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リバスチグミンはせん妄期間を短縮しないだけでなく、死亡率も増加させる

アリセプトとよく似た薬、エキセロンのスタディ。
せん妄に対する効果が期待されたが、効果は証明されなかった。

Effect of rivastigmine as an adjunct to usual care with haloperidol on duration of delirium and mortality in critically ill patients: a multicentre, double-blind, placebo-controlled randomised trial
The Lancet, Volume 376, Issue 9755, Pages 1829 - 1837, 27 November 2010


背景:
 重症患者においてせん妄はしばしば認められ、有害である。
 せん妄の発生に、アセチルコリン神経伝達の障害が重要であると考えられており、
 重症患者に発症したせん妄期間の長さに対するコリンエステラーゼ阻害薬である
 リバスチグミン(rivastigmine)の影響を評価した。

方法:
 登録されたオランダのICUでせん妄と診断された患者で、
 2008年11月~2010年1月まで治療。患者はランダム化され、
 リバスチグミン(1.5-6mg1日2回/day)あるいはプラセボが、
 低用量のハロペリドールに追加投与された。プライマリエンドポイントは
 入院中のせん妄期間。

結果:
 440例が登録予定だったが、104例目の患者が登録された後に、
 リバスチグミン投与群の死亡率(22%)がプラセボ群(8%)よりも
 高いために臨床試験は途中段階で中止された。
 この段階での解析において、リバスチグミン群のせん妄期間中央値は5日、
 プラセボ群では3日だった。

結論:
 リバスチグミンはせん妄期間を短縮しないだけでなく、死亡率も増加させる。
 重症患者のせん妄に対してリバスチグミンの使用は推奨されない。

by otowelt | 2010-11-29 06:53 | 内科一般

閉塞性睡眠時無呼吸患者における全身性高血圧に対してCPAPは統計学的に有用

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA、OSAS)の患者において
CPAPは、QOL、生存率を改善するとされている。
QOLが改善するのは異論のないところである。
Continuous positive airways pressure for obstructive sleep apnoea in adults. Cochrane Database Syst Rev 2006; :CD001106.
ただ生存率改善に関しては、大規模なランダム化試験がなく
EBMの観点から、断言はできない状況である。
・Mortality in severe sleep apnoea/hypopnoea syndrome patients: impact of treatment. Eur Respir J 2002; 20:1511.
・Mortality in obstructive sleep apnea-hypopnea patients treated with positive airway pressure. Chest 2005; 128:624.


全身性高血圧の改善というテーマでBMJから論文が出ていた。
しかしながら、このチョコッとだけ下がる血圧に何の意味があるのだろうか。

Continuous positive airway pressure as treatment for systemic hypertension in people with obstructive sleep apnoea: randomised controlled trial
BMJ 2010;341:c5991


目的:
 閉塞性睡眠時無呼吸の患者に新規発症した無治療全身性高血圧に対して
 CPAPの効果について24時間血圧測定モニタリングを行うことで評価。

デザイン:
 多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照試験。
 340人の患者で最近高血圧であると指摘された患者で
 apnoea-hypopnoea index(AHI)が15 events/hour以上
 のものを登録。

介入:
 CPAP (n=169) 群とsham(偽)CPAP (n=171) 群に3ヵ月間割りつけ。
 プライマリエンドポイントは、24時間血圧測定モニタにおける
 ベースラインからの変化とした。

結果:
 340人の患者のうち277人(81%)が男性で、
 平均年齢は52.4歳 (SD 10.5) 、平均BMI31.9 (5.7)、
 平均Epworth sleepiness scale scoreは10.1 (4.3)、
 平均AHIは43.5 (24.5)であった。2群に差はなかった。
 24時間血圧測定モニタでは、CPAP群の血圧変動が
 1.5 (95%CI 0.4 to 2.7) mmHg (P=0.01)低かった。
 平均24時間血圧モニタは収縮期で2.1 mm Hg (0.4 to 3.7) (P=0.01)、
 拡張期で1.3 mm Hg (0.2 to 2.3)(P=0.02) 下がった。
 平均夜間血圧は2.1 mm Hg(0.5 to 3.6)(P=0.01)減少。
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結論:
 CPAPは統計学的に有意に、OSAの患者において全身性高血圧を改善する。

by otowelt | 2010-11-29 05:37 | 呼吸器その他

院内発症CDIは院内死亡のリスク

The Effect of Hospital-Acquired Clostridium difficile Infection on In-Hospital Mortality
Arch Intern Med. 2010;170(20):1804-1810


Abstractしか読んでいないが、
カナダのオタワ病院のレトロスペクティブの試験で、
院内発症C.difficile感染が、院内死亡の危険因子であることを論じたもの。
1393人というかなり大規模のCDIのデータを用いたものである。
院内発症CDIは院内死亡のハザード比を3倍上昇させる(95% CI, 2.4-3.7)。

時間があったら全文読みたい。

by otowelt | 2010-11-23 11:38 | 感染症全般

NSCLCにおける腫瘍内血管浸潤は、術後再発の独立予測因子

腫瘍内血管浸潤が再発のリスクであることは常々言われていることである。
・J Thorac Cardiovasc Surg 2009;137:429-34.
・Cancer 1994;73:1177-83.

これを第7版のTNM分類にあわせて報告した論文がThoraxに出ていた。

Prognostic impact of intratumoral vascular invasion in non-small cell lung cancer patients
Thorax 2010;65:1092-1098


目的:
 NSCLCにおける腫瘍内血管浸潤(Intratumoral vascular invasion :IVI)は
 再発の独立予測因子であることが報告されてきたが、
 TNM分類第7版との比較はされていない。このスタディの目的は、これが
 再発リスクとして有意であるかどうかを評価することである。

方法:
 1992年7月から2006年12月までの間の、2295人の連続
 NSCLC(T1~3,N0~2)のリンパ節郭清を伴う完全切除例で
 検証した。Kaplan-Meier法により無再発頻度を算出。
 有意検定はlog rankテストでおこない、Cox比例ハザード比を
 再発の独立危険因子であるかどうかの判定に用いた。

結果:
 5年無再発頻度はIVIのない患者で85.0%、IVIのある患者で51.5%であった
 (p<0.001)。多変量解析では、IVIは再発の独立危険因子であった
 (HR 1.866, p<0.001)。T因子別においても、IVIの存在は
 IVIのない患者よりも有意に無再発頻度を下げた。
 T1a:93.1% vs 69.3%,p<0.001
 T1b:89.7% vs 62.7%, p<0.001
 T2a :78.4%vs 53.0%, p<0.001
 T2b:70.5% vs 46.4%, p=0.021
 T3:53.1% vs 37.4%, p=0.031
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結論:
 T1~4、N0~2のNSCLC患者において
 IVIは再発の独立危険因子である。

by otowelt | 2010-11-22 17:43 | 肺癌・その他腫瘍

ペンシルヴァニア大学の呼吸集中治療フェローからのおすすめ文献

AJRCCMから論文チョイスの論文が出ることがよくあるが、
的を射ているので、個人的には結構好きである。

Recommended Reading from the University of Pennsylvania Pulmonary and Critical Care Fellows
~ペンシルヴァニア大学の呼吸集中治療フェローからのおすすめ文献~
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2010; 182: 1330-1331


1.The Idiopathic Pulmonary Fibrosis Clinical Research Network. A controlled trial of sildenafil in advanced idiopathic pulmonary fibrosis.
N Engl J Med (e-published at www.nejm.org on May 18, 2010)

シナデルフィルをIPFに用いた有名な試験である。
しかしながら、これはネガティブスタディである。
ただ、セカンダリエンドポイントの症状寛解などに有益であった
可能性があるため、今後の臨床試験を待ちたいところである。

2.Extended valganciclovir prophylaxis to prevent cytomegalovirus after lung transplantation.
Ann Intern Med 2010;152:761–769.

このスタディのプラリマリエンドポイントはCMVend-organ diseaseである。
12ヵ月の拡大予防群の方が、予防効果は高かった。
ただ、BOSへの影響などについてはこのスタディからは不明である。

3.American Heart Association National Registry of Cardiopulmonary Resuscitation (NRCPR) Investigators. Racial Differences in Survival After In-Hospital Cardiac Arrest.
JAMA 2009;16:1195–1201.

CPAにおける生存率の人種差についての論文である。
その結果、黒人の方が白人より低かったことは有名である
(25.2 vs.37.4%; relative risk, 0.73; 95% CI, 0.67–0.79)。
limitationについて数々挙げられているので、こういった論文が
あったことだけでも知っておく程度でよいと思う。

4.Survival after bilateral versus single-lung transplantation for idiopathic pulmonary fibrosis.
Ann Intern Med 2009;151:767–774.

IPFに対して両側あるいは片側肺移植を行った場合の臨床的な差について
論じている論文である。死亡率については、現在の移植技術であれば
両側でも片側でも差はないとされている。

by otowelt | 2010-11-22 12:13 | 集中治療

間質性肺疾患診療マニュアル



まさに呼吸器内科医のための本です。
病理写真が多く、かゆいところに手が届く部分も多いため
買って損はありません。

by otowelt | 2010-11-19 09:06 | その他

細菌性肺炎に対するパズフロキサシン1000mg×2回/日 の投与、第III相試験

パシル(パズフロキサシン)は輸液負荷を避けたいときにニューキノロン系抗菌薬として
使うことがあるが、エビデンスの蓄積は少ないのが現状である。
化学療法学会雑誌で、PZFX1日2000mgを細菌性肺炎と敗血症で検討した論文が
1つずつ出ていた。目的はsurvivalではなくPK/PDのようだ。
パシル単剤で肺炎と戦う感染症医はまさかいないと思うが、
PK/PDに関しては参考になるところも多いのでは。

以下、細菌性肺炎における検討。

A clinical phase III study of pazufloxacin in patients with bacterial pneumonia
日化療会誌 58 (6): 664-680, 2010


・細菌性肺炎へのpazufloxacin(PZFX)注射液の1 回1,000 mg×2 回/日
 最長14 日間投与時の有効性と安全性の評価
・投与終了時の有効率81.8%(81/99 例)
・S. pneumoniaeのMIC は0.78~3.13 μg/mL、MIC90は1.56 μg/mL
・1,000 mg 1回投与時のPK/PDは、AUC 137.0μg・hr/mL、Cmax 32.0 μg/mL。
 単独菌感染患者45例の臨床効果が期待される1 日fAUC/MIC target値、
 fCmax/MIC target値>10 の患者の投与終了時の有効率は、それぞれ
 77.3%(34/44 例)、78.0%(32/41 例)。
・注射部位反応36.4%(51/140例)、ALT 増加12.1%(17/140 例)、
 AST 増加12.1%(17/140 例)だった。
 ほとんどの副作用は軽度または中等度であった。
 これは500mg×2回/日投与と比べて大きく差はない数字である。
・PZFX 1回1,000 mg×2 回/日投与は重症・難治性肺炎および肺炎球菌による
 肺炎に対して、高い臨床的有用性が期待される。

by otowelt | 2010-11-16 08:15 | 感染症全般

R-hyperCVAD後のCMV網膜炎

Cytomegalovirus Retinitis During Chemotherapy With Rituximab Plus Hyperfractionated Cyclophosphamide, Vincristine, Doxorubicin, and Dexamethasone
Journal of Clinical Oncology, Vol 28, No 32 (November 10), 2010: pp e661-e662


alloの幹細胞移植ではCMVウイルス感染が非常に問題になるが、
R-hyperCVAD後にCMV網膜炎を起こした症例がJCOに報告されていた。
alemtuzumabはCMV網膜炎と関連が強いとされているモノクローナル抗体だが、
移植関連感染症でない状況下での通常抗癌剤によるCMV網膜炎は珍しい。

DNAemia and disease: Incidence, natural history and management in settings other than allogeneic stem cell transplantation. Haematologica 90:1672-1679, 2005

by otowelt | 2010-11-15 07:33 | 肺癌・その他腫瘍

MDR-VAPに対して、コリスチン静注にコリスチン吸入を加えても利益なし


Aerosolized plus Intravenous Colistin versus Intravenous Colistin Alone for the Treatment of Ventilator‐Associated Pneumonia: A Matched Case‐Control Study
Clinical Infectious Diseases 2010;51:1238–1244


目的:
 人工呼吸器関連肺炎(VAP)は多剤耐性菌(MDR)によって起こることが増えている。
 静脈注射(IV)コリスチン単独と、IVにエアロゾル化した(AS)コリスチンを
 加える治療法が、こういった生命をおびやかすVAPに使用されることがある。
 このスタディの目的は、AS+IVコリスチンがIV単独に比べて
 グラム陰性菌によるMDR-VAPの効果と安全性が有益かどうかを調べる。

方法:
 Heraklion大学病院ICUで2005年1月から2008年12月までおこなわれた。
 43人のグラム陰性MDRによるVAP患者がAS+IVコリスチンに
 年齢やAPACHEIIスコアでマッチして割り付けられた。
 コントロールは43人のIVコリスチン単独投与患者とした。

結果:
 characteristicsは両群とも同等であった。 
 Acinetobacter baumannii (66 cases [77%])は、最もよくみられた
 病原微生物であり、Klebsiella pneumoniae (12 cases [14%])、
 Pseudomonas aeruginosa (8 cases [9.3%])と続く。
 コリスチン耐性菌はみられなかった。
 これら2群において、微生物的寛解(P=.679)、臨床的治癒(P=.10)、
 死亡率(P=.289)に有意差はみられなかった。いずれかの治療を受けた
 8人(19%)が可逆性腎機能障害に陥った。ただ、ASコリスチン関連の有害事象は
 記録されていない。

結論:
 グラム陰性菌によるMDR-VAP患者において、IVコリスチンにASコリスチンを加えても
 治療的な利益は得られない。

by otowelt | 2010-11-15 06:59 | 集中治療

VAPガイドラインで議論の余地のある項目のClinical Review

VAPガイドラインで現在、議論の余地がある項目について
レビューしたものであり、これは非常におもしろい。
集中治療医にとっては大事なConcise Clinical Reviewである。

New Issues and Controversies in the Prevention of Ventilator-associated Pneumonia
Am J Respir Crit Care Med Vol 182. pp 870–876, 2010


はじめに:
 公表されたガイドラインにおいて、VAP予防策にかかわる問題点が
 いくつか解決されていないことがわかった。
 VAP予防策としての多くの新しいテクニックがみられているのにもかかわらず
 いずれもが現在のガイドラインでは表記されていない。たとえば、
 薄いカフ気管チューブ、低容量/低圧カフ気管チューブ、カフ圧の持続
 モニタリング、バイオフィルム除去装置、気管内吸引前の生食注入などがある。
 また、人工鼻や、加温加湿器、抗菌コーティング気管チューブは予防策として
 取り入れられていない。そこで、このレビューにおいてVAP予防策で現在
 ガイドラインで明確な推奨がなかったり、議論の余地がある項目をレビューする。

●薄いカフの気管チューブEndotracheal Tube with an Ultrathin Cuff Membrane
 声門下気道分泌物は、気管チューブのカフ上部に貯留した分泌物が
 カフのシワをつたって下気道へたれ込むものであり、これがVAPを引き起こす。
 声門下分泌物ドレナージ(SSD)機能付き気管チューブによって気道分泌物を
 除去することを現在こころみている施設も多い。
 メタアナリシスでは、VAPリスクがRR0.51(95%CI, 0.37-0.71)でVAP
 リスクを低下させることがわかっている。
Subglottic secretion drainage for preventing ventilator-associated pneumonia: a meta-analysis. Am J Med 2005;118:11–18.
 このメタアナリシスの重要なポイントは、5つの対象文献のうち4つにおいて、
 人工呼吸管理を72時間以上必要とする患者を対象にしていた。
 別の研究で、心臓手術に関連する患者714名をSSD気管チューブまたは従来チューブ
 のいずれかにランダムに割りつけて比較する研究がある。これによると、VAP頻度は
 SSDに関係なく同等であった(3.6% vs 5.3%; P=0.2)。
 サブ解析で、人工呼吸管理を48時間以上要した患者においては、SSD気管チューブ群
 の方がVAP発生率が低かった(26.7% vs 47.5%; P=0.04)。
Continuous aspiration of subglottic secretions in the prevention of ventilator-associated pneumonia in the postoperative period of major heart surgery. Chest 2008;134:938–946.
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 カフにシワが形成されて分泌物が落ち込まないように発案された極めて薄いカフの
 チューブが最近登場した(厚さ7μm、従来のポリ塩化ビニル製のものの7分の1)。
 この薄いカフチューブをin vitroに研究したものがあり、着色水5mlを
 カフの上に注入し、モデル人形を用いてこれを評価した。これにより、この
 薄いカフチューブによって分泌物落ちこみが防止できる可能性が示唆された。
Fluid leakage past tracheal tube cuffs: evaluation of the new Microcuff endotracheal tube. Intensive Care Med 2003;29:1849–1853.
 in vivoでは、心臓手術を受ける患者134名を、薄いカフ付き気管チューブ群
 または従来型のカフ付き気管チューブ群にランダムに割りつけたものがある。
 薄いカフ群の方が術後早期の肺炎の発生頻度が低かった。
 多変量回帰分析を行ったところ、薄いカフ付き気管チューブを使用すると、
 早期VAPに対する予防効果がみられた(OR0.31; 95%CI, 0.13-0.77; P=0.01)。
 ただこの研究は心臓手術患者に限定しているため、
 一般的な人工呼吸器を必要とする他の病態で有用かどうかは不明である。
Polyurethane cuffed endotracheal tubes to prevent early postoperative pneumonia after cardiac surgery: a pilot study. J Thorac Cardiovasc Surg 2008;135:771–776.
 この薄いタイプはカフが紡錘形である。
 この形状の利点は、気管内の少なくとも一点において、膨張したカフが
 気管にタイトと密着することにある。この部分には、分泌物がリークする余地がない。
 そのためVAP予防効果が、カフの材質が薄いポリウレタンにあるのか、
 カフの形状が紡錘形であることに由来するのか、現段階では不明と言わざるを得ない。
 また、この薄いカフとSSDの両方の利点を一挙に調べたランダム化試験がある。
 これは280名を対象としており、エンドポイントとしてVAP発生頻度の比較が
 検証された。結果、SSDのついた薄いカフ付き気管チューブ使用群の方が
 早期・晩期VAP両方の発生頻度が低かった
 (11/140[7.9%] vs 31/140[22.1%];HR3.3; 95%CI, 1.66-6.67; P=0.001)。
 SSDの効果は早期VAPに対してのみ発揮され、晩期VAPの予防は難しいとされて
 いたが、このダブル予防の研究では、SSDのついた薄いカフ付き気管チューブを
 使用すると早期・晩期VAPのいずれも予防することが可能であった。
Influence of an endotracheal tube with polyurethane cuff and subglottic drainage on
pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2007;176:1079–1083.
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●持続的気管内カフ圧制御
 Device for Continuous Monitoring of Endotracheal Tube Cuff Pressure

 声門下の分泌物が下気道へ落ち込むのを防ぐため、カフ圧を最適な圧に維持
 すべきだという意見がある。ある研究では、カフ圧が持続的に20cmH2O未満で
 あった症例ではVAP発生率が高かった(RR2.57; 95%CI, 0.78-8.03)。
 気管挿管中の患者で抗菌薬を投与されていない場合、カフ圧が持続的に
 20cmH2O未満であると、それはVAPの独立危険因子である
 (RR4.23; 95%CI, 1.12-15.92)。なおかつ気管損傷を防ぐためには
 カフ圧は30cmH2Oを超えてはならない。
Pneumonia in intubated patients: role of respiratory airway care. Am J Respir Crit
Care Med 1996;154:111–115.
Postintubation tracheal stenosis. Chest Surg Clin N Am 2003;13:231–246.

 142人の人工呼吸患者を、カフ圧を自動制御するようなメカニズム(カフ圧が
 画面上に常に表示されるようなシステム)を用いる群あるいは手動のカフ圧計で
 その都度カフ圧を調整する群かのいずれかにランダムに割りつけた研究がある。
 当然ながら、自動に制御した方がカフ圧のオーバーダウンは少なかった(P<0.001)。
 ただ、この2群においてVAPなどの臨床的な差および死亡率に差はみられなかった。
 こういった自動測定装置を用いるとカフ圧を正確に管理することは可能だが、
 エビデンスの蓄積が不十分であり、推奨に至るものではない。
Automatic control of tracheal tube cuff pressure in ventilated patients in semirecumbent position: a randomized trial.Crit Care Med 2007;35:1543–1549.
 LotrachチューブはSSD、低容量・低圧カフ、カフ圧自動調節システムが
 あるが、誤嚥は減る可能性があるが、VAPを予防できるかどうかは
 現段階では不明である。

●バイオフィルム除去デバイスDevice to Remove Biofilm Formation
 チューブの表面に形成されるバイオフィルムを除去することは、VAPの
 リスクを減らす方法としてよく言われている。Mucus Shaverという、
 チューブ内をバルーニングして一気にバイオフィルムを抜き去るという装置がある。
 ヒツジを用いた研究では、電子顕微鏡を用いて気管チューブ内壁を観察したところ。
 Mucus Shaver群に使用したチューブにはバイオフィルムは全くなかった。
 このヒツジを用いた研究は2つある。Mucus Shaverは、ヒトにおける
 VAP予防効果についてのデータがなく現段階では推奨には至らない。
Novel system for complete removal of secretions within the endotracheal tube: the Mucus
Shaver. Anesthesiology 2005;102:1063–1065.
Antibacterial-coated tracheal tubes cleaned with the Mucus Shaver: a novel method to retain long-term bactericidal activity of coated tracheal tubes. Intensive Care Med 2006;32:888–893.


●気管内吸引前生理食塩水の吸入Saline Instillation before Tracheal Suctioning
 気管内吸引前に、毎回生生理食塩水を注入する方法については、
 議論の余地がある。生理食塩水を注入せず、吸引カテーテルを挿入する場合と比べ、
 吸引カテーテル挿入前に生理食塩水を注入した場合、細菌塊がチューブ内壁から
 はがれ落ちやすくなるとされている。
 一度はがれ落ちてしまえば下気道がこういった病原性微生物によって汚染される
 ことになるためVAPの発生頻度を上昇させる可能性がある。さらには、気管内
 吸引前に生理食塩水を注入することによって、低酸素血症を惹起しかねない。
 しかしながら、生理食塩水を注入してから気管内吸引を行った場合
 VAPの頻度を低下させることが可能かもしれない。理由は、吸引前に注入すれば
 粘稠な気道分泌物を除去しやすくなり、咳嗽を誘発できるため技術的に吸引
 しやすくなるかもしれない。こういった論点を解決するべく行われた研究では、
 262人が、生理食塩水注入後に吸引を行う群か、注入せずに吸引を行う群かの
 いずれかにランダムに割りつけられた。注入群の方が、細菌培養で確診された
 VAP頻度が低かった(23.5% vs 10.8%; P=0.008)。
 ただ、死亡率や人工呼吸期間、ICU滞在日数などについては差はなかった。
Saline instillation before tracheal suctioning decreases the incidence of ventilator-associated pneumonia. Crit Care Med 2009;37:32–38.
 結論としては、この1つのスタディのみで推奨には至らない。
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●早期の気管切開Early Tracheostomy
 早期気管切開によって、VAPが低下するという結果を示す研究もある一報で、
 全く低下しないという報告もあり、議論の余地がある。
 382人を用いた5つのランダムもしくはquasiランダム化比較対照試験について
 メタアナリシスがおこなわれた。気管挿管下の人工呼吸開始から7日以内の気管切開
 を行ってもVAPリスク(RR0.90; 95%CI, 0.66-1.21)および
 死亡率(RR0.79; 95%CI, 0.45-1.39)は低下しなかった。
 ただ、人工呼吸器使用期間については有意な短縮がみられた。
Systematic review and meta-analysis of studies of the timing of tracheostomy in adult
patients undergoing artificial ventilation. BMJ 2005;330:1243–1246.

 また人工呼吸期間が7日以上におよぶと”予測される”患者125人を対象とした
 研究がおこなわれている。長期気管挿管群あるいは早期(4日以内)気管切開群の
 いずれかにランダムに割り当てられたが、死亡率、VAP発生頻度、人工呼吸器使用期間
 など差はみられなかった。
Early tracheotomy versus prolonged endotracheal intubation in unselected severely ill
ICU patients. Intensive Care Med 2008;34:1779–1787.

 641人を対象とした7つ試験のメタアナリシスを行ったところ、
 肺炎および死亡率のリスクについては有意差はなかった。しかしながら、
 早期気管切開(人工呼吸開始から5日以内)と晩期気管切開を比べた3つの
 ランダム化比較対照試験のみに限定して分析したところ、晩期切開群と比べ早期切開群
 では死亡率が低下(OR0.40; 95% CI, 0.25-0.97)、またICU滞在期間が短縮した。
Should tracheostomy be performed as early as 72 hours in patients requiring prolonged
mechanical ventilation? Respir Care 2010;55:76–87.

 早期の気管切開により、人工呼吸器使用期間およびICU滞在期間が短縮、
 また死亡率が低下することが示されている。
 ゆえに、人工呼吸器使用期間が7日以上になると”予測される”患者に対しては
 早期気管切開を実施することは考えてもよいと思われる。
 ただ、長期の気管挿管を要する患者をどうやって予測するのかという
 大きな問題点があるため、こればかりはいかんともしがたい。

●抗菌コーティングの気管内チューブ
 Endotracheal Tube Coated with Antimicrobial Agents

 気管チューブ内にはバイオフィルムが形成され、これがVAPの原因となることは
 よく知られている。重症患者に銀コーティング気管チューブを用いると、
 気管内の細菌定着が減少し、VAP発生率が低下することが示されている。
Reduced burden of bacterial airway colonization with a novel silver-coated endotracheal tube in a randomized multiplecenter feasibility study. Crit Care Med 2006;34:2766–2772.
 また、1%ヘキセチジン含有気管チューブがVAP予防に有用であるという報告もある。
Physicochemical characterization of hexetidine-impregnated endotracheal tube poly(vinyl chloride) and resistance to adherence of respiratory bacterial pathogens. Pharm Res 2002;19:818–824.
 NASCENT試験は、人工呼吸を24時間以上要すると予測される患者2003人を
 対象として、銀コーティング気管チューブと従来の気管チューブの比較を行った
 大規模なランダム化試験である。この結果として、銀コーティング気管チューブ群が、
 細菌培養で確診されたVAPの発生率が有意に低かった
 (37/766[4.6%] vs. 56/743[7.5%]; P=0.003)。
 NASCENT試験で得られたデータのコホートアナリシスで、VAP発症例における
 死亡率は、銀コーティング気管チューブ群の方が従来の気管キューブ群よりも
 有意に低いことが明らかになった。
Silver-coated endotracheal tubes and incidence of ventilator-associated pneumonia: the NASCENT randomized trial. JAMA 2008;300:805–813.
 コストパフォーマンスに重きをおいた解析では、銀コーティングチューブの使用は
 VAPを予防し入院医療費を削減する可能性があるとされている。
 VAPを一例防ぐごとに12840US$がplusになるという計算となった。
Cost-effectiveness analysis of a silvercoated endotracheal tube to reduce the incidence of ventilator-associated pneumonia. Infect Control Hosp Epidemiol 2009;30:759–763.
 銀コーティングの気管チューブの使用は推奨してもよいと考える。

●人口鼻および加温・加湿器HMEs or HHs
 9つのスタディにおいて1378人を対象としたメタアナリシスがある。
 人工鼻の使用によってVAP発生率が低下することがわかった
 (RR0.7; 95%CI, 0.50-0.94)。しかし、人工鼻と比べ加温加湿器の方が
 VAP発生率が有意に低いことを示した非ランダム化試験は、この9のメタアナリシス
 には含まれていない。
Efficacy of heat and moisture exchangers in preventing ventilator-associated pneumonia: meta-analysis of randomized controlled trials. Intensive Care Med 2005;31:5–11.
 他のメタ分析では、13のスタディ・2580人を対象としたものがある。
 結果として、人工鼻と加温加湿器にはVAP率、ICU死亡率、ICU滞在期間などに
 差がみられなかった。ただ、人工鼻は安価であり、コストエフェクティブという観点
 からは、加温加湿器に比べると優位に立つかもしれない。推奨には至らない。
Impact of passive humidification on clinical outcomes of mechanically ventilated patients:
a meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care Med 2007;35:2843–2851.
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by otowelt | 2010-11-10 11:59 | 集中治療