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エホバの証人に対する心臓外科手術に不利益はみられず

 医師をやっていると必ず一度はエホバの証人の患者さんに出会うことがあると思う。ものみの塔協会が無輸血治療に言及する際に、引用する文献は1993年の論文であるが、
Kitchens CS. Are transfusions overrated? Surgical outcome of Jehovah's Witnesses. Am J Med 1993;94:117-119
 時間の都合で論文全文を詳しく読んではいないが、おそらく今後は今回のデータを引用していくことになると思われる。ただ、これはいわゆる予定手術での解析結果であるので、よくニュースで問題になる緊急手術や交通外傷などとは異なる。

Gregory Pattakos, et al.
Outcome of Patients Who Refuse Transfusion After Cardiac SurgeryA Natural Experiment With Severe Blood Conservation
Arch Intern Med. 2012;():1-7. doi:10.1001/archinternmed.2012.2449


目的:
 Cleveland Clinicにおいて心臓手術を受けたエホバの証人信者Jehovah’s Witness patients (Witnesses)の心筋梗塞や出血による再手術などの術後合併症を検証する。

方法:
 1983年1月1日から2011年1月1日までの間、非エホバの証人である87453人、エホバの証人である322人の心臓外科手術を受けた患者を本試験に登録。propensity scoreマッチング法によって、心臓手術を受けたエホバの信者群と輸血が行われた非エホバの信者群の術後合併症および長期予後を検討した。
 年齢、BMI、NYHA重症度、心機能、高血圧・糖尿病既往歴とマッチングし、解析をおこなった。

結果:
 解析の結果、入院中の死亡、脳卒中、心房細動、腎障害発現率は両患者群で差はみられなかった。
 術後の心筋梗塞、人工呼吸器装着期間の長期化、出血による再手術はエホバの信者群で有意に低い結果であった[myocardial infarction, 0.31% vs 2.8%(P=.01); additional operation for bleeding, 3.7% vs 7.1%(P=.03); prolonged ventilation, 6% vs 16% (P<.001);intensive care unit length of stay (15th, 50th, and 85th percentiles)]。
 また、1年生存率はエホバの証人群で有意に高く(95%; 95%CI, 93%-96%; vs 89%; 95% CI, 87%-90%; P=.007)、20年生存率は同等であった(34%; 95% CI, 31%-38%; vs 32% 95% CI, 28%-35%; P=.90)。

結論:
 心臓外科手術においてエホバの証人は、輸血をおこなう通常の患者と比べて術後合併症や生存に差はみられない。

by otowelt | 2012-07-06 11:18 | 内科一般

研修医は、インフルエンザ様症状があっても病院へ出勤する

e0156318_16105326.jpg 日米における”研修医”の意味は少々異なるが、この論文は医療界に大きな警鐘を鳴らしている。実のところ、たとえ高熱でインフルエンザ様症状があっても、日本の多くの研修医も出勤しているのが現状である。この51%というアメリカの報告、果たして日本では一体どのくらいだろうか?
 これは研修医に限ったことではなく、多くの医師は熱があっても出勤した経験があるだろう。出勤する理由は、バックアップ体制が不足していたり、あるいはバックアップを他の医師に頼めるような簡単な患者さんではないことがあるからだ。そのため、患者さんに感染させるリスクを承知の上で、医師は体にムチを打って出勤する。極度に人手不足の過疎地では、物理的に休むことが許されない病院もありうる。

Anupam B. Jena, et al.
Why Physicians Work When Sick
Arch Intern Med. 2012 ONLINE FIRST


方法:
 2010年のアメリカ内科学会イリノイ地方会に出席した研修医150人を対象に、無記名による紙ベースのアンケートを実施した。「前年度の研修中にインフルエンザ様症状がある状態で勤務したかどうか」を質問し、またその勤務した理由についても回答を求めた。

結果:
 アンケートに答えた150人のうち77人(51%)が、1回以上勤務、3回以上勤務した研修医は全体の16%だった。1年目研修医と比較して、2年目研修医でその割合が高く(51% vs. 58%)、また男性に比べ女性の研修医で割合は高かった(48% vs. 56%)。統計学的に有意差はみられなかった。
 そのインフルエンザ様症状がある状態で、それを患者に感染させてしまったと思うかを質問すると、14人(9%)がその可能性があると回答した。
 なぜそのような状態で勤務したのかどうか理由を聞くと、
 1.同僚へ負担をかけたくなかった:44人(57%)
 2.患者に対する責任感:43人(56%)
 3.同僚に負い目を感じ、それがプレッシャーになる:6人(8%)
 4.同僚から病弱と思われることへの不安:9人(12%)
 特に、4番目の病弱と思われることを不安に思うという理由は、女性の研修医で高い傾向にあった(7% vs. 18%)。
e0156318_1604114.jpg
コメント:
 研修医のこういった病気時に出勤する習慣は、若手医師のプロフェッショナルとしての自覚の形成に大きな疑問を投げかけるものである。患者や同僚に対する責任感や重圧のため、やむなく出勤せざるを得ない可能性があるだけでなく、患者や同僚に感染させるのではないかという懸念との葛藤も浮き彫りとなった。病気になったときの欠勤が、患者に安全な医療を提供するために必要なものであることを指導する必要性がある。

by otowelt | 2012-06-24 16:16 | 内科一般

病棟における騒音は患者の睡眠を妨げる?

e0156318_13101997.jpg個人的には非常に観点がよいスタディだと思う。


Orfeu M. Buxton, et al.
Sleep Disruption Due to Hospital Noises: A Prospective Evaluation
Ann Intern Med. 12 June 2012


背景:
 健康な成人を対象に入院病棟における合計14種類の夜間騒音を就寝中に再現することで、大脳皮質での覚醒反応を調べることによって、睡眠を障害されているかどうか検証した。

デザイン:3日のポリソムノグラフィ試験

セッティング:マサチューセッツ総合病院の睡眠研究室Sound-attenuated sleep laboratory.

参加者:12人の健康な成人

介入:
 ベースラインのsham nightのあとに2日間の介入夜間を設定したプログラムで、合計14の音を再現した。すなわち、予後良好・予後不良患者における男女の会話、ドア開閉音、ドクターヘリの離陸音、製氷機音、点滴ポンプのアラーム音、飛行機音、ランドリーカート移動音、医師を呼ぶ声、電話音、いびき、トイレ音、自動ペーパータオル稼働音、交通騒音。いずれの騒音も40~70dBの正常聴力の範囲に調整するようにした。

結果:
 健康人12人(女性8人、平均年齢27歳、BMI 21.8)を対象に、ポリグラフPSGを使用。で3日間(1日の睡眠8.5時間)の検討を行った。被験者は、手首に睡眠・覚醒を判定するactigraphyを装着した状態で試験開始前4日間は決まった時間帯に就寝してもらうよう勧告した(平均6.5日間:平均睡眠時間7.72時間)。音量が上がるにつれて、non-REM睡眠のstage 2, stage 3, REM睡眠のいずれにおいても覚醒レベルの上昇が確認された。ただ、同音曝露においてもnon-REM睡眠stage 3はstage 2に比べて覚醒しにくかった。
 音種別の検討において、non-REM睡眠stage 2, stage 3で覚醒レベルの上昇が最大であったのは、電話音や点滴ポンプのアラーム音などの電子的な音であり、ドクターヘリの離陸音のような非日常的騒音をかなり上回るものであった。
 また、心拍数の増加が曝露開始前に比べて最も大きかったのはERM睡眠時で、順にstage 3, stage 2と続いた。

limitation:12人の参加者のみでの検討であること。

結論:騒音が睡眠中の患者の健康衛生を妨害しうる。

by otowelt | 2012-06-18 13:12 | 内科一般

進行認知症患者に対する胃瘻は利益がないだけでなく褥瘡リスクを高める

 胃瘻を作る理由に自信を持って答えられない状況ならば、私は「とりあえず」という理由で患者さんに胃瘻をすすめることはない。逆に、明確な理由があれば胃瘻は作ってもよいと思う。
 胃瘻を作るのは簡単かもしれないが、それは患者さんや家族の人生にとって極めて重い決断であることを医療従事者は認識すべきである。

Joan M. Teno, et al.
Feeding Tubes and the Prevention or Healing of Pressure Ulcers
Arch Intern Med. 2012;172(9):697-701


背景:
 進行性の認知症患者に対して、経管栄養によって褥瘡を改善できるかどうかのエビデンスは乏しい。percutaneous endoscopic gastrostomy (PEG)が介護施設に入院している進行認知機能障害advanced cognitive impairment (ACI)患者の褥瘡の予防や治癒に効果があるのかどうか、国内のデータを用いて評価をおこなった。

方法:
 進行認知症患者を対象に、介護施設ケアのアセスメントツールであるMinimum Data Set(MDS)データとメディケア受給者の請求情報を利用し、胃瘻による経管栄養の褥瘡管理における利益とリスクを評価した。
 入院して胃瘻栄養療法を受けた患者と、入院したが胃瘻チューブを挿入しなかった患者の褥瘡の状態を比較。施設入所者は、MDS認知機能のレベルCognitive Performance Scale 6(最重症)になった段階で当該コホートに組み入れ、その後1年以内に1回以上入院した患者18021人を分析の対象にした。胃瘻チューブの挿入を受けた患者1人あたり、コントロールとしてpropensity-scoreがマッチする胃瘻チューブ未挿入患者を3人まで選択した。propensity-scoreはロジスティック回帰モデルを用いて計算した。
 アウトカムは、褥瘡がなかった患者にstage 2以上の褥瘡が現れることと、褥瘡のある患者の褥瘡の改善とした。

結果:
 Cognitive Performance Scale 6に到達した進行認知症患者でこのスタディに組み込まれた患者は、合計18021人であった。そのうち入院時に褥瘡がなく、胃瘻チューブを挿入された患者は1124人(6.2%)であった。コントロール(非褥瘡非胃瘻患者)は2082人選ばれた。両群のベースラインの健康状態やリスク因子に差はなかった。また、30日死亡率にも差はなかった。初回MDS評価の時点でstage 2以上の新規褥瘡の割合は、胃瘻挿入群35.6%、非挿入群19.8%で、挿入群のORは2.27(95%CI1.95-2.65)だった。stage 4の褥瘡の発生については、OR 3.21(95% CI 2.14-4.89)で有意差がみられた。
 入院時に褥瘡があった上に、胃瘻を挿入された患者は461人(2.6%)で、コントロール群として754人が選ばれた。両群のベースライン患者特性には有意差はなかった。初回MDS評価時に、既存の褥瘡に改善があった患者の割合は、挿入群27.1%、非挿入群34.6%で、挿入群の褥瘡改善のORは0.70(95% CI, 0.55-0.89)であった。

結論:
 胃瘻チューブ挿入による栄養療法は、進行認知症患者の褥瘡リスクを高める可能性がある。

by otowelt | 2012-05-28 17:41 | 内科一般

アスピリン100mg/日の内服により静脈血栓塞栓症の再発リスクが低下

分野を問わず、内科医にとっては重要な論文だろう。

Cecilia Becattini, et al.
Aspirin for Preventing the Recurrence of Venous Thromboembolism
N Engl J Med 2012; 366:1959-1967


背景:
 明らかな誘因がないと考えられる静脈血栓塞栓症患者のおよそ20%は、ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を中止そた後2年以内に再発することが多い。抗凝固療法を延長することで再発は予防されるとされているが、出血リスクが増加する。現時点では、静脈血栓塞栓症の再発予防におけるアスピリンの利益は明らかでない。われわれは、the Warfarin and Aspirin (WARFASA)試験をおこなうことで、静脈血栓塞栓症再発リスクの軽減と安全性の評価をおこなった。

方法:
 WARFASA試験は、多施設共同研究者主導型ランダム化プラセボ対照二重盲検試験である。明らかな誘因のない静脈血栓塞栓症をはじめて発症し6~18ヶ月間の経口抗凝固療法(ビタミンK拮抗薬をINR2.0~3.0になるよう治療)を終了した18歳以上の患者を、アスピリン100mg/日群と、プラセボ群にランダムに割り付け、2年間投与した。試験治療は延長可能とした。プライマリアウトカムは静脈血栓塞栓症の再発で、安全性アウトカムは重大な出血で検証した。ヘモグロビン2.0g/dl以上の低下や全血あるいは赤血球輸血を要した患者についても出血の定義に組み入れた。

結果:
 2004年5月から2010年8月までの間、合計403人の患者がアスピリン群とプラセボ群に割りつけられた。静脈血栓塞栓症が再発した患者は、アスピリン群205人中28人で、プラセボ群197人中43人であった(6.6% vs. 11.2% per year; hazard ratio, 0.58; 95% CI, 0.36 to 0.93) (median study period, 24.6 months)。
 治療期間中央値23.9ヶ月の間、アスピリン群23人、プラセボ群39人で再発がみられた(5.9% vs. 11.0% per year; hazard ratio, 0.55; 95% CI, 0.33 to 0.92)。各群1人に重大な出血がみられた(アスピリン群:bowel angiodysplasia、プラセボ群:胃潰瘍)が、有害事象は群間差はなかった。死亡はアスピリン群(1.4% per year)、プラセボ群(1.3% per year)ともに同等であった。

limitations:
 ・当初予定していたよりも試験期間が長くなってしまった(6年)
 ・虚血性心疾患や脳血管疾患に対するアスピリン効果を検証するにはunderpowered
 ・症状のある動脈硬化症患者は除外されていること

結論:
 抗凝固療法を中止した明らかな誘因のない静脈血栓塞栓症患者に対する1日1回のアスピリン投与によって、静脈血栓塞栓症再発のリスクは低下した。

by otowelt | 2012-05-28 12:44 | 内科一般

コーヒー摂取と死亡は逆相関する

コーヒー消費量と死亡との大規模コホート試験の結果がNEJMに掲載されていた。

コーヒーと死亡との関連についての論文といえば、日本におけるMiyagi Cohort Studyが記憶に新しい。
Sugiyama K, et al. Coffee consumption and mortality due to all causes, cardiovascular disease, and cancer in Japanese women. J Nutr 2010; 140:1007-13.

Neal D. Freedman, et al.
Association of Coffee Drinking with Total and Cause-Specific Mortality
N Engl J Med 2012; 366:1891-1904May 17, 2012


背景:
 コーヒーは、もっとも広く消費されている飲料の1つであるが、コーヒー消費量と死亡リスクとの関連についてはよくわかっていない。

方法:
 われわれは、コーヒーの摂取とそれによる総死亡と特異的死亡について229119人の男性と173141人の女性(ベースラインで50歳から71歳)を調べた(National Institutes of Health–AARP Diet and Health Study)。
 参加者は6つの州(カリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ニュージャージー、ノースカロライナ、ペンシルヴァニア)と2つのメトロポリタンエリア(アトランタ、デトロイト)に居住する住民で、参加者のうち、癌、心疾患、脳卒中のある人は除外した。ベースラインにおいて一度、コーヒー摂取量を調べた(566401人がアンケートに全て答えた。アンケートの不備、コーヒー摂取量の記載漏れ、基礎疾患の存在などから15760人が除外されている)。

結果:
 1995年~2008年のフォローアップにおいて、5148760人年で、男性33732人、女性18784人が死亡した。年齢補正モデルでは、死亡リスクは、コーヒー飲料者で増加していた。しかしながら、コーヒー飲料者は喫煙率が高く、喫煙状況や他の寄与因子による補正後は、有意にコーヒー飲料と死亡率との間に逆相関が確認された。コーヒー飲料を非コーヒー飲料と比較した場合の補正ハザード比は、以下の通りであった。

・男性の場合
 1杯/日未満 0.99 (95% confidence interval [CI], 0.95 to 1.04)
 1杯/日 0.94(95% CI, 0.90 to 0.99)
 2~3杯/日 0.90 (95% CI, 0.86 to 0.93)
 4~5杯/日 0.88 (95% CI, 0.84 to 0.93)
 6杯/日以上 0.90 (95% CI,0.85 to 0.96)(P<0.001 for trend)
・女性の場合
 1杯/日未満 1.01 (95% CI, 0.96 to 1.07)
 1杯/日 0.95 (95% CI, 0.90 to 1.01)
 2~3杯/日 0.87 (95% CI, 0.83 to 0.92)
 4~5杯/日 0.84(95% CI, 0.79 to 0.90)
 6杯/日以上 0.85 (95% CI, 0.78 to 0.93) (P<0.001 for trend)

 原因特異的死亡において有意差がみられたものの、癌による死亡との逆相関は確認されなかった。
※この試験において登録された特異的死亡は以下の疾患
cancer (ICD-9, 140–239; ICD-10, C00–C97 and D00–D48), heart disease (ICD-9, 390–398, 401–404, 410–429, and 440–448; ICD-10, I00–I13,I20–I51, and I70–I78), respiratory disease (e.g., pneumonia, influenza, chronic obstructive pulmonary
disease, and associated conditions) (ICD-9, 480–487 and 490–496; ICD-10, J10–J18 and J40–J47), stroke (ICD-9, 430–438; ICD-10, I60–I69), injuries and accidents (e.g., accident, suicide, and homicide) (ICD-9, 800–978; ICD-10, V01–X59, Y85–Y86, U03, X60–X84, Y87.0, U01–U02, X85–Y09, Y35, Y87.1, and Y89.0), diabetes (ICD-9, 250; ICD-10, E10–E14), infections (e.g., tuberculosis, septicemia, and other infectious and parasitic diseases) (ICD-9, 001–139; ICD-10, A00–B99)
 サブグループ解析において、非喫煙者やベースラインにおいてvery good to excellent healthの参加者でも同等の結果が得られた。

結論:
 大規模プロスペクティブ試験において、コーヒー摂取量は、総死亡・原因特異的死亡との逆相関がみられた。

by otowelt | 2012-05-17 08:00 | 内科一般

ボツリヌス毒素Aの成人慢性頭痛に対する効果

顔面のしわ取りを目的にボトックス治療を受けた患者において
片頭痛が軽くなることが2000年に発見され、いろいろな臨床試験が
実施されてきた。頭が破裂しそうなcrushingタイプ、締め付けられるような
vicelikeタイプ、眼球が飛び出るくらい痛いeye-popping:ocularタイプの
片頭痛には効果があるとされている。
Christine C. Kim, et al. Predicting Migraine Responsiveness to Botulinum Toxin Type A Injections. Arch Dermatol 2010; 146: 159-163

JAMAより、効果的であるとの報告。
ただし1ヶ月に頭痛エピソード2回程度の減少と関連しているのみで
思ったほどの効果ではなさそうだ。

Jeffrey L. Jackson, et al.
Botulinum Toxin A for Prophylactic Treatment of Migraine and Tension Headaches in Adults
A Meta-analysis
JAMA. 2012;307(16):1736-1745. doi: 10.1001/jama.2012.505


背景:
 ボツリヌス毒素Aは慢性偏頭痛の予防に対して効果があると
 考えられている。

目的:
 ボツリヌス毒素Aが成人の偏頭痛の予防治療に有用かどうか評価する。

データ:
 MEDLINE, EMBASE,Cochrane trial registriesなど。
 1966年から2012年までのデータを使用。
 試験は、成人の頭痛においてボツリヌス毒素Aとプラセボを
 比べた試験を登録した。

結果:
 ボツリヌス毒素Aは、chronic dailyの頭痛患者において
 1ヶ月あたりの頭痛の減少と関連(1115 patients,
 −2.06 頭痛/月; 95% CI, −3.56 to −0.56; 3試験)、
 また慢性偏頭痛患者においても同様であった(n = 1508,
 −2.30 頭痛/月; 95% CI, −3.66 to −0.94; 5試験)。
 episodic偏頭痛においては有意差はみられなかった 
 (n = 1838, 0.05頭痛/月; 95% CI, −0.26 to 0.36; 9試験)。
 慢性緊張型頭痛においても同様に差はみられなかった
 (n = 675, −1.43頭痛/月; 95% CI, −3.13 to 0.27; 7試験)。
 1つの試験において、ボツリヌス毒素Aは、バルプロ酸と比べて
 偏頭痛減少と関連性はみられず(SMD, −0.20;
 95% CI, −0.91 to 0.31)。topiramate
 (SMD, 0.20; 95% CI, −0.36 to 0.76)や、アミノトリプチン
 (SMD, 0.29; 95% CI, −0.17 to 0.76)においても関連性なし。
 ボツリヌス毒素Aは慢性緊張型頭痛においてメチルプレドニゾロン点滴静注
 と比べて、頭痛減少に関連(SMD, −2.5; 95% CI, −3.5 to −1.5)。

結論:
 ボツリヌス毒素Aは、プラセボと比較して、成人の
 chronic daylyの頭痛、偏頭痛において中等度相当の効果と関連
 していたが、epidsodicな偏頭痛や緊張型頭痛とは関連性がみられない。

by otowelt | 2012-04-30 21:45 | 内科一般

ERCP後膵炎の発症予防にインドメタシン直腸内投与が有効

シンプルだが、大事なスタディ。

B. Joseph Elmunzer, et al.
A Randomized Trial of Rectal Indomethacin to Prevent Post-ERCP Pancreatitis
N Engl J Med 2012;366:1414-22.


背景:
 NSAIDs:非ステロイド抗炎症薬の直腸内投与によって、
 ERCP後膵炎の発生率が低下する可能性があるかもしれない。

方法:
 多施設共同ランダム化プラセボ対照二重盲検臨床試験において
 ERCP後膵炎リスクの高い患者を、ERCP後インドメタシン単回直腸投与群
 とプラセボ投与群に割り付け。プライマリアウトカムはERCP後膵炎とした。
 ERCP後膵炎は、
 ・新たな上部腹痛
 ・処置後24時間膵酵素の正常範囲上限の少なくとも3倍への上昇
 ・2泊以上の入院
 と定義された。
 また、高リスク患者については主要項目1つあるいは副次項目2つ以上を
 満たすものと定義された。
 主要項目
 ・臨床上Oddi括約筋の異常がある
 ・ERCP後膵炎の既往がある
 ・膵管括約筋切開術を施行された
 ・Precut sphincterotomy
 ・8回以上のCannulationを行った既往がある
 ・胆管のPneumatic dilatation
 ・Ampullectomy
 副次項目
 ・過去2回以上の膵炎の既往がある
 ・3回以上の膵管造影(1回以上は膵尾部まで造影到達)
 ・Aciniまで造影
 ・ブラシによる膵管細胞採取

結果:
 合計602人を登録し、82%において臨床的Oddi括約筋機能不全が疑われた。
 ERCP後膵炎は、インドメタシン群295人中27人(9.2%)、
 プラセボ群307人中52人(16.9%)に発生(P=0.005)。
 中等症以上の膵炎は、インドメタシン群13人(4.4%)、
 プラセボ群27人(8.8%)に発生(P=0.03)。
結論:
 ERCP後膵炎の高リスク患者では、直腸内インドメタシン投与により
 ERCP後膵炎の発生率を有意に低下させることができる。

by otowelt | 2012-04-13 06:46 | 内科一般

DPP-4阻害薬の効果と安全性に関するシステマティックレビュー・メタアナリシス

BMJからDPP-4阻害薬のシステマティックレビュー・メタアナリシスが
出ていた。GLP-1の分解を抑制し自分のGLP-1を働かせて
血糖値を下げる薬剤がDPP-4阻害剤であり、ジャヌビア、グラクティブ、
エクアなどがこれに該当する。
e0156318_21175492.jpg
Thomas Karagiannis, et al.
Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors for treatment of type 2 diabetes mellitus in the clinical setting: systematic review and meta-analysis
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1369


目的:
 メトホルミン単剤あるいはメトホルミンとよく使用される経口血糖降下薬
 の併用と、DPP-4阻害薬の使用における効果と安全性を
 成人2型糖尿病患者において評価する。

デザイン:
 ランダム化比較試験におけるシステマティックレビューとメタアナリシス

データ:
 Medline, Embase, the Cochrane Library, conference proceedings,
 trial registers, and drug manufacturers’ websites

適格基準:
 成人2型糖尿病におけるランダム化比較試験において
 DPP-4阻害薬と、メトホルミン単剤ないし
 メトホルミンとSU剤・ピオグリタゾン・GLP-1アゴニスト・インスリンとの併用を
 ベースラインHbA1cの変化において比較したものを登録。

アウトカム:
 プライマリアウトカムはHbA1cの変化とした。
 セカンダリアウトカムはHbA1c7%未満の達成率、
 体重変化、副反応による治療中断率、その他の重篤な有害事象、
 全死因死亡率、低血糖頻度、鼻咽頭炎、尿路感染症、上気道感染症、
 嘔気、嘔吐、下痢。

結果:
 27の報告、19の試験が登録され、7136人がランダム化され
 DPP-4阻害薬へ、6745人がランダム化され他の血糖降下薬へ割り
 付けられたシステマティックレビューとメタアナリシスの対象となった。
 DPP-4阻害剤はHbA1cの軽度の減少と関連しており
 (weighted mean difference[荷重平均差]0.20, 95%CI0.08-0.32) 、
 体重への減少も軽度だった(同1.5,95%CI 0.9 -2.11)。
 セカンドライン治療としては、HbA1cの低下を比較したところ、
 DPP-4阻害剤はGLP-1よりは劣り (同0.49, 95%CI0.31 -0.67)、
 ピオグリタゾンと同様であった(同0.09,95%CI−0.07-0.24)。
 しかしながら、HbA1cの低下を目標とする場合、SU剤を上回ることは
 なかった (RR in favour of sulfonylureas 1.06,95%CI0.98 ~ 1.14)。
 DPP-4阻害剤は体重プロファイル関して良好であった。SU剤と
 比較すると、weighted mean difference −1.92, −2.34 to −1.49、
 ピオグリタゾンで−2.96, −4.13 to −1.78。しかしながらGLP-1
 と比較しても良好な結果とはならなかった(1.56, 0.94 to 2.18)。
 どの治療群においても、DPP-4阻害剤は、単剤比較としてのメトホルミン、
 あるいは、セカンドラインとしてのピオグリタゾン、GLP-1アゴニストとの
 比較においても、低血糖は最小限であった。
 ピオグリタゾンよりDPP-4阻害剤は重篤な有害事象頻度は少なかった。
 嘔気・嘔吐・下痢の頻度はメトホルミン併用やGLP-1アゴニスト併用で
 多くみられた。鼻咽頭炎、上気道感染、尿路感染リスクは、
 DPP-4 阻害剤と他の比較について差はなかった。

結論:
 2型糖尿病のある患者で、メトホルミン単独で血糖目標値を達成
 できない場合、DPP-4阻害剤はSU剤やピオグリタゾンと同様
 HBA1cを低下させることができる。しかしながら、
 費用や長期安全性は考慮されるべきであろう。

by otowelt | 2012-03-18 05:28 | 内科一般

Alzheimer病におけるドネペジルの継続は有用

Robert Howard, et al.
Donepezil and Memantine for Moderate-to-Severe Alzheimer's Disease
N Engl J Med 2012;366:893-903.


背景:
 臨床試験では、軽度-中等度のAlzheimer病に対する
 コリンエステラーゼ阻害薬による治療による利益が示された。
 中等度-重度のAlzheimer病へ進行した後も
 同治療を続けることに利益があるかどうかはわかっていない。

方法:
 われわれは295人の地域在住の少なくとも3ヶ月ドネペジル治療を
 うけていた中等度-重度のAlzheimer病患者(SMMSEで5-13点)を登録。
 ドネペジルを続けた場合、ドネペジルをやめた場合、
 ドネペジルをやめてメナンチンを開始した場合、
 ドネペジルを続けメナンチンを開始した場合を比較した。
 なお、薬剤に関してinactiveである場合はプラセボを使用した。
 試験期間は52週。
 コプライマリアウトカムはSMMSEおよびBADLSのスコアリングとした。 
 最小のclinically important differencesはSMMSEで1.4ポイント、
 BADLSで3.5ポイントとした。

結果:
 ドネペジルを継続した患者は、ドネペジルをやめた患者に比べて
 SMMSEは平均より1.9ポイント高く(95%CI 1.3 to 2.5)、
 BADLSは3.0ポイント低かった(95% CI, 1.8 to 4.3)
 (P<0.001 for both comparisons)。
 メマンチンを投与された患者はメマンチンプラセボを投与された患者より
 SMMSEは平均1.2ポイント高かった(95% CI, 0.6 to 1.8; P<0.001)。
 同様にBADLSは1.5ポイント低かった(95% CI, 0.3 to 2.8; P=0.02)。
 ドネペジルとメマンチンの効果に有意差は観察されなかった。
 ドネペジル単独に比べて、ドネペジルとメマンチンの併用に有意な利益は
 認められなかった。

結論:
 中等度-重度のAlzheimer病においてドネペジルによる継続的治療は
 12ヵ月間にわたる臨床的に意味のある最小の差を上回る認知機能への
 利益、有意な機能への利益に関連していた。

by otowelt | 2012-03-08 23:02 | 内科一般