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お知らせ

 夏季休暇のため、1週間程度ブログをお休みさせていただきます。(すでに秋ですが・・・)

by otowelt | 2015-10-16 01:53 | その他

本の紹介:非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス

 今月、「非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス」(上田剛士)という本が出版されました。この本は、前作の「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」のシリーズもののようです。上田先生の書いた本なので、間違いなく完成度は高い。



 著者の上田剛士先生(洛和会丸太町病院 救急総合診療科)は、私が洛和会音羽病院で初期研修医をしていた頃の指導医の1人でした。総合診療科は、私にとって神のような医師がたくさんいました。大リーガー医として来ていたローレンス・ティアニー医師が「アメイジングな病院だ」と驚嘆していたのを覚えています。『ゴッドハンド輝』でいえば、ヴァルハラのような診療科でした。

 そんなヴァルハラの一角を担っていた上田先生は、まさに歩くステッドマンとも言っても過言ではない存在でした。あらゆる検査の感度・特異度がスラスラ出てくるだけではありません。その知識に裏付けされた身体所見のとり方を目の当たりにしたとき、この病院の研修医になってよかったと感激すらしたものです。それでいて腹立たしいくらいイケメンということもあって、病棟のナースからも人気が高かった。人気が高かった。もう一度言いましょう、人気が高かった。・・・・・・・いえいえ、「チクショウコノヤロウ」、「オレダッテモテタイノニ」などとは一度たりとも思いませんでしたよ。女性研修医には優しい言葉で懇切丁寧な教育がなされ、そして男性研修医のケツにはケリが

 上田先生の著書の強みは、タイトルにすべて「エビデンス」という言葉を入れているところです。これって執筆者にとっては結構プレッシャーだと思います。自分でハードルを上げているワケですから・・・。前作の「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」、前々作の「ジェネラリストのための内科診断リファレンス:エビデンスに基づく究極の診断学をめざして」も鼻血が出るほどオススメです。

 

by otowelt | 2015-09-25 12:30 | その他

おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その1

・ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩(アノーロ®)
 アノーロは、レルベアと同じくエリプタで吸入するLAMA/LABAの合剤です。エリプタは以下の3種類があります。個人的にはICS単剤のエリプタ製剤が欲しいのですが・・・。

 レルベア®:ICS/LABA
 エンクラッセ®:LAMA
 アノーロ®:LAMA/LABA


 アノーロ®は、COPDに対する合剤治療でカプセルが不要であるという点が高く評価できます。しかも1日1回の吸入なので、アドヒアランスの観点からも非常に素晴らしい。
 ウメクリジニウム/ビランテロールの効果を検証したランダム化比較試験が報告されています。この研究ではトラフ1秒量がチオトロピウム単剤、ビランテロール単剤と比較して合剤群で有意に改善しました。
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図. ウメクリジニウム/ビランテロールのトラフ1秒量の変化量に対する有効性(Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.)
 
 COPDでLAMAとLABAを合剤にしてしまうことで、心血管系疾患のリスクが懸念されるところですが、現時点ではLAMA単剤、LABA単剤と比較して心血管系疾患のリスクを有意に上昇させるというコンセンサスはありません。おおむね安全に使用できると思います。
Rodrigo GJ, et al. A systematic review on the efficacy and safety of a fixed-dose combination of umeclidinium and vilanterol for the treatment of COPD. Chest. 2015 Aug 1;148(2):397-407.


・チオトロピウム臭化物/オロダテロール(スピオルト®)
 すでに2015年8月3日の時点でスピオルト®の商品名が申請されていますので、よほどのことがなければ間違いなく販売にこぎつけるでしょう。日本でレスピマット2剤目となるのがこのスピオルトです。海外には他にもオロダテロール単剤(ストリヴェルディ®レスピマット)やSAMA/SABA合剤(コンビベント®レスピマット)があるのですが、日本ではCOPD長期管理薬用の合剤が2剤目にラインナップされることになりました。
 オロダテロールもインダカテロールと同じように超長時間作用性β2刺激薬(ultra-LABA)に属します。実臨床上はインダカテロールのイメージと同じでよいと思います。
Roskell NS, et al. Once-daily long-acting beta-agonists for chronic obstructive pulmonary disease: an indirect comparison of olodaterol and indacaterol. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2014 Jul 31;9:813-24.

 チオトロピウム/オロダテロールの臨床試験としては、TOnado試験が良く知られています。ややこしいですが、最初の2文字が大文字です。。TOnado試験は、TOviTO試験プログラムの1つだそうです。この試験は、チオトロピウム/オロダテロール2.5/5 μgあるいは5/5 μg、チオトロピウム2.5 μgあるいは5 μg、オロダテロール5 μgを1日1回レスピマットによって52週間吸入したランダム化比較試験です。その結果、合剤治療は単剤治療と比較してトラフ1秒量および1秒量AUC0-3hを有意に改善しました。また、合剤だからといって有害事象が増えるといったことはなかったそうです。
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図. チオトロピウム/オロダテロールの1秒量に対する有効性(Buhl R, et al. Tiotropium and olodaterol fixed-dose combination versus mono-components in COPD (GOLD 2-4). Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):969-79.)

 最もエビデンスの多いLAMAであるチオトロピウム。そして、循環器疾患に対する懸念を払拭し前へ進もうとしているレスピマット製剤。さらに時代を先取りしたLAMA/LABAの合剤。これらの融合を実現させたのがスピオルト®レスピマットです。中等症以上のCOPD患者さんにおいて、かなり人気が出る製剤になることは間違いないでしょう。ウルティブロ®、アノーロ®の三つ巴の戦いになりそうです。


・アクリジニウム臭化物(エクリラ®)
 海外ではTudorza®という名前で発売されていますが、日本ではエクリラ®という名前です。アクリジニウムというLAMAは日本ではあまり知られていませんが、ウメクリジニウムと並んで最近では海外でよく臨床試験が組まれているLAMAです。

 エクリラに使用されている台形の吸入デバイス、ジェヌエアはユニバーサルデザイン賞2015エキスパート部門、コンシューマ部門を受賞しています。モンドコレクション金賞受賞くらいスゴイことなのかどうか、よく知りません。実際に使ってみると、ジェヌエアの操作性はきわめて良好で、現存する吸入デバイスの中で一番使いやすいと思います。ボタンを押して吸ったら終わり、いやはやなんと簡単な吸入デバイスなのでしょう。操作性は良い吸入デバイスは他にもありますが、ジェヌエアは群を抜いています。

 アクリジニウムはATTAIN試験において、プラセボと比較したトラフ1秒量の改善、COPD急性増悪の抑制効果がみられています。
Jones PW, et al. Efficacy and safety of twice-daily aclidinium bromide in COPD patients: the ATTAIN study. Eur Respir J. 2012 Oct;40(4):830-6.

 また、アクリジニウムは投与6週目の標準化1秒量AUC0-24をプラセボと比較して有意に改善させています。また、チオトロピウムとの比較でも同等の効果が示されました。また、COPDの症状である喀痰、呼吸困難感、喘鳴、咳などを有意に減少させました。
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図. アクリジニウムとチオトロピウムのベースラインからの標準化1秒量AUCの変化(Beier J, et al. Efficacy and safety of aclidinium bromide compared with placebo and tiotropium in patients with moderate-to-severe chronic obstructive pulmonary disease: results from a 6-week, randomized, controlled Phase IIIb study. COPD. 2013 Aug;10(4):511-22.)

 他のチオトロピウムとの比較研究はないのかというと、たとえばアクリジニウム、プラセボ、チオトロピウムを比較したFuhrらの報告があります。30人と小規模な研究ではありますが、1秒量の改善についてはアクリジニウム、チオトロピウム双方ともにプラセボより優れていましたが、COPD症状についてはチオトロピウムよりもアクリジニウムの方がおそらく優れているだろうという結果でした。
Fuhr R, et al. Efficacy of aclidinium bromide 400 μg twice daily compared with placebo and tiotropium in patients with moderate to severe COPD. Chest. 2012 Mar;141(3):745-52.

 コクランレビューでは、QOLやCOPD急性増悪による入院の減少効果はあるとしながらも、死亡率に関しては有意な低下は現時点では観察されないと結論づけられています。
Ni H, et al. Aclidinium bromide for stable chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 19;9:CD010509.

 将来的にはホルモテロールとの合剤が販売されることを期待しています。海外ではすでに発売しています。


・ウメクリジニウム臭化物(エンクラッセ®)
 ウメクリジニウムは、2012年に登場した赤ちゃんLAMAです。まだまだ歴史が浅いのです。専門家の間では「梅栗(ウメクリ)」と呼んでいます。・・・・・・ウソです。
Donohue JF, et al. A randomized, double-blind dose-ranging study of the novel LAMA GSK573719 in patients with COPD. Respir Med. 2012 Jul;106(7):970-9.

 日本ではウメクリジニウムとビランテロールの合剤であるアノーロ®が先行販売されていたこともあり、エンクラッセ®は販売当初から長期処方ができます。同一デバイスのアノーロ®と合わせてアドヒアランスの向上にはもってこいの薬剤です。同じエリプタということもあって、エンクラッセ®→アノーロ®とステップアップしやすいでしょう。

 さて、ウメクリジニウムの臨床試験でおさえておきたいのは、中等症以上のCOPD患者さんを対象としたウメクリジニウムとプラセボの比較試験です。この試験では、12週間にわたってトラフ1秒量やSGRQスコアを改善させたことが報告されています。
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ウメクリジニウムによるトラフ1秒量の変化(Trivedi R, et al. Umeclidinium in patients with COPD: a randomised, placebo-controlled study. Eur Respir J. 2014 Jan;43(1):72-81.

 チオトロピウムとの比較についてはウメクリジニウム/ビランテロールの有効性を示したLancet Respiratory Medicineに報告されたDecramerらの研究がよく用いられていますが、トラフ1秒量も加重平均1秒量もチオトロピウムと比較して少なくとも下回っていることはありません(優越性でもありません)。
Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.

 他のCOPDに使われているLAMAと同様に、チオトロピウムには臨床的に遜色ない薬剤と考えてよいと思います。
Segreti A , et al. Umeclidinium for the treatment of chronic obstructive pulmonary disease. Expert Rev Respir Med. 2014 Dec;8(6):665-71.


ニボルマブ(オプジーボ®)
 これまで肺扁平上皮がんに対する有効な治療選択肢は限られていました。切れ味がよいとされるドセタキセルが無効になってしまうと、なかなかガツンと効く抗がん剤がないのが現状でした。オプジーボは、PD-1 とPD-1 リガンドの経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤です。optimal(最適な)+ PD-1 + nivolumab(一般名)から命名されたそうです。

 ニボルマブは、世界初のヒト型抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体として悪性黒色腫に対して有効性が示されました。日本でも2014年7月に発売されています。アメリカでは2015年3月に、肺扁平上皮がんに対して保険適応が追加承認されました。

 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの有効性についてはCheckMate-017試験が有名です。チェックメイトというネーミングはなかなか目を引きますね・・・。この試験では、肺扁平上皮がんの患者さん272人をニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに投与する群と、ドセタキセル75mg/m2を3週間ごとに投与する群にランダムに割り付けたものです。その結果、全生存期間の中央値は、ニボルマブ群9.2か月(95%信頼区間7.3~13.3)、ドセタキセル群6.0か月(95%信頼区間5.1~7.3)でした。また、1年の時点での全生存率はニボルマブ群42%(95%信頼区間34~50)に対して、ドセタキセル群24%(95%信頼区間17~31)でした。奏効率は、ニボルマブ群20%、ドセタキセル群9%でした(p = 0.008)。PD-1リガンドの発現の有無は、予後や効果を予測する因子ではありませんでした。
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図. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブとドセタキセルの生存(Brahmer J, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2015 Jul 9;373(2):123-35.

 第16回世界肺癌学会において18か月の生存率のデータが公表されていますが、やはりドセタキセルよりも良好であることが示されています。CheckMate-063試験のデータとともに表に提示します。
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表. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの生存率(ブリストル・マイヤーズ株式会社ウェブサイトより引用)


アレクチニブ(アレセンサ®)
 アレセンサ®は、2014年9月に日本で販売されたザーコリに引き続く2番目のALK阻害薬です。第2世代ALK阻害薬として認識されていますが、海外では第2世代ALK阻害薬と言えばセリチニブの方が有名のようです。日本ではまだセリチニブは販売されていません。

 第2世代ALK阻害薬という名の通り、基本的にアレクチニブはクリゾチニブが無効になった場合にスイッチすることで一定以上の奏効が期待できます。
Seto T, et al. Anti-Tumor Activity of Alectinib in Crizotinib Pre-Treated ALK-Rearranged NSCLC in JP28927 Study. Annals of Oncology 2014;25(suppl 4): iv426-70.

 クリゾチニブ耐性になった患者さん122人に対するアレクチニブの有効性を解析した第2相試験では、客観的奏効率は50%、疾患制御率は79%、コホート内の無増悪生存期間は8.9か月と報告されています。このうち脳転移を有する84人の解析では、疾患制御率は83%でした。
Ou S, et al. Efficacy and safety of the ALK inhibitor alectinib in ALK+ non-small-cell lung cancer (NSCLC) patients who have failed prior crizotinib: an open-label, single-arm, global phase 2 study (NP28673). J Clin Oncol 33, 2015 (suppl; abstr 8008)

 クリゾチニブ耐性のALK陽性肺癌に対して、特に中枢神経系に転移を有する場合にアレクチニブが有効であるとする報告は2014年にも報告されています。
Gadgeel SM, et al. Safety and activity of alectinib against systemic disease and brain metastases in patients with crizotinib-resistant ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (AF-002JG): results from the dose-finding portion of a phase 1/2 study. Lancet Oncol. 2014 Sep;15(10):1119-28.

 クリゾチニブが無効になった場合、第2世代のALK阻害薬にスイッチするのか白金製剤を用いた化学療法に移行するのかコンセンサスはありませんが、中枢神経系の転移巣の増悪がある場合、アレクチニブにスイッチしてもよいかもしれません。


<補足:セリチニブ>
 セリチニブもアレクチニブと同じく第2世代ALK阻害薬で、海外ではこちらの方が有名です。アレクチニブと同じく、L1196M変異、G1269A 変異といったクリゾチニブ耐性の肺腺癌に対して有効とされています。半数近くにクリゾチニブ既治療例を含む集団でもかなり奏効率が高かったことが注目されました。
Kim DW, et al. Ceritinib in advanced anaplastic lymphoma kinase (ALK)-rearranged (ALK+) non-small cell lung cancer (NSCLC): Results of the ASCEND-1 trial (abstract 8003). 2014 American Society of Clinical Oncology (ASCO) meeting.


→ おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その2 へ続く 
 URL:http://pulmonary.exblog.jp/23696138/


by otowelt | 2015-09-21 08:49 | その他

夜勤明けに手術をしても大丈夫

e0156318_9371346.jpg 夜勤明けで手術をしている外科医は多いですが、それがあまり取り上げられたことはありません。

Anand Govindarajan, et al.
Outcomes of Daytime Procedures Performed by Attending Surgeons after Night Work
N Engl J Med 2015; 373:845-853


背景:
 主治医の睡眠不足が患者アウトカムに与える影響は分かっていない。われわれは、深夜以降に診療ケアを行っていた医師が、その後の日中に待期的手術を行った場合、そのアウトカムに与える影響を調べた。

方法:
 カナダオンタリオ州において、人口ベースのレトロスペクティブマッチコホート研究を実施した。深夜から午前7 時まで夜間診療していた医師がその後の日中に行った12種類の待期手術のうちのどれかを受けた患者と、同じ医師が夜間診療がなかった翌日に行った同手術を受けた患者を、1:1でマッチさせた。アウトカムには、患者の死亡、再入院、手術合併症、入院期間、手術時間が含まれた。一般化推定方程式(GEE)を用いて患者のアウトカムを比較した。

結果:
 医師1448 人によって手術を受けた、合計38978人の患者を登録した。このうち40.6%は大学病院で手術を受けた。夜間診療を行っていた医師によってその翌日日中に手術を受けた患者と、マッチコントロール患者患者とのあいだに、プアイマリアウトカムである患者死亡、再入院、手術合併症に有意差は観察されなかった(夜間診療群:22.2% vs. 非夜間診療群:22.4%、P=0.66、補正オッズ比 0.99、95%信頼区間0.95~1.03)。粗死亡率は、どちらも1.1%と同じであった。大学病院・非大学病院、医師の年齢、手術の種類で層別化しても、そのアウトカムに有意な差はなかった。二次解析では、入院期間や手術時間についても群間差はなかった。
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(手術別の補正ホッズ比:文献より引用)

結論:
 医師が前の日の夜に夜間診療をしていてもしていなくても、その翌日の待期手術における不良アウトカムのリスクは同等であった。


by otowelt | 2015-09-14 00:22 | その他

ネタを冷凍しても寿司の味は落ちない

e0156318_11132683.jpg 筆頭筆者は著名な医師なので、私が取り上げなくともメディカルメディアが取り上げるだろうとワクワクしていたのですが、思ったよりも気付かれていない人が多いようで。
 2ページ目で筆頭著者先生本人の内視鏡写真が出てきたときは、笑ってしまいました。こういう機転ってメジャーな医学雑誌でもOKがもらえるものなんですね。
 ちなみに私は、寿司が食べられません。「えっ!人生の9割損してるよ!」と500回くらい言われたことがあります。

Iwata K, et al.
Is the quality of sushi ruined by freezing raw fish and squid? A randomized double-blind trial with sensory evaluation using discrimination testing.
Clin Infect Dis. 2015 May 1;60(9):e43-8.


背景:
 寿司は、世界中で親しまれている日本の伝統的日本料理である。しかしながら、生魚を扱うことで、アニサキスといったある種の寄生虫感染症のリスクが危惧される。とりわけその報告は日本で最も多いようだ。この感染リスクは冷凍魚によってなくすことができるが、日本人は寿司の味が冷凍によって損なわれると信じているため、魚を冷凍にすることを躊躇する。

方法:
 これは、識別試験(discrimination testing)のランダム化二重盲検試験であり、冷凍(-40℃にし試験前夜に冷蔵庫にうつしたもの)および非冷凍の寿司を日本人が鑑別できるかどうか検証したものである。1対のサバとイカの寿司を用意し、1つは冷凍、1つは非冷凍とし、被験者に与えた。そして、どちらが美味しいかを尋ねた。
 被験者は40人の健康な神戸大学医学生である。40人は盲検化された寿司6皿(6つのサバ寿司、6つのイカ寿司)を食した。寿司と寿司の間に飲むのを許されたのは、水のみであった(“あがり”はダメということですね)。寿司職人は5年を超える経験をもつ2人のプロ板前とした。

結果:
 240のサバ寿司を消費した120皿の識別試験のうち、非冷凍寿司は42.5%(51皿)において美味しいと回答され、冷凍寿司は49.2%(59皿)で美味しいと回答され、8.3%(10皿)は同等と回答した。冷凍寿司よりも非冷凍寿司を「美味しい」と選ぶオッズ比は0.86 (95%信頼区間0.59-1.26; P =0.45)だった。
 一方、イカ寿司について。非冷凍寿司は48.3%(58皿)において美味しいと回答され、冷凍寿司は35.9%(42皿)で美味しいと回答され、16.7%(20皿)は同等と回答した。冷凍寿司よりも非冷凍寿司を「美味しい」と選ぶオッズ比は1.38(95%信頼区間0.93-2.05; P =0.11)だった。

結論:
 冷凍生魚は寿司の味を落とすものではない。これらの結果は、寿司として提供する前に冷凍してもよいとするもので、ひいてはアニサキス感染症の減少にも寄与するかもしれない。


by otowelt | 2015-06-08 00:18 | その他

出版のお知らせ:本当にあった医学論文2

 何度も出版のお知らせで恐縮です。2015年4月15日に「本当にあった医学論文2」を中外医学社から出版します(店頭では4月10日頃から並ぶとのことです)。
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発売日 : 2015年4月15日
単行本 : 146ページ
価格 : 2,000円 (税抜)
出版社 : 中外医学社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する (入荷がやや遅いかも)

e0156318_13141310.jpg中外医学社から購入する

 おかげさまで「本当にあった医学論文」の第2弾が出版されることになりました。普段から医学論文を検索していると、「おや?」と思う報告はしばしばあり、その度にメモ帳に記録したものがこの本の土台になりました。今でも時間を作って毎日論文を検索していますが、数日に1回くらい「これはっ!」と思うビックリ医学論文と巡り合うことができます。

 前作はもともと医学書として出版したこともあって、医療従事者以外の方が手に取ってくださるとは思いもしませんでした。この「本当にあった医学論文2」にも専門用語が難しいところが少しありますが、どうしても噛み砕いて説明できない部分もあり、その点は医療従事者向けに専門的に記載するという医師執筆家としてのスタンスを貫き通しました。

 前回と同様のことを書きますが、この本は医学書ではなく読み物です。この書籍は医学的妥当性をまったく無視して書いていますので、どうか軽い気持ちでご笑覧いただきますようお願いします。

 この企画の第2弾を実現してくださった中外医学社の岩松宏典様に心より感謝申し上げます。産婦人科的なアドバイスに協力してくれた友人の日本生命済生会日生病院産婦人科の矢野悠子さん、ありがとう。


by otowelt | 2015-03-31 00:38 | その他

出版のお知らせ:ポケット呼吸器診療2015

 個人的なお知らせです。ブログの読者の皆様には申し訳ありません。
 2015年4月3日に「ポケット呼吸器診療2015」という書籍をシーニュから出版します。シーニュは、私の初めての書籍である『「寄り道」呼吸器診療』を出版していただいた出版社です。
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発売日:2015年4月3日
単行本 : 168ページ
価格 : 1,400円 (税抜)
出版社 : シーニュ
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)
監修 : 林 清二 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター院長)

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する (入荷がやや遅いかも)

e0156318_13141310.jpgシーニュから購入する

 「できるだけコンパクトかつ有用な安い書籍」。そんな夢のような目標を立てて執筆に取りかかったのは、当直明けだった2014年の元旦の朝のことでした。世の中には有用な呼吸器の成書はたくさんあります。しかし、最大限コンパクトにするという無謀な挑戦をした書籍はこの本が初めてでしょう。しかしながら、当初100ページ以内におさめる予定だったものが168ページになってしまいました。
 呼吸器内科では、感染症や気管支喘息発作などの急性期の病態から肺癌や特発性間質性肺炎などの慢性期の病態まで、広い範疇を扱います。そのすべてのエッセンスをどのようにパッケージしたとしても、ゆうに300、400ページは超えてしまうのです。この本はその中でも研修医や若手呼吸器内科医が参照する頻度が多いと思われる内容を優先的に掲載しました。そのため、コンパクトにするために掲載を諦めた原稿が山ほどあります。
 新しい試みですから、不完全な部分があるかもしれません。現時点では1年ごとに改訂を加える予定なので、すみやかに改訂ができるものと考えております。議論の余地がある分野も独断と偏見で書いている箇所があります。そのため、決して文字通りの“マニュアル”ではなく参考にする“ポケットツール”として利用いただきますようお願いします。この本が若手医師の方々の白衣のポケットに入ってこっそり顔をのぞかせていたら、嬉しく思います。
 最後に、出版に尽力いただいた同じ志を持つシーニュの藤本浩喜様、監修を引き受けていただいた当院院長の林清二先生に心より感謝申し上げます。


by otowelt | 2015-03-26 00:08 | その他

今年もよろしくお願い申し上げます

 2014年は連載や執筆が増えた1年でした。また、診療する患者さんの数も前年より増えたため、2014年を表す漢字を書けと言われれば「忙」という字が真っ先に思いつくほどでした。
 患者さんに費やす時間を減らさないことが大前提なので、お断りした執筆の依頼もたくさんありました。そんなさなか第二子が誕生し、ますます時間の使い方の構築が難しくなってきました。それでもこれまでと同じようにたくさん論文を読んで、呼吸器内科診療の進歩から置いてけぼりをくらわないよう奮励努力したいと思います。
 2015年も当ブログをどうぞよろしくお願いします。

 近畿中央胸部疾患センター  倉原 優

by otowelt | 2015-01-02 00:46 | その他

クリスマスBMJ:緩和ケア病棟の患者は週末・休日に亡くなりやすい?

 クリスマスBMJですが、真面目な内容だと思います。過去にもブログで同様の論文を取り上げたことがあります。

週末の在院は入院患者の死亡リスクを上昇?
COPD急性増悪による死亡リスクは平日より週末の方が高い

Raymond Voltz, et al.
Silent night: retrospective database study assessing possibility of “weekend effect” in palliative care
BMJ 2014; 349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g7370 (Published 16 December 2014)


目的:
 平日と週末・休日の緩和ケア病棟の患者の死亡率を比較すること。

デザイン:
 レトロスペクティブデータベース研究

セッティング:
 ドイツの緩和ケア病棟

参加者:
 1997年1月1日から2008年12月31日までに緩和ケア病棟に入院した全患者

アウトカム:
 平日か、週末・休日といったものが死亡率に与える影響をPoisson回帰モデルを用いて解析する。

結果:
 合計2565人の患者が入院し、1325人の死亡が記録された。死亡した患者のうち、448人(33.8%)は週末・休日に死亡していた。週末・休日の死亡率は、平日と比較して18%高かった(死亡率比1.18, 95%信頼区間1.05 to 1.32; P=0.005)。病室の占有率が日によって異なる結果が得られたため、これを補正して解析した。すると、その影響はやや減少したものの、それでもやはり週末・休日の死亡率比は高かった(1.14, 95%信頼区間1.02to1.28;P=0.025)。
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(文献より引用)

結論:
 緩和ケア病棟の患者は週末や休日に亡くなるリスクが高い。本研究はプロスペクティブ研究ではなく、この相関の原因は分からない。


by otowelt | 2014-12-21 07:04 | その他

クリスマスBMJ:外科医や麻酔科医が予測する手術・処置時間と実際の乖離

 クリスマス企画ながら、少し真面目なDiscussionでした。 

Elizabeth Travis, et al.
Operating theatre time, where does it all go? A prospective observational study
BMJ 2014; 349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g7182 (Published 15 December 2014)


目的:
 外科医、麻酔科医が手術や処置にかかる時間を予測する精度を調べること。

デザイン:
 単施設プロスペクティブ観察研究

セッティング:
 人口37万人都市のレベル1外傷センターにおける形成外科、整形外科、一般外科手術室

参加者:
 92人の手術室スタッフ(外科指導医・研修医、麻酔科指導医・研修医)

介入:
 参加者はその手技がどのくらい時間を要するものか尋ねられた。これらのデータは実際にかかった時間と照らし合わした。

プライマリアウトカム:
 手術・処置に要する予測時間と実際に要した時間の差

結果:
 一般外科医は、処置を31分短く見積もっていた(95%信頼区間7.6-54.4)。これはすなわち、予測よりも平均28.7%長くかかったということを意味している。形成外科医は、処置を5分短く見積もっていた(95%信頼区間-12.4-22.4、予測よりも平均4.5%長かった)。整形外科医は、処置を1分長く見積もっていた(95%信頼区間−16.4-14.0、予測よりも平均1.1%短かった)。麻酔科医は、処置を35分短く見積もっていた(95%信頼区間21.7-48.7、予測よりも平均167.5%長かった)。これら4種類の平均時間はそれぞれ互いに有意に差があった。ただし、麻酔科医と一般外科医には有意な差は観察されなかった。
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(文献より引用)

結論:
 臨床医は処置に要する時間を予測できない。これは、手術室スケジュールの乱れを生む。この研究によれば、麻酔科医が最も不正確な予測をしているが、これは彼らが“麻酔時間”を考慮しているものと推察される。


by otowelt | 2014-12-20 13:07 | その他