煙歴のない消防隊員は
 喫煙歴のないEMS隊員に比べて大きく低下していた(P<0.001)。
 FEV1はその後 6 年間でほとんどあるいはまったく回復せず、
 FEV1 低下の年平均値は、消防隊員で25 mL/年、EMS 隊員で40 mL/年。
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結論:
 世界貿易センターでの粉塵曝露により、その後の1 年間にFDNY救助隊員の
 FEV1は大きく低下した。全体的にこの低下は持続し、その後の6年間で回復しない。

by otowelt | 2010-04-13 11:33 | 救急

緊急挿管には何を使う???

緊急挿管で筋弛緩が必要な場合、
ロクロニウムを使っている施設が多いだろうか?
緊急挿管が必要な患者は、誤嚥、頭蓋内圧亢進を防ぐためRSIが必要となるが、
たとえばサクシニルコリンは効果発現が早く、半減期が短いため頻用されている。

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ロクロニウムは水溶液で安定しているので、水溶液製剤として利用できる。
挿管時には0.6~0.9 mg/kg、追加ボーラスによる維持には0.1~0.2 mg/kg
持続注入初期の投与速度は7μg/kg/min。

Rocuronium versus succinylcholine for rapid sequence
induction intubation
Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 2, 2009


ではどちらかといえば、サクシニルコリンに軍配があがった感じになっている。
ただ、スガマデックスの登場によりロクロニウムの方が
使いやすいという意見が出てくるかもしれない。

最近ではどの医学雑誌もスガマデックスをとりあげている。
スガマデックスは用量依存性で、従来のコリンエステラーゼ阻害薬による
リバースに比べて作用は2分程度と大変早く、深い筋弛緩状態にあっても
確実にリバースが可能。特にロクロニウムに対する特異性が高い。
2mg/kg程度で十分だろうと考えられる。このスガマデックスリバースによって
Residual blockやrecurarisationの発生も防止できる。
ひいては術後の呼吸器系合併症を減らすことが可能である。

カンタンに挿管できると思って麻酔を導入したはいいが、挿管困難だったとき
すぐに拮抗できるというのは大きいことだと思う。
こういった使い方ができればサクシニルコリンの必要性は薄くなるかもしれない。
Sugammadex provides faster reversal of vecronium-induced neuromuscular blockade compared with neostigmine:a multicenter, randomized, controlled trial. Anesth Analg 2010;110:64-73
A randomized dose-response study of sugammadex given for the reversal of deep recuronium or vecuronium-induced neuromuscular blockade under sevoflurane anesthesia. Anesth Analg 2010;110:74

by otowelt | 2010-04-06 08:52 | 救急