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出版のお知らせ:呼吸器の薬の考え方、使い方

 個人的な書籍としては2冊目になる「呼吸器の薬の考え方、使い方」という医学書を中外医学社から出版します。同社から出版されている「考え方、使い方」シリーズの1つです。監修を引き受けてくださった院長の林清二先生をはじめ、ご協力いただいた全ての方に心より感謝申し上げます。目次は記事の最後に記載していますのでご参照下さい。
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発売日:2014年3月29日
単行本 : 372ページ
価格 : 4,800円 (税別)
出版社 : 中外医学社
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)
監修 : 林 清二 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター院長)

e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する (入荷がやや遅いかも)

e0156318_13141310.jpg中外医学社から購入する

 私が初期研修医だった頃、気管支喘息の発作で入院になった患者さんに「この薬の吸入の方法がわからないのよね、教えてちょうだい」と言われ、見たこともないUFOのような吸入器具を手渡されたことがありました。しかし、当時私の持っていたどの分厚い教科書にも吸入器具の使い方や注意点なんて書いていませんでした。

 当初、「薬」に関する本の執筆の話をいただいたとき、何を書いていいのか悩みました。自分が研修医だったときどういった本が欲しかったのか、そして何に悩んだか。その時に先ほどの吸入薬のエピソードを思い出して、医療従事者と患者さんとの“薬に関する感覚のギャップ”の橋渡しができる本を書きたいと思いました。そのため、呼吸器の薬剤にはどういったものがあるのかを知ってもらおうと考えました。去痰薬にはこういったものがある、鎮咳薬にはこういったものがある、吸入薬にはこういったものがある・・・などなど。そして、それぞれの薬剤の臨床試験や注意点などを記載するよう心がけました。おそらく、呼吸器疾患に特異的に使用する薬剤はほぼ網羅していると思います。また、私の外来の患者さんの意見を参考にして、医療従事者に知って欲しい実地医療の現状も散りばめました。疾患概念から治療選択まで話がおよぶと、量が膨大になるだけでなくこの本の目的を逸してしまうと思ったので、ある程度割愛している部分もあります。不完全燃焼に感じる部分もあるかもしれませんが、御笑覧いただきますようお願い申し上げます。
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 ―――今回の書籍には少し工夫があります。装丁(そうてい)のデザインを、中学・高校6年間をともに学んだクラスメイトであり、世界を舞台に活躍するテキスタイルデザイナー・アーティストの谷川幸さん(下写真:C.a.w Design Studio代表)にお願いしたのです。私が研修医の頃だったでしょうか、谷川さんは蜷川監督の映画「さくらん」の着物デザイナーとして一躍有名になり、クラスメイトとして嬉しく思ったことを覚えています。
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 本を開いてみると分かりますが、緑の平原の上に枝葉のように広がった気管支・肺に薬剤が果実のように寄り添うデザインになっています。旧知のよしみで私のお願いを引き受けてくれて、谷川さんには感謝の言葉もありません。“医学書の装丁”という分野に新たな風を吹き込んでくれた作品になりました。

 たくさんの人に支えられて刊行されたこの書籍が、多くの患者さんを幸せにできますように。

 2014年3月25日  近畿中央胸部疾患センター 倉原 優

※ブログはほんの少しだけお休みをいただきたいと思います。今後も当ブログをなにとぞよろしくお願い申し上げます。



「呼吸器の薬の考え方、使い方」 目次
I.対症療法〜呼吸器科医として止めたい症状〜
①止血剤〜痰に血が混じったら〜
 1.血痰と喀血の違い
 2.止血剤を使う呼吸器科医のスタンス
 3.止血剤(1)
・カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物(アドナⓇ など)
・アドレノクロムモノアミノグアニジンメシル酸塩水和物 (S・アドクノンⓇ など)
・トラネキサム酸(トランサミンⓇ など)
 4.止血剤(2)
・ヘモコアグラーゼ(レプチラーゼⓇ )

②去痰薬〜あまりにも多すぎる選択肢〜
 1.去痰薬の作用機序
 2.最低限覚えておきたい去痰薬
 3.気道分泌促進薬
・ブロムヘキシン塩酸塩(ビソルボンⓇ など)
 4.気道粘膜潤滑薬
・アンブロキソール塩酸塩(ムコソルバンⓇ など)
・アンブロキソール塩酸塩徐放剤(ムコソルバンLⓇ など)
 5.分泌細胞正常化薬,気道粘液修復薬
・カルボシステイン(ムコダインⓇ など)
・フドステイン(スペリアⓇ など)
 6.気道粘液溶解薬(1)
・アセチルシステイン(ムコフィリンⓇ)
・エチルシステイン塩酸塩(チスタニンⓇ)
・メチルシステイン塩酸塩(ペクタイトⓇ など)
 7.気道粘液溶解薬(2)
・プロナーゼ(エンピナース・PⓇ)
・リゾチーム塩酸塩(ノイチームⓇ など)
 8.界面活性剤
・チロキサポール(アレベールⓇ )
 9.植物成分
・セネガ(セネガⓇ など)
・車前草エキス末(フスタギンⓇ など)
・桜皮エキス(ブロチンⓇ)
・キョウニンエキス(キョウニンⓇ など)

③鎮咳薬〜「とにかく咳を止めてください!」と言われたら〜
 1.どの鎮咳薬が最も力価が高いのか
 2.中枢性麻薬性鎮咳薬
・コデインリン酸塩水和物(コデインリン酸塩Ⓡ)
・ジヒドロコデインリン酸塩(ジヒドロコデインリン酸塩Ⓡ)
・オキシメテバノール(メテバニールⓇ)
 3.中枢性非麻薬性鎮咳薬(1)
・デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(メジコンⓇ など)
 4.中枢性非麻薬性鎮咳薬(2)
・ジメモルファンリン酸塩(アストミンⓇ など)
 5.中枢性非麻薬性鎮咳薬(3)
・チペピジンヒベンズ酸塩(アスベリンⓇ など)
 6.中枢性非麻薬性鎮咳薬(4)
・エプラジノン塩酸塩(レスプレンⓇ)
 7.中枢性非麻薬性鎮咳薬(5)
・ペントキシベリンクエン酸塩(トクレスⓇ など)
 8.中枢性非麻薬性鎮咳薬(6)
・クロペラスチン(フスタゾールⓇ)
 9.中枢性非麻薬性鎮咳薬(7)
・ベンプロペリンリン酸塩(フラベリックⓇ)
 10.中枢性非麻薬性鎮咳薬(8)
・クロフェダノール塩酸塩(コルドリンⓇ)
 11.中枢性非麻薬性鎮咳薬(9)
・エフェドリン塩酸塩(塩酸エフェドリンⓇ など)
・メチルエフェドリン塩酸塩(メチエフⓇ など)
・メトキシフェナミン塩酸塩(メトキシフェナミン塩酸塩Ⓡ)
 12.中枢性非麻薬性鎮咳薬(10)
・ノスカピン(ノスカピンⓇ)
 13.漢方薬(1)
・麦門冬湯エキス
 14.漢方薬(2)
・滋陰降火湯

④鎮咳・去痰配合剤〜一石二鳥の配合剤〜
 1.エビデンスの少ない鎮咳・去痰配合剤
 2.鎮咳・去痰配合剤(1)
・桜皮エキス+コデインリン酸塩(濃厚ブロチンコデインⓇ など)
 3.鎮咳・去痰配合剤(2)
・ジヒドロコデインリン酸塩+エフェドリン塩酸塩+塩化アンモニウム(セキコデⓇ)
・ジヒドロコデインリン酸塩+メチルエフェドリン塩酸塩+クロルフェニラミンマレイン酸塩(フスコデⓇ など)
・ジプロフィリン+ジヒドロコデインリン酸塩+メチルエフェドリン塩酸塩+ジフェンヒドラミンサリチル酸塩+アセトアミノフェン+ブロムワレリル尿素(カフコデNⓇ)
 4.鎮咳・去痰配合剤(3)
・ジプロフィリン+メトキシフェナミン塩酸塩+ノスカピン+クロルフェニラミンマレイン酸塩(アストーマⓇ)
 5.鎮咳・去痰配合剤(4)
・キキョウ流エキス+車前草エキス+シャクヤクエキス(オピセゾールAⓇ)
・キキョウ流エキス+車前草エキス+シャクヤクエキス+カンゾウエキス+ジヒドロコデインリン酸塩(オピセゾールコデインⓇ)


II.禁煙補助薬〜薬でタバコはやめられるか?〜
 1.禁煙補助薬は適応が決まっているのか?
 2.禁煙補助薬の種類
 3.禁煙補助薬の費用〜タバコより安い?〜
 4.禁煙補助薬の効果〜どれが一番すぐれているのか〜
 5.禁煙補助薬の使い分けと注意点
 6.ニコチン置換療法(1)
・ニコチン(ニコチネルTTSⓇ など)
 7.ニコチン置換療法(2)
・ニコチンガム(ニコレットⓇ など)
 8.α4β2作動・拮抗薬
・バレニクリン酒石酸塩(チャンピックスⓇ)


III.閉塞性肺疾患治療薬〜コンプライアンスがキーポイント〜
はじめに─吸入薬だけは理解しよう

①吸入薬〜基本は「患者さんに合うか合わないか」〜
A.吸入薬の歴史
B.閉塞性肺疾患のガイドライン上の吸入薬の位置づけ
C.どんな合剤があるのか〜タービュヘイラー族,ディスカス族,ブリーズヘラー族〜
D.吸入ステロイド薬〜気管支喘息治療の主役〜
 1.吸入ステロイド薬の薬理
 2.吸入ステロイド薬の種類
 3.どの吸入ステロイド薬を使用すべきか〜専門医が重要視するポイント〜
 4.吸入ステロイド薬はどのくらいの量を吸入すべきか
 5.吸入ステロイド薬のステップダウンはいつ行うべきか
 6.吸入ステロイド薬(1)
・シクレソニド(オルベスコⓇ)
 7.吸入ステロイド薬(2)
・ブデソニド(パルミコートⓇ)
 8.吸入ステロイド薬(3)
・フルチカゾンプロピオン酸エステル(フルタイドⓇ)
 9.吸入ステロイド薬(4)
・ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(キュバールⓇ)
 10.吸入ステロイド薬(5)
・モメタゾンフランカルボン酸エステル(アズマネックスⓇ)
 11.吸入ステロイド薬(6)
・フルチカゾンプロピオン酸エステル/サルメテロールキシナホ酸塩(アドエアⓇ)
 12.吸入ステロイド薬(7)
・ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩(シムビコートⓇ)
 13.吸入ステロイド薬(8)
・フルチカゾンプロピオン酸エステル/ホルモテロールフマル酸塩(フルティフォームⓇ)
 14.吸入ステロイド薬(9)
・フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロールトリフェニル酢酸塩(レルベアⓇ)
E.吸入β2刺激薬〜長期管理もレスキューも〜
 1.β2刺激薬の薬理
 2.吸入β2刺激薬の種類
 3.どのLABAを使用すべきか
 4.どのSABAを使用すべきか
 5.長時間作用型β2刺激薬
・サルメテロールキシナホ酸塩(セレベントⓇ)
・インダカテロールマレイン酸塩(オンブレスⓇ)
・ホルモテロールフマル酸塩水和物(オーキシスⓇ)
 6.短時間作用型β2刺激薬
・サルブタモール硫酸塩(ベネトリンⓇ など)
・プロカテロール塩酸塩水和物(メプチンⓇ)
・硫酸イソプロテレノール+デキサメタゾン+臭化メチルアトロピン(ストメリンDⓇ)
・フェノテロール臭化水素酸塩(ベロテックⓇ)
F.吸入抗コリン薬〜簡単ではないCOPDの長期管理〜
 1.吸入抗コリン薬の薬理
 2.吸入抗コリン薬の種類
 3.どの吸入抗コリン薬を使用すべきか
 4.吸入抗コリン薬(1)
・イプラトロピウム臭化物水和物(アトロベントⓇ)
・オキシトロピウム臭化物(テルシガンⓇ)
・グリコピロニウム臭化物(シーブリⓇ)
・チオトロピウム臭化物水和物(スピリーバⓇ)
5.吸入抗コリン薬(2)
・グリコピロニウム臭化物/インダカテロールマレイン酸塩(ウルティブロⓇ)

②非吸入薬〜どこまでエビデンスがあるのか〜
 1.非吸入薬の歴史
 2.テオフィリン製剤(1)
・アミノフィリン(ネオフィリンⓇ など)
 3.テオフィリン製剤(2)
・テオフィリン(テオドールⓇ など)
 4.テオフィリン製剤(3)
・ジプロフィリン(ジプロフィリンⓇ など)
・プロキシフィリン(モノフィリンⓇ)
 5.テオフィリン薬配合剤
・ジプロフィリン+パパベリン+ジフェンヒドラミン塩酸塩+エフェドリン塩酸塩+ノスカピン(アストフィリンⓇ)
・プロキシフィリン+エフェドリン+フェノバルビタール(アストモリジンⓇ)
・ジプロフィリン+メチルエフェドリン(アニスーマⓇ)
 6.ロイコトリエン拮抗薬
・モンテルカスト(シングレアⓇ など)
・プランルカスト(オノンⓇ など)
・ザフィルルカスト(アコレートⓇ)
 7.非選択的β刺激薬
・エフェドリン塩酸塩(ヱフェドリン「ナガヰ」Ⓡ)
・メチルエフェドリン塩酸塩(メチエフⓇ)
・メトキシフェナミン塩酸塩(メトキシフェナミン塩酸塩Ⓡ)
 8.長時間作用型β2刺激薬
・ツロブテロール(ホクナリンⓇ など)
・クレンブテロール塩酸塩(スピロペントⓇ など)
・ホルモテロールフマル酸塩水和物(アトックⓇ)
 9.短時間作用型β2刺激薬
・フェノテロール臭化水素酸塩(ベロテックⓇ など)
・テルブタリン硫酸塩(ブリカニールⓇ など)
・プロカテロール塩酸塩水和物(メプチンⓇ など)
・サルブタモール硫酸塩(ベネトリンⓇ など)
・トリメトキノール塩酸塩(イノリンⓇ など)
 10.モノクローナル抗体
・オマリズマブ(ゾレアⓇ)


IV.肺動脈性肺高血圧症治療薬〜使いこなしたい循環器系薬剤〜
 1.見過ごされがちな肺高血圧症
 2.最低限知っておきたい肺高血圧症治療薬
 3.どの薬剤を使うべきか
 4.単剤治療か併用治療か
 5.6分間歩行試験は臨床試験のエンドポイントとして妥当か
 6.治療目標をどこに設定するか
 7.エンドセリン受容体拮抗薬
・ボセンタン水和物(トラクリアⓇ)
・アンブリセンタン(ヴォリブリスⓇ)
 8.ホスホジエステラーゼ5阻害薬
・シルデナフィルクエン酸塩(レバチオⓇ)
・タダラフィル(アドシルカⓇ)
 9.プロスタグランジン製剤
・ベラプロストナトリウム(ドルナーⓇ など)
・ベラプロストナトリウム徐放性製剤(ベラサスLAⓇ など)
・エポプロステノールナトリウム(フローランⓇ)


V.抗結核薬〜アンコモンではない結核に備えよう〜
 1.「知らない」では済まされない抗結核薬
 2.抗結核薬の種類
 3.抗結核薬の標準治療〜にーえいちあーるいーぜっと たす よんえいちあーる〜
 4.抗結核薬の治療原理〜会社員にたとえてみると〜
 5.抗結核薬の使用量〜ごー,じゅー,じゅーご,にじゅーご〜
 6.なぜ結核治療は今のレジメンになったのか
 7.抗結核薬の副作用〜抗結核薬は副作用だらけ?〜
 8.抗結核薬(1)
・イソニアジド(イスコチンⓇ など)
・イソニアジドメタンスルホン酸ナトリウム(ネオイスコチンⓇ)
◆イソニアジドによる神経障害
 9.抗結核薬(2)
・リファンピシン(リファンピシンⓇ ほか)
・リファブチン(ミコブティンⓇ)
◆イソニアジド・リファンピシンの減感作療法
 10.抗結核薬(3)
・エタンブトール塩酸塩(エサンブトールⓇ など)
◆エタンブトール視神経症
 11.抗結核薬(4)
・ピラジナミド(ピラマイドⓇ)
 12.抗結核薬(5)
・硫酸ストレプトマイシン(硫酸ストレプトマイシンⓇ)
・硫酸カナマイシン(カナマイシンⓇ)
・エンビオマイシン硫酸塩(ツベラクチンⓇ)
 13.抗結核薬(6)
・エチオナミド(ツベルミンⓇ)
 14.抗結核薬(7)
・サイクロセリン(サイクロセリンⓇ)
 15.抗結核薬(8)
・パラアミノサリチル酸カルシウム水和物(ニッパスカルシウムⓇ)
・アルミノパラアミノサリチル酸カルシウム水和物(アルミノニッパスカルシウムⓇ)


VI.抗線維化薬〜肺の線維化を食い止めたい〜
 1.特発性肺線維症は治らない?
 2.抗線維化薬(1)
・ピルフェニドン(ピレスパⓇ)
 3.抗線維化薬(2)
・ニンテダニブ


VII.分子標的薬〜新時代の肺がん治療〜
 1.分子標的薬は夢の薬か
 2.EGFR阻害薬の作用部位
 3.分子標的薬の使い分け〜再優先すべきは患者さんの生活〜
 4.分子標的薬(1)
・ゲフィチニブ(イレッサⓇ)
 5.分子標的薬(2)
・エルロチニブ(タルセバⓇ)
 6.EGFR阻害薬による皮膚障害の治療
 7.分子標的薬(3)
・ベバシズマブ(アバスチンⓇ)
 8.維持療法について
 9.高額療養費制度について知っていますか?
 10.分子標的薬(4)
・クリゾチニブ(ザーコリⓇ)


VIII.含嗽薬・トローチ〜浅いようで深い,うがいの世界〜
 1.「うがい」とは
 2.うがいにエビデンスはあるのか
 3.含嗽薬(1)
・ポビドンヨード(イソジンⓇ ガーグルなど)
 4.含嗽薬(2)
・ベンゼトニウム塩化物(ネオステリンⓇ グリーン)
 5.含嗽薬(3)
・フラジオマイシン硫酸塩(デンターグルⓇ)
 6.トローチ(1)
・臭化ドミフェン(オラドールⓇ など)
 7.トローチ(2)
・デカリニウム塩化物(SPトローチⓇ など)
 8.トローチ(3)
・セチルピリジニウム塩化物水和物(スプロールⓇ トローチ)


IX.その他〜脇役だけど大事な薬〜
 1.呼吸器科的に押さえておきたいその他の薬
 2.シロリムス,ラパマイシン(ラパミューンⓇ)
 3.吸入顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
 4.フルマゼニル(アネキセートⓇ)
 5.ナロキソン(ナロキソンⓇ)
 6.ドキサプラム塩酸塩水和物(ドプラムⓇ)
 7.OK-432(ピシバニールⓇ)
 8.タルク(ユニタルクⓇ 胸膜腔内注入用懸濁剤4 g)
◆胸膜癒着術の実際の手順
◆胸膜癒着術の合併症


コラム《本当にあった医学論文》
 1.排便喘息
 2.しゃっくりで死ぬ!?
 3.くしゃみで発症した両側気胸
 4.鼻毛が長いと気管支喘息になりにくい?
 5.まさかの気道異物
 6.大声で縦隔気腫を起こした上官
 7.気管支喘息に対する洞窟療法
 8.唐辛子製造業では咳嗽が多くなる
 9.恐るべき血痰の原因
10.花火による急性好酸球性肺炎
11.弾丸肺塞栓
12.吹奏楽器奏者の呼吸機能は優れているのか?
13.線香は肺によくない?


《一口メモ》
・見逃されやすい血痰・喀血の原因
・喀血と吐血を鑑別できるか?
・痰壺(たんつぼ)が置かれた理由
・痰は「止める」? それとも「切る」?
・wheeze? wheezes? wheezing?
・bronchorrheaとは
・去痰薬の裏ワザ
・鎮咳薬としての強オピオイドはどうか
・「謦咳に接する」という慣用句
・ハチミツが咳嗽に効く
・リドカインネブライザー
・桜の木の皮からつくる薬
・ニコチンには発がん性はない
・電子タバコで禁煙できる?
・運転に従事する患者さんになぜバレニクリンを使用すべきではないのか
・フロンガスの行く末
・喘鳴
・抗コリン薬も心臓によくない?
・テオフィリン中毒
・コーヒーを飲み過ぎるとテオフィリン中毒になる!?
・ボティビルディングとクレンブトール
・「ヒト化する」とは?
・エンドセリンの発見者
・バイアグラの臨床試験
・稀だが知っておきたい肺静脈閉塞症(PVOD)
・抗結核薬の計算方法
・イソニアジドと魚と乳製品
・世界最古の結核
・ピラジナミドで尿酸値が上がったらどうするか
・妊婦・授乳婦の結核
・Lady Windermere’s syndrome(ウィンダミア夫人症候群)
・特発性肺線維症(IPF)に対するボセンタンの効果
・ピルフェニドンの光線過敏症対策にはどの日焼け止めを使うか
・アメリカではEGFR遺伝子変異を検査しない?
・ゲフィチニブとエルロチニブの違いとは
・アファチニブはどんな薬?
・衣類に付着したイソジンガーグルの色を消す方法
・PL顆粒の「PL」って何?
・肺胞蛋白症(PAP)に対してどのくらいの量で全肺洗浄するのか?
・アヘン,モルヒネ,ヘロインの違い
・タルクとベビーパウダー

by otowelt | 2014-03-25 22:07 | その他

切除可能非小細胞肺癌に術前化学療法を行うべきか否か

 先日のLancetで報告された非小細胞肺癌に対する術前化学療法の論文(切除可能非小細胞肺癌において術前化学療法は生存期間を延長)について、CareNetに小林英夫先生のコメントが掲載されていました。一部抜粋します。実臨床でプラクティスに変化を与える内容かとも思いましたが、以下のlimitationsについては確かに検討の余地がありそうです。

非小細胞肺がんの予後は術前化学療法により改善するか(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(187)より-
1.「一言で術前化学療法と一括しているが、術後化学療法導入例や放射線療法実施例も混在しており、純粋に術前化学療法単独の比較解析ではない。」

2.「背景因子が、臨床病期はIBが最多、次いでIIB、IIIAであること、扁平上皮がんが最多で腺がんの2倍弱、男性が8割、60歳以下が4割、などは日本の現状と大きく異なることに留意する必要がある。本邦での切除対象非小細胞肺がんは臨床病期IA、IBが主で、腺がんが多く、男性が6割、切除症例の8割弱は60歳以上、と背景因子が異なる。」

3.「現在のT3には胸壁、横隔膜、心嚢などへの浸潤と、腫瘍先進部、無気肺などいくつかのカテゴリーが混在し、予後の不均一性が問題。」

 臨床病期を層別化して臨床試験を行わなければ術前化学療法の意義が明確にできないという意見は、同感です。


by otowelt | 2014-03-24 00:12 | 肺癌・その他腫瘍

終末期に抗癌剤を投与するメリットはあるのか?

e0156318_14392693.jpg とかく固形癌に関しては、医療従事者が感じている治療効果と患者さんが期待する治療効果にかなりのギャップがあるように感じています。当初、患者さんが期待しているのは癌の「治癒」であり、医療従事者がとなりで現実的な話を交えながら診ていく必要があります。いつまでも「抗癌剤」という言葉によって患者さんに漫然たる希望を与え続けることに対しては、私は疑問を感じます。

Wright AA, et al.
Associations between palliative chemotherapy and adult cancer patients' end of life care and place of death: prospective cohort study.
BMJ. 2014 Mar 4;348:g1219. doi: 10.1136/bmj.g1219.


目的:
 癌患者の終末期に化学療法を行うことで患者が後期に受ける医療や死を迎える場所に影響を与えるかどうか調べる。

デザイン:
 アメリカの8施設で進行癌患者を対象に実施された前向き縦断研究の二次解析。

方法:
 1つ以上の化学療法レジメンに抵抗性であった転移性の癌で、登録時に主治医が余命6ヶ月以下と判断した成人患者386人を対象とした。プライマリアウトアムは、死亡前1週間に集中治療(心肺蘇生または人工呼吸管理、あるいはその両方)を必要としたかどうか、死を迎えた場所(ICU、病院、介護施設、ホスピス、自宅など)。セカンダリアウトカムは生存期間、ホスピス利用の遅れ(ホスピス利用期間が死亡前1週間以内であったケース)、希望した場所で死亡したかどうか、とした。

結果:
 本研究に登録してから死亡するまでの期間の中央値は4.0ヶ月であり、登録時に化学療法を受けていたのは全体の56.0%(386人中216人)であった。化学療法群では非化学療法群と比べ若年者、既婚者、保険加入者、高学歴の患者が多く、PSやQOL、身体機能、精神的健康度が高かった。しかし、化学療法群では非化学療法群と比べ患者自身が末期癌であるとの認識が不足しており、死をどのように迎えるか主治医と相談したことのある患者は少なかった。
 傾向スコアで調整した場合、化学療法を行うことは死亡前1週間のCPR・人工呼吸管理・あるいはその両方(14% vs. 2%、調整後リスク差10.5%、95%信頼区間5.0~15.5%)および経管栄養の施行(11% vs. 5%、調整後リスク差7.1%、95%信頼区間1.7~12.5%)に有意に関連していた。さらに、ホスピス利用の遅延(54% vs. 37%、調整後リスク差13.6%、95%信頼区間3.6~23.6%)にも有意に関連していた。調整後のCox比例ハザード解析によれば、生存期間は両群間で同等だった(ハザード比1.11、95%信頼区間0.90~1.38)。
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(文献より引用)

 化学療法群は非化学療法群と比較してICUで死亡する頻度が高く(11% vs. 2%、調整後リスク差6.1%、95%信頼区間1.1~11.1%)、自宅で死亡する頻度が低かった(47% vs. 66%、調整後リスク差-10.8%、95%信頼区間-1.0~-20.6%)。化学療法群では非化学療法群と比較して希望場所で死亡する頻度が少なかった(65% vs. 80%、調整後リスク差-9.4%、95%信頼区間-0.8~-18.1%)。

結論:
 終末期癌患者における化学療法はCPRや人工呼吸管理の施行頻度を上昇させ、ICUで死亡することが多くなる。


by otowelt | 2014-03-23 00:16 | 肺癌・その他腫瘍

CHEST World Congress 2014開催

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 3月21日から24日まで間、スペインのマドリードにおいて2014年CHEST世界会議(CHEST World Congress)が開催されています。

 EBUS-TBNA訓練用のシミュレーターである「BRONCH Express」が紹介されます。使い勝手なども海外の医師のブログやツイッターから情報を得ようと思います。子育てや家事があると海外にはなかなか行けないので、できるだけオンラインで海外の学会の情報を得ています。

 BRONCH Expressについては、以下のサイトを参照にどうぞ。なかなかよさそうですね。

CHEST and Sibionix co-develop a portable training solution for EBUS-TBNA



 話は変わりますが、感染症科医にとってのバイブルである、マンデルの第8版が発売されます。


by otowelt | 2014-03-22 00:49 | 呼吸器その他

閉塞性睡眠時無呼吸に対するゾニサミドの効果

e0156318_22151549.jpg ゾニサミドといえばエクセグラン®ですが、最近トレリーフ®というParkinson病治療薬が登場していますね。まったく同じ商品名ですが、東レの高分子化学と樹脂分野における豊富な技術蓄積をもとに開発された感光性樹脂凸版材もトレリーフ®という名前です。

Davoud Eskandari, et al.
Zonisamide reduces obstructive sleep apnoea: a randomised placebo-controlled study
ERJ March 13, 2014 erj01584-2013


背景:
 炭酸脱水酵素阻害によって睡眠障害における無呼吸もイベントを減らすことができる。ゾニサミドは炭酸脱水素酵素を阻害し、肥満患者の体重減少をもたらすとされている(JAMA 2003; 289: 1820–1825.、Arch Intern Med 2012; 172: 1557–1564.)。この研究は、これらのプロパティの影響によって閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を改善させることができるかどうか調べたものである。CPAP療法は通常ケアの比較対照として用いられた。

方法:
 BMIが27~35kg/m2の中等症以上のOSA患者47人をランダムにゾニサミド、プラセボ、CPAP療法に4週間割り付けた。その後20週のopen extension phaseにおいてCPAP療法とゾニサミドを比較した(24週目比較)。ポリソムノグラフィ、生化学検査、症状が評価された。

結果:
 47人のうち42人が男性で、平均年齢は52歳だった。ゾニサミド内服患者では、4人が200mg/日までしか到達できなかったが、それ以外の全患者は300mg/日まで到達できた。
 4週目の時点で、プラセボと比較してゾニサミドはAHIを平均±標準偏差 33±39%減少させ、酸素飽和度低下を28±31%抑制した(p = 0.02、0.014)。
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(文献より引用)

 24週時点ではゾニサミドよりもCPAP療法の方がAHI改善効果は高かった。ゾニサミドと比較して、CPAP療法はREM睡眠を増加させ、エプワース睡眠スケールをより効果的に改善させた。
 プラセボと比較して体重はゾニサミド投与後に減少し、CPAP療法後に増加した(-2.7±3.0 kg vs 2.3±2.0 kg, p<0.001)。
 ゾニサミドは4週目、24週目のHCO3-濃度を減少させた。
 副作用はゾニサミド群で多くみられた。

結論:
 ゾニサミドは体重と独立して炭酸脱水素酵素阻害によってOSAを改善させた。


by otowelt | 2014-03-21 00:43 | 呼吸器その他

COPDに対するグリコピロニウム/インダカテロール(ウルティブロ®)は吸入抗コリン薬単独治療よりも有効

e0156318_2244060.jpg COPDに対するウルティブロのシステマティックレビューです。「ウルティブロ=シーブリ+オンブレス」です。ブリーズヘラーで吸入する吸入薬は「ブロ」「ブリ」「ブレ」と名が付きます。

Gustavo J. Rodrigo, et al.
EFFICACY AND SAFETY OF A FIXED-DOSE COMBINATION OF INDACATEROL AND GLYCOPYRRONIUM (QVA149) FOR THE TREATMENT OF COPD: A SYSTEMATIC REVIEW
Chest. 2014. doi:10.1378/chest.13-2807


背景:
 COPDガイドラインでは、もし単剤治療で効果がなかった場合、吸入長時間作用型β2刺激薬および長時間作用型抗コリン薬が推奨されている。このシステマティックレビューでは、単剤治療(グリコピロニウム、インダカテロール)と比較したQVA149の固定用量吸入、および中等症以上のCOPDに対するチオトロピウムの治療の効果と安全性を検証する。

方法:
 ランダム化プラセボ対照比較試験あるいはクロスオーバー試験(3~64週)のシステマティックレビューをおこなった。プライマリアウトカムは、トラフ1秒量、重度の有害事象、重篤な心血管イベントとした。

結果:
 5つの研究(4842人)が登録された。チオトロピムと比較して、QVA149は有意にトラフ1秒量を増加させ(70mL、p<0.0001)、またレスキュー薬剤使用を減少させた(-0.63吸入/日, p<0.0001)。またQVA149はTDI(Transition Dyspnea Index)における臨床的に意義のある最小変化量(MCID)の尤度を19%増加させた(Number needed to treat for benefit [NNTB]= 11)。SGRQスコアでは16%増加(NNTB = 11)。
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(文献より引用)

 同様にQVA149はグリコピロニウムと比較して有意にトラフ1秒量を改善(70 mL, p<0.0001)、レスキュー薬剤使用も減少させた(-0.59吸入/日, p< 0.0001)。また、SGRQにおけるMCIDを達成した患者も有意に増加した(NNTB = 12)。
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(文献より引用)

 インダカテロールとの比較解析は実施できず。

結論:
 中等症以上のCOPD患者に対する1日1回の吸入QVA149はグリコピロニウムやチオトロピウムと比較して高い効果を持つ。


by otowelt | 2014-03-20 00:16 | 気管支喘息・COPD

呼吸器科医と非呼吸器科医における胸腔関連手技による合併症の頻度に差はない

e0156318_13244530.jpg 個人的には、COPDの患者さんに対する胸腔穿刺にはかなり注意しています。

Kay Choong See, et al.
Bedside pleural procedures by pulmonologists and non-pulmonologists: a 3-year safety audit
Respirology (2014) doi: 10.1111/resp.12244


背景:
 胸腔ドレナージや胸腔穿刺といった胸腔関連手技は広く行われており、気胸や出血といった体腔臓器を傷害する潜在的リスクを孕んでいる。超音波ガイド下でこうした手技を非呼吸器科医が行った場合の合併症の頻度についてはあまり報告がない。われわれの大学病院における、ベッドサイドでの胸腔関連手技について調査を行い、呼吸器科医と非呼吸器科医での合併症の頻度を調べた。

方法:
 標準的トレーニング、胸腔関連手技の安全チェックリスト、超音波ガイドを用いた複合的な安全性アプローチが1000床未満のシンガポールの施設で実施された。およそ3.5年におよぶプロスペクティブな調査により、ベッドサイドで行われた胸腔関連手技を抽出し、放射線学的な部位も調べた。手術室で行われた手技については除外した。

結果:
 2009年6月から2012年12月までの間、443人の患者に529の胸腔関連手技(295が呼吸器科医、234人が非呼吸器科医)が行われた。救急部で行われた100の手技を除く429の手技のうち、13(3.0%)のみが勤務時間外に行われた。呼吸器科医によって行われた手技では、非呼吸器科医よりも基礎疾患に癌を有する患者が多かった。一方で非呼吸器科医によって行われた手技では、人工呼吸器を装着している患者が多かった。また、胸水症例は呼吸器科医によって行われた手技、気胸症例は非呼吸器科医によって行われた手技の患者に多くみられた。
 そのうち、16の手技(3.0%)で合併症がみられた。この合併症についてはすべて異なる患者に起こったものである。合併症の内訳は、5人が医原性気胸、4人がドライタップ(穿刺困難)、4人が胸腔ドレーンの位置異常、2人が胸壁出血、1人が医原性血胸だった。合併症の頻度については、呼吸器科医と非呼吸器科医に差はみられなかった。
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(文献より引用:■=全合併症、=気胸)

 なお、COPDのある患者では、合併症のリスクが7倍近く上昇した。
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(文献より引用)

結論:
 この研究によれば、呼吸器科医と非呼吸器科医の間に胸腔関連手技の合併症の頻度に差はみれらなかった。これは院内で採用している複合的な安全性アプローチによるものかもしれない。しかしそうであったとしても、COPD患者に対して手技を行う場合には細心の注意が必要であろう。


by otowelt | 2014-03-19 00:57 | 呼吸器その他

アミオダロンによる肺傷害は生存した患者においても遷延する

e0156318_1740161.jpg 呼吸器内科医としてはアミオダロンによる肺傷害はかなり難渋することが多いように感じます。ブレオマイシンも然りです。

J. Mankikian, et al.
Initial characteristics and outcome of hospitalized patients with amiodarone pulmonary toxicity
Respiratory Medicine, in press.


背景:
 アミオダロン誘発性肺傷害(Amiodarone-induced pulmonary toxicity :APT)は、重篤な副作用であり致命的になりうる。この研究の目的は死亡率に関連する因子を同定し、APTのアウトカムとその後を記すことである。

方法:
 46人のAPTの患者が登録され、90日目の生存によって2群に分け、臨床所見、機能的評価、細菌学的評価、放射線学的所見を比較した。

結果:
 APTの死亡率は90日時点において37%であった。死亡率は、発症症状の進行速度とHRCT alveolar scoreに相関していた。アンジオテンシン系拮抗薬による治療は生存群においてより多く処方されていた(p=0.042, ハザード比0.34、95%信頼区間0.12-0.96)。生存した患者において、初期6か月の間徐々にHRCT fibrosis scoreが悪化しているにもかかわらず、呼吸困難感、肺活量、HRCT alveolar scoreは有意に改善した。試験期間終了時、すべての生存患者は機能的および放射線学的後遺症を有していた。

結論:
 APTの重症度は、肺傷害の進行速度とその拡がりに相関している。初期エピソードの後、生存した患者は徐々に回復するが遷延性の後遺症を残した。


by otowelt | 2014-03-18 00:25 | びまん性肺疾患

Elbow sign:ベッドで肘鉄されたら閉塞性睡眠時無呼吸かもしれない

e0156318_13554379.jpg 動詞の「Elbow」を肘鉄と訳してよいのか迷いましたが、とりあえずいたって真面目な報告のようです。

Mark E. Fenton, et al.
The Utility of the Elbow Sign in the Diagnosis of OSA
CHEST 2014; 145(3):518–524


背景:
 複数の質問を行うことで閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の診断を予測することができるとされている。ただ、スコアリングが複雑であることが難点である。われわれは、簡単な2パートの質問がOSAの診断に有用ではないかと考え、これを検証した。

方法:
 OSAの診断目的にポリソムノグラフィを施行する前に、以下の質問をした。
(1)あなたのいびきのせいでパートナーから突っつかれたり肘鉄をくらったことがありますか?
(2)あなたの呼吸が止まっていたためにパートナーから突っつかれたり肘鉄をくらったことがありますか?

 年齢、性別、BMI、エプワース睡眠スケール(ESS)のデータが収集された。

結果:
 解析を受けた患者のうち、73.4%が男性であった。平均年齢は50.8歳で、平均BMIは33.9 kg/m2だった。
 ポリソムノグラフィを受けた128人の患者のうち、いびきのせいで起こされたことがある(yes)と答えた患者は、noと答えた患者と比較してAHIが5以上であるオッズ比が3.9倍であった。また、無呼吸発作のせいで起こされたことがある(yes)と答えた患者は、noと答えた患者と比較してAHIが5以上であるオッズ比が5.8倍であった。この関連性は性別、BMI、ESS、他の質問に対するyesの回答の有無にって差はみられなかった。OSAがある50歳を超える患者は、肘鉄を受けたという報告は少なかった。
 いびきのために起こされる場合のOSAの診断の感度と特異度は、84%、42%であった(陽性尤度比1.45、陰性尤度比0.37)。また、無呼吸発作のために起こされる場合のOSAの診断の感度と特異度は、65%、76%であり、陽性適中率は90%だった(陽性尤度比2.69、陰性尤度比0.46)。
 BMIが31を超える男性では肘鉄を受けることはOSAの診断を特異度96.6%で予測した。
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(文献より引用)

結論:
 睡眠障害クリニックに紹介される患者のうち、無呼吸発作のために肘鉄を受けたり突っつかれたりする場合、OSAの存在を有意に予測する。


by otowelt | 2014-03-17 07:17 | 呼吸器その他

医学論文の捏造

※改訂をくわえるほどの記事でもないのですが、小保方晴子さんの騒動でいろいろ考えさせられたため、追記します(2014年3月16日)。

●はじめに
 小保方晴子さんがファーストオーサーとなっているSTAP細胞に関する医学論文が、過去の論文(下書きという主張だそうです)と類似している点、またその過去の論文が他のリソースから転用されているのではないかという指摘を受けて、Natureに掲載された当該論文が取り下げられる方針になりました。

 医師は科学者でもあるため、医学論文を書くことが多いです。呼吸器内科医は専門医試験のために論文が必要ですので、私は医師になって5年目でようやく症例報告を書きました。資格のために書き始めた論文ですが、こんなちっぽけな報告でも誰かが医学的利益を享受できるなら、と嬉しい気持ちになったのを覚えています。

 医師の間で、”論文”という言葉は”原著論文”を指すことが多いのですが、症例報告も立派な論文には違いありません。ただ、症例報告と第3相ランダム化比較試験の報告では天と地ほどの差があります。なぜなら、特に大きな組織に属している医師であるほど、その成果によって自身の将来や外部からの研究費が決まることがあるからです。症例報告しか論文がない医師は、内科系の教授になることはおそらく異例ですし、しかるべき研究費も貰えない可能性があります。そのため、医学論文には捏造が起こりうるのです。


●近年の論文捏造
 先に述べた小保方晴子さんの論文は捏造と決まったわけではなく、あくまで“取り下げ”である点に注意したいと思います。STAP細胞の存在については研究グループは否定しておりません。
 
 2012年夏に東邦大学医学部の元准教授が史上最多の172本の論文を捏造したという話題は非常に印象的であり、医師の多くが知っているでしょう。この件に関わった大多数の論文では研究対象が1例も存在せず、すべて小説を書くようにして捏造されたものだという調査結果が報告されています。これは、査読する過程にももちろん問題があるのですが、医学論文そのものが性善説で成り立っていることが問題なのです。共著者にはその試験に寄与した人間が並ぶのですが、全員がデータ解析をおこなうわけではありません。そのため、たった一人の人間の一存でデータの数値が書き換えられれば、安易に論文の捏造ができ、それが世界に発表される可能性があるのです。東邦大学の件については、Carlisle医師がその内容を糾弾する解析をおこなっています。試験すべての解析で、不自然な偏りが指摘されました。
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Carlisle JB, The analysis of 169 randomised controlled trials to test data integrity. Anaesthesia. 2012, Epub 8 Mar 2012

 東京大学でも、医学論文捏造問題のワーキンググループに入っていた医師が主導した論文の捏造が2012年に大きく報道されました。ウェスタンブロットのバンドが同じ形をしていたことから捏造が明るみに出ました。当該医師が携わった論文には、NatureやCellといった有名な医学雑誌が多数含まれていました。
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 論文には大きく撤回(retracted)の赤字が印字されます。
The chromatin-remodeling complex WINAC targets a nuclear receptor to promoters and is impaired in Williams syndrome. Cell. 2003 Jun 27;113(7):905-17.


●グレーゾーン
 医学論文は科学雑誌であると同時に娯楽雑誌でもあります。読者が惹きつけられる論文でなければ、採択されません。全世界の医学雑誌がそういったスタンスから変えてくれれば問題ないのですが、インパクトファクターという雑誌評価に縛られた編集者は、ネガティブスタディ(エンドポイントを達成できなかった試験)よりもポジティブスタディを選ばざるを得ません。そのため世界中の研究者たちはポジティブスタディを発表しようと躍起になり、捏造が起こってしまうのです。この悪しき螺旋を断ち切ることは困難です。これを防ぐために倫理教育を徹底することや、査読システムを改善すること、罰則を設けるといった処置が考案されていますが、医学論文の捏造はおそらく今後も続くでしょう。

 論文を書く際に、恣意的であることは往々にしてあります。たとえば患者が申告する症状やQOLの評価項目を、何とか良い方向に持っていくため、話術で「少しはよくなった」と言わせること。これは厳密には捏造とは違い、非常に恣意的である行為と言えます。また、論文中で強調したいポイントを大々的に書き、あまり突っ込まれたくない部分はあまり書かないという手法も恣意的といえば恣意的です。どこからが科学者として不正にあたるのかは難しいところで、こういった恣意的であるグレーゾーンは広く存在します。


●論文捏造に防止策はあるのか?
 少しでも医学論文の捏造を減らしたいならば、捏造をしてまで医学論文を書かなければならないという環境をなくすことだと思います。それには人の出処進退や研究費を決定する評価者がアセスメントクライテリアを変えていくことが肝要になります。あるいは現在おこなわれているように罰則規定をより重いものに変える方法もありますが、前述のようにどこからが不正でどこからが正当なのかグレーゾーンの事例も多く、限られた人件費で綿密な調査を行うことは非常に難しいと思います。他にも、Nature Medicineから面白いアイディアも提唱されています。研究者の人生の中で発表できる論文を合計20に制限してしまえば、必然的に論文の質は上がるだろうという考え方です。研究者から反発の出そうな方法ですが、目の付け所は非常に良いと思います。
What would you do if you could publish only 20 papers throughout your career? Nature Medicine 13;1121:2007.

 私も昨年CHESTに投稿した論文がレビュアーに回ることなく数日であっさりリジェクトされましたが、もっとインパクトのある結果ならよかったのかも・・・と頭をよぎることもありました。この成果が自分の職業的立ち位置を大きく左右するようなことであれば、私ももしかするとグレーゾーンに足を突っ込む可能性があったのではないかと思わずにいられません。


 世紀の大発見をした科学者であったヘンドリック・シェーンの論文捏造について詳しく書いた本があります。参考にどうぞ。


by otowelt | 2014-03-16 10:47 | その他