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卵巣癌に対するカルボプラチン+パクリタキセルへのベバシズマブ上乗せ効果

NEJMで読むものがなかったので。
婦人科領域では大事な試験になるのだろう。

R.A. Burger, et al.
Incorporation of Bevacizumab in the Primary Treatment of Ovarian Cancer
N Engl J Med 2011; 365:2473-2483


背景:
 VEGFは、上皮性の卵巣癌における血管新生と増悪の主な促進因子。
 抗血管内皮増殖因子モノクローナル抗体のベバシズマブ(アバスチン)
 は、再発例において単剤で効果が確認されている。
 本研究では、ベバシズマブを標準的な卵巣癌治療の
 ファーストラインに追加する。

方法:
 二重盲検プラセボ対照3相試験において、
 腫瘍減量術:debulking surgeryを受けた後、III期(不完全切除)
 あるいはIV期の上皮性卵巣癌と新規に診断された患者を適格とし
 3つの治療群のいずれかにランダムに割り付けた。
 全ての群において3週1サイクルとして、1~6サイクルに
 パクリタキセル175 mg/m2+カルボプラチンAUC6を
 静注する化学療法を行い、2~22サイクルに試験薬を投与。
 コントロール群には、化学療法+2~22サイクルプラセボを投与。
 ベバシズマブ導入治療群には、
 化学療法+2~6サイクルベバシズマブ(15 mg/kg 体重)を投与、
 7~22 サイクルにプラセボを投与。
 ベバシズマブ全期間治療群には、化学療法に加え、
 2~22 サイクルにベバシズマブを投与。
 プライマリエンドポイントはPFS。

結果:
 1873人を登録。PFS中央値は、コントロール群10.3ヵ月、
 ベバシズマブ導入群11.2ヵ月、ベバシズマブ全期間群14.1ヵ月。
 コントロールと比較した増悪・死亡のHRは、ベバシズマブ導入群
 0.908(95%CI 0.795~1.040,P=0.16)、ベバシズマブ
 全期間群 0.717(95% CI 0.625~0.824,P<0.001)。
 薬物投与を要する高血圧の発生率は、ベバシズマブ導入群(16.5%)
 やベバシズマブ全期間群(22.9%)がコントロール群(7.2%)より
 高かった。

結論:
 進行期の上皮性卵巣癌患者において、
 カルボプラチン+パクリタキセルの期間中ないし終了後10ヵ月
 までベバシズマブを用いることで、PFS中央値が4ヵ月延長。

by otowelt | 2011-12-31 23:13 | 肺癌・その他腫瘍

ESBL産生大腸菌に対してβラクタム/βラクタマーゼ阻害薬は有効

ESBLに対するβラクタマーゼ阻害薬はin vitroで有用であることが
示唆されており、臨床的なデータは乏しい。
Extended-spectrum b-lactamase: a clinicalupdate. Clin Microbiol Rev 2005; 18:657–86.

今回の結果は特に尿路と胆管由来のESBL産生大腸菌に
有用であるとの結果であった。

Jesus Rodriguez-Bano, et al.
β-Lactam/β-Lactam Inhibitor Combinations for the Treatment of Bacteremia Due to
Extended-Spectrum b-Lactamase–Producing Escherichia coli: A Post Hoc Analysis of Prospective Cohorts
Clinical Infectious Diseases 2012;54(2):167–74


背景:
 基質拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌(ESBL-EC)は、侵襲性感染症の 
 原因として重要である。カルバペネマーゼ産生の腸内細菌の増加から
 カルバペネムの代替薬が望まれている。 ESBLにおける
 βラクタム/βラクタマーゼ阻害薬(BLBLI)の効果については議論の余地がある。

方法:
 筆者はESBL-ECによる血流感染患者について
 6つのプロスペクティブコホート文献からpost hoc解析を施行した。
 利用可能なBLBLIであるアモキシシン-クラブラン酸(AMC)と
 ピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)あるいはカルバペネム系抗菌薬で
 2つのコホート:経験的治療、確定的治療 において
 死亡率と在院日数を比較。

結果:
 経験的治療コホートにおいて103人の患者が登録し
 (BLBLI, 72; carbapenem, 31)、確定的治療コホートにおいて
 174人が登録(BLBLI, 54;carbapenem, 120)。30日死亡率は
 BLBLIとカルベペネムでそれぞれ
 経験的治療コホート:9.7% vs 19.4%
 確定的治療コホート:9.3% vs 16.7% (P= .2, log-rank test)。
 交絡因子補正後においても、統計学的な差はなし。
 経験的治療コホート:(HR, 1.14; 95% CI, .29–4.40; P=.84)
 確定的治療コホート:(HR, 0.76; 95% CI,.28–2.07; P=.5)。
 在院日数についても影響はなし。
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結論:
 AMCやPTZはESBL-EC血流感染患者におけるカルバペネムの代替薬
 となりうることが示唆される。

by otowelt | 2011-12-29 15:21 | 感染症全般

接触感染予防策は患者のうつと関連

H.R. Day, et al.
Do contact precautions cause depression? A two-year study at a tertiary care medical centre
Journal of Hospital Infection (2011) 79, 103-107


背景:
 接触予防策は感染症の伝播の減少を目的におこなわれるべきもの
 であり、入室時のガウンや手袋の着用もこれに該当する。
 これまでの研究から、接触予防策と患者のうつ・不安の悪化との
 関連が示唆されている。

方法:
 2年間に3次医療施設に入院した全患者のレトロスペクティブコホート
 を対象とし、接触予防策と患者のうつ・不安との関連を評価。

結果:
 2年間で70275件の入院。
 そのうち非ICUかつ非精神科への初回の入院は合計28564件。
 非ICUでは、交絡因子で補正をすると、接触予防策は患者の
 うつと関連していた(OR1.4、95%CI1.2 ~1.5)。しかしながら、
 不安とは関連していなかった(OR 0.8、95%CI 0.7~1.1)。

結論:
 接触予防策が実施された一般入院患者において、
 うつのリスクは高い。

by otowelt | 2011-12-28 22:24 | 感染症全般

クリスマスBMJ:イギリスのミュージシャンは27歳で死亡しやすいわけではない

「musician years」という単位に笑ってしまった。

Is 27 really a dangerous age for famous musicians? Retrospective cohort study
BMJ 2011; 343 doi: 10.1136/bmj.d7799 (Published 20 December 2011)
Cite this as: BMJ 2011;343:d7799


目的:
 有名なミュージシャンは27歳で死亡するリスクが高いという
 いわゆる"27 club”説を検証する。

参加者および方法:
 イギリスのアルバムナンバー(1956年~2007年)をもつ
 ソロアーティストやバンドメンバーを含む合計1046名のミュージシャンを
 スタディに登録。71人(7%)が死亡。
 ミュージシャンの年齢ごとの死亡リスクを検証した。

結果:
 52人のミュージシャン中、27歳で死亡したのは3人、
 100ミュージシャン・年あたり0.57であった。
 25歳(0.56)および32歳(0.54)でも同様な死亡率であったため
 27歳にリスクピークがあるわけではなかった。
 しかしながら、有名なミュージシャンの20~30代での死亡リスクは
 イギリス国民の2-3倍以上であった。
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結論:
 "27 club"は正確なものではなかった。
 しかし、有名になることが年齢と関係なく死亡リスクを高める可能性がある。

by otowelt | 2011-12-24 16:53 | 内科一般

クリスマスBMJ:整形外科医は麻酔科医より優秀で握力が高い

麻酔科医から整形外科医はこんなことを言われる。
「typical orthopaedic surgeon—as strong as an ox but half as bright.」
いや、整形外科医の完全な被害妄想だろうと
個人的には思っているが・・・。
整形外科医は麻酔科医よりも優秀で握力もあるんだ!という論文。

Surgery Orthopaedic surgeons: as strong as an ox and almost twice as clever? Multicentre prospective comparative study
BMJ 2011; 343 doi: 10.1136/bmj.d7506 (Published 15 December 2011)


目的:
 整形外科医と麻酔科医のインテリジェンスと握力を比較する

方法:
 3つのイギリスの市中病院において2011年施行された。
 被験者は、36人の整形外科医と40人の麻酔科医。
 評価はインテリジェンステストスコア、握力。

結果:
 整形外科医は統計学的に麻酔科医より平均握力強かった
 (47.25 (SD 6.95) kg v 43.83 (7.57) kg)。
 整形外科医の平均インテリジェンススコアは、これも麻酔科に比べ優秀
 であった(105.19 (10.85) v 98.38 (14.45) )。

結論:
 男性の整形外科医は同僚の麻酔科医と比較して
 インテリジェンスが高く握力も強い。

by otowelt | 2011-12-24 16:38 | 内科一般

クリスマスBMJ:死神から逃げ切るには時速5kmで歩行すべき

死神の歩く速度についての論文。
歩行速度と死亡に関しては、実はJAMAに2011年に報告がある。
Gait speed and survival in older adults. JAMA 2011;305:50-8

Fiona F Stanaway, et al.
How fast does the Grim Reaper walk? Receiver operating characteristics curve analysis in healthy men aged 70 and over
BMJ 2011; 343 doi: 10.1136/bmj.d7679 (Published 15 December 2011)


目的:
 死神が歩く速度(好む速度)を同定する。

セッティングおよび参加者:
 オーストラリア・シドニーの70歳以上の男性1705名の
 プロスペクティブコホート研究において、歩行速度(m/s)と死亡率を評価した。
 CHAMP (Concord Health and Ageing in Men Project)に
 参加している者を登録した。

アウトカム:
 アウトカムは、死神の歩行速度(m/s)と死亡率。
 ROC解析によって同定する。適切な歩行速度は
 Youden index (sensitivity+specificity−1)を用いて決定する。

結果:
 平均歩行速度は0.88 (range 0.15-1.60) m/sであった。
 生存率解析の結果、時速0.82m/s(時速3km相当)の歩行速度で歩く
 老人は、それより遅く歩く老人に比較して死亡する可能性は
 1.23倍(95%CI:1.10-1.37)低く、時速5km(1.36m/s)で歩くことは、
 死神から逃げきることができる可能性が示唆された。
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結論:
 死神は0.82m/sを下回る歩行速度の高齢男性を好む。
 1.36m/s以上であれば死神に追い付かれることはない。

by otowelt | 2011-12-24 16:29 | 内科一般

クリスマスBMJ:減塩を推奨する政府・医療機関は、減塩ができていない

今年もクリスマスBMJの季節がやってきた。
減塩の推奨をしている政府機関や医療機関において
塩分摂取が多いじゃないかという皮肉。

L M Brewster,et al.
High salt meals in staff canteens of salt policy makers: observational study
BMJ 2011; 343 doi: 10.1136/bmj.d7352 (Published 20 December 2011)
Cite this as: BMJ 2011;343:d7352


目的:
 オランダにおける、塩分摂取などの健康行政にかかわる組織での
 食堂等の塩分摂取量を評価する。

結果:
 上記行政府の食堂におけるを調べると、塩分推奨量は6g/日にも関わらず、
 平均7.1 g,(SE 0.2 g)であった。健康・医療審議に関する
 Department of Health and National Health Councilでは
 6.9 g (0.4 g)、食品・消費者安全に関する
 Food and Consumer Product Safety Authorityでは6.0 g (0.9 g)、
 大学病院職員食堂では7.4 g (0.5 g) 、非大学病院職員食堂では
 7.0 g (0.3 g)であった。すなわち、推奨を遵守している人と比較すると
 23~36%の早期心血管死亡率増加と関連する。

結論:
 もし塩分摂取量を推奨する行政の食堂等で
 食事を摂取するなら、健康を危険にさらす可能性がある。

by otowelt | 2011-12-24 16:10 | 内科一般

ICUの重症患者におけるサイトメガロウイルス血清陽性は臨床転帰に影響を与えない

ICUとサイトメガロウイルスの話題。

De Vlieger, Greet, et al.
Cytomegalovirus serostatus and outcome in nonimmunocompromised critically ill patients
Critical Care Medicine. 40(1):36-42, January 2012.


目的:
 重症患者におけるサイトメガロウイルス再活性化の影響については
 明らかになっておらず、サイトメガロウイルスが血清学的に陽性の場合
 予防的な治療が考慮される。このスタディは、非免疫不全重症患者における
 サイトメガロウイルスの血清学的な陽性と臨床転帰との関連をみたものである。

デザイン・方法・患者:
 1900床規模の病院における17床の内科ICU、56床の外科ICUで
 行われたレトロスペクティブ試験である。
 ICU患者においてサイトメガロウイルス血清データを採取。
 プライマリエンドポイントはICU死亡率とした。セカンダリエンドポイントは
 院内死亡、ICU・病院からの生存退院までの期間、
 生存した状態での人工呼吸器離脱までの期間、血液透析の必要性とした。
 患者は1504人の非免疫不全重症患者でICUに少なくとも3日以上
 在室しているものとした。血液悪性腫瘍、移植、免疫抑制治療、DNRオーダー
 の患者は除外された。

結果:
 64人の患者がサイトメガロウイルスが血清学的に陽性であった。
 多変量解析では、ICUあるいは院内死亡率に何ら関連はなかった。
 セカンダリエンドポイントにも寄与しなかった。

結論:
 ICU重症患者において、サイトメガロウイルスが血清学的に陽性である
 場合、それは臨床転帰に影響を与えない。この試験によれば
 重症患者における血清陽性サイトメガロウイルスの予防治療は
 積極的にすすめられるものではない。
 

by otowelt | 2011-12-22 13:12 | 感染症全般

ICUにおける敗血症患者はコントロールと比較して免疫抑制状態にある

続発的に敗血症を起こす一因として免疫不全を
科学的に証明できるかどうか。

Jonathan S. Boomer,et al.
Immunosuppression in Patients Who Die of Sepsis and Multiple Organ Failure
JAMA. 2011;306(23):2594-2605.


背景:
 重症敗血症:severe sepsisは、典型的には初期サイトカインによる
 過度の炎症に特徴づけられる。この過度の炎症の時期が
 免疫抑制に続発するものかどうかは議論の余地がある。
 動物モデルによる試験では、複合的な免疫不全が敗血症を引き起こすと
 されているが、ヒトにおいてはそのデータは不十分である。

目的:
 敗血症と宿主固有の免疫変化・獲得免疫の関連を評価し、
 推定される全剤的な免疫抑制メカニズムを調べる。

方法:
 ICUにおいて活動性の重症敗血症で死亡した40人の患者
 において迅速解剖を行い脾臓と肺を調査。
 コントロール脾臓(n = 29)は、脳死患者あるいは外傷による緊急的脾臓摘出
 のものを使用し、コントロール肺(n = 20) は、移植ドナーあるいは肺癌切除
 によるものを使用。サイトカインアッセイ、免疫組織化学染色などを用い
 評価した。

結果:
 敗血症とコントロール患者の平均年齢は、71.7 (SD, 15.9)、
 52.7 (SD, 15.0) であった。敗血症患者におけるICU在室日数の
 中央値は、8(range, 1-195 days)、一方コントロール患者は 
 4日かそれ以下であった。コントロールと比較して、5時間時点で、
 抗-CD3/抗-CD28-刺激脾臓細胞によるサイトカイン分泌減少がみられた。
 ・tumor necrosis factor, 5361 (95% CI, 3327-7485) pg/mL vs 418 (95% CI, 98-738) pg/mL
 ・interferon γ, 1374 (95% CI, 550-2197) pg/mL vs 37.5 (95% CI, −5 to 80) pg/mL;
 ・interleukin 6, 3691 (95% CI, 2313-5070) vs 365 (95% CI, 87-642) pg/mL
 ・interleukin 10, 633 (95% CI, −269 to 1534) vs 58 (95% CI, −39 to 156) pg/mL; (P < .001 for all)

 敗血症患者におけるサイトカイン分泌は、コントロール臓器より10%減少し、
 年齢、敗血症の期間、ステロイド使用、栄養状態とは独立していた。
 免疫組織化学染色では、脾臓のCD4、CD8、HLA-DR細胞の大幅な消失と
 肺の上皮細胞の抑制系受容体のリガンド発現が観察された。

結論:
 ICUにおいて敗血症で死亡した患者は、非敗血症で死亡した患者と比べると
 免疫抑制状態にあると考えられる。免疫を高める治療は、選択された敗血症患者に
 おいて妥当かもしれない。

by otowelt | 2011-12-22 12:58 | 感染症全般

胃食道逆流に対する治療はIPFの線維化と生存に良い影響

GERDとIPFの関連については
長らく議論がかわされている。
Sole treatment of acid gastroesophageal reflux in idiopathic pulmonary fibrosis: a case series. Chest 2006;129:794–800.

ただ、IPFの病態生理の一体どの程度を占めるのかは
わかっておらず、個人的にはIPFの大勢には大きな影響を
及ぼしていないのではないかと思っている。

Joyce S. Lee, et al.
Gastroesophageal Reflux Therapy Is Associated with Longer Survival in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Am. J. Respir. Crit. Care Med. December 15, 2011 vol. 184 no. 12 1390-1394


背景:
 胃食道逆流(GER)は、特発性肺線維症(IPF)患者において
 高頻度でみられる。GERによる慢性的な微細な誤嚥が
 IPFの病因と自然経過に重要な役割を果たしているのかもしれない。

方法:
 2つの医療センターにおいてIPFをよく特徴づける
 患者をレトロスペクティブにGERとIPFの関連について
 回帰分析を用いて評価した。 

結果:
 204人の患者が組み込まれた。
 GER症状を訴えたのは34%で、GERDの病歴があるのは45%、
 GERに対する治療を受けたことがあるのは47%、
 Nissen fundoplicationを受けたことがあるのは5%であった。
 補正すると、GERに対する治療はIPF患者における長期生存の
 独立予測因子であった。加えて、この治療は放射線学的な
 線維スコアの低下と関連していた。

結論:
 GERに対する治療は、IPFの線維化を減少させ、
 生存期間の延長の独立予測因子であると考えられる。

by otowelt | 2011-12-20 07:31 | びまん性肺疾患