カテゴリ:呼吸器その他( 276 )

慢性咳嗽患者ではArnold神経反射の頻度が健常者の12倍高い

e0156318_11335545.jpg 予想通りの結果ですが、誰もこれまでやらなかった研究です。実は比較的簡単に立案できる研究だったのかな。

Peter V. Dicpinigaitis, et al.
Prevalence of Arnold’s Nerve Reflex in Adults and Children with Chronic Cough
CHEST DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2017.11.019


背景:
 咳嗽は、気道や遠位食道における迷走神経支配される構造的刺激によって起こる。Arnold神経反射は外耳道の刺激によって誘発される咳嗽であるが、これは迷走神経の耳介枝である。耳鼻咽喉科の外来患者における研究では、この反射の頻度は2~3%とされている。しかし、健常ボランティアや慢性咳嗽患者における頻度はわかっていない。

方法:
 慢性咳嗽のある200人の成人と100人の小児、および健常ボランティアである100人の成人と100人の小児が登録された。綿棒による外耳道の刺激を両耳におこない、反射誘発を評価した。10秒以内に咳嗽が誘発された場合、反射ありと判断した。

結果:
 Arnold神経反射は、慢性咳嗽患者において成人25.5%、小児3%にみられた。健常ボランティアでは成人、小児ともに2%の頻度だった。慢性咳嗽のある成人では、同反射は女性に多く観察され(31.6% vs 12.5%)、片耳の反射の患者がほとんどだった(90.2%)。
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(文献より引用)

結論:
 健常ボランティアと比較して、慢性咳嗽のある成人患者ではArnold神経反射は12倍の頻度だった。これは迷走神経が過敏になっているCough Hypersensitivity Syndrome (CHS)の概念を支持するものである。小児に過剰な反射がみられなかったことは、CHSがウイルス性気道感染症や環境曝露によって獲得される病態であることを示唆する。


by otowelt | 2017-12-18 00:30 | 呼吸器その他

ビデオ教育をしても閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAP療法アドヒランスは変わらない

e0156318_23181522.jpg ビデオごときでは変わらないということですね。

Guralnick AS, et al.
Educational video to improve CPAP use in patients with obstructive sleep apnoea at risk for poor adherence: a randomised controlled trial.
Thorax. 2017 Dec;72(12):1132-1139.


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者におけるCPAP療法のアドヒアランス不良は臨床的効果に影響を与えるが、アドヒアランス維持を強化するための行動学的介入については適切なプロトコルがない。それだけでなく、CPAP療法のアドヒアランス不良患者における介入法についてはこれまで研究されたことがほとんどない。この研究の目的は、CPAP療法のアドヒアランス不良リスクが高い患者あるいは不良である患者に対する教育ビデオの効果を調べることである。

方法:
 睡眠医学専門家のいない施設においてOSAが疑われ、紹介後ポリソムノグラフィを実施することになった被験者に対して、ポリソムノグラフィ前にOSAやCPAP療法に関するビデオを見てもらった。このプロトコルについて、通常ケアと比較した。プライマリアウトカムは治療開始30日時点でのCPAP療法アドヒアランスとし、セカンダリアウトカムは睡眠外来受診率(予約受診)、同受診から30日時点でのCPAP療法アドヒアランスとした。

結果:
 合計212人の患者が登録され、ビデオ教育群(99人)、通常ケア群(113人)にランダムに割り付けられた。30日時点でのCPAP療法アドヒアランスに有意差はみられなかった(3.3時間/日, 95%信頼区間2.8 to 3.8時間/日 vs 3.5時間/日、95%信頼区間3.1 to 4.0時間/日; p=0.44)。また、睡眠外来受診後30日時点でも差はみられなかった。受診率にも差はなかった。しかしながら、CPAP療法のアドヒアランスは睡眠外来受診がなかった患者では有意に悪かった。

結論:
 CPAP療法アドヒアランス不良のリスクが高い患者では、教育ビデオを見せてもアドヒアランスや受診率が向上しなかった。


by otowelt | 2017-12-13 00:52 | 呼吸器その他

最近読んだ医学書

 最近読んだ本を紹介します。

・誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた
 フルカラーで見やすいだけでなく、コンパクトな薄さに必要な情報がギッシリ詰まっています。外科的な視点が強く出ているため、胸部レントゲンの書籍としては、近年では群を抜いた完成度と目新しさです。買って、絶対に失敗はないです。





・気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(改訂第3版)
 新版です。値段が倍増していますが、実質BALの本はこれしかないので買うべきです。とはいえ、「前投薬はどうする?」「BALFを解析するまでの時間は?」などのアンケート結果が円グラフで表記されており、他の施設はどうしているの?という疑問を持っている人には面白い一冊になるでしょう。





・喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き〈2018〉
 呼吸器学会の会員には全員届きます。個人的にはACOという疾患概念が必要なのか懐疑的ではありますが、診断基準も明記されており、喘息とCOPDの両方を診ることがある医師は持っておいてもよいと思います。


by otowelt | 2017-12-09 00:13 | 呼吸器その他

効果的な胸膜癒着術のタイミングと手法

e0156318_9591036.jpg 永遠の悩みどころのような気もします。

Hallifax RJ, et al.
Effectiveness of chemical pleurodesis in spontaneous pneumothorax recurrence prevention: a systematic review.
Thorax. 2017 Dec;72(12):1121-1131. doi: 10.1136/thoraxjnl-2015-207967.


目的:
 自然気胸はよくみられる疾患である。国際的ガイドラインでは、処置後のエアリーク遷延や再発予防には胸膜癒着術が推奨されている。この研究は、その有効性について包括的にレビューしたものである。

デザイン:
 過去のランダム化比較試験、症例対照研究、ケースシリーズをシステマティックに調べた。処置後の相対的再発率あるいはオッズ比を調べたが、異質性が高いためメタアナリシスはおこなわなかった。

結果:
 560のアブストラクトがスクリーニングされ、そのうち50がわれわれのシステマティックレビューに組み込まれた。再発率は、胸腔ドレナージ後で26.1~50.1%だった。胸腔鏡下散布法(poudrage法)(4研究249人)の再発率は、2.5~10.2%だった。ランダム化比較試験は1つの身であったが、胸腔ドレーン単独との比較でオッズ比0.10だった。また、8研究でVATS時のタルク投与について調べられているが、再発率は0.0~3.2%だった。しかしランダム化比較試験においてはブラ切除術単独との比較では有意な差はみられなかった。タルクだけでなくミノサイクリンもVATS時の胸膜癒着に有効だった(再発率0.0~2.9%)胸腔ドレーンからテトラサイクリンを用いたエアリーク遷延予防と再発予防のための処置では再発率13.0~33.0%であり、自己血についても15.6~18.2%だった。

結論:
 胸膜癒着術は外科手術時に胸腔鏡から注入する手法がもっとも効果的である。


by otowelt | 2017-12-04 00:35 | 呼吸器その他

慢性非特異的呼吸器症状のある患者においてFeNOは吸入ステロイド薬の効果を予測する

e0156318_224778.jpg 実際に、疾患と問わずICSの効果指標にFeNOは有用だと感じています。ただ、その証明は難しかった。

Price DB, et al.
Fractional exhaled nitric oxide as a predictor of response to inhaled corticosteroids in patients with non-specific respiratory symptoms and insignificant bronchodilator reversibility: a randomised controlled trial.
Lancet Respir Med. 2017 Nov 3. pii: S2213-2600(17)30424-1. doi: 10.1016/S2213-2600(17)30424-1. [Epub ahead of print]


背景:
 慢性非特異的呼吸器症状のマネジメントは難しい。この研究の目的は、同症状を訴えた患者におけるFeNOとICS反応性の関連を調べることである。

方法:
 イギリスおよびシンガポールの26施設で行われたこの二重盲検ランダム化プラセボ対照試験では、咳嗽・喘鳴・呼吸困難感を訴える18-80歳の未診断の非特異的呼吸器症状患者を組み入れた。気道可逆性は20%未満と規定した。患者は、キュバール80μg2吸入1日2回あるいはプラセボを4週間受けた。ランダム化はベースラインのFeNOで層別化された(25ppb以下、25~40ppb、40ppb以上)。プライマリエンドポイントは平均ACQ7スコアとした。一般化線形モデルを用いてFeNoがICS反応性(ACQ7スコアを指標)の予測因子となるかどうか調べた。

結果:
 2015年2月4日から2016年7月12日までの間、294人の患者がランダム化され、ICS群148人、プラセボ群146人となった。プロトコル違反を除き、214人(ICS群114人、プラセボ群100人)が解析された。
 FeNOが10ppb増加するごとに、ACQ7スコアの変化がICS群で顕著に観察された(群間差0.071, 95%信頼区間0.002 to 0.139; p=0.044)。もっともよくみられた有害事象は鼻咽頭炎だった(12% vs 9%)。
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(文献より引用)

結論:
 非特異的呼吸器症状を訴える患者において、ICS反応性をみるためのFeNOは簡便で侵襲性が低いツールである。


by otowelt | 2017-11-30 00:56 | 呼吸器その他

禁煙成功の予測因子

e0156318_14441648.jpg 禁煙の予測因子を調べたものです。

Mathias Holm, et al.
Predictors of smoking cessation: A longitudinal study in a large cohort of smokers
Respiratory Medicine, https://doi.org/10.1016/j.rmed.2017.10.013


背景:
 一般集団での禁煙に関する予測因子の研究はほとんどない。複数の潜在的予測因子、とりわけ呼吸器疾患と心血管疾患に焦点をあて、我々は禁煙率を調べた。

方法:
 1945年から1973年に出生した北ヨーロッパ7施設の喫煙者4536人をRHINE研究(1999-2001年)に登録し、2010~2012年に新たな質問票を用いて追跡調査した。2564年が質問票に回答し、喫煙に関するデータが提供された。Cox回帰分析を用いて、ハザード比を算出した。

結果:
 合計999人(39%)が研究期間中に禁煙した。禁煙率は1000人年あた44.9人だった。禁煙率は高齢者ほど、また教育水準が高いほど、喫煙年数が少ないほど高かった。喘息、喘鳴、花粉症、慢性気管支炎、糖尿病、高血圧は禁煙を有意には予測しなかったものの、研究期間中に虚血性心疾患で入院となった喫煙者は喫煙をやめやすかった(ハザード比3.75、95%信頼区間2.62-5.37)。

結論:
 禁煙成功は中年の喫煙者によくみられ、喫煙年数が少ないほど、教育水準が高いほど関連している。呼吸器疾患の診断は、喫煙をやめる明らかな動機にはならないが、虚血性心疾患の急性エピソードは当該研究集団では禁煙を促した。


by otowelt | 2017-11-22 00:37 | 呼吸器その他

タルクによる胸膜癒着術後にARDSを発症するリスク因子

e0156318_1256030.jpg 個人的にもタルクによるARDSを1例経験しており、苦い思い出があります。

Shinno Y, et al.
Old age and underlying interstitial abnormalities are risk factors for development of ARDS after pleurodesis using limited amount of large particle size talc.
Respirology. 2017 Oct 4. doi: 10.1111/resp.13192.

背景:
 タルクによる胸膜癒着術は難治性胸水や気胸のマネジメントによく用いられている。大粒子径のタルクを限定的に用いれさえすれば安全な手技と考えられているが、ARDSのような頻度が低い重篤な合併症も報告されている。われわれは、大粒子径のタルクを用いて胸膜癒着術をおこなった後にARDSを発症するリスク因子を調べた。

方法:
 タルクあるいはOK-432(ピシバニール®)による胸膜癒着術をおこなった患者を後ろ向きに抽出した。

結果:
 大粒子タルク(4g以下)で胸膜癒着術を受けた27人、およびOK-432で胸膜癒着術を受けた35人が対象となった。タルクによる胸膜癒着術のあと、27人中4人(15%)がARDSを発症した。ARDSを発症した患者は、発症しなかった患者よりも高齢者が多く(年齢中央値80歳 vs 66歳、p=0.02)、胸部CTで既存の間質影がみられる頻度が高かった(4人中2人 vs 23人中1人, p<0.05)。OK-432による胸膜癒着術によってARDSを発症した患者はいなかった。

結論:
 高齢および胸部CTで既存の間質影がみられることは、タルクによる胸膜癒着術の後にARDSを発症するリスク因子かもしれない。


by otowelt | 2017-10-24 00:34 | 呼吸器その他

気胸術後に対するPGAシート断端被覆の有用性

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宮原 栄治ら.
若年者自然気胸の術後再発とその予防法の検討―PGAシートによる断端被覆の有用性―
日本呼吸器外科学会雑誌Vol. 31 (2017) No. 6 p. 698-704


背景:
 胸腔鏡下ブラ切除術の術後再発率は開胸術と比較し高率で若年者において顕著である.

方法:
 再発予防のため切除断端・肺炎部を吸収性シート(酸化セルロース・ORCまたはポリグリコール酸・PGA)で被覆しその有効性を検討した.1986年から2015年まで施行した30歳未満の自然気胸初回手術397症例を,T群:腋窩開胸下肺縫縮術,V群:胸腔鏡下自動縫合器によるブラ切除術,O群・P群:胸腔鏡下ブラ切除およびORC(O群)・PGA(P群)によるブラ切除断端・肺尖部被覆,の4群に分けて術後再発率を検討した.

結果:
 T群(3.5%)に比較しV群(12.4%)は有意に高率であった.P群は1.2%でV群に比較し有意に低値であった.10歳台の再発率は15.4%であり20歳台に比較し有意に高値であった.10歳台ではP群34例に再発は認められなかった.

結論:
 若年者自然気胸の胸腔鏡下ブラ切除術においてPGAシート被覆は再発予防に有効であった.


by otowelt | 2017-10-12 00:37 | 呼吸器その他

メタアナリシス:肺血栓塞栓症予防のためのIVCフィルター

e0156318_1015674.jpg IVCフィルターの永久留置については海外では長期的合併症が懸念されています。

Bikdeli B, et al.
Inferior Vena Cava Filters to Prevent Pulmonary Embolism: Systematic Review and Meta-Analysis.
J Am Coll Cardiol. 2017 Sep 26;70(13):1587-97.


背景:
 下大静脈(IVC)フィルターは肺血栓塞栓症(PE)の予防に広く用いられている。しかしながら、その効果と安全性は長らく不確かである。

目的:
 IVCフィルターの効果と安全性に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシスを立案した。

方法:
 PubMedなどの電子データベースから2016年10月3日まで、IVCフィルターのPE予防に関するランダム化比較試験あるいは前向き観察研究を抽出した。逆分散固定効果モデルを用いた。主要アウトカムは、その後の続発PE、PE関連死亡率、総死亡率、その後の続発深部静脈血栓症(DVT)とした。

結果:
 1986の試験のうち、11試験が適格基準を満たした(6つのランダム化比較試験、5つの前向き観察研究)。ランダム化比較試験のエビデンスの質は低~中だった。IVCフィルターを留置された患者は、その後のPEの発症が少なかったが(オッズ比0.50; 95%信頼区間0.33 to 0.75)、DVTは多かった(オッズ比1.70; 95%信頼区間1.17 to 2.48)。PE関連死亡率(オッズ比0.51; 95%信頼区間0.25 to 1.05)や総死亡率(オッズ比0.91; 95%信頼区間0.70 to 1.19)には影響はなかった。ランダム化比較試験の結果のみにしぼっても、同様の結果だった。
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(文献より引用)

結論:
 前向き比較試験が少なく限られたデータのエビデンスによるが、IVCフィルターはその後のPEリスクを減少させるが、DVTリスクは上昇させた。死亡リスクには有意な影響はなかった。


by otowelt | 2017-10-10 00:13 | 呼吸器その他

バレニクリン・ブプロピオンはニコチン置換療法と比べ心血管系イベントや抑うつ・自傷のリスクを上昇せず

e0156318_23341270.jpg  禁煙外来の懸念が1つ払拭されそうですね。

Kotz D, et al.
Cardiovascular and neuropsychiatric risks of varenicline and bupropion in smokers with chronic obstructive pulmonary disease.
Thorax. 2017 Oct;72(10):905-911.


背景:
 バレニクリンとブプロピオンは、効果的な禁煙補助薬であるが、喫煙COPD患者における安全性には懸念がある。

目的:
 バレニクリンとブプロピオンが、喫煙COPD患者において心血管系および神経精神的な重篤な有害事象と関連しているかどうか調べること。

方法:
 後ろ向きコホート研究において、イギリス国内でCOPD患者14350人のデータベースを用いて調べた。われわれは、ニコチン置換療法(NRT)を受けたCOPD患者10426人、ブプロピオン治療を受けたCOPD患者350人、バレニクリン治療を受けたCOPD患者3574人を同定した(2007年1月~2012年6月)。心血管系(虚血性心疾患、脳卒中、心不全、末梢血管疾患、不整脈など)および神経精神系(抑うつ、自傷など)のイベント発症を6ヶ月まで追跡した。

結果:
 ブプロピオンもバレニクリンも、NRTと比較して上記有害事象のリスクを上昇させなかった。バレニクリンは有意に心不全リスク(ハザード比0.56, 95%信頼区間0.34 to 0.92)、抑うつリスク(ハザード比0.73, 95%信頼区間0.61 to 0.86)を減少させた。同様の結果は傾向スコア解析からも得られた。

結論:
 喫煙COPD患者において、バレニクリンおよびブプロピオンは、NRTと比較して心血管系イベント・抑うつや自傷のリスク増加とは関連していなかった。


by otowelt | 2017-10-05 00:19 | 呼吸器その他