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クリスマスBMJ2016:アンジェリーナ・ジョリーの一件はBRCA検査と乳房切除術を増加させたか?

e0156318_2395893.jpg 日本でもかなり話題になりましたよね。 

Christmas BMJ 2016
Sunita Desai, et al.
Do celebrity endorsements matter? Observational study of BRCA gene testing and mastectomy rates after Angelina Jolie’s New York Times editorial
BMJ 2016; 355 doi: 10.1136/bmj.i6357 (Published 14 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i6357


目的: 
 2013年のニューヨークタイムズに掲載された、アンジェリーナ・ジョリーのBRCA検査を受けた上での予防的乳房切除術の件がBRCA検査や乳房切除に与えた影響を調べること。

方法:
 差分の差分分析を用いた観察研究。民間保険に加入しているアメリカ人を対象とした。患者は18~64歳までの女性を登録(Truven MarketScan 民間保険請求データベースから953万2836人)。主要アウトカムは、2013年5月14日前後を比較した、15営業日内のBRCA検査の頻度を2012年のものと比較した。乳房切除術の頻度についてもBRCA検査を受けた女性における出版前後の月の頻度を調べた。アンジェリーナ・ジョリーの記事が出版された15日内の検査増加およびコスト超過についても調べた。

結果:
 BRCA検査は、2013年の当該出版から急速にその頻度が増えた(出版前15営業日では10万人女性あたり0.71件だったものが、出版後15営業日において10万人女性あたり1.13件へ増加)。一方、2012年では同様の15営業日の間の検査数は同等であった(10万人女性あたり0.58件 vs 0.55件)。
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(文献より引用)

 差分の差分分析では、1日あたりの絶対増加は10万人女性あたり0.45件の影響があると推定され、64%の相対的増加だった(P<0.001)。
 4500件のBRCA検査の増加が類推され、これは1350万ドル(15.8億円)の支払いがあったことを示唆する。BRCA検査の増加は2013年のどの点においても増加が確認されていた。予防的乳房切除術の頻度は出版後不変であったが、BRCA検査を受けた女性の60日間乳房切除率は出版前10%であったものが出版後7%に減少していた
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(文献より引用)

※理由として「incremental BRCA tests obtained as a result of the Jolie editorial did not yield additional BRCA positive mutations that might warrant preventive mastectomy.」と書かれている。

結論:
 有名人の広告は大規模ですみやかな効果を健康サービス使用に与えることがわかった。このような広告が、幅広い視聴者にすみやかに到達する低コストな手段になる可能性があるものの、根本的にリスクが高い集団を効果的に選択することはできない。

by otowelt | 2016-12-15 12:51 | その他

クリスマスBMJ2016:アカデミックなスパムメールは減らせない

e0156318_2395893.jpg 私もナントカジャーナルの編集長になりませんか、みたいなメールがよく来ます。

Christmas 2016 BMJ
Andrew Grey, et al.
We read spam a lot: prospective cohort study of unsolicited and unwanted academic invitations
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i5383 (Published 14 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i5383


目的:
 会議出席や論文投稿に際して(おそらく個人情報の悪用に違いないが)、アカデミックな電子スパム招待が来ることがしはしばある。その量、関連性、内容、抑制可能性について調べた。

方法:
 前向きコホート研究。参加者のE-mailの量を調べた。被験者は5人の高名な学者と1人の論文執筆者、編集者そして会議主催者とした。スパムメール送信者の配信リストから、受信を解除するようはからった。
 主要アウトカムは、配信リストから解除した直後および1年後のスパム招待数とした。重複した招待もカウントされ、各招待状の妥当性は受領者の研究上の利益にクラス分けされた。スパム招待の内容の定性的評価が行われた。

結果:
 ベースライン時に、被験者は1ヶ月で平均312のスパム招待を受け取った。解除によって、1ヶ月後に39%スパム量の減少がみられたが、1年後には19%の減少にとどまった。スパムメール招待の16%が内容が重複し、83%が受信者の研究分野への関連性がほとんどないか全くないものだった。スパム招待は、独創的な用語やお世辞が用いられており、そして極度な盛り上がり口調を特徴としていたが、時に驚くようなものもあった。
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(文献より引用)

結論:
 学術的な迷惑スパムメールは多く、何度も送付され、しばしば学業とは無関係であり、回避または防止することは困難である。

by otowelt | 2016-12-15 10:36 | その他

クリスマスBMJ2016:サンタクロースは貧困地域にはやってきにくい

e0156318_2395893.jpg 9割がたやってくるので、すごい成績だとは思いますが、社会経済的な層によって異なる結果が出ると切ないですね。

John J Park, et al.
Christmas BMJ 2016
Dispelling the nice or naughty myth: retrospective observational study of Santa Claus
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6355 (Published 14 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i6355


目的:
 クリスマスの日に病院にサンタクロースが来るかどうかに影響する因子を同定する。
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(文献より引用)

方法:
 後ろ向き観察研究である。イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズにおける小児科病棟で行われた。被験者は2015年のクリスマス時に小児科病棟に勤務している186人のスタッフ。主要アウトカムは、正気な病棟におけるサンタクロースの在不在とした。これは小学生がいるかどうかや、10~17歳の若年者がサンタクロースを信じているか、北極からの距離、社会経済的困窮と相関した。

結果:
 サンタクロースは、4か国のほとんどの小児科病棟であらわれた。イングランドで89%、北アイルランドで100%、スコットランドで93%、ウェールズで92%だった。
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(文献より引用)

 サンタクロースが訪れなかったのは、イングランドではより高度の貧困地域だった(イングランド:オッズ比1.31、95%信頼区間1.04-1.71、イギリス全体1.23、95%信頼区間1.00-1.54)。その反面、学校が休みであったり、サンタクロースを信じているかどうかや、北極からの距離とは相関はみられなかった。
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(文献より引用)

結論:
 この研究は、サンタクロースが1年間いい子にしている子どものところにやってくるという伝統的な信念を払拭するものとなった。サンタクロースは、最貧困地域には訪れにくい。潜在的な解決法として、サンタクロースの契約、またはそうした地域でのサンタクロースの雇用が望まれる。
 

by otowelt | 2016-12-15 10:07 | その他

クリスマスBMJ2016:薬剤のスペルミスには要注意

e0156318_2395893.jpg  No-elとX-missでクリスマスとかけたギャグが最後に入っていますが、日本人にはうけないか・・・。

Christmas BMJ 2016
Robin E Ferner, et al.
Nominal ISOMERs (Incorrect Spellings Of Medicines Eluding Researchers)—variants in the spellings of drug names in PubMed: a database review
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i4854 (Published 14 December 2016)


目的:
 薬剤の名前の誤字が、出版された文献の検索を阻害しうるかどうか調べること。

方法:
 PubMedのデータレビュー。イギリスの病院の処方箋で誤字がみられやすい30の薬剤の名称が登録された。また、30の院内処方箋コントロール群を設定した。以下の定義が用いられた。
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 検索タグとしてたとえば「薬剤名[tw]」を記載して、PubMedを検索した。

結果:
 30の薬剤の標準的名称が合計32万5979件ヒットした一方で、hidden reference variantsの160は3872件ヒットした(1.17%)。コントロール群での標準的名称のヒットは47万64件であり、hidden reference variantsは766件(0.16%)だった。
 文字の入れ替わり(i→yあるいはその逆)や省略が2924件(74%)にのぼった。Amitriptyline(8530件ヒット)は18のreference variantsを生んでいた(179ヒット[2.1%])。語句の最後が「in」「ine」「micin」で終わるものはよく誤記された。
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(文献より引用)

 「gentamicin」「amitriptyline」「mirtazapine」「trazodone」のhidden reference vatriantsを用いると、少なくとも19のシステマティックレビューが検索できなかった。hidden reference variantはクリスマスとも関連しており、「No-el」はまれだが、「X-miss」はもっとまれだ(Amoxicillin→Amoicillin、Doxycycline→Doycycline、Oxygen→Oygen)
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(文献より引用)

結論:
 文献検索をするときは、研究者は薬剤名のスペルミスを考慮すべきだろう。

by otowelt | 2016-12-15 09:39 | その他

クリスマスBMJ2016:ポケモンGOは一時的に歩数を増やす

e0156318_2395893.jpg ポケモンGOの論文がクリスマスBMJに絶対掲載されると思った人ー!「ハーイ!」

Christmas BMJ 2016
Katherine B Howe, et al.
Gotta catch’em all! Pokémon GO and physical activity among young adults: difference in differences study
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6270 (Published 13 December 2016)


目的:
 ポケモンGOをプレイすることで、ゲームインストール後から6週間までの歩数が与える効果を検証する。

方法:
 オンラインサーベイデータを用いたコホート研究である。被験者は、アメリカにおけるアマゾンメカニカルターク(https://ja.wikipedia.org/wiki/Amazon_Mechanical_Turk)参加者(18~35歳でiPhone6シリーズスマートホンを有する1182人)である。主要アウトカムは、ポケモンGOインストール前4週間の1日歩数とインストール後6週間の歩数である。差分の差分回帰モデルを用いて、ポケモンGOのプレイヤーと非プレイヤーにおける1日歩数の変化を調べた。

結果:
 560人(47.4%)の被験者がポケモンGOをプレイ(「トレーナーレベル5」まで到達)、インストール前4週間で1日平均4256±2697歩歩いていた。差分の差法では、ポケモンGOプレイヤーの1日平均歩数は、インストール後初週で955歩(95%信頼区間697-1213歩)、その後5週間かけてゆるやかにこの上昇幅は減少していった。インストール後6週間までに、1日歩数はインストール前のレベルに戻った。
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(文献より引用)

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(文献より引用)

結論:
 ポケモンGOは、インストール後の1日歩数の増加と関連していた。しかしながらこの関連性は、6週間かけて緩やかに消失していった。

by otowelt | 2016-12-14 21:45 | その他

クリスマスBMJ2016:人生を楽しく生きると長生きする

e0156318_2395893.jpg クリスマスBMJのリサーチ部門が発表され始めました。Second authorのJane Wardleはこの文献が出る前に亡くなられたそうです。ブラックジョークじゃないですよね・・・?

Christmas BMJ 2016
Paola Zaninotto, et al
Sustained enjoyment of life and mortality at older ages: analysis of the English Longitudinal Study of Ageing
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6267 (Published 13 December 2016)


目的:
 4年以上におよぶ期間の間に「人生って楽しい!」と思った頻度が、総死亡および心血管系疾患による死亡およびその他の原因による死亡と関連しているかどうか調べること。

方法:
 イギリスに棲んでいる高齢男女を代表するサンプルである、English Longitudinal Study of Ageing (ELSA)を用いた縦断的観察研究。参加者は9365人の50歳以上の男女(登録時平均年齢63±9.3歳)。主要アウトカムは死亡までの期間とした。

結果:
 2002年(1期)、2004年(2期)、2006年(3期)に人生が楽しいと思えるかどうか調べた。2264人(24%)が1回、1833人(20%)が2回、3205人(34%)が3回そうであると回答した。
 追跡期間中、1310人の死亡があった。死亡率は、追跡期間中の人生が楽しいと感じた数と逆相関を示した。
 人口動態的因子、ベースラインの健康状態、合併症、抑うつ症状で補正すると、「楽しくない」群と比較して、総死亡のハザード比は2回楽しいと回答した群で0.83(95%信頼区間0.70 -0.99)、3回楽しいと回答した群で0.76(95%信頼区間0.64-0.89)だった。同様の関連は、3回目に楽しいと答えてから2年以内に死亡した例を除いても観察され(ハザード比0.90、95%信頼区間0.85-0.95)、全症例解析でも観察された(ハザード比0.90、95%信頼区間0.83-0.96)。
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(文献より引用)

結論:
 これは観察研究である、ゆえにその結論は導けない。だが、この研究結果は人生における幸福を維持する重要性を示したことで、健康アウトカムに対する幸福の重要性を理解する新しい側面を見せた。(すいません意訳が思いつきません)

補足説明:
 JW(second author)はこの論文が出版される前に死亡した。

by otowelt | 2016-12-14 21:18 | その他

クリスマスBMJ2016:“post-truth社会”はエビデンスに影響を与えるのか?

e0156318_2395893.jpgChristmas 2016
Tracey Brown.
Evidence, expertise, and facts in a “post-truth” society
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6467 (Published 09 December 2016


 「“post-truth社会”おけるエビデンス、専門的知見、事実」というタイトルのEditorialです。オックスフォード英語辞書は、2016年の言葉として「post-truth(ポスト真実)」を選びました(流行語大賞のようなもの)。日本ではほとんど耳にしません。事実よりも感情的な訴えかけの方が世論に大きく影響するという広義の意味を持ち、簡単に言えばBrexit(イギリスのEU離脱)とトランプ氏の大統領選を表したものです。

 エビデンス・専門的知見はパターナリスティックな側面も孕みます(そう見えがちです)。post-truth思考が、医療において重要な事実において「勝ち抜く」がごとくそのエビデンスを修飾しうる潜在的な危険性を秘めているのかもしれません。

by otowelt | 2016-12-11 11:24 | その他

クリスマスBMJ2016:胸郭形成術を受けた93歳男性

e0156318_2395893.jpgChristmas 2016
Alison Tonks, et al.
68 years—a record breaking thoracoplasty?
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i6513 (Published 09 December 2016)


 戦時中に胸郭形成を受けた93歳の男性が、その始終を語ったものです。日本でも胸郭形成を受けた患者さんは滅多に見なくなりましたが、それでも年に何例かはこの胸部レントゲン写真を目にすることがあります。いずれ、こうした過去の治療を受けた患者さんも診なくなってしまうのだろうと思います。
 それにしても決して軽くはない呼吸器症状は有しながら、インターネットを巧みに使っておられるとは、驚きです。

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(文献より引用:若い医師を驚かせた胸部レントゲン写真)

by otowelt | 2016-12-11 11:13 | その他

クリスマスBMJ2016:違法薬物と道徳、倫理

e0156318_2395893.jpg 『考える快楽』で有名なグレイリングの寄稿です。

Christmas 2016
A C Grayling.
Morality and non-medical drug use
BMJ 2016; 355 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.i5850 (Published 09 December 2016) Cite this as: BMJ 2016;355:i5850


他人を傷つけていないのなら、大麻やヘロインの使用をアルコールやカフェインの使用以上に制限する道徳的根拠はない ――― A・C・グレイリング

 drugという言葉が指す言葉には色々なものが含まれる。アヘン、その誘導体、コカイン、LSD、「エクスタシー」、アンフェタミン、溶剤、トランキライザー・・・。しかしこのdrugにはたばこ(ニコチン)やコーヒー・ワイン(カフェイン)は含まれていない。コーヒーカップの横に砂糖を置くのはよくて、ホットケーキミックスに大麻を入れるのはなぜダメなのか。そういうロジカルな問題が存在する。飲酒運転は他人に危害を与えうるため、道徳的に許されない。しかし、もし他人を傷つけない範疇であればこうしたdrugは是とされるものではないだろうか。

 アルコールの使用が成人に対して道徳的に容認され合法である理由は、長く用いられてきた歴史においてアルコールの社会的受容性が高いという起因する。人々が望む行為が他人に危害を加えない限りは、好きなだけ行えるように自由であるべきと考えたのはミルである(ミルの原理)。リバタリアンが合法化されるべきものかどうか、国家はその限界について議論すべきである。アルコールなどの軽度の嗜好品から違法薬物にいたるまで、その注意喚起が国家によってなされるべきか、あるいは個人の自由意思によって注意すべきか。このライン引きは国家そのものの性質を決定するだけでなく、個人の倫理に強く影響を与える。

 

by otowelt | 2016-12-11 10:58 | その他

書籍の紹介:ホスピタリストのための内科診療フローチャート

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 私が手に入れてよかったと思う医学書は、「読んで自分が焦る本」です。膨大な情報量と著者の勉強量を目の当たりにし、医師としての自分の知識や能力に焦りを覚える本。紹介する「ホスピタリストのための内科診療フローチャート ―専門的対応が求められる疾患の診療の流れとエビデンス」という本を目にし、間違いなく私は「ああもっと勉強しなければ」と焦りました。
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 高岸勝繁先生は私がかつて洛和会音羽病院で研修医をしていたときの後輩研修医です。2年目研修医として私が先輩風を吹かそうとしていたところ、彼の持っている医学的知識量がすでにかなり高い位置にあり、電子カルテの操作以外に何も教えることができなかったのをよく覚えています。私に尊敬のまなざしが向けられたのは、Gram染色の写真を電子カルテにペーストする方法を教えたときくらいでしょうか。「一体何者なんだ」というのが、彼に対する第一印象でした。彼の勉強の成果であるハイクオリティのパワーポイントを、こっそりパクったこともあります。ゴメンナサイ、今だから言える。

 当時私は1日1編の医学論文を読むことを自分に課していたのですが、彼はそんなことはおかまいなしに「1日3編の論文を読んでいる」とサラリと口にしていました。「まさか!そんなのウソだろう」と思っていたら、休憩中や昼食中、初恋の女性からの手紙でも読んでいるのではないかというくらい、医学論文に夢中になっている彼を見て唖然としました。

 現在彼は「Hospitalist ~病院総合診療医~http://hospitalist-gim.blogspot.jp/)」というブログを運営しています。毎日のように更新されるハイレベルな知識の洪水の恩恵を受けようと、アクセスが集まっています。彼の医学的知見のアップデートは、止まることを忘れたジェットコースターのようにハイスピードを維持しながら走り続けています。

 この本を手にしたとき、初めて彼と会ったあの日と同じように私はこう思いました。「一体何者なんだ」。しかし彼にとっては医学的知識を脳内に更新し続ける作業は、呼吸するがごとく、飲食するがごとく、いたって日常のことなのです。それでいてこの本は、彼のシステマティックな思考回路を素晴らしく端的に表しています。私はそれがとても嬉しく、そして懐かしい。

 ―――日本中の医師よ、さあこの本を読んで焦るがよい。




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by otowelt | 2016-10-19 08:00 | その他