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ビタミンDのサプリメントは肺炎リスクを低下させない

e0156318_1625262.jpg この場合、サプリメントとカタカナ表記にするよりは、「補給」や「補充」と書いた方が誤解は少ないのでしょうが。
 スタチンと時期を同じくして世界的に流行を見せたビタミンD。そのビタミンDと成人の肺炎リスクに関する報告です。

Hilde H F Remmelts, et al.
The role of vitamin D supplementation in the risk of developing pneumonia: three independent case–control studies
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2013-203623


背景:
 ビタミンDは感染症に対して宿主防御的に働くとされている。ビタミンDの欠損は呼吸器感染症のリスクを増加させることが知られている。この試験の目的は、ビタミンDのサプリメント(補給・補充)が成人の肺炎リスクを低下させるかどうか調べることである。

方法:
 33276人の症例を含む3つの独立したケースコントロール試験がおこなわれた。年齢、生年月日、性別などによってマッチされた105243人のコントロールと比較された。主要アウトカムは、肺炎診断時のビタミンDのサプリメントへの曝露とした。条件付きロジスティック回帰によってビタミンDのサプリメントと肺炎の発症のオッズ比を算出した。

結果:
 ビタミンDのサプリメントは肺炎のリスク低下と関連していなかった。試験1および2において、交絡因子で補正した後でもオッズ比は有意でなかった(試験1:オッズ比1.814、95%信頼区間0.865 to 3.803、試験2:オッズ比1.007、95%信頼区間0.888 to 1.142)。試験3では、肺炎リスクはビタミンDサプリメントをおこなった場合、有意に高かった(オッズ比1.496, 95%信頼区間1.208 to 1.853)。

結論:
 この試験では、ビタミンDのサプリメントは成人の肺炎リスクを低下させる予防的効果はなかった。



by otowelt | 2013-08-31 00:03 | 感染症全般

システマティックレビュー:先住民の結核罹患率は非先住民よりも多い

e0156318_1031537.jpg 日本で最も結核罹患率が高いのは大阪市の一部の地域で、2012年の報告で10万人あたり200人くらいです。
 このシステマティックレビュー、罹患率と有病率が入り乱れているのでややこしいのですが、とりあえず先住民の結核罹患率は多いことは間違いないようです。インドのオリッサ州先住民とアフリカのフラニ族の結核有病率がとてつもなく高いようです。

D. Tollefson, et al.
Burden of tuberculosis in indigenous peoples globally: a systematic review
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 17, Number 9, 1 September 2013 , pp. 1139-1150(12)


背景:
 推計で存在する先住民3億7千万人の結核のひろがりについてはわかっていない(United Nations Permanent Forum on Indigenous Issues. State of the world’s indigenous peoples. ST/ESA/328. New York, NY, USA: UN, 2012.)。

目的:
 この試験の目的は、先住民における結核のひろがりを調べ、現在の知見とのギャップを同定し、結核コントロールの一環として先住民の健康を優先させる研究事項をつくることである。

方法:
 1990年1月から2011年11月までの間、先住民における結核についての報告を抽出し、システマティックレビューをおこなった。

結果:
 19か国から91論文がレビューに組み込まれた。56試験のみがオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、アメリカ以外の国からの報告だった。最も試験数が多かったのは、ブラジル(アマゾン)、カナダ(北アメリカ)、インドであった。
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(文献より引用:黒は10以上の試験が報告された国)

 ほとんどの試験は、先住民の結核の罹患率は非先住民よりも高いと報告していた。アマゾンの試験が最も高い結核の罹患率であったが、東南アジアやアフリカでもある選択集団においては同等の罹患率を有していた。
 アフリカでは、フラニ族の有病率が最も高く、10万人あたり4600人、ドゴン族やプール族は10万人あたり1800人と報告されている。これは非先住民のそれぞれ10倍、5.5倍という数値であった。北アメリカの中では、たとえばイヌイットは最も高い罹患率を示したが(10万人あたり156人)、その他の民族であるカナダのメティやアメリカンインディアン、アラスカ原住民は10万人あたり10人未満と低かった。ニュージーランドのマオリ族やパシフィックアイランダーは、オーストラリアのアボリジニー族よりも高い結核罹患率を示したが、この集団においては非先住民に比べるとすべて結核罹患率は有意に高かった。

結論:
 現存するデータを参照する限りでは、先住民は非先住民と比較して高い結核罹患率であると考えられる。しかしながら、地域によってかなり差異があることは否めない。


by otowelt | 2013-08-30 00:59 | 抗酸菌感染症

PaCO2値はCOPD急性増悪の予測因子である

e0156318_23175684.jpg 中部地方で盛んに呼吸器診療をおこなっている公立陶生病院からの報告です。少し古い情報を使っているようですが、電子カルテもまだなかった時代でしょうから、140人のデータを収集するのは大変だっただろうと思います。

Taga S, et al.
Predictors of the Need to Initiate Noninvasive Ventilation in Stable Outpatients with Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
Intern Med 52: 1781-1786, 2013


目的:
 安定期COPDの外来患者に対する、COPD急性増悪による非侵襲性換気(NIV)の必要性の予測因子はじゅうぶんに定義されていない。この試験の目的は、安定期COPD患者の急性増悪に対するNIVの必要性を予測する因子を調べることである。

方法:
 レトロスペクティブ試験である。1996年7月から2001年10月までの間に、安定期COPDの外来患者で、初回の急性増悪をきたして入院となった140人が登録された。患者背景や臨床パラメータが安定期に評価され、血液ガス分析、呼吸機能検査、BMI、修正MRC息切れスケールも調べられた。
 NIVが必要であるという症例は、1)中等度から重症の呼吸困難による呼吸不全があること(呼吸補助筋の使用がある等)、2)急性呼吸不全でpH7.35未満、PaCO245mmHg超、3)呼吸数24回/分 以上といった基準を満たすものとした。

結果:
 140人の患者のうち、NIVを要したのは32人(23%)であった。PaCO2の平均±標準偏差は、非NIV群で39.8± 6.4 mmHg、NIV群48.4± 9.6 mmHgだった(全症例の安定期は41.8 ± 8.1 mmHg)。一秒量(%予測値)は、同様に50.1±19.4%、40.8±19.7%だった。
 単変量Cox比例ハザード解析において、ベースラインのPaCO2(ハザード比1.14、95%信頼区間1.08-1.21)、1秒量(%予測値)(ハザード比1.03、95%信頼区間1.01-1.05)は有意な予測因子であった。多変量ロジスティック回帰分析では、PaCO2のみが有意な予測因子として残った(ハザード比1.18、95%信頼区間1.12-1.26)。

結論:
 安定期COPD患者において、入院を要する初回のCOPD急性増悪に対して、PaCO2値は独立予測因子である。


by otowelt | 2013-08-29 00:20 | 気管支喘息・COPD

がん患者に対するヨガは睡眠の質を高める

e0156318_17344885.jpg 私は信じられないくらい体がカタイ上、椎間板ヘルニアの既往がありますので、おそらくヨガは不可能です。そんな個人的な話はさておき、どういうわけかヨガの臨床試験が世界的に流行っています。こういった臨床試験がJCOにも掲載される時代になったのですね。 

Karen M. Mustian, et al.
Multicenter, Randomized Controlled Trial of Yoga for Sleep Quality Among Cancer Survivors
JCO, Published online before print August 12, 2013, doi: 10.1200/JCO.2012.43.7707


目的:
 癌で生存した患者の30~90%が治療後に睡眠障害を訴えており、死亡率を上昇させるくらい重度のものも起こりうる。睡眠障害の治療については、薬剤治療と認知行動療法に加えて、運動療法といったライフスタイルの介入を組み合わせることが推奨されている。事前の研究で、ヨガが癌生存者の中で睡眠を改善させるかもしれないことがわかっている。このランダム化比較試験のプライマリエンドポイントは、癌生存者における治療後の睡眠の質を改善させる標準的ケアと、標準化されたヨガの介入の効果を比較検証することである。

患者および方法:
 外科手術、化学療法、放射線治療といった治療後2~24ヶ月の間に中等度以上の睡眠障害を訴えた計410人の癌生存者を、ランダムに標準ケアあるいは標準ケア+4週間のヨガ介入に割り付けた。
 癌生存者のためのヨガプログラム:Yoga for Cancer Survivors (YOCAS)によるヨガ介入は、Pranayama(プラナヤマ)による呼吸法、16のジェントル・ハタ・ヨガとリストラティブ・ヨガ・アーサナおよび薬物療法をおこなった。参加者は1週間あたり75分間のセッションをおこなった。
 睡眠の質は、ピッツバーグ睡眠質インデックスおよび介入前後のアクティグラフィーで評価した。

結果:
 410人の癌生存者のうち、96%が女性で平均年齢は54歳であった。78%の患者が乳癌患者であった。両群とも包括的な睡眠の質は改善したが、特にヨガ群では標準ケア群と比較して、主観的な睡眠の質(P = .047)、日中の機能障害(P < .01)、睡眠薬の使用(P = .046)などを改善した。
 1人の患者が上室性頻拍を起こしたが、この介入による関連ではないと判断されている。
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(文献より引用)

結論:
 YOCASプログラムに基づいたヨガは、癌生存者における睡眠障害に対して薬物の使用を減らし睡眠の質を改善させる効果がある。


by otowelt | 2013-08-28 00:00 | 肺癌・その他腫瘍

Facebookは幸福感を減少させるかもしれない

e0156318_16443331.jpg すいません、一応論文を読んでみましたが読む気が無くなるくらい内容が難しすぎたので、分かる範囲の概要だけご紹介します。私もFacebookのアカウントは持っていますが、幸福感が減弱するほどFacebookを気にかけている人はそんなに多くないと思います。

Kross E, et al.
Facebook use predicts declines in subjective well-being in young adults.
PLoS One. 2013 Aug 14;8(8):e69841.


背景:
 世界では5億人以上の人が、Facebookを毎日使用している。しかし、Facebookの利用が主観的な幸福感(subjective well-being)に影響を与えるかどうか不明である。

方法:
 スマートフォン(多機能携帯電話)とFacebookのアカウントを持っている若年ボランティア82人を登録した。彼らに対して、2週間にわたってFacebookの使用が主観的幸福感に与える影響について5回/日のテキストメッセージを送信した。主観的幸福感は2種類の内容で評価した。すなわち、人々が日常生活のその瞬間をどのように考え、感じ、行動するか、およびその生活に満足しているかというものである。テキストメッセージには次の5つの質問が含まれていた。
 1.今あなたはどんな気分ですか?
 2.今あなたは不安はありますか?
 3.今あなたは孤独を感じていますか?
 4.前回の質問から今までの間に何回Facebookを使いましたか?
 5.前回の質問から今までの間に何回他人と直接交流しましたか?

インセンティブは20ドルで、抽選でiPAD2をプレゼントすることとした(なぜ抽選!?)。対象者の時点T2における情緒的な幸福(affective well-being)を、時点T1からT2の間のFacebookの使用で予測する階層回帰モデルを用いた。

結果:
 T2における幸福感は、T1からT2の間にfacebookを使用しているときに低くなった。Facebookの使用頻度が高まるほど、感情の低下が大きくなった。研究の開始前と終了後に人生満足度レベルについても質問したが、Facebookを多く使った人ほど、人生満足度の低下が大きかった。
 また、感情的に沈みがちなときにFacebookの頻度が高まるという結果は得られなかった。
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(文献より引用)

結論:
 Facebookは、表面的には貴重な情報を提供するだろう。しかしその使用は幸福を高めるわけではなく、むしろ幸福を減少させる可能性が示唆される。


by otowelt | 2013-08-26 16:48 | その他

膠原病による肺動脈性肺高血圧症に対してエンドセリン受容体拮抗薬は効果が弱いかもしれない

e0156318_21423119.jpg 膠原病による肺動脈性肺高血圧症の治療は、基本的に通常の肺動脈性肺高血圧症と同じように“3系統”から薬剤が選ばれています。

Kuwana M, et al.
Pulmonary arterial hypertension associated with connective tissue disease: meta-analysis of clinical trials.
BMJ Open. 2013 Aug 1;3(8). pii: e003113. doi: 10.1136/bmjopen-2013-003113.


目的および方法:
 結合組織病(CTD)に合併した肺動脈性肺高血圧症(PAH)に関するスタディは少ない。そのため、適切なCTD-PAHの治療はいまだ確立されていない。
 PAHの治療およびCTD-PAHの治療に関するデータを抽出し、前者19試験(3073人)、後者9試験(678人)のメタアナリシスをおこなった。評価項目はすべて6分間歩行距離による運動耐用能であった。

結果:
 PAHの症例における平均年齢は32-55歳であり、女性は61-87%だった。CTD-PAHの症例における平均年齢は45-55歳で、女性は74-95%だった。
 ホスホジエステラーゼ5阻害薬、プロスタサイクリンはいずれのPAH症例においても有意な効果がみられたが、エンドセリン受容体拮抗薬のみ、CTD-PAHには大きな改善をもたらさなかった。PAHとの比較で、ボセンタンは14.1 m (-4.4-32.6 m) vs 39.5 m (19.5-59.6 m)、アンブリセンタンは21.7 m (2.2-41.3 m) vs 44.2 m (30.2-58.2 m) とCTD-PAH症例ではあまり効果がみられなかった。

結論:
 3系統いずれのPAH治療薬は効果的であった。しかしながら、エンドセリン受容体拮抗薬はCTD-PAHに対しては大きな効果はみられなかった。CTD-PAHに対するこれらの治療のさらなる試験が望まれる。


by otowelt | 2013-08-26 00:30 | 膠原病

ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない

e0156318_9104886.jpg・はじめに
 私はヘタクソながらもピアノを弾くことが趣味で、ラフマニノフなどの近代の作曲家が好きです。先日、全盲のピアニストとして有名な辻井伸行さんがプロムスデビューを飾り、佐渡裕指揮の頃とは違ったラフマニノフのピアノ協奏曲2番(op. 18)を聴かせてくれたことが記憶に新しいです。
 作曲家が罹った疾患については、多くのエピソードが残されています。ラフマニノフ=Marfan症候群、ショパン=肺結核(嚢胞性線維症という説もあります)、モーツァルト=粟粒熱(現在は存在しない)、チャイコフスキー=コレラなどなど。今回はその中のラフマニノフについて取り上げてみたいと思います。


・ラフマニノフの手
 セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Vasil'evich Rachmaninov)(1873年~1943年)は、数々の名曲を残したロシアの有名な作曲家ですが、それでいてピアノの技巧も卓越していたことでも知られています。彼は身長2メートル近い(193cm)体躯と巨大な手の持ち主で、12度の音程を左手で押さえることができたと言われています。12度というのは、ドから1オクターブ上のソまでです。冒頭で述べたピアノ協奏曲2番は、下の楽譜に示すように左手を10度の間隔に広げることが要求されています。手の大きくないピアニストの場合はこの和音をアルペジオにして弾くことが当たり前になっています(アルペジオ:例えば「ドミソ」を同時に弾くのではなく、「ド→ミ→ソ」と少し時間差で弾くこと。こうすれば指が小さい人は広い和音を弾ける)。
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(ピアノ協奏曲2番第1楽章冒頭 op. 18)

 ラフマニノフを筆頭としたロシアの作曲家はとにかく和音が大好きで(ロシアの文化性だと思います)、手の大きさとあとは体力勝負、という場面も少なからずあります。
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(前奏曲 op.32-13)


・Marfan症候群だったか否か
 医学部の講義の時に必ずといって登場する薀蓄(うんちく)として、「ラフマニノフはMarfan症候群だった」というものがあります。しかしその診断は不確実なもので、身体的特徴や症状から類推されたものに過ぎませんでした(Br Med J (Clin Res Ed). 1986 Dec 20-27;293(6562):1624-6.)。

 ラフマニノフのバイオグラフィーを調べて、彼はMarfan症候群ではなく、実は先端巨大症だったのではないかと唱える報告(J R Soc Med. 2006 Oct;99(10):529-30.)があります。Marfan症候群だけでは説明がつかない点が先端巨大症によって説明できるというのです。たとえば、後期にみられた手の硬直が正中神経障害による両側性の障害であること、悪性黒色腫が巨大症に関連した悪性腫瘍である可能性があること(Clin Endocrinol (Oxf). 1997;47:119–21)などが挙げられます。この研究グループは、側弯や漏斗胸といった胸郭異常、循環器疾患といったMarfan症候群に特徴的と言える徴候がなかった点も当該診断に懐疑的である根拠としており、全てを満たす疾患としては先端巨大症であったと考える方が妥当だろうと結論づけています。

<音楽と医学>
モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
ブラームスは外科医ビルロートの親友だった

<偉人たち>
Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
Clara細胞の発見者:Max Clara
サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram



by otowelt | 2013-08-24 15:43 | コラム:医学と偉人

Xpert® MTB/RIFは結核性胸膜炎を診断する上で感度が低い

e0156318_9385426.jpg 昨年のERJに肺外結核に対するXpert® MTB/RIFの報告がありました。

肺外結核におけるXpert MTB/RIFは良好な診断能

 Xpertの胸水検体に関する報告は、上記のERJ以外にも過去にいくつかあります。そのいずれも特異度は100%なのですが、感度は20~30%止まりです(J Clin Microbiol 2011; 49: 4341– 4342.、J Clin Microbiol 2012; 50: 513–515.)。別にXpertに限ったことではなく、胸水検体は基本的に感度が低いので結核性胸膜炎の診断自体がきわめて難しいです。

Porcel, J. M, et al.
Xpert® MTB/RIF in pleural fluid for the diagnosis of tuberculosis [Short communication]
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 17, Number 9, 1 September 2013 , pp. 1217-1219(3)


背景:
 リファンシピン(RIF:リファンピン)耐性の自動分子検査であるXpert® MTB/RIFは喀痰の検査に広く用いられている。この試験の目的は、胸水検体におけるXpertの診断精度を評価することである。

方法および結果:
 2010年9月から2012年3月までの間、結核性胸膜炎と診断された33人の患者(21人が男性、平均年齢33歳)を登録した。ほかの原因の胸水貯留患者34人をマッチさせた。33人のうち11人が微生物学的に結核と診断され、6人は胸膜組織診断に基づいて診断され、16人は胸水中ADA上昇や抗結核薬への反応性などの臨床的情報から類推診断した。HIV共感染患者は一人もいなかった。
 Xpertは結核の診断に対して感度15%(95%信頼区間7–32)、特異度100%(95%信頼区間88–100)、陽性尤度比11.3(95%信頼区間0.65–197)、陰性尤度比0.85 (95%信頼区間0.73–0.99)であった。
 Xpert陽性は、微生物学的に結核を同定できた患者でよく観察された。

結論:
 感度の低さから、胸水に対するXpertは限定的な役割しかないものと考えられる。
 

by otowelt | 2013-08-23 00:15 | 抗酸菌感染症

CareNet:「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」連載のお知らせ

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 連載のお知らせばかりで恐縮です。
 研修医の頃からお世話になっているCareNetDr. 倉原の“おどろき”医学論文 という連載を開始させていただくことになりました。
 普段あまり目にしないような珍しくも興味深い医学論文を月2回紹介する予定です。あまり医学論文の“批判的吟味”はしておりませんので、批判的に読まぬようご海容下さい。あくまで読み物としてご笑覧いただければ幸いです。

 第1回は、「電車の上でサーフィンをすると高電圧熱傷のリスク」というタイトルで書いていますので是非ご覧下さい。

by otowelt | 2013-08-21 12:00 | その他

EBUSによるクライオ生検の有効性

e0156318_9551539.jpg 気管支鏡のクライオプローブについてはERSやATSでも盛んに取り上げられています。とくにびまん性肺疾患の診断に使用した場合、検体が大きいので外科的肺生検を回避できる可能性があるのです。クライオバイオプシーのことをクライオ生検と書いていいのかわかりませんが、新しい手技なのでとりあえず私はそのように記載しておきます。

ERS2012:気管支鏡cryoprobeでびまん性肺疾患の診断が可能に
クライオプローブによる経気管支肺生検は、鉗子による経気管支肺生検と同等の安全性
ATS2013:クライオプローブにおける診断能

 そのうちEBUS-cryoprobeが登場するのではないかと思っていましたが、早速ERJで報告がありました。4cmまでの大きさが登録可能であるため、陰影が3cm近くあるものが登録されており実臨床よりも“陰影が大きな”集団のように感じました。

M. Schuhmann, et al.
EBUS guided cryo biopsies in peripheral pulmonary lesions – a feasibility study
ERJ, in press, 2013 erj00113-2013


背景:
 末梢肺陰影peripheral lung lesions (PLL)は、ときに超音波ガイド下気管支鏡(EBUS)でも診断が難しく、診断には及ばない(insufficient)検体が経気管支肺生検(TBB)から採取される。クライオプローブは十分な組織検体を得ることができる生検法である。
 われわれはPLLに対してEBUSとクライオプローブを組み合わせた安全性と効果を評価した。

方法:
 4cmまでのPLLを有する患者が登録された。肺の陰影をEBUSで確認したあと、鉗子およびクライオ生検が施行された(先に鉗子をおこなう群と先にクライオ生検をおこなう群のいずれかにランダムに割り付けられた。)。われわれはその安全性と効果を評価し、診断能を比較した。

結果:
 39人の患者がランダムに登録され、1例は気管支鏡で肉眼的に確認できたため除外された。38人の陰影の大きさは29.7 mm ± 7.3mmであった。PLLには31人の患者が到達可能(いわゆる“within”)であった。60.5%の症例で診断がついた。おおむね鉗子もクライオ生検も同様の診断率であったが(統計学的には有意差なし)、4例はクライオ生検のみで診断がついた。クライオ生検は、鉗子の検体よりも有意に大きな検体が採取できた(11.17 mm2 vs 4.69 mm2, p<0.001)。中等度の出血がみられた以外、重篤な合併症はなかった。

結論:
 EBUSガイド下での経気管支クライオ生検は安全かつ十分な組織検体が得られる。


by otowelt | 2013-08-20 00:05 | 気管支鏡