カテゴリ:呼吸器その他( 284 )

閉塞性睡眠時無呼吸はAlzheimer病のトリガー?

e0156318_956305.jpg 知らない知見なので勉強になりました。

Claudio Liguori, et al.
Is It Time to Consider Obstructive Sleep Apnea Syndrome a Risk Factor for Alzheimer’s Disease?
AJRCCM Articles in Press. Published on 26-January-2018 as 10.1164/rccm.201710-2105ED


概要:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、とくに肥満男性に多い疾患であり、AHI15以上の睡眠時呼吸障害は男性の半数にものぼるというデータがある。
 OSAは心血管系疾患、神経認知機能、代謝内分泌に影響を与えることがわかっているが、Alzheimer病の発症に寄与するのではないかという報告がある(Alzheimers Dement. 2017 Jul 21. pii: S1552-5260(17)32522-0. doi: 10.1016/j.jalz.2017.06.2269. [Epub ahead of print])。
 また別の報告によれば、OSAはAlzheimer病のバイオマーカー(アポリポプロテインE)を髄液中で変化させることが知られている(Neurobiol Aging. 2014; 35(6): 1318–1324.)。そして、髄液中のアミロイドβの減少とともに認知機能障害が進行することが示されており、OSAによってアミロイドβが脳に沈着している可能性もある。
 この仮説を支持するような研究結果が近年いくつも報告されており、AHIの上昇と髄液中アミロイドβの相関性が報告されている(J Alzheimers Dis. 2017;59(1):21-29.)。ただ、アポリポプロテインEの影響はそこまで大きくないかもしれない。
 ただの加齢によって起こる現象を見ているだけで、OSAが本当にリスク因子かどうかは異論もある。ただ、OSAに対するCPAP治療を受けている患者と受けていない患者では髄液中のバイオマーカーに明らかに差がある(Sleep.2017 May1;40(5).)。
 OSAがAlzheimer病のトリガーになっている可能性が高く、次のステップはCPAP治療がこの進行を食い止めることができるかどうか検証することである。



 

by otowelt | 2018-02-07 00:50 | 呼吸器その他

胸腔処置時に音楽を聴くことで不安が減る

e0156318_161549.png そりゃ減るだろうと思いましたが、研究はされていなかったのですね。立案することが大事!

J Mackintosh, et al.
Music Reduces State Anxiety Scores in Patients Undergoing Pleural Procedures: A Randomized Controlled Trial
Intern Med J, DOI: 10.1111/imj.13738


背景:
 患者不安は、胸腔診断的・治療的処置の合併症として見過ごされがちである。音楽を聴くことは、患者不安を減らすことが内視鏡の研究で明らかになっているが、胸腔処置に関しては評価されていない。

方法:
 胸腔処置を受ける患者をランダムに音楽を聴く群と聴かない群に割り付けた。音楽を聴く群では、イヤホンを用いて自ら選択したものを聴いてもらった。不安はSTAIで評価した。生理学的パラメータも検査された。

結果:
 60人の患者が研究に登録された。音楽を聴く群では、STAIが処置後有意に減少した(34±11 vs. 48±13, p<0.001)が、音楽を聴かない場合では現象しなかった(40±11 vs. 42±11, p=0.51)。音楽を聴くと、心拍数が減少し(87±17 vs. 95±15, p=0.04)、収縮期血圧(121±13 vs. 130±16, p=0.02)、拡張期血圧(72±8 vs. 78±9, p=0.01)が処置後減少した。音楽を聴かない群では変化はみられなかった。疼痛スコアについては群間差はみられなかった(p=0.8)。また、もう一度処置を受けてもよいと思う頻度(p=0.27)、処置の全般的満足感(p=0.20)、処置に要した時間(p=0.68)にも群間差はなかった。

結論:
 胸腔処置を行う患者では、不安の軽減のために音楽を聴いてもらうことが有効である。


by otowelt | 2018-02-06 00:49 | 呼吸器その他

血清BNP値は肺動脈性肺高血圧症の生存のサロゲートマーカー

e0156318_9102283.jpg 実臨床にマッチした閾値だろうと思います。

Robert P. Frantz, et al.
Baseline and Serial Brain Natriuretic Peptide Level Predicts 5-Year Overall Survival in Patients With Pulmonary Arterial Hypertension: Data From the REVEAL Registry
CHEST DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2018.01.009


背景:
 血清BNP値は、肺動脈性高血圧症(PAH)の予後予測バイオマーカーである。長期全生存期間(OS)に対する影響は、アメリカで実施された5年におよぶ多施設共同観察研究であるREVEAL試験で検証された。

方法:
 18歳以上の右心カテーテルで診断されたWHOグループIのPAH患者の登録時BNPデータを用いた。ROC曲線解析による適切なBNPカットオフ値を求め、OSがベースラインBNP値340pg/mL以下あるいは340pg/mL超の2群で比較された。またベースラインと最終追跡時のBNP値を比較した。Cox回帰を用いてOSに対するハザード比を算出した。

結果:
 1426人の患者が解析された。死亡リスクは、高BNP群で有意に高かった(ハザード比3.6; 95%信頼区間3.0-4.2)。5年死亡リスクは、登録時BNP低値かつ増加量低値(low-low)群が最も低く、登録時BNP高値かつ増加量高値(high-high)群が最も高かった。BNPスコア変化は死亡リスク変化と関連していた。

結論:
 PAH患者では、ベースライン血清BNP値340pg/mLの閾値を用いることで5年生存を予測することができる。1年後のBNP減少は死亡リスクの減少と関連しているが、BNP上昇は死亡リスクの上昇と関連していた。血清BNP値は、PAHの生存のサロゲートマーカーであることが支持された。


by otowelt | 2018-02-01 00:15 | 呼吸器その他

フルーツやトマトの摂取は肺機能低下を抑制する

e0156318_11283884.jpg 残念ながら私はトマトが大嫌いです。

Vanessa Garcia-Larsen, et al.
Dietary antioxidants and 10-year lung function decline in adults from the ECRHS survey
European Respiratory Journal 2017 50: 1602286; DOI: 10.1183/13993003.02286-2016


背景:
 ヨーロッパの3か国で成人における肺機能減少と食餌性抗酸化物質の関連を10年にわたり調べた。

方法:
 2002年、3か国が参加したECRHSコホートにおいて成人にスパイロメトリーを実施し、10年後再検した。食事についてはベースラインの質問票でデータを収集した。その後の肺機能の低下と食事の関連性を多変量解析で調べた。多重性の制御のため、Simes法が用いられた。

結果:
 680人(ベースライン平均年齢43.8±6.6歳)が登録された。最大限補正したモデルでは、フルーツの摂取は1秒量低下抑制と有意に関連していた(3.5mL/年、95%信頼区間0.04-6.92)。しかし、この関連は統計学的にボーダーライン上であった。同様に、リンゴ、バナナ、トマト、ハーブティー、ビタミンCも有意に努力性肺活量減少抑制に寄与していた。このうち、Simes法で努力性肺活量減少抑制に有意に寄与していたのはトマトのみであった。既喫煙者のサブグループ解析では、リンゴ、バナナ、トマトのすべてが努力性肺活量の減少抑制に寄与していた。

結論:
 成人においてフルーツやトマトを摂取することは、特に既喫煙者では肺機能低下を抑制するかもしれない。


by otowelt | 2018-01-22 00:17 | 呼吸器その他

CTガイド下針生検後の気胸のリスク因子

 世界的な平均よりは少し気胸の合併頻度が多い集団のようです。日本にも早くBioSentry™が上陸してほしいものですね。

参考:経皮的肺生検後の気胸を抑制するデバイス:BioSentry™

Zhao Y, et al.
Logistic regression analysis and a risk prediction model of pneumothorax after CT-guided needle biopsy.
J Thorac Dis. 2017 Nov;9(11):4750-4757.


背景:
 気胸はCTガイド下針生検のもっともよくみられる合併症である。この研究の目的は、気腫以外の気胸の独立リスク因子を同定することである。

方法:
 864人のCTガイド下針生検(18G)を受けた患者が登録された。気胸のリスク因子として、年齢、性別、気腫、病変サイズ短径、病変深度、体位、穿刺回数が候補に挙がった。単変量・多変量ロジスティック回帰分析を用いて気胸の予測モデルを確立した。

結果:
 気胸は864人中271人(31.4%)にみられた。単変量解析では、年齢、気腫、病変サイズが小さいこと、病変と胸膜の距離がないこと、腹臥位・側臥位、複数回穿刺が有意なリスク因子だった。多変量ロジスティック回帰分析では気腫、病変と胸膜に接触がないこと、腹臥位・側臥位、複数回穿刺が有意なリスク因子だった。この予測モデルを用いると、気胸診断の感度・特異度はそれぞれ56.8%、79.6%だった。

結論:
 CTガイド下生検後の気胸はよくみられる。この独立予測因子には、気腫、病変と胸膜に接触がないこと、腹臥位・側臥位、複数回穿刺が含まれた。


by otowelt | 2018-01-15 00:50 | 呼吸器その他

局所麻酔下胸腔鏡検査の何が難しいか?

e0156318_14504521.jpg 当院には手技を行うチームがあります。

石井 聡ら.
局所麻酔下胸腔鏡検査施行過程における若手医師の手技難易度の評価
気管支学39 巻 (2017) 6 号 p. 502-507


背景:
 局所麻酔下胸腔鏡は内科医も施行でき,多くの学会・論文報告がされているが,今までに検査施行過程における手技難易度に関しての報告は少ない.

対象:
 2008年3月から2016年11月までに原因不明胸水に対して局所麻酔下胸腔鏡検査を施行し,術者を経験した若手医師31人に対して,検査終了後アンケートを行い,手技の難易度を評価した.アンケートの結果を点数化し,Kruskal-Wallis検定を用い,P<0.05で有意差ありと判断した.

結果:
 31人の若手医師が術者を経験した.男性18人・女性13人,医師になってからの年数中央値は4年(3~6年),検査時間中央値は43分(28~66分)であった.肺腺癌胸膜転移7例・結核性胸膜炎7例・悪性胸膜中皮腫4例などの診断に至った.アンケート10項目に関して,Kruskal-Wallis検定においてP<0.001であり有意差を認めた.検査施行過程において手技難易度の1番高い項目はファイバーの操作であり,2番目は胸腔内所見の把握であった.また良性疾患・悪性疾患による分類では,Mann-WhitneyのU検定において,ファイバーの操作においてP<0.025と有意差を認めた.結核性胸膜炎は結節が壁側胸膜全体に多数認められたが,肺腺癌胸膜転移は一部に限局する症例も認めたことが,理由として考えられた.

結論:
 今回のアンケート調査では1番難易度が高い項目はファイバーの操作性であり,2番目は胸腔内所見の把握であった.


by otowelt | 2018-01-11 00:38 | 呼吸器その他

NAFLDは肺機能の低下と関連

e0156318_1823364.jpg 他臓器疾患と肺機能の関連の話題は結構好きです。

Kwak MS, et al.
The association of non-alcoholic fatty liver disease with lung function: A survey design analysis using propensity score.
Respirology. 2018 Jan;23(1):82-88.


背景および目的:
 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と肺機能はメタボリック症候群と関連していることが知られているが、NAFLDと肺機能の関連を評価した研究は少ない。集団ベース研究において、NAFLDが肺機能と関連しているかどうか調べた。

方法:
 2010年~2012年の韓国KNHANESコホートを用いておこなわれた。NAFLDの診断基準は、他の慢性肝疾患やアルコール性障害のない血清ALT上昇で規定された。1秒量および努力性肺活量を測定し、NAFLDと肺機能の関連性を調べた。

結果:
 合計7417人の被験者が解析に組み込まれた。NAFLDは男性において有意に努力性肺活量の低下と関連していた(共変量補正線形回帰分析:P < 0.01、傾向スコア分析:P = 0.007)。傾向スコア分析では、NAFLDは男性において有意に1秒量低下と関連していた(P = 0.044)。女性では、共変量補正線形回帰分析においてNAFLDは努力性肺活量の低下と関連していたが、傾向スコア分析では有意差はなかった。

結論:
 NAFLDは肺機能の低下と関連しており、これは男性に顕著である。


by otowelt | 2018-01-04 00:06 | 呼吸器その他

メタアナリシス:閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAP療法の鼻マスクと口鼻マスクの比較

e0156318_23181522.jpg 実臨床的なメタアナリシスです。CPAPレベルが高くとも、他のアウトカムが悪化しておれば意味がないと論じています。

Rafaela G.S. Andrade, et al.
Nasal versus oronasal CPAP for obstructive sleep apnea treatment: a meta-analysis
CHEST DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2017.10.044


背景・方法:
 nasal CPAPは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の標準的治療である。しかしながら、口鼻マスクがもっともよく現場で使用されている。この研究の目的は、鼻マスクと口鼻マスクにおけるCPAPレベル・残存AHI、CPAPアドヒアランスを比較した全てのランダム化・非ランダム化比較試験のメタアナリシスを実施することである。
 Cochrane、Medline、Web of Scienceデータベースから該当研究を抽出した。

結果:
 5つのランダム化比較試験、8つの非ランダム化比較試験が同定された(患者数4563人)。
 ランダム効果メタアナリシスでは、鼻マスクと比較して口鼻マスクのほうがCPAPレベルの高さ(Hedges’ g= -0.59, 95%信頼区間-0.82 to -0.37, p<0.001) (平均+ 1.5 cmH2O), 残存AHIの高さ (Hedges’ g= -0.34, 95%信頼区間-0.52 to -0.17, p<0.001) (+ 2.8 イベント/時)、アドヒアランスの不良(Hedges’ g= 0.50, 95%信頼区間0.21 to 0.79, p=0.001) (- 48分/晩)と関連していた。

結論:
 口鼻マスクは、鼻マスクと比較して高いCPAPレベルと関連しており、高い残存AHIおよびアドヒアランス不良とも関連していた。


by otowelt | 2017-12-28 00:35 | 呼吸器その他

慢性咳嗽患者ではArnold神経反射の頻度が健常者の12倍高い

e0156318_11335545.jpg 予想通りの結果ですが、誰もこれまでやらなかった研究です。実は比較的簡単に立案できる研究だったのかな。

Peter V. Dicpinigaitis, et al.
Prevalence of Arnold’s Nerve Reflex in Adults and Children with Chronic Cough
CHEST DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2017.11.019


背景:
 咳嗽は、気道や遠位食道における迷走神経支配される構造的刺激によって起こる。Arnold神経反射は外耳道の刺激によって誘発される咳嗽であるが、これは迷走神経の耳介枝である。耳鼻咽喉科の外来患者における研究では、この反射の頻度は2~3%とされている。しかし、健常ボランティアや慢性咳嗽患者における頻度はわかっていない。

方法:
 慢性咳嗽のある200人の成人と100人の小児、および健常ボランティアである100人の成人と100人の小児が登録された。綿棒による外耳道の刺激を両耳におこない、反射誘発を評価した。10秒以内に咳嗽が誘発された場合、反射ありと判断した。

結果:
 Arnold神経反射は、慢性咳嗽患者において成人25.5%、小児3%にみられた。健常ボランティアでは成人、小児ともに2%の頻度だった。慢性咳嗽のある成人では、同反射は女性に多く観察され(31.6% vs 12.5%)、片耳の反射の患者がほとんどだった(90.2%)。
e0156318_913145.jpg
(文献より引用)

結論:
 健常ボランティアと比較して、慢性咳嗽のある成人患者ではArnold神経反射は12倍の頻度だった。これは迷走神経が過敏になっているCough Hypersensitivity Syndrome (CHS)の概念を支持するものである。小児に過剰な反射がみられなかったことは、CHSがウイルス性気道感染症や環境曝露によって獲得される病態であることを示唆する。


by otowelt | 2017-12-18 00:30 | 呼吸器その他

ビデオ教育をしても閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAP療法アドヒランスは変わらない

e0156318_23181522.jpg ビデオごときでは変わらないということですね。

Guralnick AS, et al.
Educational video to improve CPAP use in patients with obstructive sleep apnoea at risk for poor adherence: a randomised controlled trial.
Thorax. 2017 Dec;72(12):1132-1139.


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者におけるCPAP療法のアドヒアランス不良は臨床的効果に影響を与えるが、アドヒアランス維持を強化するための行動学的介入については適切なプロトコルがない。それだけでなく、CPAP療法のアドヒアランス不良患者における介入法についてはこれまで研究されたことがほとんどない。この研究の目的は、CPAP療法のアドヒアランス不良リスクが高い患者あるいは不良である患者に対する教育ビデオの効果を調べることである。

方法:
 睡眠医学専門家のいない施設においてOSAが疑われ、紹介後ポリソムノグラフィを実施することになった被験者に対して、ポリソムノグラフィ前にOSAやCPAP療法に関するビデオを見てもらった。このプロトコルについて、通常ケアと比較した。プライマリアウトカムは治療開始30日時点でのCPAP療法アドヒアランスとし、セカンダリアウトカムは睡眠外来受診率(予約受診)、同受診から30日時点でのCPAP療法アドヒアランスとした。

結果:
 合計212人の患者が登録され、ビデオ教育群(99人)、通常ケア群(113人)にランダムに割り付けられた。30日時点でのCPAP療法アドヒアランスに有意差はみられなかった(3.3時間/日, 95%信頼区間2.8 to 3.8時間/日 vs 3.5時間/日、95%信頼区間3.1 to 4.0時間/日; p=0.44)。また、睡眠外来受診後30日時点でも差はみられなかった。受診率にも差はなかった。しかしながら、CPAP療法のアドヒアランスは睡眠外来受診がなかった患者では有意に悪かった。

結論:
 CPAP療法アドヒアランス不良のリスクが高い患者では、教育ビデオを見せてもアドヒアランスや受診率が向上しなかった。


by otowelt | 2017-12-13 00:52 | 呼吸器その他