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インパクトファクター、5年インパクトファクター、アイゲンファクター

あまり臨床現場でアイゲンファクターがどーのこーのという議論はされて
いないように思う。

●インパクトファクター;IF
インパクトファクター(IF)は、医学をはじめ、自然科学・社会科学分野の学術雑誌を
対象として、その雑誌の影響度を測る指標のことである。1955年に
Eugene Garfieldが考案し、現在Thomson Reuterの引用文献databaseの
Web of Scienceに収録されるデータを元に算出されている。
計算方法は、wikipediaにも掲載されているように
Web of Science の収録雑誌の3年分のデータを用いて計算される。

(wikipediaから)
たとえばある雑誌の2004年のインパクトファクターは2002年と2003年の論文数、2004年のその雑誌の被引用回数から次のように求める。
A = 対象の雑誌が2002年に掲載した論文数
B = 対象の雑誌が2003年に掲載した論文数
C = 対象の雑誌が2002年・2003年に掲載した論文が、2004年に引用された延べ回数
C÷(A+B) = 2004年のインパクトファクター
例えば、この2年間合計で1,000報記事を掲載した雑誌があったとして、それら1,000報の記事が2004年に延べ500回引用されたとしたら、この雑誌の2004年版のインパクトファクターは0.5になる。
インパクトファクターは「学術雑誌」の評価指標であって、学術雑誌論文はもとより研究者の評価に用いるものではない。しかし、実際には多くの研究者がインパクトファクターに対する誤解を持っている。「この〔論文〕のインパクトファクターを知りたい」「〔私の〕インパクトファクターはいくつか」といった問いは典型的なインパクトファクターへの無理解を示している。自分の投稿した雑誌のインパクトファクターが、あたかも株価のように上昇することを期待するのもインパクトファクターへの無理解から来るものである。
計算対象についても、直近2年の論文データしか用いないのは短すぎるとの批判がある。インパクトファクターの計算に直近2年の論文データを用いるのは、どの分野においても平均的な論文は出版後2年目3年目に最も多く引用され、徐々に引用されなくなっていく傾向があるためである。しかし実際には分野によってはなだらかな山を描きながら息長く引用され続けるものもあり、この場合には直近2年のデータを用いたインパクトファクターでその論文の掲載誌の影響度をはかることは難しい。これに対する回答として、トムソン・ロイター社は 2009年、JCRに5年インパクトファクターを新たな指標として追加した。



●5年インパクトファクター;5yIF
上記のように5yIFは定義されるが、Journal Citation Reports(JCR)で、
IFと5yrIFで数値に差が出ているものが結構ある。実はこれ、本当に上記の
ような短期的評価によるデメリットを反映しているだけではないこともあると
されている。すなわち、自誌引用をするとIFを意図的に上昇させることができる
ためである。IFの究極の問題がココにある。また、論文数の少ない雑誌が
有利なのも言わずもがなである。そこでJCRが導入したのが
アイゲンファクター(Eigenfactor)である。


●アイゲンファクター;EF
計算方法が非常にややこしいので、読んですらいない。ただ、おおまかには
Googleの検索上位ランクのようなアルゴリズムらしく、引用元の雑誌に
”重み”をつけることで、よく引用される雑誌からの引用は大きな価値を与える
というものらしい。大規模な図書館を利用する医師が、その雑誌に
費やす時間の割合を推定したものがEFと考えてもらえればいい。
Natureから引用されようが、Honya-rara-journalから引用されようが、
カウントとしては1回は1回であったものが、雑誌間の引用に”重み”が
ついている点がIFとの大きな違いである。そのため、IFの欠点であった
以下の点がほぼ解消された。
1.論文数の少ない小規模の雑誌が高い数値になる
2.Reviewが多い雑誌が高い数値になる
3.分野によって偏りが出てしまう
ゆえにEFの上位にNATUREやSCIENCEが入るのは当然の結果であろう。
ちなみに、EFの総和は100になるように設定されている。


●Article influence score
Article Influence Scoreは、”重み付け引用”によるEFをそれぞれの
雑誌の掲載論文数の比、すなわち「全対象雑誌掲載論文に占める当該雑誌の
掲載論文数」で割ったもの。1を超えた場合、平均よりも影響力が強いということ。
論文数の比が分母にくるため、掲載数の少ない雑誌が高く出やすいという
IFと同じ欠点をもつ。ゆえに、IFとの相関が指摘されている。


上記をふまえて、個人的に興味のある分野の数値をみてみたい。

1.Oncology
1位は永らく不動であろうが、JCOのEFが思ったより高い。これには納得。
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2.Respiratory system
AJRCCMに匹敵するくらいCHESTのEFが高い。これも納得である。
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3.Infectious disease
Lancet infectious diseaseよりもCIDの方がEFが高い。
というよりも、思ったよりLancetが低い。
読む頻度としては個人的には両雑誌とも同等くらいだが…。
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4.Critical care medicine
これは、予想通り。
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by otowelt | 2011-03-31 05:54 | その他

挿管された外傷患者へのストレス量のヒドロコルチゾンはその後の肺炎を減少させる

Hydrocortisone Therapy for Patients With Multiple Trauma
The Randomized Controlled HYPOLYTE Study
JAMA. 2011;305(12):1201-1209


背景:
 ストレス量のヒドロコルチゾンを外傷患者に用いることの役割はまだわかっていない。

目的:
 ヒドロコルチゾンを外傷患者に用いることの効果を検証する。

方法:
 多施設共同ランダム化プラセボ対照比較試験である
 (HYPOLYTE (Hydrocortisone Polytraumatise)試験)
 フランスの7ICUにおいて、2006年11月から2009年8月までの
 150人の重症外傷患者を登録した。彼らはランダムにヒドロコルチゾン投与群
 (200 mg/d 5日間、その後6日目100mg/d、7日目50mg/d)
 とプラセボ群に割りつけられた。不適切な副腎応答があった患者は治療中断とした。
 主要転帰は28日以内の院内肺炎とし、副次転帰は人工呼吸器装着期間、
 低ナトリウム血症、死亡とした。

結果:
 ITT解析では149人が組み込まれた。
 modified ITT解析では、113人がコルチコステロイド欠乏であった。
 ITT解析でヒドロコルチゾン治療を受けた73人のうち26人 (35.6%) が、
 プラセボ群の76人のうち39人(51.3%)が、28日以内に肺炎に陥った
 (HR 0.51; 95% CI0.30-0.83; P=.007)。
 modified ITT解析では、前者の56人のうち20人(35.7%)が、
 後者の57人のうち31人が28日以内に肺炎に陥った
 (HR, 0.47; 95% CI, 0.25-0.86; P=.01)。
 人工呼吸器非装着日数は、ヒドロコルチゾン群において
 ITT解析では4日増加(95% CI, 2-7;P=.001)、modified ITT解析では
 6日増加(95% CI, 2-11; P<.001)。
 低ナトリウム血症はプラセボ群の7人(9.2%)にみられたが
 ヒドロコルチゾン群では観察されなかった。
 (absolute difference, −9%; 95% CI, −16% to −3%; P=.01).
 プラセボ群の76人中4人(5.3%)、ヒドロコルチゾン群の73人中6人(8.2%)
 が死亡した(absolute difference, 3%; 95% CI, −5% to 11%; P=.44)。
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結論:
 挿管された外傷患者において、ストレス量のヒドロコルチゾンを
 投与することによって、院内肺炎を減少させることができる。

by otowelt | 2011-03-29 13:10 | 救急

genotypeによっては結核患者における喀痰培養陰性化の促進にビタミンDは有用

結核患者さんの治療では、
塗沫が陰性してすぐに退院できる人と、培養陰性化をじっくり待って退院する人と
大きく2つのコースがある。後者は平均的に2ヶ月くらいかかってしまうので
治療者としてもできるだけ早く家に帰してあげたいところである。
ただ、禁煙できない、コンプライアンス不良、培養陰性化が遅い、という
3種の神器が揃うと非常にやっかいだ。

High-dose vitamin D3 during intensive-phase antimicrobial treatment of pulmonary tuberculosis: a double-blind randomised controlled trial
The Lancet, Volume 377, Issue 9761, Pages 242 - 250, 15 January 2011


背景
 ビタミンDは、抗菌薬が発達する前に結核治療として使用されていた。
 この代謝物はin vitroにおいて抗菌作用があるとされている。
 喀痰培養の陰性化に対してこのビタミンDの効果を検証した臨床試験はない。

方法:
 われわれはビタミンDの多施設共同ランダム化比較試験を
 成人の喀痰塗沫陽性結核患者においてロンドン、イギリスで施行した。
 146人が登録され、2.5mgのビタミンD3あるいはプラセボを
 結核治療開始から14日、28日、42日に投与した。
 プライマリエンドポイントは、治療開始してから喀痰培養陰性化までの時間とした。
 患者は、ビタミンD受容体のTaqIとFokIポリモルフィズムによる
 ジェノタイプ分けがなされた。

結果:
 126人がデータ解析に妥当な患者であった。
 喀痰培養陰性化までの期間は、ビタミンD群において36.0日、プラセボ群に
 おいて43.5日であった。(調整HR 1.39, 95% CI 0.90—2.16; p=0.14)
 またTaqI genotypeはビタミンD投与により喀痰培養陰性化までの期間の
 変化をもたらすことがわかった (P(interaction)=0.03)。
 また、tt genotypeの患者にのみ、促進的な反応が観察された
 (調整HR8.09, 95% CI 1.36—48.01; p=0.02)
 FokI genotypeはビタミンDによる効果に影響はなかった(P(interaction)=0.85)
 56日目の平均血中ビタミンD濃度は、介入群101.4 nmol/L、プラセボ群
 22.8 nmol/Lであった(95% CI for difference 68.6—88.2; p<0.0001)

結論:
 4回にわたるビタミンD3(2.5mg)の投与によって
 抗結核治療を受けている患者の同血中濃度が上昇する。
 ビタミンDは有意に喀痰培養陰性化までの時間には影響しなかったものの
 TaqIのうちのtt genotypeの患者においては有意にその期間を短縮した。

by otowelt | 2011-03-29 06:12 | 抗酸菌感染症

医学部・大学院において、民族別に差がある

Cohen’s dがいまだによくわからず、アレルギーになっている。
というわけでHazard ratioも実はよくわかっていなかったりする。
forest plotにされると視覚的に「ああそうなんだ」と思うが、
いざ各論を問われると”説明”できない。
ちょっと統計をかじっただけの医者は、そんなもんでいいのだろうか。

Ethnicity and academic performance in UK trained doctors and medical students: systematic review and meta-analysis.
BMJ. 2011 Mar 8;342:d901. doi: 10.1136/bmj.d901


概要:
 イギリスで研修を受けた医師・医学生の学業成績と民族の関連について調べた。

デザイン:
 システマティックレビュー/メタアナリシス

方法:
 PubMed, Scopus, ERIC, Google/Google Scholarなどの
 オンラインデータベース/検索エンジン、医学教育関連の専門誌
 学会抄録を調査してデータを抽出。
 医学生およびイギリスで研修を受けた医師において
 医学部や大学院における学業成績を民族別に定量的に評価した報告を
 対象とした。イギリスをのぞく国における評価、またそういった国でのみ
 研修を受けた場合、自己申告のみによる評価、サンプリングバイアスが
 明らかな場合、民族やアウトカムの記述が不十分な場合、除外となった。

結果:
 22の報告(23742人)のメタアナリシスでは、非白人は
 白人に比べ学業成績が劣ることがわかった
 (Cohen’s d=-0.42、95%CI-0.50~-0.34、p<0.001)。
 医学生、大学院生、臨床能力、合格ないしは不合格のアウトカムなどの
 個々の評価や、白人とアジア人を比べたメタアナリシスにおいても、
 同様の傾向が同程度にみられた。全メタアナリシスに不均一性があった。
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結論:
 おのおのの医学部や試験のタイプ、また学部内や大学院において
 学業成績の民族間差が相当みられるものと考えられる。

by otowelt | 2011-03-29 05:38 | その他

多発外傷後敗血症の死亡率は改善していない

多発外傷後敗血症の死亡率が不変であるという疫学的研究が
Crit Care Medから出ていた。

Epidemiology and risk factors of sepsis after multiple trauma: An analysis of 29,829 patients from the Trauma Registry of the German Society for Trauma Surgery
Crit Care Med 2011; 39:621– 628


目的および方法: 
 このスタディの目的は、
 1) 1993年から2008年までの間、ドイツにおける多発外傷後の敗血症の
  アウトカムを調べ、
 2) 外傷後敗血症の独立危険因子を評価することである。
 レトロスペクティブにドイツにおける外傷レジストリーからデータ抽出。
 合計166の外傷センター(levels I–III)。

患者:
 1993年から2008年の間に上記レジストリーへ登録された
 患者で外傷のInjury Severity Scoreが9点を超え、ICUに入室した
 患者を検証した(n=29,829)。

結果:
 16年以上の観察期間において、10.2%(3,042人)が
 院内において敗血症となった。年間のデータは
 1993–1996, 1997–2000, 2001–2004, 2005–2008の
 サブグループにわけられた。敗血症の発症はこの4つのサブピリオド
 において14.8%, 12.5%, 9.4%, 9.7% (p < .0001)であった。
 外傷患者における院内死亡率も同様に16.9%, 16.0%, 13.7%, 11.9%
 であった(p <.0001)。敗血症が原因の死亡に関しては
 16.2%, 21.5%, 22.0%, 18.2% (p=.054)であった。
 多変量ロジスティック解析において外傷後敗血症の独立危険因子を
 解析したところ、以下の如くであった。
 男性、年齢、基礎疾患の存在、GCS8点未満、Injury Severity Score、
 Abbreviated Injury Scale(THORAX)score 3点を超えるもの、
 外傷部位の数、赤血球輸血単位数、手術数、開腹術。
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結論:
 敗血症の頻度は観察期間中減少したものの、
 この10年では変化はみられなかった。多発外傷における全死亡率は
 1993年から減少したが、敗血症における死亡は不変であった。
 すなわち、敗血症はいまだに克服すべき外傷の重要な合併症であると
 考えられる。独立危険因子を把握することは、早期診断と外傷後敗血症を
 減らすことに役立つかもしれない。

by otowelt | 2011-03-28 23:00 | 感染症全般

研修医の労働時間を短縮することが、医療・教育の質を改善させるものではない

アメリカとイギリスで1週間あたりの労働時間上限に
かなり差があるのが気になるが・・・。
”研修医の労働時間←→質”というテーマがスタディになるなんて
昔のドクターは思いもしなかっただろうなぁ・・・。

Impact of reduction in working hours for doctors in training on postgraduate medical education and patients’ outcomes: systematic review
BMJ 2011;342:d1580 doi:10.1136/bmj.d1580


目的:
 医学部の卒後研修を受ける医師の労働時間を短縮することによって
 医学教育・臨床的アウトカムの客観的指標に影響を与えるかどうかを検証する。
 システマティックレビュー。

方法:
 Medline、Embase、ISI Web of Science、Google Scholar、
 ERIC、SIGLEから検索。言語に制限を設けずに
 1990年から2010年12月まで出版された文献で調査をおこなった。
 医学部卒後研修アウトカム、患者の安全性、臨床的なアウトカム
 などの客観的数値が使われ、duty hoursの変化へのインパクトを評価。

結果:
 72研究を検討対象とした。
  38:reporting training outcomes
  31:reporting outcomes in patients
  3:reporting both
 80時間/週を超える労働時間(アメリカ推奨時間)から短縮することよって
 患者安全性へ逆的影響はみられず、卒後訓練への影響は限定的であった。
 ヨーロッパでの56・48時間未満という労働時間制限に関する報告は、
 スタディクオリティが低く、上記と相反する結果がみられているため
 はっきりとした結論を出せなかった。

結論:
 アメリカにおいて、 80時間からの労働時間短縮は、
 患者や卒後訓練へ逆的影響がみられなかった。
 56・48時間制限というイギリスのスタディはスタディクオリティが
 低く、評価できなかった。さらなる研究が必要である。

by otowelt | 2011-03-28 22:28 | その他

サルメテロールよりチオトロピウムのほうがCOPD急性増悪を予防できる

Tiotropium versus Salmeterol for the Prevention of Exacerbations of COPD
N Engl J Med 2011;364:1093-103.


背景:
 COPDのガイドラインにおいて、中等症~最重症の患者の症状緩和と
 急性増悪のリスクを低下させるために、長時間作用型の吸入気管支拡張薬を
 使用することが推奨されている。ただ、長時間作用型抗コリン薬と
 長時間作用型β2刺激薬のどちらがよいかはわかっていない。
 COPD急性増悪の予防の観点において、抗コリン薬チオトロピウムが
 β2刺激薬サルメテロールにまさっているかどうか検証した。

方法:
 ランダム化二重盲検ダブルダミー並行群間比較試験を1年間観察する試験。
 COPDの中等症~最重症で、前年にCOPD急性増悪の既往がある患者を対象にして、
 中等度または高度のCOPD急性増悪の発生に対して、
 チオトロピウム18μg1日1回とサルメテロール50μg1日2回投与の効果を比較。

結果:
 合計7376人をチオトロピウム群(3707 例)とサルメテロール群(3669 例)の
 いずれかにランダムに割り付け。チオトロピウム群ではサルメテロール群に比べて
 初回のCOPD急性増悪までの期間が延長し(187 日 vs 145 日)、リスクが
 17%低下(HR0.83、95%CI 0.77~0.90、P<0.001)。またチオトロピウム群
 において初回のCOPD重症増悪までの期間も延長(HR0.72、
 95% CI 0.61~0.85,P<0.001)、年間の中等度~高度の急性増悪回数も減少
 (0.64 vs 0.72、rate ratio0.89、95% CI 0.83~0.96、P=0.002)。
 また年間の重症のCOPD急性増悪回数も減少した(0.09 vs 0.13、rate ratio0.73
 95% CI 0.66~0.82,P<0.001)。重篤な有害事象の発現と治療中止になった
 有害事象の発現は両群ともに同程度だった。
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結論:
 中等症~最重症のCOPDにおいて、サルメテロールよりチオトロピウムのほうが
 COPD急性増悪の予防に有効である。

by otowelt | 2011-03-24 06:23 | 気管支喘息・COPD

イレッサ、国にも賠償命令

本日15時すぎにイレッサによる間質性肺炎の訴訟について、
東京地裁で国の賠償命令の判決が出た。
これにより利益を得ている患者さんに、不安を与えないようにしたい。

●イレッサ訴訟、東京地裁は国の責任認定(読売新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の服用後に副作用の重い肺炎で死亡した患者3人の遺族4人が、国と輸入販売元の製薬会社「アストラゼネカ」(大阪市)に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。
 松並重雄裁判長は「重い副作用が起きる可能性があると認識しながら、十分な措置を講じなかった」として国とア社の責任を認定し、患者2人の遺族2人に対して計1760万円を賠償するよう命じた。国とア社は控訴を検討する。
 副作用で死亡した患者が昨年9月末現在で819人(厚生労働省調べ)に上るイレッサを巡る訴訟で、国の責任を認めた判決は初めて。大阪地裁は2月、国の責任は認めず、ア社のみに賠償を命じていた。
 東京地裁の訴訟では、国が2002年の承認にあたり、ア社に副作用の「間質性肺炎」について注意喚起するよう十分な指導をしていたかが主な争点となった。
 ア社は国の指導を受け、添付文書の「重大な副作用」欄で、重度の下痢や肝機能障害などに続く4番目に間質性肺炎の可能性を記載したが、判決は「警告欄に記載するか、他の副作用よりも前に記載するよう指導すべきだった」と指摘。ア社については、「安全性確保のための情報提供が不十分だった」と判断した。
 この訴訟で、東京・大阪両地裁は1月、和解を勧告。原告側は受け入れを表明したが、国とア社は拒否した。

●イレッサ訴訟:国の賠償責任も認める 東京地裁判決(毎日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の副作用で間質性肺炎を発症するなどして死亡した3患者の遺族4人が、国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に計7700万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(松並重雄裁判長)は23日、国とア社に対し、2患者の遺族2人に計約1760万円を支払うよう命じた。イレッサの副作用死を巡り、国の賠償責任が認められたのは初めて。

●薬害イレッサ、国の責任も認める 東京地裁、賠償命令(朝日新聞)
 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐり、東日本に住む死亡患者3人の遺族が、輸入を承認した国と販売元の「アストラゼネカ」(大阪市)に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(松並重雄裁判長)は23日、患者2人について国とア社の責任を認め、計1760万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 薬害イレッサ訴訟は大阪地裁でも起こされ、ア社の責任だけを認める判決が2月に出ており、両地裁で判断が分かれた。
 死亡患者3人のうち1人は、発売3カ月後に説明書の「警告」欄で副作用が注意喚起された後に服用しており、請求は退けられた。
 イレッサは、日本人の肺がんの8割以上を占め、治療も難しい「非小細胞肺がん」の末期患者に処方される。英国の製薬大手であるア社が開発し、日本は世界で初めて2002年7月に承認、同月に販売が始まった。主な副作用として想定された「間質性肺炎」については、医師向けの説明書で「重大な副作用」欄の4番目に記載されていた。
 しかし、市販後に肺障害による死亡例が相次いだ。ア社は同年10月、厚生労働省の指示に基づき、間質性肺炎について説明書の冒頭に「警告」欄を設けて注意を喚起した。
 患者や遺族が大阪と東京で起こした訴訟では、両地裁が今年1月、国とア社の責任を指摘して和解を勧告。原告側は応じる意向を示したが、国とア社が拒否した。
 2月の大阪地裁判決は、イレッサの有用性を認める一方で、海外での報告例などから、間質性肺炎を発症して死に至る副作用を、承認時に認識できたと判断。ア社について、間質性肺炎を当初から説明書の「重大な副作用」欄の1番目に記すべきだったと指摘し、製造物責任法の指示・警告上の欠陥を認定した。しかし国については責任を否定していた。

●肺がんイレッサ、国にも賠償命令 東京地裁、対応怠る(共同ニュース)
 肺がん治療薬「イレッサ」に重大な副作用の危険があることを知りながら適切な対応を怠ったとして、患者3人の遺族計4人が国と輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、患者2人の遺族2人に計1760万円を支払うよう両者に命じた。
 2月25日に言い渡された大阪地裁の判決はアストラゼネカの賠償責任しか認めておらず、東京地裁判決は新薬の副作用情報をめぐって国の責任を重く見た判断となった。
 判決理由で裁判長は、国の責任について「(2002年7月の)承認当時、アストラゼネカに添付文書に副作用の間質性肺炎が致死的となる可能性があることを記載するよう行政指導しなかった」と指摘。国の対応は違法だったとした。

by otowelt | 2011-03-23 19:20 | 肺癌・その他腫瘍

喫煙は認知症のリスクである

e0156318_10134935.jpg喫煙と認知症の関係において重要な報告と思われる。

Heavy Smoking in Midlife and Long-term Risk of Alzheimer Disease and Vascular Dementia
Arch Intern Med. 2011;171(4):333-339


背景
 喫煙は生命を脅かす様々な病気の危険因子である。
 しかしながら、認知症との関係については議論がある。
 この研究の目的は、喫煙とAlzheimer病、脳血管性
 認知症との関連性を調べることである。

方法:
 1978~85年の間に健康診断に参加した北カルフォルニアの50~60歳の
 33108人のうち、1994年に生存し、引き続きこのヘルスケアシステム会員だった
 21123人を登録。医療記録に基づき、1994年1月1日から2008年7月31日までの
 認知症、Alzheimer病、脳血管性認知症の診断の有無を検索。
 健康診断時のアンケートにおける1日喫煙量により、喫煙量0.5箱未満、
 0.5~1箱、1~2箱、2箱超に分類。

結果:
 平均追跡期間23年において、認知症と診断されたのは5367人(25.4%)であった。 
 そのうち1136人がAlzheimer病、416人が脳血管性認知症と診断されていた。
 年齢、性別、人種等で調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用い、
 中年期の喫煙と認知症の関係を調べたところ、
 1日あたり2箱を超える喫煙者では、非喫煙者に比べ、認知症の調整HRは
 2.14(95%CI1.65-2.78)、Alzheimer病は2.57(1.63-4.03)、
 脳血管性認知症は2.72(1.20-6.18)と、有意なリスク上昇がみられた。
 1日あたり1~2箱の喫煙者も、認知症の調整HR1.44(1.26-1.64)と有意で、
 Alzheimer病ではHR1.18(0.92-1.52)、脳血管性認知症1.42(0.95-2.13)
 と、リスク上昇傾向がみられた。
 1日あたり0.5~1箱の群においても、認知症のリスクは1.37(1.23-1.52)と
 有意であった。Alzheimer、脳血管性認知症は有意差がみられなかった。
 過去の喫煙者、1日あたり0.5箱未満の喫煙者は、いずれの評価項目にも
 差がみられなかった。

結論:
 この大規模コホート試験において、中年期にヘビースモーカーであった場合
 その後の認知症リスクは、非喫煙者の2倍を超える。

by otowelt | 2011-03-22 07:07 | 呼吸器その他

妊娠喘息患者における吸入ステロイドは、胎児副腎機能に影響なし

「妊婦への吸入ステロイドはパルミコートが一番安全」と
研修医時代に教えられた記憶があるが、あまり気にしなくてよいのだろうか。
妊娠喘息において極めて重要なスタディであり、呼吸器内科医・産婦人科医ともに
読んでおきたい論文である。

Fetal Glucocorticoid-regulated Pathways Are Not Affected by Inhaled
Corticosteroid Use for Asthma during Pregnancy
Am J Respir Crit Care Med Vol 183. pp 716–722, 2011


背景:
 現在のところ、吸入ステロイド (ICS) は母親、胎盤、胎児への全身的な影響に
 おけるエビデンスがないにもかかわらず、妊娠中の喘息コントロールとしての
 使用が推奨されている。

目的:
 喘息の妊婦 (n = 156) と喘息のない妊婦(n = 51)において血清
 コルチゾル、エストリオール、コルチコトロピン遊離ホルモンを測定。

方法:
 妊娠のそれぞれのトリメスターにおいて、ICSの使用と投与量を記録し、
 血液検査をおこなった。母体の超音波を18週・30週に施行し
 出生時体重と胎児の性別を記録した。

結果:
 上記母体ホルモンの血清濃度は、喘息の有無により影響を受けなかった。
 ただしICS使用時に用量依存的に、上記は抑制された。
 この結果は胎児性別に依存し、女児を妊娠した際、
 第1トリメスターではICSは母体コルチゾルと逆相関し、
 第2~3トリメスターでは母体のオステオカルシンと逆相関した。
 男児を妊娠したときは、母体のコルチゾル、エストリオール、オステオカルシン
 血清濃度に影響はみられなかったものの、コルチコトロピン遊離ホルモンは
 ICS使用時に第1トリメスターでのみ増加がみられた。
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結論:
 妊娠喘息患者におけるICS使用により、女児を妊娠した時にのみ
 母体の糖質コルチコイド系に影響を生じる。
 ただし、男児および女児の両方の妊娠において、胎児副腎機能は
 影響を受けなかった。ICSは胎児期において糖質コルチコイド系に
 影響を与えないという結果となったが、これはすなわち
 胎児の成長・発達に悪影響を与えないものと考えられる。

by otowelt | 2011-03-22 04:25 | 気管支喘息・COPD