<   2010年 08月 ( 33 )   > この月の画像一覧

神経内分泌マーカー

小細胞癌や神経内分泌大細胞癌、カルチノイドを理解する上で、
免疫組織化学的神経内分泌マーカーを知っておくことは必要である。

<神経内分泌マーカー>
・Chromogranin A(CgA)
 CgAは439のアミノ酸から形成される内分泌顆粒の成分である。
 そのため、腫瘍細胞に神経内分泌化があった場合でも
 内分泌顆粒が少ないと偽陰性になることを覚えておく必要がある。
 小細胞肺癌では20%程度の陽性率とされている。
 ちなみに、Chromogranin BはCgAと同じくgraninファミリーで
 神経内分泌腫瘍でCgAよりも高い頻度で陽性を示すとされているが
 コマーシャルベースではない。
          Semin Diagn Pathol 2000, 17: 194-203
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・Synaptophisin
 神経内分泌細胞のシナプス小胞様空胞に局在しているとされている。
 このマーカーは内分泌顆粒が少なくとも陽性を示すことが多い。
 低分化の内分泌細胞癌を診る場合には、CgAよりもこちらのほうが適している。
 すなわち、CgAを補完するマーカーとして有用であるとされている。
 しかしながら、CgAにくらべて特異度が低い。
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・Synaptic cesicle protein 2(SV2)
 シナプス小胞膜の糖タンパクとして見出され、神経内分泌マーカーとして
 有用性が報告されている。内分泌顆粒が多い神経内分泌腫瘍では
 CgA、Synaptophysinと同様の反応がみられるが、特に
 後腸系カルチノイドでも強陽性がみられる。
          Am J Pathol 2000, 157: 1299-1309
・Protein gene product (PGP9.5)
 ユビキチン関連可溶性タンパクの1つで、cytosolに局在する。
 特異度はさほどでもなく、NSCLCでも比較的高率に陽性を示す。

・Neural cell adhesion molecule(NCAM;CD56)
 NCAMは免疫グロブリンファミリーの接着タンパクの1つである。
 肺の神経内分泌腫瘍において、感度がかなり高いとされている。
 しかし、腎尿細管上皮、甲状腺濾胞細胞上皮、横紋筋肉腫なども陽性
 になることがある。PSA-NCAMの有用性が最近報告されており、
 これは低分化型の神経内分泌腫瘍にかなりの感度を誇る。
          Am J Surg Pathol 1998,22:1267-1276
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・Thyroid transcription factor-1(TTF-1)
 TTF-1は甲状腺と肺の発生に関与する転写分子である。肺腺癌のほか、
 カルチノイド、小細胞癌、大細胞神経内分泌癌で陽性になる。
 ただし、肺扁平上皮癌、basaloid typeの大細胞癌では陰性である。
 また消化管の神経内分泌癌でも陰性である。
 肺以外の小細胞癌の発生でも陽性になるため、発生部位の鑑別にはならない。
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・Leu 7 (CD57)
 抗Leu7抗体はある種の内分泌顆粒構成タンパクとも反応し、小細胞肺癌、
 褐色細胞腫などの神経内分泌腫瘍にも陽性となる。
 しかし、感度・特異度ともにさほどでもない。

・Neuron-specific enolase(NSE)
 NSEは感度の高いマーカーとして知られている。
 特異度は低いが、感度の点から、漏れをなくすという意味では
 かなり有用とされている。 
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by otowelt | 2010-08-30 18:55 | 肺癌・その他腫瘍

SUN1087試験:NSCLCにおけるスニチニブ+エルロチニブでPFS改善

ALK阻害薬:クリゾチニブの商品化に力を注いでいるファイザーから
スニチニブ関連の臨床試験の報告が発表された。
スニチニブはGISTとRCCにおいて日本でも使用されている。
マルチプルキナーゼ阻害薬であり、PDGFRキナーゼ、VEGFRキナーゼ、
KITキナーゼを阻害する。

http://www.pfizer.com/home/

ファイザーは2010年8月23日、前治療のある進行NSCLCを
対象とするSUN1087試験(第III相)で、スニチニブ(スーテント)と
エルロチニブ(タルセバ)を併用することによって、エルロチニブ単剤と比べ
PFSを有意に改善したことを発表した。しかしながら、OSに変化はなかった。

サブグループ解析は10月のESMOまでにおこなわれる見通し。
これによって、今後のスタディやコマーシャル方針が決まる。

スーテントが肺癌領域で常識的になるかどうかはわからないが、
副作用として手足症候群、左心不全、出血傾向、高血圧、浮腫、体重増加などは
知っておきたいところである。

by otowelt | 2010-08-30 12:38 | 肺癌・その他腫瘍

プロカルシトニンに基づいたICU抗菌薬使用アルゴリズムは、死亡率は変えないが抗菌薬曝露を減らす

プロカルシトニンを使用したアルゴリズム診療によって
抗菌薬曝露期間は減少することができたが、死亡率は差がみられなかったという
PRORATA試験が記憶に新しい。
Crit Care Medより、プロカルシトニンを使用したアルゴリズムに基づく
抗菌薬使用におけるメタアナリシスが出た。

Procalcitonin-guided algorithms of antibiotic therapy in the intensive care unit: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Crit Care Med 2010; 38:DOI: 10.1097/CCM.0b013e3181f17bf9


以下の7つのRCTがメタアナリシスにエントリーした。
1.Lancet2010; 375:463–474(PRORATA試験)
2.Eur Respir J 2009; 34:1364–1375
3.Crit Care2009; 13:R83
4.Langenbecks Arch Surg 2009; 394:221–226
5.Am J Respir Crit Care Med 2008; 177:498–505
6.Hepatogastroenterology2007; 54:359–363
7.Neonatology 2010;97:165–174


forest plotはバラつきがなく、全てが同じような分布であった。
結論としては、やはり抗菌薬曝露期間は減少することができるが
死亡率そのものを減少させることはできないようだ。
ただ、このアルゴリズムそのものが妥当かどうかを今後検証していく必要がある。
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by otowelt | 2010-08-30 07:22 | 感染症全般

外傷患者におけるAcinetobacter baumanniiのリスク

Acinetobacter baumanniiのスタディは2010年には数多く発表されると
思われるが、このスタディでは、結果的には一番大事なOSには差が出なかった。
まぁ、大事な耐性菌であることは知っておかねばならない。

The impact of Acinetobacter baumannii infections on outcome in trauma patients: A matched cohort study
Crit Care Med 2010, 11; DOI: 10.1097/CCM.0b013e3181f17af4


目的:Acinetobacter baumannii感染の外傷患者おける関与を検証。

デザイン:レトロスペクティブ1:2マッチコホート試験。

患者:
 レベルI外傷でICUに入った患者において、A.baumannii感染がみられたものを登録。
 31人のA. baumannii患者に加えて、62人の他の細菌感染がみられた患者を
 コントロールとした。

方法および結果:
 12の基準をもうけた。すなわち、感染巣の有無や、重症度、外傷の性状などである。
 院内死亡率とICU在室日数、A.baumanniiを含む耐性菌による合併症を
 コントロールと比較した。両群とも81%がHAP、13%がBSI、6%がUTIを有していた。
 A.baumanniiは、多剤耐性が42% (13/31) であった。
 初期段階での経験的抗菌薬使用は71%で適切であった。
 院内死亡率はA. baumannii群で高かった
 (16% vs 13%;OR 1.23;95%CI 0.38–4.36; p=.67)。
 しかしながら、統計学的有意差はみられなかった。
 オーバーオールのICU在室日数はA.baumanniiが有意に長かった
 (median, [range], 28 [7–181] days vs. 17 [2–130] days, p=.05)。
 また、ARDSや肝不全もA.baumannii群で多かった
 (ARDS:35%vs 15%;OR 3.24; 95%CI 1.17–5.48; p=.02
 肝不全26% vs 10%; OR 3.25; 95%CI 3.25–10.40; p=.04)。
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結論:
 単施設のレトロスペクティブスタディでは、Acinetobacter baumannii感染は
 外傷患者において死亡率には寄与していないが、ICU在室日数や臓器障害を 
 起こすリスクがあると考えられる。しかしながら、より大きな臨床試験で
 これらについて検証する必要があるだろう。

by otowelt | 2010-08-29 22:22 | 感染症全般

インクレチン関連薬

インクレチン関連薬を服用している患者さんが出始めたので
ステロイドを使用する頻度も多く、結核患者も多い呼吸器内科医は
勉強する必要があるだろう。

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インクレチンとは膵β細胞からのインスリン分泌を促すホルモンで、
現在確認されているものは
・小腸下部L細胞から分泌:グルカゴン様ペプチド(GLP-1)
・小腸上部K細胞から分泌:グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド (GIP)

の2種類である。
しかし、これらのホルモンは放出されるとジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)
によって2分で分解されてしまうため、インクレチン自体は治療薬にできなかった。
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                  Endocrinology 1999,140; 5356-5363
そのため、
1. GLP-1の分解を抑制し自分のGLP-1を働かせて血糖値を下げる(DPP-4阻害剤)
2. GLP-1の類似薬だがDPP4で分解されにくい(GLP-1アナログ製剤)

という2剤が現在のインクレチン関連薬の主流となった。

理論上は、既存の糖尿病治療薬と比較して、
・血糖値に応じてインスリンが分泌されるので、低血糖がおきにくい。
・体重が増えにくい
・β細胞の保護作用がある
   と考えられている。

1.ジペプチジルペプチターゼ‐4(DPP-4)阻害薬
 DPP-4はインクレチンの分解酵素である。
 SU薬との併用で重篤な低血糖症状が出現し、意識消失を来した症例も報告されている
 ので臨床医は低血糖に注意しなければならない。
 (DPP4阻害薬による低血糖は内服開始10日以内が多い)
 ・シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)
 ・ビルダグリプチン(エクア)
 ・ネシーナ(アログリプチン)

2.グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログ
  メトホルミン+SUでも至適な血糖コントロールを得られない場合、
  もうピオグリタゾンを加えるのでないならインスリンを使用するしかない状況下で
  インスリン・グラルギン(ランタス)とほぼ同じだけの効果を示すとされている。

 ・リラグルチド(ビクトーザ)
  代表的なインクレチンであるヒトGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)のアナログ製剤。
  GLP-1は、小腸L細胞から分泌され、末梢では膵β細胞でのインスリン分泌を促進。
  膵α細胞でのグルカゴン分泌を抑制し、中枢では摂食抑制ホルモンとして作用する。
  ビクトーザはGLP-1の作用を、1日1回の皮下注射で補う薬剤。
  シタグリプチンよりも血糖降下作用が大きい。
                Lancet 2010;24;375(9724):1410-1412 
  エクセナチドの作用は投与後8時間でベースに戻るが、リラグルチドは
  24時間持続するという結果も報告されている
               ADA2009(Roasenstock et al.)

 ・エクセナチド(バイエッタ)
  エキセナチドは、1日2回投与で、経口糖尿病治療薬との併用で使用される。
  HbA1c値や血圧、LDL-コレステロールの低下作用および体重の減少作用が報告。
               ADA2009(Horton et al., Arnolds et al.)

by otowelt | 2010-08-28 20:54 | 内科一般

喫煙関連肺疾患(SR-ILD):DIP、RB-ILD、CPFE、AEF

●SRILD: smoking related interstitial lung disease(喫煙関連間質性肺疾患)
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1.DIP:Desquamative Interstitial Pneumonia
・喫煙者は90%程度で、RB-ILDよりも少ない。
Katzenstein ALA. Surgical pathology of nonneoplastic lung disease. In : Katzenstein ALA, ed. Major Problem in Pathology vol 13. 4th ed. WB
Saunders Company, 2006 ; 61―66.

・好発年齢は40~50歳
・亜急性の咳嗽、呼吸困難がみられる。一般的にRB-ILDより症状は強いとされている。
・男女比は2:1
・半数にばち指がみられる。
※鑑別として以下の疾患が挙げられる
 Subacute extrinsic allergic alveolitis、PCP、Sarcoidosis
 Drug toxicity、Asbestosis、PLCH、UIP、NSIP

●DIPの画像所見
・びまん性GGO
・下葉優位でかつ胸膜直下の陰影
・胸部CT では全例にすりガラス影を認め、
 下肺野優位73%,中肺野優位14%,上肺野優位14%以下
・末梢分布優位は59%
              Radiology 1993 ; 187 :787―790.
・fibrosisはみられない
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●DIPの病理所見(DIPパターン)
肺実質一様におよぶ
・肺胞マクロファージの高度の肺胞腔内の集まり
・肺胞隔壁の軽~中等度の線維性肥厚
・間質への軽度の慢性炎症細胞浸潤
 RB-ILDとDIPの違いは、病変が呼吸細気管支中心性分布かびまん性分布かである。
・末期になると線維化が進行し、DIP/Pの認識は困難となり、
 国際分類ではf-NSIP patternと病理診断される。
              Histopathology 2004; 45: 904-12
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●DIPの治療
・一般的に禁煙によって軽快。
・ステロイド治療に対する反応もUIP に比べて良好と言われている。
・実際には禁煙指導と同時にステロイド治療が行われることが多く、
 DIP に対する禁煙単独の効果を評価することは困難である。
              Chest 2005 ; 127 :178―184.
・10年生存率は70%
              Mayo Clin Proc 1989 ; 64 : 1373―1380.

2.RB-ILD:Respiratory Bronchiolitis Associated Interstitial Lung Disease
●RB-ILDの概念
 1989年、Yousemらが18例のRBに合併する間質性肺炎を
 DIPとは別にRB-ILDとして概念を明確にした。
                 Mayo Clin Proc 1989; 64: 1373-80
 現在、ATS/ERSコンセンサスに準じて、RB-ILDはIIPsの一臨床診断名と
 されており、病理像はRBと認識されている。

●RB-ILDの臨床所見
・通常は無症状で、咳嗽や呼吸困難感がみられることもある。
・DIPよりも症状は軽度であることが多いとされている。
・近年の報告では、RB-ILD VS DIP で
 呼吸困難感 75% VS 87%
 咳嗽    50% VS 43%
 胸痛    8% VS 17%
 肺雑音   42% VS 57%  と差がない。
・40~50歳が好発年齢
・男女比=1:1
・喫煙歴が必ずあり、ex-smokerでも禁煙後半年以内のことが多い。
 また、他のILDよりもheavy smokerのことが多い。
                Chest 2003; 124: 1199-1205
・両側性に吸気時後半のcrackleを聴取する

●RB-ILDの検査所見
・血液検査では特記すべき特徴はない。
・抗核抗体はDIPにおいて陽性例が散見される一方、RB-ILDでは全例陰性である。
                J Bronchol 2004; 11: 160-4
・動脈血液ガス分析は、正常または軽度な低酸素血症
・呼吸機能検査では軽度の混合性換気障害を呈するのみ。
・BALでは肺胞マクロファージ増加が特徴であり、色素沈着をともなった
 マクロファージが認識されることが多い。DIPではリンパ球・好中球・時に好酸球
 上昇がみられるが、RB-ILDでは90%以上が肺胞マクロファージによって構成。
・胸部レントゲンでは以下の通り。
  気管支壁の肥厚75%
  スリガラス陰影57%
  正常14%
・HRCTでは、
  Ill-defined ground glass centrilobular nodules
  斑状のGGO( ⇔ DIPはびまん性)
  スリガラス影(50%)
  気管支壁の肥厚(90%)
  上葉優位の分布( ⇔ DIPは下葉優位)
  LAA
  fibrosisはみられない(honeycombing lungはない) といった特徴がある。
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●RB-ILDの病理学的所見
RBの所見と同じである。
 ①(呼吸)細気管支中心性にみられること
 ②呼吸細気管支、肺胞管ならびに細気管支周囲に褐色調の豊富な細胞質を
  有するマクロファージの集まり
 ③細気管支から連続する肺胞壁での軽度線維化と散在性リンパ球や組織球浸潤
 ④II型上皮や立方状の細気管支上皮の過形成
 ⑤しばしば混在する小葉中心性肺気腫
・基本的に細気管支中心性の病変分布である。
・膜性細気管支のリンパ球や組織球などの炎症細胞浸潤と
 上皮剥離さらに褐色マクロファージ(炭粉貪食マクロファージpigmented
 macrophages)が呼吸細気管支の内腔と周辺の肺胞道、肺胞内にみられる。
・fibrosisはみられない
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●RB-ILDの病理と画像の対比
 ①スリガラス影:
  air spaceのマクロファージと粘液の集積、軽度の間質の炎症
  や線維化、alveolitisを伴う肺胞壁の肥厚に相当
           Radiology 1993; 186: 643-51
 ②(小葉中心性)小葉中心性粒状影:
  細気管支周囲の線維化を伴う細気管支拡張に相当
           Radiology 1993; 186: 643-51
  RBの可能性のほかに、喫煙者としての普遍的所見である
  小葉中心性線維性変化の可能性も示唆されている。
           気管支学 2000 ;22: 337-42

●RB-ILDの治療
・禁煙
・コルチコステロイドは反応性良好
・10年生存率は100%

3.CPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema)
  AEF(airspace enlargement with fibrosis)

 臨床医は、ときに肺気腫と間質性肺疾患の合併例に遭遇するが、
 CHESTの報告によればIPF110例のうち31例に気腫を合併していた。
            Chest 2009, doi:10.1378/chest.08-2306
 2005年にCottinらが上肺野優位に肺気腫、下肺野にILDがみられる61症例を
 取り上げ、combined pulmonary fibrosis and emphysema (CPFE)という
 概念を提唱したのをきっかけに、この病態に注目が集まるようになった。
            Eur Respir J 2005; 26: 586-593

 <Cottinらの報告 Eur Respir J 2005; 26: 586-593>
 画像上IPFあるいはfibrosing NSIPパターンが全体の84%を占め、
 組織があった8例のうち5例はUIPで、その他DIP、OP、分類不能型IPが
 それぞれ1例ずつであった。肺気腫病変については
 centrilobular emphysema が95%、paraseptal emphysemaが93%だった。
 全体の98%がDLCOの低下がみられた。しかし、1秒率が低下していたのは
 49%、拘束性障害を呈していたのは21%であった。これは過去の他の報告でも同様。
            Respir Med 2005; 99: 948-954
            Respiration 2008; 75: 411-417
            Respir Med 2009, doi:10.1016


 終末細気管支より末梢の気腔が拡大している病態を
 RAE:respiratory airspace enlargementと呼ぶが、
 RAEは肺胞構造の破壊のないものと構造破壊を伴うものに分類される。
 明らかな線維化がみられないものを気腫と定義し、線維化を伴うものを
 airspace enlargement with fibrosis (AEF)と呼ばれる。
            Am Rev Respir Dis 1985; 132: 182-185
文責"倉原優"

by otowelt | 2010-08-26 06:28 | びまん性肺疾患

放射線治療stage II~III NSCLCにおいて癌細胞EPO発現は独立予後因子

Prognostic impact of erythropoietin expression and erythropoietin receptor expression on locoregional control and survival of patients irradiated for stage II/III non-small-cell lung cancer.
Int J Radiat Oncol Biol Phys 2010 Jun 18


背景:
 肺癌において、予後因子は個々の患者への最適な治療を選択するため
 重要な指標となる。この研究では、NSCLC患者における局所コントロールと
 生存期間に対する癌細胞エリスロポエチン(EPO)およびEPO受容体(EPO-R)
 の発現が予後因子としての妥当かどうかを検討した。

方法:
 放射線療法を施行したstage II~III NSCLC患者62例を対象に、
 以下の因子について検討。
 1.年齢、2.性、3.Karnofsky PS(KPS)、4.組織型、5.悪性度、
 6.TNM分類/AJCC stage分類、7.手術、8.化学療法、
 9.総喫煙量(pack years=1日平均喫煙箱数×喫煙年数)、
 10.放射線療法中の喫煙、11.放射線療法中のヘモグロビン値、
 12.EPO発現、13.EPO-R発現
 さらにEPOとEPO-Rの両者を発現した症例をEPOまたはEPO-Rのいずれかを
 発現した症例および両者とも発現しない症例と比較。

結果:
 局所コントロールに関する単変量解析では、AJCC stage II(p<0.048)、
 手術(p<0.042)、放射線療法中の非喫煙(p=0.024)、
 EPO非発現(p=0.001)が局所コントロールの改善と関連。
 KPS>70(p=0.08)、N分類0~1(p=0.07)・EPO-R非発現(p=0.10)は
 関連の傾向を示した。多変量解析では、AJCC stage IIとEPO非発現が有意な関連。
 放射線療法中の非喫煙は有意境界であった。生存期間についての単変量解析では、
 N分類0~1(p=0.009)、手術(p=0.039)、
 ヘモグロビン値≧12g/dL(p=0.016)、EPO非発現(p=0.001)が
 生存期間改善と関連。多変量解析では、N分類0~1とEPO非発現が有意な関連。
 サブグループ解析では、EPOとEPO両者を発現した症例はいずれか一方の発現
 あるいは両者とも発現のない症例に比べ予後不良。
 放射線療法を施行したNSCLC患者におけるがん細胞のEPO発現は
 局所コントロールおよび生存期間の独立の予後因子であり、EPO-R発現は
 予後因子の傾向を示した。EPOおよびEPO-Rの両者を発現した症例の予後は不良。

by otowelt | 2010-08-25 19:03 | 肺癌・その他腫瘍

肺炎球菌血清型別の死亡リスク

肺炎球菌による肺炎と髄膜炎のうち、
血清型のタイプ別によって、死亡リスクが変わるかどうかを
検証したメタアナリシスがCIDから出た。

アメリカでPCV7がPCV13になったきっかけでもある
19A型については小児科医の間では有名であろう。

以下、肺炎球菌ワクチンの血清型カバーについてメモ書き。
PPSV23:1, 2, 3, 4, 5,6B, 7F, 8, 9N, 9V, 10A, 11A, 12F, 14,
     15B, 17F, 18C, 19A, 19F, 20, 22F, 23F, 33F
PCV7:4,9V,14,19F,23F,18C,6B
PCV13:4,9V,14,19F,23F,18C,6B,1,5,7F,3,6A,19A


Association of Serotype with Risk of Death Due to Pneumococcal Pneumonia: A Meta-Analysis
Clinical Infectious Diseases 2010; 51(6):692–699


結論として、血清型の1, 7F, 8は相対リスクを減少させ、
血清型の3, 6A, 6B, 9N,19Fは相対リスクを上昇させた。
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by otowelt | 2010-08-25 16:10 | 感染症全般

NDM-1の細菌学的解析

先日取り上げた、NDM-1;ニューデリーメタロβラクタマーゼの世界的拡散の恐れの補追。
それにしても、なぜ日本で話題になるのが世界よりも遅れたのだろう??

http://www.nih-janis.jp/material/material/NDM-1文献概要20100820.pdf

インドの症例の提示とNDM-1同定に至るまでの経緯が詳しく書かれている。

by otowelt | 2010-08-25 07:30 | 感染症全般

セフタロリン単独療法はcSSSIへのバンコマイシン+アズトレオナムに対して非劣勢

complicated skin and skin structure infections (cSSSI)の日本語訳が
よくわからなかったので、このまま表記する。
cSSSI治療では、基本的にMRSAをたたけないとハナシにならない。
最近では、テラバンシンが承認されたことが記憶に新しい。
これは細菌の細胞壁合成を阻害するバンコマイシンと同じ作用に加えて
細胞膜透過性の増大作用がある。
cSSSIにおいては、バンコマイシンに対して非劣勢が証明されている。
Telavancin versus vancomycin for the treatment of complicated skin and skin-structure infections caused by gram-positive organisms. Clin Infect Dis 2008; 46:1683.

最近ではVCM耐性もカバー可能なオリタバンシンなんて薬剤も有名である。
Oritavancin: a new avenue for resistant Gram-positive bacteria. Expert Rev Anti Infect Ther 2005; 3:325.

セフタロリン(Ceftaroline)は第5世代のセフェム系で、
セフトビプロールと同じ世代に属する。
基本的にはMRSAまでカバーをひろげた超ブロードスペクトラムな
セフェム系抗菌薬と考えてよい。

IDSAでは市中肺炎へのセフトリアキソンと比較された。
さすがに市中肺炎に第5世代セフェム系というのは
少々カバーが異なる気がするのだが、どうだろうか。
FOCUS 1 and 2: Randomized, Double-blinded, Multicenter Phase 3 Trials of the Efficacy and Safety of Ceftaroline (CPT) vs. Ceftriaxone (CRO) in Community-acquired pneumonia (CAP). 2009 Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy / Infectious Disease Society of America Conference

今回CIDから出た論文は、すでに発表されている事項だが
cSSSIへのバンコマイシン+アズトレオナムに対してセフタロリンが
非劣勢であったことを示した論文である。

―――――以下、今回の論文。
Integrated Analysis of CANVAS 1 and 2: Phase 3, Multicenter, Randomized, Double‐Blind Studies to Evaluate the Safety and Efficacy of Ceftaroline versus Vancomycin plus Aztreonam in Complicated Skin and Skin‐Structure Infection
Clinical Infectious Diseases 2010;51:641–650


背景:
 MRSAはcomplicated skin and skin structure infections (cSSSI)の
 重要な原因菌である。セフタロリンはcSSSIに対する治療として
 臨床試験が行われたが、ここにそのプールしたデータを紹介する。
 プライマリエンドポイントはセフタロリン単独治療によって
 バンコマイシン+アズトレオナム併用治療に非劣勢を証明することである。

方法:
 cSSSI患者においてセフタロリン600mg12時間ごとに
 バンコマイシン1g12時間ごと+アズトレオナム1g12時間ごとを
 5~14日間おこない比較。

結果:
 1378人の患者が登録s、693人がセフタロリン、
 685人がバンコマイシン+アズトレオナム群に割り付けられた。
 Clinical cure rateは両群において同等であった。
 CE:91.6% vs 92.7%
 MITT:85.9% vs 85.5%
 副反応についても両群で大きく差はみられなかった。

結論:
 セフタロリンはMRSAあるいは他の菌によるcSSSIに対して
 高い治癒率をほこり、安全性も認容できる。
 バンコマイシンとアズトレオナム併用に比べて非劣勢であり
 cSSSI治療に対して単独療法は他の治療と代替可能(alternative)である
 可能性がある。

by otowelt | 2010-08-24 19:59 | 感染症全般