カテゴリ:呼吸器その他( 246 )

男性において閉塞性睡眠時無呼吸は、冠動脈疾患だけでなく心不全に対しても独立した危険因子

睡眠時無呼吸は、肺高血圧と並んで
呼吸器内科医と循環器内科医の橋渡しをする疾患の1つである。

Prospective study of obstructive sleep apnea and incident coronary heart disease and heart failure. The Sleep Heart Health Study.
Circulation. 2010;122:352-60.


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は睡眠時無呼吸の9割を占めるとされ、
 睡眠中の上気道狭窄により無呼吸が起こる。睡眠時無呼吸が
 高血圧を引き起こすことは知られているが、最近は冠動脈疾患、
 心不全、脳卒中、糖尿病との関連も知られ始めている。

方法:
 アメリカの多施設共同大規模前向き試験。
 40歳以上の一般住民を対象とし、自宅でポリソムノグラフィーを測定、
 その後長期間の追跡調査をおこなった。
 対象は、冠動脈疾患および心不全のない男性1927例、女性2495例。
 被験者は自宅でポリソムノグラフィーを行い、無呼吸低呼吸指数(AHI)を
 計測した。(AHI:睡眠中1時間当たりの無呼吸および低呼吸の平均回数)
 AHIの値によって5未満、5~15未満、15~30未満、30以上の4群に分けて検討。

結果:
 中央値で8.7年(四分位範囲:7.7-9.3年)の追跡中
 473例の冠動脈疾患イベントが発生。内訳は死亡76例、AMI185例、
 PCI施行212例。性別、年齢によって層別解析すると、70歳以下の男性でAHIと
 関連が強く、70歳以下の男性では冠動脈疾患が180例発生し、補正した場合、
 AHIが10上昇するごとにHRが1.10増加。
 70歳以下の男性でAHI 30以上(n=116)では、AHI 5未満に比べて
 HRは1.68であった。
 心不全は、追跡期間中に308例発生し、そのうち144例は冠動脈疾患と重複。
 補正すると、男性ではAHIが10上昇するごとにHRが1.13増加。
 冠動脈疾患では70歳以上の男性で有意差が見られなかったのに対して、
 心不全では男性の年齢層にかかわらずAHIによる差が認められ

 AHI 5未満の群に比べたAHI 30以上の群のHRは、1.58。
 女性では冠動脈疾患と心不全のいずれについてもAHIと発生率の間に関連はなし。
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結論:
 男性において閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、冠動脈疾患だけでなく
 心不全に対しても独立した危険因子である。

by otowelt | 2010-07-28 16:42 | 呼吸器その他

胸腔穿刺時に超音波ガイダンスを用いると、気胸の発生リスクが7割減少

e0156318_2311243.jpg個人的には、リアルタイム超音波ガイド下で
おこなう穿刺は、本当に5~6mmくらい
の間隙スペースしか胸水がないときにしか
使っていない。患者さんの安全のためには
穿刺時にエコーを全例
用いるべきなのだろうか?

Pneumothorax Following Thoracentesis ;A Systematic Review and Meta-analysis.
Arch Intern Med. 2010;170(4):332-339.


背景:
 胸腔穿刺後気胸は、合併症リスクや死亡リスクを高め、入院期間を延ばす。
 修飾可能な危険因子が同定できれば、胸腔穿刺の安全性向上に利用
 できると考えられた。

方法:
 1966年1月1日から2009年4月1日までにMedlineに登録されたスタディから、
 10人以上の患者を登録し、胸腔穿刺後の気胸発生について報告した研究を選出。
 気胸発生率、気胸の危険因子、研究の方法論的な質に関するデータを抽出。
 気胸の危険因子候補は、患者側の要因と胸腔穿刺施行にかかわる要因に分別。
 患者要因として、性別、胸水量、多房性胸水、胸腔穿刺を受けた場所など。
 施行にかかわる要因としては、施行中の超音波ガイダンス、
 施行者の経験レベル、穿刺回数、診断目的か治療目的かといった情報を収集、
 気胸発生との関係を分析した。

結果:
 24の研究が条件を満たし、そのうち12件が方法論的な質は高いと判定。
 胸腔穿刺は6605件行われており、その後の気胸の発生は349件だった。
 個体では気胸の発生率は6.0%(95%CI4.6%-7.8%)で、
 そのうち34.1%が胸腔チューブの挿入を必要とした。
 超音波ガイダンスの使用は気胸リスクを有意に減少。
 使用した場合の気胸発生率は0.4%、使用しない場合は9.3%(p=0.001)、
 OR0.3(0.2-0.7)。
 経験豊富な医師の場合は3.9%、経験が少ない医師の場合は8.5%(p=0.04)。
 気胸は、診断目的の穿刺より、治療のための穿刺の後に発生しやすく
 (OR2.6、1.8-3.8)、より太い穿刺針またはカテーテルを用いた方が、
 より細い針を使用した場合より高リスクだった(OR2.5、1.1-6.0)。
 胸腔穿刺前後に咳、呼吸困難、胸痛のいずれかがあった患者では、
 気胸リスクが顕著に高かった(OR26.6、2.7-262.5)。
 胸腔内に空気の流入した場合の気胸リスクも高かった(OR104.0、2.0-5355.0)。
 また、人工呼吸管理患者でリスクが高い傾向が見られた(OR4.0、0.95-16.8)。
 穿刺回数が2回以上だった場合と1回だった場合を比較したところ、
 複数回の穿刺による気胸リスク上昇が(OR2.5、0.3-20.1)。

結論:
 医原性気胸は胸腔穿刺のよくみられる合併症であり、
 しばしばドレーン挿入を必要とする。
 リアルタイム超音波ガイダンスは気胸リスクを減少させる。
 治療目的の穿刺と人工呼吸管理下では気胸リスクを増大させる。
 経験豊かな医師による穿刺は気胸リスクを減少させる。

by otowelt | 2010-03-07 00:44 | 呼吸器その他

 冠動脈の側副血行路の発達が閉塞性睡眠時無呼吸の患者でみられる

OSASと心血管イベントは避けて通れないが、
側副血行路の論文はあまり目にしたことがなかった。

Expand+Occurrence of Coronary Collateral Vessels in Patients With Sleep Apnea and Total Coronary Occlusion
CHEST March 2010 vol. 137 no. 3 516-520


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA)は、冠動脈イベントのリスクファクターであると
 考えられている。
 間欠的な低酸素が心血管系に影響を及ぼしていると思われる。
 OSASは冠動脈閉塞のある患者において、側副血行路を発達させる
 可能性があると考えた。

方法:
 AHIによって分類された、34人の冠動脈閉塞のある患者を集めた。
 側副血行路はvisual analysisによってスコア化され、
 Cohen and Rentrop grading systemによって評価。

結果:
 年齢、性別、高血圧の存在、喫煙、糖尿病に関しては
 OSASとnon-OSASで明らかな違いはみられなかった。
 EFも差がみられなかった(EF 53% ± 20% vs 61% ± 20%, P = .29)。
 左室拡張期圧も変化なし(22.6 ± 8.5 mm Hg vs 18.5 ± 7.7 mm Hg, P = .41)。
 OSASは、non-OSASに比べてRentropが高かった
 (1.61 ± 1.2 vs 2.4 ± 0.7, P = .02).。
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結論:
 冠動脈の側副血行路の発達が閉塞性睡眠時無呼吸の患者でみられる。

by otowelt | 2010-03-06 15:17 | 呼吸器その他

慢性骨髄白血病の同胞間からの移植に際して、喫煙は全生存率を下げる


The effect of smoking on allogeneic transplant outcomes
Biol Blood Marrow Transplant 15:1277-1287, 2009


方法:
 国際血液・骨髄移植調査センターのデータを利用して、CML症例を対象
 とした非喫煙者(NS)と喫煙者(PCS:past or current smoker)の
 同種移植結果を比較。

 CMLの第一慢性期に2193例のNSと625例のPCSが、HLA一致の
 同胞または非血縁者ドナーからの移植を受けた。年10パック以内または
 1日1パック以下の喫煙歴がある者をlow dose smoking group、
 年10パック以上かつ1日1パック以上の喫煙歴がある者を
 high dose smoking groupと定義。

結果:
 同胞から移植を受けた患者を対象として多変量解析を行うと、
 再発リスクはNSよりもPCSの方が高率であった(RR=1.67、P=0.003)。
 5年間で痰変量解析するとhigh dose smoking group、NSのTRMは
 それぞれ50%、28%であった。また多変量解析を行うと再発率は
 1.57(P<0.001)であった。5年全生存率はNS 68%、
 low dose smoking group 62%、high dose smoking group 50%
 (P<0.001)であった。
 
結論:
 CMLの同胞間からの移植に際して、喫煙は全生存率を下げる。

by otowelt | 2010-02-04 13:11 | 呼吸器その他

CPAP治療最初の2週間のeszopicloneの併用は、CPAPアドヒアランスを上昇させる


睡眠時無呼吸症候群の治療で困るのが、CPAPのアドヒアランスの
悪さであり、呼吸器内科医であればイラっとすることもあると思う。
欧米の報告ではアドヒアランスは46~79%程度とされており、必ずしも高くない。
   Am J Respir Crit Care Med1999 ; 160 : 1124―1129.
   Am Rev Respir Dis 1993 ; 147 : 887―895.
   Sleep Med 2000 ; 1 : 209―214.


SASは、今では「AHIが5以上+日中の眠気」という定義なので
昔ほど覚えにくくはなくなった。
ポリソムノグラフィ+Epworth sleepiness scale(ESS)で診断するのが一般的。
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Pickwick症候群という病名は現在では使わず、
現在ではOSASとOHS(肥満低換気症候群)は分けて考えるべきである。
OHSは、明らかな閉塞がないのに日中の高CO2血症がみられるものを指す。


Ann Intern Medより、CPAP治療最初の2週間のeszopicloneの併用が
CPAPアドヒアランスを上昇させるとの報告が出た。
AHIが平均36.9と、重症のOSASが対象となっている。

Effects of a short course of eszopiclone on continuous positive airway pressure adherence: A randomized trial. Ann Intern Med 2009 Nov 17; 151:696.

背景:CPAPは、短期のアドヒアランスが長期使用におけるそれに非常に重要となる。

目的:
 非ベンゾジアゼピン系で超短時間型のeszopicloneを使用することにより
 プラセボに比べて、長期CPAPのアドヒアランスを改善させるかどうか検証。

デザイン:Parallel randomized, placebo-controlled trial。
 
患者:
 160人の成人(平均45.7歳)。平均AHI(apnea–hypopnea index)が
 36.9 events/h [SD, 23])の閉塞性睡眠時無呼吸とあらたに診断され
 CPAPを導入された患者。

方法:
 eszopiclone 3 mg (n = 76)あるいは、プラセボ(n = 78)
 を最初の14夜にCPAPに併用。1,3,6ヶ月後までフォローをおこなった。

結果:
 eszopiclone群では、20.8% (95% CI, 7.2%~34.4%; P=.003)だけ多く
 夜間CPAPを使用した(単位はnights)。
 全夜間で、1.3時間 (CI, 0.4~2.2 hours; P= .005)多かった。
 CPAPの中断は、プラセボでHR1.90 (CI, 1.1~3.4; P=.033)と多かった。

結論:
 プラセボと比べて、eszopicloneをCPAP導入最初の2週間に併用することによって
 CPAPアドヒランスが上昇する。


<メモ>
 閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome;OSAS)
 に対する持続的陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure;CPAP)
 の有用性はすでに確立しているが、中枢型睡眠時無呼吸症候群
 (Central sleep apnea syndrome;CSAS)に対する治療法はまだ確立していない。
 またOSAS に対しCPAP 療法の導入で、閉塞型無呼吸(Obstructive apnea;OA)
 が改善したが中枢型無呼吸(Central apnea;CA)は顕著化する症例の報告が
 近年増加し、これらの病態を、Complex sleep apnea syndrome(Comp SAS)
 と定義している。


 Complex sleep apnea syndrome

by otowelt | 2009-12-30 13:26 | 呼吸器その他

胸水中NT-proBNPは心原性胸水の診断に有用


心不全のマーカーとしてNT-ProBNPが知られるようになった。
これは、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメントの略であり
循環血液量の増加や心室壁へのストレスなど、心負荷の増大によって
proBNPが産生され、これが蛋白分解酵素により
NT-proBNPに分解されて血中に放出される。
NT-proBNPはBNPよりも変動幅がより大きく、
重症度の判断に役立つと言われている。
BNPよりも安定性が良好なので、信頼できるマーカーである。

CHESTより、胸水中のNT-proBNPについての論文が発表されていた。

Biomarkers of Heart Failure in Pleural Fluid
CHEST September 2009 vol. 136 no. 3 671-677


背景:
 胸水におけるBNP、NT-proBNP、ST2を心不全診断に使えるかどうか吟味。
 BNPとST2はすでに胸水中の心不全マーカーとして有用であるとわかっている。

方法:
 90人の心原性胸水、91人の非心原性胸水において3つのマーカーを測定。

結果:
 胸水中NT-pro-BNP, BNP, およびST2はAUCがそれぞれ
 0.96, 0.90、0.59であった。カットオフ値が1,300 と115 pg/mLにすることで
 NT-pro-BNPとBNPにおける弁別能が発揮できた。
 年齢や性別、クレアチニン値でNT-proBNPの値は変動しなかった。
 Light基準を用いた滲出性胸水と誤診された患者においても、
 NT-proBNPとBNPはそれらを正しく区別できた。

結論:
 胸水におけるNT-pro-BNP値は心原性胸水の診断に非常に有用である。
 Light基準を用いるよりも、こちらの方がよい。
 ST2については心不全の診断を胸水からおこなうことはできないと考えられる。

by otowelt | 2009-09-15 09:26 | 呼吸器その他