<   2012年 03月 ( 39 )   > この月の画像一覧

First-SIGNAL試験:ゲフィチニブと化学療法の比較試験

Ji-Youn Han, et al.
First-SIGNAL: First-Line Single-Agent Iressa Versus Gemcitabine and Cisplatin Trial in Never-Smokers With Adenocarcinoma of the Lung
JCO April 1, 2012 vol. 30 no. 10 1122-1128


韓国における313人の非喫煙者進行NSCLCにおける
シスプラチン+ゲムシタビンとゲフィチニブのランダム化III相試験。
First-SIGNAL試験としてすでに結果は周知の通りである。
159人のイレッサ群と150人の化学療法群に割り付けられた。

OS:HR 0.932; 95% CI, 0.716 to 1.213; P = .604;
median OS:22.3 v 22.9 months
1年PFS率:16.7% v 2.8% (HR, 1.198; 95% CI, 0.944 to 1.520)
RR:55% v 46%(P = .101)

メモのため過去の3試験のPFSとOSを掲示しておく。
○IPASS試験:ゲフィチニブ132人、CP療法129人
 PFS:HR 0.48 p<0.0001、OS:HR 0.78(0.50 -1.20)
○NEJ002試験:ゲフィチニブ99人、CP療法101人
 PFS:HR 0.357、p<0.0001、OS:HR 0.793、p=0.354
○WJTOG3405試験:ゲフィチニブ88人、シスプラチン/ドセタキセル88人
 PFS:HR 0.49、p<0.0001、OS:HR 1.638(0.75-3.58)

by otowelt | 2012-03-31 19:04 | 肺癌・その他腫瘍

院外心肺停止におけるエピネフリン投与は本当に妥当か

Editorialで絶賛されているスタディ。

Akihito Hagihara, et al.
Prehospital Epinephrine Use and Survival Among Patients With Out-of-Hospital Cardiac Arrest
JAMA. 2012;307(11):1161-1168


背景:
 エピネフリンは、院外心肺停止:out-of-hospital cardiac arrest
 (OHCA)における心配蘇生において広く使用されている。しかしながら
 病院到着前におけるエピネフリンの効果の効果については
 まだよくわかっていない。

目的:
 非ランダム化デザインのプロスペクティブ観察研究および
 propensity scoreマッチングを用い、
 院外心停止のCPRにおける有効性を検討。

方法:
 ウツタイン様式による全国の院外心停止例登録システムを利用。
 2005~2008年の院外心停止例417188例が解析された。

アウトカム:
 病院到着前の自己心拍再開、心肺停止後1ヶ月生存率、
 神経学的予後良好(Cerebral Performance Category 1または2)
 での生存率、全身予後良好(Overall Performance Category 1または2)
 での生存率とした。

結果:
 病院到着前の自発心拍再開率は、エピネフリン投与群において
 15030例中2786例(18.5%)で、非投与群であった
 402158例中23042例(5.7%)に比べ有意に高いものであった
 (P<0.001)。propensity scoreでは、エピネフリン群、
 非投与群のそれぞれ13041例をマッチングによる解析においても
 エピネフリンの自発心拍再開率は有意に高いことがわかった
 (18.3%vs.10.5%、P<0.001)。心肺蘇生から1ヶ月目における、
 生存率、神経学的予後良好な生存率、全身予後良好な生存率が
 得られた患者の割合は、
 生存率:
   エピネフリン群805例(5.4%)、非投与群18906例(4.7%)
 神経学的予後良好な生存率:
   エピネフリン群205例(1.4%)、非投与群8903例(2.2%)
 全身予後良好な生存率:
   エピネフリン群211例(1.4%)、非投与群8831例(2.2%)
 すなわち、生存率はエピネフリン群で有意に高かったが、
 神経学的予後ないしは全身機能の予後良好による生存率では
 エピネフリン群が非投与群を有意に下回る結果となった(P<0.001)。
 propensity scoreの解析でも同様であった。また、

結論:
 日本における院外心肺停止患者において
 末梢エピネフリン投与は有意に病院到着前の
 自己心拍再開と関連していたが、
 心肺停止後1ヶ月の機能アウトカムには負の相関がみられた。
 

by otowelt | 2012-03-29 12:01 | 救急

就学年齢児におけるBCGワクチンの有用性

Effectiveness and cost-effectiveness of first BCG vaccination against tuberculosis in school-age children without previous tuberculin test (BCG-REVAC trial): a cluster-randomised trial
The Lancet Infectious Diseases, Volume 12, Issue 4, Pages 300 - 306, April 2012


背景:
 多くの発展途上国において定期ワクチン接種の一環として乳児に
 BCGワクチンが接種されている。就学年齢児のワクチンは
 低~中所得国では評価されてない。われわれは
 就学年齢児のBCGワクチンの有効性について調べるため
 クラスターランダム化試験(BCG REVAC)を施行した。

方法:
 新生児にBCGワクチンを受けていないツベルクリンステータス不明の
 就学年齢児(aged 7—14 years)のBCGワクチンの効果を解析。
 (subpopulation of the BCG REVAC cluster-randomised trial)
 1997年7月から2006年6月までブラジルSalvadorにおいて、
 1999年1月から2007年12月までブラジルManausにおいて施行。
 763人の児童がランダムにBCGワクチン群と非摂取群に割りつけられた。
 プライマリアウトカムは結核発症率とした。症例は
 ブラジル結核コントロールプログラムを介して登録された。
 Salvadorにおいて1例の結核を予防するための費用効果についても検証。

結果:
 385校20622人の小児をBCG接種群に、
 365校18507人の小児をBCG非接種群にランダムに割り付けた。
 粗発生率は、接種群10万人年あたり54.9(95% CI 45.3—66.7)で、
 非接種群10万人あたり72.7(62.8—86.8)であった。
 初回BCGワクチン接種のoverall有効性は25%(3-43%)であった。
 Salvadorでは、ワクチン有効性は34%(8-53%)であり、結核1例の発症を
 予防するためのワクチン接種者人数は381人の小児であり、
 これは治療より安価であった。副作用は大きな問題なし。
 (腋下リンパ節炎1人、BCGワクチン1cm以上の皮膚潰瘍1人)

結論:
 過去のツベルクリンテストがない(不明の)就学年齢児における
 BCGワクチン接種は結核発症頻度と結核コントロール費用を減少
 させることができる。

by otowelt | 2012-03-29 06:42 | 感染症全般

NSCLCにおける血清CYFRAは治療反応性に相関する

スタディ規模が小さいので参考程度に読んでみた。
Abstractには記載されていないが、CYFRAの減少は
log CYFRAの27%減少を意味している。

Edelman, Martin J, et al.
CYFRA 21-1 as a Prognostic and Predictive Marker in Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer in a Prospective Trial: CALGB 150304
Journal of Thoracic Oncology: April 2012 - Volume 7 - Issue 4 - p 649–654


背景:
 サイトケラチン19とその可溶性フラグメントであるCYFRAは
 非小細胞肺癌における治療反応性と生存に関連マーカーで
 あると考えられてきた。進行非小細胞肺癌におけるII相試験
 (カルボプラチン・ゲムシタンにエイコサノイドモデュレーターである
 celecoxib, zileuton, あるいはその両方を組み合わせたもの
 を併用した試験)において、血清CYFRAレベルが治療前・治療中に
 採取された。

方法:
 血清CYFRAレベルはベースライン時と、1コース目の治療後に測定された。
 88の患者においてペアの検体が解析有用であった。初期血中濃度の
 対数と血中濃度差をOS、FFS(failure free survival)と関連づけて解析。

結果:
 ベースラインCYFRAレベルが低いと、OS、FFSの延長がみられた
 (p < 0.0001 and p = 0.0003)。加えて、CYFRAレベルの
 大きな減少もOSとFFSの延長に関連していた(p = 0.0255 and p = 0.0068)。

結論:
 血清CYFRAレベルとCYFRAの変化は、非小細胞肺癌における
 化学療法反応性の信頼性のあるマーカーである。しかしながら、
 その正確な血清レベル閾値はまだ同定されていない。

by otowelt | 2012-03-28 09:22 | 肺癌・その他腫瘍

労作時のみSpO2が90%を下回る患者さんに携帯型酸素ボンベは必要か

呼吸器内科医をやっていると、安静時のSpO2、PaO2は良好で
あるにも関わらず、労作時にSpO2が90%を切るケースは
COPD患者さんでよく経験する。時折、現場スタッフ等から
ある提案がなされる。すなわち
「入浴・労作時の酸素投与だけでもした方がよい」という提案である。

日本の病院では『SpO290%信仰』がやや強い。
これは”SpO290%は大丈夫だが、SpO289%は大丈夫でない”
という、いささかクリアカットな考えである。そのため、
安静時SpO2が93%であっても、労作時SpO2が88%であれば
”90%を下回っているのでよくない”という帰結に至る。
臨床現場ではしばしば見かける光景だと思う。

日本における”酸素処方”は(海外でもそうだろうが)、
手続きはさほど多くないので簡単にできるのだが、
患者さんやその家族はそう簡単にはいかない。
入浴時に使用するということは、酸素濃縮器を自宅に
設置することになる。また労作時に使用するということは、
外出のたびに酸素を持って歩かねばならない。
動くたびに鼻にカニューレを通す必要があり、
眼鏡とは違ってこれは非常にやっかいな存在だろう。
オキシアームなどの改良型カニューレも開発されているものの
(Respir Care 48:120-3,2003.)、安易な酸素処方が
患者さんや家族にとって大きなQOLの損失になりかねない。

労作時のみの酸素処方が、妥当な医療なのかあるいは
過剰医療なのかを合理的に解決するためには、
”労作時にのみ酸素濃度が低下する患者に対する
携帯型酸素療法と酸素療法なしの比較試験”が必要だと思うが、
そういった臨床試験など存在しない。そのため、
酸素療法開始基準を厳格に遵守するかどうかは
おのおのの医師の裁量によってまかされている。

私個人的には、酸素処方を行うことで
・呼吸困難などの疾患症状の改善
・QOLの改善
・死亡率を含む予後の改善

上記を満たす可能性があるならば処方すべきであると考えている。
hypooxic vasconstriction(低酸素性肺血管攣縮)による
肺高血圧を予防するために酸素療法を行うという議論も
あるかもしれないが、ここではその是非については割愛する。

前述したように、労作時のみに携帯型酸素ボンベを処方された
患者における長期予後の改善を示した研究はいまだにない。
酸素療法を処方された患者の酸素使用パターンと
臨床的アウトカムについて文献で検索すると、
2つの試験(NOTT試験、MRC試験)が必ず登場する。
これらによれば、COPDによる低酸素血症への1日あたりの
酸素吸入時間が死亡率改善に関係すると示唆されている。
酸素療法が妥当と考えられるCOPD患者さんに1日18時間以上の
酸素療法をおこなうことで生存が約2倍に延長したという結果は
医者ならずとも知っておられる医療従事者は多いだろう。
(Ann Intern Med 93:391-398, 1980., Lancet 1:6810686, 1981.)
e0156318_13413276.jpg
しかし、近年では生存に差はでなかったとする報告もあり
(Eur Respir J 14:1002,1999., Thorax 52:674,1997)、
また軽症のCOPD患者においては予後改善効果は
認められなかったという報告もある(Crit Care Med 174:373-378, 2004)。

一般的に携帯型酸素ボンベを処方された患者の
平均的酸素使用時間は数時間程度といわれている。
低酸素状態を1日数時間だけ回避した程度で、
長期的予後を変えることができるほど
酸素療法に医学的な有益性があるだろうか。

もちろん、いくら安静時の病態がよくても
労作時や入浴時にチアノーゼが出現したりSpO2の極度の低下(70%台)
があるようなケースでも酸素処方しなくてもよいとは思わない。
疾患によっても酸素処方の臨床医の判断も変わるだろう。また、
労作時のみの酸素処方をすべきではないと考えているわけでもない。
そこは臨床的にケースバイケースだと考えているし、
臨床医は柔軟性を持つべきであろう。

ただ、医療費節減が叫ばれている近年であっても
日本はいとも安易に酸素処方を行う風潮がある。
無症状であるのに労作時のみSpO2・PaO2が軽度低下する場合
費用・QOL損失と患者アウトカムの不均衡を考えれば
安易に酸素を処方することは、現時点では意義に乏しいと考える。
目の前の患者さんに果たして本当に酸素療法を行う
妥当性があるのか、臨床医は常に悩み続けるべきであると思う。

by otowelt | 2012-03-27 12:44 | コントラバーシー

ICUにおける、容量監視 vs 圧監視戦略

transpulmonary thermodilutionは、
pulse contour cardiac outputとも呼ばれる。
海外のICUではよく使用されている、PiCCOのことである。
http://intensivecare.hsnet.nsw.gov.au/picco

Trof, Ronald J, et al.
Volume-limited versus pressure-limited hemodynamic management in septic and nonseptic shock
Crit Care Med 2012; 40:–1185


目的:
 結構動態的マネジメントを、心ボリューム負荷の上限を規定する
 方法か、圧上限を規定する方法か、
 ショックで入院した人工呼吸管理中の患者において効果を評価する。

デザイン:
 プロスペクティブランダム化試験

セッティング:
 多施設における混合ICU

患者:
 120人の患者が登録(72人が敗血症性、48人が非敗血症性)された。
 ランダムに、transpulmonary thermodilution (循環動態モニタ)
 に60人、肺動脈カテーテルに60人割り付けた。
 2007年2月から2009年7月まで実施。

介入:
 ・輸液によるボリューム容量負荷上限を規定する群
  transpulmonary thermodilution (PiCCO:循環動態モニタ)
  extravascular lung water:<10 mL/kg
  end-diastolic volume index :<850 mL/m2
 ・肺動脈カテーテルを使用する群
  肺動脈圧:<18–20 mm Hg
 上記はいずれも割り付け72時間後とした。

アウトカム・結果:
 プライマリアウトカムは人工呼吸器非装着日数と
 ICU在室あるいは在院日数とした。セカンダリアウトカムは
 臓器不全と死亡率とした。心合併症がより非敗血症性群において
 高い傾向であった。人工呼吸器非装着日数、在室日数、臓器不全、
 28日死亡率(overall 33.3%)は両群とも同等であった。
 transpulmonary thermodilution群において、 
 人工呼吸器装着日数とICU在室日数、在院日数が非敗血症性群
 において多い傾向にみられた(p = .001)(敗血症群では有意差なし)。

結論:
 血行動態マネジメントをtranspulmonary thermodilutionで行う場合も
 肺動脈カテーテルでおこなう場合も、人工呼吸器非装着日数、ICU在室日数、
 在院日数において影響はみられなかった。非敗血症性ショックにおいて
 ただし、transpulmonary thermodilutionアルゴリズムは
 肺動脈カテーテルアルゴリズムと比較すると
 人工呼吸器装着日数、ICU在室日数の延長をきたした。これは
 心合併症、輸液によるプラスバランスと関連しているのかもしれない。

by otowelt | 2012-03-25 14:22 | 集中治療

IPFにおけるFVC10%以上の減少の相対的計算は予後予測に正確

Luca Richeldi, et al.
Relative versus absolute change in forced vital capacity in idiopathic pulmonary fibrosis
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2011-201184


背景:
 FVCの減少は長らくIPF患者の死亡を予測する因子として
 信頼されてきた。臨床プラクティスにおける使用でも
 推奨されてはいるが、相対的減少か絶対的減少か
 どちらが死亡予測に関して有用であるかはわかっていない。

方法:
 IPF患者において、ベースラインと12ヵ月後の
 FVCデータがある2つのプロスペクティブコホートが
 組み込まれた。10%以上のFVC減少は2方法で
 計算された。すなわち、
 相対的10%減少(eg, from 60% predicted to 54% predicted)
 絶対的10%減少(eg, from 60% predicted to 50% predicted)
 である。予測値が60%である場合、その10%は6%になるので
 60-6=54%ということになる。
 また絶対値での10%は60-10=50%ということを意味している。
 2年の無臓器移植12ヶ月生存率を比較した。

結果:
 いかなるFVC10%以上の減少においても
 相対的変化を用いた方が大きかった。
 両計算法ともに、2年の無臓器移植12ヶ月生存率に同様の正確性が
 あり、ベースライン特性を補正した後も有意差がみられた。
 絶対的計算法は5%以上の減少でも予測性がある。

結論:
 FVCの相対的な変化を用いて10%以上の減少を同定
 することで、予後推定の正確性を損なうことなく
 減少変化を最大に同定することができると考えられる。
 FVC5%以上の減少という基準は恒常性がない(not hold true)。
 これらの知見は、臨床試験をデザインする上でも
 重要なものである。
e0156318_11222611.jpg

by otowelt | 2012-03-23 06:04 | びまん性肺疾患

3型分泌システム外毒素は緑膿菌菌血症の予後不良因子

3型分泌毒素は、緑膿菌感染症における重症例において
重要な位置づけであることは言うまでもない。

El-Solh, Ali A, et al.
Clinical outcomes of type III Pseudomonas aeruginosa bacteremia
Critical Care Medicine: April 2012 - Volume 40 - Issue 4 - p 1157–1163


背景:
 緑膿菌菌血症は、重症かつ致命的な死亡率の高い感染症である。
 緑膿菌による病原性は、3型分泌システムが呼吸器において
 急性的で侵襲的な感染に関与していると考えられているが、
 3型分泌システムと緑膿菌菌血症との臨床的な関連性については
 よくわかっていない。

目的:
 緑膿菌の血流感染症における3型分泌システムと
 30日死亡率との相関性を検証する。

デザイン:
 レトロスペクティブに85例の緑膿菌菌血症を解析。

介入:
 in vitroにおいて3型外毒素の分泌をアッセイでみた
 (ExoU, ExoT, and ExoS)。ポリモルフィックDNA PCRジェノタイピング
 を使用。感受性はKirby Bauer ディスク拡散テストで実施。

結果:
 少なくとも3型分泌システムタンパクのうちの1つが85の分離株のうち37に
 認められた(44%)。敗血症性ショックは3型分泌システム陽性のうち
 43%にみられたが、陰性の場合では23%にしかみられなかった(p=.12)。
 3型分泌陽性株では耐性傾向が強く、シプロフロキサシン(59%)、
 ゲンタマイシン(38%)など。30日死亡率は有意に差がみられた(p=.02)。
 3型分泌システム陽性の場合、初期30日に生存した患者では
 ExoUフェノタイプをもつ緑膿菌株はみられなかった。

結論: 
 3型分泌システム外毒素がある緑膿菌菌血症では
 抗菌薬感受性プロファイルにかかわらず臨床アウトカムが悪い。

by otowelt | 2012-03-21 05:31 | 感染症全般

医療従事者は多剤耐性菌伝播の最たるリスク因子

Morgan, Daniel J, et al.
Transfer of multidrug-resistant bacteria to healthcare workers’ gloves and gowns after patient contact increases with environmental contamination
Critical Care Medicine: April 2012 - Volume 40 - Issue 4 - p 1045–1051


目的:
 医療従事者の衣服への多剤耐性菌の伝播における
 環境のコンタミネーションの役割を評価する。

デザイン:プロスペクティブコホート試験

セッティング:6つのICU

目的:
 医療従事者は、看護師、呼吸療法士、リハビリスタッフ、内科医
 などを登録した。

結果:
 585人中120人(20.5%)の医療従事者における手袋とガウンに
 コンタミネーションが同定された。多剤耐性Acinetobacter baumannii
 のコンタミネーションが最も多くみられ、167観察のうち55に認められた
 (32.9%; 95%CI 25.8% to 40.0%)。次いで
 多剤耐性緑膿菌15 of 86 (17.4%; 95% CI 9.4% to 25.4%)、
 VRE 25 of 180 (13.9%, 95% CI 8.9, 18.9%)、
 MRSA 21 of 152 (13.8%; 95% CI 8.3% to 19.2%)。
 独立危険因子となっていたのは、環境培養陽性(OR 4.2; 95%CI 2.7–6.5)、
 5分を超える在室(OR 2.0; 95% CI 1.2–3.4)、
 身体診察 (OR 1.7; 95% CI 1.1–2.8)、
 人工呼吸器への接触(OR 1.8; 95% CI, 1.1–2.8)であった。
 パルスフィールドゲル電気泳動において91%の医療従事者からの
 検出は環境および患者のものと関連していた。

結論:
 医療従事者の予防的衣服における多剤耐性菌のコンタミネーションは
 A. baumanniiが最も多かった。環境のコンタミネーションは
 手袋やガウンを通じて容易に伝播され、これを減少させるべく
 より厳格な感染予防をおこなうべきであろう。

by otowelt | 2012-03-20 23:29 | 感染症全般

抗酸菌検査について

e0156318_14244117.jpg●抗酸菌検査について
1.塗抹検査 :直接法、集菌法
2.培養検査 :固形培地(小川培地)、液体培地(MGIT培地等)
3.遺伝子検査 :PCR法、MTD法
4.菌種同定検査 :
 キャピリアTB(イムノクロマトグラフィ法)
 アキュプローブ(DNAプローブ法)
 DDHマイコバクテリア(ハイブリダイゼーション法)
5.感受性検査
 普通法・小川比率法
 マイクロタイター(ビットスペクトルSR)法
                /ウエルパック法
 ブロスミックMTB-1法
 MGIT抗酸菌システム
 ピラジナミダーゼ試験


1.塗抹検査
 開放性の場合の検体には、抗酸菌としてヒト型結核菌及び
 非病原性の非結核性抗酸菌が認められることがある。
 そのため、塗抹鏡検の結果で結核と断定することは慎重を要する。


2.培養検査
培地は大別して卵培地(小川培地またはLowenstein-Jense培地)、
寒天培地(Middlebrook 7H10または 7H11培地)、および液体培地がある。
e0156318_14133160.jpg
・固形培地(小川培地)
 M.tuberculosisおよびその他Mycobacterium spp.の選択分離培地で、
 発育阻害物質を含む寒天やペプトンを使用せず、全卵を用いて固める。
 喀痰を処理するNaOHの濃度に対応し、含まれるリン酸2水素カリウムの
 濃度によって3%及び1%組成がある。小川培地以外にも、ビット培地、
 Lowenstein-Jensen培地などがある。MGITなどの液体培地の発達により、
 不要かと言われればそういうわけでもない。液体培養で生育の悪い抗酸菌の
 検出、抗酸菌混合感染例の見落とし防止、液体培地雑菌汚染時のレスキュー、
 菌量の把握が出来る、安価であるなどメリットは多い。

・MGIT(Mycobacteria Growth Indicator Tube)法
          (SeptiChek AFB,MGIT,BACTEC9000MB,MB/BacT)
 液体培地を使用し、酸素蛍光センサーを備えた抗酸菌検出システム。
 日本の10施設で行われた共同評価データから、以下のような評価結果がある。
 ・喀痰などからの全抗酸菌の検出率は、小川法に比べ、4.1~11.6%高かった。
 ・MGIT法は小川法に比べ、結核菌群では約20%、NTM群では
  約30%高い検出率を示した。
 ・塗抹陰性検体での菌検出能力では、MGIT法が小川法より優れていた。
 ・MGIT法は小川法に比べ、結核菌群では5~12日、
  NTM群では10~24日早く菌を検出した。


3.遺伝子検査
 接検体から菌の遺伝子を検出する核酸増幅法検査では、
 RNA増幅法によるAmplified Mycobacterium Tuberculosis Direct Test(MTD)、
 PCR 法によるAmplicor Mycobacterium、およびLCR法による
 LCXM.ツベルクローシス・ダイナジーンが日本で保険適応になっている。
 MTDとLCXはM.tuberculosis complexを、Amplicor Mycobacteriumは
 M.tuberculosis complexのほか、M.aviumとM.intracellulareも
 検出・同定できる。これらの遺伝子増幅検査の検出感度は約70%、
 特異度は96%以上である。PCR陰性でも、培養法のほうが感度が高いので
 後から結核菌培養陽性になることがある。また、死菌でもPCR陽性になるので
 培養法で陰性になることがある。


4.菌種同定検査
 当院では、キャピリアTBでTBかどうかを判断し、その後アキュプローブで
 MAC、M.kansasii、M.gordonaeの同定をおこない、 
 同定不能の場合DDH法を用いている。

・キャピリアTB(イムノクロマトグラフィ法)
 結核菌群が産生するMPB64(菌体外に分泌されるタンパク質)を
 タ-ゲットとして検査する。非結核性抗酸菌はこのMPB64を産生しないため、
 ヒト型結核菌と他の抗酸菌との鑑別に用いられる。液体培地用に開発された。
 特別の装置を必要とせず、操作が極めて簡単であり、習熟を必要としない。
 また迅速(15分)に結果が得られる。問題は、MGIT陽性になった検体でも
 結核菌の量が少ない(MPB64の産生量が少ない)場合ラインが出来ない点である。
e0156318_1415728.jpg
・アキュプローブ(DNAプローブ法)
 特異性に優れている。結核菌、MACの同定が行える。

・DDHマイコバクテリア(DNA-DNAハイブリダイゼーション法)
 結核菌、MAC、M. kansasii、M. abscessusを含めた18菌種の同定が行える。
 日常的に診療するNTMの大部分が同定可能である。
 小川培地に発育した菌コロニーの同定検査には、これが最適かもしれない。
 メリットとしては、以下が挙げられる。
 ・1回の検査で18菌種の同定ができる。
 ・培養菌1コロニーでも同定可能である。
 ・1検体ごとの試薬キットなので、試薬消費が一番少ない


5.感受性検査
当院ではMGIT→小川比率法の流れになっている。

・普通法
 小川培地を用いた方法で、従来から広く行われてきた方法で結果の信頼性は
 高い。絶対濃度法と比率法がある。培地中の成分が薬剤感受性に影響を
 与えたり、長期の保存で培地中の抗菌薬の薬効が低下する場合がある。
 指針では小川培地を用いた比率法(proportion method)が採用されている。
 INH については試験濃度を2濃度設定しているが、通常の治療には
 0.2μg/mlを参考にし、1.0μg/mlはMDR例で使用可能な薬剤がない場合に
 参考とする。小川培地では薬剤とくにRFPが卵へ吸着し正確な試験濃度が
 得られないという欠点があるため、小川培地を用いた検査でRFP耐性で
 あった場合他の検査法で再検する必要がある。

・マイクロタイター(ビットスペクトルSR)法/ウエルパック法
 簡便だが、感受性のものを耐性と判定する場合がある。
 マイクロタイター・ビットスペクトルSRなどがある。
 検査法の問題点として、臨床検査室で使われる頻度の高い
 マイクロタイター法(ビットスペクトルSR法など)と液体培地法で、
 ときに検査結果に不一致が見られることがある。とくにEBやSMでビットで
 耐性と判定されることがある。これは、マイクロタイター法は
 培地量が少ないので、菌量が過剰であると、感受性でも菌が増殖して、
 耐性と判定されるためと考えられる。結核病床を持つ各施設で
 マイクロタイター法/ウエルパック法により耐性と判定した菌株を、
 結核研究所で普通法検査したところ、それ60%以上で感受性だった。

・ブロスミックMTB-1法
 微量液体稀釈法で、MIC値が判定可能。
 培養期間が短く、普通法とよく相関する。

・MGIT抗酸菌システム
 培養期間が1週間と短く、普通法、米国臨床検査標準委員会の標準法
 (M24-T)とよく相関するが、INH、RFP、SM、EB4剤にしかできない。
 MGITによる薬剤感受性検査でHRES感受性の場合そのまま確定する。
 もしMGITでHRESのどれかに耐性があった場合、小川培地による
 比率法で再検査し、その結果を確定とする。
 MGIT耐性はINHとSMにおいては、一概に信頼しない方が良い。
 INH耐性でも小川比率法を待つ。

・ピラジナミダーゼ試験
 PZA耐性がピラジナミダーゼ活性と相関することを利用した方法。
 ピラジナミダーゼ活性があれば耐性と判定される。
"文責"倉原優

by otowelt | 2012-03-20 22:09 | レクチャー