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ラクナ梗塞の二次予防に対して、アスピリンにクロピドグレルを併用すると出血と死亡リスクが上昇

The SPS3 Investigators
Effects of Clopidogrel Added to Aspirin in Patients with Recent Lacunar Stroke
N Engl J Med 2012; 367:817-825


背景:
 ラクナ梗塞は、主に脳小血管病変に由来する頻度の高い脳卒中の一つである。ラクナ梗塞の二次予防のための、抗血小板療法の有効性については明らかになっていない。

方法:
 頭部MRIで、症候性ラクナ梗塞を最近(180日以内)発症したことが確認された30歳以上の患者3020人を対象にして、二重盲検多施設共同試験を施行した。北米、南米、スペインにおける82施設で実施した(2003年から2011年まで)。
 患者は、クロピドグレル75mg/day投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けられた。両群にアスピリン325mg/dayも投与した。プライマリアウトカムは、脳梗塞と頭蓋内出血を含んだすべての脳卒中の再発とした。

結果:
 北米からの参加者は全体のうち1960人(65%)で、南米は694人(23%)、スペインは366人(12%)であった。全体の平均年齢は63歳で、63%が男性であった。75%の患者に高血圧の既往があり、37%に糖尿病の既往があった。20%が喫煙者であった。3.4年の平均追跡期間ののち、脳卒中の再発リスクは、アスピリンとクロピドグレルの併用群で125件(年間発生率2.5%)、アスピリン単独群で138件(年間発生率 2.7%)と有意な差はみられなかった(HR0.92,95%CI 0.72~1.16)。脳梗塞の再発リスク(HR0.82,95% CI 0.63~1.09)および、後遺症を残す脳卒中または致死的脳卒中(HR1.06,95% CI 0.69~1.64)にも有意な差はなかった。 重篤な出血リスクは、2剤併用群で105件(年間発生率 2.1%)、アスピリン単独群で56件(年間発生率 1.1%)と大きく差が出た(ほぼ2倍)(HR1.97,95% CI 1.41~2.71,P<0.001)。全死因死亡は、2剤併用群の患者で増加した(アスピリン単独群77人 vs 2剤併用群113人)(HR1.52,95% CI 1.14~2.04,P=0.004)。ただ、この差は致死的な出血では説明されない増加であった。結論:
 直近にラクナ梗塞を発症した患者で、アスピリンにクロピドグレルを併用した場合、脳卒中の再発リスクを減少させることができないだけでなく、出血と死亡のリスクが有意に増加した。

by otowelt | 2012-08-30 15:58 | 内科一般

元准看護師に石綿労災認定

じん肺の申請に携わる呼吸器内科医や産業医は、このニュースを知っておく必要があるだろう。(このパウダーとは、タルカムパウダーのことだろうか)

●石綿:元准看護師の労災認定 「手袋の粉吸引」山口労基署
 山口県防府市の元准看護師が中皮腫になったのは、病院で手術用のゴム手袋にまぶしていた粉末「タルク」に混入していたアスベスト(石綿)が原因だとして、山口労働基準監督署が先月、労災認定していたことが分かった。医療現場での作業を原因とする看護師・准看護師の石綿労災認定は初めて。外科や産婦人科などの現場では、かつてゴム手袋の再利用時にタルクが広く使われており、被害が拡大する可能性がある。
 一昨年2月、中皮腫と診断されたが、石綿との接点が分からなかった。「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の会長が調査した結果、1981年から約5年勤務した産婦人科医院で、医師や助産師らの手術用手袋を洗って乾燥させた後、袋の中に入れてタルクをまぶしており、その粉が漂っていたことが分かった。作業は1週間に1、2回あり、その際に石綿を吸い込んだとみられる。(毎日新聞 2012年08月27日)

●元准看護師「病院作業で中皮腫」を労災認定
 山口県に住む元准看護師が中皮腫を発症したのは、医療用のゴム手袋を滅菌する作業でアスベスト(石綿)を吸入したのが原因だとして、山口労働基準監督署が労災認定していたことが27日、分かった。認定は7月24日付。
 支援団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」によると、看護師や准看護師が医療現場の作業を原因としてアスベスト被害で労災認定されたのは全国で初めてという。同会は「医療用手袋の再利用はかつて医療現場で広く行われていた。被害が広がる可能性がある」として注意を呼びかけている。
 元准看護師は1981~86年、山口県内の産婦人科医院に勤めていた際、月に数回、医療用のゴム手袋を再利用するための滅菌作業を担当。手袋を洗った後に袋に入れ、「タルク」と呼ばれる打ち粉をまぶす作業をしており、その際、打ち粉に含まれるアスベストを吸い込んだとみられる。
 タルクは白色の石で、細かく砕き粉にしたものは医療現場のほか、工業製品の製造やベビーパウダーなどにも使用されていたが、石そのものにアスベストが混入していることが発覚。2006年以降はアスベスト含有量0.1%超のタルクは製造や使用が禁止された。
 元看護師は09年12月、転職のために受けた健康診断で中皮腫と判明。11年8月に労災を申請した。27日に大阪市内で記者会見した河村さんは「私の認定をきっかけに多くの人がアスベストや中皮腫に関心をもって早く被害に気づき、新たな労災認定につながればうれしい」と話した。(2012年8月27日 日本経済新聞)

●石綿被害の労災認定で 元准看護師が記者会見
 産婦人科で使っていた粉末「タルク」に混入したアスベスト(石綿)が原因で中皮腫になったとして元准看護師が労災認定された問題で、27日大阪市内で記者会見した。医療現場での日常的な作業で石綿に触れていたことを知らず、病気の原因が分からずに悩んできた心情を吐露し、「私と同じ状況にいる人が救済されるきっかけになれば」と語った。
元准看護師は1981年から約5年、同県内の産婦人科医院に勤務した。当時、手術用ゴム手袋を再利用する際、手袋がくっつかないよう、袋に入れてタルクをまぶす作業をし、袋を開く時にタルクを吸い込んだという。
 この日の会見では、ゴム手袋にタルクをまぶす作業を再現。ビニール袋に7組みの手袋を入れ、タルクに見立てたベビーパウダーを手づかみで放り込んで細かく振る。袋を開けると、中から白い粉が、ぶわっと顔に向けて舞い上がった。
 「当時は何も知らずにタルクを使い、マスクもせずに素手で作業していた。顔は真っ白になった」。月2、3回、5畳半程度の部屋で作業し、室内には粉が充満したという。
 中皮腫と診断されたのは2010年2月。医師からは「抗がん剤投与などの治療をしなければ、1年の生存率は50%」と告げられた。中皮腫の原因となる石綿を扱った記憶はなかった。「奈落の底に落ちるような病気を告げられたのに、どこで吸ったかも分からない」と悔しさがこみ上げた。
 同11月、石綿被害者の救済支援をする「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」と出会い、原因究明を始めた。居住地の近くに石綿を扱っていた工場はない。「粉を扱うような作業はなかったか」と問われ、ようやくゴム手袋の作業を思い出した。
 元准看護師は現在、胸や背中の痛みがあり、抗がん剤治療を続ける。労災認定を受け、「原因が分かり、目の前がすっきりした。私と同じ状況にいる人がタルクの使用に気付き、労災認定につながれば。アスベスト問題は日常のどこにでもある」と訴える。支援団体のメンバーは「国はもっと早くに対策を取り、危険性を知らせるべきだった」と指摘した。(2012年8月28日 読売新聞)

by otowelt | 2012-08-28 13:04 | その他

組織白金製剤濃度と非小細胞肺癌の効果には相関性がある

肺癌を診療している医師にとっては、結構面白い試験だと思う。

Eric S. Kim, et al.
Tissue Platinum Concentration and Tumor Response in Non–Small-Cell Lung Cancer
JCO August 13, 2012 JCO.2011.40.8120


目的:
 白金製剤の耐性は、進行非小細胞肺癌(NSCLC)の治療における主たる足かせとなっている。細胞内薬剤濃度を減少させることは、白金製剤耐性の細胞ラインにおける特徴ときわめて一致するものであるが、臨床的なデータは少ない。
 われわれは、NSCLCにおける組織の白金製剤濃度の治療効果と生存に対する影響を調べた。

患者および方法:
 われわれは、白金製剤濃度を無炎原子吸光分析flameless atomic absorption spectrophotometryによって、ネオアジュバント化学療法を白金製剤を用いておこなわれた患者の外科的切除によって得られた44の新鮮凍結NSCLC標本で解析した(University of Texas Lung Cancer Specialized Program of Research Excellence Tissue Bank)。
 組織白金製剤濃度は、術前と術後のCTスキャンにおける腫瘍サイズのパーセント減少と相関させて計算をおこなった。組織白金製剤濃度と生存の相関性は単変量および多変量Cox比例ハザード回帰モデル解析、Kaplan-Meier解析によって調べた。

結果:
 組織白金製剤濃度は、有意に腫瘍サイズのパーセント減少と相関していた(P< .001)。
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 また、PRであった患者は有意にSDの患者よりも白金製剤の組織濃度が高かった(P<.001)。
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 同様の相関性は、シスプラチン、カルボプラチン、すべての組織サブグループにおいて確認された。さらには、化学療法のサイクル数や最終化学療法からの時間経過といった変数は白金製剤濃度において有意な影響を与えなかった。
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 化学療法サイクル後によって補正した後の多変量Coxモデル解析において、白金製剤濃度が高い患者は、より再発までの期間(P=.034)、PFS(P=.018), OS(P=.005)が長かった。
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結論:
 この臨床試験によって、組織の白金製剤濃度とNSCLCの反応性の間に相関性がみられた。すなわち、白金製剤の集積が減ることが白金製剤の耐性メカニズムに重要なのかもしれない。

by otowelt | 2012-08-28 00:57 | 肺癌・その他腫瘍

Cryptococcus gattii感染症の臨床的特徴

C.gattiiは主に温暖な樹木から感染すると考えられている。以前、アメリカからの報告を紹介した。
Cryptococcus gattiiのアウトブレイク株における臨床的特徴

Sharon C-A. Chen, et al.
Clinical Manifestations of Cryptococcus gattii Infection: Determinants of Neurological Sequelae and Death
Clin Infect Dis. (2012) 55 (6): 789-798.


背景:
 Cryptococcus gattii感染症の長期的な罹患率やアウトカムについてはわかっていない。われわれは、オーストラリア人患者における12ヶ月の臨床的データ、微生物学的データ、アウトカムデータを予後規定因子を同定するために収集した。

方法:
 培養で同定されたC. gattiiの症例を2000年から2007年までレトロスペクティブに評価した。臨床的データ、微生物学的データ、放射線学的データ、アウトカムデータが診断時、6週後、6ヵ月後、12ヶ月後に記録された。死亡率および死亡転帰、あるいは神経学的後遺症に関連する臨床的および検査数値も同定した。

結果:
 年間のC. gattii感染は、100万人人口あたり0.61 であった。86人中62人(72%)の患者は免疫抑制状態ではなかった。24人の免疫抑制宿主のうち6人に特発性CD4リンパ球減少があり、1人はHIV感染症/AIDSであった。同感染症における臨床的および微生物学的特性は、免疫抑制の有無に関わらず同等であった。肺から同定されたもの、肺および中枢神経系から同定されたもの、中枢神経系のみから同定されたものは、それぞれ12%、51%、34%であった。中枢神経系の合併症としては、頭蓋内圧亢進(42%)、水頭症(30%)、神経障害(27%; 6%は治療中に発症)、免疫再構築様症候群(11%)であった。
 血清クリプトコッカス抗原の相乗平均(CRAG)価は、中枢神経系に病変が及んだ患者において563.9であり、肺から感染が同定された患者の149.3よりも高かった。免疫抑制宿主であった患者は、死亡リスクが高かった。初期の髄液CRAGタイター256以上は、死亡あるいは神経学的後遺症を予測した。

結論:
 神経系のC. gattii感染は、髄液中クリプトコッカス抗原タイターの上昇が顕著であり、512以上の場合には注意すべきである。後期の神経学的合併症を同定するためには、長期間のフォローアップが必要である。免疫抑制患者では生存の可能性が低くなるため、免疫システムの評価が肝要である。

by otowelt | 2012-08-27 00:56 | 感染症全般

再発性尿路感染のある若年女性において無症候性細菌尿は治療すべきでない

無症候性細菌尿そのものが、症候性尿路感染症の発症に対して保護的な役割を持っている可能性が示唆されている。

Tommaso Cai, et al.
The Role of Asymptomatic Bacteriuria in Young Women With Recurrent Urinary Tract Infections: To Treat or Not to Treat?
Clin Infect Dis. (2012) 55 (6): 771-777


背景:
 再発性尿路感染症がある若年女性において、無症候性細菌尿の治療の役割はほとんどわかっていない。われわれは再発性尿路感染にかかった若年女性において、無症候性細菌尿の治療がその再発率に与える影響を評価した。

方法:
 合計673人の連続した無症状の若年女性で細菌尿をきたしたものを登録した(2005年1月から2009年12月)。女性は18歳から40歳で、性生活が定期的にあり、12ヶ月の間に少なくとも一人の性パートナーをもち、無症候性細菌尿発症前の12ヶ月以内にすくなくとも1回の症候性尿路感染症の既往があるものとした。
 患者は2グループにわけられた。すなわち、無治療群(groupA, n = 312)と治療群(group B, n = 361)である。微生物学的および臨床的評価が3ヶ月目、6ヶ月目、12ヶ月目におこなわれた。QOLについても調査された。スタディ期間における無再発率を主なアウトカム指標とした。

結果: 
 症候性イベントから無症候性イベントまでの中央期間はgroup Aで6.3ヶ月、Bで5.8ヶ月だった。group Bで使用された抗菌薬はfosfomycin trometamol(31.4%), nitrofurantoin (26.8%), co-trimoxazole(19.8%), ciprofloxacin (13.1%), levofloxacin (8.9%)であった。抗菌薬による有害事象報告はなかった。
 ベースラインにおいて、最もよく分離された2つの菌種は、Escherichia coli(group A, 38.4%; group B,39.3%)とEnterococcus faecalis(group A, 32.7%; group B, 33.2%)であった。
 最初のフォローアップの来院で、2群間に再発率に差はみられなかった(RR, 1.05; 95%CI, 1.01–1.10)ものの、6ヵ月後のフォローアップ来院ではgroup Aで23人(7.6%)、Bで98人(29.7%)と有意な差がみられた(RR, 1.31; 95% CI, 1.21–1.42; P < .0001)。12ヶ月目のフォローアップでは、再発したのはgroup Aでは41人(13.1%)、group Bで169人(46.8%)であった(RR, 3.17; 95% CI, 2.55–3.90; P < .0001)。group Aの1人、Bの2人で腎盂腎炎を発症した。
 group AおよびBにおいて、E.coliはスタディ期間中減少傾向にあったが、E. faecalisは徐々に増加していた。しかしながら、これはgroup Aにおいてのみ統計学的に有意なものであった(t = 2678.64; df =229; SE = 0.002; P < .001)。
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 Kaplan-Meier曲線では、group BはAと比較した有意に高い再発率と関連していた(RR, 2.14;SE = 0.187; P = .003)。
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 多変量解析では、抗菌薬の使用(P < .001; HR,3.09; 95% CI, .19–4.20)および経産回数(P = .03; HR, 1.29; 95% CI,.61–1.99)が症候性尿路感染症発症の独立したリスク因子であった。

結論:
 再発性の尿路感染のある若年女性の無症候性細菌尿であっても、治療すべきでない。

by otowelt | 2012-08-26 17:31 | 感染症全般

抗癌剤による脱毛:医療用ウィッグ

●誰でも脱毛は恥ずかしい
 抗癌剤によって起こる脱毛は、男女いずれにも起こりうるが、経験的には女性の方が精神的ダメージが大きい。というのも、高齢男性はさほど毛髪が少なくても違和感がないと思われるが、いかなる年齢層においても女性にとって脱毛というのは計り知れない羞恥心を惹起させてしまう。
 医療従事者、特に抗癌剤治療をおこなっている医師はしばしば感覚が麻痺してしまうかもしれないが、”脱毛”という副作用はきわめてストレスが大きなものだということを認識しておかねばならない。医療用ウィッグについて情報が少ない医療従事者がかなり多いため、癌患者さんを診療している医療従事者はそういった情報にもアンテナを張っておく必要がある。

●医療用ウィッグ
 医療用ウィッグが欧米では当たり前のように使用されているが、実は日本では大手メーカーが開発販売しているにも関わらず、普及率はそこまで高いものではない。この大きな原因の1つが医療従事者の知識・情報やカウンセリングなどの体制が不足していることが挙げられる。
Yeager CE, Olsen EA. Treatment of chemotherapy-induced alopecia. Dermatol Ther. 2011 Jul-Aug;24(4):432-42.
 ウィッグが普及しにくいもう1つの理由として、その値段が挙げられる。医療用ウィッグの値段はピンキリであるが、オーダーメイドにすることで値段が高くなってしまう。毛色などの問題で、部分用医療用かつらだと地毛の色に合わせるために、ある程度オーダーメイドにしなければならなくなる。
 上記の理由から、癌の病棟で脱毛を隠すためにバンダナを使用している女性はまだまだ多い。しかし、バンダナだと冠婚葬祭に出席なんて到底できないだろう。そのため、私たちは医療用ウィッグの情報を患者さんに提供して差し上げる必要があるが、医療従事者に医療用ウィッグの教育がなされることはないため、患者さんが自力で情報収集をしているのが現状である。
 
 以下に定評のあるメーカーについて列挙してみたい。

・スヴェンソン(http://www.katsura-ladys.com/index.html
 20年以上の抗癌剤による脱毛のためのウィッグ開発を手がけており、ウィッグの品数はトップクラスだろうと思われる。通常にオーダーした場合、10万円を超えることは覚悟しておいた方がよいかもしれない。個室対応など精神的な配慮もしっかりしている。フルオーダーだとある程度高額になるため、既製品とフルオーダーの間のセミオーダー(カットしたり微調整を加える)が人気筋のようだ。医療従事者にとってスヴェンソンのよいところは、医療従事者向けに講義をおこなっているところである。脱毛のマニュアルも提供していただけるので、非常にありがたい。
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・フォンテーヌ(http://www.fontaine.jp/rafra/
 人工毛でなければ、値段は10万円台は確実と思ったほうがよいが、フォンテーヌは品質だけでなくアクセスがよいという利点がある。百貨店や全国各地に拠点があるため、患者さんからもその点では安心できるという意見は多い。毛髪の生え際が自然に表現できるという点も評価は高い。
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・ナチュラルスタイル(http://www.natural.ne.jp/medicalq_jyosei.html
 販売しているウィッグが同じ値段、というわかりやすい価格設定である。人毛である割には安いため人気のメーカーの1つである。中国産のウィッグだが、これは安価提供を実現するための戦略であるため、品質で困ることはない。既成のもので13万8000円、オーダーメイドで17万8000円である。
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・キュアウィッグ(http://www.cure-wig.jp/
 基本的には既製品のみの販売となっている。ショートとミディアムの2種類のヘアから選択する。”3万円で買える医療用かつら”という宣伝に偽りはなく、価格が極めて安い(2万6000円)。当院でも人気のウィッグメーカーの1つである。
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・an(アン)(http://www.beauty-an.jp/index.php
 サイズ調整がしやすい医療用ウィッグを販売している。大手メーカーの中では価格は低めで、人毛100%のウィッグであってもおおむね10万円以内で満足いくものを作成することが可能と評判である。
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・フィットミー(http://www.fitme.jp/
 インナーキャップの上からウィッグをつけるタイプであるため、ウィッグがズレにくいという利点がある。そのためあまりズレを気にせずに生活することができる。また、肌にやさしいため、あまりチクチクしないというのも重要なポイント。価格帯は5万円を下回るものが多い割に、ヘアスタイルの選択肢が多いためか評判は良い。
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・ライツフォル(http://www.katsuranorental.jp/
 特徴としては患者さんの予算別にグレードがわかれているところであろう。プラチナ、ゴールド、シルバーの3グレードがある。シルバーで低価格のものは3万円を下回る。また、珍しく月額制でレンタルが可能なメーカーでもある。宅配無料試着サービスをおこなっている点も、評価が高い。
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 地方のメーカーや、もう少し規模の小さなメーカーは他にもたくさんあると思うが、どのメーカーのどのウィッグにするかは、人それぞれである。予算と見た目、品質を天秤にかける必要もあるかもしれない。
 
 抗癌剤治療中の女性にとって”医療用ウィッグは旅の友”という言葉が最近の論文にあった。
Zannini L, et al. 'My wig has been my journey's companion': perceived effects of an aesthetic care programme for Italian women suffering from chemotherapy-induced alopecia. Eur J Cancer Care (Engl). 2012 Sep;21(5):650-60

by otowelt | 2012-08-25 18:55 | 肺癌・その他腫瘍

タトゥーによるM.chelonaeの皮膚感染アウトブレイク

e0156318_05147.jpgM.chelonaeが患者から検出された場合、基本的には環境のコンタミネーションとして扱うことが多いと思うが、NEJMから皮膚感染のアウトブレイクの報告があった。流し読みしただけだが、非常に興味深い。


Byron S. Kennedy, et. al.
Outbreak of Mycobacterium chelonae Infection Associated with Tattoo Ink
NEJM August 22, 2012 10.1056/NEJMoa1205114


概要:
 2012年1月に、皮膚科医からの最初の報告に基づいて、われわれはタトゥー(刺青)に関連したMycobacterium chelonaeの皮膚軟部組織感染をニューヨークにおいて調べた。このスタディの目標は、このアウトブレイクのひろがり、原因、形式を調べ、予防について検証することである。
 患者にインタビューをおこないデータを収集、病理学的に皮膚生検で検索した。組織については抗酸菌染色をおこない、微生物学的培養ののちに感受性検査もおこなった。われわれはDNAシークエンスを施行し、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)、刺青インク培養、調合液材料培養、インクパッケージ培養、水周りや蛇口の解析、インクメーカーの調査をおこなった。
 2011年10月と12月に、遷延する隆起性紅斑性皮疹がタトゥーの入った部位に19人の患者(13人が男性、6人が女性)に3週間以内に発症した。11月が最も多く皮膚病変が発生した。平均年齢は全体で35歳(18-48歳)であった。17人の患者からの皮膚生検標本で異常所見がみられ、そのうち14つの標本からM. chelonaeを分離、DNAシークエンスでもこれを確認した。19人の患者のうち18人は抗菌薬で治療をおこない、改善した。
 タトゥー施術時の予混合インクは、M. chelonaeの皮膚感染のリスクとなりうる可能性がある。メーカーからの情報提示が望まれる。

by otowelt | 2012-08-25 00:06 | 感染症全般

肺内のスリガラス影に対して局所切除をした後も、5年を越えて肺癌は断端再発しうる

e0156318_21432285.jpg呼吸器内科医、呼吸器外科医にとって、「術後5年再発がなければ大丈夫」という一つの目安がある。しかし、まれに術後5年を越えて肺癌を発症することがある。再発であることもあれば、新規発症であることもある。JTOから、GGO切除後5年を越えて再発した症例の報告があった。

Nakao Masayuki, et al.
Long-Term Outcomes of 50 Cases of Limited-Resection Trial for Pulmonary Ground-Glass Opacity Nodules
Journal of Thoracic Oncology: Published Ahead-of-Print, 8 August 2012


背景:
 1998年から2002年までの間、肺内の2cm以下のスリガラス影において局所切除をおこなった症例をプロスペクティブに検討した。これは本試験の2回目の報告であり、長期アウトカムについての報告である。
Yoshida J, Nagai K, Yokose T, et al. Limited resection trial for pulmonary ground-glass opacity nodules: fifty-case experience. J Thorac Cardiovasc Surg 2005;129:991–996.

方法:
 試験の登録基準は以下の通りである:2cm以下の肺末梢結節影で、臨床的にT1N0M0の癌が疑われるスリガラス陰影で、胸膜陥入像や血管収束像がHRCTでみられないもの。
 局所切除検体は術中に凍結標本にして迅速診断された。結節影が野口分類タイプAあるいはB(腫瘍間質に活動性線維芽細胞増殖を伴わないもの)とわかった場合、切開部は縫合され患者はフォローアップされた。サーベイランス期間は中央値で10年であった。

結果:
 50人の患者が登録され、50ヶ月にわたってフォローアップが可能であったのは前回の試験で報告していた26人であった。50人のうち、40人が腺癌と診断され、2人が野口分類タイプAであり、23人がタイプB、14人がタイプCの腺癌であった(当初タイプCが14人いたが、10人が結局lobectomy+リンパ節郭清されている)。その他、5人がAAH、4人が線維性、1人が肉芽腫であった。初期の5年以内に再発した患者はいなかったものの、局所切除をおこなった4人は手術からさらに5年以上(計10年)の期間を経て断端再発(おそらく)がみられた。
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 再発した4人は、それぞれ5.5年、7.9年、8.0年、10.5年を経て再発した。タイプBが3人、タイプCが1人であった。
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結論:
 肺内のスリガラス影に対して26人の局所切除をおこなった腺癌(野口分類タイプA~C)患者のうち、術後5年をこえて発癌がみられた。それはおそらく断端再発であると考えられる。われわれは、5年のフォローアップというのは十分な観察期間ではなく、また局所切除はまだ試験的なこころみで行われるべきである、それは小さなスリガラス影においても同様である。

by otowelt | 2012-08-21 05:03 | 肺癌・その他腫瘍

ED-SCLCのファーストラインにおいてトポテカン+シスプラチンは標準治療に優越性見い出せず

Thomas H. Fink, et al.
Topotecan/Cisplatin Compared with Cisplatin/Etoposide as First-Line Treatment for Patients with Extensive Disease Small-Cell Lung Cancer
Final Results of a Randomized Phase III Trial
J Thorac Oncol. 2012;7: 1432–1439


背景:
 この第3相試験において、トポテカン+シスプラチン(TP)、トポテカン+エトポシド(TE)、シスプラチン+エトポシド(PE)の化学療法未治療の進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)患者に対する効果と安全性を検証する。
 ドイツおよびオーストリアにおける84施設で実施した(2002年8月から2006年2月まで)。

方法:
 795人の未治療患者をランダムに以下の3群:TP (topotecan 1mg/m2 IV, d1–5; cisplatin 75mg/m2 IV, d5; n = 358)、PE (cisplatin 75 mg/m2 IV, d1;etoposide 100 mg/m2 IV, d1–3; n = 345) 、TE (topotecan 1mg/m2 IV,d1–5; etoposide 80 mg/m2 IV, d3–5; n = 92)に割り付けた。プライマリエンドポイントは、スイッチ可能かどうかの非劣性を含むPEと比較したTPの優越性とした。

結果:
 92人が有害事象を訴え、継続困難との判断からIndependent Data Safety Monitoring Boardにより、TE群は早期終了となった。
 生存期間中央値は、TP群、PE群それぞれ同等であった(44.9 versus 40.9 weeks; p = 0.40)。1年生存率はTP群39.7%、PE群36.1%であった(p = 0.29)。増悪までの期間の中央値はTP群のほうが長かった(27.4 versus 24.3 weeks,p = 0.01)。全奏効率はTP群で有意に高かった(55.5% versus 45.5%, p = 0.01)。
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 血液毒性は、わずかにTP群において高かった:G 3/4好中球減少(35.7/35.8%), G 3/4 thrombocytopenia (18.7/4.8%),G 3/4 anemia (11.6/6.7%), 発熱性好中球減少症(2.0/2.7%), 敗血症(1.7/1.2%), 毒性関連死 (5.2/2.7%)。

結論:
 TP群はPE群に生存の点では非劣性であり、増悪までの期間、全奏効率の点では優越性であった。TPの毒性の懸念から、ED-SCLC患者におけるファーストライン標準治療にはならないだろう。

by otowelt | 2012-08-20 15:37 | 肺癌・その他腫瘍

メポリズマブは好酸球性気管支喘息の発作リスクを軽減させる

Ian D Pavord, et al.
Mepolizumab for severe eosinophilic asthma (DREAM): a multicentre, double-blind, placebo-controlled trial
The Lancet, Volume 380, Issue 9842, Pages 651 - 659, 18 August 2012


背景:
 重症の喘息患者が、好酸球性の気道炎症による再発性の喘息増悪をきたすことがある。過去の試験では、メポリズマブ(mepolizumab:IL-5モノクローナル抗体)による好酸球性の気道炎症の抑制が喘息の増悪リスクを軽減させるのではないかと考えられている。
 2008年のNEJMにおいて、好酸球を標的とするようデザインされたメポリズマブによる治療が、FIP1L1-PDGFRA 陰性の好酸球増多症候群患者において、ステロイドの減量につながる可能性が示唆されている(N Engl J Med 2008;358:1215-28)。また翌年のNEJMでは、難治性の好酸球性喘息患者において、メポリズマブ療法によって発作が減少し、AQLQ スコアが改善することが示された(N Engl J Med 2009;360:973-84)。
 われわれは、メポリズマブの効果と安全性、および同薬に反応性のあった患者の臨床的特性を検証した。

方法:
 われわれは多施設共同プラセボ対照試験を13ヶ国81施設で、2009年11月9日から2011年12月5日まで実施した。適格患者は12-74歳で、再発性の重度の喘息発作の既往がある患者で、好酸球性炎症の徴候があるものとした。彼らはランダムに1:1:1:1の割合で、メポリズマブ75㎎群、メポリズマブ250㎎群、メポリズマブ750㎎群、プラセボ(100 mL 0·9% NaCl)に割り付けられた。
 患者は4週間ごとに13の点滴を受けた。プライマリアウトカムは、臨床的に有意な喘息増悪の頻度とし、これは経口ステロイドの必要性、入院必要性、救急部受診必要性があるものとした。患者、主治医、データ解析者は治療割り付けについて盲検の状態とした。ITT解析とし、試験はClinicalTrials.govに登録された( number NCT01000506)。

結果:
 621人の患者がランダム化された。159人がプラセボ、154人がメポリズマブ75㎎群、152人がメポリズマブ250㎎群、156人がメポリズマブ750㎎群。臨床的に有意な776の増悪エピソードが同定された。臨床的に有意な喘息発作はプラセボ群で年間2.40であり、メポリズマブ75㎎群で1.24(48% reduction, 95% CI 31—61%; p<0·0001), 250㎎群で1.46(39% reduction, 19—54%; p=0·0005)、750㎎群で1.15(52% reduction, 36—64%; p<0·0001)であった。
 3人の患者がこの試験の間死亡したが、治療との関連性は明らかでなかった。

結果:
 メポリズマブは、重度の好酸球性喘息の患者のける喘息発作のリスクを軽減させる治療としては効果的であり、忍容性がある。

by otowelt | 2012-08-20 05:15 | 気管支喘息・COPD