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クリスマスBMJ:政府首脳に選ばれると死亡リスクが上昇する

 クリスマスBMJの4本目です。日本が入っていないのが少し残念です。
 予想と比べて短命であった人物として、ウィリアム・ウィンダム、ロバート・ウォルポールなどが挙げられています。
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(ロバート・ウォルポール:Wikipediaより使用)

Andrew R Olenski, et al.
Christmas 2015: Political Science
Do heads of government age more quickly? Observational study comparing mortality between elected leaders and runners-up in national elections of 17 countries
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6424 (Published 14 December 2015)


目的:
 生存期間を調べることによって、国民に選ばれた政府首脳が、選ばれなかった次点候補者と比べて死亡率の上昇と関連しているかどうか調べること。

方法:
 観察研究である。オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカにおいて議会や大統領選挙の当選者や次点候補者について、生存期間のデータを調べた(1722年~2015年)。
 具体的には、同年齢・同性別の人と比べて最後の選挙から平均よりどのくらい長期間生存していたかを調べた(フランスおよびイギリスの生命表を参考)。選挙後の生存期間について、当選者と次点候補者の間で比較した。Cox比例ハザードモデル(選挙時の余命で補正)を用いた。

結果:
 540人の候補者が登録された。279人が当選し、261人が次点であった。2015年9月9日の時点で、380人の候補者が死亡していた。政府首脳を務めた候補者は、次点候補者と比べて選挙後の生存期間が4.4年(95%信頼区間2.1-6.6)短かった(17.8年 vs. 13.4年)。Cox比例ハザード解析では、生死を問わず全候補者において、選挙に当選した場合の死亡ハザード比は1.23(95%信頼区間1.00-1.52)であった。
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(文献より引用)

結論:
 政府首脳に選ばれると、次点候補者よりも死亡リスクが上昇する。


by otowelt | 2015-12-16 01:55 | その他

クリスマスBMJ:ボブ・ディランの歌は論文にしばしば引用されている

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJの3本目です。名曲や名著のタイトルは、しばしば医学論文にも用いられていますね。

Carl Gornitzki, et al.
Christmas 2015: The Publication Game
Freewheelin’ scientists: citing Bob Dylan in the biomedical literature
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6505 (Published 14 December 2015)


概要:
 カロリンスカ研究所の論文にボブ・ディランの歌が引用されていたことが明らかとなった。Nitric oxide and inflammation: the answer is blowing in the wind:ボブディランの「Blowin’ in the Wind(風に吹かれて)」。われわれは、ボブ・ディランの歌が論文に引用されているかどうか調べた。
 時系列で調べてみると、1970年のJournal of Practical Nursingに最初の引用例が登場した。これはボブ・ディランがデビューして8年が経過した頃の論文である。
 驚くべきことに、その後1990年に入るまでボブ・ディランの歌詞が引用された論文は登場しなかった。しかし。ボブ・ディランの有名な曲である「The Times They are a-Changin(時代は変る)」、「Blowin’ in the Wind(風に吹かれて)」が登場し、引用論文が激増した。たとえば、「Blowin’ in the Wind」は特に論文のeditorialsでよく用いられている。BMJでは前者の曲がよく用いられている。ディランの歌詞を織り交ぜて書き始める著者が多かった(例:Come editors and authors throughout the land・・・)。
その他にも「見張塔からずっと(All Along the Watchtower)」、「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)」もよく用いられている。たとえば、カロリンスカ研究所の論文で「ライク・ア・ローリング・ヒストン(Like a rolling histone)」という洒落めいたものもある。「運命のひとひねり(Simple Twist of Fate)」を使った「Blood on the tracks: a simple twist of fate?」という論文もある。
 最近のエビデンスによれば、ディランは医師に対してかなりのリスペクトを持っているようだ。実際に1980年代に発表された「Don’t Fall Apart on me Tonight」という曲では、「I wish I’d have been a doctor/ Maybe I’d have saved some life that had been lost/ Maybe I’d have done some good in the world/ ’Stead of burning every bridge I crossed」と歌っている。しかし、医師はディランに敬意を表しているだろうか?


by otowelt | 2015-12-16 00:37 | その他

クリスマスBMJ:臨床試験スタッフに赤ちゃんが生まれると試験の進捗と費用に負担?

e0156318_10323428.jpg 昨日に引き続き、クリスマスBMJです。AVERT研究のスピンオフとして、AVERT2と命名されています。

Julie Bernhardt, et al.
Christmas 2015: Professional Considerations
AVERT2(a very early rehabilitation trial, a very effective reproductive trigger): retrospective observational analysis of the number of babies born to trial staff
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6432 (Published 11 December 2015)


目的:
 AVERT研究(大規模な脳卒中の臨床試験)の間に、試験スタッフに1人の赤ちゃんが生まれることによる登録患者の必要増加数を調べた。

方法:
 後ろ向き観察研究。8ヶ国・56の脳卒中専門病院が登録された。この研究の被験者は1074人(理学療法士284人、看護師629人、その他の医療従事者50人)であった。アウトカムは、試験スタッフに1人の赤ちゃんが生まれることによって、登録患者がどのくらい増えるか(NNRpB: 試験スタッフに生まれた赤ちゃんの数に対するAVERT研究に登録された総患者数の比)。セカンダリアウトカムとしてコスト(試験費用)を設定した。

結果:
 AVER研究に2104人の患者が登録された。1074人の試験スタッフのうち、926人が女性で、148人が男性だった。120人の赤ちゃんが試験スタッフに誕生した(著者は驚くほど多かったと記載している)。
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(文献より引用:登録患者数と試験スタッフの赤ちゃん出生数)

 赤ちゃんの誕生は、AVERT研究の登録達成に推定10%の時間的ロスを生んだと予想された。6つの登録施設では、赤ちゃんの出生・世話のために親が離れてしまったことが原因で施設登録がなくなった(閉鎖)。NNRpBは17.5人だった(95%信頼区間14.7-21.0)。各出生によって試験費用は平均5736オーストラリアドル(約50万円)かかった。

結論:
 AVERT研究における試験スタッフの不在は試験登録の遅延やコスト増大を招き、研究者が試験や予算を立案する際にはこれらを考慮しなければならない。しかしながら、新しい生命へのお祝いはAVERTの年次会合のハイライトとなり、結束力を維持する助けとなった。


by otowelt | 2015-12-14 00:55 | その他

クリスマスBMJ:糞石を磨き上げる

e0156318_10323428.jpg 毎年おなじみクリスマスBMJです。解釈はこれでよいと思うのですが・・・(ことわざ絡みの英語ジョークは苦手)。指導医が昔話を書いたものだと思っていたのですが、筆頭著者は現役の外科研修医(HO)のようです。

Andrew Jenkinson, et al.
Christmas 2015: Professional Considerations
Death of a proverb
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6226 (Published 11 December 2015)


概要:
  外科研修医としてオンコールのシフトについていた夜のこと。私は指導医に呼ばれたことに意気揚々としていた。中年の患者が糞石に続発した腸閉塞の治療のため、開腹を受けるというのだ―――、しかもその糞石は通常みられるものよりも強度に石灰化した硬い腫瘤のようだった。私がもし「手洗いして清潔になった方がよいでしょうか?」と尋ねたなら、「いやいい、しかし手袋は必要だ」と言われただろう。検体が取り出され、検体写真の撮影前に糞石の洗浄を要した。私の役割は、糞石の表面に新鮮な大便が付着していないところまで確かに磨き上げることだった。この症例は、誰でもクソ磨きはできる(you can polish a turd )ということを示したのだ。

You can't polish a turd:「ダメなものは何したってダメ」の意味のことわざ。


by otowelt | 2015-12-13 00:32 | その他

世界一長い医学論文のタイトル

e0156318_7383323.jpg 突然ですが、世界一長い医学論文のタイトルを紹介したいと思います。
 私が検索した限りでは、最長タイトルは2007年にCirculation誌に掲載されたガイドラインです。590文字ですね。

Anderson JL, et al.
ACC/AHA 2007 guidelines for the management of patients with unstable angina/non ST-elevation myocardial infarction: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Writing Committee to Revise the 2002 Guidelines for the Management of Patients With Unstable Angina/Non ST-Elevation Myocardial Infarction): developed in collaboration with the American College of Emergency Physicians, the Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, and the Society of Thoracic Surgeons: endorsed by the American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation and the Society for Academic Emergency Medicine.
Circulation. 2007 Aug 14;116(7):e148-304.


 副題が延々と続いているので、最初の「コロン(:)」のところまでがタイトルでよさそうですが、正式にはこの590文字が論文タイトルとして登録されています。なんか目がチカチカしてきますね。

 ちなみに長い医学論文タイトルのランキングでは上位を循環器系のガイドラインがほぼ独占しています。なぜなんでしょうね?

 それにしても590文字ってタイトルだけで原稿用紙1枚を超えてしまいます。昔は研究者の履歴書に自身の発表論文を記載したそうですが、こんな長い論文タイトルだと履歴書に入りきらないですね。

 もっと長い医学論文のタイトルがあれば教えて下さい。


by otowelt | 2015-12-09 00:39 | その他

Facebookページを作りました

 「呼吸器内科医」というFacebookページを作りました。ブログ・連載・出版記事、呼吸器内科医としての活動全般をSNSでも確認できるようにしました。
 だから何なんだと言われるとそれまでなんですけど・・・(^ ^;)

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●Facebook:「呼吸器内科医」(https://www.facebook.com/pulmonarist/

by otowelt | 2015-12-07 00:58 | その他

本の紹介:薬のデギュスタシオン

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 岩田健太郎先生編集の『薬のデギュスタシオン』が発売されます。私も20ページあまりを執筆させていただきました。憧れの先生に執筆の依頼をいただけたことは、私にとって貴重な経験でした。豪華執筆陣が送る本書は、この薬とあの薬をどう使い分けるのかという“利き薬(デギュスタシオン)”であり、実地医療の本音とエビデンスが詰まった一冊です。分厚く、読み応えは十分でしょう。

 私が初期研修を受けた病院には、総合診療や感染症に長けたスーパーマンドクターがたくさんいました。当時、そのスーパーマンたちにとってさえも憧れの的になっている先生がいました。それが、岩田先生です。そんな先生の書籍にご協力できたことに、大御所芸能人の番組に呼ばれた駆け出し芸人のような、言い表せない感動がありました。

 岩田先生が医学界にもたらした功績の1つに、医学書の革命があります。もともと、医学書とは教科書であり辞書でした。難解な文章と図表の連続。分厚いクセに枕にすらならない堅いモノでした。そういう小難しい本を持っていることで、とりあえず満足感を得ましょうというのもあり、本棚の奥でホコリをかぶっている医学書は数知れず。岩田先生の医学書を研修医時代初めて読んだとき、頭を殴られたような衝撃を受けました。研修医に語りかけてくるように頭にスラスラと入ってくる医学書を、目にしたことがなかった。医学書に読み物の要素をここまで上手に医学書に混ぜ込んだのは、おそらく岩田先生が初めてです。この“読み物と医学書の融合”は、その後の医学書の目指すところにもなりました。


(目次)
1.先発医薬品と後発医薬品の比較(金城紀与史)
2.風邪に対する総合感冒薬,解熱鎮痛薬,葛根湯,うがい薬の比較(青島周一)
3.タミフルとリレンザとイナビルとラピアクタの比較(佐藤直行)
4.季節性アレルギー性鼻炎への抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエン薬,鼻噴霧ステロイド薬の比較(青島周一)
5.抗アレルギー薬の比較(鎌田一宏・徳田安春)
6.アレグラとアレロックとクラリチンとジルテックとポララミンの比較(岩本修一・横林賢一)
7.フロモックスとメイアクトとバナンとセフゾンとトミロンの比較(と次いでにケフレックスについて)(岩田健太郎)
8.シプロキサンとクラビットとジェニナックとアベロックスの比較(岸田直樹)
9.マクロライド系抗菌薬,キノロン系抗菌薬の重篤な有害事象(青島周一)
10.バンコマイシンとテイコプラニンとダプトマイシンとリネゾリドとクリンダマイシンとST合剤とその他の比較(山本舜悟)
11.急性腰痛に対するアセトアミノフェン(大野 智)
12.カロナール(アセトアミノフェン),トラムセット(トラマドール/アセトアミノフェン),ロキソニン(ロキソプロフェン),ペンタジン/ソセゴン(ペンタゾシン)の比較(山田康博・尾藤誠司)
13.アセトアミノフェンとNSAIDsとコルヒチンの比較(笹木 晋・徳田安春)
14.NSAIDsの消化器系および心血管系有害事象の比較(青島周一)
15.片頭痛予防薬の比較(本村和久)
16.ムコダインとムコソルバンとビソルボンとスペリアの比較(倉原 優)
17.鎮咳剤の比較(福士元春)
18.気管支喘息治療:吸入ステロイド薬,合剤吸入薬,テオフィリン,ロイコトリエン拮抗薬の比較(倉原 優)
19.オルベスコとパルミコートとフルタイドとキュバールとアズマネックスの比較(倉原 優)
20.COPD治療:吸入抗コリン薬,吸入長時間作用性β2刺激薬,合剤吸入薬,テオフィリンの比較(倉原 優)
21.スピリーバレスピマットとスピリーバカプセルの死亡リスクの比較(青島周一)
22.タケプロンとガスターとアルサルミンとサイテックとムコスタの比較(佐藤直行)
23.オピオイド導入後の便秘対策(大野 智)
24.マグラックスとラクツロースとプルゼニドとラキソベロンの比較(佐藤直行)
25.整腸剤とヨーグルト(森川日出男・尾藤誠司)
26.止痢剤の比較(福士元春)
27.ACE阻害薬とARBの血管浮腫リスクの比較(青島周一)
28.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)とアンジオテンシン受容体拮抗約(ARB)の比較(名郷直樹)
29.スタチンと糖尿病発症リスクの比較(青島周一)
30.糖尿病治療の経口薬の比較:ビグアナイド薬,スルホニル尿素薬,グリニド系薬,α-グルコシダーゼ阻害薬,DPP-4阻害薬,チアゾリジン薬,SGLT2阻害薬(能登 洋)
31.各種インスリン療法の比較(岩岡秀明)
32.DPP-4阻害薬の比較:ジャヌビア/グラクティブ,エクア,ネシーナ,トラゼンタ,テネリア,スイニー,オングリザ,ザファテック(能登 洋)
33.メトグルコとアクトスの比較(名郷直樹)
34.普通の経腸栄養剤と病態別経腸栄養剤と免疫賦活系経腸栄養剤の比較(尾藤誠司・赤木祐貴)
35.ビスフォスフォネートとPTH製剤とRANKL製剤の比較(金城光代)
36.禁煙補助薬の比較:ニコチンガム,ニコチンパッチ,バレニクリン(青島周一)
37.スローケーとグルコン酸KとK.C.L.エリキシルの比較(佐藤直行)
38.終末期患者の不眠に対する睡眠薬の経静脈投与:ロヒプノールとドルミカムの比較(森田達也)
39.三環係抗うつ薬と四環系抗うつ薬とSSRIとSNRIの比較(林 哲朗・尾藤誠司)
40.SSRIとSNRIとNaSSAの比較(宮内倫也)
41.ベンゾジアゼピン系抗不安薬の比較(宮内倫也)
42.統合失調症治療における定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬(宮内倫也)
43.がん患者におけるせん妄治療:抗精神病薬の選択(大野 智)
44.がん疼痛のベースライン鎮痛に使用するオピオイドの比較:オキシコドンとフェンタニル貼付剤とモルヒネ(森田達也)
45.がん疼痛のレスキュー薬として使用するオピオイドの比較:オキシコドンとモルヒネとフェンタニル口腔粘膜吸収薬(森田達也)
46.がん疼痛に対する経口の鎮痛補助薬の比較:リリカとトリプタオールとサインバルタとテグレトールとメキシチールと経口ケタミン(森田達也)
47.がん疼痛に対する非経口の鎮痛補助薬の比較:ケタミンとキシロカイン(森田達也)
48.終末期患者の死前喘鳴(デスラットル)に対する抗コリン薬の比較:ハイスコとブスコパンとアトロピン(森田達也)
49.オピオイド導入時の嘔気対策(大野 智)
50.バセドウ病治療法の比較:抗甲状腺薬,無機ヨード療法,131I内用療法,手術療法(岩岡秀明)
51.メファキンとマラロンとビブラマイシンの比較(岩本修一・横林賢一)


by otowelt | 2015-11-17 00:01 | その他

お知らせ

 夏季休暇のため、1週間程度ブログをお休みさせていただきます。(すでに秋ですが・・・)

by otowelt | 2015-10-16 01:53 | その他

本の紹介:非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス

 今月、「非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス」(上田剛士)という本が出版されました。この本は、前作の「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」のシリーズもののようです。上田先生の書いた本なので、間違いなく完成度は高い。



 著者の上田剛士先生(洛和会丸太町病院 救急総合診療科)は、私が洛和会音羽病院で初期研修医をしていた頃の指導医の1人でした。総合診療科は、私にとって神のような医師がたくさんいました。大リーガー医として来ていたローレンス・ティアニー医師が「アメイジングな病院だ」と驚嘆していたのを覚えています。『ゴッドハンド輝』でいえば、ヴァルハラのような診療科でした。

 そんなヴァルハラの一角を担っていた上田先生は、まさに歩くステッドマンとも言っても過言ではない存在でした。あらゆる検査の感度・特異度がスラスラ出てくるだけではありません。その知識に裏付けされた身体所見のとり方を目の当たりにしたとき、この病院の研修医になってよかったと感激すらしたものです。それでいて腹立たしいくらいイケメンということもあって、病棟のナースからも人気が高かった。人気が高かった。もう一度言いましょう、人気が高かった。・・・・・・・いえいえ、「チクショウコノヤロウ」、「オレダッテモテタイノニ」などとは一度たりとも思いませんでしたよ。女性研修医には優しい言葉で懇切丁寧な教育がなされ、そして男性研修医のケツにはケリが

 上田先生の著書の強みは、タイトルにすべて「エビデンス」という言葉を入れているところです。これって執筆者にとっては結構プレッシャーだと思います。自分でハードルを上げているワケですから・・・。前作の「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」、前々作の「ジェネラリストのための内科診断リファレンス:エビデンスに基づく究極の診断学をめざして」も鼻血が出るほどオススメです。

 

by otowelt | 2015-09-25 12:30 | その他

おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その1

・ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩(アノーロ®)
 アノーロは、レルベアと同じくエリプタで吸入するLAMA/LABAの合剤です。エリプタは以下の3種類があります。個人的にはICS単剤のエリプタ製剤が欲しいのですが・・・。

 レルベア®:ICS/LABA
 エンクラッセ®:LAMA
 アノーロ®:LAMA/LABA


 アノーロ®は、COPDに対する合剤治療でカプセルが不要であるという点が高く評価できます。しかも1日1回の吸入なので、アドヒアランスの観点からも非常に素晴らしい。
 ウメクリジニウム/ビランテロールの効果を検証したランダム化比較試験が報告されています。この研究ではトラフ1秒量がチオトロピウム単剤、ビランテロール単剤と比較して合剤群で有意に改善しました。
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図. ウメクリジニウム/ビランテロールのトラフ1秒量の変化量に対する有効性(Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.)
 
 COPDでLAMAとLABAを合剤にしてしまうことで、心血管系疾患のリスクが懸念されるところですが、現時点ではLAMA単剤、LABA単剤と比較して心血管系疾患のリスクを有意に上昇させるというコンセンサスはありません。おおむね安全に使用できると思います。
Rodrigo GJ, et al. A systematic review on the efficacy and safety of a fixed-dose combination of umeclidinium and vilanterol for the treatment of COPD. Chest. 2015 Aug 1;148(2):397-407.


・チオトロピウム臭化物/オロダテロール(スピオルト®)
 すでに2015年8月3日の時点でスピオルト®の商品名が申請されていますので、よほどのことがなければ間違いなく販売にこぎつけるでしょう。日本でレスピマット2剤目となるのがこのスピオルトです。海外には他にもオロダテロール単剤(ストリヴェルディ®レスピマット)やSAMA/SABA合剤(コンビベント®レスピマット)があるのですが、日本ではCOPD長期管理薬用の合剤が2剤目にラインナップされることになりました。
 オロダテロールもインダカテロールと同じように超長時間作用性β2刺激薬(ultra-LABA)に属します。実臨床上はインダカテロールのイメージと同じでよいと思います。
Roskell NS, et al. Once-daily long-acting beta-agonists for chronic obstructive pulmonary disease: an indirect comparison of olodaterol and indacaterol. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2014 Jul 31;9:813-24.

 チオトロピウム/オロダテロールの臨床試験としては、TOnado試験が良く知られています。ややこしいですが、最初の2文字が大文字です。。TOnado試験は、TOviTO試験プログラムの1つだそうです。この試験は、チオトロピウム/オロダテロール2.5/5 μgあるいは5/5 μg、チオトロピウム2.5 μgあるいは5 μg、オロダテロール5 μgを1日1回レスピマットによって52週間吸入したランダム化比較試験です。その結果、合剤治療は単剤治療と比較してトラフ1秒量および1秒量AUC0-3hを有意に改善しました。また、合剤だからといって有害事象が増えるといったことはなかったそうです。
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図. チオトロピウム/オロダテロールの1秒量に対する有効性(Buhl R, et al. Tiotropium and olodaterol fixed-dose combination versus mono-components in COPD (GOLD 2-4). Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):969-79.)

 最もエビデンスの多いLAMAであるチオトロピウム。そして、循環器疾患に対する懸念を払拭し前へ進もうとしているレスピマット製剤。さらに時代を先取りしたLAMA/LABAの合剤。これらの融合を実現させたのがスピオルト®レスピマットです。中等症以上のCOPD患者さんにおいて、かなり人気が出る製剤になることは間違いないでしょう。ウルティブロ®、アノーロ®の三つ巴の戦いになりそうです。


・アクリジニウム臭化物(エクリラ®)
 海外ではTudorza®という名前で発売されていますが、日本ではエクリラ®という名前です。アクリジニウムというLAMAは日本ではあまり知られていませんが、ウメクリジニウムと並んで最近では海外でよく臨床試験が組まれているLAMAです。

 エクリラに使用されている台形の吸入デバイス、ジェヌエアはユニバーサルデザイン賞2015エキスパート部門、コンシューマ部門を受賞しています。モンドコレクション金賞受賞くらいスゴイことなのかどうか、よく知りません。実際に使ってみると、ジェヌエアの操作性はきわめて良好で、現存する吸入デバイスの中で一番使いやすいと思います。ボタンを押して吸ったら終わり、いやはやなんと簡単な吸入デバイスなのでしょう。操作性は良い吸入デバイスは他にもありますが、ジェヌエアは群を抜いています。

 アクリジニウムはATTAIN試験において、プラセボと比較したトラフ1秒量の改善、COPD急性増悪の抑制効果がみられています。
Jones PW, et al. Efficacy and safety of twice-daily aclidinium bromide in COPD patients: the ATTAIN study. Eur Respir J. 2012 Oct;40(4):830-6.

 また、アクリジニウムは投与6週目の標準化1秒量AUC0-24をプラセボと比較して有意に改善させています。また、チオトロピウムとの比較でも同等の効果が示されました。また、COPDの症状である喀痰、呼吸困難感、喘鳴、咳などを有意に減少させました。
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図. アクリジニウムとチオトロピウムのベースラインからの標準化1秒量AUCの変化(Beier J, et al. Efficacy and safety of aclidinium bromide compared with placebo and tiotropium in patients with moderate-to-severe chronic obstructive pulmonary disease: results from a 6-week, randomized, controlled Phase IIIb study. COPD. 2013 Aug;10(4):511-22.)

 他のチオトロピウムとの比較研究はないのかというと、たとえばアクリジニウム、プラセボ、チオトロピウムを比較したFuhrらの報告があります。30人と小規模な研究ではありますが、1秒量の改善についてはアクリジニウム、チオトロピウム双方ともにプラセボより優れていましたが、COPD症状についてはチオトロピウムよりもアクリジニウムの方がおそらく優れているだろうという結果でした。
Fuhr R, et al. Efficacy of aclidinium bromide 400 μg twice daily compared with placebo and tiotropium in patients with moderate to severe COPD. Chest. 2012 Mar;141(3):745-52.

 コクランレビューでは、QOLやCOPD急性増悪による入院の減少効果はあるとしながらも、死亡率に関しては有意な低下は現時点では観察されないと結論づけられています。
Ni H, et al. Aclidinium bromide for stable chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 19;9:CD010509.

 将来的にはホルモテロールとの合剤が販売されることを期待しています。海外ではすでに発売しています。


・ウメクリジニウム臭化物(エンクラッセ®)
 ウメクリジニウムは、2012年に登場した赤ちゃんLAMAです。まだまだ歴史が浅いのです。専門家の間では「梅栗(ウメクリ)」と呼んでいます。・・・・・・ウソです。
Donohue JF, et al. A randomized, double-blind dose-ranging study of the novel LAMA GSK573719 in patients with COPD. Respir Med. 2012 Jul;106(7):970-9.

 日本ではウメクリジニウムとビランテロールの合剤であるアノーロ®が先行販売されていたこともあり、エンクラッセ®は販売当初から長期処方ができます。同一デバイスのアノーロ®と合わせてアドヒアランスの向上にはもってこいの薬剤です。同じエリプタということもあって、エンクラッセ®→アノーロ®とステップアップしやすいでしょう。

 さて、ウメクリジニウムの臨床試験でおさえておきたいのは、中等症以上のCOPD患者さんを対象としたウメクリジニウムとプラセボの比較試験です。この試験では、12週間にわたってトラフ1秒量やSGRQスコアを改善させたことが報告されています。
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ウメクリジニウムによるトラフ1秒量の変化(Trivedi R, et al. Umeclidinium in patients with COPD: a randomised, placebo-controlled study. Eur Respir J. 2014 Jan;43(1):72-81.

 チオトロピウムとの比較についてはウメクリジニウム/ビランテロールの有効性を示したLancet Respiratory Medicineに報告されたDecramerらの研究がよく用いられていますが、トラフ1秒量も加重平均1秒量もチオトロピウムと比較して少なくとも下回っていることはありません(優越性でもありません)。
Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.

 他のCOPDに使われているLAMAと同様に、チオトロピウムには臨床的に遜色ない薬剤と考えてよいと思います。
Segreti A , et al. Umeclidinium for the treatment of chronic obstructive pulmonary disease. Expert Rev Respir Med. 2014 Dec;8(6):665-71.


ニボルマブ(オプジーボ®)
 これまで肺扁平上皮がんに対する有効な治療選択肢は限られていました。切れ味がよいとされるドセタキセルが無効になってしまうと、なかなかガツンと効く抗がん剤がないのが現状でした。オプジーボは、PD-1 とPD-1 リガンドの経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤です。optimal(最適な)+ PD-1 + nivolumab(一般名)から命名されたそうです。

 ニボルマブは、世界初のヒト型抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体として悪性黒色腫に対して有効性が示されました。日本でも2014年7月に発売されています。アメリカでは2015年3月に、肺扁平上皮がんに対して保険適応が追加承認されました。

 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの有効性についてはCheckMate-017試験が有名です。チェックメイトというネーミングはなかなか目を引きますね・・・。この試験では、肺扁平上皮がんの患者さん272人をニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに投与する群と、ドセタキセル75mg/m2を3週間ごとに投与する群にランダムに割り付けたものです。その結果、全生存期間の中央値は、ニボルマブ群9.2か月(95%信頼区間7.3~13.3)、ドセタキセル群6.0か月(95%信頼区間5.1~7.3)でした。また、1年の時点での全生存率はニボルマブ群42%(95%信頼区間34~50)に対して、ドセタキセル群24%(95%信頼区間17~31)でした。奏効率は、ニボルマブ群20%、ドセタキセル群9%でした(p = 0.008)。PD-1リガンドの発現の有無は、予後や効果を予測する因子ではありませんでした。
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図. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブとドセタキセルの生存(Brahmer J, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2015 Jul 9;373(2):123-35.

 第16回世界肺癌学会において18か月の生存率のデータが公表されていますが、やはりドセタキセルよりも良好であることが示されています。CheckMate-063試験のデータとともに表に提示します。
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表. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの生存率(ブリストル・マイヤーズ株式会社ウェブサイトより引用)


アレクチニブ(アレセンサ®)
 アレセンサ®は、2014年9月に日本で販売されたザーコリに引き続く2番目のALK阻害薬です。第2世代ALK阻害薬として認識されていますが、海外では第2世代ALK阻害薬と言えばセリチニブの方が有名のようです。日本ではまだセリチニブは販売されていません。

 第2世代ALK阻害薬という名の通り、基本的にアレクチニブはクリゾチニブが無効になった場合にスイッチすることで一定以上の奏効が期待できます。
Seto T, et al. Anti-Tumor Activity of Alectinib in Crizotinib Pre-Treated ALK-Rearranged NSCLC in JP28927 Study. Annals of Oncology 2014;25(suppl 4): iv426-70.

 クリゾチニブ耐性になった患者さん122人に対するアレクチニブの有効性を解析した第2相試験では、客観的奏効率は50%、疾患制御率は79%、コホート内の無増悪生存期間は8.9か月と報告されています。このうち脳転移を有する84人の解析では、疾患制御率は83%でした。
Ou S, et al. Efficacy and safety of the ALK inhibitor alectinib in ALK+ non-small-cell lung cancer (NSCLC) patients who have failed prior crizotinib: an open-label, single-arm, global phase 2 study (NP28673). J Clin Oncol 33, 2015 (suppl; abstr 8008)

 クリゾチニブ耐性のALK陽性肺癌に対して、特に中枢神経系に転移を有する場合にアレクチニブが有効であるとする報告は2014年にも報告されています。
Gadgeel SM, et al. Safety and activity of alectinib against systemic disease and brain metastases in patients with crizotinib-resistant ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (AF-002JG): results from the dose-finding portion of a phase 1/2 study. Lancet Oncol. 2014 Sep;15(10):1119-28.

 クリゾチニブが無効になった場合、第2世代のALK阻害薬にスイッチするのか白金製剤を用いた化学療法に移行するのかコンセンサスはありませんが、中枢神経系の転移巣の増悪がある場合、アレクチニブにスイッチしてもよいかもしれません。


<補足:セリチニブ>
 セリチニブもアレクチニブと同じく第2世代ALK阻害薬で、海外ではこちらの方が有名です。アレクチニブと同じく、L1196M変異、G1269A 変異といったクリゾチニブ耐性の肺腺癌に対して有効とされています。半数近くにクリゾチニブ既治療例を含む集団でもかなり奏効率が高かったことが注目されました。
Kim DW, et al. Ceritinib in advanced anaplastic lymphoma kinase (ALK)-rearranged (ALK+) non-small cell lung cancer (NSCLC): Results of the ASCEND-1 trial (abstract 8003). 2014 American Society of Clinical Oncology (ASCO) meeting.


→ おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その2 へ続く 
 URL:http://pulmonary.exblog.jp/23696138/


by otowelt | 2015-09-21 08:49 | その他