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クリスマスBMJ:医学部の指導者は口ヒゲが多い

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、11本目です。
 口ヒゲ指数の定義が思っていたのと逆の定義で、指数が低いほど口ヒゲが多いという意味を指します。外科分野では口ヒゲはさすがに少ないですね。

Mackenzie R Wehner, et al.
Christmas 2015: Face Time
Plenty of moustaches but not enough women: cross sectional study of medical leaders
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6311 (Published 16 December 2015)


目的:
 口ヒゲがあるリーダーと女性リーダーの数を比較することで、医学部の教育指導者の立場にある人間の性差に注目したい。

方法:
 アメリカの医学校における横断研究である。NIHと関連のある50のアメリカ医学校からリーダーに位置する1018人を被験者に選んだ。女性リーダーの数とヒゲのあるリーダー(ヒゲリーダー)の数をアウトカム指標に設定した。加えて、口ヒゲ指数(女性数/ヒゲ数)を多項ロジスティック回帰モデルを用いて解析した。

口ヒゲの定義:
 上唇の上の皮膚に存在する毛で、他のヒゲと結合されていてもよいとする。Copstash Standard型もVan Dyke型もOKとしている。いくつか珍しいタイプの口ヒゲもあるが、ダリ型やスーパーマリオ型もOKらしい。
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(文献より引用:適格基準の口ヒゲ:ダリ型・ジャック・スパロウ型・スーパーマリオ型)

※毛が豊富でも、口の上にヒゲがなければ口ヒゲとは認められない。
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(文献より引用改変)

結果:
 50の医学校の医学部のリーダーの13%が女性だった(1018人中137人)。ヒゲリーダーは、19%(1018人中190人)だった。施設ごとに、また専門分野ごとに女性リーダーの数にはばらつきがあった。7施設および5専門分野では、女性リーダーの頻度が20%を超えた。
 本研究における総口ヒゲ指数は0.72(95%信頼区間0.58 to 0.90; P=0.004)であった。20の専門分野のうち6だけが女性の方がヒゲより多かった(口ヒゲ指数>1)。
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(文献より引用改変:口ヒゲ指数:施設別、専門分野別)

結論:
 アメリカの医学校では、口ヒゲのあるリーダーの方が女性リーダーより多い。口ヒゲ指数が1以上になるよう各施設とも努力されたい。


by otowelt | 2015-12-18 12:45 | その他

クリスマスBMJ:ホラー映画は“血が凍る”

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、10本目です。
 「bloodcurdling」という単語は、身の毛もよだつ、血も凍るようなという意味で、本当にbloodがcurdlingと関係しているのか調べたのがこの研究です。

Banne Nemeth, et al.
Christmas 2015: Infection Control
Bloodcurdling movies and measures of coagulation: Fear Factor crossover trial
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6367 (Published 16 December 2015)


目的:
 中世から言われてきたように、急性の恐怖は血液を凝固させるかもしれない。この真偽について調べた。

方法:
 クロスオーバー試験である。オランダのライデン大学の臨床疫学部の大会議室を即席の映画館に変身させた。参加者は、ライデン大学医療センターの30歳以下の24人の健常ボランティア(生徒、卒業生、職員)である。14人がホラー映画を観た後に教育的な(こわくない)映画を観る群、10人が教育的な映画を観た後にホラー映画を観る群に割り付けられた。映画は、ホラー映画は2010年の『インシディアス』、教育的な映画は2014年の『シャンパーニュの一年』。映画はそれぞれ90分。(同じ日に観るわけにはいかないので)2回目の映画は1週間以上間をあけて同じ時間帯で観た。
 アウトカムは、恐怖指数とも言える凝固系の測定に設定した。それぞれの映画の15分前に採血し、映画を観終わった後15分以内に2回目の採血をおこなった。凝固系の検査項目として、第VIII因子、D-ダイマー、TAT(トロンビン-アンチトロンビン複合)、プロトロンビンフラグメント1+2とした。セカンダリアウトカムとしてVASによってどのくらい恐怖を感じたか被験者に報告してもらった。

結果:
 すべての参加者が試験を完遂できた。VASによれば、ホラー映画は教育的映画よりもこわいことがわかった(当たり前だ)(平均差5.4、95%信頼区間4.7-6.1)。映画の前後における第VIII因子値の差は、ホラー映画の方が有意に高かった(平均差11.1 IU/dL [111 IU/L], 95%信頼区間1.2 to 21.0 IU/dL)。TAT、D-ダイマー、プロトロンビンフラグメント1+2については差はみられなかった。

結論:
 若い成人男女では、恐怖(本研究ではホラー映画)はトロンビン形成なしに第VIII因子の増加と関連していた。


by otowelt | 2015-12-18 06:37 | その他

クリスマスBMJ:現代の論文はポジティブな言葉を使いすぎ?

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、9本目です。
 初めて書いた英語論文で「surprisingly」という言葉を使ったら、度が過ぎると言われ一蹴された経験があります。「表現バイアス」とでも呼ぶのでしょうか。
 ここまでやるなら、このクリスマスBMJの研究自体にもそういう副詞や形容詞をふんだんに盛り込んでもらいたかったですね。

Christiaan H Vinkers, et al.
Christmas 2015: The Publication Game
Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6467 (Published 14 December 2015)


目的:
 科学論文のアブストラクトに使われている言葉が、時代の流れでポジティブな言葉やネガティブな言葉の使い方に変化をもたらすのかどうか調べる。

方法:
 1974年~2014年にPubMedに収載された科学論文のアブストラクトにおける後ろ向き解析である。
 novel(新しい)、amazing(驚くべき)、bright(輝かしい)、innovative(革新的な)といったポジティブな単語と、detrimental(有害な)、impossible(不可能)、unsatisfactory(不満足な)、mediocre(平凡な)といったネガティブな単語をそれぞれ25単語、そのほかのニュートラルな名詞や形容詞をオグデンのベーシック英語からランダムに100抽出した。そして、オンラインの論文検索でアブストラクトからワードを検索し数えた。これら単語群が1980年からどのように変化しているかを調べた。

結果:
 1974~80年から2014年までの化学論文の単語の使用率を見ると、ネガティブやニュートラルな単語に比べ、ポジティブな単語は平均2%から17.5%へと増加していた。とくに上位の単語、robust(強固な)、novel(新しい)、amazing(驚くべき)といったものは相対的に150倍という増加をみせていた。
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(文献より引用:ポジティブな単語の変遷)

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(文献より引用:使用数の多いポジティブな単語)

 高いインパクトファクターの論文に限定したところ、これほど顕著ではないものの匹敵するほどの増加がみられていた。非英語圏の著者はポジティブな単語を使用する傾向が強かった。ネガティブな単語は、1974~1980年から2014年までの間、1.3%から3.2%へと増加していた(相対増加率2.57倍)。ニュートラルな単語やベーシック英語のランダム抽出単語には有意な増加はみられなかった。

結論:
 われわれの解析によれば、現代の科学論文はよりポジティブ・ネガティブな単語を使う傾向にあることがわかった。科学者は研究結果の陽の側面に目が行きがちである。しかし、研究の質向上に意義のあることかどうかは疑問であろう。
 

by otowelt | 2015-12-18 00:52 | その他

クリスマスBMJ:アルカンシエルの呪いは存在するか?

 クリスマスBMJ、8本目です。
 「アルカンシエルの呪い」とは、Wikipediaによれば『世界選手権(特に男子エリートロードレース)で優勝した選手が、翌年には大きく成績を落とすというケースが少なくないほか、なぜかレース中の落車事故やメカトラブルが頻発したり、歴代の優勝者は私生活で家庭不和や事故、病気に罹患するなどのトラブルに見舞われていることなどから、俗に自転車業界では「アルカンシエルの呪い(英語: Curse of the rainbow jersey、フランス語: Malédiction du maillot arc-en-ciel)」というジンクスがまことしやかに噂されている』と書かれています。
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(写真:アルカンシエル[Wikipediaより引用])

Thomas Perneger.
Christmas 2015: All in the Mind
Debunking the curse of the rainbow jersey: historical cohort study
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6304 (Published 14 December 2015)


目的:
 自転車の世界選手権の現行チャンピオンが勝てなくなるという「アルカンシエルの呪い」(curse of the rainbow jersey)の機序を理解すること。

方法:
 ヒストリカルコホート研究。1965年から2013年の間に、世界選手権自転車競技大会ロードレースあるいはジロ・ディ・ロンバルディアで優勝したプロ自転車選手を登録した。選手が優勝した年をyear 0とし、その後2年(year 1, year 2[1年目だけアルカンシエル着用])のレース勝利数をアウトカムとした。以下の仮説を調べた。

・「スポットライト効果(spotlight effect)」:優勝者が負けると、大々的に取り上げられっる
・「マーク仮説(marked man hypothesis)」:優勝者が切るアルカンシエルが派手なので、他の選手からマークされる
・「平均への回帰(regression to the mean)」:勝ちやすいシーズンの後は、勝ちにくい

※優勝者は世界戦後の1年間、アルカンシエルを着用して全てのレースに出場することが許される

結果:
 平均すると、世界選手権チャンピオンはyaer 0に5.04回勝利しており、year 1に3.96回、year 2に3.47回勝利している。一方ジロ・ディ・ロンバルディア優勝者は、それぞれ5.08回、4.22回、3.83回である。初年度が最も勝利を蓄積しやすいことが分かった(勝利比1.49, 95%信頼区間1.24-1.80)。しかし、year 1とyear 2には有意差はなかった。

結論:
 自転車の世界チャンピオンは優勝した年よりもアルカンシエルを着用した次の年の方が勝ちにくいという特徴はあったが、おそらく平均への回帰がもっとも説明のつく現象であり、呪いではないだろう。


by otowelt | 2015-12-17 06:20 | その他

クリスマスBMJ:ヒト海綿状脳食症!?

 クリスマスBMJ、7本目です。
 「海綿状脳症」をジョークにしたものですが、encephalophagyの訳が思いつかず、脳食症としました。いくらケーキとはいえ、患者団体などからBMJにクレームが来そう。

Lucinda Whitton.
Christmas 2015: Call to Action
Hominid spongyform encephalophagy: cooking time 1-11/2 hours, difficulty
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6310 (Published 14 December 2015)


 この論文は「脳ケーキ」の作り方を記したものです。私は料理にまったく不得手な人間なのと、見ていて気分のよいものではないと思いますので、こういう論文があったよという記述にとどめておきます。

Step 1: スポンジ作成
Step 2: 砂糖衣がけ
Step 3: 脳実質作成
Step 4: 大脳半球作成
Step 5: 基底膜作成
Step 6: 小脳作成
Step 7: 脳回作成
Step 8: 最も難しい虫回作成
Step 9: 解剖(ナイフなどでケーキ食べること)
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※注意!これはケーキでできています。
(文献より引用:脳ケーキ)


by otowelt | 2015-12-16 20:41 | その他

クリスマスBMJ:ゾンビの疫学、治療、予防

e0156318_10323428.jpg クリススマスBMJの6本目です。
 ゾンビの総説を意訳しています。zombificationという言葉に笑ってしまいました。

Tara C Smith.
Christmas 2015: Infection Control
Zombie infections: epidemiology, treatment, and prevention
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6423 (Published 14 December 2015)


背景:
 ゾンビは医療現場の一部でよくみられるようになってきた。ゾンビ専門家のMatt Mogk は、ゾンビの診断基準を以下の3つとしている。1.ヒトの死体に活力が与えられたもの、2.容赦なく攻撃的であること、3.生物学的に感染すること、である。しかしMogkはこの定義はレイジゾンビの認知によって変わってきたと言う。レイジゾンビとは、感染しているが生存している状態を指す。ゾンビの生物学的知見と疫学について記載したい。

歴史:
 ハイチ人にみられたゾンビ事例がもっとも詳しく記述されている。ブードゥー教にまつわるものが有名(1968年にアウトブレイクした事例[ナイト・オブ・ザ・リビングデッド][写真]がある)。現在ではこうした宗教にからむゾンビ発症例は少ないとされており、近年は咬傷によって感染する例が多い。
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(文献より引用:1968年のアウトブレイク)

 Solanumウイルスが最も病原微生物として検討されている。致死率は100%とされている。近年の都市化によってこうしたウイルスが人間界にも侵入してきたため、ゾンビ化例が増えているものと思われる。しかし、アメリカではこのウイルスによるアウトブレイクは示されていない。Trixieウイルスはペンシルヴァニアでの事例が報告されている。2010年にアイオワ州でもアウトブレイクがみられた。摂食だけでなく、空気感染の可能性についても示唆されている。このアウトブレイクは軍の介入によって鎮静化がはかられたものの、現在も感染者は存在するものとみられている。2002年にレイジゾンビのアウトブレイクがイギリスでみられている(※レイジゾンビについては上述)。これはエボラウイルスに由来するものである。秒単位で感染性が確認され、この事例では国境封鎖を余儀なくされている。ほとんどのレイジゾンビは餓死したが、無症候性のキャリアも確認されている。

症状:
 潜伏期間はさまざまであるが、症状は一様である。レイジゾンビを除くと一般的には死亡している状態だが、凶暴であり、また人肉を喰らう。歩行はふらついており、うめき声をあげることもある。また、皮膚は腐敗することもある。例外的に知能が高いゾンビも存在し、肉を食べないこともある。

原因と伝播:
 ほとんどが咬傷によって感染する。ヒトヒト感染が多いが、昆虫や動物からの感染例もある。蚊から感染したという報告もある。ウイルスに関しては上述の通りだが、他にもエルシニアや冬虫夏草などの原因も報告されている。

治療:
 ゾンビを発症すると社会破壊性のある症状を呈することが多いため、治療については報告が不足している。現時点でゾンビ発症に関する病原微生物の情報が限られており、ワクチンについてはどの検査室でも作られていない。ワクチンの開発によってゾンビの伝播を予防することができるだろう。さらなる研究が望まれる。


by otowelt | 2015-12-16 04:15 | その他

クリスマスBMJ:ロシア高官は歩くときに右腕を振らない

 クリスマスBMJの5本目です。
 論文からビデオが閲覧できます。確かに明らかな左右差があるので、驚きました。しかし、どう考えても著者がふざけているとしか思えない、歩行とは関係のないプーチン大統領の映像が多いです。

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(文献よりビデオ情報を引用:左:柔道中、右:筋トレ中)

 メドベージェフ首相はKGBとは関係ないそうで、プーチン大統領の真似をしているのではないかと考えられています。それにしても、こんな論文を大々的に発表して大丈夫なんでしょうか。

Rui Araújo, et al.
Christmas 2015: Political science
“Gunslinger’s gait”: a new cause of unilaterally reduced arm swing
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6141 (Published 14 December 2015)


目的:
 上位型麻痺(Erb麻痺)、脳卒中、Parkinson病といった肩の病的な原因によって起こる、片側の腕を振らない歩き方の新しい原因を究明すること。

方法:
 YouTubeビデオの解析によって、ロシア高官の歩き方を調べた。
※論文中にURLあり(http://bcove.me/6dnnnqzp)。

結果:
 プーチン大統領、メドベージェフ首相のほか、アナトーリー・セルジュコフなど3人のロシア高官の歩き方は同じだった。すなわち、左腕は普通に振って歩いているものの、右腕はほとんど動かしていないということだ。非対称な歩行形式だが、明らかな神経学的症状はなく、疾患によるものの可能性は除外された。
 KGBが用いた軍訓練用マニュアルを参照してみると、「右手に持った武器を胸の近くに引き寄せた状態で体の片側(通常左)を進行方向に少し向けた状態で前進しなさい」という指示が書かれてあった。これは、KGBが敵に遭遇した際できるだけ素早く銃を抜けるようにするためである。

結論:
 われわれは、いわゆる“ガンマン(早撃ち名人)歩行”とも言うべき新しい歩行形式を報告した。これは行動学的な適応によるものと思われ、素早く銃を抜くため右手を胸の近くに引き寄せておくという、KGB・その他訓練によって惹起されたものだ。この歩行形式は、片側の腕の振りが少ない場合に鑑別診断に加えておく方がよいだろう。


by otowelt | 2015-12-16 03:39 | その他

クリスマスBMJ:政府首脳に選ばれると死亡リスクが上昇する

 クリスマスBMJの4本目です。日本が入っていないのが少し残念です。
 予想と比べて短命であった人物として、ウィリアム・ウィンダム、ロバート・ウォルポールなどが挙げられています。
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(ロバート・ウォルポール:Wikipediaより使用)

Andrew R Olenski, et al.
Christmas 2015: Political Science
Do heads of government age more quickly? Observational study comparing mortality between elected leaders and runners-up in national elections of 17 countries
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6424 (Published 14 December 2015)


目的:
 生存期間を調べることによって、国民に選ばれた政府首脳が、選ばれなかった次点候補者と比べて死亡率の上昇と関連しているかどうか調べること。

方法:
 観察研究である。オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカにおいて議会や大統領選挙の当選者や次点候補者について、生存期間のデータを調べた(1722年~2015年)。
 具体的には、同年齢・同性別の人と比べて最後の選挙から平均よりどのくらい長期間生存していたかを調べた(フランスおよびイギリスの生命表を参考)。選挙後の生存期間について、当選者と次点候補者の間で比較した。Cox比例ハザードモデル(選挙時の余命で補正)を用いた。

結果:
 540人の候補者が登録された。279人が当選し、261人が次点であった。2015年9月9日の時点で、380人の候補者が死亡していた。政府首脳を務めた候補者は、次点候補者と比べて選挙後の生存期間が4.4年(95%信頼区間2.1-6.6)短かった(17.8年 vs. 13.4年)。Cox比例ハザード解析では、生死を問わず全候補者において、選挙に当選した場合の死亡ハザード比は1.23(95%信頼区間1.00-1.52)であった。
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(文献より引用)

結論:
 政府首脳に選ばれると、次点候補者よりも死亡リスクが上昇する。


by otowelt | 2015-12-16 01:55 | その他

クリスマスBMJ:ボブ・ディランの歌は論文にしばしば引用されている

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJの3本目です。名曲や名著のタイトルは、しばしば医学論文にも用いられていますね。

Carl Gornitzki, et al.
Christmas 2015: The Publication Game
Freewheelin’ scientists: citing Bob Dylan in the biomedical literature
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6505 (Published 14 December 2015)


概要:
 カロリンスカ研究所の論文にボブ・ディランの歌が引用されていたことが明らかとなった。Nitric oxide and inflammation: the answer is blowing in the wind:ボブディランの「Blowin’ in the Wind(風に吹かれて)」。われわれは、ボブ・ディランの歌が論文に引用されているかどうか調べた。
 時系列で調べてみると、1970年のJournal of Practical Nursingに最初の引用例が登場した。これはボブ・ディランがデビューして8年が経過した頃の論文である。
 驚くべきことに、その後1990年に入るまでボブ・ディランの歌詞が引用された論文は登場しなかった。しかし。ボブ・ディランの有名な曲である「The Times They are a-Changin(時代は変る)」、「Blowin’ in the Wind(風に吹かれて)」が登場し、引用論文が激増した。たとえば、「Blowin’ in the Wind」は特に論文のeditorialsでよく用いられている。BMJでは前者の曲がよく用いられている。ディランの歌詞を織り交ぜて書き始める著者が多かった(例:Come editors and authors throughout the land・・・)。
その他にも「見張塔からずっと(All Along the Watchtower)」、「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)」もよく用いられている。たとえば、カロリンスカ研究所の論文で「ライク・ア・ローリング・ヒストン(Like a rolling histone)」という洒落めいたものもある。「運命のひとひねり(Simple Twist of Fate)」を使った「Blood on the tracks: a simple twist of fate?」という論文もある。
 最近のエビデンスによれば、ディランは医師に対してかなりのリスペクトを持っているようだ。実際に1980年代に発表された「Don’t Fall Apart on me Tonight」という曲では、「I wish I’d have been a doctor/ Maybe I’d have saved some life that had been lost/ Maybe I’d have done some good in the world/ ’Stead of burning every bridge I crossed」と歌っている。しかし、医師はディランに敬意を表しているだろうか?


by otowelt | 2015-12-16 00:37 | その他

クリスマスBMJ:臨床試験スタッフに赤ちゃんが生まれると試験の進捗と費用に負担?

e0156318_10323428.jpg 昨日に引き続き、クリスマスBMJです。AVERT研究のスピンオフとして、AVERT2と命名されています。

Julie Bernhardt, et al.
Christmas 2015: Professional Considerations
AVERT2(a very early rehabilitation trial, a very effective reproductive trigger): retrospective observational analysis of the number of babies born to trial staff
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6432 (Published 11 December 2015)


目的:
 AVERT研究(大規模な脳卒中の臨床試験)の間に、試験スタッフに1人の赤ちゃんが生まれることによる登録患者の必要増加数を調べた。

方法:
 後ろ向き観察研究。8ヶ国・56の脳卒中専門病院が登録された。この研究の被験者は1074人(理学療法士284人、看護師629人、その他の医療従事者50人)であった。アウトカムは、試験スタッフに1人の赤ちゃんが生まれることによって、登録患者がどのくらい増えるか(NNRpB: 試験スタッフに生まれた赤ちゃんの数に対するAVERT研究に登録された総患者数の比)。セカンダリアウトカムとしてコスト(試験費用)を設定した。

結果:
 AVER研究に2104人の患者が登録された。1074人の試験スタッフのうち、926人が女性で、148人が男性だった。120人の赤ちゃんが試験スタッフに誕生した(著者は驚くほど多かったと記載している)。
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(文献より引用:登録患者数と試験スタッフの赤ちゃん出生数)

 赤ちゃんの誕生は、AVERT研究の登録達成に推定10%の時間的ロスを生んだと予想された。6つの登録施設では、赤ちゃんの出生・世話のために親が離れてしまったことが原因で施設登録がなくなった(閉鎖)。NNRpBは17.5人だった(95%信頼区間14.7-21.0)。各出生によって試験費用は平均5736オーストラリアドル(約50万円)かかった。

結論:
 AVERT研究における試験スタッフの不在は試験登録の遅延やコスト増大を招き、研究者が試験や予算を立案する際にはこれらを考慮しなければならない。しかしながら、新しい生命へのお祝いはAVERTの年次会合のハイライトとなり、結束力を維持する助けとなった。


by otowelt | 2015-12-14 00:55 | その他