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切除後肺扁平上皮癌におけるFGFR1遺伝子増幅は予後不良因子で、喫煙歴と相関する

先日JTOのin pressの論文を紹介しました。

肺扁平上皮癌のうち16%がFGFR1増幅を有するが、患者特性は同定できず

 このJTOの論文は合計37人のFGFR1遺伝子増幅がみられた報告ですが、生存に関しては特に不良因子とは報告されていません。ご紹介するJCOのin pressの論文は、ダイソミー123人、低増幅(2~9コピー数)105人、高増幅(9コピー数以上)34人を解析したもので、この論文ではFGFR1増幅は生存の独立不良因子として結論づけられています。

Hye Ryun Kim, et al.
Fibroblast Growth Factor Receptor 1 Gene Amplification Is Associated With Poor Survival and Cigarette Smoking Dosage in Patients With Resected Squamous Cell Lung Cancer
JCO November 26, 2012 JCO.2012.43.8622


目的:
 外科的に切除された肺扁平上皮癌患者におけるfibroblast growth factor receptor 1 (FGFR1)の増幅の頻度と予後に対する役割、喫煙とFGFR1増幅の関連性を調べること。

患者および方法:
 262人の切除された肺扁平上皮癌患者において、腫瘍組織からFGFR1の遺伝子コピー数が調べられた。同様に喫煙歴と生存データを抽出した。遺伝子コピー数はFISH法で評価され、増幅腫瘍は9以上のコピー数と明示された。

結果:
 262人の患者で、FGFR1遺伝子増幅が見られたのは13.0%であった。ダイソミー123人、低増幅(2~9コピー数)105人、高増幅(9コピー数以上)34人だった。
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    ▲A:高増幅、B:低増幅、C:ダイソミー

 FGFR1遺伝子増幅は、増幅のない患者と比較して有意に無病生存(DFS)が短く(26.9ヶ月 v 94.6ヶ月、P< .001)、全生存率(OS)も短かった(51.2ヶ月 v 115.0ヶ月、P= .002)。
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 性別、喫煙歴、病理学的病期、アジュバント化学療法によって補正した後の多変量モデルでは、FGFR1遺伝子増幅は再発リスクと死亡リスクを有意に上昇させた(DFS: 補正ハザード比2.24;95%CI 1.45 to 3.45、 P<.001; OS: 補正ハザード比1.83;95%CI, 1.15 to 2.89; P =.01)。FGFR1遺伝子増幅は、既往喫煙者や非喫煙者に比べて現喫煙者で有意に頻度が高かった(2.5% v 0% v 28.9%; Ptrend<.001)。喫煙量が増えるほど、FGFR1遺伝子増幅の頻度は増えた(Ptrend=.002)。
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結論:
 FGFR1遺伝子増幅は、切除された肺扁平上皮癌において独立予後不良因子であり、喫煙量に依存した喫煙歴との関連性がみられた。

by otowelt | 2012-11-30 01:02 | 肺癌・その他腫瘍

スクリーニングで同定された肺癌患者のうち非喫煙者のアウトカムは既往喫煙者より良好

藤沢市民病院からの論文です。

Hideyuki Nagakura, et al.
The Impact of a Negative History of Smoking on Survival in Patients with Non-Small Cell Lung Cancer Detected with Clinic-based Screening Programs
Intern Med 51: 3115-3118, 2012


目的:
 このスタディの目的は、スクリーニングプログラムにおいて同定された非喫煙者における非小細胞肺癌(NSCLC)の疫学的特徴を調べることである。

方法:
 NSCLCにおける臨床病理学的因子と生存アウトカムを同定するため、藤沢市でおこなわれたスクリーニングプログラムで異常を指摘され、2000年4月から2010年12月までに藤沢市民病院でNSCLCと診断された患者285人の診療録を検証した。

結果:
 スクリーニングプログラムで336人のNSCLCが同定され、このうち285人が藤沢市民病院で診断を受け、本試験の解析対象となった。66.7%が既往喫煙者であった。285人のうち、95人(33.3%)が非喫煙者であった。既往喫煙者の比較では、非喫煙者は有意に女性と腺癌が多かった(女性:86.3% vs. 12.6%: p<0.001、腺癌:94.7% vs. 55.8%: p<0.001,)。
 非喫煙者における全生存率(OS)は、既往喫煙者より有意に高かった(p=0.004)。非喫煙者では生存期間中央値は同定できず(60%以上が生存)、既往喫煙者では58.7ヶ月であった(95% CI: 33.5 to 83.9 ヶ月)。
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 喫煙歴に加えて、単変量解析で有意であった因子は、性別、病期(I vs その他)、組織型(腺癌 vs その他)、初回治療(切除 vs その他)であった。多変量解析では、喫煙歴、病期、初回治療が独立予後規定因子であった。

結論:
 スクリーニングプログラムで同定されたNSCLCにみられる非喫煙者と既往喫煙者の間の臨床病理学的因子と生存アウトカムの違いは、喫煙を始めないように啓蒙する意味合いで重要な意味を持つであろう。

by otowelt | 2012-11-29 13:35 | 肺癌・その他腫瘍

T-SPOT実用化

他の先進国に大きく遅れをとって、今月から日本でもT-SPOTが実用化されています。
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http://www.tspot-tb.jp/home.html?gclid=CPTdw6_k8bMCFeRMpgodbyIAyg

 基本的に感度・特異度はQFTと大きく変わらないのですが(やや感度が高いか)、T-SPOTの利点はサイトに書かれているようにいくつかあります。
 判定保留が少なくなる可能性があるのですが、報告によってまちまちですので、あまり気にするほどの差はないかもしれません。ただ、T-SPOTはHIVのような免疫不全患者さんではQFTよりはやや感度が高いようです。アッセイの最初の段階で、末梢血単核球を精製分離して血球数を標準化させることで、免疫反応を抑制する因子の影響を質的にも量的にも排除できているためとされています。
 また、QFTのNIL、TB抗原、Mitogenの複数スピッツではなく、スピッツが1本で済みます。1本でQFTと同等の感度・特異度が実現できるのは良いことです。
 QFTは16時間以内に検査をしなければならないのですが、T-POSTはT-Cell Xtend®試薬を加えると32時間まで検査可能です。

by otowelt | 2012-11-29 00:02 | 抗酸菌感染症

Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover

 Hoover徴候は、呼吸器科医にとってCOPDの身体所見で最も有名なものの1つです。
Hoover CF. The diagnostic significance of inspiratory movements of the rib costal margins. Am J Med Sci 1920; 159:633-646.

 吸気時に肋間が陥凹し、呼気時にそれが解除されるという徴候です。COPDだけでなく、閉塞性肺疾患全般に起こりうる徴候です。
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Johnston CR 3rd, et al. The Hoover's Sign of Pulmonary Disease: Molecular Basis and Clinical Relevance. Clin Mol Allergy. 2008 Sep 5;6:8. より引用

 実は神経内科領域にも別のHoover徴候があります。器質性片麻痺の検出法の一つで、足を上げようとするときに逆側の踵に力が入るか入らないかで本当の片麻痺かどうか判別する方法です。ものすごく単純は発想なのですが、ひらめきがすごいなぁと思います。
Hoover CF. A new sign for the detection of malingering and functional paresis of the lower extremities. Journal of the American Medical Association 1908;5:746–7.

 この2つのHoover徴候、いずれもCharles Franklin Hooverによって報告されたものです。なぜ同じ名前がついてしまったのか定かではありません。

 Charles Franklin Hooverは、オハイオ州マイアミズバーグに1865年に生まれました。彼はハーバード大学で医学を学ぶ前は、キリスト教メソジスト牧師だったと言われています。1892年ハーバード大学を卒業し、1894年までの2年間、ドイツで数々の高名な医師に師事をしました。1894年に再びアメリカに戻った彼は、オハイオ州のクリーブランド市立病院などで内科医・医学講師として働きました。その後、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の教授となりました。1908年と1920年に呼吸器内科、神経内科領域の別々の分野で身体所見を発表しました。それらの身体所見は、今ではいずれもHoover徴候として名を残しています。

 呼吸器内科領域におけるHoover徴候は、García Pachónらによれば、82人のCOPD患者で検証したところ感度76%という結果でした。
García Pachón E, et al. Paradoxical costal shift throughout inspiration (Hoover's sign) in patients admitted because of dyspnea. Rev Clin Esp. 2005 Mar;205(3):113-5.

 172人のCOPD患者さんの身体所見を調べた報告では、気道閉塞性疾患(一秒率70%未満)の診断に対してHoover徴候は呼吸器科医で感度58%・特異度86%・陽性尤度比4.16・陰性尤度比0.49という報告があります。でした。レジデントとの観察者間の一致ではκ値0.74と比較的高い所見でした。ちなみにレジデントの場合、感度55%・特異度76%・陽性尤度比5.37・陰性尤度比0.50でした。
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García Pachón E. Paradoxical movement of the lateral rib margin (Hoover sign) for detecting obstructive airway disease. Chest. 2002 Aug;122(2):651-5.より引用

 また157人のCOPD患者で検証したところ、重度のCOPDであればあるほどHoover徴候がみられやすいという結果でした。ただ、多変量解析では痩せそのものも独立因子として挙がってますので、るいそうによる偽陽性は十分ありうる身体所見であることを知っておく必要があります。
García Pachón E, et al. Frequency of Hoover's sign in stable patients with chronic obstructive pulmonary disease. Int J Clin Pract. 2006 May;60(5):514-7.

 驚くことに今ご紹介した論文3つが同じ著者のものでした。とてもHoover徴候に造詣が深い方なのだとお見受け致します。


<音楽と医学>
モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
ブラームスは外科医ビルロートの親友だった

<偉人たち>
Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
Clara細胞の発見者:Max Clara
サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram

by otowelt | 2012-11-28 06:13 | コラム:医学と偉人

高齢者非小細胞肺癌のカルボプラチン+パクリタキセルへの放射線治療併用は放射線肺炎のリスク

肺癌診療に携わる医師であれば必読の記事が日経メディカルオンラインに掲載されていました。

化学放射線同時併用療法時の放射線肺炎の予測因子は高齢、照射肺体積高値、カルボプラチン+パクリタキセル併用【放射線腫瘍学会2012】(日経メディカルオンラインより)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201211/527926.html

 非小細胞肺癌患者に対する化学放射線同時併用療法において、放射線肺炎を予測する因子を検討した結果、高齢で、照射肺体積(V20値)が高値、カルボプラチン+パクリタキセルで治療した患者は発症リスクが高いことが報告された。メタ解析「STRIPE」の結果によるもので、兵庫県立がんセンター放射線治療科の辻野佳世子氏が、2012年11月23日から25日まで東京都内で開催された第25回日本放射線腫瘍学会学術大会で発表した。
 これまでに、化学放射線同時併用療法時の放射線肺炎を予測する因子を検討したレビューがあり、ある一定以上の線量が照射されると放射線肺炎の発症率が増加したことを報告している。しかし、施設ごとに患者データにばらつきがあるため、メタ解析を行う必要性が指摘されていた。
 そこで辻野氏らは、化学放射線同時併用療法を行った非小細胞肺癌患者のデータを基に、放射線肺炎の予測因子を検討するメタ解析を行った。過去の文献を基に各施設にコンタクトをとり、最終的に12施設からデータを収集。アジアから253例、北米から286例、欧州から297例の合計836例のデータを集積した。
 患者背景は、年齢中央値が63歳、男性は72%、喫煙歴がある患者は90%、扁平上皮癌が40%、腺癌が30%を占めた。術前化学療法は56%、術後化学療法は23%の患者で行われていた。化学放射線同時併用療法のレジメンは、シスプラチン+エトポシドが38%、カルボプラチン+パクリタキセルが26%、その他が36%だった。照射線量中央値は60Gy、肺への平均線量中央値は17Gy、V20(20Gy以上照射された全肺に対する割合)中央値は30%だった。
 全生存期間中央値は20カ月、放射線肺炎の発症率は29.8%(249例)、うち致死的な放射線肺炎は1.9%(16例)だった。
 多変量解析を行った結果、化学放射線同時併用療法における放射線肺炎を予測する最も強い因子として、抗癌剤レジメンの種類が抽出された。シスプラチン+エトポシド群を対照にした際のカルボプラチン+パクリタキセル群の放射線肺炎発症のオッズ比は3.33(95%信頼区間:1.89-5.87)だった。また、V20値も有意な因子として抽出された(オッズ比1.03、95%信頼区間:1.01-1.05)。高齢者で発症率が高い傾向があったほか、平均照射線量は有意な因子ではなかった。
 さらに、致死的な放射線肺炎を予測する因子を多変量解析した結果、1回照射線量が2Gy超、V20値が高値、腫瘍位置が下葉にあること――が抽出された。
 V20の値別に放射線肺炎発症率を見ると、V20値の上昇に伴い、致死的なものを含め、発症率が増加した。V20が20%未満群では、放射線肺炎発症率が18.4%、うち致死的な放射線肺炎は0%。20~29.99%群ではそれぞれ30.3%、1.0%、30~39.99%群では32.6%、2.9%、40%以上群では35.9%、3.5%だった。
 再帰分割解析を行ったところ、抗癌剤のレジメンの種類、年齢、平均照射線量の3項目で、放射線肺炎リスクを3群に分けることが可能だった。カルボプラチン+パクリタキセルで治療した65歳超の患者は高リスク群に分類。一方、65歳以下でカルボプラチン+パクリタキセルで治療した平均照射線量10Gy未満の患者、シスプラチン+エトポシドまたはその他のレジメンで治療かつV20値が25%未満の患者は低リスク群だった。 
 これらの結果から辻野氏は、「有症状の放射線肺炎を予測する因子はV20値、抗癌剤の種類、年齢で、致死的な放射線肺炎の予測因子は1回照射線量、V20値、腫瘍の位置だった。高齢患者にタキサンを用いた化学放射線同時併用療法を行う場合は、特に放射線肺炎に対して注意が必要であると考えられる」とまとめた。
 また、カルボプラチン+パクリタキセル群において放射線肺炎発症率が高かったことについて辻野氏は、「カルボプラチン+パクリタキセル群で高齢者が多かったわけではなく、高齢者の約4割はそのほかのレジメンを選択していた。これまでに、化学放射線同時併用療法または術後化学療法でタキサンを使用した場合、放射線肺炎の発症率が増加したという報告がいくつかあることを踏まえると、放射線肺炎発症率の増加は、タキサンによる放射線増感作用の影響が考えられる」と考察した。

by otowelt | 2012-11-28 00:14 | 肺癌・その他腫瘍

重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの持続投与は間欠的投与と効果は同等

 PLOS ONEからピペラシリン/タゾバクタムの持続投与についての報告。過去の2つのメタアナリシスでは、βラクタム系抗菌薬の持続投与は臨床効果については同等と考えられています。重症患者でこういったスタディが組まれる理由は、重症の状態における分布容積の増大でしょうか?
・Roberts JA, et al. A systematic review on clinical benefits of continuous administration of beta-lactam antibiotics. Crit Care Med. 2009 Jun;37(6):2071-8.
・Tamma PD, et al. Does prolonged β-lactam infusions improve clinical outcomes compared to intermittent infusions? A meta-analysis and systematic review of randomized, controlled trials. BMC Infect Dis. 2011 Jun 22;11:181.


以下、今回の報告です。

João Gonçalves-Pereira, et al.
Continuous Infusion of Piperacillin/Tazobactam in Septic Critically Ill Patients—A Multicenter Propensity Matched Analysis
PLoS ONE 7(11): e48748. doi:10.1371/journal.pone.0048748


背景:
 微生物学的な感染を有する重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの持続注射の臨床的効果についてはよくわかっていない。

方法:
 われわれは、レトロスペクティブにポルトガルICUにおいてコホート試験を計画した。569人の感染を有する成人重症患者で、ピペラシリン/タゾバクタムを投与した患者を2006年1月1日から2010年12月31日までの間抽出。ただしin vitroで感受性がある微生物による敗血症に陥った患者のみとした。傾向スコアを用い、交絡因子を補正。173人ずつの2群のマッチが可能となった。
 間欠的投与は、30分で点滴を滴下。これを1日複数回投与とした。
 持続投与は、4.5gをボーラス投与したのち、1日量を24時間で投与。

結果:
 全体の70.8%が呼吸器感染症であり、Gram陰性菌が81.8%であった。Pseudomonas aeruginosaが最も多く、起因菌の34.4%を占めた。
 ほとんどの患者がピペラシリン1日16gとタゾバクタム1日2gの投与を受けた。28日死亡率は両群とも同等で28.3%(p = 1.0)。ICUおよび院内死亡率は持続投与群と間欠的投与群で同等(23.7% vs. 20.2%, p = 0.512 and 41.6% vs. 40.5%, p = 0.913, respectively)。
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 SAPS II>42のサブグループ患者では、28日死亡率は持続投与群の方が低い傾向にあったが統計学的には有意ではなかった(31.4% vs. 35.2%、p = 0.66)。
 ICUを退室した患者のICU在室期間は両群で同等であった(12.0日 vs 11.5日)。

limitations:
・レトロスペクティブ試験であること
・大規模スタディであるが、ピペラシリン濃度測定ができなかったこと
・微生物のMICを記載していない
・上記2点のため効果と毒性の評価があいまいになってしまったこと
・抗菌薬投与日数のデータ、および再発についてのデータを解析していないこと

結論:
 感染を有する重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの臨床的効果は、投与経路とは独立しており、持続投与でも間欠投与でも問題ない。

by otowelt | 2012-11-27 05:42 | 感染症全般

敗血症・敗血症性ショックに対する赤血球輸血は死亡率低下に寄与

e0156318_21125789.jpgランダム化比較試験ではありませんが、興味深い論文です。

Park, Dae Won, et al.
Red blood cell transfusions are associated with lower mortality in patients with severe sepsis and septic shock: A propensity-matched analysis
Critical Care Medicine: December 2012 - Volume 40 - Issue 12 - p 3140–3145


目的:
 重症敗血症や敗血症性ショックの患者に対する輸血の効果を評価する。

デザイン・方法:
 2005年4月から2009年2月までのプロスペクティブ観察試験(Propensity-matched analysis)。韓国における22のICUで実施。
 1054人の市中発症の重症敗血症や敗血症性ショックの患者を登録。

結果:
 1054人の患者のうち、407人(38.6%)が輸血を受けた。輸血をうけた患者は男性が多く(59.6% vs. 52.6%; p = .028)、癌、外傷、腎疾患、肝疾患、血液疾患を有する率が高かった。また、皮膚軟部組織感染症が輸血群で高率であった。非輸血群では尿路感染症が多かった。
 輸血前の平均ヘモグロビン値は7.7 ± 1.2 g/dLであった。輸血された患者は、28日死亡率と院内死亡率が高かった(32.7% vs. 17.3%; p < .001, 41.3% vs. 20.3%; p < .001)。また、輸血は在院日数の長期化に関連(21日、IQR 10–35 vs. 13日、IQR 8–24 ; p < .001)。しかしながら、輸血を受けた群は収縮期血圧が低く(86.2 ± 27.8vs. 90.7 ± 26.3; p = .008)、APACHEIIスコアが高く(21.2 ± 7.4 vs. 17.4 ± 7.1; p <.001)、入院時SOFAスコアも高かった(8.6 ± 4.0vs. 6.9 ± 5.4; p < .001)。臓器機能も輸血群の方が概して悪かった。
 152人の傾向スコアによるマッチ患者との比較では、赤血球輸血は7日目の死亡率低下(9.2% vs. 27.0%; p < .001)、28日死亡率の低下(24.3% vs. 38.8%; p = .007)、院内死亡率の低下(31.6% vs. 42.8%;p = .044)。在院日数はやはり輸血群で有意に延長した(23日、IQR 11–39 vs.
13日、IQR 5–25; p < .001)。
 複数の因子を補正してCox比例ハザード解析したところ、赤血球輸血は7日目の死亡率低下(HR 0.42, 95%CI0.19–0.50, p = .026)、28日死亡率の低下(HR 0.43, 95% CI 0.29–0.62, p < .001)、院内死亡率の低下(HR 0.51, 95%CI 0.39–0.69, p < .001)に有意に相関していた。
 累積ハザードは、全体でも(HR 0.51, 95% CI 0.39–0.69,p < .001)、傾向マッチ患者でも(HR 0.35, 95% CI 0.23–0.53, p < .001)低下。
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結論:
 この観察試験では、市中発症の敗血症や敗血症性ショックに対する赤血球輸血は死亡率低下に関連していた。

by otowelt | 2012-11-27 00:11 | 集中治療

肺扁平上皮癌のうち16%がFGFR1増幅を有するが、患者特性は同定できず

呼吸器科医にとっては興味深い、FGFR1の話題です。

Heist, Rebecca S., et al.
FGFR1 Amplification in Squamous Cell Carcinoma of The Lung
Journal of Thoracic Oncology: December 2012 - Volume 7 - Issue 12 - p 1775–1780


背景:
 FGFR1:fibroblast growth factor receptor 1 (FGFR1)の増幅については肺扁平上皮癌で報告されており、治療の分子標的として有望とされている。しかしながら、この臨床相関性についてはほとんどわかっていない。

方法:
 このスタディは、226人の扁平上皮癌を2005年から2011年までの間Massachusetts General Hospitalで観察したものである。臨床的、人口動態的特徴を調べ、手術・放射線治療・化学療法を含めた治療内容、生存についてもデータを抽出した。FISH法によってFGFR1が検索された。

結果:
 226人の肺扁平上皮癌の患者のうち37人(16%)がコピー数がコントロール群より2.2倍以上高いカットオフ値でFGFR1増幅がみられた。FGFR1増幅ステータスは年齢、性別、病期、扁平上皮癌の中における組織サブタイプ、喫煙歴とは関係がみられなかった。
 FGFR1増幅ステータスは、全生存と有意な相関はみられなかった。ただし、サンプルサイズの大きさから考えるとこれは結論つけがたい結果であった。

結論:
 肺扁平上皮癌の患者のうち16%にFGFR1増幅がみられた。臨床的、人口動態的特徴を有しない患者群である可能性があるため、扁平上皮癌患者においてこの増幅を同定する場合、全患者をスクリーニングする必要があるのではないかと考えられる。

by otowelt | 2012-11-26 13:27 | 肺癌・その他腫瘍

サルコイドーシスの診断におけるEBUS-TBNAの迅速細胞診は有用

サルコイドーシスの診断におけるEBUS-TBNAの迅速細胞診の話題です。

Marshall L Plit, et al.
Rapid cytological analysis of endobronchial ultrasound-guided aspirates in sarcoidosis
ERJ November 22, 2012 erj01283-2012


背景:
 サルコイドーシスを疑われた患者に対するEBUS-TBNAの迅速細胞診:Rapid on site evaluation (ROSE)は、その最終的な診断との比較をされたことがない。

目的:
 サルコイドーシスを疑われた患者に対するEBUS-TBNAのROSEの診断精度を検証する。

方法:
 2010年7月から2011年7月までの間、プロスペクティブに2施設におけるEBUS-TBNA時のROSEののちに、TBLBや気管支内生検(EBB)を施行した。EBUS-TBNA時のROSEの診断精度が最終的な細胞診と比較された。TBLBや気管支内生検についても最終診断と比較された。
 EBUS-TBNAはすべて22G針で施行された。ROSEは、Diff Quik Stainにより典型的肉芽腫(epithelioid histiocytesで構成されるもの)があればサルコイドーシスの疑いとした。

結果:
 60症例のうち49例がサルコイドーシスであった。ROSEの感度・特異度は87.8%・91%であり、PPVは97.7%であった。最終的なセルブロックによる確定診断スライドとの併用では、感度・特異度は91.8%・100%まで上昇(PPVは100%)。
 サルコイドーシスの診断は、TBLBで67%、気管支内生検で29%が確定された。細胞診断士間や病理医間での観察者間一致はきわめて良好であった(細胞診断士:κ値0.91, 95% CI 0.80-1.0、病理医:κ値0.91, 95% CI 0.79-1.0)。
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結論:
 サルコイドーシスの診断におけるEBUS-TBNAのROSEは有用である。

by otowelt | 2012-11-25 17:15 | サルコイドーシス

IPFの予後予測には、MMP-7、SP-A、KL-6の組み合わせが重要

IPFの予後推定ができることは医師にとっては重要かもしれません。患者さんにとっての重要性はケースバイケースです。

Jin Woo Song, et al.
Blood Biomarkers (MMP-7 and SP-A), Predictors of Outcome in Idiopathic Pulmonary Fibrosis
CHEST. 2012doi:10.1378/chest.11-2735


背景:
 特発性肺線維症(IPF)にはさまざまな経過があるため、診断時の正確な予後予測を推定することは重要である。この試験の目的は、IPFにおける血液検査バイオマーカーの予後予測能を検証するものである。

方法:
 レトロスペクティブにIPF患者118人の血清MMP-7、KL-6、SP-A、SP-Dがその臨床経過と比較された(生検によるIPF診断:68人)。

結果:
 フォローアップ中央期間は24ヶ月であった。多変量Cox解析では、MMP-7 (HR, 1.056; p=0.0063) 、SP-A (HR, 1.011; p=0.0001)は、年齢、努力肺活量(FVC)、蜂巣肺とともに有意な生存の予後予測因子であった。MMP-7 (≥ 12.1 ng/mL)、SP-A (≥ 80.3 ng/mL)の両方の高値を満たす症例は、1年生存率が59%であり、42%が呼吸機能の急速な減少(6ヶ月で>10%のFVC減少)と関連していた。一方、片方だけの上昇の場合は1年生存率が81%、急速な呼吸機能の減少は27%で、両方とも低値の場合は1年生存率が83.3%、急速な呼吸絹の減少は9%であった。
 多変量モデルでは、MMP-7とSP-Aを通常の標準的予測因子に加えることで、死亡予測がわずかに改善(c-index: 0.731, p=0.061)。ここにKL-6を加えると、有意な予測が可能となった(c-index: 0.730, p=0.037)。

結論:
 このレトロスペクティブ試験によれば、IPFの死亡予測能は臨床的パラメータと比較すると少なくとも3つのバイオマーカーが必要であった。多数の患者での試験が望まれる。

by otowelt | 2012-11-23 00:05 | びまん性肺疾患