<   2014年 08月 ( 25 )   > この月の画像一覧

Streptococcal Toxic Shock Syndromeに対する免疫グロブリン大量療法とクリンダマイシンは予後を改善

e0156318_23184679.jpg 当たり前ですが、IVIGの量は日本よりもかなり多いです。

Anna Linnér, et al.
Clinical Efficacy of Polyspecific Intravenous Immunoglobulin Therapy in Patients With Streptococcal Toxic Shock Syndrome: A Comparative Observational Study
Clin Infect Dis. (2014) 59 (6): 851-857. doi: 10.1093/cid/ciu449


背景:
 Streptococcal toxic shock syndrome (STSS)および壊死性筋膜炎はA群溶連菌(GAS)による最重症型の感染症である。免疫グロブリン(IVIG)治療は死亡率に対して有益な付加的な治療とされてきた。しかしながら、臨床的エビデンスは限られている。われわれは、STSS患者における比較観察研究においてIVIG治療の有効性を調べた。

方法:
 2002年4月から2004年12月まで実施されたスウェーデンのサーベイランス研究において、GASによるSTSSに対するIVIGの効果をプロスペクティブに評価した。症状、疾患重症度、治療、アウトカムが67人の患者から抽出された。

結果:
 23人の患者がIVIG治療を受け、44人が受けなかった。合併症、疾患重症度、臓器不全、性別には差はみられなかったが、IVIG群の患者は非使用者と比べて年齢が若く壊死性筋膜炎の合併が多かった(56% vs 14%)。また手術を受けた患者やクリンダマイシン使用患者はIVIG群で多くみられた。
 28日時点での生存を予測する因子として、単変量解析ではSPAS II(オッズ比1.05)、クリンダマイシン使用(オッズ比7.5)、IVIG(オッズ比6.7)、外科手術(オッズ比4.4)が得られた。多変量解析では、SAPS II(オッズ比1.1)、クリンダマイシン使用(オッズ比8.6)、IVIG(オッズ比5.6)は有意な生存予測因子であった。
e0156318_2375590.jpg
(文献より引用)

 壊死性筋膜炎のない患者(48人)でも同様の解析をおこなったところ、クリンダマイシン使用は有意な生存予測因子であった。統計学的に有意ではないものの、IVIGも改善の傾向がみられた。

 IVIGによる恩恵は80歳未満の患者に有意にみられた(Post hoc)。
e0156318_23144213.jpg
(文献より引用)

結論:
 GASによるSTSSに対して、IVIGとクリンダマイシンの使用は良好な予後に関連していた。


by otowelt | 2014-08-30 00:41 | 感染症全般

アメリカではインフルエンザに対して抗ウイルス薬処方が少ない?

e0156318_22395783.jpg インフルエンザの臨床試験にはてんで疎いので、イムノクロマトグラフィーと思って読んでいたら、診断はRT-PCRなのですね。ちなみに日本では、たとえ迅速キットが陰性でも臨床診断でタミフルがよく処方されている気がします。

Fiona Havers, et al.
Use of Influenza Antiviral Agents by Ambulatory Care Clinicians During the 2012–2013 Influenza Season
Clin Infect Dis. (2014) 59 (6): 774-782. doi: 10.1093/cid/ciu422


背景:
 インフルエンザの早期の抗ウイルス治療(発症から2日以内)は、インフルエンザに関連した合併症発生を減らす(かもしれない)。重症度にかかわらず、高い合併症リスクを有するインフルエンザ感染疑いの患者には早期のエンピリックな抗ウイルス治療が推奨されている(MMWR Recomm Rep 2011; 60:1–24.)。インフルエンザの外来患者で抗微生物治療を受けた者を対象とした。

方法:
 2012~2013年シーズンにおいて、アメリカの当該研究参加施設の外来を受診した患者データを解析した。7日以下の咳嗽症状を有する生後6ヶ月以上の患者を対象とした。全例インフルエンザがRT-PCRで検査された。
 原文:Respiratory specimens were tested for influenza viruses by PCR; all sites used the same assays. At 1 of the 5 network sites, study laboratory test results were provided to clinicians by email, usually within 24–48 hours of participant enrollment. PCR results were not available to clinicians at other sites, although clinicians may have had access to rapid influenza diagnostic tests or other tests not performed as part of the study protocol.
 病歴および処方情報は、診療録や処方録から得た。参加施設のうち4施設については一般抗菌薬(アモキシシリン/クラブラン酸、アモキシシリン、アジスロマイシン)の処方データも抽出した。

結果:
 急性呼吸器症状を呈した6766人のうち、509人(7.5%)が抗ウイルス薬の処方を受けた。全体のうち2366人(35%)がPCRで確定診断のついたインフルエンザであり、そのうち355人(15%)しか抗ウイルス薬の処方を受けていなかった。
e0156318_22201567.jpg
(文献より引用)

 合併症の高リスクと考えられる患者(2歳未満や65歳以上、慢性疾患を有する患者)1021人においても抗ウイルス薬を処方されたのは195人(19%)にとどまった。
 上述した3種類の抗菌薬の処方頻度については、1825人中540人(30%)と抗ウイルス薬よりは高率に処方されていた(vs 16%)。

結論:
 インフルエンザに対して抗ウイルス薬が有効と考えられる患者においても抗ウイルス薬はあまり処方されておらず、むしろ抗菌薬が処方されることが多かった。


by otowelt | 2014-08-29 00:50 | 感染症全般

LENTスコア:悪性胸水を有する患者の予後予測が可能

e0156318_1654876.jpg 「LENT」は、「復活祭前にカトリック信者が断食・懺悔を行う期間」という意味もあるので、とかく終末期医療では宗教的に誤解を招く可能性があるので別の名前の方がよかったのかも、と感じました。

Amelia O Clive, et al.
Predicting survival in malignant pleural effusion: development and validation of the LENT prognostic score
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2014-205285


背景:
 悪性胸水は呼吸困難感を悪化させ、生存予後に多大な影響を与える。この研究は、悪性胸水のある患者において悪性腫瘍による生存データを得て、全生存期間を予測する因子を同定し、予後予測スコアリングシステムを構築することにある。

方法:
 悪性胸水の患者を登録した3ヶ国の大規模国際コホート(イギリス、オーストラリア、オランダ)が生存解析に用いられた(単変量Coxモデル)。イギリスは2コホート登録され、これらコホートにおいて最も多い悪性腫瘍は肺癌であり、次いで悪性胸膜中皮腫、乳癌であった。生存期間は、悪性胸水の診断から死亡までと定義した。事前に規定された14の予後予測因子が多変量Coxモデルによって評価された。その後、臨床予後予測スコアリングシステムを構築した。

結果:
 コホートから得られたデータおよび多変量生存解析に基づいて、LENT予後予測スコア(胸水中LDH、ECOGパフォーマンスステータス、血液中好中球(N)/リンパ球比、腫瘍の組織型(T))が構築された。層別化をおこない、低リスク(スコア0-1、生存期間中央値319日、IQR228-549日、49人)、中リスク(スコア2-4、生存期間中央値130日、IQR47-467日、129人)、高リスク群(スコア5-7、生存期間中央値44日、IQR22-77日、31人)に分けられた。
e0156318_15561335.jpg
(文献より引用:LENTスコア)

 診断後1ヶ月時点で高リスクLENTスコアの患者の65%(31人中20人)しか生存していなかった。LENTスコアのROC曲線下面積によれば、1~6ヶ月でのECOGパフォーマンスステータスよりも生存の予測に優れていた(1ヶ月時点:0.77 vs 0.66, p<0.01、3ヶ月時点:0.84 vs 0.75, p<0.01、6ヶ月時点:0.85 vs 0.76, p<0.01)。
e0156318_1642261.jpg
(文献より引用)

結論:
 LENTスコアリングシステムは悪性胸水を有する患者における予後予測能を検証した最初のスコアである。これは、ECOGパフォーマンスステータスよりも精度が高い。


by otowelt | 2014-08-28 00:34 | 肺癌・その他腫瘍

ネーザルハイフロー併用下気管支鏡の報告

e0156318_9511053.jpg ケースシリーズですが、実臨床に即した論文だと思います。参考にさせていただきました。

Miyagi K, et al.
Implementation of bronchoalveolar lavage using a high-flow nasal cannula in five cases of acute respiratory failure
Respiratory Investigation, in press, doi:10.1016/j.resinv.2014.06.006


背景:
 近年の臨床プラクティスにおいて、鼻腔高流量酸素療法(HFNC、ネーザルハイフローなど)は成人の呼吸不全の患者において酸素化を改善するとされている。しかしながら、急性呼吸不全時にHFNCを用いて気管支鏡を行うことはこれまでに報告されていない。われわれは、HFNC下で気管支鏡を施行できた急性呼吸不全の5症例を報告する。

概要:
 5人の患者(1人が女性、4人が男性)は、57歳から79歳までの患者で、P/F比は144~221であった。検査後、1人はHFNCを中止することができ、2人はHFNCのFiO2を減ずることができた。BALによって3人の診断が確定できた。残りの2人についてはBALは診断に有用であった。

 Case1:肺胞蛋白症:FiO250%・50L/min
 Case2:好酸球性肺炎:FiO280%・40L/min
 Case3:びまん性肺胞出血:FiO260%・35L/min
 Case4,5:薬剤性肺障害:FiO295%・30L/min、FiO250%・50L/min

 5例のうち、1人のみが気管支鏡から16時間後に非侵襲性換気を要した。


by otowelt | 2014-08-26 00:40 | 気管支鏡

メタアナリシス:気管支喘息に対するICS/LABAはICS単独と比較して重大な有害事象を上昇させず

e0156318_946195.jpg 非ランダム化比較試験ばかりを集めたメタアナリシスです。当然ながらオープンジャーナルです。参考程度に。類似の報告としてはThoraxの論文が記憶に新しいです。

気管支喘息に対するICS/LABAはICS単独と比較して入院リスクを上昇させず

Gimena Hernández, et al.
Long-acting beta-agonists plus inhaled corticosteroids safety: a systematic review and meta-analysis of non-randomized studies
Respiratory Research 2014, 15:83 doi:10.1186/1465-9921-15-83


背景:
 いくつかのシステマティックレビューによって、気管支喘息における長時間作用型β2刺激薬(LABA)の安全性は検証されている。この報告は主にランダム化比較試験に基づくものであり、非ランダム化比較試験の報告はほぼ無視されている。われわれは、LABAと吸入ステロイド薬(ICS)によって治療された成人および小児の重大な有害事象のリスクを、ICS単独治療を受けた患者と比較してアセスメントした。ただし、組み込んだ研究は出版された非ランダム化試験とした。

方法:
 1990年以降出版された医学論文をMEDLINE、EMBASEで検索した。2人の著者が独立してデータを抽出した。双方に乖離があれば第3者のレビュアーが介入した。重大な有害事象のリスクを解析するためにメタアナリシスをおこなった。

結果:
 4415の論文が候補になり、1759のアブストラクトがレビューされ、220が全文読まれた。最終的に19の研究が適格基準を満たした。そのほとんどがレトロスペクティブ観察コホートであった。サンプルサイズは50から514216まで様々であった。メタアナリシスによれば、LABAとICSの併用はICS単独と比較して、気管支喘息による入院(0.88、95%信頼区間0.69-1.12)、気管支喘息による救急受診(0.75、95%信頼区間 0.66-0.84)、全身性ステロイド投与(1.02、95%信頼区間0.94-1.10)、混合アウトカム(0.95、95%信頼区間 0.9-1.0)に対してオッズ比に有意な変化をもたらさなかった。
e0156318_11321738.jpg
(文献より引用:気管支喘息による入院)
e0156318_11322678.jpg
(文献より引用:気管支喘息による救急受診)
e0156318_11324716.jpg
(文献より引用:全身性ステロイド投与)

結論:
 観察研究のエビデンスによれば、LABAとICSの併用はICS単独と比較して重篤な有害事象イベントのリスク増加と関連はなかった。


by otowelt | 2014-08-25 00:20 | 気管支喘息・COPD

特発性間質性肺炎の生命予後

e0156318_16214955.jpg・はじめに
 呼吸器内科医にとって、特発性間質性肺炎(IIPs)のうち特発性肺線維症(IPF)や特発性非特異性間質性肺炎(INSIP)の生命予後はどのくらいなのかはっきりと言及できない現状があります。それはこれらの間質性肺疾患の分類学が混沌としているというこれまでの歴史に加えて、実臨床でこれらを簡単に分類できないという難しさに由来します。

 ここに記載する内容はあくまで過去の研究に基づいたデータであり、目の前の患者さんの生命予後をあらわすものではないことをご理解下さい。また、個人的見解も含まれておりますのでご了承下さい。


・IPFの生存予後
 まず最初に述べておきたいのは、IPFの診断は学問的に非常に難しいということです。IPFと他院で診断されて当院に紹介になったケースでも、その後IPFでないと分かった患者さんもいます。また、どう考えても典型的なIPFだろうという患者さんでも、その後まったく進行しなかった例もあります。そのため「医師からIPFと言われた=予後不良」というのは早計だと私は考えます

 一般的にIPFは予後不良と言われています。多くの癌よりも不良であるとするVancheriらの衝撃的な報告もあります。
e0156318_14291221.jpg
Vancheri C, et al. Idiopathic pulmonary fibrosis: a disease with similarities and links to cancer biology. Eur Respir J. 2010 Mar;35(3):496-504.

 IPFの診断から生存期間の中央値はおよそ2~3年であり、5年以上生存している患者は全体の20~30%に過ぎないとされています。この数値はVancheriらの報告のグラフにも示されている通りです。ゆえに、多くの呼吸器内科医の頭の中には、「生存期間の中央値は2~3年」、「5年生存率は20~30%」という認識があります。
・Ley B, et al. Clinical course and prediction of survival in idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med. 2011 Feb 15;183(4):431-40.
・Schwartz DA, et al. Determinants of survival in idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med. 1994 Feb;149(2 Pt 1):450-4.
・Dayton CS, et al. Outcome of subjects with idiopathic pulmonary fibrosis who fail corticosteroid therapy. Implications for further studies. Chest. 1993 Jan;103(1):69-73.


 診断からの生存期間中央値が2~3年であるという数値が知られるようになったのは1998年のBjorakerらの報告の影響が大きいでしょう。
e0156318_1625389.jpg
Bjoraker JA, et al. Prognostic significance of histopathologic subsets in idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med. 1998 Jan;157(1):199-203.

 ただ先述したとおり、多くの研究で扱う“IPF”というのは“研究に組み込むための適格基準を満たしたIPF=現在のコンセンサスに基づいたIPF”という意味であり、目の前にいる患者さんに100%あてがうことはできません。がんのように悪性細胞が検出されるという特異度が極めて高い検査が存在しないため、安易な生命予後への言及は避けなければなりません。年齢や診断時の臨床所見によってもバラつきがあることも報告されていますので、やはり目の前の患者さんにこういったデータを安易に適用できないと個人的に考えます。
e0156318_1449499.jpg
King TE Jr, et al. Predicting survival in idiopathic pulmonary fibrosis: scoring system and survival model. Am J Respir Crit Care Med. 2001 Oct 1;164(7):1171-81.
Raghu G, et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med. 2011 Mar 15;183(6):788-824.

 明らかに典型的なIPFで予後不良因子を有する患者さんへ病状説明を行う必要がる場合(予後についてのデータを希望する場合)は、十分な精神的サポートが不可欠です。また、医師からみてもデータはバラつきが大きいため、あくまで参考程度であることを告げ、経験上IPFと診断された患者さんでも長生きしている方がいるといった安心材料を提示すべきだと思います。


・IPF以外のIIPsの生命予後
 IPF以外のIIPsのうち、最も予後が悪いものは急性間質性肺炎(AIP)ですが、AIPはここで扱うような悠長な説明の猶予がなく集中治療を要することが多いため、割愛します。そのため、慢性に進行するIIPsでIPF以外の予後不良疾患はfNSIP(fibrosing NSIP, fibrotic NSIP)です。fNSIPはステロイドの効きやすいcNSIP(cellular NSIP)とIPFの間のような位置付けにあり、IPFとまではいきませんが予後不良であることが知られています。cNSIPは「5年生存率は90%以上」、fNSIPは「5年生存率は50~80%」と考える医師が多いと思います


・cNSIP
 ステロイドが効果を発揮すると期待するIIPs、特にcNSIPの場合は疾患増悪によって死亡する可能性はかなり低いと考えられていますので、「ステロイドでコントロール」できる疾患であることを強調してよいと思います。ただし、NSIPと膠原病の関係は切っても切れないもので、いくら特発性NSIPという分類学上の大義名分があったとしても、膠原病の存在は常に考慮しなければなりません。そのため、INSIPで安易にステロイドを導入してよいのかどうかは世界中の呼吸器内科医の興味のあるポイントです。
Travis WD, et al. Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia: prognostic significance of cellular and fibrosing patterns: survival comparison with usual interstitial pneumonia and desquamative interstitial pneumonia. Am J Surg Pathol. 2000 Jan;24(1):19-33.


・fNSIP
 個人的に最もfNSIPの生存期間で注目しているデータは、UIPとfNSIPと比較した論文です。この論文の特筆すべき点は、cNSIPが除外されており、fNSIPだけを43人登録しているということです。これによれば、fNSIPは32ヶ月(3年弱)で58%が死亡したと報告されています。
e0156318_15594418.jpg
Latsi PI, et al. Fibrotic idiopathic interstitial pneumonia: the prognostic value of longitudinal functional trends. Am J Respir Crit Care Med. 2003 Sep 1;168(5):531-7.

 他にも、fNSIPの患者さんの5年生存率は70~80%とする報告もあります。
Park IN, et al. Clinical course and lung function change of idiopathic nonspecific interstitial pneumonia. Eur Respir J. 2009 Jan;33(1):68-76.
Shin KM, et al. Prognostic determinants among clinical, thin-section CT, and histopathologic findings for fibrotic idiopathic interstitial pneumonias: tertiary hospital study. Radiology. 2008 Oct;249(1):328-37.

 TravisらによるNSIPの生存期間を報告した論文では、fNSIPは5年生存率は100%であるものの10年生存率は35%であると論じています。この論文ではcNSIPは5年生存率100%、10年生存率90%と報告されています。この論文はよく成書でも引用されているのですが、NSIP全体で29人しかいない点がlimitationです。
Travis WD, et al. Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia: prognostic significance of cellular and fibrosing patterns: survival comparison with usual interstitial pneumonia and desquamative interstitial pneumonia. Am J Surg Pathol. 2000 Jan;24(1):19-33.

 研究ごとにデータにバラつきがあるため、fNSIPの予後は現時点ではIPFとcNSIPの間に位置するとしか言えません。そもそもfNSIPという概念が実臨床において必要なのかという疑問も出てくるかもしれません。そんなジレンマを象徴するかのような、IIPsに対して外科的肺生検を2回おこなった報告があります。その中には、fNSIPがUIPに変化したと考えられる症例もあり、NSIPは永続的にNSIPではない可能性も示唆されています。Schneiderらはこの論文の中でfNSIPはUIPの前病変ではないかと論じています(ただし生検部位の問題など、議論の余地はあるようです)。もちろん、下葉からしっかり該当部位を生検すればUIPが最初から出るのではないかという意見もありますので、この議論にはまだ答えはありません。個人的にはfNSIPの患者さんは肺のどこかにUIPを持っていてもよいだろうと思っています。
Schneider F, et al. Nonspecific interstitial pneumonia: a study of 6 patients with progressive disease. Am J Surg Pathol. 2012 Jan;36(1):89-93.


・おわりに
 間質性肺疾患について、あなたはIPF、あなたはNSIPと100%振り分けられないケースもたくさん存在します。簡単にIPFだと言えない状況を作り出してしまったのは、臨床試験において間質性肺疾患を学問的に細分化することがそのまま臨床適用された弊害ではないかとも考えています。

 患者さんは、そういった複雑な事情を知る由もありません。「間質性肺炎だと思いますが、線維化が主体なので慢性過敏性肺炎や特発性肺線維症が鑑別に挙がります。ただ、薬剤性や肺病変先行型の膠原病も否定できないので特発性かどうかはまだ断言ができません。」などと並べ立てたところで頭上にハテナマークが出るのは目に見えています。


by otowelt | 2014-08-24 00:24 | びまん性肺疾患

何となく研修医に伝えたいこと その7:クリアカットになりすぎない

e0156318_14561322.jpg・研修医時代の私
 今からもう何年前になるでしょうか。私が指導医に「アスペルギルス抗原が陽性です!この患者さんアスペルギルスだったんですね!」と鼻息を荒くして報告したときのことでした。その時、指導医から「抗原が陽性だったら、全員アスペルギルス症なのかな?」と言われたことがあります。結果的にその患者さんの喀痰からAspergillus nigerが検出され、総合的に慢性の肺アスペルギルス症と診断されたのですが、私の中でその言葉がずっと残っていました。

 私は進学校の出身でもないですし、小論文で医学部に合格したような人間ですから、もともと頭がよくありません。そのため、どうしても多くの医師が体得している「臨床ノウハウ」を知るためには周りの何倍も努力しなければなりません。そのため、研修医に対していざ教えようと思っても詳しく教えることができず、“ぼんやりと”教えることができないのが私の指導医としての欠陥です。そんなポンコツ指導医が、自分なりに“ぼんやりと”意識するようになった検査の解釈について、難しくならないように書いてみたいと思います。内容もポンコツなので、ガッカリしないようにして下さい。


・検査の“異常”は“真の異常”を反映しない
 検査のうち、定性検査と呼ばれるものは結果が「陽性」「陰性」で表示されます。一方、数値で表示されるものを定量検査と呼びます。最近は、定量検査とともに定性的な結果が得られるシステムが電子カルテに備わっていますから、異常値はすべて赤色や青色で表示される病院も多いでしょう。定量検査といいながら、実は定性的に解釈してしまっている医師もいるはずです。

 肝機能の異常を血液検査で評価する場合、ASTという数値をみることがあります。病院や検査法によって基準値は異なりますが、たとえば正常上限が32 IU/Lとしましょう。ある患者さんのASTが38 IU/Lとわずかに基準値を上回ってしまいました。それをみて「ASTが基準値を超えている!これは薬剤性肝障害かもしれない!」と慌てたところで、それに賛同してくれる人はいません。これはなぜかというと、健常な人でも何かしらの理由でASTが正常上限を超えることがありうることを私たちは知っているからです。また、その異常値が何となく誤差範囲であることを知っているからです。もちろん、ASTがたとえ正常であったとしても薬剤性肝障害の患者さんもいるかもしれませんし、医療に絶対というのは存在しないのは言わずもがなです。

 ASTのように極端な例でなくとも、過去の私のように検査に振り回される人は少なからずいます。

 「○○が陽性なので、××病です
 「▲▲が少し上昇しているので、□□を投与します

 多くの検査にはカットオフ値や基準値が定められていますが、一部の例外を除いて診断に100%信頼できる検査なんて存在しません。


・クリアカット思想
 研修医になりたての頃は、図1.のようにクリアカットに考えすぎてしまう人が少なくありません。まさに若いころの私がこれでした(今でもその傾向はあるかもしれません)。クオンティフェロンが陽性だから結核。CEAが上昇しているから癌。β-Dグルカンが上昇しているから真菌。すなわち、「異常と判断されたらイコール異常」という考え方です。
e0156318_14471093.jpg
図1. クリアカット思想(抽象的な表現ですが、あくまでイメージ)

 クリアカット思想は、理系らしくて男らしくて個人的には好きなのですが、人の身体はそんな簡単にできていません。翌日採血したら異常値だった検査値が正常に戻ってることもあります。図2.の赤線や緑線のように、基準値上限やカットオフ値を上回っていても慌てなくてもよい検査もあります(繰り返しますが、あくまでイメージです)。
e0156318_17355943.jpg
図2.

 「取りこぼしを減らしたい」という目的でカットオフ値(緑線のようなケース)を設定した場合、軽度上昇していたところでさほど怖くないことが多いです。それにもかかわらず、先述の「異常と判断されたらイコール異常」理論がいまだ医療界には根強いのは、診断学が発展しすぎたがゆえでしょうか。

 私のように専門分野にどっぷり漬かってしまった人間にとっては、少なくとも自分が専門としている領域について、目の前の患者さんの確定診断を目的として検査をしているのか、除外診断を目的として検査しているのか、“ぼんやりと”意識することが重要です。冒頭で述べたとおり、私はもともと頭がさほど良くない人間なので、どうしても感度や特異度を常に意識することができません。そのため、そういった方々は“ぼんやりと”理解しておくことがとても重要なのです。


・おわりに
 医療は楽観的であるよりも悲観的であるほうが取りこぼしが少なくなりますので、ちょっとばかり慌てた方が結果的に患者さんにもたらすメリットは多くなるかもしれません。ただそれでも、やはり医師は短絡的であってはならないと思います。

 研修医の時代は基準値上限やカットオフ値を超えたら、どの病気がどのくらい考えにくいのか・疑わしいのかという疑問を持つことが重要です。もちろん、その答えを指導医が持っているとは限りませんし、誰にもわからない命題だってあります。私は統計学は苦手とする分野の1つですし、ROCだのカットオフ値だの細かい知識を教えるスキルはゼロです。ただそれでも、全ての検査はそんなクリアカットに判断できるシロモノではない、という最低限のセンスだけは研修医のうちに身につけてほしいな、と思っています。

 その結果が本当に正しい異常を反映しているのか、一歩立ち止まって疑うことは忘れないようにしたい。しかし、何もかも疑ってしまうとドクターハウスのようにひねくれた研修医になってしまいますね(そういうひねくれた研修医も好きですが)。


<何となく研修医に伝えたいこと>
その1:夕方に指示を出すべからず
その2:病棟ではあまりタメ口は使うべからず
その3:患者さんの社会背景や退院後の生活を常に考えるべし
その4:1日2回は患者さんに会いに行くべし
その5:ポリファーマシーのクセをつけない
その6:研修医時代は早めに出勤した方がよい
その7:クリアカットになりすぎない
その8:「●●も否定できない」は肯定の理由にはならない


by otowelt | 2014-08-23 00:42 | コラム:研修医に伝えたいこと

ICUにおける家族満足度のシステマティックレビュー

e0156318_2374935.jpg 読み物としてのレビューの側面が強い論文でした。

Laura J. Hinkle, et al.
Factors Associated with Family Satisfaction with End-of-Life Care in the ICU: A Systematic Review
Chest. 2014. doi:10.1378/chest.14-1098


背景:
 ICUにおける終末期医療の家族満足度はこれまでシステマティックにレビューされたことはなかった。われわれの目的は、このレビューによって重症成人患者の終末期医療における家族満足度に関連する因子を扱ったデータを統合することである。

方法:
 電子データベース(MEDLINE, MEDLINE Updated, EMBASE, CINAHL, PsycInfo, PubMed)が検索された。2人の著者が研究のタイトルとアブストラクトをレビューした。非成人、非ICU、終末期の状態にない患者を扱った研究、家族満足度が評価されてない研究などは除外された。研究の質はCONSORTグループの推奨に基づくチェックリストを用いてアセスメントされた。

結果:
 検索によって23論文が適格基準を満たした。すべての研究は家族から満足度の調査をおこなっていた。個別のコミュニケーション戦略(共感性、非放棄、緩和保証、記述による情報提供)は満足度を上昇させた。加えて、意思決定サポート、死亡時の家族の同席、死前期の抜管などの個別対応は満足度を上昇させた。
※ただし死前期の抜管は日本では法的整備がまだなされていない、当該研究のみに限る(American Journal of Respiratory & Critical Care Medicine 2008; 178:798-804、Journal of Palliative Care 2000; 16 Suppl:S40-44)

結論:
 良質なコミュニケーション、意思決定サポート、患者に対する個別のケアは終末期医療の家族満足度を上昇させる。意思決定の際に、家族が参加を望むかどうかアセスメントすることは重要な因子となるかもしれない。


by otowelt | 2014-08-22 00:43 | 集中治療

PROVHILO試験:手術中は高PEEPと低PEEPのどちらがよいか

e0156318_10165332.jpg IMPROVE試験では、術中も一回換気量を少なく設定した肺保護戦略の方がよいとされています。PEEPについてはどうなのかと論じたのがPROVHILO試験です。術後5日目までというアウトカム設定に少し疑問の声がありますが、興味深い報告だと思います。

The PROVE Network Investigators†for the Clinical Trial Network of the European Society of Anaesthesiology.
High versus low positive end-expiratory pressure during general anaesthesia for open abdominal surgery (PROVHILO trial): a multicentre randomised controlled trial.
The Lancet, Volume 384, Issue 9942, Pages 495 - 503, 9 August 2014


背景:
 外科手術のときの全身麻酔時に人工呼吸器の設定でPEEPを高くする意義はまだ不明である。PEEPを0 cmH2O以上にすることで術後の呼吸器系合併症を減らすことができるかもしれないが、術中の循環動態の抑制や肺傷害を引き起こす可能性もある。全身麻酔下で開腹手術を受ける際に低い一回換気量で人工呼吸をおこなわれている患者において、われわれはリクルートメント手技を用いた高PEEPが術後呼吸器系合併症に対して保護的にはたらくのではないかという仮説を検証した。

方法:
 ヨーロッパおよび北・南アメリカの30施設で実施されたこのランダム化比較試験において、われわれは900人の術後呼吸器合併症が高い患者(全身麻酔下で開腹手術を予定されており、一回換気量が8mL/kg)を登録した。われわれはランダムに患者をリクルートメント手技を用いた高PEEP(12cmH2O)群、同手技を用いない低PEEP(2cmH2O以下)群に割り付けた。
 プライマリエンドポイントは術後の呼吸器系合併症(術後5日目まで)とした。当該エンドポイントはITT解析とした。

結果:
 2011年2月から2013年1月までに447に員の患者がランダムに高PEEP群、453人が低PEEP群に割り付けられた。6人の患者が解析から除外された。高PEEP群におけるPEEP中央値は12 cmH2O(IQR 12—12)で、低PEEP群は2 cmH2O(0—2)であった。
 術後呼吸器合併症は高PEEP群のうち174人(40%)、低PEEP群のうち172人(39%)に起こった(相対リスク1.01; 95%信頼区間0.86—1.20; p=0.86)。低PEEP群の患者と比較して、高PEEP群の患者は術中に低血圧や血管作動薬を必要とすることが多かった。

結論:
 腹部開腹手術におけるリクルートメント手技を用いた高PEEP戦略は、術後の呼吸器合併症に保護的に寄与しなかった。術中の保護換気戦略として、リクルートメント手技を用いない低一回換気量・低PEEPを含めるべきと考えられる。


by otowelt | 2014-08-21 00:50 | 集中治療

母乳栄養は新生児の感染や喘鳴に対して保護的にはたらく

e0156318_9224056.jpg WHOの定義によれば、exclusive breastfeedingはビタミンやミネラルなどの外的摂取は許容される母乳栄養のことを指すようです。

Biesbroek G, et al.
The Impact of Breastfeeding on Nasopharyngeal Microbial Communities in Infants
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 190, No. 3 (2014), pp. 298-308.


背景:
 母乳栄養は、新生児の呼吸器系の感染やアトピー疾患に対して保護的な役割を持つ。いくつかの免疫刺激物質や抗菌作用のある物質が母乳に含まれており、これが保護的な役割を果たすと考えられるが、呼吸器系の細菌叢と母乳の関連についてはいまだ議論の余地がある。

目的:
 母乳栄養と鼻咽頭細菌叢の関連を調べること。

方法:
 この観察研究では、生後6週および6ヶ月時点での完全母乳育児:exclusive breastfeeding (n = 101)と完全人工栄養育児:exclusive formula feeding (n = 101)の細菌叢を16S-based GS-FLX-titanium-pyrosequencingを用いて解析した。

結果:
 生後6週時点で細菌叢の構成は母乳栄養と人工栄養で有意に異なっていた(元尺度構成:p = 0.001)。
e0156318_914222.jpg
(文献より引用:nMDSプロット)

 母乳栄養児では乳酸菌であるDolosigranulum(相対効果量[RES] 2.61; P = 0.005)とCorynebacterium(RES, 1.98; P = 0.039)が増加し、Staphylococcus(RES, 0.48; P 0.03)と嫌気性菌であるPrevotella(RES, 0.25; P < 0.001)やVeilonella(RES, 0.33; P < 0.001)が減少していた。
e0156318_913452.jpg
(文献より引用:UniFrac)
e0156318_9161276.jpg
(文献より引用:生後6週RES[多変量解析])

 CorynebacteriumDolosigranulumの増加は母乳栄養の44.6%にみられ、人工栄養では18.8%にみられた(相対リスク2.37; P = 0.006)。Dolosigranulumが多いと、新生児の喘鳴や気道感染が少なかった。ただし、生後6ヶ月時点ではこの関連は消失していた。
e0156318_9134348.jpg
(文献より引用)

結論:
 生後6週間の新生児において、母乳栄養と上気道の細菌叢構成に強い関連がみられた。これが呼吸器系の感染や喘鳴に対する保護的な役割に寄与している可能性が示唆される。


by otowelt | 2014-08-20 00:49 | 呼吸器その他