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慢性好酸球性肺炎

4月からCEPの患者が続けて4例いたので、まとめてみた。


●慢性好酸球性肺炎の分類
 特発性好酸球性肺炎(IEP)は歴史的にはLöffler によりLöffler症候群と記載され、
 Croftonにより単純性好酸球性肺炎と遷延性好酸球性肺炎と、
 そしてReederとGoodrichによりPIE 症候群と称されてきた。
 1969 年にLiebow とCarrington は、好酸球性肺炎を肺への好酸球の浸潤
 であり、末梢血の好酸球増多を伴う場合も伴わない場合もあると定義した。
 近年IEP は慢性好酸球性肺炎(CEP)、急性好酸球性肺炎(AEP)、
 単純性好酸球性肺炎と分類されている。
Eosinophilic lung diseases. Am J Respr Crit Care Med 1994 ; 150 : 1423―1438.

●AEPとCEPの違い
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●CEPとは
 慢性好酸球性肺炎(CEP)は、1969年にCarringtonらが提唱した疾患概念。
 1952年にReederらの提唱したPIE症候群からわけて考えるようになった。
                    NEJM, 280: 787-798, 1969.

●CEPの疫学
 中年女性に多い傾向にあるが、報告例はさまざま。平均年齢は40~50代が多い。
 アレルギー疾患の既往を持っていることが多い。
 季節との関連性はないが、喘息合併の影響もあるためか4~5月に多い。

●CEPの症状
 咳嗽、発熱、喀痰、呼吸困難、喘鳴、胸痛、盗汗、体重減少などが出現する。
 Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988; 67:154.
 過去の喘息、引き続き喘息症状が出るなど、喘息と関連することが50%で認められる。
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia and asthma: how do they influence each other?  Eur Respir J 2003; 22:8.

●CEPの診断
1.外科的生検でCEPと診断
2.BALFあるいは末梢血好酸球が30%以上
3.a) TBLBで好酸球が多い
  b) BALF好酸球が10%以上
  c) 末梢血好酸球が6%以上
  a)、b)、c)のうち2つ以上を満たす

●CEPの検査所見
・血液検査
 末梢血好酸球増加、白血球増加、CRP上昇、IgE高値
 (5~10%に好酸球増加のないものもある)
 赤沈亢進、鉄欠乏性貧血、血小板増加
Diagnostic problems in chronic eosinophilic pneumonia. J Int Med Res 1997; 25:196.

・気管支鏡
 BALF中の好酸球増加は必要所見、40%以上になることが多い
Diagnostic problems in chronic eosinophilic pneumonia. J Int Med Res 1997; 25:196.
 BALF中の好酸球は平均58%
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia. A clinical and follow-up study of 62 cases. Medicine (Baltimore) 1998; 77:299.
 BALF中の好酸球は、過分葉していることが多い
 CD4/8比は2.5前後

・呼吸機能検査  閉塞性換気障害パターンが多い

・画像検査
 胸部レントゲン:photographic negative of pulmonary edema (50%以下)
Peripheral opacities in chronic eosinophilic pneumonia: the photographic negative of pulmonary edema. AJR Am J Roentgenol 1977; 128:1.
 CT:スリガラス影>浸潤影
   中間層気管支に直交する帯状影、curve-linear shadow(25%)
   air bronchogram (半数以上)、胸水貯留(20%)

 CEPのHRCTの特徴(『HRCT of the lung』より)
 1.浸潤影(consolidation)が肺末梢側に斑状にみられる。
 2.肺末梢側あるいは斑状のスリガラス影、時にcrazy paving
 3.線状陰影
 4.上葉優位にみられる陰影
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●CEPの病理
・典型的には好酸球とリンパ球の肺胞隔壁や間質への集簇で
 半数の例で間質の線維化を認めている。
Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988 ; 67 : 154―162.
Eosinophilic pneumonia. In : Hasleton PS, ed. Spencer’s pathology of the lung. 5th ed. New York : McGraw-Hill, 1996 ; 450―453.

・器質化肺炎像や好酸球性膿瘍をときに認め、少数例で非乾酪性肉芽腫を認める。

●CEPの治療
 10%は無治療でも軽快する
 再発が多い
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia. A clinical and follow-up study of 62 cases. Medicine (Baltimore) 1998; 77:299.
 ・ステロイド
  40~60mgのプレドニゾロンで2週間始める。
  その後、半分ずつ減量しさらに8週間続ける
 結局、初期治療は平均19か月続くという報告もある
  Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988; 67:154.
 ・吸入ステロイドが効果があるという報告もある

文責="倉原優"

by otowelt | 2009-06-30 12:00 | レクチャー

C型肝炎感染患者は冠動脈疾患リスクが高い


HCV感染は、従来の冠動脈疾患リスクはむしろ少ない傾向にあるのだが、
冠動脈疾患のリスクそのものはやはり高い傾向にあるようだ。

Hepatitis C Virus Infection and the Risk of Coronary Disease
Clinical Infectious Diseases 2009;49:225–232


背景:
 C型肝炎ウイルス(HCV)感染と冠動脈疾患(CAD)の関係は諸説ある。
 本研究では、この関係を明らかにした。

方法:
 Veterans AffairsにおけるすべてのHCV患者における後ろ向き研究である。
 HCV感染と非感染群にわけてstudyを組んだ。

結果:
 82083人のHCV感染患者と89582人の非感染患者を登録。
 HCV感染患者は、高血圧罹患が少なく、高脂血症・糖尿病も少なかった。
 しかしながら、アルコール飲用と薬物乱用、腎不全、貧血などは非感染群に
 比べて多かった。HCV感染におけるコレステロール値は
 (175 ± 40.8 mg/dL vs. 198 ± 41.0 mg/dL)と有意に低く、また
  low‐density lipoprotein cholesterolも同様
 (102 ± 36.8 mg/dL vs. 119 ± 38.2 mg/dL)であった。
 TGは(144 ± 119 mg/dL vs. 179 ± 151 mg/dL)であった。
 HCV感染は冠動脈疾患と関連性があった(HR 1.25; 95%CI 1.20–1.30)。
 
結論:
 HCV感染患者は、脂質レベルが低く、高血圧罹患も少ない。
 望ましいリスクプロファイルではあるのだが、冠動脈疾患のリスクと
 相関がみられた。

by otowelt | 2009-06-30 08:40 | 感染症全般

COPD合併肺癌患者に対する術前チオトロピウム投与は呼吸器症状、肺機能を有意に改善


肺癌とCOPDは喫煙という共通のリスクを持つ疾患である。
チオトロピウム(スピリーバ)の術前使用についての論文。

Preoperative use of inhaled tiotropium in lung cancer patients with untreated COPD.
Respirology 2009 May 19


背景:
 COPD合併肺癌患者は手術リスクが高い。長時間作用型気管支拡張薬
 チオトロピウムは、COPDの維持療法に用いられているが、
 周術期における効果については明らかにされていない。

方法:
 COPDを合併する原発性肺癌患者で手術を施行した102例のカルテで
 後方視的検討を行った。未治療の軽症~重症COPDをもち、
 術前にチオトロピウムを投与した肺癌患者は21例で、チオトロピウム開始2週前、
 2週後および手術施行3か月後にスパイロメトリーを実施した。

結果:
 術前2週間のチオトロピウム投与は、呼吸器症状および肺機能を有意に改善
 〔FVC:治療前中央値3.43L→治療後3.52L、FEV(1):2.06L→2.32L
 FEV(1)%:73.2%→81.0%;いずれもp<0.001〕。
 術後FEV(1)%は中央値56.0%(4分位範囲51.6-60.3)から
 63.4%(60.8-66.0)に有意に増加した(p<0.001)。FEV(1)の増加は
 COPDの重症度と負の相関を示した(r=-0.59、p<0.005)。
 
結論:
 COPDを合併する肺癌患者に対する術前チオトロピウム投与は、
 手術を行ないやすくし、肺治癒切除の必要なCOPD患者にとっても有利である。

by otowelt | 2009-06-29 21:22 | 気管支喘息・COPD

BALF中ヘモジデリン貪食マクロファージ20%以上は、DADの予後不良


Haemosiderin-laden macrophages in the bronchoalveolar lavage fluid of patients with diffuse alveolar damage
Eur Respir J 2009; 33:1361-1366


背景:
 BALFにおけるヘモジデリン貪食マクロファージは、びまん性肺胞出血の 
 診断に利用されるが、DADの評価には使われていない。
 この試験では、外科的肺生検で診断のついた21人のDAD患者からBALFを採取。

結果:
 21人の平均年齢は68歳。14人 (67%) が男性で12人 (57%)が免疫不全。
 BALFにおけるヘモジデリン貪食マクロファージは平均5%(0–90%)であるが、
 7人の患者では20%以上であった。これはびまん性肺胞出血の診断に使用される
 カットオフ値である。この20%以上のヘモジデリン貪食マクロファージが
 BALFでみられる患者は予後不良で死亡率が高かった。(p = 0.047)

結論:
 呼吸不全患者で20%以上のヘモジデリン貪食マクロファージがBALFでみられる
 場合、肺胞出血でなければDADの可能性もあり、この場合DADだと死亡率は高い。

by otowelt | 2009-06-24 14:22 | 気管支鏡

NSCLCへのpemetrexed/carboplatinはgemcitabine/carboplatinと同等のQOL、生存期間


個人的にも、心膜にゴリゴリadenocarcinomaがある患者さんに
CBDCA+MTAを使おうとしている。
中皮腫の可能性を頭の片隅に入れているのもあるが・・・。

Phase III study by the Norwegian Lung Cancer Study Group:pemetrexed plus carboplatin compared with gemcitabine plus carboplatin as first-line chemotherapy in advanced non-small-cell lung cancer.
JCO Early Release, published online ahead of print May 11 2009
Journal of Clinical Oncology, 10.1200/JCO.2008.20.9114


方法:
 進行非小細胞肺癌のファーストラインとして、
 pemetrexed/carboplatinを標準的レジメンと比較する第III相試験を実施。
 Stage IIIB~IV NSCLCでPS 0~2の患者を
 pemetrexed 500mg/m(2)+carboplatin AUC=5、day 1、3週毎または
 gemcitabine 1,000mg/m(2)、day 1、8+carboplatin AUC=5、day 1、3週毎
 に無作為に割りつけ、4サイクル投与した。プライマリエンドポイントは、
 最初の20週間における健康関連QOL(HRQoL)で、EORTCのQOL質問票C30
 および肺癌用の質問票LC13を用いて、全般的QOL、悪心・嘔吐、呼吸困難
 および疲労について評価した。セカンダリエンドポイントは全生存期間と毒性。

結果:
 2005年4月~2006年7月に436例を登録。
 ベースラインのQOL質問票のすべてに回答した患者(n=427)をHRQoLの
 解析対象とし、化学療法を1サイクル以上施行した患者(n=423)を
 毒性の解析対象とした。HRQoL質問票に対するコンプライアンスは87%。
 プライマリエンドポイントのHRQoLおよび全生存期間は2アーム間で有意差はなし
 (pemetrexed/carboplatin 7.3か月、gemcitabine/carboplatin 7.0か月;p=0.63)。 
 Gemcitabine/carboplatinアームではpemetrexed/carboplatinアームに比べて
 白血球減少(46%対23%;p<0.001)、好中球減少(51%対40%;p=0.024)、
 血小板減少(56%対24%;p<0.001)などgrade 3~4の血液毒性が多くみられた。
 Gemcitabine/carboplatinアームでは赤血球および血小板輸血を要した患者が
 多かったが、好中球減少を伴う感染および血小板減少性の出血の頻度は同等。
 Pemetrexed/carboplatinはgemcitabine/carboplatinと比較した場合、
 HRQoLと生存期間は同等だったが、血液毒性および支持療法必要性が少なかった。

結論:
 進行NSCLCにpemetrexed/carboplatinはgemcitabine/carboplatinと
 同等のQOL、生存期間であった。
 血液毒性が少ないのが利点。

by otowelt | 2009-06-22 23:29 | 肺癌・その他腫瘍

院内携帯機器(PHSなど)は9~25%に病原菌に汚染されている


院内のPHSも、9~25%で汚染されている。
そんなことを示唆する論文。

Review of mobile communication devices as potential reservoirs of nosocomial pathogens
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 295-300


背景:
 通信技術の発達は、日常的な医療情報を伝達するスピードと質の改善を
 もたらした。携帯通信機器の細菌汚染は、感染対策にかかわる重要な問題
 であり、交差汚染の減少を図るため重要である。

概論:
 携帯通信機器の細菌汚染について報告した最近の研究を調べたところ、
 大半は携帯通信機器の9%から25%が病原性細菌で汚染されていた。
 汚染リスク減少のための推奨事項は、職員教育、厳格な手指衛生、
 機器洗浄のガイドライン、および手術室、集中治療室、熱傷集中治療室など
 の特定の高リスク区域における携帯電話の使用制限の検討などである。
 携帯通信機器の汚染に対するこれらの介入の効果を評価して、
 機器の汚染とそれに続く患者の感染との関係の有無を解明するためには、
 さらなる研究が必要である。

by otowelt | 2009-06-17 00:08 | 感染症全般

Tovok(BIBW2992)、PF-00299804

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肺癌の分野で少し注目を浴びている
薬剤に、Tovokがある。

Tovokは、EGFR(上皮細胞成長
因子受容体)とHER2
(ヒト上皮細胞成長因子受容体2)の
2つのチロシンキナーゼを不可逆的に
阻害する薬剤(コードネームBIBW 2992)であり、EGFR変異を有する
非小細胞肺癌(NSCLC)腺癌患者のセカンドラインとして有効であることが、
LUX-Lung2試験というphaseII試験で明らかになった。

National Taiwan University Hospitalから、J. Shih・C-H. Yangの
両氏がASCOで発表した。

EGFR変異を有する患者群でのセカンドラインとして検討されたものだが、
67人のうち、PRは43人(64%)、SDは21人(31%)、PDが3人(4%)、
RRは64%(95%CI 52-76%)、DCRは96%(95%CI 87-99%)。
PFS中央値は10.2カ月(95%CI 7.5-17.7カ月)で、
40人の患者では現在も治療を継続しており、治療期間は最長で18.8カ月。

1st-lineで分子標的薬を入れるスタディも出てきているし
(IPASS、WJ3405・・・)
その時その時のエビデンスとしては有用かもしれないが
「抗癌剤選択の順序」というのが肺癌領域で今後議論を呼ぶかもしれない。

現場の我々としても混乱するところではある。
もう最初からイレッサを使うのか、というのは悩ましいところである。


なお、ASCOではほかの分子標的薬として
PF-00299804も有用性が発表されている。
セカンドラインNSCLCにHER-1、HER-2、HER-4の小分子阻害剤である
PF-00299804を経口投与するものだ。

by otowelt | 2009-06-16 13:16 | 肺癌・その他腫瘍

CRBSI 2009ガイドライン


IDSAから、カテーテル関連感染症(CRBSI)の2009年ガイドラインが発表された。
最初の3ページに38項目のexecutive summaryがあるので
必読だと思われる。
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1.カテーテル培養はCRBSIを疑ってカテーテルを抜去した場合に行う。
 カテーテル培養はルーチンに行うべきではない。(A-II)
2.カテーテル先端の定性培養は推奨されない。(A-II)
3.中心静脈カテーテルは、皮下の部分ではなく
 むしろカテーテル先端を培養に提出すべき(A-II)。
4.抗菌カテーテルの先端培養では、培地に特異的な阻害薬を使用すべきである。(A-II)
5.カテーテル先端の半定量培養で15CFU以上陽性、または定量培養で
 10の2乗以上陽性ならば、カテーテルへのcolonizationを意味する。(A-I)
6.カテーテル感染を疑った場合、カテーテル刺入部に浸出液があれば
 検体を培養とグラム染色に提出する。(B-III)
7.短期的カテーテルの先端培養はロールプレート法が臨床微生物検査に推奨。(A-II)
8.肺動脈カテーテル感染疑いの場合、イントロデューサー先端を培養に提出。(A-II)
9.刺入部の培養とカテーテルハブの半定量培養で同微生物が15CFU未満なら、
 カテーテルは血流感染源でないことを強く示唆する。(A-II)
10.静脈皮下ポートをCRBSI疑いで抜去した場合、カテーテル先端の培養に加えて
 ポートのリザーバー内容物を定性培養に提出すべき。(B-II)
11.抗菌薬治療前に血液培養検体を採取すべきである。(A-I)
12.可能であれば,血液検体はphlebotomy teamが行うべきである。(A-II)
13.皮膚から採血する場合の皮膚消毒は注意して行う。
 アルコールまたはヨード、アルコール性クロルヘキシジン(0.5%以上)で
 消毒して、血液培養のコンタミネーションを防ぐために
 皮膚への接触時間および乾燥時間をしっかりとるべき。(A-I)
14.カテーテルから採血する場合、カテーテルハブをアルコールまたは
 ヨードまたはアルコール性クロルヘキシジン(0.5%以上)で消毒し
 血液培養のコンタミネーションを避けるためにしっかり乾燥させる。(A-I)
15.CRBSI疑いの際、抗菌薬投与前にカテーテルと末梢静脈から2セットの
 血液培養を採取し、ボトルにはどこから検体を採取したかがわかるように
 マークをつけておく。(A-II)
16.血液検体が末梢静脈から採取できない場合、異なるカテーテルルーメンから
 2セット以上の血液培養を採取することが奨められる。(B-III)
17.CRBSIの確定診断には、少なくとも1セットの皮膚から採血した血液培養と
 カテーテル先端培養から同微生物が検出されることが必須。(A-I)
 あるいは2つの血液検体で、定量の血液培養または陽性になるまでの時間差
 (DTP:differential time to positivity)のCRBSIの基準を満たして
 確定診断することも可能である。(A-II)
 2つのカテーテルルーメンから採血して、血液培養を定量培養で
 1つのルーメンからのコロニー数が他方の3倍以上であれば、 
 おそらくCRBSIを示唆する。(B-II)
18.定量の血液培養については、カテーテルハブから採取した血液から
 検出される微生物のコロニー数が、末梢血液からのコロニー数の3倍以上で
 CRBSIの確定診断とする。(A-II)
19.DTPについては、カテーテルハブから採取した血液検体の方が、
 末梢から採取された血液検体よりも少なくとも2時間以上早く陽性に
 なることをもってCRBSI確定診断とする。(A-II)
20.定量血液培養またはDTPについてはボトルの血液量は同じ量にする。(A-II)
21.CRBSI治療終了後にルーチンに血液培養を採取するべきかどうかは
 エビデンスは不十分である。(C-III)
22.抗菌薬の治療期間について表記する際。血液培養が陰性化した日をもって
 day1とする。(C-III)
23.バンコマイシンは、医療機関関連の状況でMRSAの頻度が高い場合は
 エンピリック治療として推奨される。MRSAでバンコマイシンのMICが
 2μg/mlを超えるものが多ければ、ダプトマイシンのような代替薬が推奨。(A-II)
24.リネゾリドはエンピリック治療では使用すべきではない。(A-I)
25.グラム陰性桿菌をエンピリックにカバーするべきかどうかは、
 地域の抗菌薬感受性率や重症度による。(A-II)
26.CRBSIを疑った患者で、好中球減少患者や重症敗血症患者、多剤耐性菌が定着
 している場合、de-escalationができるまでは、緑膿菌のような
 多剤耐性グラム陰性桿菌に対してエンピリックに併用療法は行うべき。(A-II)
27.大腿にカテーテルが入っているCRBSI疑い患者が重症な場合には
 グラム陽性菌のカバーに加えて、エンピリックにグラム陰性桿菌とカンジダ
 についてもカバーすべき。(A-II)
28.septicな患者でカテーテル関連カンジダ血症を疑って
 エンピリックに治療するべきかどうかは、以下のリスクファクターがあれば行う。
 すなわち、TPN、広域抗菌薬を長期間使用、血液悪性腫瘍、
 骨髄移植または固形臓器移植後、大腿カテーテル、カンジダ属が多部位に定着。(B-II)
29.カテーテル関連カンジダ血症を疑ってエンピリックに治療する場合、
 エキノキャンディンを用いる。フルコナゾールでよい場合もある。(A-II)
 フルコナゾールが使用できる患者は、3ヶ月以内にアゾール系薬剤の投与歴がない、
 Candida kruseiまたはCandida glabrataのリスクが低い医療期間。(A-III)
30.抗菌薬ロック療法はカテーテルを残す場合には用いるべき。(B-II)
 しかしながら、この場合抗菌薬ロック療法が使用できなければ
 定着したカテーテルから全身抗菌薬を投与するべきである。(C-III)
31.カテーテルを除去しても真菌血症または菌血症が持続する場合(72時間以上)、
 4~6週間の治療が推奨。感染性心内膜炎や化膿性血栓性静脈炎があると
 わかった患者や小児の骨髄炎患者でも4潤オ6週間の治療が推奨される。
 成人の骨髄炎治療では6~8週間治療が推奨。(A-II)
32.CRBSI患者で、次のうちどれかがあれば長期的カテーテルを抜去すべき。
 すなわち、重症敗血症、化膿性血栓性静脈炎、IE、
 有効な抗菌薬を投与しても72時間以上血流感染が持続する場合、
 黄色ブドウ球菌感染、緑膿菌感染、真菌感染、抗酸菌感染。(A-II)
 CRBSI患者の短期的カテーテルは、グラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌、
 腸球菌、真菌、抗酸菌の場合に抜去すべき。(A-II)
33.CRBSI患者でカテーテルを残そうとする時には、追加の血液培養
 (定められた日に2セット;新生児であれば,1セットでもOK)を採取、
 もしそれが有効な抗菌薬を投与して72時間以上陽性が続く場合、
 カテーテルは抜去するべきである(B-II)
34.除去することが難しいような病原性が低い微生物(Bacillus属、
 Micrococcus属,Propionibacteria)によるCRBSIでは、
 血液培養のコンタミネーションを除外した後に、一般的には長期的・短期的
 カテーテルともに抜去すべき。(B-III)
35.合併症のないCRBSIで、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、Bacillus属、
 Micrococcus属、Propionibacteria、真菌、抗酸菌以外の病原体による
 長期的カテーテルの感染の場合、長期の血管内アクセスが生存のために必要
 であるために、カテーテル抜去せずに治療を行うべき。
 この場合は、全身抗菌薬投与、抗菌薬ロック療法を行う。(B-II)
36.CRBSIを示唆するような血液培養陽性結果が報告されたら、
 自動的に標準治療の助言がなされるようなシステムを構築すれば
 IDSAガイドラインの遵守率が改善する。(B-II)
37.ウロキナーゼ、その他線溶系薬剤はCRBSI患者の補助療法
 としては推奨されない。(B-I)
38.カテーテルが留置されている患者で、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が
 血液培養1セットだけ陽性になった場合には、真の血流感染かどうか
 カテーテルが感染源かどうかを確かめる必要がある。(A-II)

by otowelt | 2009-06-14 14:49 | 感染症全般

多剤耐性結核(MDRTB)に対するジアリルキノリン TMC207


TMC207についてNEJMに載っていた。
多剤耐性結核は、あまり予後がよくない。
サイクロセリンいやだとか、結構コンプライアンス悪い人が多い印象がある。


TMC207は結核菌体のATP合成酵素の活性阻害を標的とする作用機序
を有する候補化合物で、Johnson & Johnson社が臨床試験中だった。
TMC207は投薬用量依存的ではなく活性濃度の保持時間(Time Above MIC)
依存性を示す特異な性質を有する化合物で、結核菌のみならずMACを含む
幅広い非結核性抗酸菌種に対しても強力な殺菌活性を示す。このため、
将来の非結核性抗酸菌症の治療で中心的役割を果たす新薬として期待されている。
A diarylquinoline drug active on the ATP synthase of Mycobacterium tuberculosis. Science 307: 223-227, 2005.

ただし、TMC207の体内動態は宿主のP450系isoenzymeによって
影響を受けるため、同酵素系を強力に誘導するRFPと併用することができない。
したがって、臨床応用の範囲はRFPとINHが適用不可能なMDR-TB、XDR-TB、
およびHansen病、非結核性抗酸菌症に限定される可能性が高い。
Combination of R207910 with drugs used to treat Multidrug-resistant Tuberculosis have the potential to shorten treatment duration. Antimicrob Agents Chemother 50: 3543-3547, 2006.

今回のNEJMはそのTMC207について。

The Diarylquinoline TMC207 for Multidrug-Resistant Tuberculosis
N Engl J Med 2009;360:2397-405.


背景:
 ジアリルキノリンTMC207 は、結核菌ATP 合成酵素を阻害するという
 新たな抗結核作用をもつ。in vitro で薬剤感受性・薬剤耐性の結核菌を
 強力に阻害、薬剤感受性の肺結核患者において殺菌作用を示す。

方法:
 2段階の無作為化比較第2 相試験の第1 段階として、新規多剤耐性肺結核患者
 47例を、TMC207 群(400mg/日を2週間投与した後、
 200mg/日を週に3回,6週間投与)(23 例)と、プラセボ群(24 例)の
 いずれかに無作為に割り付けた。
 いずれも第 2 選択薬 5 剤から成る標準的な多剤耐性結核治療レジメンを併用。
 プライマリエンドポイントは、液体培地において喀痰培養が陰性へ転換すること。

結果:
 TMC207群では、プラセボ群に比べ、喀痰培養陰転までの期間が短く
 (HR11.8,95%CI 2.3~61.3,Cox P=0.003)、培養陰転のみられた
 患者の割合が高かった(48% VS 9%)。
 喀痰中コロニー形成単位の常用対数平均値は、TMC207 群のほうが速やかに低下。
 有害事象の多くは軽度~中等度であり、悪心のみがTMC207 群でプラセボ群より
 有意に高頻度にみられた(26% VS 4%,P=0.04)。

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結論:
 TMC207は、結核治療の選択肢となりうる。

by otowelt | 2009-06-09 13:46 | 抗酸菌感染症

ED-SCLCにおいてCDDP+CPT-11はCDDP+VP-16より優れていない:SWOG0124試験


日本のED小細胞肺癌の化学療法のファーストチョイスは
CDDP+CPT-11が主流である。
欧米のCDDP+VP-16と何で違うのかと言われれば、
JCOG9511試験で、CPT-11の方がMSTが優位だったためである。
N Engl J Med 346: 85, 2002
国民性・・・という議論で片づけてよいのかどうかはわからないが
まぁとにかくそういうことになってしまっているのが現状である。

Phase III Trial of Irinotecan/Cisplatin Compared With
Etoposide/Cisplatin in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer:
Clinical and Pharmacogenomic Results From SWOG S0124
J Clin Oncol 27:2530-2535 2009


方法:
 対象は未治療ED-SCLC 症例で、PS 0-1、脳転移のない症例。
 治療内容は、JCOG9511 と同じレジメン。
 IP群:イリノテカン(60mg/m2、day 1, 8, 15)
        +シスプラチン(60mg/m2、day 1)の4 週間毎(4 サイクル)
 EP群:エトポシド(100mg/m2 、day 1, 2, 3)
        +シスプラチン(80mg/m2、day 1)の3 週間毎(4 サイクル)
 プラマリエンドポイントは、OS。セカンダリエンドポイントとして、
 イリノテカン・プラチナ製剤の薬理ゲノミクスも検討。

結果:
 671 例がランダム化され、両群にバランスよく割り付けられた。
 IP 群のRRは60%(EP 群:57%)、
 PFSは5.7 ヵ月(EP 群:5.2 ヵ月、p=0.07)であり、IP 群が成績良好な
 傾向を認めたが、プライマリエンドポイントであるOSに有意差はなく、
 MST は9.1 ヵ月(EP群: 9.9 ヵ月、p=0.71)であった。
 Grade 3/4 の有害事象については、予測されていた通り
 IP 群で下痢が19% とEP群(3%)より高頻度に出現し、
 好中球減少34%(EP 群: 68%)、血小板減少4.5%(EP 群: 15%)、
 貧血6%(EP 群: 12%)についてはEP群で多くみられた。

 ABCB1 T/T の遺伝子型は下痢や好中球減少を生じやすく
 (それぞれOR:3.9、5.0)、
 またUGT1A1 A/A の遺伝子型も好中球減少および下痢を生じやすい
 ことがわかった(OR : 7.6)。

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結論:
 JCOG9511 で示されたIP 療法の有用性を証明することができなかった。
 
考察:
・筆者の意見
 JCOG9511 では少人数で偶然有意差が得られて途中有効中止となった可能性。
 イリノテカン代謝に関わる人種間での薬理ゲノミクスの違いがあるかもしれない。


でも、この結果を非劣性ととれば、CDDP+CPT-11も
ファーストラインの選択肢に入るのでは??

by otowelt | 2009-06-08 13:28 | 肺癌・その他腫瘍