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びまん性肺疾患におけるサイトメガロウイルス感染の治療開始時期の提唱

当院のスタディです。びまん性肺疾患におけるサイトメガロウイルス感染症について。

Arai T, et al.
Cytomegalovirus infection during immunosuppressive therapy for diffuse parenchymal lung disease.
Respirology. 2013;Jan18(1):117-124.


背景および目的:
 サイトメガロウイルス(CMV)感染は、特に免疫抑制治療を受けているびまん性肺疾患患者において致死的な病態である。このスタディの目的は、免疫抑制治療を受けているびまん性肺疾患患者におけるCMV感染症の臨床的特徴を記載しCMV感染をマネジメントする戦略を提唱するものである。

方法:
 免疫抑制治療を受けており末梢血白血球のCMV pp65抗原が陽性であったびまん性肺疾患患者69人に対するレトロスペクティブに縦断的観察試験をおこなった。

結果:
 臨床的にCMV感染症があると考えられたのが23人、非顕在化CMVアンチゲネミア がみられたのが46人であった。CMV pp65抗原のカットオフレベルはROCカーブ解析で決定し、末梢血白血球数50000に対して7.5細胞数と定義した。多変量解析において、早期CMV感染症は急性/亜急性のびまん性肺疾患の悪化や免疫抑制治療開始時の呼吸不全と関連していた。また急性/亜急性のびまん性肺疾患の悪化、CMV pp65抗原タイター>7.5細胞/50000白血球、CRP10mg/L以上は予後不良であることが多変量解析で示された。

結論:
 びまん性肺疾患患者におけるCMV pp65抗原タイター>7.5細胞/50000白血球はガンシクロビルによる治療を行うべきである。低いレベルのタイターの場合、注意深くモニターするかあるいは臨床所見が予後不良であると想定されるならばガンシクロビルによる治療をおこなうべきであろう。

by otowelt | 2012-12-28 00:18 | 感染症全般

COPD患者における6分間歩行距離30m超の減少は死亡リスクを上昇

Michael I. Polkey, et al.
Six Minute Walk Test in COPD: Minimal Clinically Important Difference for Death or Hospitalization
Am. J. Respir. Crit. Care Med. December 21, 2012 rccm.201209-1596OC


背景および目的:
 COPDに対する非気管支拡張治療を検証するためにスパイロメトリー以外のアウトカムが必要とされている。6分間歩行試験の臨床的に意義のある最小変化量(minimal clinical important difference, MCID) は非盲検下インターベンションを使用した小規模コホートで検証されてきた。

方法:
 ECLIPSEコホートのデータが使用された(N=2112)。死亡あるいは初回入院がインデックスイベントであり、われわれは6分間歩行距離の変化を12ヶ月にわたる期間で調査し、呼吸機能検査やSt Georges Respiratory Questionnaireとの関連性を調べた。

結果:
 6分間歩行距離の変化が得られた患者デ-タのうち、94人が死亡し323人が入院した。6分間歩行距離は生存者に比べて死亡者で29.7m(標準偏差82.9m)以上減少した(P <0.001)。距離変化が-30mを超える場合の死亡に対するハザード比は1.93 (95%信頼区間1.29~2.90; P = 0.001)であった。
 初回入院に対しては有意な差はみられなかった。呼吸機能検査やSGRQの変化に対してはわずかな関連性しか観察されなかった。

結論:
 6分間歩行距離に30mを超える減少がみられる場合、COPD患者の死亡リスクを上昇させた。しかし、急性増悪による入院には関連していなかった。

by otowelt | 2012-12-27 05:08 | 気管支喘息・COPD

新生児死亡肺にニューモシスティスが高頻度に存在、MUC5AC発現が増加

Sergio L. Vargas, et al.
Near-Universal Prevalence of Pneumocystis and Associated Increase in Mucus in the Lungs of Infants With Sudden Unexpected Death
Clin Infect Dis. (2013) 56 (2): 171-179.


背景:
 ニューモシスティスが新生児の剖検でみられることがあるが、その頻度や重要性についてはよくわかっていない。興味深いことに、この緩やかな感染症は若いげっ歯類において粘液分泌関連遺伝子の強い活性化を促すとされているが、新生児での検証はなされていない。
 過剰な粘液分泌は非特異的経路を通して複数の気道攻撃因子によって誘導されており、これにより気道疾患におけるニューモシスティスの共因子が説明できるかもしれない。われわれは、ニューモシスティスの頻度の特性および新生児肺の粘液の関連性を調べた。

方法:
 サンティアゴで1999年から2004年までに突然死した128の新生児(平均年齢101日)で、P. jirovecii mtLSU rRNA遺伝子のnested PCR(nPCR)、免疫蛍光顕微鏡検査法(IF)によってニューモシスティスを調べた。ニューモシスティス陰性の日齢28以上の新生児とニューモシスティス陽性の近接した日齢新生児において、MUC5AC発現・ニューモシスティス有無がウエスタンブロットとPCRによって調べられた。

結果:
 ニューモシスティスDNAはnPCRにより128新生児のうち105人(82.0%)で同定された。DNA陽性新生児のうちニューモシスティスはIFで99人(94.3%)で可視化できた。
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 感染は、生後3-4ヶ月において最もよく観察され、41人中40人で陽性であった(97.6%)。
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 MUC5ACは有意にニューモシスティス陽性検体で発現が増加していた(P = .013)。
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 113人(88.3%)の死亡が説明できない死であり、ニューモシスティスはその113人中95人(84.0%)で同定された。一方説明できる死亡15人中10人(66.7%)でニューモシスティスが同定された(P = .28)。

結論:
 剖検診断の内容にかかわらず、予期せぬ新生児の死亡肺から検出された局所のニューモシスティスの存在が粘液分泌の増加させていること確認された。

by otowelt | 2012-12-27 00:05 | 感染症全般

ARDSに対する人工肺サーファクタントは死亡率減少に寄与せず

人工肺サーファクタントのメタアナリシスです。

LI-NA ZHANG, et al.
Exogenous pulmonary surfactant for acute respiratory distress syndrome in adults: A systematic review and meta-analysis
Exp Ther Med. 2013 January; 5(1): 237–242.


背景:
 急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、肺コンプライアンスの減少としてしばしば特徴づけられる疾患であり、内因性サーファクタントシステムの機能不全が示唆されている。外因性(人工)サーファクタントがARDS患者の内因性システムの置換療法になりうるかどうか検証された。

方法:
 1950年から2011年までのMedline、1989年から2011年までのEmbase、1994年から2011年までのCochrane Databaseが解析された。2人のレビュアーが試験を抽出した。

結果:
 7試験2144人の患者がクオリティの高い手法の試験として解析に組み込まれた。肺サーファクタント治療は、死亡率減少に寄与しなかった(相対リスク1.00; 95%信頼区間0.89-1.12)。
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 サブグループ解析では、サーファクタントの種類によって死亡率の減少に寄与するといったことも認められなかった。
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 異質性はプライマリアウトカム解析では有意には認められなかった(I2=0%)。出版バイアスは認められなかった。酸素化、人工呼吸器非装着日数、人工呼吸管理期間、APACHEIIスコアはデータ不足のため解析不能であった。
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結論:
 外因性サーファクタントはARDSの成人患者において死亡率減少に寄与しない。酸素化に対する外因性サーファクタントの効果についてははっきりと結論づけられなかった。

by otowelt | 2012-12-26 00:49 | 集中治療

GOIRC02-2006試験/NVALT7試験:NSCLCの2nd-lineでペメトレキセドに対するカルボプラチン上乗せ効果認めず

実臨床ではセカンドラインでカルボプラチンを加えて投与した方がいいんじゃないかと思うときもあります。

Andrea Ardizzoni, et al.
Pemetrexed Versus Pemetrexed and Carboplatin As Second-Line Chemotherapy in Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer: Results of the GOIRC 02-2006 Randomized Phase II Study and Pooled Analysis With the NVALT7 Trial
JCO December 20, 2012 vol. 30 no. 36 4501-4507


目的:
 進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するペメトレキセドとペメトレキセド+カルボプラチンの効果を比較すること。

患者および方法:
 GOIRC 02-2006試験:進行NSCLC患者でファーストラインの白金製剤による抗癌剤治療中あるいは治療後に増悪がみられたものに対して、ランダムにペメトレキセド(arm A)あるいはペメトレキセド+カルボプラチン(arm B)に割り付けをおこなった。プライマリエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)とした。
 NVALT7試験:このスタディの結果のpooled analysisによってペメトレキセドにカルボプラチンの上乗せ効果があるかどうか全生存期間(OS)で検証した。

結果:
 2007年7月から2009年10月までの間、239人の患者(arm A:120人、arm B:119人)が登録された。PFS中央値はarm Aで3.6ヶ月、arm Bで3.5ヶ月であった(ハザード比1.05; 95% CI, 0.81 to 1.36; P = .706)。奏効率、OS、毒性については統計学的に有意な差はみられなかった。
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 479人の患者がpooled analysisに組み込まれた。ペメトレキセドにカルボプラチンの上乗せ効果はOSで確認されなかった(ハザード比HR, 0.90; 95% CI, 0.74 to 1.10; P = .316; P異質性= .495)。サブグループ解析では、扁平上皮癌にペメトレキセドにカルボプラチンを上乗せすることでPSの有意な改善がみられた(5.4ヶ月から9ヶ月へ:補正ハザード比 0.58; 95% CI, 0.37 to 0.91; P相互作用検定= .039)。
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結論:
 進行NSCLCにおけるセカンドライン治療として、ペメトレキセドにカルボプラチンを加えても生存アウトカムは改善しなかった。扁平上皮癌における上乗せ効果を検証するにはさらなる研究を要するであろう。

by otowelt | 2012-12-25 08:42 | 肺癌・その他腫瘍

胸部CTにおける蜂巣肺の定義

・はじめに
 胸部CT、特に高分解能CT(HRCT)でUIP(usual interstitial pneumonia)を示唆する線維化の終末像を蜂巣肺・蜂窩肺(honeycomb lung・honeycombing)といいます。蜂巣肺はUIPに特徴的とされており、感度90%・特異度86%との報告があります。しかし、サルコイドーシスや慢性過敏性肺炎など慢性間質性肺疾患でもhoneycomb lungは観察されます。
Flaherty KR, et al. Clinical significance of histological classification of idiopathic interstitial pneumonia. Eur Respir J. 2002 Feb;19(2):275-83.
 しかしながら、胸部CT写真を目の前にして呼吸器科医や放射線科医の間でも「これは蜂巣肺だ」「いやこれは蜂巣肺でない」と意見がわかれることが多々あります。病理学的な蜂巣肺と放射線学的蜂巣肺がしばしば混用されていることもありますが、呼吸器科医がよく使用する蜂巣肺という言葉は主に後者であるため、本項では後者を主体に記載させていただきます(病理学的に観察される蜂巣肺は胸部CT上ではスリガラス影をきたすこともよくあります)。

 放射線学的な蜂巣肺の定義とは、現在どのように認識されているのでしょうか。

・蜂巣肺の定義の歴史
 英語の文献をさかのぼると、1949年OswaldとParkinsonによってhoneycomb lungという言葉が造られました。これは肺切片の肉眼的所見を記述したものであり、最大1cmのサイズまでの大小様々な薄壁嚢胞がみられるものと記載されました。そのため、当時は現在のように肺の線維化の終末像だけでなく、リンパ脈管筋腫症や気管支拡張症などによる病変もhoneycomb lungに含まれました。
Oswald N, et al. Honeycomb lungs. Q J Med. 1949 Jan;18(69):1-20.
 放射線学的な用語としては、1968年に“胸部レントゲンで2~10mmの多発性の透過性亢進が観察されること”と記述されました。CT検査がなかった時代にすでに認識されていた用語であることに驚きます。
Johnson TH Jr. Radiology and honeycomb lung disease. Am J Roentgenol Radium Ther Nucl Med. 1968 Dec;104(4):810-21.
 1970年代には有名な放射線科医であるFelsonにより、その疾患多様性から慢性間質性の肺線維症を主体に組み込むべきで、気管支拡張症や気腫性疾患は除外すべきと述べられました。この頃から、honeycomb lungという言葉は間質性肺疾患の終末像としての線維化を表す言葉へ変遷を始めます。そして科学の発展によってHRCTが登場してから、肺の構造が肺の肉眼的所見に迫ることができるくらいにCTで詳しく観察できるようになりました。1984年にFleischner Societyは、honeycombingについて以下のように言及しました。すなわち“径5~10mmの密集した嚢胞状の気腔で、壁の厚さは2~3mmであり、これは肺の終末像を示唆するものである”と。
Tuddenham WJ. Glossary of terms for thoracic radiology: recommendations of the Nomenclature Committee of the Fleischner Society. AJR Am J Roentgenol. 1984 Sep;143(3):509-17.
 Fleischner Societyはさらに1996年、honeycombingについて以下のように再度発表しました。“径3~10mmの密集した嚢胞状の気腔(時に2.5cmの大きさの嚢胞になりうる)で、明瞭な厚い壁で囲まれる。これは、びまん性肺線維症の胸部CT所見の特徴である。”
Austin JH, et al. Glossary of terms for CT of the lungs: recommendations of the Nomenclature Committee of the Fleischner Society. Radiology. 1996 Aug;200(2):327-31.
 そして最も新しいFleischner Societyの定義では、“径3~10mmの密集した嚢胞状の気腔(時に2.5cmの大きさの嚢胞になりうる)で、通常胸膜直下に厚さ1~3㎜の明瞭な壁が観察されるもの”と記載されています。この定義では、以前言及されていなかった壁の厚さについて記載されています。また、この論文で重要な記載があります。それは、honeycombingと記載することで、イコール肺の線維化の終末像を示唆することになってしまうため、定義に引きずられて患者さんの治療方針やケアが変わってしまう可能性があるので、この言葉を用いる際には慎重を期するということです。
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▲典型的蜂巣肺
Hansell DM, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008 Mar;246(3):697-722. より引用
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▲▲典型的蜂巣肺(自験例)

 2011年のアメリカ胸部疾患学会・ヨーロッパ呼吸器学会・日本呼吸器学会・ラテンアメリカ胸部学会の合同ステートメントでもこの2008年のFleischner Societyの定義が採用されており、国際的にコンセンサスがあるhoneycombingの定義は2013年1月の現時点ではこの定義になります。
Raghu G, et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med. 2011 Mar 15;183(6):788-824.
 しかし、論文の著者によってhoneycombingの径や壁の厚さが様々なので注意が必要です。ただ共通のコンセンサスとしてhoneycombingは、個々が壁を互いに共有するという点が挙げられます。主に呼吸細気管支と肺胞道が周囲組織の線維化により牽引され拡張したものであり、単に嚢胞性気腔や嚢胞と呼ばれる薄い壁に境界された空間とは区別されるべきです。そのため、牽引性気管支拡張症はhoneycombingとは呼びません。
Webb WR, et al. Standardized terms for high-resolution computed tomography of the lung: a proposed glossary. J Thorac Imaging. 1993 Summer;8(3):167-75.
 また、牽引性でなくとも気管支拡張症自体が物理的に個々に近接するとhoneycomb lungのようにみえることもありますので注意が必要です。
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▲右下葉気管支拡張症
Arakawa H, et al. Honeycomb lung: history and current concepts. AJR Am J Roentgenol. 2011 Apr;196(4):773-82.より引用

 日本では、嚢胞の大きさがそろっていることや、胸膜直下に二層(複数列)以上並ぶことも重視する立場があります。ただしかしながら、HRCTの性能によって見えるhoneycombingの大きさはまちまちであり、またその切片の薄さによっては大小不同になることは容易に想像できます。また、線維化が進行すると大小不同のhoneycombingを呈することは呼吸器科医の多くが経験していることでしょう。またスライス厚によってもその評価には差が出ます。たとえば0.5㎜スライスと2.5㎜スライスを比較すると、画像上同定できるhoneycombingには幾分か差異が見受けられます。
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Nishimoto Y, et al. Detectability of various sizes of honeycombing cysts in an inflated and fixed lung specimen: the effect of CT section thickness. Korean J Radiol. 2005 Jan-Mar;6(1):17-21. より改変引用

・定義上、蜂巣肺とオーバーラップする症例
 いくら定義を決めても、放射線科医の間でもhoneycombingかどうか一致しないという結果が報告されています。これは、教科書的なhoneycomb lungが日常臨床でそれほど多くないこと、喫煙歴や肺の合併症を有しているとその所見が修飾されてしまうことが大きな要因であろうと考えられます。
Watadani T, et al. Interobserver Variability in the CT Assessment of Honeycombing in the Lungs. Radiology. 2012 Dec 6. [Epub ahead of print]
 たとえば気腫性病変を有している患者さんの下葉に網状影が増加してきた場合、間質性肺炎の初期であってもhoneycomnb lungのように見えることがあります。また、重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)に感染を併発するとコンソリデーションがhoneycombingのように観察されることはよく経験します。他にも、HIVに合併したニューモシスティス肺炎や、胸膜直下に病変が多いLangerhans細胞組織球症など、呼吸器科医を長くやっていると日常臨床でhoneycomb lungによく似たCT像によく遭遇します。
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▲10年来在宅酸素療法を続けていた重度のCOPDに肺炎球菌性肺炎を合併した症例(自験例)。combined pulmonary fibrosis and emphysema(CPFE)と認識できる像もあるが、今までの臨床経過から気腫性変化が主体と考えられた。
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▲HIVを合併したニューモシスティス肺炎の症例(自験例)。胸膜直下に複数列の壁のやや厚い嚢胞性病変が観察されるが、嚢胞のサイズが極めて不均一で大きい。

・まとめ
 現時点で世界的にコンセンサスのある蜂巣肺の定義は2008年のFleischner Societyによるもので、「径3~10mmの密集した嚢胞状の気腔(時に2.5cmの大きさの嚢胞になりうる)で、通常胸膜直下に厚さ1~3㎜の明瞭な壁が観察されるもの」です。
 honeycombingは、UIP パターンとpossible UIP パターンの鑑別のための重要な所見で、外科的肺生検の適応を決定する上でも重要です。どの程度の胸部CTの特徴をもってhoneycombingと定義するかは、特に臨床試験に登録するような患者さんの場合には臨床上きわめて重要であることには違いありません。ただ、実臨床において患者さんの画像を目の前にして「これは蜂巣肺か否か」という議論を行うことは実はあまり大きな意味を持たないように思います。蜂巣肺の存在が、ある疾患に極めて特異的であり患者アウトカムや治療方針に劇的な変遷をもたらすものであれば、その議論には多大な意味を孕みます。しかしながら、最も臨床試験が進んでいる特発性肺線維症ですらまだ劇的にアウトカムを変える治療薬が登場していない現在では、その定義に関する議論を細やかに詰めることにこだわる必要はないと私は考えます。もう少し治療分野が発展してから詳細に議論されるべき分野ではないかとも感じます。
 もっとも重要なのは、目の前の患者さんのHRCT所見が蜂巣肺か否かという議論ではなく、その患者さんの線維化が進んでいる原因を何だと考えており、どういった治療方針を主治医が想定しているかという点だろうと思います。

※無断転載・公開はご遠慮いただきますようお願いします
    文責:近畿中央胸部疾患センター  倉原 優 



by otowelt | 2012-12-21 12:07 | レクチャー

糖尿病が結核におよぼす影響

María Eugenia Jiménez-Corona, et al.
Association of diabetes and tuberculosis: impact on treatment and post-treatment outcomes
Thorax Online First, published on December 18, 2012 as 10.1136/thoraxjnl-2012-201756


目的:
 糖尿病患者における臨床的な続発性肺結核症例を同定すること。

方法:
 われわれは、プロスペクティブ試験を南メキシコにおける結核患者で施行した。1995年から2010年までの間、患者で喀痰中の抗酸菌あるいは結核菌が陽性になったものについて疫学的、臨床的、微生物学的評価をおこなった。治療アウトカム、再燃、再発、再感染を検証するため、一年ごとのフォローアップをおこなった。

結果:
 肺結核と診断された1262人の患者のうち糖尿病患者は29.63%であった(n=374)。糖尿病と肺結核を合併した患者はより臨床所見が重篤で(胸部レントゲンにおける空洞のサイズ:補正オッズ比1.80, 95% CI 1.35 to 2.41)、喀痰塗抹陰性化の遅延(補正オッズ比1.51, 95% CI 1.09 to 2.10)、治療失敗率の高さ(補正オッズ比2.93, 95% CI 1.18 to 7.23)、再燃(補正ハザード比1.76, 95% CI 1.11 to 2.79)、再発(補正ハザード比1.83, 95% CI 1.04 to 3.23)と関連していた。
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 糖尿病患者における2回目の結核エピソードの多くは同一のジェノタイプであったが、異なる株の再感染の例も19.23%に観察された。

結論:
 糖尿病が世界的に蔓延している中で、糖尿病を予防し結核のコントロールプログラムに対する戦略を考慮する必要がある。その逆もまたしかりである。両疾患の合併は世界的拡散の潜在的なリスクであり、結核コントロールや国連 ミレニアム開発目標に重要な意味を持つ。

by otowelt | 2012-12-21 00:14 | 抗酸菌感染症

クリスマスBMJ:車でスピードバンプ上を通過したときの疼痛は急性虫垂炎の診断に有用

クリスマスBMJらしいばかばかしいスタディですが、意外にも臨床応用できるかもしれませんね。あまり日本には大きなスピードバンプはないのですが、海外の道路には結構ありますね。
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Helen F Ashdown, et al.
Pain over speed bumps in diagnosis of acute appendicitis: diagnostic accuracy study
BMJ2012;345doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.e8012(Published 17 December 2012)


目的:
 急性虫垂炎の診断におけるスピードバンプ(車の速度を落とさせるための道路上の段差)の上を通行する際の疼痛の診断精度を検証する。
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デザイン:
 プロスペクティブのアンケートベースの診断精度を調べた試験

セッティング:
 イギリスにおける市中病院の外科ユニット

参加者:
 虫垂炎疑いということで外科チームにコンサルトされた17~76歳の101人の患者

主要アウトカム:
 急性虫垂炎を診断するためにスピードバンプの上を交通した場合の疼痛惹起における感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、陽性尤度比、陰性尤度比を従来の通常診断法と比較検証した。

結果:
 病院に来る際にスピードバンプの上を通行した64人の参加者を解析した。参加者のうち、34人が組織学的に虫垂炎と診断され、そのうち33人はスピードバンプを通行する際に疼痛を感じていた。感度は97%(95%CI 85% to 100%)、特異度は30%(15% to 49%)であった。陽性的中率は61% (47% to 74%)、陰性的中率は90% (56% to 100%)で、また陽性尤度比は1.4 (1.1 to 1.8)、陰性尤度比率は0.1 (0.0 to 0.7)であった。
 スピードバンプは、疼痛の移動や反跳痛を含む従来の臨床所見よりも高い感度と陰性尤度比を有していた。
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結論:
 スピードバンプの上を通行する際の疼痛の存在は急性虫垂炎の尤度を上昇させる。これは、従来の臨床アセスメントよりも有用である可能性がある。スピードバンプの上を通行したかどうかを聞くことはきわめて有用である。

by otowelt | 2012-12-20 00:47 | その他

慢性咳嗽の4大原因は、咳喘息、上気道咳嗽症候群、好酸球性気管支炎、アトピー咳嗽

e0156318_224778.jpg 胃食道逆流症は慢性咳嗽の原因として教科書に記載されていますが、呼吸器臨床をしていてそれほど多くないことは多くの呼吸器科医が実感していることと思います。
 呼吸器科医にとって咳喘息とアトピー咳嗽の定義は言わずもがなですが、上気道咳嗽症候群と好酸球性気管支炎はちょっととっつきにくいというか、あまり臨床で重要視する場面は多くないと思います。
 最近は後鼻漏とは呼ばず上気道咳嗽症候群と呼びますが、これは後鼻漏を含め上気道の咳受容体への刺激が原因で咳が続くもの全体を指します。好酸球性気管支炎は、病理学的には気管支喘息と同様に喀痰中好酸球増加が観察されるにもかかわらず、気管支喘息とは異なり気道過敏性が亢進していない病態のことを指します。

Kefang Lai, et al.
A Prospective, Multicenter Survey on Causes of Chronic Cough in China
CHEST. 2012doi:10.1378/chest.12-0441


背景:
 中国における慢性咳嗽の原因および地理的因子、季節性、年齢、性差についてはほとんどわかっていない。

方法:
 中国の5地域において慢性咳嗽の原因を調査するプロスペクティブ多施設共同サーベイがおこなわれた。慢性咳嗽のスペクトラムにおける地理的因子、季節性、年齢、性差についても調査された。

結果:
 このスタディでは704人の成人患者が登録され、315人(44.7%)が男性で389人(55.3%)が女性であった。慢性咳嗽の原因は640人(90.9%)で同定された。その原因としては、咳喘息32.6%、上気道咳嗽症候群18.6%、好酸球性気管支炎17.2%、アトピー咳嗽13.2%であった。
 集積すると、これら4原因は5地域で75.2%から87.6%にのぼったが、地域差はみられなかった(P>0.05)。胃食道逆流性咳嗽は症例の4.6%であった。
 季節性、性差、年齢は特に慢性咳嗽スペクトラムに寄与するものではなかった(all P>0.05)。

結論:
 咳喘息、上気道咳嗽症候群、好酸球性気管支炎、アトピー咳嗽は中国における慢性咳嗽の4大原因であった。慢性咳嗽のスペクトラムに、地理的因子、季節性、年齢、性差は寄与しなかった。

by otowelt | 2012-12-19 00:44 | 呼吸器その他

赤血球粒度分布幅(RDW)高値はIPFの予後不良因子

e0156318_21125789.jpg 私たちが診療している疾患のいくつかは、意外にも単純なバイオマーカーが身近にあるのかもしれません。
 RDWは赤血球の大きさのばらつき度合いを示すものだと認識していますが、貧血のときに教科書を引っ張り出してきて参考にする程度でしか正直使ったことがありません。血液検査をすればRDWが記載されているので、IPFの患者さんで観察してみるのも興味深いかもしれませんね。

Steven D. Nathan, et al.
The Red Cell Distribution Width as a Prognostic Indicator in IPF
CHEST. 2012doi:10.1378/chest.12-1368


背景:
 IPFの臨床経過はさまざまな疾患進行のパターンを呈する。赤血球粒度分布幅:RDW(red cell distribution width)は、血算検査でルーチンに報告されるパラメータである。IPFと診断された患者コホートにおいてRDWと予後予測における関連性を検証した。

方法:
 1997年1月から2011年6月までの間、CBC、人口動態、呼吸機能データをIPF患者から抽出した。

結果:
 319人のIPF患者がベースラインCBCを評価された。RDWは11.9から21.9であった(平均14.1)。228人の患者はRDWが15以下(正常)であり、91人がRDWが15超であった。
 RDWが正常であったIPF患者は生存期間中央値が43.1ヶ月であり、RDWが15超であった患者群の16.3ヶ月よりも有意に長かった(p=0.001)。
 198人が連続したRDWデータが有用であった。1ヶ月あたりRDWが+0.010以下の場合の生存期間中央値は43ヶ月であり、+0.010超の場合23.9ヶ月であった(p = 0.0246)。

結論:
 IPF患者のフォローアップにおいて、RDWは有用な検査であり重要かつ独立した予後的情報を与えるものである。さらなる研究によってIPFのアウトカムに対するバイオマーカーとしての妥当性を検証する必要があるだろう。

by otowelt | 2012-12-18 00:09 | びまん性肺疾患