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何となく研修医に伝えたいこと その3:患者さんの社会背景や退院後の生活を常に考えるべし

e0156318_100789.jpg 研修医の方々は、ローテートしている診療科でガイドラインや治療法のコツのようなものが分かってくると、自信に満ち溢れる顔をしていることがあります。病気と戦う“武器”を手に入れた戦士のような顔です。指導医としても、これは非常に嬉しいことでもあります。

 しかし疾患の診断や治療の側面ばかり見てしまう研修医は多く、患者さんの社会背景や退院後の生活について配慮できる人は、実はそこまで多くありません。これは医療従事者としての経験不足に起因します。

 これはどういうことかと言いますと、たとえば例を挙げてみましょう。

 ―――84歳の認知症のある男性が、右肺炎で入院してきました。肺炎の部位やエピソードから誤嚥性肺炎を第一に疑いました。嚥下造影検査でも軽度の誤嚥が疑われました。抗菌薬はアンピシリン/スルバクタムを選択し、誤嚥に対しては食事形態を工夫する栄養指導が必要と考えました。また入院直前はほとんど全介助に近い状態であったため、入院中は積極的にリハビリテーションを行いました。入院して1週間程度の治療が過ぎた頃、患者さんは次第に元気になっていきました。研修医は「元気になったら早めに退院できますね」と嬉しそうな顔をしていました。

 しかし、私をはじめ、ある程度医療従事者として長く働いている人間の場合、この事例の研修医とはいささか考えるポイントが異なります。この事例では、「この患者さんは元通り家に帰ることができるだろうか?」という問題が最も大きなハードルになります。治療が終わって「はい退院です」と家族に説明したところで、本当に皆が納得できる状況なのでしょうか。

 この事例の場合、妻は消化器系の疾患で入退院を繰り返しており、夫が認知症を発症してからというもの介護に疲弊しきった状態でした。近所に住んでいる長男は会社の管理職についており夜の22時頃まで家にいません、長男の妻は2人のやんちゃ盛りの子供を育てており、義母のサポートを頑張ってはいるものの義父の介護にまではなかなか手が回りません。要は、介護に疲弊しきった状態で誤嚥性肺炎によって入院したわけです。

 そのため研修医にとって重要なのは、誤嚥性肺炎の診断や治療だけでなく、患者さんが今置かれている社会的現状を理解することなのです。

 とかく研修医の頃は、疾患の診断や治療に目が行きがちで「エビデンス」という言葉にえも言われぬ憧れを抱くものです。しかし、実際の現場では「ナラティブ」の側面も同時に理解しなければなりません。入院患者さんの社会歴や家族歴を問診する意味というのは、まさにそこにあるわけです。

  ※ナラティブという言葉の意味は、ここではエビデンスの対比として記載しています。

 研修医の方々は、教科書に書いてあることだけでなく、常に「患者さんの退院後の生活が可能かどうか」を考えてみて下さい。困ったら、私たち医師よりも多くの情報を持っている病棟の看護師さんに相談することをおすすめします。

 こんなことを書いている私も、「先生、あの患者さん自宅が遠すぎて通院無理ですよ」なんて退院間近に指摘されることがあるわけですが・・・。


<何となく研修医に伝えたいこと>
その1:夕方に指示を出すべからず
その2:病棟ではあまりタメ口は使うべからず
その3:患者さんの社会背景や退院後の生活を常に考えるべし
その4:1日2回は患者さんに会いに行くべし
その5:ポリファーマシーのクセをつけない
その6:研修医時代は早めに出勤した方がよい
その7:クリアカットになりすぎない
その8:「●●も否定できない」は肯定の理由にはならない



by otowelt | 2014-06-28 00:51 | コラム:研修医に伝えたいこと

ザフィルルカストは気管支喘息発作に予防的に作用するか?

e0156318_2326359.jpg ザフィルルカスト(アコレート®)は、FDAに最初に承認された経口ロイコトリエン拮抗薬です。日本ではオノン®やシングレア®の登場により、影をひそめてしまったように感じます。
Kelloway JS. Zafirlukast: the first leukotriene-receptor antagonist approved for the treatment of asthma. Ann Pharmacother. 1997 Sep;31(9):1012-21.

 “ヶ月”単位の短期間に限れば、吸入ステロイド薬に匹敵するほどのパワーを持つのではないかとされているロイコトリエン拮抗薬ですが、現時点では吸入ステロイド薬なしでコントロールすることはリスクが高いと考えますので、使用できるとすればやはり「上乗せ治療」の選択肢としてでしょう。
Price D, et al. Leukotriene antagonists as first-line or add-on asthma-controller therapy. N Engl J Med. 2011 May 5;364(18):1695-707.

Chen CF, et al.
Does zafirlukast reduce future risk of asthma exacerbations in adults? Systematic review and meta-analysis.
Multidiscip Respir Med. 2014 May 28;9(1):30.


背景および目的:
 気管支喘息のマネジメントの目的は、現在のコントロールだけでなく将来のリスクを含めトータルで気管支喘息のコントロールを達成するためである。ザフィルルカストは気管支喘息の急性増悪のリスクを軽減させる効果が証明されているが、気管支喘息の増悪の重症度もまちまちの研究が多く、システマティックに検証されたことはない。

方法:
 ザフィルルカストが成人の気管支喘息の増悪を予防するかどうかを検証したランダム化比較試験を、PubMed Central, Web of Science, Embaseかた抽出した。プライマリアウトカムは気管支喘息発作とし、セカンダリアウトカムは全身性ステロイド投与および救急受診を要する発作とした。

結果:
 12の研究が同定された。プラセボと比較して、慢性気管支喘息患者に対するザフィルルカストは統計学的に有意に気管支喘息発作のリスクを減少させた(オッズ比 0.68, 95%信頼区間0.45~1.00)が、全身性ステロイド投与を要する発作に対しては統計学的には有意な効果は観察されなかった(オッズ比 0.76, 95% 信頼区間0.45~1.29)。ザフィルルカストは吸入ステロイド薬よりも効果は劣っていた(発作:オッズ比2.11, 95%信頼区間1.35~3.30、全身性ステロイド投与を要する発作:オッズ比3.71, 95%信頼区間1.82~7.59)。上乗せ効果について、ザフィルルカストはプラセボに勝る効果はみられなかった(発作:オッズ比0.99, 95%信頼区間0.54~1.81、救急受診を要する発作0.72, 95%信頼区間0.18~2.99)。

結論:
 ザフィルルカストは軽度から中等度の気管支喘息発作のリスクを軽減するが、重度発作には効果がみられない。上乗せ効果についても気管支喘息発作のリスクを軽減することはできないが、サンプルサイズが小さいため今後の研究が望まれる。


by otowelt | 2014-06-27 00:13 | 気管支喘息・COPD

REVEL試験:NSCLCセカンドラインのラムシルマブ+ドセタキセルは生存期間を延長

e0156318_11111377.jpg ラムシルマブのLancetの報告です。

Edward B Garon, et al.
Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel for second-line treatment of stage IV non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy (REVEL): a multicentre, double-blind, randomised phase 3 trial
The Lancet, Early Online Publication, 2 June 2014 doi:10.1016/S0140-6736(14)60845-X


背景:
 ラムシルマブは、VEGFR-2の細胞外ドメインをターゲットにしたIgG1モノクローナル抗体である。われわれは、白金製剤を用いた治療の既往があるstage IVの非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対してドセタキセル+ラムシルマブあるいはドセタキセル+プラセボを比較した。

方法:
 この多施設共同二重盲検ランダム化第3相試験(REVEL試験)において、18歳以上の白金製剤を用いた化学療法によるファーストライン治療中または終了後に病勢が進行した扁平上皮癌あるいは非扁平上皮癌患者が登録された。登録患者は、性別、地域、パフォーマンスステータス、維持療法の有無で層別化され、1サイクル(21日)のday 1にラムシルマブ(10mg/kg)+ドセタキセル(75mg/m2)を投与する群またはプラセボ+ドセタキセル(75mg/m2)を投与する群にランダムに割り付けられた。治療は、病勢進行、許容できない有害事象、患者希望による治療中止、死亡のいずれかのイベントが起こるまで継続した。
 プライマリエンドポイントは全生存期間(OS)とした。

結果:
 2010年12月3日から2013年1月24日までに、26施設から1253人が登録され、ラムシルマブ群に628人、プラセボ群に625人が割り付けられた。
 OS中央値は、ラムシルマブ群が10.5ヶ月(IQR5.1-21.2)で、プラセボ群の9.1ヶ月(IQR4.2-18.0)と比較して有意に延長した(ハザード比0.86、95%信頼区間0.75~0.98、p=0.023)。無増悪生存期間(PFS)の中央値はラムシルマブ群が4.5ヶ月(IQR2.3-8.3)、プラセボ群は3.0ヶ月(IQR1.4-6.9)であった(ハザード比0.76、95%信頼区間0.68~0.86、p<0.0001)。
 客観的奏効率は、ラムシルマブ群が23%と、プラセボ群の14%よりも有意に良好だった(オッズ比1.89、95%信頼区間1.41~2.54、p<0.0001)。病勢コントロール率は、それぞれ64%、53%だった(p<0.0001)。
 有害事象は、ラムシルマブ群の98%、プラセボ群の95%にみられた。頻繁に観察されたGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(ラムシルマブ群49%、プラセボ群40%)、発熱性好中球減少(ラムシルマブ群16%、プラセボ群10%)、疲労感(ラムシルマブ群14%、プラセボ群10%)、白血球減少(ラムシルマブ群14%、プラセボ群12%)、高血圧(ラムシルマブ群6%、プラセボ群2%)であった。肺出血の有害事象には差は観察されなかった。

結論:
 ラムシルマブ+ドセタキセルの併用療法は、Stage IV NSCLC患者のセカンドライン治療において生存期間を改善する。


by otowelt | 2014-06-26 00:50 | 肺癌・その他腫瘍

急性/亜急性型、高齢、努力性肺活量低値はPM/DM/CADMによる間質性肺疾患の予後不良因子

e0156318_22554541.jpg 呼吸器内科の実臨床に役立つ、貴重な報告だと思います。

Fujisawa T, et al.
Prognostic Factors for Myositis-Associated Interstitial Lung Disease
PLOS ONE, DOI: 10.1371/journal.pone.0098824


背景:
 間質性肺疾患は多発筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)、clinically amyopathic dermatomyositis (CADM)においてよく観察されるが、これらに関連する間質性肺疾患の予後に影響を与える因子についてはほとんどわかっていない。このスタディの目的は、PM/DM/CADMによる間質性肺疾患の予後因子を解析することである。

方法:
 PM/DM/CADMによる間質性肺疾患と診断された114人の連続患者(39人:男性、75人:女性、年齢中央値:56歳)の臨床的特徴と生存期間をレトロスペクティブに解析した。

結果:
 内訳は、PMが30人、DMが41人、CADMが43人であった。間質性肺疾患の臨床表現型は、59人(51.8%)が急性/亜急性で、55人(48.2%)が慢性の経過であった。主要な呼吸器症状は呼吸困難感、咳嗽、発熱だった。胸部HRCTでは、スリガラス影、牽引性気管支拡張、コンソリデーションが高い頻度で観察された。ほとんどの患者はステロイドやステロイドと免疫抑制剤の併用で治療を受けていた。全死因死亡率は27.2%だった。
 単変量Cox比例ハザードモデルにおいて、急性/亜急性型の患者では、%努力性肺活量、年齢、気管支肺胞洗浄液中の好中球の割合(%)、CADMの診断、は有意に予後不良と関連していた。多変量Cox比例ハザード解析では、%努力性肺活量、年齢、CADMの診断が死亡を予測する有意な因子であった。
 急性/亜急性の間質性肺疾患は、慢性型よりも生存期間が短かった(p<0.001)。CADMによる間質性肺疾患は、PMによる間質性肺疾患よりも生存率が低かった(p = 0.034)。
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(文献より引用)

結論:
 急性/亜急性型、高齢、努力性肺活量低値、CADMの診断はPM/DM/CADMによる間質性肺疾患の不良なアウトカムを予測する。


by otowelt | 2014-06-25 00:41 | びまん性肺疾患

結核の家庭内接触者におけるツベルクリン反応とIGRAの不一致

e0156318_2237214.jpg ちょっと不一致が甚だしいのが気になりますが、IGRAはかなり遅れて陽性化する可能性があることは既知の知見でもあります。

結核曝露後のQFT陽転は、現行ガイドラインの6~10週後再検では取りこぼすおそれがある

Rodrigo Ribeiro-Rodrigues, et al.
Discordance of Tuberculin Skin Test and Interferon Gamma Release Assay in Recently Exposed Household Contacts of Pulmonary TB Cases in Brazil
PLOS ONE, DOI: 10.1371/journal.pone.0096564


背景および方法:
 クオンティフェロンGold In-tubeのようなインターフェロンγ遊離アッセイ(IGRAs)は、結核菌特異抗原に反応したT細胞から遊離されたインターフェロンγを測定したものである。ツベルクリン反応と異なり、IGRAは特異度が高く、BCGワクチン接種者と結核感染を鑑別することができる。このスタディでは、ツベルクリン反応とIGRAの不一致を評価し、肺結核の家庭内接触者における新規の結核感染症を診断する有効性を調べた。

結果:
 ブラジルにおいて行われたこのスタディで、合計357人の家庭内接触者が同定された。ツベルクリン反応は登録2週間以内に実施され、陰性であれば8~12週間後に再検した。これにより、家庭内接触者はツベルクリン反応陽性者、持続的ツベルクリン反応陰性者、ツベルクリン反応陽転者の3群に分けられた。陽転者は新規の結核感染を示唆する。IGRAは登録から8~12週間後に実施された。
 その結果、ツベルクリン反応陽性者ではIGRA陽性が82%、ツベルクリン反応陽転者ではIGRA陽性が48%、ツベルクリン反応陰性者ではIGRA陽性が12%だった。
 いずれのカテゴリーにおいても、家庭内接触者ではツベルクリン反応とIGRAの不一致が多く観察された。
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(文献より引用)


by otowelt | 2014-06-24 00:20 | 抗酸菌感染症

特発性器質化肺炎におけるナチュラルキラー細胞の関与

e0156318_12234358.jpg COPとナチュラルキラー細胞の関連を報告した論文です。

Despina Papakosta, et al.
Bronchoalveolar lavage fluid and blood natural killer and natural killer T-like cells in cryptogenic organizing pneumonia
Respirology, 29 MAY 2014, DOI: 10.1111/resp.12305


背景および目的:
 ナチュラルキラー(NK)細胞は間質性肺疾患の進展に関与しているとされている。このスタディの目的は、NK細胞およびNK-T様細胞について2つの間質性肺疾患(過敏性肺炎[HP]、特発性器質化肺炎[COP])を特発性肺線維症(IPF)およびコントロール群と比較することである。

方法:
 気管支肺胞洗浄液(BALF)および末梢血中のリンパ球サブセットを83人の患者(COP:26人、HP:19人、IPF:38人)および10人のコントロール群において前向きにフローサイトメトリーを用いて測定した。

結果:
 コントロール群と比較してすべての間質性肺疾患患者において、NKおよびNK-T様細胞はBALFの方が末梢血よりも低かった。COP患者は統計学的に有意にBALF中のNKおよびNK-T様細胞がコントロール患者よりも高かった。(それぞれP = 0.044、P = 0.05)。またIPFでも統計学的に有意な増加がみられた(それぞれP = 0.049、P = 0.045)。BALFのNK-T様細胞は末梢血NK-T様細胞数とCOPにおいてのみ相関がみられた(r = 0.627, P = 0.002)。加えて、COP患者ではBALF中のNK-T様細胞と末梢血CD8陽性T細胞数にも相関がみられた(r = 0.562, P = 0.006)。これらの相関はHP、IPF、コントロール群では観察されなかった。

結論:
 われわれの研究は、COPの病態生理においてNK-T様細胞の関与を記した初めての研究である。


by otowelt | 2014-06-23 00:58 | びまん性肺疾患

何となく研修医に伝えたいこと その2:病棟ではあまりタメ口を使うべからず

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 年が近い仲良しの看護師さんだとついついタメ口になってしまうこともありますが、私は基本的には敬語を使って仕事をしています(たぶん・・・)。しかし、病棟でフランクに振る舞いたいがために、常時タメ口で病棟業務をしている若手医師も世の中には少なからずいるかもしれません。

 個人的には、年上のベテラン医師であればそこまで問題はないだろうと思っています。また、お年寄りの患者さんに対してフランクに接する場面もありますし、ラポールが構築されておれば問題ないと思います。ただ、そこそこの若手医師が年上の看護師さんにタメ口を使うのは、ちょっとよくないですよね。

 研修医が病棟デビューをした後、3ヶ月もすれば皆さん病棟に慣れてきます。すると、「自分は医師なんだ、自分は司令塔なんだ」と少しだけ勘違いしてしまう若手医師もわずかながらいます。

 確かに医師という職業は、指示を出して患者さんの治療にあたる司令塔に似た役割には違いないのですが、今の医療界は“patient-oriented”あるいは“patient-centered”、すなわち医療従事者のみんなが患者さんの方向を向いているという図式が当たり前ですし、私もそうあるべきだと思っています。ましてや医療従事者の職務には優劣も上下もありません。医師がたくさんいても、看護業務はできません。

 ちょっとした拍子にタメ口がこぼれるくらいならまだしも、普段からタメ口を使っていると、看護師さんからの評判がちょっぴり悪くなってしまう状況を研修医の頃にたびたび目にしたことがありました。

 「さっき入院してきた患者さん、採血とっといて。あー、あとさ、レントゲンもオーダーしたから、早めに撮ってもらって。

 と医師が言い残して病棟を去った後、残念そうな顔をする看護師さんを何度か見かけたことがあります。指示の内容自体は至極まっとうなのですが、年下の医師からこんな言葉で指示を出されると遺憾に思う看護師さんもいるのは確かです。

 普段からタメ口で仕事をしている医師は、病院という職場において周囲からどう見られているかなかなか自覚できません。一度よくない評判が立ってしまうと、思いもよらぬレッテルを貼られることもありますので、少なくとも若手医師の間は敬語をしっかりと使える方がよいと思います。

 これを書いている私も病棟でどんなことを言われているのか、知る由もありませんが・・・。

 Wikipediaによれば、以下のような記載があります。「タメ口は、相手に心理的にリラックスした態度を示すため、自身が相手を友愛の対象としてとらえ恐れていないことを示す効果がある。そのため、相手への友好の意思を表明する意図でも頻繁に使用される。ただし、これは、“支配権誇示のためのタメ口”と混同されやすいため、日本マジョリティー社会では、友好意思の表明でのタメ口は、社会的な年齢や性別や職位による差別・支配隷属関係のないだろう相手でない限り、危険性を強く伴う。」


<何となく研修医に伝えたいこと>
その1:夕方に指示を出すべからず
その2:病棟ではあまりタメ口は使うべからず
その3:患者さんの社会背景や退院後の生活を常に考えるべし
その4:1日2回は患者さんに会いに行くべし
その5:ポリファーマシーのクセをつけない
その6:研修医時代は早めに出勤した方がよい
その7:クリアカットになりすぎない
その8:「●●も否定できない」は肯定の理由にはならない


by otowelt | 2014-06-21 00:05 | コラム:研修医に伝えたいこと

GGNに対して経過観察を選択しても肺癌による死亡の増加はない

e0156318_23203059.jpg 実臨床に役立つ報告だと思います。

Gulati CM, et al.
Outcomes of unresected ground-glass nodules with cytology suspicious for adenocarcinoma.
J Thorac Oncol. 2014 May;9(5):685-91.


背景:
 StageIの肺腺癌の切除後の5年生存率は100%に達する。これまでの報告から、早期癌と考えられるスリガラス影は、緩徐な経過をたどるとされている。スリガラス影から癌が疑われた場合、すぐに切除した場合と比較して、時間が経過してから切除した場合に予後が異なるのかを調べた。

方法:
 これまでに肺腺癌の既往のない、CTガイド下生検でGGOの診断がおこなわれた63人の患者を同定した。
これらの患者の細胞診で異常がありすぐに切除した例と、切除せずに経過観察した症例とを比較した。

結果:
 16人がGGNに対して悪性が疑われた後に経過観察をしていた。残りの47人はすぐに切除されていた。経過観察されていた16人のうち、6人(37.5%)が明らかに増大したりsolidな病変が出現したりしていた。そのうち5人は切除や放射線治療が施され、遠隔転移や肺癌による死亡は観察されなかった。一方、すぐに切除された47人のうち2人には転移スがみられ、5人は残りの肺に新たな病変が出現し、3人はすでにみられていたGGNに悪化所見がみられた。

結論:
 肺腺癌を疑うスリガラス影に対する生検によって悪性が疑われ、これを経過観察した場合でも、明らかに増悪の頻度が増したり肺癌による死亡が増えることはなかった。


by otowelt | 2014-06-20 00:57 | 肺癌・その他腫瘍

HeartBEAT試験:閉塞性睡眠時無呼吸に対するCPAPは血圧を低下させるが、酸素補給のみでは低下しない

e0156318_2225486.jpg CPAPと同等の効果を有する侵襲性が低く簡単な治療法が、いつか開発されればいいのになあといつも思っています。

Daniel J. Gottlieb, et al.
CPAP versus Oxygen in Obstructive Sleep Apnea
N Engl J Med 2014; 370:2276-2285


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、高血圧、炎症、心血管疾患リスク上昇と関連することが知られている。持続陽圧呼吸(CPAP)によって血圧を低下させることができるが、アドヒランスが不十分であることが多いため、従来提唱されているリスク因子の管理による利益を上回ることができるかどうかはよくわかっていない。間欠的低酸素血症がOSAに続発する心血管疾患のベースに存在する可能性があるため、夜間の酸素補給と CPAPが心血管疾患のリスクマーカーに与える影響を評価した。

方法:
 ランダム化対照試験において、心血管疾患または複数の心血管疾患のリスク因子を有する患者を登録。ベルリン質問票を用いてOSAスクリーニングを行い、診断確定のために在宅睡眠検査を行った。無呼吸低呼吸指数(AHI)が15~50回/時間であった患者を、睡眠および健全な生活習慣の教育を行う群(コントロール群)と、当該教育に加えCPAPを導入する群、夜間の酸素補給を行う群にランダムに割り付けた。ベースラインおよび12週間の試験完遂後に心血管疾患リスクを評価した。プライマリアウトカム24時間平均動脈圧とした。

結果:
 ランダム化された318人のうち、ベースラインと追跡調査の両方で自由行動下血圧を測定することができたのは281人(88%)だった。12週時点でのCPAP群の24時間平均動脈圧はコントロール群よりも低く(-2.4 mmHg、95%信頼区間-4.7~-0.1、P=0.04)、また酸素群よりも低かった(-2.8 mmHg、95%信頼区間-5.1~-0.5、P=0.02)。コントロール群と酸素群との間には24時間平均動脈圧に差は観察されなかった。missing dataがあり感度分析を行ったが、解析結果に変化はなかった。

結論:
 心血管疾患または複数の心血管疾患のリスク因子を有する患者において、OSAに対するCPAP療法は血圧を有意に低下させた。しかし、夜間の酸素補給ではこうした低下は観察されなかった。


by otowelt | 2014-06-19 00:49 | 呼吸器その他

アジスロマイシンの予防内服は抗菌薬やステロイド治療を要するCOPD急性増悪を抑制する

e0156318_1033747.jpg アジスロマイシンを予防内服として使うべきなのかどうかというコンセンサスはまだ得られていません。私は外来患者さんにアジスロマイシンを長期処方したことはありませんが、そろそろこういったプラクティスをされる医師が出てくるかもしれません。

MeiLan K Han, et al.
Predictors of COPD Exacerbation Reduction in Response to Daily Azithromycin Therapy
Am J Respir Crit Care Med. DOI:10.1164/rccm.201402-0207OC


背景:
 毎日アジスロマイシンを内服することでCOPD急性増悪を減らすことができるが、長期使用による副作用については不明である。わrわれは、どういった患者がもっとも急性増悪を減らす効果があり、どのサブグループ患者がアジスロマイシン250mg/日による恩恵を受けるのか調べた。

方法:
 過去1年における、不可逆的な気流制限がありステロイドと酸素の投与を要する救急受診あるいは入院のCOPD急性増悪患者を登録した。年齢、性別、喫煙歴、%1秒量、COPDに対する他の薬剤使用、酸素投与によって補正し、Cox比例ハザードモデルを用いてアジスロマイシンによる治療効果を推定した。

結果:
 アジスロマイシンは、抗菌薬およびステロイド治療を要するCOPD急性増悪患者にもっとも効果的に作用した(n=1,113; 累積発生率解析p=0.0002; 再発イベント解析p=0.002)。
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(文献より引用)

 アジスロマイシンによる治療反応は、性別(p=0.75), 慢性気管支炎の存在(p=0.19), 吸入薬の併用(p=0.29)、酸素使用(p=0.23)ごとには差がみられなかった。高齢およびGOLD病期が軽度である場合、治療反応性は良好であった(それぞれp=0.02、0.04)。また、アジスロマイシンは現喫煙者において急性増悪を減らさなかった[ハザード比0.99(95%信頼区間0.71, 1.38; p=0.95)]。

結論:
 アジスロマイシンは抗菌薬やステロイド治療を要するCOPD急性増悪の予防に最も効果的である。さまざまな交絡因子によって補正しても、その効果には差はみられなかった。高齢患者やGOLD病期が軽度である患者ではこの恩恵は大きかったが、現喫煙者に対しては治療効果は乏しいと考えられる。


by otowelt | 2014-06-18 00:49 | 気管支喘息・COPD