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H1N1インフルエンザによるALI/ARDSに対してステロイド投与は死亡率を増加させる

H1N1インフルエンザ後のARDSに対するステロイド使用について
negative studyが2つAJRCCMから出ていた。

Early Corticosteroids in Severe Influenza A/H1N1 Pneumonia and Acute Respiratory Distress Syndrome
Am J Respir Crit Care Med Vol 183. pp 1200–1206, 2011


H1N1インフルエンザに続発したARDSに対してステロイドを使用することが
あるが、A/H1N1v 2009後にARDSに陥った患者208人に対する
ステロイド使用について検討したもの。39.9%がステロイドを使用されており、
ステロイドはARDSによる死亡と関連していた
(33.7 vs. 16.8%; hazard ratio, 2.4; 95% CI, 1.3–4.3; P =0.004)
propensity score調整後では、
adjusted hazard ratio, 2.82;95% CI, 1.5–5.4; P =0.002。
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Corticosteroid Treatment in Critically Ill Patients with Pandemic Influenza A/H1N1 2009 Infection
Am J Respir Crit Care Med Vol 183. pp 1207–1214, 2011


韓国の28の病院に入院となったA/H1N1v 2009インフルエンザ患者
245人において検討したもの。ICU挿管例でALIの基準をみたすもの。
全体の44%がステロイド治療を受けた。
90日死亡率は、ステロイド投与群で高かった
(58%, 62 of 107 vs 27%, 37 of 138、P < 0.001)。
ステロイド投与群は重複感染を起こしやすい傾向にあった。
ちなみに、propensity score調整後の90日死亡率に関しては
adjusted odds ratio, 2.20; 95%CI 1.03–4.71。
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by otowelt | 2011-04-30 06:17 | 集中治療

野生アルマジロとHansen病患者における共通のMycobacterium leprae株3I-2-v1

e0156318_9594179.jpgleprosyはHansen病のことであるが、
便宜的に訳ではHansen病と訳す。
Hansen病が人畜共通感染症である
可能性を示したインパクトのある論文
である。leprosyという言葉は、
宗教医学的な意味合いのある用語らしい。

Probable Zoonotic Leprosy in the Southern United States
N Engl J Med 2011;364:1626-33.


背景:
 アメリカ南部のルイジアナ州やテキサス州などで、アメリカ外曝露がない
 のにもかかわらずアメリカ人でのleprosy:Hansen病の土着症例が発生
 している。この地域とメキシコでは、野生アルマジロが
 Mycobacterium lepraeに感染している。

方法:
 野生のアルマジロ1 匹、アメリカ人Hansen病患者3人から検出した
 Mycobacterium lepraeの全ゲノム再配列決定により、
 感染菌株は本質的に同一であることが明わかった。これらの菌株と
 アジアおよびブラジルのMycobacterium leprae株の
 比較ゲノム解析によって、SNP51個と11bpの挿入欠失を同定。
 アメリカ南部の5 つの州の野生アルマジロ33匹、ルイジアナ州の
 診療所を受診したアメリカ人外来患者50人、ベネズエラ人患者64人から
 検出したMycobacterium leprae株と、アメリカ以外の
 参照比較株4株で、これらのSNP部位とリピート数の異なる10の
 タンデムリピートで遺伝子型を決定。

結果:
 アメリカ外での曝露歴がある患者のMycobacterium leprae遺伝子型は、
 おおむね出身国や渡航歴を反映していたものの、野生アルマジロ
 33匹中28匹と、アルマジロが媒介するMycobacterium leprae
 曝露されている可能性のある地域に居住しているアメリカ患者39人中
 25人においては、特異なMycobacterium leprae遺伝子型
 (3I-2-v1)が検出された。この遺伝子型は世界の他の地域では
 発見されていない。
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結論:
 アメリカ南部の野生アルマジロと多くのHansen病患者が
 同一のMycobacterium leprae株に感染していた。
 アルマジロは自然界におけるMycobacterium lepraeの主たる
 保菌宿主であり、Hansen病はこの地域の人獣共通感染症の可能性がある。

by otowelt | 2011-04-29 10:02 | 感染症全般

移植レシピエントにおけるBAL中Aspergillus PCRアッセイとGMテストの感度・特異度

菌名を斜字にするのがめんどくさかったのであしからず。
A. terreus特異リアルタイムPCRのくだりは、何となく”ついで”
という感が否めない論文ではあるが。

Comparison of an Aspergillus Real-time Polymerase Chain Reaction Assay with Galactomannan Testing of Bronchoalvelolar Lavage Fluid for the Diagnosis of Invasive Pulmonary Aspergillosis in Lung Transplant Recipients
Clinical Infectious Diseases 2011;52(10):1218–1226


背景:
 侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)の早期診断と治療はアウトカムを改善する。

方法:
 現在利用できる検査として、pan-Aspergillus、Aspergillus fumigatusないし
 Aspergillus terreusに特異的なリアルタイムPCRアッセイと
 the Platelia galactomannan (GM)アッセイを肺移植レシピエント
 からの150のBAL検体で比較した。
 16人がproven/probable IPA、26人がAspergillusコロナイゼーション、
 11人が非Aspergillus真菌コロナイゼーション、97人ネガティブコントロール。

結果:
 IPAに対するpan-Aspergillus PCRの感度および特異度は
 100% (95% CI, 79%–100%) と88% (79%–92%)であった。
 GM (≧.5)の感度および特異度は93% (68%–100%) 、89% (82%–93%)
 であった。A. fumigatus–特異PCRの感度・特異度は、85% (55%–89%) 、
 96% (91%–98%)で、A. terreus–特異PCRはIPA症例のうち1例のみ陽性で
 特異度は必然的に99% (148 of 149)となった。GMで診断しえなかった
 IPAでPCR陽性例は1人であった。コロナイゼーションのBAL検体において
 GMの特異度は92%で、pan-Aspergillus PCRの50%より高かった
 (P=.003)。ネガティブコントロールのうちpan-Aspergillus PCR の特異度は
 97%で、これはGMより高かった(88%; P=.03)。BAL-PCRとGMが陽性の場合
 特異度97%、最小損失(?)感度93%。
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結論:
 BAL検体におけるpan-Aspergillus PCRアッセイとGMテストは
 移植レシピエントにおけるIPA診断に有用である。A. fumigatusないし
 A. terreus特異リアルタイムPCRアッセイもIPAの原因として
 早期診断やアムホテリシンB耐性という観点からは有用である。

by otowelt | 2011-04-26 13:07 | 感染症全般

前立腺癌スクリーニングは前立腺癌死に影響を与えない

内科医全般にとって重要な臨床試験だと思われる。

Randomisedprostate cancer screening trial:20year follow-up
BMJ 2011;342:d1539


目的:前立腺癌スクリーニングが、前立腺による癌死を減らすかどうかを調べる。

デザイン:Population based randomised controlled trial

セッティング:Department of Urology, Norrköping,
     the South-East Region Prostate Cancer Register.

方法:
 スウェーデンのノルヒェーピングの住民登録を利用し、1987年に同町に
 居住していた50~69歳の男性全員(9026人)を同定。その6分の1にあたる
 1494人をランダムに選出し、3年ごとのスクリーニング検査に割り付け、
 1987年から1996年まで実施した。最初の2回は直腸診のみとし、1993年と
 1996年には血液検査においてPSA値の測定を施行(cut off 4μg/L)。
 癌と疑われた症例において、前立腺針吸引生検を施行した。
 コントロール群は、スクリーニング群に割り付けられなかった男性全員。
 プライマリアウトカムは2008年12月31日までの前立腺癌死亡のrisk ratioとした。

結果:
 1987年から1996年までの合計4回のスクリーニングの受診率は、
 78%(1492人中1161人)、70%(1363人中957人)、
 74%(1210人中895人)、74%(606人中446人)であった。
 スクリーニング群の前立腺癌罹患は85人(5.7%)、コントロール群は
 292人(3.9%)であった。また、スクリーニング群の患者で
 スクリーニングにより前立腺癌の診断がなされたのは43人(2.9%)で、
 検診と検診の間に前立腺癌が発見された患者が別に42人(2.6%)いた。
 限局性の腫瘍であった割合はスクリーニング群で56.5%と高く、
 コントロール群は26.7%であった(P<0.001)。
 全例が前立腺癌標準治療を受けた。
 前立腺癌死は、スクリーニング群で前立腺癌と診断された患者85人のうち
 30人(35%)、コントロール群は292人中130人(45%)であった。
 前立腺癌と診断された患者の全死因死亡はそれぞれ81%と86%。
 スクリーニング群の前立腺癌死亡のrisk ratioは1.16(95%CI0.78-1.73)、
 両群間に有意差はなかった。前立腺癌死亡までの時間と全死因死亡までの
 時間をスクリーニング群とコントロール群の間で比べたものの、
 P値は、それぞれP=0.065とP=0.14で有意差なし。
 Cox比例ハザード分析を用いると、スクリーニング群に対する
 コントロール群の前立腺癌死亡のHR1.23(0.94-1.62、P=0.13)。
 また、試験開始時の年齢で調整した場合、HR1.58(1.06-2.36、P=0.024)。
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 結論:
 20年間にわたる追跡研究によれば、前立腺癌スクリーニングを受けた
 場合と受けない場合の前立腺癌死亡のリスク比に有意差はなかった。

by otowelt | 2011-04-26 06:12 | 肺癌・その他腫瘍

MUC5B発現調節傷害は、肺線維症に関与

すごく大事な論文なのだが、訳してもわずかしか意味がわからなかった…。

A Common MUC5B Promoter Polymorphism and Pulmonary Fibrosis
N Engl J Med 2011;364:1503-12



背景:
 肺線維症の病態にはいくつかの変異が関連しているが、これは
 集団的リスクの部分的な説明にすぎない。

方法:
 全ゲノム連鎖解析により、82家族でIPFおよび11p15の3.4Mb領域との連鎖を
 検出した。また、家族性間質性肺炎83人、IPF患者492人、コントロール322人
 において、肺に発現しているゲル形成ムチン遺伝子の変異評価をおこなった。
 さらに、肺組織においてMUC5B発現を評価。

結果:
 MUC5B転写開始部位の3kb上流に位置するSNP:rs35705950の変異型の
 対立遺伝子の頻度は、家族性間質性肺炎において34%、IPFにおいて38%、
 コントロール群において9%であった。
 このSNPにおける変異型の対立遺伝子が、ヘテロないしホモである被験者の
 疾患ORは、家族性間質性肺炎ではそれぞれ6.8(95%CI 3.9~12.0)、
 20.8(95% CI 3.8~113.7)であった。またIPFにおいてはぞれぞれ
 9.0(95% CI 6.2~13.1)、21.8(95% CI 5.1~93.5)であった。
 IPF肺におけるMUC5Bの発現は、コントロール患者の14.1倍高かった
 (P<0.001)。rs35705950の変異型の対立遺伝子は、コントロール患者の
 肺におけるMUC5B発現のup-regulationに関連。
 (野生型対立遺伝子がホモであるコントロール患者の37.4倍:P<0.001)
 IPFの病変で、MUC5B蛋白が発現した。
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結論:
 MUC5Bのプロモーターにみられるポリモルフィズム:多型は、
 家族性間質性肺炎とIPFに関連していた。また、肺における
 MUC5Bの調節機能障害は、肺線維症の発症に関与しているものと考える。

by otowelt | 2011-04-23 07:03 | びまん性肺疾患

進行NSCLCにおけるcirculating tumor cellは生存における予後予測因子

肺癌におけるcirculating tumor cellのスタディ。

Evaluation and Prognostic Significance of Circulating Tumor Cells in Patients With Non–Small-Cell Lung Cancer
JCO April 20, 2011 vol. 29 no. 12 1556-1563


目的:
 肺癌は、癌関連死の中で世界的にも第一位である。
 非小細胞肺癌(NSCLC)の治療反応を推定するバイオマーカーは不足している。
 このスタディは、循環腫瘍細胞circulating tumor cells (CTCs)が
 NSCLC患者において同定されていることから、これらが予後情報あるいは
 従来の治療に反応する患者の適応などに情報をもたらすかもしれない。

患者および方法:
 単施設プロスペクティブ試験であり、101人の未治療III期~IV期の
 NSCLC患者の血液サンプルを採取して
 ファーストライン治療前後のCTCを解析した。CTCは
 抗上皮接着分子(epithelial cell adhesion molecule;EpCAM)を
 用いた免疫磁気的手法によって半自動的に測定された。

結果:
 7.5mlあたりの血液中におけるCTCの数は、IV期NSCLC患者
 (n=60; range,0 to 146)の方がIIIB期(n=27; range, 0 to 3)、
 IIIA期(n=14; no CTCs detected)よりも高かった。
 単変量解析において、CTCが5未満と5以上において
 PFSはそれぞれ6.8ヶ月 v 2.4ヶ月(P<.001)であり、OSは
 ぞれぞれ8.1ヶ月 v 4.3ヶ月(P<.001)であった。
 多変量解析においてCTCの数は強いOS予測因子であった
 (HR 7.92; 95% CI, 2.85 to 22.01; P<.001)。
 ※上記のPFS、OSはいずれも治療前
 一方、治療後のCTCサンプルを加えて計算したtime point HRは
 (HR, 15.65; 95% CI, 3.63 to 67.53; P<.001)であった。
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結論:
 IV期のNSCLC患者におけるCTCの同定は、新しい予後予測因子である。

by otowelt | 2011-04-20 13:14 | 肺癌・その他腫瘍

チアゾリジン系治療薬は2型糖尿病患者における肺炎・下気道感染のリスクを上昇させる

アクトスとアバンディアの話。
心不全や骨折、肺炎とあまりいい試験が出ないのがかわいそうだが…。
劇的な報告でもないので、あまり興味はない。

Long-term use of thiazolidinediones and the associated risk of pneumonia or lower respiratory tract infection: systematic review and meta-analysis
Thorax 2011;66:383e388


概要:
 PPAR:peroxisome proliferator-activated receptorアゴニスト
 であるrosiglitazoneとpioglitazoneは、グルココルチコイド受容体を活性化
 させ、インスリン抵抗性を改善させる薬剤である。
 筆者は、肺炎および下気道感染のチアゾリヂン系治療薬によるリスクについて
 システマティックに調査した。MEDLINE, EMBASEなどを用いた検索。

結果:
 13の試験(n=17627、8163人がチアゾリンジン系、9464人がコントロール群)
 が登録された。期間は1~5.5年。チアゾリジン系治療薬は
 有意に肺炎および下気道感染のリスクを上昇させた
 (n=130/8163 vs 100/9464; RR 1.40;
 95% CI 1.08 to1.82; p=0.01; I2¼0%)。また、重症な肺炎および
 下気道感染も同様であった(n=111/7391 vs 87/8692;
 RR 1.39; 95% CI 1.05 to 1.83; p=0.02; I2=0%)。
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結論:
 長期的なチアゾリジン使用は、肺炎あるいは下気道感染の
 リスクを2型糖尿病患者において上昇させる。

by otowelt | 2011-04-20 07:40 | 感染症全般

ESBL患者への除菌のメリット

Effectiveness of a new decolonisation regimen for eradication of extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacteriaceae
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 113-117


背景:
 ESBL産生Gram陰性菌は、世界的に拡がっている。ESBL保菌は
 数年間にわたり持続することもあり、伝播を促進すると思われる。
 接触隔離予防策や抗菌薬使用の制限などの介入が実施されるものの、
 ESBL除菌法は確立していない。

目的:
 標準化された除菌プログラムの有効性を明らかにする。
 2000年1月から2008年1月にかけてオープンラベルの
 プロスペクティブコホート対照研究を実施した。

方法:
 ESBL陽性患者に対して、直腸、咽頭、尿のスクリーニングを
 定期的に実施。除菌法は、0.2%クロルヘキシジンによる1日3回の
 口腔咽頭洗浄、paromomycin 1g1日4回投与、尿路への経口抗菌薬
 投与をおこなった。ESBL除菌成功は、追跡時のスクリーニングの
 サンプルセット(咽頭、直腸、尿)が1回以上陰性であることと定義した。

結果:
 100人のうち、ESBL感染患者は83%、保菌患者は17%であった。
 検出頻度が高い病原菌は大腸菌:71%、
 Klebsiella pneumoniae:25%であった。追跡時にESBL陰性と
 なった患者は、全体で76%だった。治療成功患者の55%は、
 感染症に対する全身治療を受けていた。除菌完了患者の83%は、
 追跡期間中にESBLが検出されなかった。
 ESBL除菌成功はリスク因子の数および保菌部位と関連がみられた。

結論:
 ESBL除菌は選択された特定の患者において利益があり、
 ESBLの保菌期間が短くなるだけでなく、その後の
 伝播リスクが低下するかもしれない。

by otowelt | 2011-04-19 22:02 | 感染症全般

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の初期治療に吸入ステロイドは使用すべきでない

Internal MedicineからABPAのスタディの報告。
呼吸器内科医であれば、ABPAをstagingすることがあるかもしれないが
診断基準や分類があまりに古いままなのは、それほど有用だからだろうか?
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Allergic Bronchopulmonary aspergillosis: staging as an aid to management. Ann Intern Med 1982;96 286.

また、文中にABPA-S(seropositive)という言葉が出てくるが
以下のように定義されている。
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今回の論文はかなり小規模のスタディではあるが、個人的には興味深い。

Role of Inhaled Corticosteroids in the Management of Serological Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis (ABPA)
Intern Med 50: 855-860, 2011


背景および目的:
 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療は経口ステロイドである。
 しかしながら、副作用が多い。ゆえに吸入ステロイド(ICS)は、より副作用が
 少なく投与可能であると考えられるものの、ABPAのマネジメントにICSを
 用いることは議論の余地がある。このレトロスペクティブ試験で、高用量
 ICSが血清学的ABPA(ABPA-S)へ果たす役割を評価する。

方法:
 ABPA-Sの患者は、formoterol/budesonide (24-1600 mcg/日)を使用し
 病歴、身体所見、レントゲン、総IgEレベルを6, 12, 18, 24週目に調べた。
 喘息コントロールはGINA基準で評価した。経口ステロイドは、
 ICS治療後6ヶ月後も高い場合に開始することとした。

結果:
 8人の男性、13人の女性が登録され、平均年齢は39.3歳であった。
 ICS使用者全患者における主観的改善では、誰ひとり喘息症状の改善を
 認めなかった。ICSの治療6ヵ月後において、IgEレベル中央値は99.3%増加した。
 経口ステロイド開始後、喘息症状は19人の患者において寛解し、IgEレベルは
 6週目で中央値で52.6%減少した。
 フォローアップ期間の中央値は、経口ステロイド開始から15ヶ月後である。
 18人の患者が完全寛解し、3人が経口ステロイドを中止して3ヵ月で再発した。
 1人は長期的に経口ステロイドを必要とした。

結論:
 高用量ICSは、ABPA-Sのマネジメントにおいて何ら役割を果たさないもので、
 初期治療には用いるべきではない。経口ステロイドないしはその代替治療を
 受けている患者において、ICSは喘息症状の改善のために
 追加治療として考慮してもよいのかもしれない。

by otowelt | 2011-04-19 05:58 | 感染症全般

高齢者への人工呼吸器装着の選択は妥当か否か

AJRCCMから高齢者のスタディが出ていた。

「高齢者への挿管」という問題については、色々な議論がある。
例えば、元通りに復帰できる可能性が1%でもあるなら挿管すべきだという
倫理的観点からの主張もあれば、後遺症や家族への負担を考えるのであれば
すべきでないという社会的観点からの主張もあるかもしれない。
この論文のDiscussionにも書かれているように、
大前提として、患者本人への説明と同意が必要であるため、
家族の「助けてやってくれ」という短期的意見よりも、
その後の長期的な後遺症、余生の過ごし方、メリット・デメリットを
本人に説明した上で本人が同意する方が望ましい。しかしながら、
本人への予後告知というのは、いまだに日本文化的に善しとしない傾向に
あるため、家族の決定にゆだねられた上で挿管となるケースもままある。
もちろん本人が意思表示できないケースもあるため、これはやむを得ない。

高齢者への挿管を説明する医師は、患者さんにとって
その後に考えられる全ての人生の可能性を熟慮しなければならない。
高齢者にとって”尊厳をもった生”というのは非常に重要であり
相当の介護を要する身体になっても、それでも生きたいと願うのかどうかを
最後まで悩み、最後まで家族と議論すべきである。
(緊急時にそんな時間的猶予があるかどうかは別として)

私個人としては、高齢者だから挿管するしないという二元論はおかしいと思うし、
それこそ病態によって復帰率はまちまちだと思う。
90歳でも餅をつまらせただけで用手的に取れないのであれば気切すればいいと思う。
60歳で肺癌終末期で酸素化が維持できない場合にはしなくてもよいと思う。
ゆえに、この議論は一つの観点からの討議できるものではない。
ただ、あまりに凄惨な余生が待ち受けていると医師個人が強く考える場合には
家族に”失礼かもしれませんが、医師個人としてすべきでないと思います”
と正直に自分の意見を言うようにしている。
それでも全てを理解した上で家族が挿管を選択する場合には、
医師はそれ以上踏み込むべきではない、……というより踏み込めない。

この論文はあくまで臨床試験であるため、さっぱりとしたアウトカムに
なっているが、倫理的な部分や現場の葛藤に踏み込んだ重要なものである。
この論文の筆者は、挿管後のつらい余生を目の当たりにしてきた経験が
多いのかもしれない。彼は、Discussionの中でこう言っている。
「many elders might not elect to receive a high burden
  intervention if they knew it would result in substantial disability」

前置きが長くなったが、以下今回の論文。

Disability among Elderly Survivors of Mechanical Ventilation
Am J Respir Crit Care Med Vol 183. pp 1037–1042, 2011


背景:
 長期的な機能アウトカムを人工呼吸器管理から生存した高齢者で
 調べた試験は、限定されている。

目的:
 人工呼吸器管理のために入院した高齢者を、非人工呼吸管理患者と
 機能不全のインパクトの評価において比較する。
 プロスペクティブに、以前の機能ステータスと検証する。

方法:
 レトロスペクティブコホート試験で、65歳以上の患者を
 1996年から2003年のthe Medicare Current Beneficiary Surveyに登録。

結果:
 7暦年 (calendar year)以上のデータで54771人年。
 入院をしていないものが42890人年、非人工呼吸器入院が
 11347人年、人工呼吸器ありで入院したものが534人年であった。
 1年死亡率は、入院していないものが8.9%、非人工呼吸器入院が23.9%、
 人工呼吸器管理で入院したものが72.5%であった。
 機能不全レベルは人工呼吸器管理で入院したあとに生存した人で高かった
 (調整activities of daily living disability score 14.9; 95%CI12.2–17.7、
 調整mobility difficulty score 25.4; 95%CI22.4–28.4)。
 非人工呼吸器入院から生存した場合は、上記はそれぞれ
 11.5 [11.1–11.9]、22.3[21.8–22.9]であり、入院していない人では
 8.0 [7.9–8.1]、13.4[13.3–13.6]であった。
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結論:
 人工呼吸器を要する入院から生存した高齢者にとって、
 その後の機能不全は予測していたものよりはるかに大きなものである。

by otowelt | 2011-04-18 06:29 | 集中治療