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FDA安全性情報:腎機能低下例におけるセフェピムへの注意喚起

FDAから注意喚起。

Cefepime:Label Change- Risk of Seizure in Patients Not Receiving Dosage Adjustments for Kidney Impairment
06/26/2012 - Drug Safety Communication3 - FDA


 FDAは2012年6月25日に、腎機能が低下した患者にセフェピムを使用する場合には用量調節をおこなうよう注意喚起を徹底するよう求める安全性情報を発表した。腎機能が低下した症例において、セフェピムによる非痙攣性てんかん重積(nonconvulsive status epilepticus)を発症することがある。FDA’s Adverse Event Reporting System(有害事象報告システム:AERS)の解析により、この注意が遵守されていないことが明らかになったと報告された。
 16年間の間(1996~2012年)に、AERS報告事例を分析したところ、この有害事象は合計59例報告されており、そのうち58例が腎機能の低下した患者にみられ、また56例が腎機能低下の程度による抗菌薬の用量調節を受けていなかった。43例がセフェピムの中止または血液透析により回復したが、3例は重篤な神経障害後遺症を残した(ただ、有害事象報告例の中には、既往としてβラクタム系やセファロスポリンによる痙攣があった患者も含まれていた)。
 そのため、FDAはクレアチニンクリアランス60mL/分以下の患者に対して、セフェピムの用量を調節することで非痙攣性てんかん重積状態を予防できるため、注意喚起をうながしている。

by otowelt | 2012-06-26 03:48 | 感染症全般

2日連続の6分間歩行試験におけるバリアンス減少

e0156318_229583.jpg 2日連続の6分間歩行試験でバリアンスの減少が可能であるという論文。確かに1度の6分間歩行試験ってどうなのかなぁ・・・とずっと思っていた。気合も入るし、バイアスもかかるし、実臨床ではあんまり有用とは感じていない。
 まったくの余談だが、競歩3000mの世界記録保持者はイタリアのベネディチス選手で、この人が6分間歩行試験を全力でおこなうと、歩行距離は1669mになる。


Divay Chandra, et al.
Optimizing the Six Minute Walk Test as a Measure of Exercise Capacity in COPD
CHEST June 2012 Published online before print


背景:
 2度にわたる6分間歩行試験を検査パフォーマンスの改善のために何とかして行うべきかどうかはまだよくわかっていない。そのため、もし追加で6分間歩行試験が可能であれば、この2回の6分間歩行試験をおこなうことでいずれの結果が予後予測に妥当性があるのか検証した。

方法:
 われわれはNational Emphysema Treatment Trialに登録した連続患者を使用。ランダム化の前と、呼吸リハビリテーションの6~10週間後に、6分間歩行を2日連続でおこなった(n=396)。患者はランダム化から6ヵ月にも2度の6分間歩行試験をおこなった(このランダム化は肺容積減量手術群74人と適切な内科治療群64人)。われわれは、1回目の6分間歩行距離の変化と、2回目の6分間歩行距離、2回平均距離、2回のうちのベスト歩行距離を比較した。

結果:
 6分間歩行距離を比較すると、2回の平均距離と2回のうちのベスト歩行距離は、より妥当性と精確性があった。特異的に、肺容積減量手術群へのランダム化6ヵ月後において、2回の平均距離の変化(r=0.66 vs. 0.58, P=0.01)および2回のうちのベスト歩行距離の変化(r=0.67, vs. 0.58, P=0.04)は、最大運動耐用能の変化と相関した(i.e. better validity)。1回の6分間歩行試験と比べて、2回の平均距離の変化のバリアンスは14-25%減少、2回のうちのベスト歩行距離の変化のバリアンスは14-33%の減少。

結論:
 2回目の6分間歩行試験を追加することは、有意に治療介入における反応を同定するパフォーマンスにすぐれている。これによって14~33%のサンプルサイズ必要性が減少可能である。

by otowelt | 2012-06-25 22:16 | 気管支喘息・COPD

せん妄長期化と脳萎縮の関連

Max L. Gunther,et al.
The association between brain volumes, delirium duration, and cognitive outcomes in intensive care unit survivors: The VISIONS cohort magnetic resonance imaging study
Crit Care Med 2012;40:2022–2032


目的:
 せん妄の期間は、ICU生存者における長期的な認知能力の障害の予測因子である。神経解剖学的な偏りが、せん妄と長期認知障害の間に関連しているかもしれないという仮説のもと、われわれはせん妄期間、脳容積、長期認知障害の関連性を調べる探索的研究を実施した。

デザイン:
 プロスペクティブコホート試験、ICUにおいて呼吸不全あるいはショックから生存した患者を登録。Vanderbilt University Medical Center (Nashville, TN) あるいはSaint Thomas Hospital (Nashville, TN)において2006年6月から2009年12月までの間の、内科ICU、外科ICU、心臓ICUの患者を用いた。
 3テスラの脳MRI(Philips Medical Systems, Best, The Netherlands)において脳容積を定量的計算、退院後3ヶ月までフォローアップした。せん妄はCAM-ICUを使用。認知アウトカムは、3ヶ月目、12ヶ月目にフォローアップをおこなった。線形回帰によってせん妄期間と脳容積、および脳容積と認知アウトカムの相関性を検証した。

結果:
 合計47人のMRIプロトコルを施行した患者を登録。せん妄が長期におよんだ患者は、退院時のventricle-to-brain ratioにおいてより脳萎縮が強かった(0.76, 95%CI[0.10, 1.41]; p = .03)。3ヶ月目のフォローアップにおいても同等の結果(0.62 [0.02, 1.21],p = .05)。また、長期せん妄は退院時の前頭葉の容積(−2.11 cm3 [−3.89, −0.32]; p = .03)、 海馬の容積と相関していた(−0.58 cm3 [−0.85, −0.31],p < .001)。3ヶ月時の強い脳萎縮(高いventricle-to-brain ratio)は、12ヶ月時の認知パフォーマンスの悪化に関連していた(lower Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status score −11.17 [−21.12, −1.22], p = .04)。3ヶ月時の前頭葉、視床、小脳容積は小さいものでは、12ヶ月時のexecutive functioningおよびvisual attentionの悪化に関連していた。
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結論:
 長期におよぶせん妄は脳容積の小ささに関連しており、この脳容積の小ささはさらに12ヶ月時の認知機能障害と関連していた。しかしながら、もともと小さい脳容積がこれらを説明できるものかどうかは除外できなかった。

by otowelt | 2012-06-25 16:38 | 集中治療

研修医は、インフルエンザ様症状があっても病院へ出勤する

e0156318_16105326.jpg 日米における”研修医”の意味は少々異なるが、この論文は医療界に大きな警鐘を鳴らしている。実のところ、たとえ高熱でインフルエンザ様症状があっても、日本の多くの研修医も出勤しているのが現状である。この51%というアメリカの報告、果たして日本では一体どのくらいだろうか?
 これは研修医に限ったことではなく、多くの医師は熱があっても出勤した経験があるだろう。出勤する理由は、バックアップ体制が不足していたり、あるいはバックアップを他の医師に頼めるような簡単な患者さんではないことがあるからだ。そのため、患者さんに感染させるリスクを承知の上で、医師は体にムチを打って出勤する。極度に人手不足の過疎地では、物理的に休むことが許されない病院もありうる。

Anupam B. Jena, et al.
Why Physicians Work When Sick
Arch Intern Med. 2012 ONLINE FIRST


方法:
 2010年のアメリカ内科学会イリノイ地方会に出席した研修医150人を対象に、無記名による紙ベースのアンケートを実施した。「前年度の研修中にインフルエンザ様症状がある状態で勤務したかどうか」を質問し、またその勤務した理由についても回答を求めた。

結果:
 アンケートに答えた150人のうち77人(51%)が、1回以上勤務、3回以上勤務した研修医は全体の16%だった。1年目研修医と比較して、2年目研修医でその割合が高く(51% vs. 58%)、また男性に比べ女性の研修医で割合は高かった(48% vs. 56%)。統計学的に有意差はみられなかった。
 そのインフルエンザ様症状がある状態で、それを患者に感染させてしまったと思うかを質問すると、14人(9%)がその可能性があると回答した。
 なぜそのような状態で勤務したのかどうか理由を聞くと、
 1.同僚へ負担をかけたくなかった:44人(57%)
 2.患者に対する責任感:43人(56%)
 3.同僚に負い目を感じ、それがプレッシャーになる:6人(8%)
 4.同僚から病弱と思われることへの不安:9人(12%)
 特に、4番目の病弱と思われることを不安に思うという理由は、女性の研修医で高い傾向にあった(7% vs. 18%)。
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コメント:
 研修医のこういった病気時に出勤する習慣は、若手医師のプロフェッショナルとしての自覚の形成に大きな疑問を投げかけるものである。患者や同僚に対する責任感や重圧のため、やむなく出勤せざるを得ない可能性があるだけでなく、患者や同僚に感染させるのではないかという懸念との葛藤も浮き彫りとなった。病気になったときの欠勤が、患者に安全な医療を提供するために必要なものであることを指導する必要性がある。

by otowelt | 2012-06-24 16:16 | 内科一般

癌以外の呼吸困難にモルヒネを使用してよいか?

e0156318_1139191.jpg 腫瘍内科の世界では癌患者の49%が呼吸困難を有するといわれているほど、癌を診療している医師にとってはよく経験する症状である。
Dudgeon DJ, et al.Dyspnea in cancer patients: prevalence and associated factors. J Pain Symptom Manage 21 (2): 95-102, 2001

 また、肺癌ともなれば実に60%の患者に呼吸困難の症状が起こる。
Muers MF, Round CE. Palliation of symptoms in non-small cell lung cancer: a study by the Yorkshire Regional Cancer Organisation Thoracic Group. Thorax 48 (4): 339-43, 1993

 肺癌だけでなくあらゆる疾患において、呼吸困難という主訴は、全ての呼吸器内科医にとって重要な命題であり悩み続ける問題である。呼吸困難に対して、呼吸リハビリテーションや抗不安薬などさまざまな対処法があるが、モルヒネを安全かつ効果的に使用できることが呼吸器内科医にとって重要なスキルであると私は思っている。

 オピオイドが呼吸困難を解除する機序については完全には明らかになっていない。考えられている機序として、中枢神経系における呼吸困難の知覚抑制、呼吸数低下による呼吸仕事量の軽減、不安の軽減、肺血管抵抗低下による心負荷の軽減などがよく教科書的には記載されている。

 では、果たして非癌疾患にオピオイドを使用してよいのだろうか?実はこれについては明確な答えはまだない。間質性肺疾患などのびまん性肺疾患、COPD、塵肺などの肺の疾患に対してオピオイドを使用することは議論の余地があるところである。癌患者に対するオピオイドには寛容であっても、非癌患者にはすべできないと強くおっしゃっている医師も多い。理由の多くは、古典的なオピオイドによる副作用を懸念してのことである。

 実は、COPD患者にとっても癌患者にとってもオピオイドの使用が呼吸困難感を軽減させることはメタアナリシスで報告されている。
Jennings AL,et al.A systematic review of the opioids in the management of dyspnea.Thorax 57:939~44,2002.
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 また、小さなスタディではあるが、特発性肺線維症患者においてダイアモルフィン2.5mgのワンショットの皮下注射が呼吸困難を軽減させた(VASスケール:P=0.0001)という報告もある。
S.Allen,et al. Low dose diamorphine reduces breathlessness without causing a fall in oxygen saturation in elderly patients with end-stage idiopathic pulmonary fibrosis, Palliative Medicine; 2005;19:128-130

 治療量では呼吸抑制やEtCO2の増加はきたさないが、せん妄リスクには注意しなければならない。ただ実臨床において、副作用で困るという事態にはさほど陥らない。

 個人的には、癌に限らなくても良性疾患における呼吸困難感の改善にオピオイドを使用しても大きく問題はないと考えられる。むしろ患者さんにとっては極めて有益かもしれない。もちろん呼吸困難を改善する方法としてオピオイドがすべてで最優先とは考えてはいないし、何よりも呼吸困難が原疾患のみで起こっているのかどうか、アセスメントありきだと私は考えている。CO2ナルコーシスが起こりやすいと考えている状況での使用も安易に行うべきではないし、呼吸困難の重症度によっても使い分けを考える必要もあるだろう。

 ちなみに当院では緩和ケアチームと合同で、良性疾患患者に対してもオピオイドを使用することがある。その多くは呼吸困難でADLがダウンした重症患者さんである。呼吸器内科であるため、原疾患は特発性肺線維症、重度の塵肺、慢性過敏性肺炎などが主である。ASCOはオピオイド未使用例では、2~5mg/回を1日4~5回内服する方法を推奨しているが、特発性肺線維症や塵肺がひどい状態だと、内服すらできない患者さんが多い。そういったときは、塩酸モルヒネ1%と生理食塩水を1:1に混合したものを0.05ml/時間 で持続皮下注していることが多い(24時間で6㎎)。これくらいの量であっても、結構効果を実感することが多い。持続皮下注と持続静注の大きな違いは、前者のほうが安全かつQOLを損ないにくいだけでなく夜間のルートキープは必要なくなるという大きな利点がある。そのため当院では癌性疼痛、呼吸困難時のモルヒネの持続投与は、ほぼ全例皮下注でおこなっている(もちろん内服できる患者さんは内服を主体としている)。看護師さんにとって、ベースアップやレスキューがおこないやすいように、独自の指示票を用いて管理をおこなっている。
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▲コンパクトな持続皮下注用シリンジポンプ。ポケットサイズなので外泊も可能。

 日本のオピオイド使用の閾値はまだまだ極端に高いのが現状である。日本人は”モルヒネ=依存、中毒”という幼少期からの情報に曝露され、医療従事者でさえもオピオイドは怖いと思っている人が多い。疼痛や呼吸困難に対してより広くオピオイドの安全かつ効果的な使用が浸透することを願ってやまない。そのための臨床試験の集積を待ち望んでいる。

by otowelt | 2012-06-22 11:47 | びまん性肺疾患

百日咳のwhoopingの映像

 喘息や慢性咳嗽で紹介される患者さんで、もしやと思ってとった抗PT抗体が極度に高いケースがある。呼吸器内科医にとっても百日咳は慢性咳嗽の重要な鑑別疾患の1つであるため、whoopingのビデオは一度は見ておきたい。
 というわけで、典型的なwhoopingのビデオがNEJMで公開されている。

Renee K. Rutledge,et al.
Whooping Cough in an Adult
N Engl J Med 2012; 366:e39

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症例:喘息発作としてステロイド治療を受けるものの咳嗽の改善がみられなかった64歳男性。アジスロマイシンを投与され、症状が改善後に鼻咽頭培養のBordetella pertussisが陽性であることがわかった。百日咳ワクチンの接種歴はなく、退院後1ヶ月目にDTaPワクチンを接種した。

百日咳の痙咳期には、短い咳が連続的に起こり(スタッカート)、続いて息を吸う時に笛音のようなヒューという音が出る(whooping)。この様な咳嗽発作がくり返すことをレプリーゼと呼ぶことがある。咳の持続は100日も継続することはまれであり、多くはその半分の50日程度であろう。

by otowelt | 2012-06-22 01:36 | 感染症全般

喫煙は急性高山病の頻度を減らすかもしれない

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最近巷では登山が流行しているらしい。高山病のスタディはきわめて少ないので、貴重な報告だと思う。ちなみに、慢性高山病については最近CHESTから面白いスタディが出ており、以前ご紹介した。

慢性高山病における運動耐容能低下は肺間質への水分集積が関与

それにしてもこのスタディ、試験の内容も知らされずに電車に2日間揺られて移動という行程は精神的にもキツそうだ。

Tian-Yi Wu, et al.
Smoking, acute mountain sickness and altitude acclimatisation: a cohort study
Thorax Online First, published on June 14, 2012


背景:
 1970年代に喫煙が高山病のリスクを軽減させるのではないかという報告はあるものの(MacLean N. Smoking and acclimatisation to altitude. Br Med J 1979;2:799.)、実際のところ喫煙と急性高山病:acute mountain sickness (AMS)の関連についてはよくわかっていない。

目的:
 AMSのリスクと高度順応が喫煙とどう関連しているか検証する。

方法:
 200人の健康な非喫煙者と182人の喫煙者がハン族の低地労働者から選ばれた。被験者は高地曝露のない男性とし、年齢、健康状態、職業によってマッチされ、海抜4525メートルに運ばれた。2261メートルまで2日間かけて電車で移動しそこで2日間駐在、その後12時間かけて2808メートルまで移動し3日間駐在、最終的な目標値までバスで6時間~8時間かけて移動した。何の目的の試験かは告げられていない。
 AMS,喫煙習慣、SpO2、ヘモグロビン、呼吸機能、平均肺動脈圧(PAPm)が到着時、3か月後、6か月後に解析された。
 AMSはLake Louise Scoring (LLS)を使用した。

結果:
 非喫煙者に比べて喫煙者はAMSの頻度はひくく(LLS≧3: 45% vs 56%, χ2=4.57, p=0.039; LLS≧4: 39% vs 51%, χ2=5.53, p=0.013;LLS≧5: 3.4% vs 8.5%, χ2=4.56, p=0.038)、AMSスコアも到着時には低かった((1.6±0.6 vs 1.8±0.7, p=0.004).)。1週間時点においてもこのスコアは低いままであった(1.4±0.8 vs 1.6±0.5, p=0.005)。
 肺活量は4525メートル到着時、いずれの群もVCはやや低い傾向があった。非喫煙者群は3か月後、6か月後にこれがもとに戻ったが、喫煙者では戻らなかった。
 SpO2は到着時、いずれも低かった(非喫煙者:83±6%, 喫煙者: 83±5%, p=0.001 vs low altitude, no difference between groups, p=0.164)。高地で生活するうちに、喫煙者は非喫煙者よりも低いSpO2を記録するようになった(3 months: 85±5% vs86±6%, p=0.004; 6 months: 85±6% vs 86±6%, p=0.002)。
 高いヘモグロビン、平均肺動脈圧は、3か月後、6か月後のSpO2低下と関連していた。

limitations:
 ・呼気CO、NOの測定ができていないこと
 ・血液ガス分析やCOHb濃度計測ができていないこと
 ・喫煙そのものがAMS症状を軽減することもありうるため、一概に喫煙がAMSの頻度を減らしたかどうかまでは検証できていないこと

結論:
 喫煙は急性高山病のリスクをやや低下させるが、長期の高地順応と呼吸機能を障害する。このスタディは、高山病予防のために喫煙を推奨するものではない。

by otowelt | 2012-06-21 17:24 | 呼吸器その他

中国黒龍江省における多剤耐性結核

Libo Liang, et al.
Factors contributing to the high prevalence of multidrug-resistant tuberculosis: a study from China
Thorax 2012;67:632-638


背景:
 多剤耐性結核(MDR-TB)の拡大は、世界的な関心を集めてきた。2007年の時点では、MDR-TBの頻度は同定された結核のうち8.32%とされているが、中国ではこれよりも多いと考えられている。黒龍江省(Heilongjiang )は3800万人の人口と113の郡を有する都市であり、このスタディの目的として、この黒龍江省における高いMDR-TBに寄与する因子を同定するものである。 

方法:
 WHO/International Union Against Tuberculosis and Lung Diseaseガイドラインに続くクロスセクショナルサーベイが2004年に黒龍江省30の郡からランダムに選ばれた連続患者に対しておこなわれた。合計1995人がMDR-TBを検査された。MDR-TBに関連した因子は、マルチレベルモデルと古典的ロジスティック回帰分析によって同定された。

結果:
 2114人の培養陽性患者のうち、薬剤感受性試験のデータが有効であった1995人を試験に組み込んだ。そのうち、241人(12.1%, 95% CI10.7% to 13.5%)がMDR-TBと同定された。37.7%が少なくとも1つの空洞病変を有しており、1.7%は肺以外にも結核病変が同定された。4.0%に糖尿病合併、0.1%に塵肺合併がみられた。
 再治療を受けた患者は421人おり、このスタディにおいて21.1%の頻度であった。再治療患者は、新規患者に比べて5.48倍(95% CI4.04 to 7.44)MDR-TBの罹患リスクが高かった。180日を超えてイソニアジドとリファンピンで治療された患者は、180日未満の患者と比べて4.82倍のMDR-TBリスクを孕んでいた。年齢と結核治療の遅れはMDR-TBに関連していた。経済的負担、知識不足、結核治療の副作用がMDR-TBに影響を与える因子として認識された。提携サービスの欠如、治療統轄や感染制御の不満足さは、MDR-TBのコントロールを危険にさらしていた。

ディスカッション:
 再治療例においては30%を超える患者がMDR-TBであった。中国は、結核再発率がとても高い。たとえば上海においては再発率は61.5%とされている(Emerg Infect Dis 2006;12:1776-8.)。
 中国の結核治療は、ほかの発展途上国と同じように薬剤感受性試験をおこなわず経験的に治療をおこなっているのが現状である。すなわち、治療に失敗してはじめて臨床的にMDR-TBであると気づくことになる。そのため、MDR-TBと判明するまでの時間が非常に長い。
 中国においてDOTSの実施はほぼ100%であると報告されているが、実状としては公衆衛生の”穴”は多く、MDR-TBの頻度の高さや再治療例のそれをみても確実にWHOガイドラインに基づいた結核治療が遂行されているとは言いがたいのが現状である。

結論:
 不適切な治療がMDR-TBに最も影響を与える因子であると考えられる。結核について人々は知識を深め、早期発見と適切な治療が優先されるべきである。

by otowelt | 2012-06-21 16:35 | 抗酸菌感染症

癌患者の情報源としてインターネット利用率はまだ低い

e0156318_1334221.jpgこのブログを見た癌患者さんから質問がくることもたまにあるが、確かにインターネットを駆使している患者さんはさほど多くない。それはやはり患者さんの年齢によるところが大きい。

M. Lopez-Gomez, et al.
Internet use by cancer patients: should oncologists ‘prescribe’ accurate web sites in combination with chemotherapy? A survey in a Spanish cohort
Annals of Oncology 23: 1579–1585, 2012


背景:
 癌患者は予後や治療について情報を検索しているが、インターネットは医療情報ソースとしては主要なものとなった。癌患者に対する影響についてはまだよくわかっていない。

患者および方法:
 380の質問票が癌患者に対しておこなわれ、293が返ってきた。インターネットから得る情報やその有用性、患者医師間へ与える影響についてほかの情報源と比較検証された。Student t-tests, χ2検定、多変量回帰ロジスティック解析がおこなわれた。

結果:
 インターネット使用率は低かった(27% patients, 58% relatives)。癌特異的情報はおもに癌そのものの通常の情報が主体であった(41% and 70%)。61%の患者にとって、インターネットは有用なツールであった。インターネット使用について男女差は同定されなかった。単変量解析において、インターネット使用者の年齢中央値は51.5 歳であり(IQR: 39–56歳)、インターネット非使用者は65歳であった(IQR: 56–63歳) (P < 0.001)。また、都会に住む患者のほうがよりインターネット使用が多かった。多変量解析でも同様の結果が得られた。
 インターネットから情報を得た48%の患者が楽観的な印象を持ち、驚くべきことに混乱や不安を感じた患者はたったの48%、22%であった。
 臨床医からの情報はインターネットを使用しない患者にとっての主たる情報源であった(37% and 67%)。インターネット使用患者の22%の患者が臨床医とインターネット検索について相談していた。そのうち13%のみが主治医の感情や治療戦略のさまたげになるのを危惧し、インターネットについて相談や言及をしていなかった。
 また、ほかの情報源として、健康専門家(62% and 51%)、出版印刷物(18% and 25%)が多かった。

結論:
 癌患者やそれをケアする人は、医療情報源としてインターネットを使用する頻度が少なかった。しかし、インターネットは癌情報をうまく処理することの手助けになる。この情報を臨床医と議論することで、患者医師関係をより強めることができるかもしれない。そのため、臨床医は患者に信頼できるオンラインの情報源を提示すべきであろう。

by otowelt | 2012-06-20 13:06 | 肺癌・その他腫瘍

肺癌切除前胸腔内洗浄細胞診は予後予測にきわめて有用

Srdjan Saso,et al.
Positive pre-resection pleural lavage cytology is associated with increased risk of lung cancer recurrence in patients undergoing surgical resection: a meta-analysis of 4450 patients
Thorax 2012;67:526-532


背景:
 早期肺癌における胸腔洗浄細胞診pleural lavage cytology (PLC)の予後アセスメントへの付加価値については議論のわかれるところである。PLCと肺癌再発におけるシステマティックレビューはいままでなかった。われわれの仮説は以下の通りである
 1.切除前PLCが陽性であった場合、肺癌再発に関連
 2.切除前PLCが陽性であった場合、胸腔あるいは遠隔特異的な肺癌再発に関連
 3.切除前PLCが陽性であった場合、肺癌全患者およびstageIにおける生存アウトカム不良と関連

この試験の目標は、外科手術を受けた患者において切除前PLCと胸腔および遠隔腫瘍再発との関連性をしらべたものである。

方法:
 Medline, EMBASE, Cochrane Library、Google Scholarデータベースで2011年1月までの文献を調べた。以下のMESHにおいてPubMedでも検索をおこなっている;Lung neoplasm; Non-small cell lung cancer。データは、以下のアウトカムが抽出された:全再発率、局所および遠隔再発率、生存(全患者およびstage I)。ランダム効果モデルによるメタアナリシスを施行。PRISMA, MOOSE、Cochrane Collaborationガイドラインに基づいた方法とした。

結果:
 最終的に8試験4450人がプライマリアウトカムである再発において解析妥当と判断された。
 8試験におけるメタアナリシスにおいて、切除前PLCが陽性であった場合、切除後の全再発におけるリスクを上昇させた(OR 4.82, 95% CI 2.45to 9.51)。
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 同様に胸腔内再発(OR 9.89, 95% CI 5.95 to16.44)、遠隔再発(OR 3.18, 95% CI1.57 to 6.46)もリスクが上昇した。
 さらに、17試験におけるメタアナリシスでは、切除前PLCが陽性であった場合、生存においてもアウトカム不良であった(HR 2.08, 95% CI1.71 to 2.52)。
 出版バイアスは確認されなかった。
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limitations:
 比較的高いレベルのheterogeneityが確認されたこと。これはおそらく適格基準、患者特性、治療プロトコル、術中手技などにばらつきが出たためと考えられる。

ディスカッション:
 切除前PLC陽性は、全再発、局所・遠隔再発、生存アウトカム不良と関連していた。この手技は、腫瘍再発や生存的な予後予測が可能であると考えられる。さらに、アジュバント化学療法の是否を含めたこの手技の役割について、ランダム化試験を将来的におこなうべきであろう。

by otowelt | 2012-06-20 05:56 | 肺癌・その他腫瘍