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悪性胸膜中皮腫に対するシスプラチン+ゲムシタビンとシスプラチン+ペメトレキセドの比較

e0156318_22212150.jpg 9年間でシスプラチン+ペメトレキセドの連続登録患者が17人というのは一見少ないような気がしましたが、臨床試験が盛んな病院の場合、他の臨床試験とオーバーラップできないことやレジストリによって登録に規定があるのかもしれません。いずれにしても、ゲムシタビンとの比較データは興味深いですね。

Shukuya T, et al.
Comparison of cisplatin plus pemetrexed and cisplatin plus gemcitabine for the treatment of malignant pleural mesothelioma in Japanese patients
Respiratory Investigation, published online 16 September 2013


背景:
 シスプラチン+ペメトレキセドは手術不能の悪性胸膜中皮腫に対する標準的なファーストライン化学療法である。しかしながら、シスプラチン+ペメトレキセドとシスプラチン+ゲムシタビンを比較した試験はなく、シスプラチン+ゲムシタビンの悪性胸膜中皮腫に対する効果は過去の第II相試験結果に基づくデータしかない(J Clin Oncol 1999;17:25–30.、Am J Clin Oncol 2005;28:223–6.、Lung Cancer 2008;60:259–63.、Br J Cancer 2002;87:491–6.、Br J Cancer 2002;86:342–5.)。この試験は、日本人の悪性胸膜中皮腫患者に対するシスプラチン+ペメトレキセドの効果をシスプラチン+ゲムシタビンと比較することを目的とする。

方法:
 静岡がんセンターにおいて、2002年7月から2011年12月まで、手術不能の悪性胸膜中皮腫の患者でシスプラチン(80mg/m2、day1)+ゲムシタビン(1000mg/m2、day1, 8)を投与した13人、シスプラチン(75mg/m2、day1)+ペメトレキセド(500mg/m2、day1)を投与した17人の連続患者を登録した。これらの患者の診療録をレトロスペクティブにレビューし、抗癌剤の毒性と効果、患者背景を評価した。

結果:
 登録患者の年齢、性別、組織型、パフォーマンスステータス、喫煙歴、石綿曝露歴、病期に差はみられなかった。
 シスプラチン+ゲムシタビン、シスプラチン+ペメトレキセドの奏効率は15%、35%であった(P=0.4069)。また疾患制御率はそれぞれ77%、82%であった(P=0.9999)。無増悪生存期間はシスプラチン+ペメトレキセドの方がシスプラチン+ゲムシタビンよりも有意に長かった(中央値215.5日 vs. 142.5日)(P=0.0146、ハザード比0.3552)。全生存期間はシスプラチン+ペメトレキセドの方がシスプラチン+ゲムシタビンよりも長い傾向がみられた(中央値597.5日 vs. 306.5日) (P=0.1725、ハザード比0.5516)。血液毒性、特に血小板少と好中球減少はシスプラチン+ゲムシタビンの方が多かった。

ディスカッション:
 過去にシスプラチン+ペメトレキセドとシスプラチン+ゲムシタビンを比較したレトロスペクティブ試験があるが、この試験では全生存期間に有意差はなかった(Lung Cancer 2009;64:308–13.)。しかしながら、奏効率や毒性についての報告はなかった。本試験では、それらのデータを報告している。
 本試験はレトロスペクティブデザインであり、登録患者も少数であったため、確定的な結論は出せない。

結論:
 手術不能の悪性胸膜中皮腫においてシスプラチン+ペメトレキセドは優れており、標準的なファーストライン化学療法であり続けるべきである。


by otowelt | 2013-09-30 00:10 | 肺癌・その他腫瘍

院内の抄読会を継続させるにはどうしたらよいか?その2

e0156318_19254136.jpg当院の抄読会
 前回(院内の抄読会を継続させるにはどうしたらよいか?その1)の続きです。

 今回は当院で実際に行っている抄読会を紹介します。当院の抄読会には、実はいくつかルールがあります。別に明示しているわけではないのですが、発案した先生のセンスが光るルールだと思います。以下にそれらを列挙します。


●日本語は一切禁止
●演者は1つの論文をパワーポイントに英語でまとめて15~20分程度で発表すること
●演者は聴衆に向かって立ってしゃべること
●発表の後、質疑応答の時間を5~10分設けること
●演者は質疑応答も含めすべて英語で話すこと
●1つの発表ごとに1人の座長を設定すること
●座長は、開会と閉会の挨拶から演者の紹介や質疑応答・ディスカッションまですべてを英語で進行すること
●フロアから質問がない場合、座長が英語で演者に質問すること


 いや、ムリだろ!とお思いかもしれませんが、私たちの病院は実はこのスタイルの抄読会を何年も続けています。ネイティブスピーカーなんてほとんどいません。びまん性肺疾患・感染症の抄読会が隔週月曜日の朝、肺癌の抄読会が毎週木曜日の朝にあります。

 赴任した当初、この抄読会を目にしたとき私は非常に驚きました。何せ、参加者の全員が英語で話しているんですから。英語が得意な人から苦手な人まで、どれだけ時間がかかっても英語だけを使うスタンスを貫いていました。あまりのもどかしさに日本語でしゃべろうものなら上級医から「In English, please.」の叱咤が飛びます。

 かのウィッキーさんは言いました。「日本人は文法が合っているかどうか気にし過ぎですよ」と。私もその通りだと思います。国際学会では、英語の文法がメチャクチャでも堂々と質問する医師は少なくありません。日本人と違って、別に“文法作法”が多少間違っていても恥ずかしいと思わないからです。といっても私も日本人ですので、文法が合っていないとやはり恥ずかしいのですが。

 さて、この抄読会のスタイルにはメリットとデメリットがあります。


日本語禁止・パワーポイント形式の抄読会のメリット
 このスタイルの抄読会のメリットは、挙げればキリがありません。ひとつ挙げるとするならば、前回述べた「惰性化」を防げることにあります。たとえば、パワーポイントのスライドに旅行の写真を添付してみるのはどうでしょう。家族の写真を載せるのはどうでしょう。惰性化していた抄読会が一気に面白くなるはずです。最近の学会では、自分の趣味やプロフィールなどを最初に掲載するような演者も増えています(現実的には招聘講演に限られますが)。パワーポイントの作り方ひとつで、簡単に惰性化を防ぐことができます。

 そういえば、私が研修医だった頃の総合診療科のレクチャーはどちらかと言えばこんな雰囲気でした。研修医が退屈しないよう、指導医が創意工夫したパワーポイト。それと同じような発想です。
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(レクチャー用パワーポイントの例)

 以下に抄読会で使用するパワーポイントの例を提示します。ドラえもんやガンダムなどのキャラクターを使用したかったのですが、著作権上使用できないのでフリーで使用できる京都の写真を選びました。というわけで、あまり面白い印象は無いのであしからず。
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(抄読会パワーポイントの例)

 次のメリットとして、学会発表が怖くなくなります。母国語ではない英語を使って発表するわけですから、日本語でも人前で発表する緊張感がウソのようになくなります(少なくとも私はそうです)。この英語抄読会は、お察しの通り国際学会と発表スタイルが似ています。そのため、国際学会の発表もお茶の子さいさいになります、……たぶん。
 
 また、パワーポイントを使用するので、皆一様に流れについてくることができます。英語論文を印刷して口頭で全訳で読み進めていく抄読会の場合、途中で「今どこを読んでいるのかもう分からない」、「面白くない」と匙を投げてしまう聴衆は多いです。パワーポイントの発表形式は、それを防ぐことが可能です。少なくとも、どこを読んでいるのかが分かる。

 最後のメリットは座長の存在です。皆さんも一度、頭の中で英語の座長をしてみてください。「Good morning, everyone.」。次、何と言いましょうか。どうやって演者を紹介しましょうか。この座長が意外にもよい経験になるのです。英語で演者と座長を両方経験すると、思ったよりも英会話力が身に付くのが実感できます。私は留学経験も何もないので英会話力なんてたかだか知れていますが、日本語禁止の勉強会を始めてさすがに5年も経つと、外国人に話しかけられても怯えることはなくなりました。もちろん、ちゃんと返事を返せるかどうかは別です。とにかく、いっちょまえに度胸がつくのです。座長の経験はオマケのようなもので、別に座長を設定しなくてもよいかもしれませんが。


日本語禁止・パワーポイント形式の抄読会のデメリット
 デメリットは抄読会の準備が大変なことです。ただ、基本的にどのタイプの抄読会でも発表者が論文を読み込まないといけないのは確かです。それは発表者の宿命です。ドラえもんのひみつ道具でもない限り、誰ひとりとして論文を読み込まずに内容を全員シェアできる夢のツールはありません。ただ、パワーポイントを英語で作成するということは、ある程度論文のPDFファイルから借用することが可能なのです(二次配布は禁じられていますので注意)。つまり、日本語訳しなくてよいという点では発表者の仕事量はむしろ減るかもしれません。
 
 また座長もある程度論文を読み込んで、質疑応答の時にフロアのマネジメントをしなければなりません。沈黙が続いたときには、自分から英語でコメントを発しなければなりません。「Thank you for your presentation, I have one question.」

 そのため、参加者の精神的負担はそれなりに大きいです。しかし、そのデメリットを凌駕するだけの余りあるメリットがあるため、もし抄読会のスタイルをどういった形にすれば長続きするのかと悩んでいる施設があれば、是非このスタイルを試してみて下さい。みんな最初は恥ずかしいでしょうが、慣れればたいしたことありません。ただし、1~2ヶ月に1回当番が回ってくるようでは疲弊してしまう可能性があるので、個人的には2.5~3ヶ月に1回くらいの頻度が妥当なラインではないかと思っています。人数が少ない場合は、隔週にする、あるいは通常の抄読会とパワーポイント発表抄読会のハイブリッドにするなどの工夫が必要です。パワーポイント発表のみの抄読会の場合、単純計算でも抄読会メンバーは最低10人は必要になるため、診療科内だけの抄読会というよりも若手医師を一同に集めるような会にしなければ実現は難しいかもしれません。


さいごに
 抄読会は“開催しなければならないもの”ではありません。診療科内で、最新の医学論文をいかに効率よくシェアするかという一つの手段にすぎません。そのため、ここで紹介した方法はベストではないかもしれませんし、これ以外の方法でシェアできるのであれば、私はそれでいいと思っています。

 オンラインで色々な情報が手に入るようになり(このブログも然り)、特に若手医師の論文離れが進んでいます。私は、それは悪いことだとは思っていません。難しい教科書より、わかりやすい教科書を選べばいい。難しい英語論文より、和訳した論文を読めばいい。最近は国際学会ですら、各国のオンラインで速報を流し、ソーシャルネットワークやブログで詳細が報告される時代です。効率的に情報を得るなら、抄読会よりもオンラインで検索した方がはやいでしょう。

 抄読会を開催する場合、特に若手医師に対して「なぜ抄読会が必要なのか」を指導医の立場から説明できないとダメです。それについては個々の医師によって価値観も違いますし、ここでは割愛させていただきますが。



by otowelt | 2013-09-28 00:00 | その他

院内の抄読会を継続させるにはどうしたらよいか?その1

e0156318_19254136.jpgはじめに
 「継続は力なり」という言葉があります。大正・昭和に住岡夜晃という宗教家が残した言葉であることはあまり知られていません。「英語文献の抄読会を開催しよう!」と意気揚々と抄読会を立ち上げても、いつの間にか立ち消えになってしまった経験のある医師は少なくないはずです。そもそも、忙しい仕事の合間を縫って抄読会を継続すること自体のハードルが高いのです。
 
 ―――抄読会(しょうどくかい)という言葉は、医療従事者でなければ耳にすることはないと思います。というのも、一般的に認知されている言葉ではないからです(ほとんどの辞書にも掲載されていないようです)。現代語に訳せば「難しい内容の言葉を読み合う会」という意味になります。英語論文を印刷して和訳を述べるスタイルが最もスタンダードなものでしょう。私が初期研修をしていた病院でも、多くの診療科がこれでした。

 当院にもいくつか抄読会があります。家庭の事情もあり、全てに参加できているわけではありませんが、できるだけ参加しようと努力しています。私が今の病院に赴任してまず驚いたのが、朝の抄読会が当時では奇抜なスタイルだったことです。今はその方法がベストだと思っています。当院の実際の抄読会スタイルについてはまた次回に詳しくご紹介します(たいした内容ではないので、決して勿体ぶっているわけではありません)。


・そもそも何のために抄読会をするのか
 おそらく抄読会によって得られる一番のメリットは「最新の医学論文情報を得ること」にあります。一つ論文を読んだからといって、その疾患のすべてを知ったと思うのは傲慢ですが、その論文に記載されている疾患背景や治療概要などを再確認するだけでなく、新しい治療として今どういったものがトピックであるかを知ることができる点は大きなメリットです。

 次のメリットは「医学英語が身に付く」ということです。私は毎日のように英語の医学論文を楽しみに読んでいますが、英字新聞はほとんど読めません。これは、医学論文の言い回しが独特であることと、私の医学英語の語彙力だけが高いためです。残念ながら、私は社会・経済・芸能・スポーツ関連の英語の単語はほとんどわかりません。まあ、医学論文を読めば読むほど医学英語だけが身に付くのは自明の理です。
 
 他の利点は、「英語論文を興味を持って読むことができるようになること」です。私みたいに医学論文雑誌を娯楽雑誌のように読んでいる医師は別として、全ての医師が医学論文を楽しく読めるわけではありません。10ページもある医学論文を読んでも、脳内に快楽物質など微塵も出ない人の方が多いでしょう。しかし英語論文を読むことに慣れれば、何に注意して読めばいいのか、どこに重要なことが書いてあるのか、いつの間にか分かるようになります。要領さえ得られるようになれば、読むことに興味を覚えるようになるはずです。さらに慣れれば、批判的吟味ができるようになります。私はこの批判的吟味が非常に苦手なので偉そうなことは書きませんが、その医学論文が実臨床にインパクトを与えるような内容かどうか、吟味ができるようになります。e0156318_19504422.jpg

 毎日医学論文を読んでいる人に抄読会は不要なのか、と問われればそういうわけではありません。たとえば、私は毎週木曜日の朝に当院で開催される肺癌の抄読会に参加していますが、第3相試験などの重要な試験については何度も反芻して損はないと思っています。最近AVAPERL試験という有名な臨床試験の結果がJournal of Clinical Oncologyという雑誌に発表されました(J Clin Oncol. 2013 Aug 20;31(24):3004-3011.)。これは、2013年のアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されたものです。春にASCOの速報を見て、初夏に自分で論文を読んで、最近の抄読会で同僚が論文を紹介してくれました。さすがに私のような物覚えの悪い人間でも、3回繰り返せば頭に刻み込むことができます。


なぜ抄読会が続かないのか?
 抄読会は病院によって参加人数もまちまちだと思いますが、抄読会がなかなか続かない理由として「惰性化」、「義務化」が挙げられます。ここでの惰性化は、だらだら続けるという慣用的な意味合いで解釈して下さい。

 ―――惰性化は抄読会においてやむを得ない側面でもあります。同じような会を毎回開催するため緩急がつかず、どうしても面白みが減退してしまうのです。また、抄読会の担当は当番制になっている病院がほとんどでしょう。そのため、義務化されてしまった会は、さらに面白さを無くしてしまいます。これらのデメリットは相加相乗的に作用し、抄読会は過去の遺産に変貌を遂げます。残念無念。

 個人的な意見としては、抄読会を続かせるには惰性化をいかに減らすかがポイントだと思っています。医学論文を印刷して何となく読み合う抄読会は、存続はできるかもしれませんが惰性的な側面がどうしても強くなってしまいます。では、惰性化を防ぐにはどうすればいいか。簡単です、発表を面白くすればいいのです。これについては次回に述べます。



by otowelt | 2013-09-27 00:13 | その他

特発性肺線維症における線維化の弾性線維スコアが高いほど予後不良

e0156318_22462696.jpg 浜松医科大学からの報告です。“線維化(fibrosis)”という議論に一歩踏み込んだ論文です。

Enomoto N, et al.
Amount of elastic fibers predicts prognosis of idiopathic pulmonary fibrosis
Respiratory Medicine, published online 03 September 2013.


背景:
 弾性線維は線維組織を“かたく”するが、特発性肺線維症(IPF)の病態生理における役割は完全には調べられていない。この試験の目的は、IPFにおける弾性線維の臨床的重要性を同定することである。

方法:
 われわれは外科的肺生検によってIPFと診断された43人の患者を登録した。組織学的検体はElastica Van Gieson染色され、デジタル画像が得られた(全文読んでいませんがおそらく病理デジタル画像)。デジタル画像上、(弾性線維を含むピクセル数)/(線維組織が占める数)でスコアを算出した(弾性線維スコア[%])。弾性線維スコア、臨床所見、放射線学的所見、病理学的所見、予後の関連性が探索された。

結果:
 弾性線維スコアの中央値は10.9%(5.1–23.3%)だった。弾性線維スコアは、努力性肺活量(%予測値)と逆相関しており(r −0.451, p = 0.003)、12ヶ月の努力性肺活量の減少と相関していた(r −0.475, p = 0.033)。
 さらに、弾性線維スコアはHRCTにおける線維化のひろがりと関連していた。高い弾性線維スコアは、スコアが低い患者と比較して有意にアウトカムを悪くした(5年生存率:48.7% vs. 84.0%, p = 0.024)。弾性線維スコアは予後不良の独立予測因子であった(ハザード比1.21, p = 0.005)。

結論:
 線維組織における弾性線維の量は、IPF患者の予後指標である。


by otowelt | 2013-09-26 00:49 | びまん性肺疾患

手術室における呼吸音の聴診は電子聴診器が優れている

e0156318_7392420.jpg Littmann 3200については150匹のネコにおける有用性が報告されています。
Blass KA, et al. Clinical evaluation of the 3M Littmann Electronic Stethoscope Model 3200 in 150 cats. J Feline Med Surg. 2013 Apr 18. [Epub ahead of print]

 獣医学の分野でも電子聴診器は注目されており、アシカやオットセイの研究も報告されています。
Scharpegge J, et al. Thoracic auscultation in captive bottlenose dolphins (Tursiops truncatus), California sea lions (Zalophus californianus), and South African fur seals (Arctocephalus pusillus) with an electronic stethoscope. J Zoo Wildl Med. 2012 Jun;43(2):265-74.

 紹介するのは、手術室における電子聴診器の有用性についての報告です。全文読めなかったのですが、珍しい研究なので掲載してみました。VASではなく、客観的な音のデータが欲しかったところ。ちなみに私の聴診器はLittmannではありません。

Hoffmann C, et al.
Brief report: pulmonary auscultation in the operating room: a prospective randomized blinded trial comparing electronic and conventional stethoscopes.
Anesth Analg. 2013 Sep;117(3):646-8.


背景:
 われわれは、通常の聴診器(Holtex Ideal®およびLittmann Cardiology III®)と、電子聴診器(Littmann 3200®)の2つの聴診器を手術室において主観的に比較評価した。

方法:
 この試験はプロスペクティブランダム化二重盲検試験であり、人工呼吸器を装着している100人の患者に対して聴診器を使用したものである。いずれの聴診器においても、聴診する者は聴診の質を0~10のスケールで評価した。聴診器を使用された患者における聴診の質は、単変量解析で有意差のみられた因子においてランダム切片付き混合効果線形回帰によって比較された。

結果:
 100人の呼吸音聴診の評価がおこなわれた。聴診の質は電子聴診器で8.2 ± 1.6、Littmann Cardiology IIIで7.4 ± 1.8、Holtex Idealで4.6 ± 1.8だった。Holtex Idealと比較すると、聴診の質は他の聴診器で有意に良好であった(P < 0.0001)。Littmann Cardiology IIIと比較すると、Littmann 3200では聴診の質が高かった(β = 0.9 [95%信頼区間0.5-1.3])。

結論:
 手術室における電子聴診器は、通常の聴診器と比較して呼吸音聴診に優れている。ただし、高性能の通常の聴診器よりわずかに優れる程度の改善と考えてよい。


by otowelt | 2013-09-25 00:10 | その他

ウルティブロ®吸入用カプセルが製造販売承認を取得

本邦初のLABA/LAMA 配合剤である1日1回吸入の慢性閉塞性肺疾患治療薬ウルティブロ®吸入用カプセル(QVA149)が日本における製造販売承認を取得

 2013年9月20日、そーせいグループ株式会社(コード番号4565 東証マザーズ)がノバルティス社へ導出しているグリコピロニウム臭化物(シーブリ®吸入用カプセル50μg)を含有する1日1回吸入のウルティブロ®吸入用カプセル(グリコピロニウム50μg/インダカテロール110μg)について、COPDの気道閉塞性障害に基づく諸症状を緩解するための気管支拡張剤として、厚生労働省から承認を取得しました。これにより推定530万人の日本人のCOPD患者さんの治療選択肢に加わるとされています。

by otowelt | 2013-09-24 12:56 | 気管支喘息・COPD

受動喫煙は小児喘息に悪影響を与える:PI3K/Akt経路を介したHDAC2機能の抑制

e0156318_16462571.jpg 日本からの論文かと思ったら、イギリスからの報告でした。小児の気道における受動喫煙の有害性を報告したきわめて貴重な論文だと思います。
 PIK3/Akt経路を介したHDAC機能と小児喘息の関連性についての報告です。小児でBALを行うのは、なかなか難しいですね。

Kobayashi Y, et al.
Passive smoking impairs histone deacetylase-2 in children with severe asthma
Chest. 2013. doi:10.1378/chest.13-0835


背景:
 親の喫煙は、子供に対して気管支喘息の症状や治療反応性を悪化させることが知られているが、分子的メカニズムは不明である。近年、タバコの煙による酸化ストレスがPI3K/Akt経路を介してヒストン脱アセチル化酵素2(HDAC2)機能を抑制し、その結果ステロイド感受性を減弱させるのではないかと考えられている。この試験の目的は、受動喫煙に曝露された小児と非曝露の小児における肺胞マクロファージの分子学的異常を比較同定することである。

方法:
 19人のコントロール不良である気管支喘息の小児患者から得られた気管支肺胞洗浄液(BALF)のデータを解析した(10人が非受動喫煙小児、9人が受動喫煙小児)。BALF中のHDAC2発現/活性、Akt/HDAC2リン酸化レベル、肺胞マクロファージのステロイド反応性が調べられた。

結果:
 親の喫煙はHDACタンパク発現を54%減少させ、活性を47%下げた。加えて、Akt1のリン酸化レベルはHDAC2リン酸化レベルとよく相関しており、HDAC2活性と逆相関していた。さらに、受動喫煙は肺胞マクロファージにおけるTNF-α誘導CXCL8(インターロイキン8)に対するデキサメタゾンの効果を阻害した。受動喫煙に曝露された気管支喘息の小児では、BALF中の好中球数やCXCL8濃度は相対的に高く、ACT(喘息コントロールテスト)の点数は低かった。

結論:
 受動喫煙は、PIK3シグナル活性を介したHDAC2機能を抑制する。これによって重症喘息の小児におけるステロイド感受性が低下するものと考えられる。この機序は、重症喘息の小児に対する治療標的となりうる可能性を秘めており、気管支喘息を有する小児において喫煙のない環境が必要であることを強調するものである。


by otowelt | 2013-09-24 00:18 | 気管支喘息・COPD

社会経済的ステータスの低さ、男性、高齢者は結核の治療前死亡リスク上昇に関連

e0156318_149833.jpg 肺結核と診断したならば、治療を迅速に開始すべきと結論づけた台湾の研究です。日本の結核臨床では、寝たきり・高齢者・認知症・低栄養・誤嚥などをきたした患者さんの死亡リスクが高いと思います。

Yen, Y-F, et al.
Prognostic factors associated with mortality before and during anti-tuberculosis treatment.
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 17, Number 10, 1 October 2013 , pp. 1310-1316(7)


目的:
 台湾における培養陽性肺結核の成人患者における、抗結核治療開始前、治療早期/後期の死亡に関連する因子を同定する。

方法:
 2005年から2010年における台湾台北市における成人の肺結核患者をレトロスペクティブに同定した。

結果:
 4438人の患者(平均年齢64.6歳、70.6%が男性)のうち、76.8%が治療に成功し、5.4%が治療開始前に死亡し、9.0%が治療開始8週間以内(治療早期)に死亡、8.8%が治療開始8週間以降(治療後期)に死亡した。
 潜在的交絡因子で補正した場合、65歳以上の高齢者と男性は有意に死亡リスクを上昇させた。高齢者:治療前:オッズ比9.06・95%信頼区間5.96–13.79、治療早期:オッズ比6.29・95%信頼区間4.72–8.38、治療後期:オッズ比7.11・95%信頼区間5.26–9.62、男性:治療前:オッズ比1.53・95%信頼区間1.12–2.08、治療早期:オッズ比1.62・95%信頼区間1.27–2.07、治療後期:オッズ比2.12・95%信頼区間1.62–2.77。また、施設入所中の患者もリスクが高かった(オッズ比は治療前・治療早期・治療後期でそれぞれ2.02[95%信頼区間1.16–3.52]、3.32[95%信頼区間2.28–4.85]、3.69[95%信頼区間2.55–5.34])。
 また、高校卒業レベル以上の教育を受けている人は治療開始前の死亡リスクを著明に減少させた(高校卒業レベル以上:治療前:オッズ比0.27・95%信頼区間0.17–0.43、大学卒業レベル以上:治療前:オッズ比0.13・95%信頼区間0.07–0.23)。
 失業者は治療中の死亡リスクを上昇させた(治療前・治療早期・治療後期のオッズ比はそれぞれ4.61[95%信頼区間2.98–7.13]、5.32[95%信頼区間3.72–7.62]、4.10[95%信頼区間2.95–5.69])。
 胸部レントゲン上空洞がみられる場合や、喀痰抗酸菌塗抹の陽性は、治療開始前の死亡リスクを下げた(それぞれオッズ比0.19[95%信頼区間0.11–0.34]、0.26[95%信頼区間0.19–0.36])。

結論:
 成人の培養陽性肺結核患者の死亡率を下げるために、医師に結核に対する警鐘を鳴らすだけでなく、特に社会経済的ステータスの低い男性や高齢者に対して早期治療の導入をすみやかにおこなうべきである。


by otowelt | 2013-09-23 00:10 | 抗酸菌感染症

メタアナリシス:サイクロセリンの副作用発現率は9.1%で、半数以上が精神症状

e0156318_1258644.jpg 多剤耐性結核で使用することが多いセカンドラインの抗結核薬はツベルミン®、サイクロセリン®、アルミノニッパス®あたりだと思いますが、いずれも副作用はそれなりに多いです。
 サイクロセリンは副作用予防のためにピリドキシンの補充が必要です。

T. J. Hwang, et al.
Safety of cycloserine and terizidone for the treatment of drug-resistant tuberculosis: a meta-analysis
INT J TUBERC LUNG DIS 2013, 17(10):1257–1266


背景および方法:
 サイクロセリンは、WHOが推奨する多剤耐性結核のセカンドライン治療薬であるが、安全性についての懸念がある。テリジドンはサイクロセリンの構造アナログであり、忍容性がより高いかもしれない。われわれは、結核治療に対するサイクロセリンとテリジドンの安全性をアセスメントするため、システマティックビューとメタアナリシスをおこなった。

結果:
 2011年12月までの27研究2164人の患者をサイクロセリンのレビューに組み込んだ。何らかの薬物有害事象は9.1%(95%信頼区間6.4~11.7)の患者にみられ、5.7%(95%信頼区間3.7–7.6)が精神的な副作用、1.1%(95%信頼区間0.2–2.1)が中枢神経系の副作用だった。
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(文献より引用:精神的副作用)
e0156318_1251347.jpg
(文献より引用:中枢神経系副作用)

 サイクロセリンと比較可能な3試験において、テリジドンはサイクロセリンと有害事象の報告率に差がみられなかった。

結論:
 サイクロセリンは精神症状や中枢神経関連の副作用が他のセカンドライン抗結核薬よりも多い。忍容性は地域や試験期間や併用薬によって差はみられなかった。ガイドラインで推奨されているように、サイクロセリンは多剤耐性結核の治療において不可欠なものである。しかしながら、その副作用について患者や家族、医療従事者に正確な情報を提供することが肝要である。


by otowelt | 2013-09-21 00:30 | 抗酸菌感染症

呼吸器科医もトレーニングを積めばTBNA検体の迅速細胞診が可能に

e0156318_9511053.jpg 当院では、気管支鏡検体のROSEのときに、細胞診断士が観察する顕微鏡画面を液晶テレビで一緒に見ることができます。

Martina Bonifazi, et al.
The Role of the Pulmonologist in Rapid On-Site Cytological Evaluation of Transbronchial Needle Aspiration: A Prospective Study
Chest. 2013. doi:10.1378/chest.13-0756


背景:
 細胞診検体の迅速細胞診(rapid on-site evaluation: ROSE)は、肺や縦隔領域の穿刺吸引細胞診で補助的な診断方法である。ただ、時間や医療資源の理由から、ROSEは普及している検査法ではない。この研究の目的は、資格を有する細胞病理学者と比較して、細胞診の訓練を受けた呼吸器科医が経気管支針吸引(TBNA)の検体を評価することが、肺門や縦隔のリンパ節の診断をつけるのに妥当かどうか検証した。また、ROSEの診断の正確さを呼吸器科医と病理医の間で比較、評価した。

方法:
 一人の呼吸器科医と一人の細胞病理学者(後者をゴールドスタンダードとする)が、ROSEを行い、その細胞診検体を診断的カテゴリー(C1~C5)に分類した。臨床医同士の一致は、カッパ統計量で評価した。ROSEの正確さについては、最終的な細胞診断学的アセスメントに従うものとした。

結果:
 肺門の縦隔リンパ節が腫大した84人の患者に対して、計362のTBNAが施行された。その81%において、呼吸器科医と病理医の観察者間一致がみられた (κ 0.73, 95%信頼区間0.61-0.86, P < .001)。悪性疾患の場合には、さらに観察者間一致率が高かった (κ 0.81, 95%信頼区間0.70-0.90, P < .001)。ROSEの正確さについては、呼吸器科医(80%, 95%信頼区間77-90)と病理医(92%, 95%信頼区間85-94)の間に有意差はみられなかった。
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(文献より引用:赤=偽陽性、青=偽陰性、緑=真陽性、黄=非診断検体、軸=クラス1~5)

結論:
 この研究は、訓練を受けた呼吸器科医が、ROSEによる細胞診検体を適切に評価することができるという最初のエビデンスである。基本的な細胞病理の知識を呼吸器科医に訓練することで、(多忙な)診断業務の中で細胞病理学者に関与してもらうことが難しいという問題を取り除くことができる上、コストも減らすことができるだろう。


by otowelt | 2013-09-20 00:31 | 気管支鏡