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非嚢胞性線維症の気管支拡張症に対する吸入ドライパウダーマンニトール(ブロンキトール®)の効果

e0156318_224140.jpg 慢性気道感染症を繰り返す気管支拡張症は呼吸器内科医にとっては心底”どうにかコントロールしたい病態”です。
 近年のATSやERSの報告を見ていますと、呼吸器内科医にとってブロンキトール(Bronchitol)®は関心を呼んでいる薬剤の一つだと思います。非嚢胞性線維症に対するブロンキトールのランダム化比較試験の結果がCHESTから報告されています。日常臨床でよく目にする気管支拡張症に対しても効果的であると実証されれば、日本でも使用する日がやってくるかもしれませんね。

Diana Bilton, et al.
A phase III randomised study of the efficacy and safety of inhaled dry powder mannitol (Bronchitol) for the symptomatic treatment of non-cystic fibrosis bronchiectasis
CHEST. 2013 doi: 10.1378/chest.12-1763


背景:
 非嚢胞性線維症の気管支拡張症に対する吸入ドライパウダーマンニトール(DPM)は、粘液クリアランスを促進しQOLを改善するとされている。このスタディの目的は、12週間におよぶDPMの効果と安全性を調べたものである。

方法:
 オーストラリア、ニュージーランド、イギリスの22施設から、胸部HRCTで気管支拡張症がある15歳から80歳の患者が登録された。適格基準として一秒量は予測値の50%以上、1リットル以上あるものとした。この患者群に対して、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験をおこなった。マンニトール誘発試験が陰性である患者がランダムにマンニトール(Bronchitol®)320mg(231人)1日2回あるいはプラセボ(112人)1日2回に12週間割り付けられた。さらなる安全性を解析するため、同量・同頻度使用のマンニトールをオープンラベル使用で52週間にわたり観察した。プライマリエンドポイントは、12週時のベースラインからの24時間喀痰重量およびSt George’s Respiratory Questionnaire (SGRQ)スコアとした。

結果:
 マンニトールとプラセボの間で、12週間の喀痰重量に差がみられたが(4.3g、95%信頼区間 1.64~7.00; p=0.002)、これはプラセボ群で喀痰重量が減ったことに由来する。これはすなわち、プラセボ群でより抗菌薬の作用が強く出たため(ベースラインからの変化量)と考えられる。また抗菌薬の使用率もプラセボ群の方が高かった(プラセボ群:50/112 (45%) vs 吸入マンニトール群 85/231 (37%))。
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 合計SGRQスコアでは両群に有意な差はみられなかった(マンニトール:-3.4ポイント、 95%信頼区間-4.81~-1.94 vs プラセボ-2.1ポイント、95%信頼区間-4.12~-0.09、p = 0.304)。
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 生存について両群に差はみられなかった(p=0.2021)。
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 サブグループ解析(82人)において、12週時点でマンニトール群はHRCTで末梢気道の粘液栓がプラセボ群より少なかった(p=0.048)。コンプライアンス率は高く、マンニトール群は忍容性が高くプラセボ群と同等の有害事象であった。

結論:
 プラセボ群では抗菌薬使用によって喀痰量が減るという現象がみられたが、大規模コントロール試験によって長期のマンニトール使用が呼吸器系の増悪や抗菌薬使用へもたらす効果を現在検証している。


by otowelt | 2013-02-28 00:40 | 呼吸器その他

結核菌による敗血症性ショックは80%が死亡、24時間以内の抗結核治療が望ましい

e0156318_8241364.jpg 結核を診療している医師は粟粒結核で血液培養を採取したことがあると思いますが、通常の血液培養ボトルではなく抗酸菌のための血液培養ボトルを使用します。それが無い場合、ヘパリン採血をして小川培地で培養する方法もあります。
 当院で採用しているバクテアラート®(ビオメリュー社、左写真)は、付属エンリッチメント液(ウシ血清アルブミン、塩化ナトリウム、オレイン酸、サポニン)と血液5mlを混注して培養します。二酸化炭素の発生による吸光度の変化で機械が判定をおこないます。意外にも結核菌よりも非結核性抗酸菌のほうが感度が高く検出できますが、非結核性抗酸菌症で血液培養を使用することはほとんどありません。

 結核菌血症については以前タンザニアの報告を紹介しました。

タンザニアにおいて結核菌血症の死亡率は50%

 さすがに結核菌による敗血症性ショックに陥ると、その予後は格段に悪化するようです。以下、CHESTの論文をご紹介します。

Shravan Kethireddy, R, et al.
Mycobacterium tuberculosis Septic Shock.
CHEST. 2013 doi: 10.1378/chest.12-1286


背景:
 結核菌(M. tuberculosis)による敗血症性ショックは頻度は少ないが、臨床的によく認識されている病態である。

目的:
 結核菌による敗血症性ショックの臨床的特徴、疫学的リスクファクター、生存期間を細菌性敗血症性ショックと比較する。

方法:
 レトロスペクティブに結核菌による敗血症性ショックと診断されたコホート患者(カナダ、アメリカ、サウジアラビア)を、敗血症性ショックと診断された8670人の患者データベース(1996年から2007年)から抽出した。
 プライマリアウトカムは入所施設への退院も含めた、生存した状態での退院とした。

結果:
 データベースにおいて53人の患者が結核菌による敗血症性ショックと診断され、5419人の一般的な細菌性敗血症性ショックと比較された。結核菌による敗血症性ショック患者群の死亡率は79.2%であり、他の細菌性敗血症性ショック患者群の死亡率は49.7%だった(p<.0001)。
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 結核菌による敗血症性ショックの症例のうち、5人を除く全員が呼吸器系の病変がみられた。55%(53人中29人)の患者が肺外への播種性病変を有していた。
 不適切および適切な経験的初期治療はそれぞれ28人(52.8%)、25人(47.2%)であり、その生存については7.1%および36.0%だった(p=.0114)。10人(18.9%)の患者が抗結核治療を受けておらず、その全員が死亡した。結核菌による敗血症性ショックに対する適切な抗菌薬治療までの中央期間は31時間(IQR 18.9-71.9時間)であった。11人の患者のみが低血圧を認識されてから24時間以内に抗結核治療受けており、そのうち6人(54.5%)が生存した。24時間を超えて抗結核治療を開始した21人の患者のうち1人(4.8%)だけが生存しており、24時間以内の早期治療と比較して有意に予後不良であった(p=.0003 vs <24 hrs)。こういった治療までの時間による生存率差は、その他の細菌による敗血症性ショックでみられる事象と大きく変わらない。
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結論:
 結核菌による敗血症性ショックは、その他の細菌による敗血症性ショックと似たふるまいであり、早期の適切な抗菌薬治療は死亡率を改善させる。


by otowelt | 2013-02-27 00:01 | 抗酸菌感染症

医療従事者の業務には、医療用マスクよりもN95の継続的使用の方が良い

e0156318_21184232.jpg 一般的な標準予防策としては医療用マスクだけで問題ないとされています。「北京からN95マスクの臨床試験」となると、どうしても大気汚染のことが頭に浮かんでしまいますが・・・。

PM2.5の問題は本当に緊急事態なのか?

 結核病棟で診療している方はご存知と思いますが、N95Nは、非耐油性であることを表します(Not resistant to oil)。医療現場で使用するマスクに耐油性や防油性のマスクは不要です。また、95は空力学的質量径で0.3μm以上の試験粒子を95%以上捕捉できる規格をクリアしていることを意味します。
 なお、N95マスクは顎のサイズや顔の形によってうまくフィットしないこともあるため(Am J Infect Control. 2008 May;36(4):298-300)、一施設に3種類のN95マスクを常備しておく方がよいとされています。

C. Raina MacIntyre, et al.
A randomised clinical trial of three options for N95 respirators and medical masks in health workers
Am. J. Respir. Crit. Care Med. February 14, 2013, Published ahead of print


背景:
 われわれは、医療用マスクとN95マスク(N95 filtering face-piece respirator)を医療従事者に用いることで3つのマスク予防策オプションを比較した。

デザイン:
 中国北京にある1669人の医療従事者が勤務する19病院68病棟でのランダム化臨床試験を2009年および2010年冬に施行した。18歳以上の看護師および医師が登録された。

方法:
 参加者は以下の3オプションにランダム化された。すなわち、医療用マスクを使用、N95マスクを使用、状況に応じて適宜N95マスクを使用する方法である。アウトカムとして臨床的呼吸器系疾患:clinical respiratory illness (CRI)、インフルエンザ様症状、アデノウイルスなどの上気道に親和性のあるウイルスの検出、検査室でのインフルエンザウイルスの同定、症状のある医療従事者における検査室で確定された呼吸器系病原菌の検出が含まれた。
 N95マスクの使用にあたり、3M™ FT-30 Bitrex Fit Test Kitを用いてフィットがうまくできているかどかチェックされた。

結果:
 CRIの頻度は医療用マスク群で最も高かった(98/572, 17%)。続いて、状況に応じたN95マスクの使用(61/516, 11.8%), N95マスク群(42/581, 7.2%)であった(P < 0.05)。CRIのある医療従事者で呼吸器系の細菌コロナイゼーションは医療用マスク群が最も頻度が高かった(14.7%, 84/572)。続いて、状況に応じたN95マスクの使用(10.1%, 52/516)、N95マスク群(6.2%, 36/581)であった(P = 0·02)。
 交絡因子による補正をおこなうと、持続的にN95マスクを使用することで有意にCRIおよび細菌コロナイゼーションが抑制できることがわかった。状況に応じたN95マスクの使用は、医療用マスクに対する優越性が証明されなかった。
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結論:
 医療従事者に対して医療用マスクを通常単独で用い、状況に応じてN95マスクを使用する予防策が一般的とされている。しかし持続的にN95マスクを使用することは、間欠的にN95マスクを使用することや医療用マスクと比べてCRIの発症に対してより効果的に働くことがわかった。
 また、医療用従事者がN95マスクを継続使用することで気道コロナイゼーションも減少する。医療従事者に対する標準予防策の職業的理念に新たな情報をもたらす結果となった。

by otowelt | 2013-02-26 00:41 | 呼吸器その他

重症患者のストレス潰瘍予防にはH2受容体拮抗薬よりもプロトンポンプ阻害薬の方が効果的

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 ストレス潰瘍予防にプロトンポンプ阻害薬かH2受容体拮抗薬を用いるのか、曖昧なエビデンスが多かったように思います。Critical Care Medicineからメタアナリシスが発表されています。

Waleed Alhazzani, et al.
Proton Pump Inhibitors Versus Histamine 2 Receptor Antagonists for Stress Ulcer Prophylaxis in Critically Ill Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Crit Care Med 2013; 41:693–705


背景:
 重症患者は、ストレス潰瘍によって重篤な出血をきたすことがある。制酸薬はストレス潰瘍のリスクのある患者によく処方されている。プロトンポンプ阻害薬(PPI)がH2受容体拮抗薬よりもICUの上部消化管出血に対して効果があるかどうかは不明である。

方法:
 Cochrane Central Register of Controlled Trials, MEDLINE, EMBASE, ACPJC, CINHAL, clinicaltrials.gov, ISRCTN Register, WHO ICTRPなどから論文を抽出した。
 選択基準は、2012年3月以前に発表されている、重症患者の上部消化管出血の予防に対するPPIとH2受容体拮抗薬を比較したランダム化比較試験とした。2人の独立したレビュアーが論文およびそのデータを抽出した。
 プライマリアウトカムは、臨床的に重要な上部消化管出血および明らかな上部消化管出血とした。セカンダリアウトカムは院内肺炎、ICU死亡率、ICU在室日数、Clostridium difficile感染症とした。

結果:
 出版バイアスが観察された(Egger’s test = −1.16; 95% CI −1.68~−0.63; p = 0.009)。臨床的に重要な上部消化管出血および顕著な上部消化管出血のいずれのアウトカムパラメータでもfunnel plotに非対象性が観察された。
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 14試験、1720人の患者が登録された。重症患者の臨床的に重要な上部消化管出血に対して、PPIはH2受容体拮抗薬よりも効果的であった(相対リスク0.36; 95%信頼区間0.19–0.68; p = 0.002; I2= 0%)。 同様に顕著な上部消化管出血にも効果的であった(相対リスク0.35; 95%信頼区間0.21–0.59;p < 0.0001; I2=15%)。
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 PPIとH2受容体拮抗薬の間に、院内肺炎(相対リスク1.06; 95%信頼区間0.73–1.52; p = 0.76; I2=0%), ICU死亡率(相対リスク1.01; 95%信頼区間0.83–1.24; p = 0.91; I2= 0%), ICU在室日数(平均差 −0.54日; 95%信頼区間−2.20 ~1.13; p = 0.53; I2= 39%)に差はみられなかった。C. difficileの感染について報告している論文はなかった。

結論:
 重症患者では、臨床的に重要である上部消化管出血および顕著な上部消化管出血の予防においてPPIはH2受容体拮抗薬よりも効果的である。この結論の頑健性は、試験手法や試験の質の高低差、疎データ、出版バイアスの影響を受けているかもしれない。ただし、院内肺炎、ICU死亡率、ICU在室日数に両群に差はみられなかった。


by otowelt | 2013-02-25 00:00 | 集中治療

漏斗胸を最初に発見していたのはレオナルド・ダ・ヴィンチ

 タイトルの通りです。BMJ系列の医学雑誌はこういうトリビアをよく掲載してくれるので、個人的にはお気に入りです。何をもって最初の発見と定義するのは難しいところですが、少なくとも1500年代初頭には漏斗胸は認識されていた可能性があります。
 レオナルド・ダ・ヴィンチは人体解剖のスケッチを大量に残しており、医学部の講義でも『ウィトゥルウィウス人間』は必ず一度は目にする絵だと思います。

Hutan Ashrafian, et al.
Leonardo da Vinci and the first portrayal of pectus excavatum
Thorax Online First, published on February 6, 2013
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 漏斗胸は1500年代の後半にJohannes SchenckやJohann Bauhinによって認識されるようになったが、1510年にレオナルド・ダ・ヴィンチが老人の絵で漏斗胸を記載していたことがわかった。


まったくの余談ですが、3年に1回出版される呼吸器科医の教科書である『呼吸器疾患最新の治療』が発売されました。

by otowelt | 2013-02-23 14:12 | 呼吸器その他

ダビガトランは静脈血栓塞栓症の再発抑制効果が高く出血イベントの頻度が低い

 腎障害患者や高齢者でなければ、ダビガトラン(プラザキサ)を使用するケースが増えてきたと思います。余談ですが、110mgに減量する症例は「BRA-P(ブラP)」と覚える方法があります(日経メディカルオンライン プライマリケア医のための心房細動入門(小田倉弘典先生)参照)。
Bleeding history:消化管出血の既往
Renal dysfunction:中等度腎機能障害(CCr30~50mL/分)
Age≧70:70歳以上
P-糖タンパク阻害薬併用:アミオダロン、ベラパミルなど

 NEJMから、静脈血栓塞栓症に対するダビガトランとワーファリンの比較試験、およびダビガトランとプラセボの比較試験の2試験の報告です。2011年の国際血栓止血学会で発表された内容を論文化したものです。

Sam Schulman, et al.
Extended Use of Dabigatran, Warfarin, or Placebo in Venous Thromboembolism
N Engl J Med 2013;368:709-18.


背景:
 ダビガトランは直接的にトロンビンを阻害する抗凝固薬であり、固定用量で投与することができ、また検査によるモニタリングが不要であることから、静脈血栓塞栓症の延長治療(the extended treatment)に適しているかもしれない。

方法:
 2つのランダム化二重盲検試験において、3ヶ月以上の初期治療が終了した静脈血栓塞栓症患者を対象に、ダビガトラン150mg1日2回とワーファリンを比較した対照試験(33ヶ国、265施設)と、ダビガトラン150mg1日2回とプラセボを比較した対照試験(21ヶ国、147施設)をおこなった。
 評価は治療開始後15日目、30日目と1ヶ月ごとに合計180日目まで続けた。両試験とも、プライマリ効果アウトカムは、症状および客観的静脈血栓塞栓症の再発、あるいは静脈血栓塞栓症による死亡(プラセボ群の説明できない死亡を含む)とした。

結果:
 2006年7月から2010年7月までの間、2866人の患者がRE-MEDYに登録され、2007年11月から2010年9月までの間、1353人の患者がRE-SONATEに登録された。

●ワーファリン対照試験(RE-MEDY):
 静脈血栓塞栓症の再発は、ダビガトラン群1430人中26人(1.8%)、ワーファリン群1426人中18人(1.3%)にみられた(ダビガトランのハザード比 1.44、95%信頼区間0.78~2.64、P=0.01)。
 重大な出血事象は、ダビガトラン群13人(0.9%)、ワーファリン群25人(1.8%)に発生した(ハザード比 0.52、95%信頼区間 0.27~1.02)。重大な出血あるいは臨床的に重要な出血は、ダビガトラン群のほうが少なかった(ハザード比 0.54、95%信頼区間 0.41~0.71)。急性冠症候群は、ダビガトラン群13人(0.9%),ワーファリン群3人(0.2%)に発生した(P=0.02)。
●プラセボ対照試験(RE-SONATE):
 静脈血栓塞栓症の再発は、ダビガトラン群681人中3人(0.4%)、プラセボ群662人中37人(5.6%)にみられた(ハザード比 0.08、95%信頼区間0.02~0.25、P<0.001)。 重大な出血は、ダビガトラン群で2人(0.3%)に発生し、プラセボ群では発生しなかった。重大な出血あるいは臨床的に重要な出血は、ダビガトラン群36人(5.3%)、プラセボ群12人(1.8%)に発生した(ハザード比 2.92、95%信頼区間 1.52~5.60)。急性冠症候群は、ダビガトラン群とプラセボ群でそれぞれ1人に発生した。
結論:
 ダビガトランは、静脈血栓塞栓症の延長治療(the extended treatment)に有効であり、重大な出血あるいは臨床的に重要な出血のリスクは、ワーファリンより低かったがプラセボより高かった。


by otowelt | 2013-02-22 17:12 | 内科一般

エルロチニブに別の標的治療を組み合わせることで生存期間が延長するかもしれない

e0156318_14124865.jpg 複数の分子標的薬を併用した臨床試験のメタアナリシスです。

Qi WX, et al.
Overall survival benefits for combining targeted therapy as second-line treatment for advanced non-small-cell-lung cancer: a meta-analysis of published data.
PLoS One. 2013;8(2):e55637.


背景:
 既治療の進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対してエルロチニブに別の標的治療を組み合わせることは広く研究されてきたが、標準的なエルロチニブの単剤治療に比べて利益があるかどうかは不明である。そのため、我々は標準治療に標的治療を組み合わせる場合とエルロチニブ単独を比較したランダム化比較試験を抽出した。
 標的治療の対象となったのは、ボルテゾミブ、ベバシズマブ、エベロリムス、ティバンチニブ、ソラフェニブ、R1507(IGF-1R)、スニチニブなど。
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方法:
 NSCLCのセカンドラインにおいてエルロチニブとそのほかの分子標的薬を併用した臨床試験を、Pubmed, Embase, Cochraneデータベースにおいて論文を検索した。エンドポイントは全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、grade3ないし4の有害事象とした。

結果:
 8試験が登録され2417人の患者データが解析対象となった。ITT解析では、エルロチニブと別の標的治療の組み合わせは有意にOS(HR 0.90, 95%CI: 0.82-0.99, p = 0.024), PFS (HR 0.83, 95%CI: 0.72-0.97, p = 0.018), ORR (OR 1.35, 95%CI 1.01-1.80, P = 0.04)を改善した。
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▲OS
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▲PFS
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▲ORR

 サブグループ解析では、EGFR野生型とKRAS遺伝子変異はPFSを改善する結果が得られた。OSはこれらのステータスによる統計学的有意差はみられなかった。
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 有害事象は、grade3ないし4の皮疹、疲労感、高血圧は有意に併用群で多くみられた。
 出版バイアスはOSやPFSにはみられなかった(p= 0.162 for OS、p =0.171 for PFS)が、ORRでは確認された(p= 0.015)。

結論:
 現在有用なエビデンスでは、NSCLCのセカンドラインの標準的なエルロチニブ治療に別の標的治療を組み合わせることは、エルロチニブ単剤に比べて生存的利益があると考えられる。対象となる患者を限定するため、さらなる研究が望まれる。


by otowelt | 2013-02-22 00:02 | 肺癌・その他腫瘍

過労では癌にならない?

e0156318_1342487.jpg過労によって生活習慣が乱れると、長期的に発癌のリスクも高まりそうなものですが。

Katriina Heikkilä, et al.
Work stress and risk of cancer: meta-analysis of 5700 incident cancer events in 116000 European men and women.
BMJ 2013;346:f165 doi: 10.1136/bmj.f165 (Published 7 February 2013)


目的:
 労働に関連したストレスが癌全体のリスク、および結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌のリスクに寄与しているかどうか調べること。

デザイン:
 ヨーロッパ(フィンランド、フランス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、イギリス)の12のコホート試験(116056人の男女、17~70歳)でベースラインに癌を有さない患者を中央値12年間フォローアップし、そのデータからメタナリシスをおこなった。
 労働ストレスは、ベースライン時に自己申告されたjob strain(労働負担)で定義された。job strainはContent Questionnaire (JCQ)およびDemand-Control Questionnaire (DCQ)で聴取された。
 癌・入院・死亡登録から抽出された癌の発症は5765人で、結腸直腸癌522人、肺癌374人、乳癌1010人、前立腺眼865人だった。データは、いずれの試験もCox回帰によっておこなわれた。モデルは年齢、性別、社会経済的背景、BMI、喫煙歴、飲酒歴によって補正された。

結果:
 年齢性別補正をおこなった場合、労働ストレスは高いjob strainとjob strainが無い場合を比較しても癌のリスクに有意差はみられなかった(ハザード比)0.95, 95%信頼区間0.88 to 1.02)。また多変量解析においても、労働ストレスは癌のリスクには関連していなかった(ハザード比0.97, 95%信頼区間0.90 to 1.04)。同様に、結腸直腸癌(1.16, 0.90 to 1.48), 肺癌(1.17, 0.88 to 1.54), 乳癌(0.97, 0.82 to 1.14), 前立腺癌(0.86, 0.68 to 1.09)にも関連していなかった。
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 以上のことから、job strainのカテゴリーと癌のリスクを関連づける根拠は同定できなかった。

結論:
 労働に関連したストレスは、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌のいずれにおいても重要なリスクとは考えにくい。


by otowelt | 2013-02-21 13:00 | 肺癌・その他腫瘍

東日本大震災における市中肺炎の発生

e0156318_16201243.jpg東日本大震災についてはRespiratory Investigationにも報告があり、以前ご紹介しました。

東日本大震災における胸部外傷

今回、Thoraxから肺炎に関する報告がありました。

Hisayoshi Daito, et al.
Impact of the Tohoku earthquake and tsunami on pneumonia hospitalisations and mortality among adults in northern Miyagi, Japan: a multicentre observational study
Thorax Online First, published on February 19, 2013


背景:
 2011年3月11日に東北地方の大地震と津波が東日本海岸一帯を襲った。3週間以内に肺炎の入院や死亡が地方病院で相次いだ。

方法:
 多施設共同サーベイが宮城県北部の気仙沼市(人口7万4000人)の3病院で行われた。18歳以上の成人患者で2010年3月から2011年7月に市中肺炎で入院した患者をデータベースおよび診療録から同定した。
 分割回帰分析(Segmented regression analyses)がおこなわれ、肺炎の頻度がどのように変化したかを検証した。
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 気仙沼市は、65歳以上の高齢者が30.2% (n=22421)を占め、80歳以上の高齢者は8.9% (n=6618)にのぼる。これは全国平均の数値(23%、6.4%)よりも高いものである。

結果:
 合計550人の肺炎の入院があり、325人は被災前、225人は被災後であった。被災後の市中肺炎の90%が65歳以上であり、8例(3.6%)のみが津波による溺水(near-drowning)と関連していた。臨床的パターンと病原菌は被災前後を問わず同定できた。Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniaeが最も多くみられた病原菌であり、被災後はHaemophilus influenzaeによる肺炎が有意に多くみられた。
 被災後3ヶ月の間は肺炎の頻度が右肩上がりであり、週ごとの肺炎による入院および肺炎関連死亡の発生率はそれぞれ5.7倍(95% CI 3.9 to 8.4)、8.9倍(95% CI 4.4 to 17.8)であった。この増加は介護施設の入居者に最も多く、避難場所の患者がそれに次いだ。
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結論:
 東北地方の大地震と津波後の成人に肺炎の発症が多くみられた。この確たる原因は同定できなかったものの、年齢やストレスなどの複数の因子が絡み合い、肺炎のアウトブレイクにつながったのではないだろうか。


by otowelt | 2013-02-20 11:11 | 救急

肺GGNは少なくとも3年フォローアップした方がよい

e0156318_12171296.jpg 以前mixed GGO(ground-glass opacity)と呼んでいたものが現在ではpart-solid nodule、同様にpure GGOと呼んでいたものがpure GGNと呼ばれています。肺腺癌の新国際分類の論文に基づいて日本CT検診学会も用語を変更していますので注意してください。現在、pure GGOという言葉はもはや使用しません。
Travis WD, et al. International Association for the Study of Lung Cancer/American Thoracic Society/European Respiratory Society International Multidisciplinary Classification of Lung Adenocarcinoma. J Thorac Oncol. 2011 Feb;6(2):244-85.

 以下、GGNのフォローアップについての興味深い報告です。

Kobayashi, Yoshihisa, et al.
How Long Should Small Lung Lesions of Ground-Glass Opacity be Followed?
Journal of Thoracic Oncology: March 2013 - Volume 8 - Issue 3 - p 309-314


背景:
 肺のスリガラス結節影:ground-glass nodulesにはよく出会う。このスタディの目的は結節影の自然経過とどのようにしてフォローアップをしたらよいかを提示するものである。

方法:
 われわれはレトロスペクティブに以下の基準を満たす肺結節影を調べた。すなわち、
 (1)3cm以下の腫瘍
 (2)スリガラス影の割合が50%以上
 (3)無治療で6ヶ月以上経過を観察したもの
 1999年から2012年の間に61人の患者・108の肺結節影がこの基準を満たした。われわれはCTで再評価をおこない、そのサイズの変化を解析した。

結果:
 108病変のうち1cm以下の腫瘍は69病変あり、1.1cm~2cmは34病変、2.1cm~3cmは5病変同定された。solid lesionsを含む割合は、0%が82病変、1~25%が19病変、26~50%が7病変だった。
 観察期間中央値は4.2年であり、108病変のうち29病変(27%)はサイズが増大したが、70病変はサイズが変化しなかった(±1 mm)。サイズの変化は中央値で7 mm (2–32 mm)だった。
 増大した29病変はすべて3年以内に増大が見られ始めた。その内訳は、1年以内が13病変、1.1~2年が12病変、2.1~3年が4病変だった。
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結論:
 肺スリガラス結節影はサイズが変化しないものもあれば、ゆるやかに増大するものもある。この増大は初期3年以内に明確にみられるため、少なくとも3年間のフォローアップが必要であると考えられる。

 

by otowelt | 2013-02-20 00:47 | 肺癌・その他腫瘍