カテゴリ:救急( 39 )

緊急挿管には何を使う???

緊急挿管で筋弛緩が必要な場合、
ロクロニウムを使っている施設が多いだろうか?
緊急挿管が必要な患者は、誤嚥、頭蓋内圧亢進を防ぐためRSIが必要となるが、
たとえばサクシニルコリンは効果発現が早く、半減期が短いため頻用されている。

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ロクロニウムは水溶液で安定しているので、水溶液製剤として利用できる。
挿管時には0.6~0.9 mg/kg、追加ボーラスによる維持には0.1~0.2 mg/kg
持続注入初期の投与速度は7μg/kg/min。

Rocuronium versus succinylcholine for rapid sequence
induction intubation
Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 2, 2009


ではどちらかといえば、サクシニルコリンに軍配があがった感じになっている。
ただ、スガマデックスの登場によりロクロニウムの方が
使いやすいという意見が出てくるかもしれない。

最近ではどの医学雑誌もスガマデックスをとりあげている。
スガマデックスは用量依存性で、従来のコリンエステラーゼ阻害薬による
リバースに比べて作用は2分程度と大変早く、深い筋弛緩状態にあっても
確実にリバースが可能。特にロクロニウムに対する特異性が高い。
2mg/kg程度で十分だろうと考えられる。このスガマデックスリバースによって
Residual blockやrecurarisationの発生も防止できる。
ひいては術後の呼吸器系合併症を減らすことが可能である。

カンタンに挿管できると思って麻酔を導入したはいいが、挿管困難だったとき
すぐに拮抗できるというのは大きいことだと思う。
こういった使い方ができればサクシニルコリンの必要性は薄くなるかもしれない。
Sugammadex provides faster reversal of vecronium-induced neuromuscular blockade compared with neostigmine:a multicenter, randomized, controlled trial. Anesth Analg 2010;110:64-73
A randomized dose-response study of sugammadex given for the reversal of deep recuronium or vecuronium-induced neuromuscular blockade under sevoflurane anesthesia. Anesth Analg 2010;110:74

by otowelt | 2010-04-06 08:52 | 救急

AEDの普及により、除細動頻度と最小神経機能障害での生存率改善

AEDに関する、京都大学からの論文。
研修医の頃は、よく京都駅を利用していたが、
AEDは構内に結構多かった記憶がある。

Nationwide Public-Access Defibrillation in Japan
N Engl J Med 2010;362:994-1004.


背景:
 公共に自動体外式除細動器(AED)の設置が拡大することによって
 院外心停止患者の生存率が改善するかどうかは明らかになっていない。

方法:
 前向き観察研究として、2005年1月1日~2007年12月31日に日本全域で
 救急隊による蘇生が試みられた院外心停止患者を対象に、国家規模の
 AED普及が院外心停止後の生存率に及ぼす影響を検討。
 プライマリエンドポイントは、最小神経機能障害(神経機能障害なし
 あるいは軽度)での1ヵ月生存率。
 多変量ロジスティック回帰分析を用いて、
 良好な神経学的転帰と関連する因子を検討。

結果
 対象となった成人の院外心停止患者312,319 例のうち、12,631例が
 心室細動を伴う心原性心停止で、居合わせた人に目撃されていた。
 うち462 例(3.7%)で、一般市民により公共のAEDを用いた除細動が
 行われていた。一般市民により除細動が行われる割合は、公共AEDの
 設置数の増加に伴い、1.2%から6.2%に上昇した。(P<0.001)
 最小神経機能障害での1 ヵ月生存率は
 居合わせた人に目撃された心室細動を伴う心原性心停止患者では14.4%、
 公共のAED による除細動を受けた患者では31.6%であった。
 早期の除細動は、ショックを行う者(市民もしくは救急隊)にかかわらず
 心室細動を伴う心停止後の良好な神経学的転帰と関連していた
 (電気ショックまでの時間が1 分遅れるごとの生存率に対する調整オッズ比
 0.91,95%CI 0.89~0.92,P<0.001)
 公共 AED の設置数が居住地域1km2あたり1 台未満から
4 台以上へ増加するのに伴い、電気ショックまでの時間は平均で
 3.7分から2.2分に短縮、最小神経機能障害で生存する心停止患者数は
 年間1,000 万人あたり2.4 人から8.9 人へ増加。
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結論:
 国家規模の公共AEDの普及により、日本では一般市民による除細動が
 より迅速に行われるようになった。
 院外心停止後の最小神経機能障害での1 ヵ月生存率も上昇した。

by otowelt | 2010-03-20 13:50 | 救急

非侵襲的人工呼吸管理は、重症胸部外傷による低酸素血症において酸素療法に比べて挿管率を有意に減少


救急の外傷の現場で、NIPPVを使っているところが想像できないのだが・・・
JATECでは、Airway-Breathingに異常があれば
NIPPVではなくIPPVを推奨しているので、これが世に反映されるのは
もう少し先かもしれない。

Noninvasive Ventilation Reduces Intubation in Chest Trauma-Related Hypoxemia
A Randomized Clinical Trial
CHEST January 2010 vol. 137 no. 1 74-80


背景:
 非侵襲的人工呼吸管理(NIMV)ガイドラインでは、部分的麻酔でも低酸素が続く場合
 胸部外傷の患者にCPAPを用いることをすすめている。
 この推奨は、ランダム化試験がなかったため、エビデンスレベルCとなっている。
 
方法:
 この試験は、single-center randomized clinical trialであり、
 9床のレベル1外傷ICUでおこなわれた。
 対象は受傷48時間以内に酸素療法が始まった患者で、
 Pao2/Fio2<200が8時間以上続くもの。患者は
 高流量酸素とNIMVに割り付けられた。
 プライマリエンドポイントは挿管の発生、セカンダリーエンドポイントは
 入院日数および生存率とした。

結果: 
 25人の患者が登録された段階で、NIMV患者群で有意に挿管頻度が少ないことが
 統計学的に明らかになったため、試験は中止された。
 (酸素群10人[40%] vs NIMV群3人 [12%], P = .02)
 多変量解析によれば、年齢、性別、慢性心不全の存在、APACHEIIスコアが
 NIMVにおける挿管のリスク因子であった。
 在院日数は、NIMV患者で少なかった (14 vs 21 days P = .001)。
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結論:
 非侵襲的人工呼吸管理は、重症胸部外傷による低酸素において
 高流量酸素療法よりも挿管頻度を減らすことが可能である。

by otowelt | 2010-01-31 18:34 | 救急

群発頭痛に高流量酸素療法が有効


救急当直なんかでは群発頭痛なのかどうなのか、うーん
という頭痛に遭遇することがしばしばある。
研修医の頃は、高流量酸素が流行っていたが、これに対する
エビデンスがJAMAから出た。ちなみに酸素療法のおおもとは
Lancet 2:92-98,1952. と古い。

群発頭痛の診断は、以下のごとく行われる。
A. B~Dを満たす発作が5回以上ある
B. 未治療で一側性の重度~極めて重度の頭痛が、眼窩部、眼窩上部
 または側頭部のいずれか1つ以上の部位に、15~180分間持続する。
C. 頭痛と同側に少なくとも以下の1項目を伴う
 1. 結膜充血または流涙 (あるいはその両方)
 2. 鼻閉または鼻漏 (あるいはその両方)
 3. 眼瞼浮腫
 4. 前頭部および顔面の発汗
 5. 縮瞳または眼瞼下垂 (あるいはその両方)
 6. 落ち着きがない、あるいは興奮した様子
D. 発作頻度は1回/2日~8回/日である
E. その他の疾患によらない


High-flow oxygen for treatment of cluster headache: a randomized trial.
JAMA. 2009 Dec 9;302(22):2451-7.


方法:
 National Hospital for Neurology and Neurosurgeryで2002~2007年
 にかけて、国際頭痛学会(International Headache Society)の基準で
 群発性頭痛の認められた、109人(18~70歳)について、二重盲無作為化
 プラセボ対照交差試験を行った。被験者はそれぞれ4回の頭痛について、
 高流量酸素治療とプラセボ治療を交互に受けた。

 高流量酸素群は、群発頭痛の発症時に高流量酸素100%を12L/分でマスク吸入。

結果:
 プライマリエンドポイントの、治療開始後15分の痛みの消失が認められた
 割合は、プラセボ群が20%(95%CI:14~26%、148発作)だったのに対し、
 高流量酸素群では78%(95%CI:71~85%、150発作)であった(p<0.001)。

 セカンダリエンドポイントの、治療開始後30分の痛みの消失、
 60分までの痛み軽減スケール、15分後の鎮痛剤服用の有無も
 高流量酸素群がプラセボ群より有意に勝っていた。

結論:
 群発頭痛の治療に高流量酸素療法は有効である。

by otowelt | 2009-12-22 10:43 | 救急

高齢者CPRをしても生存率は上がらない

高齢者のCPRは生存率がなかなか上昇しない。
これはいくつものスタディから明らかである。

今回NEJMに疫学的研究が掲載されたが、
やたら黒人に不利な内容が強調されているのが気になる。。。。

Epidemiologic Study of In-Hospital Cardiopulmonary Resuscitation in the Elderly.
N Engl J Med 2009; 361 : 22-31


背景:
 院内心肺蘇生後の生存率は改善しているのか、あるいは
 患者および病院の特性によって患者の生存を予測するものがあるかどうか
 明らかにされていない.

方法:
 出来高払いメディケアの1992~2005年のデータを調査。
 アメリカの病院でCPRを受けた65歳以上のメディケア受給者を選定した。
 CPRの施行率とCPR後の生存率の動向、および患者レベル・病院レベルでの
 生存退院の予測因子を検討。

結果:
 院内CPR を受けた患者433985例を同定。18.3%(95%CI 18.2~18.5)が
 生存退院した。(結構多いですね)
 1992~2005年で生存率に大きな変化はみられなかった。
 CPRの全施行率は入院1000 件あたり2.73件。
 男性、高齢、多くの併存疾患、介護施設からの入院、で生存率は低下した。
 黒人患者の生存の補正オッズは、患者特性が同様の白人患者より23.6%低かった。
 (95% CI 21.2~25.9)
 黒人患者は CPR 後の生存率が低い病院でCPRを受ける傾向があった。
 
結論:
 1992~2005年において、院内CPR後の生存率に改善はみられなかった。
 CPR後院内で死亡する割合は増加、CPR 後生存して自宅へ退院する患者の割合は減少。
 黒人はCPR を受ける率が高いが、CPR 後の生存率は低かった。

by otowelt | 2009-07-03 00:44 | 救急

オタワ膝関節ルールは小児にも有用

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救命センターで当直していた頃、
足関節のレントゲン撮影はオタワルールでおこなえと教わった。
しかし実際やっている人は、そんなにいない。






●オタワ膝関節ルール
--------------------------------------------------------------------------------
以下のいずれかがあれば膝正面・側面・膝蓋骨軸写を撮影
--------------------------------------------------------------------------------
1.55歳以上
2.膝蓋骨圧痛のみ
3.90度以上曲げられない。
4.外側骨頭に圧痛
5.4歩以上歩けない。
--------------------------------------------------------------------------------


●オタワ足関節ルール
--------------------------------------------------------------------------------
1.外果(腓骨)先端より6cmまでの後方(上方)に圧痛あり
2.内果(脛骨)先端より6cmまでの後方(上方)に圧痛あり
3.第5中足骨基部に圧痛あり
4.舟状骨に圧痛あり
5.受傷直後および来院時に4歩以上歩けない
--------------------------------------------------------------------------------
1.2.のいずれかがあれば足関節のX線2方向(正面・側面)オーダー
3.4.のいずれかがあれば足のX線2方向(正面・斜位)オーダー
5.があれば足関節と足のX線を2方向ずつオーダー
--------------------------------------------------------------------------------
48時間以内であれば感度99.6%



今週のEMJより、The Ottawa knee rule (OKR)についての論文。
小児に適応できるかどうかを検討したもの。

背景:
 OKRは不要なレントゲン撮影を減らすツールとなりうる。
 しかしながら、小児にこれが適応できるかどうかはわかっていない。

目的:
 OKRがよりよい感度と特異度をもっているかを検討するため。

方法:
 過去の英語文献より検討。
 Medline (1950 to date)
 EMBASE (1974 to date)
 CINAHL (1982 to date)
 the Cochrane Library
 Google Scholar (←これも入るんだ(笑))
 小児に対してOKRを使用検討した症例をピックアップ。

結果:
 4つの信頼できるスタディがピックアップされた。
 3つはメタアナリシスで、1130人の小児を含む。ただし、5歳以上。
 陰性尤度比は0.07 (95% CI 0.02 to 0.29)で、
 陽性尤度比は1.94 (95% CI 1.60 to 2.36)、
 感度99% (CI 94.4 to 99.8)、特異度46% (CI 43.0 to 49.1)。
 レントゲン撮影を減らすことができたのは、30~40%にのぼった。

結論:
 OKRは高い感度と適度な特異度でもって5歳以上の小児に適応される。
 しかしながら、5歳以下には有用でない。

by otowelt | 2009-03-29 06:34 | 救急

気道熱傷


救命センター併設の病院だと、呼吸器内科医は、ERで気道熱傷の
コンサルトを受けることもしばしばある。

●気道熱傷を疑うポイント
・密室での火災
・咳、痰、くしゃみ、息切れ、嗄声
・黒い痰、焦げた鼻毛
・咽頭浮腫、顔面や頚部の熱傷
・その他の部位の重症熱傷
・ラ音(Crackle、Wheeze)
・意識障害

SpO2がどんなに良くても、必ず10Lリザーバーマスクで酸素投与を行う。

カルボキシヘモグロビンや、メトヘモグロビンがあると、SpO2は
実際の値よりも過大評価をしてしまうため、あまり信用しないほうがよい。


●対処 ABC
1.挿管
・口腔、咽頭内に熱傷や浮腫があるとき
・頚部全周の熱傷やstridorがあるとき
・昏睡状態のとき
             → 挿管
※全身熱傷の場合、大量輸液を行うことで、気道浮腫を起こすことも。
 気道熱傷がなくても、早期の気管挿管が必要

2.高容量酸素投与(COPD患者さんでも迷わずに!)
3.Β2刺激薬使用。
4.20G×2本ライン確保
5.血ガスでCO-Hb、Met-Hbチェック
6.胸部レントゲン
7.心電図(不整脈や心筋虚血が起こりうる)

by otowelt | 2009-02-24 09:45 | 救急

低体温療法は不整脈を増加させる可能性がある



ヘルシンキ大学病院のICUの研究である。

Arrhythmias and heart rate variability during and after therapeutic hypothermia for cardiac arrest. Critical Care Medicine:Volume 37(2)February 2009pp 403-409

目的:
 CPAのあとの低体温治療における、不整脈、心拍数変化、予後について考察。
 RCT(the European Hypothermia After Cardiac Arrest study.)

患者:
 70人の成人男性における院外VF症例において、33℃の低体温治療と正常体温に
 romdomized

低体温治療:  
 低体温群にわけられた患者は、24時間クーリングデバイスで冷却され
 その後12時間かけて徐々に温度を上げていく。正常体温グループでは体温は常に
 38度未満におさえておく。全ての患者は最低でも2日間ICUに滞在

結果:
 来院24-48 hoursと14日目に心電図検査。
 臨床的アウトカムは6ヶ月後とした。
 premature ventricular beatsが低体温グループで増えた。
 しかしながら、VTおよびVFの頻度は両群ともに変化なかった。
 心拍数変動は低体温で多く(p < 0.01)、2週間後では両者とも差がなかった。
 また低体温グループでは、正常循環や調律に戻るのに少し時間がかかった。

結論:
 CPA24時間後の33℃の低体温治療は、不整脈を増やす可能性がある。
 


<現在のAHAのステートメントは以下の通り>
********************************************************************************************************
心停止後蘇生して循環動態が安定している患者が、自然に軽度低体温(33℃)に
陥った場合、復温すべきでない。軽度低体温療法は、神経学的転帰に有利である。
病院外心停止で心拍再開した昏睡状態の成人患者には、初期調律がVFなら、
32から34℃に12から24時間で冷却すべきである(ClassIIa)。
病院外VF以外の心停止や、院内例でも、同様の治療が有益(ClassIIb)。
********************************************************************************************************

1)心停止(不整脈の種類は問わない)後に蘇生
2)意識障害がある
3)心停止は目撃者がいるか推定5分間以内
4)胸骨圧迫は45分以内
こういった患者には32-34℃を目標にできるだけ早く低体温導入した方が
よいという意見が多い。
敗血症や頭蓋内病変・脳出血などは除外。

by otowelt | 2009-02-12 13:26 | 救急

緊張性気胸における脱気針の適切な長さ


救急をやっていたとき、緊張性気胸の脱気をレントゲンを見る前に
しなければならない状況があったのですが
針の長さはどれくらいがベスト?という論文が発表された。

Needle Thoracostomy for Tension Pneumothorax: Failure Predicted by Chest Computed Tomography. Prehospital Emergency Care 2009;13(1):14 - 17.

第2肋間・鎖骨中線上の胸壁の厚さをCTで計測したというシンプルな論文。
脱気の際にアメリカで用いる、4.4cmのカテ針は妥当かどうかを考察した。
全110例(平均43.5歳)の平均の胸壁厚は、右:4.5 cm (± 1.5 cm)、
左:4.1 cm (± 1.4 cm)だった。
結果としては、4.4cmのカテ針は、50%(95%CI:40.7-59.3%)の外傷患者で
脱気に失敗する!!!

ゲゲップ!!!!

自然気胸でも外傷性気胸でも、大胸筋発達してるし、年齢も若いから
50%で失敗するという考察が成り立ってしまったのだと思う。

ちなみによく救急でおいてある針、テルモの針なんかは
38mmなので、届かない可能性もある・・・・。
日本人はでも痩せてるから大丈夫かな。。。

by otowelt | 2009-01-18 21:22 | 救急