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胸水を血液培養ボトルに入れると病原菌同定に利益

そういえば、胸水を血液培養ボトルに入れていいのか
よく議論になっていた。

Blood culture bottle culture of pleural fluid in pleural infection
Thorax 2011;66:658-662


背景:
 胸腔内感染症はよくみられるが、特にグラム陰性菌、ブドウ球菌、
 嫌気性菌混合感染による場合は30%をこえる疾病率死亡率を呈する。
 通常の胸水培養は、40%で陰性である。
 血液培養ボトルに胸水を注入することで
 微生物培養産生が増え、経済的にも安いかもしれない。

目的:
 穿刺した胸水を血液培養ボトルにいれることで
 胸腔内感染が通常の胸水培養に比べて
 培養陽性率を増やすかどうかをみる。また、
 培養の適切な量を評価する。

方法:
 62人の患者で胸腔内感染があるものが登録された。
 好気性、嫌気性の血液培養ボトルにベッドサイドで
 2ml、5ml、10mlの胸水が注入された。
 また2検体が通常培養にまわされた。
 ※1つはRoyal Free Hospitalへ
 9人のコントロール患者が”偽陽性”をみるために
 胸水を穿刺された。

結果:
 通常培養に血液培養ボトルを加えることで
 病原菌の同定の比率が20.8%上昇した。
 (20/53 (37.7%)から31/53 (58.5%) (difference 20.8%,
 95% CI difference8.9% to 20.8%, p<0.001))
 Royal Free Hospitalでの二次培養では
 培養陽性率を上昇させなかった(19/49(38.8%) to 22/49 (44.9%)
 (difference 6.1%, 95% CIdifference -2.5% to 6.1%, p=0.08))。
 注入量に関して差はみられなかった。
 コントロール患者において培養は全て陰性であった。
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結論:
 胸水を血液培養ボトルに注入することで、
 通常培養に加えて病原菌同定率が上昇する。
 この技術はルーチンケアにおこなうべきであろう。

by otowelt | 2011-07-29 19:24 | 感染症全般

孤立した農村地域のCOPD患者は、死亡リスクが都会に比べて高い

COPDの大規模なコホート試験なので、本来
PECOを吟味して読まねばならないが、時間の都合上割愛する。

Geographic Isolation and the Risk for Chronic Obstructive Pulmonary Disease–Related Mortality
A Cohort Study
Ann Intern Med. 2011;155:80-86.


背景:
 COPD患者において、農村地域に住んでいる患者と都会に住んでいる患者における
 アウトカムの違いについてはよくわかっていない。

目的:
 COPDによる死亡リスクが農村地域で生活している患者で高いのかどうかを
 調べ、病院機能がこれに影響するかどうかを評価する。

デザインおよび方法:
 レトロスペクティブコホート試験。
 129の急性期ケアの可能なVeterans Affairs hospitalsで施行。
 患者はCOPD急性増悪で入院した患者を登録した。
  
結果:
 都会に住む18809人の患者(71% of the study population)、
 農村地域に住む5671人の患者(21%)、孤立した地域に住む1919人の
 患者(7%)を登録した。死亡リスクは、都会に比べて
 孤立した田舎に住む患者において上昇(5.0% vs. 3.8%; P =0.002)。
 このリスク上昇は、患者情報や病院立地条件・収容能力等で補正した
 場合でもみられた(OR, 1.42 [95% CI,1.07 to 1.89]; P=0.016)。
 孤立していない農村地域に住む患者においては、この調整死亡リスク上昇は
 確認されなかった(OR, 1.09 [CI,0.90 to 1.32]; P=0.47)。
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結論:
 孤立した農村地域に住むアメリカのCOPD患者は
 COPD急性増悪による死亡リスクが都会に比べて高い。

by otowelt | 2011-07-26 04:38 | 気管支喘息・COPD

呼吸機能検査の禁忌

An update on contraindications for lung function testing
Thorax doi:10.1136/thx.2010.139881


他科から呼吸機能検査を施行してよいか、と
コンサルテーションをいただくこともあるかと思うが、
Thoraxから、呼吸機能検査の禁忌に関するUpdateが出た。
個人的には、かなり面白い。
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by otowelt | 2011-07-25 14:18 | 呼吸器その他

OPTIMAL試験:EGFR遺伝子陽性NSCLC患者においてelrotinibはファーストライン治療として妥当

OPTIMAL試験の結果がLancet Oncologyに掲載されていた。
呼吸器内科医としては、EURTAC試験とあわせて覚えておきたい。

Erlotinib versus chemotherapy as first-line treatment for patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer (OPTIMAL, CTONG-0802): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 study
The Lancet Oncology, Early Online Publication, 22 July 2011


方法:
 中国22施設による第III相試験。
 18歳以上の患者でIIIBあるいはIV期のNSCLCを対象におこなわれたが
 条件としてEGFR遺伝子変異(exon 19 deletion or exon 21 L858R
 point mutation)がある患者を登録した。
 1:1に割り付け、経口erlotinib (150 mg/day)あるいは
 gemcitabine+carboplatin(4サイクルまで)による化学療法の
 いずれかに登録した。
 プライマリエンドポイントはPFSとした。

結果:
 elrotinib83人、化学療法72人となった。
 PFS中央値はerlotinib治療で化学療法より長かった
 (13.1 [95% CI 10.58—16.53] vs 4.6 [4.21—5.42] ヶ月;
 HR 0.16, 95% CI 0.10—0.26; p<0.0001)。
 化学療法において、erlotinibよりgrade 3、4の毒性増加がみられた
 (好中球減少症30 [42%] /72、血小板減少29 [40%]/72)
 elrotinibによる最も多いgrade 3、4の毒性はALT上昇( (3[4%] / 83))
 皮疹など (2 [2%] /83)。化学療法は、治療関連の重篤な有害事象とも
 関連していた(10[14%]/72 vs 2[2%]/83).

結論:
 EGFR陽性のIIIB/IV期NSCLC患者において
 elrotinibは治療の第一選択肢となりうる。

by otowelt | 2011-07-22 09:24 | 肺癌・その他腫瘍

粉塵曝露によって兵士に呼吸困難と運動耐容能低下をきたす狭窄性細気管支炎が起こり得る

兵士ネタの論文が最近流行っているような気がする。

Constrictive Bronchiolitis in Soldiers Returning from Iraq and Afghanistan
N Engl J Med 2011;365:222-30.


背景:
 記述症例研究において、イラク・アフガニスタンでの従軍中に
 吸入曝露を受けたアメリカのケンタッキー州フォートキャンベル兵80人
 について、陸軍の体力基準を満たせなくなるような
 労作時呼吸困難が起こり得るかどうか評価した。

方法:
 登録された兵士において、病歴と曝露歴に関する評価、身体所見。
 呼吸機能検査、HRCTを施行。非侵襲的評価項目においては
 症状の原因が判明しなかった49人にVATS:胸腔鏡肺生検を施行。
 心肺運動負荷試験、呼吸機能検査のデータを
 過去のコントロール兵士のデータと比較。

結果:
 2003年イラクにおける硫黄鉱山での火災による吸入曝露歴が多かったが
 全員はこれに該当していなかった。VATSを施行した49人全員の検体に
 異常があり、38人にconstrictive bronchiolitis:狭窄性細気管支炎
 の変化がみられた。残り11人では、constrictive bronchiolitis以外の
 呼吸困難症状に合致するような病理学的診断が確定できた。
 constrictive bronchiolitisのある兵士では、胸部レントゲンは正常だったが、
 CTでは約1/4にモザイク型エアートラッピングまたは小葉中心性結節が
 確認できた。呼吸機能検査と心肺運動負荷試験の結果は正常範囲内であった
 ものの、コントロール兵士の結果と比べると劣性であった。結論:
 従軍派遣後に原因不明の労作時呼吸困難と運動耐容能低下があった
 49人のVATS生検標本を分析した結果、38人でびまん性の
 constrictive bronchiolitis:狭窄性細気管支炎が同定された。
 これらは吸入曝露に関連するのかもしれない。

by otowelt | 2011-07-22 09:07 | 呼吸器その他

PCV7導入後における肺炎球菌性膿胸について

プレベナーは確かにtype 1、3は含まれていなかったと記憶しているが、
それとの関連性があるのだろうか?

The Spectrum of Pneumococcal Empyema in Adults in the Early 21st Century
Clinical Infectious Diseases 2011;53(3):254–261


背景:
 膿胸の頻度はPCV7ワクチン接種が導入されてから
 小児で増加していると報告されている。
 われわれの目的は、成人肺炎球菌性膿胸の頻度の違いを
 解析するとともに、疾患の特徴、PCV7導入前後での血清型を
 調べることにある。

方法:
 成人で膿胸を伴うような侵襲性肺炎球菌感染症に陥った患者を
 スペインにおける2病院で観察研究を施行。
 ワクチン導入前:1996–2001 、導入後:2005–2009として
 膿胸の頻度を算出した。多変量解析をおこなった。

結果:
 膿胸は1080人の侵襲性肺炎球菌感染患者のうち128人で観察された。
 18~50歳において、肺炎球菌性膿胸は7.6%から14.9%に増加(P=.04)。
 10万人年あたりの頻度も0.5から1.6へ増加していた(198%[95%CI
 49%–494%])。有意に血清1型の肺炎球菌が増加しており、10万人年
 あたり0.2から0.8へ増加していた(253% [95% CI, 67%–646%])。
 ワクチン導入後の時期において血清1型は全体の43.3%であった。
 1型(OR, 5.88; 95% CI, 2.66-13)、3型(OR, 5.49 95% CI, 1.93-15.62)
 は膿胸の独立危険因子であった。

結論:
 若年成人におけるワクチン導入後の肺炎球菌性膿胸の頻度は増加している。
 これは血清1型によるものがほとんどであり、1型と3型は
 複雑性感染への進展に至るリスク因子である。

by otowelt | 2011-07-19 06:42 | 感染症全般

GM-CSFは肺胞マクロファージ機能を高め、インフルエンザウイルス抵抗性を増加させる可能性

最近のAJRCCMは基礎的な話が多い。

GM-CSF in the Lung Protects against Lethal Influenza Infection
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 184 (2) 157-158.


背景:
 肺胞マクロファージは、インフルエンザに対する宿主防御機能に
 寄与することが動物モデルでわかっている。肺胞マクロファージ機能を
 向上させることは、インフルエンザに対する抵抗性を高めるかもしれない。

目的:
 肺におけるGM-CSFの発現の増加が
 インフルエンザに対する抵抗性に関与するか調べる。

方法: 
 野生型マウスとGM-CSFが肺に発現した遺伝子導入マウスを
 インフルエンザウイルスに感染させ、肺病理、体重減少、死亡を
 調べた。また、インフルエンザウイルスに感染した野生型マウスへ
 GM-CSF投与した。

結果:
 感染した野生型マウスは全て死亡した。しかしながら、
 遺伝子導入マウスは生存した。後者マウスは、
 対照マウスに比べて迅速な炎症抵抗反応性がみられた。
 遺伝子導入マウスのインフルエンザ抵抗性は、
 肺胞貪食細胞を除去することによって無効にすることができるが
 T細胞、B細胞、好中球の喪失によっては無効にできない。
 遺伝子導入マウスは、野生型よりも多くの肺胞マクロファージを有し、
 これによりインフルエンザによるアポトーシスに抵抗しているものと
 推察される。鼻腔内へのGM-CSFは野生型マウスにインフルエンザへの
 抵抗性をもたらす。

結論:
 GM-CSFは肺胞マクロファージへの免疫機構を高めることによって
 インフルエンザ抵抗性を高めることができる。肺胞への
 サイトカインはインフルエンザウイルスによる死亡を減らす可能性が
 ある。

by otowelt | 2011-07-18 21:57 | 感染症全般

ESC耐性淋菌H041株

淋菌感染症について研修医時代教わったキーワードに
「セフトリアキソン125mg筋注」
というのがあったが、H041株については勉強不足であった。

というのも、7月13日まで開かれていた
国際性感染症研究会議(カナダ・ケベック)で
これが取りあげられたからである。

このH041株は、日本の京都に端を発していると考えられている。
2009年に京都で分離されたH041株(Nissui Rapid ID20 HNにより
β-lactam negativeと判明)は、MIC2μg/mLの高度耐性を
有する淋菌であった。
Ceftriaxone-resistant Neisseria gonorrhoeae, Japan.
Emerg. Infect. Dis. 17:148–149.


詳細はすでにAntimicrob Agents Chemotherから論文化されている。
free PDFで閲覧可能。

Is Neisseria gonorrhoeae Initiating a Future Era of Untreatable Gonorrhea?: Detailed Characterization of the First Strain with High-Level Resistance to Ceftriaxone
Antimicrob Agents Chemother. 2011 July; 55(7): 3538–3545.


アジスロマイシン低感受性、セファロスポリン全耐性の淋菌が
蔓延したら、プライマリケアの現場は混乱しそうだ。

by otowelt | 2011-07-15 09:30 | 感染症全般

31歳のALK遺伝子再構成がみられた肺腺癌の1例

Case 21-2011: A 31-Year-Old Man with ALK-Positive Adenocarcinoma of the Lung
N Engl J Med 2011;365:158-67.


31歳のALK遺伝子再構成がみられた肺腺癌の1例が
今週のNEJMのMGH caseに掲載されていた。

Shaw医師の言葉で、ALKがインスリン受容体スーパーファミリーに
属するTKであることを知った。
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by otowelt | 2011-07-15 06:40 | 肺癌・その他腫瘍

AIDS合併ニューモシスティス肺炎の治療効果判定に血清β-D-グルカンの追跡は妥当ではない

Internal Medicineからβ-D-グルカンについての論文。
β-D-グルカンは、だいたい30以下と30以上で陽性・陰性と
クリアカットに考えている医師は少なくないように思うが、
感度的/特異度的な意味合いの履き違えに
気をつけたい検査の1つである。

ニューモシスティス肺炎(PCP)に対してST合剤を投与したとき
一時的にβ-D-グルカンが上昇するのはしばしば経験するため、
経過を追う意味で測定すべきでないと個人的に思っている。

Discussionのところでも引用されているCIDの論文でも
同様の記載が書かれている。
Serum (1-->3) beta-Dglucan as a noninvasive adjunct marker for the diagnosis of Pneumocystis pneumonia in patients with AIDS.
Clin Infect Dis 49:1128-1131, 2009.



以下、今回の論文。東京大学から。

Kinetics of Serum β-D-Glucan after Pneumocystis Pneumonia Treatment in Patients with AIDS
Intern Med 50: 1397-1401, 2011


目的:
 血清β-D-グルカンはPCP診断において信頼性のある検査とされているが、
 PCP治療後によってどのように変化するかはよくわかっていない。
 血清β-D-グルカンと臨床的反応性の相関を評価するため、
 PCP治療後の血清β-D-グルカンの推移を追った。

方法:
 17人のAIDS合併PCP患者において解析をおこなった。

結果:
 すべての患者が、血清β-D-グルカンがカットオフレベル以上であり
 診断時の中央値は224 pg/mL [IQR: 78-597]であった。
 β-D-グルカンについて、CRP、LDH、AaDO2との相関はなかった。
 治療を開始すると、ほとんどの患者で臨床的な改善がみられるとともに
 この数値は減少傾向を示したが、有意数の患者において
 治療にもかかわらずβ-D-グルカンの上昇を認めた。

結論:
 血清β-D-グルカンレベルは、PCP感染の重症度や予後と相関しない。 
 治療反応性のモニタリングとして利用するのは妥当ではないだろう。

by otowelt | 2011-07-14 12:23 | 感染症全般