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エルロチニブによるネオアジュバント化学療法の第II相試験

術前化学療法で分子標的薬を使用することについては議論の余地がある。

Eva E. Schaake, et al.
Tumor Response and Toxicity of Neoadjuvant Erlotinib in Patients With Early-Stage Non–Small-Cell Lung Cancer
JCO August 1, 2012 vol. 30 no. 22 2731-2738


目的:
 選択された患者において、標的治療は新たなオプションとして注目を浴びている。このプロスペクティブスタディの目的は、術前エルロチニブ治療の安全性と早期切除可能の非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するin vivoでの反応性を評価したものである。

患者および方法:
 このスタディは、オープンラベル第II相試験としてデザインされ、オランダにおける4病院で実施された。Simonのミニマックス基準(2段階デザイン)に基づいておこなわれた。まず、手術可能な早期NSCLC患者(n = 15)がenriched population(非喫煙者、女性、非扁平上皮癌、アジア人)から登録された。非選択患者が組み込まれ、合計60人登録された。患者は、術前エルロチニブ150mg1日1回3週間を投与された。治療反応性は、治療中のFDG-PETおよびCTと切除標本の組織学的検査によって評価された。プライマリエンドポイントは毒性と病理学的反応性とした。

結果:
 60人の患者が登録された。56人(93%)が術前に悪性の診断がついていた。平均年齢は64歳であった。
 合計42人が21日間のエルロチニブ内服を終了した。4人が100mgへの減量を余儀なくされ、7人の患者は毒性のため早期に治療中断となった(12%)。皮膚毒性は37人(62%)の患者にみられ、下痢は21人(35%)にみられた。PETでの代謝的反応性(25%をこえるSUV減少)は16人(27%)にみられ、CTでのRECIST判定では3人(5%)に反応性がみられた。
 手術においては、予測不能合併症は起こらなかった。病理検査では14人(23%)の患者の標本の50%以上に壊死がみられ、3人(5%)では95%以上の壊死がみられた。奏効率は、enriched populationにおいて34% (29人中10人)にみられた。
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 EGFR遺伝子変異は56人中7人(13%)にみられた。うち5人がenriched populationであった。KRAS遺伝子変異は12人(21%)にみられた。

結論:
 術前エルロチニブは低い毒性で活性も十分であり、今後のさらなる試験に妥当性がある。

by otowelt | 2012-07-31 22:54 | 肺癌・その他腫瘍

ソラシックエッグによる外来での気胸治療

呼吸器外科学会から、ソラシックエッグの話題。
簡単に言えば、外来でドレーンを入れて気胸を治療する方法である。7Frドレナージチューブと35mlの容器と2個の一方弁が付いたキットであり、チェストドレーンバッグがコンパクトなので体表に固定をしっかりすれば普通に生活できる。
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thoracic vent (SHEENMAN)、ソラシックエッグ(住友ベークライト)が現在流通している簡易型胸腔ドレナージキットである。

有村 隆明ら
ソラシックエッグを用いた自然気胸外来治療の検討
日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 26 (2012) No. 4 p. 364-368


目的:
 自然気胸症例に携帯型気胸ドレナージキットであるソラシックエッグ(以下TE)を用いた外来治療の有用性を検討した。

方法:
 対象は2006年11月から2011年4月までにTEで治療を行った自然気胸患者137例,男性116例,女性21例で患側は右側73例,左側63例,両側1例であった。
穿刺はTEスタンダードセットを使用した。カテーテル刺入部を縫着固定し滅菌パット付き防水フィルムを貼布した。弾性テープで補強を行い皮膚に固定した。
 TEを挿入してから30分後に胸部レントゲン検査を行い,肺の虚脱が進行していないことと再膨張性肺水腫が無いこと,患者の全身状態に異常が無いことを確認して翌日の外来通院と胸部レントゲン検査をおこなった。

結果:
 初発気胸は81例,再発は32例,2回以上の再発は8例,術後再発は16例であった.TEで外来治療を行い得たのは132例であった.84例はTEで治癒,48例はTEの後,手術となった.平均外来治療期間はTEで治癒した場合5.77日,手術となった場合は術前9.75日であった.合併症は1例にTE刺入部の感染,1例にTEの破損,5例にTEの偶発的抜去があったがTEの再挿入は行わなかった.

結論:
 TEを用いた自然気胸外来治療は重篤な合併症も無く,外来通院完遂率も高い.自然気胸患者にとって社会的,経済的負担の軽減の点で非常に有用な治療法であるといえる。

by otowelt | 2012-07-31 16:20 | 呼吸器その他

Runyon分類

感染症内科医や呼吸器内科医にはよく知られている非結核性抗酸菌症の分類として、Runyon分類がある。ルンヨンではなく、ラニヨンと読む。
Runyon EH:Anonymous mycobacteria in pulmonary disease. Med Clin North Am 1959;43:273―90.

 Ernest Runyon(1903年アイオワ州生)は、もともと植物学を専攻しており、その分野においてシカゴ大学から学士号を授与されている。植物学の知識をいかして、のちに微生物学者となった。1959年にヒトに対する病原性をもった抗酸菌を分類し、Runyon分類と呼ばれるようになった。1962年には抗酸菌分類分科会の議長をつとめた人物である。

 現在でもRunyon分類はよく用いるので、少し整理しておきたい。

 固形培地(Lowenstein-Jensen培地、小川培地、Middlebrook培地)を使用して、コロニーの形成に7 日以上を要するものを遅発育抗酸菌(slow growers)と定義し、7日以内であるものを迅速発育抗酸菌(rapid growers)と定義する。培養不能ならい菌(M. leprae)は培養不能抗酸菌に分類する。

 以下がRunyon分類の各論である。コロニーの性状として、色素産生と光反応性によって、光発色菌群(photochromogens,I 群)、暗発色菌群(scotochromogens,II 群)、非光発色菌群(nonchromogens,III 群)、迅速発育菌群はすべてIV群に分類される。1群は光発色菌で、暗闇の孵卵器の中の試験管を取り出して1時間程電灯にあてる。その後再び孵卵器に戻して培養を続けるとコロニーが黄色になるものである。当初yellow bacillusと呼ばれたM.kansasiiがその代表的なものである。2群は暗発色菌で、孵卵器のなかに光をあてずに置いておくことで、コロニーがオレンジ色に着色するものである。3群菌は非光発色菌で、培養中に光に当てても当てなくても、結核菌と同じようにコロニーは灰白色になるものを指す。MACはこれにあたる。
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by otowelt | 2012-07-31 13:00 | 抗酸菌感染症

近年のカテーテル関連感染症は、中心静脈カテーテル挿入部位で差はみられず

e0156318_186556.jpg大腿静脈からの中心静脈カテーテル挿入は、カテーテル関連感染症リスクが高いとされているが、そのエビデンスに一石を投じる報告。

Marik, Paul E, et al.
The risk of catheter-related bloodstream infection with femoral venous catheters as compared to subclavian and internal jugular venous catheters: A systematic review of the literature and meta-analysis
Critical Care Medicine. 40(8):2479-2485, August 2012


背景:
 カテーテル関連血流感染症は、入院患者において重要な罹患・死亡リスクである。現行のガイドラインは大腿静脈アクセスは、合併症の軽減のために避けるべきであるとされている(1A recommendation)。しかしながら、大腿静脈からのカテーテル関連血流感染症については、鎖骨下静脈および内頚静脈と比較してシステマティックにレビューされていない。

目的:
 システマティックレビューにより、鎖骨下静脈および内頚静脈からのCVC挿入と比較した大腿静脈CVCからのカテーテル関連血流感染症のリスクを検証する。

データ:
 MEDLINE, Embase, Cochrane Register of Controlled Trials, citation review of relevant primary and review articles, and an Internet search (Google).

スタディ選択:
 カテーテル関連血流感染症の頻度(1000カテーテル・日あたりの感染症)を記載したランダム化比較試験とコホート試験で、大腿静脈と鎖骨下静脈・内頚静脈を比較したものを選択。

データ抽出:
 データはスタディデザイン、スタディサイズ、セッティング、患者構成、部位別のカテーテルの数、カテーテル関連血流感染症の数、DVTの頻度を抽出。

結果:
 2つのランダムか比較試験(1006カテーテル)と8つのコホート試験(16370カテーテル)がこのシステマティックレビューの適格基準を満たした。3230カテーテルが鎖骨下静脈へ、10958カテーテルが内頚静脈へ、3188カテーテルが大腿静脈へ挿入された。合計113652カテーテル・日であった。
平均カテーテル関連血流感染症密度は1000カテーテル・日あたり2.5(range 0.6–7.2)であった。 異質性heterogeneityがスタディ間にみられた(I2 = 68%, p = .002)。2つのランダム化比較試験をのぞくと、異質性がなくなった(RR 1.02; 95% CI 0.64–1.65, p = .92,I2 =0%)。出版バイアスが幾分か確認され、LorenteらおよびNagashimaらの文献がアウトライヤー(外れ値)と認識された。
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 カテーテル関連血流感染症は、大腿静脈と鎖骨下/内頚静脈において2つのランダム化比較試験では差はみられなかった(RR 1.75; 95% CI 0.80–3.8, p = .16)。しかしトータルで内頚静脈は、有意にカテーテル関連血流感染症リスクが大腿静脈に比べて低かった(risk ratio 1.90; 95% confidence interval 1.21–2.97, p = .005, I2 = 35%)。LorenteらおよびNagashimaらの文献がアウトライヤーと認識されたため、これら2試験以外にしぼってみると、大腿静脈CVCは鎖骨下と比較してリスク上昇はみられなかった (risk ratio 1.35; 95% CI 0.84–2.19, p = 0.2, I2 = 0%)。
 メタ回帰では、感染リスクと出版年度に相関関係が認められた(p = .01)。昔の試験であるほど、大腿静脈の感染リスクは高いという結果になった。
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 カテーテル関連血流感染症は鎖骨下静脈と内頚静脈には差はみられなかった。DVTリスクは2つのランダム化比較試験で解析された。メタアナリシスでは、DVTリスクについて、大腿静脈と鎖骨下/内頚静脈の間にリスクの差はみられなかった。


結論:
 古い試験ではカテーテル関連血流感染症のリスクは内頚静脈のほうが大腿静脈よりも低いという結果であったが、近年の試験では挿入部位によってカテーテル関連血流感染症に差はみられない。

by otowelt | 2012-07-29 18:10 | 感染症全般

新規抗結核薬PA-824、moxifloxacin、PZA併用レジメンによるEBA

e0156318_12195044.jpg抗結核薬のEBAのスタディ。
PA-824は、PZA、RFP、INHのようなEBAは動物実験レベルでは期待されていなかった。
Powerful bactericidal and sterilizing activity of a regimen containing PA-824, moxifloxacin, and pyrazinamide in a murine model of tuberculosis. Antimicrob. Agents Chemother. 52: 1522-1524, 2008.

Andreas H Diacon , et al.
14-day bactericidal activity of PA-824, bedaquiline, pyrazinamide, and moxifloxacin combinations: a randomised trial
The Lancet, Early Online Publication, 23 July 2012


背景:
 新規抗結核薬では、短期的治療でなおかつ忍容性のあるレジメンが期待されている。14日間EBA( early bactericidal activity)治療の可能性をさぐる。
 PA-824は細胞壁脂質ミコール酸の生合成阻害と菌体蛋白質の合成阻害という複数の作用機序をもつ次世代結核治療薬であり、HAARTとの併用が可能である点から実用化がすすめられている。

方法:
 2010年10月7日から2011年8月19日までのあいだ、南アフリカのケープタウンでおこなわれたEBAのランダム化比較試験である。患者はランダムに、bedaquiline, bedaquiline-pyrazinamide, PA-824-pyrazinamide, bedaquiline-PA-824, PA-824-moxifloxacin-pyrazinamideあるいは標準治療を受ける群に割り付けられた。喀痰結核菌変動を定量化し、液体培養中のtime to positivity (TTP)をアガール・プレートのCFU数から算出した。

結果:
 14日EBAにおいてレジメン別では、PA-824-moxifloxacin-pyrazinamide (n=13; 0·233 [SD 0·128])が最良の結果で、bedaquiline (14; 0·061 [0·068]), bedaquiline-pyrazinamide (15; 0·131 [0·102]), bedaquiline-PA-824 (14; 0·114 [0·050])であった。

結論:
 PA-824-moxifloxacin-pyrazinamideレジメンによる14日間のEBAは有効性が高い。

by otowelt | 2012-07-27 12:21 | 抗酸菌感染症

終末期患者において人工呼吸器を取り外せるか

e0156318_10544093.jpg 私の同僚が主治医であった患者さんで、終末期癌患者さんでご本人の強い意思で延命を望まない65歳の男性がおられた。ある日、自宅で心肺停止状態で倒れているところを近所の人に発見された。心肺蘇生については本人は拒否されていたが、それを証明できる書面がなく、また家族が不在であったことから心肺蘇生が行われた。そしてかかりつけではない救急病院に搬送され、人工呼吸器を装着された。当然ながら回復の見込みはほぼ無かった。そのため人工呼吸器を外すことを、家族、主治医は希望していた。おそらく患者本人もそれを希望していただろう。しかしながら法に抵触するおそれがあるという病院全体の判断のもと、その終末期癌患者さんは人工呼吸器につながれたまま2ヶ月後に亡くなった。非常につらい2ヶ月であったと伝え聞いた。

 先日のニュースで以下のようなものがあった。

 日本救急医学会が策定した「救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)」に基づき、回復の見込みがなく死期が迫った救急患者の延命治療を中止したり差し控えたりしたケースが、2012年春までの2年間に学会に17件報告されたことが、学会への取材で2012年7月14日判明した。実はこの中には、脳死状態での人工呼吸器の取り外しが1件含まれている。こういったガイドラインは救急現場だけでなく、国内ではほかに厚生労働省からの「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」が存在する。―――ただし、ガイドラインは法律ではない。そこが私たち医療者にとってはネックとなっていた。

 私個人としては、終末期の癌患者さんなどで”延命不開始”をおこなうこと(胃瘻をつくらない、人工呼吸器をつけない等)はあるが、一度ついてしまった人工呼吸器を延命中止のために取り外したことは一度もない。ガイドライン策定の流れと私個人の考えもあって、「一度つけた呼吸器は亡くなるまで外せません」とは最近は説明しなくなったが、法に抵触する可能性がまだ残っている以上、人工呼吸器を外そうとは思わない。

 2012年6月6日、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の第2案が提出された。第2案では延命措置の差し控えに加えて、すでに行われている延命措置の中止も実施可能とされている(ただし、延命措置の差し控えや中止が行えるのは、患者がその意思を事前に書面で表明し、2人以上の医師の判断で終末期と判定された場合に限るとされている)。

 法制化が進めば、解決する問題も増える一方で新たな問題も生じるのは必須である。これから数年で終末期医療が急速に変化する可能性があるため、患者の死にかかわるすべての医療従事者はこれらの動向を見守る必要があるだろう。

by otowelt | 2012-07-27 05:42 | 呼吸器その他

化学療法はEGFR遺伝子変異発現を減弱させる

e0156318_1830181.jpgEGFRは抗癌剤で陰性化する可能性がある。

Hua Bai, et al.
Influence of Chemotherapy on EGFR Mutation Status Among Patients With Non–Small-Cell Lung Cancer
JCO July 23, 2012 JCO.2011.39.3744


背景および目的:
 非小細胞肺癌(NSCLC)において、EGFR遺伝子変異はEGFR-TKIの効果予測因子である。しかしながら、NSCLCに対する化学療法がEGFR遺伝子ステータスにおよぼす影響についてはよくわかっていない。BR.21試験やISEL試験のような化学療法後のEGFR-TKI使用を観察した臨床試験においては、EGFR遺伝子変異の有無を問わずに効果が証明されている(N Engl J Med 353:123-132, 2005、Lancet 366:1527-1537,2005)。裏を返せば、EGFR遺伝子変異がない患者においても奏効がみられているという仮説が成り立つ。
 われわれは、化学療法が血清および腫瘍組織におけるEGFR遺伝子変異ステータスに影響を与えるかどうか検証した。

患者および方法:
 全患者は中国北京大学癌病院Peking University Cancer Hospitalで2006年4月1日から2009年12月31日までに治療された患者を登録している。
 サンプルは、3つのコホートから採取されたものを使用。1つ目は264人のファーストライン化学療法(cisplatin and carboplatin plus gemcitabine,vinorelbine and taxanes)を受けた進行NSCLC患者群で、化学療法前後の血液サンプルを使用。2つ目は63人のstage IIB-IIIBのネオアジュバンド化学療法(gemcitabine plus cisplatin, vinorelbine plus cisplatin)前後の腫瘍組織を用いた群。3つ目は79人の進行NSCLC患者で緩和的手術を施行された群。

結果:
 1つ目のコホートにおいて、EGFR遺伝子へには34.5%の化学療法前血清サンプルで同定された(91 of 264)が、化学療法後の血清サンプルにおいては23.1%しか同定されなかった(61 of 264)。このEGFR変異の減少率は統計学的に有意であった(P<.001)。化学療法によってEGFRが陰転化した患者は、その逆であった患者よりも部分奏効(PR)率が高かった(P=.037)。
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EGFR遺伝子変異率の減少は、2つ目のコホートであったネオアジュバント化学療法後においても観察された(34.9% [22 of 63] v19.0% [12 of 63]; P=.013)。3つ目のコホートにおいて、38%の腫瘍(30 of 79)に腫瘍内EGFR変異heterogeneityがみられ、62.0% (49 of 79)がhomogeneousであった。

結論:
 化学療法はEGFR遺伝子変異の頻度をNSCLC患者において減少させる。

by otowelt | 2012-07-26 18:31 | 肺癌・その他腫瘍

13価肺炎球菌結合型ワクチン「プレベナー13®」の乳幼児に対する適応を承認申請

ファイザーより、プレベナー13の申請についてプレスリリース。2回目の申請だろうか。

http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_07_25.html

 ファイザー株式会社は、7月24日、13価肺炎球菌結合型ワクチン「プレベナー13®」(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)の乳幼児に対する承認申請を行いました。プレベナー13は、現在日本で接種されている7価肺炎球菌結合型ワクチン「プレベナー®」より広範な血清型による侵襲性肺炎球菌感染症を予防することが期待されるワクチンです。
 プレベナー13は、プレベナーに新たに6種類の抗原(血清型1、3、5、6A、7F、19A)を加えたワクチンで、この6種類の抗原の中には、世界的に増加傾向が認められ、薬剤耐性菌の比率が高い血清型19Aも含まれています。日本においても侵襲性肺炎球菌感染症に占める血清型19Aの割合は近年増加して脅威となっているため、血清型19Aに対する有効な予防手段としてもプレベナー13の役割が期待されます。
 肺炎球菌は乳幼児期の細菌感染症の代表的な起炎菌であり、細菌性髄膜炎や菌血症などの重篤な疾患を引き起こします。なかでも細菌性髄膜炎は、罹患すると後遺症を残したり、死亡にいたることもある疾患で、ワクチンによる予防が重要です。日本においては、2010年2月にプレベナーが発売され、2010年12月より小児用肺炎球菌ワクチンを含むワクチン接種緊急促進事業が開始されたことから、現在では全国のほとんどの市区町村において、5歳未満の乳幼児に対する公費助成でのプレベナーの接種が可能となっています。
 日本よりも10年早くプレベナーを導入し定期接種を開始した米国においては、プレベナーに含まれる7種の血清型による侵襲性感染症は100%近く減少しました。日本においても、プレベナーの公費接種が進んだ結果、肺炎球菌による細菌性髄膜炎の発症数に減少傾向が見られています。国内の10道県で実施されている疫学調査からは、公費助成後の2011年には開始前の2008~2010年に比べ、肺炎球菌による細菌性髄膜炎(全血清型)は25%減少したことが示されています。
 プレベナー13は、2009年12月に欧州で、2010年2月には米国において、それぞれ乳幼児への適応が承認されました。現在では、世界の100カ国以上で承認され、米国、英国、ドイツ、フランスを含む62カ国で定期接種ワクチンとして導入されています。プレベナー13を小児期の定期接種ワクチンとして導入したこれらの国では、導入前と比較し、プレベナー13で新たに追加された19Aを含む6種類の血清型による侵襲性肺炎球菌感染症が減少したことが既に示されています。
 今回、日本で承認申請を行うにあたり、日本人乳幼児を対象とした、2つの国内臨床試験を実施しました。最初の試験は、165名の健康な乳幼児を対象にして計画し、プレベナー13を単独接種したときの安全性と免疫原性の検討を2007年9月より実施しました。2つ目の試験は、計534名の健康な乳幼児を対象にして計画し、DPTとの同時接種時におけるプレベナー13とプレベナーの安全性と免疫原性の比較、およびDPTにより誘導される免疫原性について、プレベナー13とDPTの同時接種群とDPT単独接種群の検討を2010年9月より実施しました。
 ファイザーのスぺシャリティ・ケア事業部門 アジアパシフィック地域プレジデント 日本スペシャリティ・ケア事業部門長マーク・スウィンデルは次のように述べています「プレベナーの導入により、世界において肺炎球菌による細菌性髄膜炎は大幅に減少しました。日本でも減少傾向が既に認められています。しかし、プレベナーに含まれていない血清型による感染症に罹るリスクがいまだ残されています。私どもはプレベナー13を一日も早く日本に導入することにより、このようなリスクを無くし、肺炎球菌による重篤な疾患から子ども達を守ることに貢献したいと考えております」。

by otowelt | 2012-07-26 14:08 | 感染症全般

肺腺癌の罹患遺伝子の発見:BPTF、BTNL2

プレスリリースより。

Shiraishi K, et al.
A genome-wide association study identifies two new susceptibility loci for lung adenocarcinoma in the Japanese population.
Nat Genet. 2012 Jul 15. doi: 10.1038/ng.2353


独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人理化学研究所等研究グループは共同で、肺腺がん患者6千人とがんに罹患していない人1 万3 千人を遺伝子多型(遺伝子の個人差)の比較解析(GWAS: genome-wide association study/全ゲノム関連解析)を行い、肺腺がんのかかりやすさに関わる2 個の新規遺伝子領域を発見しました。

1.日本人の肺腺がん患者6,029 人とがんに罹患していないコントロール集団13,535 人を対象に、ヒトゲノム全域にわたる約70 万個の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)を比較解析しました。その結果、」2 ヵ所の遺伝子領域(BPTF, BTNL2)が肺腺がんへのかかりやすさと関わることが明らかになりました。

2.欧米や理研グループにより、すでに2 ヵ所の遺伝子領域(TERT, TP63)が発見されていましたが、今回の日本人症例に焦点を当てた大規模な検索により、合計少なくとも4 ヵ所の遺伝子領域が、肺腺がんのかか
りやすさに関係することが明らかになりました。

3.肺腺がんのかかりやすさには、喫煙等の環境要因だけでなく、遺伝要因(遺伝子の個人差)が関係することが、さらに確認されました。今後、環境要因・遺伝要因の組み合わせにより、肺腺がんにかかりやすい人を予測し、重点的に検診を行い、早期発見・治療を行うことで、肺がん死を減少させることができると考えられます。

by otowelt | 2012-07-24 23:08 | 肺癌・その他腫瘍

protracted bacterial bronchitisに対してアモキシシリン/クラブラン酸は有効

e0156318_10424921.jpg 小児科医や呼吸器内科医にとっては近年TOPICの1つでもある、protracted bacterial bronchitisの話題。
 クラバモックスを使用したランダム化比較試験である。

Julie Marchant, et al.
Randomised controlled trial of amoxycillin clavulanate in children with chronic wet cough
Thorax 2012;67:689-693.


背景:
 ガイドラインの推奨にもかかわらず、小児における慢性湿性咳嗽に対する抗菌薬の有効性についてはランダム化比較試験がない。多くの慢性湿性咳嗽の小児が、遷延性細菌性気管支炎(protracted bacterial bronchitis:PBB)を持つかもしれないとされており、多くの国のガイドラインにおいてこの病状が認識されている。筆者は、プラセボと1:1でのランダム化比較試験をおこない、2週間のアモキシシリン/クラブラン酸が小児の慢性湿性咳嗽の治療に効果があるかどうかを検証した。

方法:
 ブリスベンにあるRoyal Children’s Hospitalにおいて実施された。
 出生より6月から18歳までの慢性 (>3週間)の湿性咳嗽がある50人の小児(平均年齢1.9歳 IQR0.9-5.1)において、2週間の間1日2回の経口アモキシシリン/クラブラン酸(22.5 mg/kg/dose)あるいはプラセボを内服するランダム化比較試験を実施した。プライマリアウトカムは、”咳嗽の寛解”とし、これは治療14日以内に実施した咳嗽スコア(VCD:verbal category descriptive score)において75%を超える減少があったものあるいは3日を超える咳嗽の停止と定義した。
 0:no cough,
 1:cough for one or two short periods only,
 2:cough for more then two short periods,
 3:frequent coughing but does not interfere with school and other activities,
 4:frequent coughing which interferes with school and other activities,
 5:cannot perform most activities due to severe coughing.
また、選択された小児において、気管支鏡を施行しBALを実施した。

結果:
 咳嗽の寛解率は、アモキシシリン/クラブラン酸群において有意に高く(48% vs 16%、p=0.016)、 2群の比率差は0.32 (95% CI 0.08 to 0.56)であった。治療後、アモキシシリン/クラブラン酸群におけるVCDスコア中央値は0.5 (IQR 0.0-2.0)で、プラセボ群2.25 (IQR 1.15-2.9)よりも有意に低かった(p=0.02)。治療前BALデータは、多くの小児においてPBBと合致する所見であり、、これは群間差がみられなかった。
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結論:
 小児の慢性湿性咳嗽において、2週間のアモキシシリン/クラブラン酸は咳嗽の寛解をもたらす。これらの小児は、BALデータではPBBを示唆するものである。

by otowelt | 2012-07-24 10:48 | 感染症全般