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COPD急性増悪の予防ガイドライン(ACCP/CTS)

 個人的には反論もいくつかありますが、まあ無難なガイドラインだと思います。ここでいう呼吸器リハビリテーションに、BMJの例の論文(COPD急性増悪への早期リハビリテーションは再入院率に効果なく12ヶ月死亡率を上昇)を考慮しなくてもよいのでしょうか?少なくとも当該論文はリファレンスには含まれておりませんでした。

Gerard J. Criner, et al.
Executive Summary: Prevention of Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: American College of Chest Physicians and Canadian Thoracic Society Guideline
Chest. 2014. doi:10.1378/chest.14-1677



1. COPD患者において、総合医学的マネジメントの一環として23価肺炎球菌ワクチンの接種を推奨するが、COPD急性増悪の予防効果についてはエビデンスが十分でない(Grade 2C)。
2. COPD患者において、COPD急性増悪の予防のために年1回のインフルエンザワクチンの接種を推奨する(Grade 1B)。
3. COPD患者において、COPD急性増悪を予防するための包括的な戦略として、禁煙指導・治療を推奨する(Grade 2C)。
4. 最近(4週間以内)に急性増悪があった中等症、重症、最重症のCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するために呼吸器リハビリテーションを推奨する(Grade 1C)。
5. 過去4週間よりも前に急性増悪があった中等症、重症、最重症のCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するために呼吸器リハビリテーションを推奨しない(Grade 2B)。
6. COPD患者において、COPD急性増悪を予防するために教育だけを行うことは推奨しない(CB)。
7. COPD患者において、COPD急性増悪を予防するためにケースマネジメントだけを行うことは推奨しない(CB)。
8. 過去あるいは最近の急性増悪のエピソードを有するCOPD患者において、入院を要するCOPD急性増悪を予防するために、教育および最低月1回の専門家の受診によるケースマネジメントを推奨する(Grade 1C)。
9. 中等症~重症COPD患者において、ケースマネジメントを用いないアクションプランと教育は、救急部受信あるいは入院を要するCOPD急性増悪を予防できないと考える(Grade 2C)。
10. COPD患者において、入院や救急部受診を要する重症COPD急性増悪を予防するための記述式アクションプランおよびケースマネジメントを用いた教育を用いてもよい(Grade2B)。
11. COPD患者において、通常のケアと比較してテレモニタリングは救急部受診や入院を要するCOPD急性増悪を予防しないと考える(Grade 2C)。
12. 中等症~重症COPD患者において、中等症~重症COPD急性増悪を予防するため長時間作用性β2刺激薬はプラセボと比較して使用が推奨される(Grade 1B)。
13. 中等症~重症COPD患者において、中等症~重症COPD急性増悪を予防するため長時間作用性抗コリン薬はプラセボと比較して使用が推奨される(Grade 1A)。
14. 中等症~重症COPD患者において、中等症~重症COPD急性増悪を予防するため長時間作用性抗コリン薬は長時間作用性β2刺激薬と比較して使用が推奨される(Grade 1C)。
15. 中等症~重症COPD患者において、軽症~中等症COPD急性増悪を予防するため短時間作用性抗コリン薬は短時間作用性β2刺激薬と比較して使用してもよい(Grade 2C)。
16. 中等症~重症COPD患者において、中等症COPD急性増悪を予防するため短時間作用性抗コリン薬+短時間作用性β2刺激薬は短時間作用性β2刺激薬と比較して使用してもよい(Grade 2B)。
17. 中等症~重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するため長時間作用性β2刺激薬は短時間作用性抗コリン薬と比較して使用してもよい(Grade 2C)。
18. 中等症~重症COPD患者において、中等症~重症COPD急性増悪を予防するため長時間作用性抗コリン薬は短時間作用性抗コリン薬と比較して使用が推奨される(Grade 1A)。
19. 中等症~重症COPD患者において、軽度~中等症COPD急性増悪を予防するため短時間作用性抗コリン薬+長時間作用性β2刺激薬は長時間作用性β2刺激薬と比較して使用してもよい(Grade 2C)。
20. 安定した中等症、重症、最重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するため吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬(吸入ステロイド薬単独ではない)の維持療法はプラセボと比較して使用が推奨される(Grade1B)。
21. 安定した中等症、重症、最重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するため吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬の維持療法は長時間作用性β2刺激薬と比較して使用が推奨される(Grade 1C)。
22. 安定した中等症、重症、最重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するため吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬の維持療法は吸入ステロイド薬と比較して使用が推奨される(Grade 1B)。
23. 安定したCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するため吸入抗コリン薬/長時間作用性β2刺激薬あるいは吸入抗コリン薬はいずれも効果的である(Grade 1C)。
24. 安定したCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するため吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬あるいは吸入抗コリン薬はいずれも効果的である(Grade 1C)。
25. 安定したCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するため吸入抗コリン薬/吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬あるいは吸入抗コリン薬はいずれも効果的である(Grade 2C)。
26. 適切な吸入治療にもかかわらず過去1年に1回以上の中等症あるいは重症のCOPD急性増悪の既往がある中等症~重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するために長期間マクロライドを使用してもよい(Grade 2A)。
 → COLUMBUS試験:アジスロマイシン維持療法はCOPD急性増悪の頻度を減少させる
 → アジスロマイシン1年間内服によりCOPD急性増悪のリスクが減少
27. 外来あるいは入院でCOPD急性増悪を起こした患者において、初回の発作を起こしてから30日以内のCOPD急性増悪による入院を予防するために、全身性ステロイドを経口あるいは静脈内に投与してもよい(Grade 2B)。
28. 外来あるいは入院でCOPD急性増悪を起こした患者において、初回の発作を起こしてから30日を超えた時点でのCOPD急性増悪による入院を予防するために、全身性ステロイドを経口あるいは静脈内に投与することが推奨される(Grade 1A)。
29. 慢性気管支炎を有し、過去1年に最低1回の急性増悪の既往がある中等症~重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するためにロフルミラストを使用してもよい(Grade 2A)。
 → ACROSS試験:COPDに対するロフルミラストの有効性
30. 安定したCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するために1日2回の経口テオフィリン徐放製剤を投与してもよい(Grade 2B)。
31. 過去2年に2回以上の急性増悪の既往のある中等症~重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するために経口N-アセチルシステインを投与してもよい(Grade2B)。
 → PANTHEON試験:中等症~重症のCOPD患者に対するN-アセチルシステイン長期投与は急性増悪を抑制する
 → HIACE試験:高用量N-アセチルシステインはCOPD患者の末梢気道機能を改善、急性増悪の頻度も減少
 → メタアナリシス:COPDに対する高用量NACは急性増悪を抑制
32. 最大限治療をおこなっても急性増悪が続く外来安定COPD患者において、COPD急性増悪を予防するために経口カルボシステインを使用してもよい(CB)。
33. COPD急性増悪のリスクのある中等症~重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するためにスタチンを投与することは推奨されない(Grade 1B)。
 → ATS2014:STATCOPE試験:スタチンはCOPD急性増悪を減少させない



by otowelt | 2014-10-31 00:56 | 気管支喘息・COPD

唾液からEGFR遺伝子変異を同定する技術

e0156318_2343530.jpg 将来、唾液や血清でがんの診断やEGFR遺伝子変異までわかる時代が来るかもしれませんね。

Fang Wei, et al.
Non-Invasive Saliva-Based EGFR Gene Mutation Detection in Lung Cancer Patients
Am J Respir Crit Care Med. First published online 15 Oct 2014 as DOI:10.1164/rccm.201406-1003OC


背景:
 EGFRの構造的活性は、上皮がん、特に非小細胞肺癌(NSCLC)においてよくみられる。EGFR遺伝子変異の同定は、EGFR標的治療の感度を予測することができる。これらの変異を同定する上で組織検体を主に用いるが、侵襲的でコストがかかり時間も要する。

目的:
 NSCLC患者において、非侵襲的なリアルタイムの安価なEGFR遺伝子変異の同定とモニタリングが望まれる。

方法:
 われわれは、EFIRMを用いて体液からEGFR遺伝子変異を同定した。

結果:
 その結果、22人のNSCLC患者の唾液および血清においてEGFR遺伝子変異をEFIRMで同定することができた。40人のNSCLC患者の唾液検体でブライドテストを実施したところ、ROC解析においてexon 19欠質変異を同定する上でAUC0.94、L858R変異では0.96であった。

結論:
 NSCLC患者の唾液検体においてEGFR遺伝子変異を同定する上で、EFIRMは効果的で制度の高い安価な手法である。われわれはこれを唾液ベースEGFR(SABER)変異同定法と名付ける。


by otowelt | 2014-10-30 00:25 | 肺癌・その他腫瘍

コントロール不良の気管支喘息に対して、ICSあるいはICS/LABAにチオトロピウムを加える有効性

e0156318_946195.jpg トリプル吸入については今年のATS要約でも2演題紹介しました。

ATS2014:気管支喘息に対するトリプル吸入療法(スピリーバレスピマット®+ICS/LABA)

 難治性の場合には仕方がないかな、とも思います。

Gustavo J. Rodrigo, et al.
WHAT IS THE ROLE OF TIOTROPIUM IN ASTHMA? A SYSTEMATIC REVIEW WITH META-ANALYSIS
Chest. 2014. doi:10.1378/chest.14-1698


背景:
 気管支喘息に対するチオトロピウムの役割ははっきりとは示されていない。このシステマティックレビューの目的は、喘息患者に対するチオトロピウムの効果と安全性を報告することである。

方法:
 ランダム化プラセボ対照試験が登録された。プリアマリアウトカムは、1秒量(FEV1)のピーク値およびトラフ値、朝・夜のピークフロー値(PEF)とした。

結果:
 13の試験(4966人)が登録された。3種類の異なる治療プロトコルが同定された。吸入ステロイド薬(ICS)にチオトロピウムを加えることで、有意に臨床的なPEF増加(22~24L/分)およびFEV1増加(140~150mL)が観察された。加えて、チオトロピウムは発作の頻度を減少させ(Number need to treat for benefit [NNTB] = 36)、喘息コントロールを改善させた。中~高用量ICSを使用してもコントロール不良な患者に対してチオトロピウムを用いることは、サルメテロールに非劣性であった。ICS/サルメテロールにチオトロピウムを加えることで、呼吸機能が改善し、喘息発作が減少し(相対リスク0.70; 95%信頼区間0.53 to 0.94, p<0.02, I2=0%, NNTB = 17), 喘息コントロールを改善させた。チオトロピウムは安全性の観点からも忍容性は高かった。

結論:
 ICSあるいはICS/サルメテロールでコントロール不良な中等症~重症の気管支喘息患者に対して、チオトロピウムを加えることはサルメテロールに非劣性であり、プラセボに優越性であった。主要な臨床的利益は、呼吸機能の改善、喘息発作の減少など。


by otowelt | 2014-10-29 00:25 | 気管支喘息・COPD

COPDがなくとも喫煙者では急性呼吸器疾患エピソードが多い

e0156318_23175684.jpg たばこが呼吸器系にもたらす悪影響を論じたものです。

Russell P. Bowler, et al.
Prediction of Acute Respiratory Disease in Current and Former Smokers With and Without COPD
Chest. 2014;146(4):941-950.


背景:
 COPDの既往がない現喫煙および既往喫煙者の呼吸器疾患の急性エピソードのリスク因子については不明である。

方法:
 Genetic Epidemiology of COPD(COPDGene)コホートにおいて8246人の非ヒスパニック系白人・黒人で現喫煙および既往喫煙者を同定した。6ヶ月ごとに抗菌薬や全身性ステロイドを要する急性エピソード、救急部受診、入院のエピソードがなかったかどうか調べた。負の二項回帰によって、急性呼吸器エピソートに関連する因子を同定した。Cox比例ハザードモデルによって、最初のエピソードまでの期間に、急性呼吸器疾患エピソードのリスクスコアに対する補正ハザード比を求めた。

結果:
 COPDがなかった4442人、軽症COPDのあった658人、中等症以上のCOPDがあった3146人が登録された。9303の急性呼吸器疾患エピソードが同定され、2707の入院が記録された(3044の急性呼吸器疾患エピソードと827の入院は非COPD患者)。
 登録前年の急性呼吸器疾患エピソード(ハザード比1.20、95%信頼区間1.15~1.24/1増悪ごと)、気道閉塞(ハザード比0.94、95%信頼区間0.91–0.96 /%予測FEV1の10%変化ごと)、健康関連QOL(ハザード比1.07; 95%信頼区間1.06-1.08 /SGRQ4単位ごと)は主要な予測因子であった。リスクはCOPDの有無にかかわらず同等であった。

結論:
 COPD患者において急性呼吸器疾患エピソードの頻度は多かったが、リスクはCOPDの有無にかかわらず同等であった。COPDがなくとも喫煙者では急性呼吸器疾患エピソードは多かった。


by otowelt | 2014-10-28 00:54 | 気管支喘息・COPD

モキシフロキサシンと高用量リファペンチンの週1回投与を含む6ヶ月レジメンは標準治療と同程度の有効性

e0156318_16322657.jpg 先週のNEJMは結核特集でした。

モキシフロキサシンを含む結核治療レジメン、標準治療に非劣性示さず

Amina Jindani, et al.
High-Dose Rifapentine with Moxifloxacin for Pulmonary Tuberculosis
N Engl J Med 2014; 371:1599-1608


背景:
 結核の治療に現在使用されているレジメンは6ヶ月の連日投与だが、そのレジメンよりも短く簡易的なレジメンが望まれている。

方法:
 新規に診断された喀痰抗酸菌塗抹陽性の薬剤感受性肺結核の患者を3レジメンのいずれかにランダムに割り付けた。すなわち、エタンブトール+イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミドを2ヶ月間連日投与した後、イソニアジド+リファンピシンを4ヶ月間連日投与するコントロールレジメン(2HREZ+4HR)、コントロールレジメンのイソニアジドをモキシフロキサシンに替えて 2ヶ月間連日投与した後、モキシフロキサシン+リファペンチン900mgを週2回2ヶ月間投与する4ヶ月レジメン(2MREZ+2MRpt)、コントロールレジメンのイソニアジドをモキシフロキサシンに替えて2ヶ月間連日投与した後、モキシフロキサシン+リファペンチン1200 mgを週1回4ヶ月間投与する6ヶ月レジメン(2MREZ+4MRpt)。喀痰検体を塗抹・培養によって評価した。プライマリアウトカムは治療失敗・再発の複合とし、非劣性マージン6%ポイント、90%信頼区間で非劣性を検証。

結果:
 合計827人の結核患者を南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ、ザンビアから登録した。患者の28%にHIVウイルスとの重複感染がみられた。per-protocol解析では、治療効果が不良の患者の割合はコントロール群が4.9%、介入群(6ヶ月)が 3.2%(補正後のコントロール群との差-1.8%ポイント、90%信頼区間-6.1~2.4)、介入群(4ヶ月)が18.2%(補正後のコントロール群との差13.6%ポイント、90%信頼区間8.1~19.1)だった。修正ITT解析において治療効果が不良だった患者の割合は、コントロール群が14.4%、介入群(6ヶ月)が13.7%(補正後のコントロール群との差0.4%ポイント、90%信頼区間-4.7~5.6)、介入群(4ヶ月)が26.9%(補正後のコントロール群との差13.1%ポイント、90%信頼区間6.8~19.4)だった。

結論:
 モキシフロキサシンと高用量リファペンチンの週1回投与を含む6ヶ月レジメンに、標準治療のコントロールレジメンと同程度の有効性が確認された。モキシフロキサシンとリファンペンチンの4ヶ月レジメンにはコントロールレジメンに対する非劣性はみられなかった。


by otowelt | 2014-10-27 00:39 | 抗酸菌感染症

腎移植患者のニューモシスチス肺炎に対するクリンダマイシン-プリマキンの有効性

e0156318_20444355.jpg アトバコンやペンタミジンをすっ飛ばしてクリンダマイシン-プリマキンの話題です。

Nickel P, et al.
Clindamycin-primaquine for pneumocystis jiroveci pneumonia in renal transplant patients.
Infection. 2014 Aug 29. [Epub ahead of print]


背景:
 腎移植患者においてST合剤はニューモシスチス肺炎(PCP)の第一選択として考慮されている。代替治療は十分に研究されていない。クリンダマイシン-プリマキン(C-P)はHIV関連のPCPには有効とされているが、腎移植患者では不明である。

患者および方法:
 レトロスペクティブコホート研究において、PCPを発症した57人の連続した腎移植患者を登録した。23人がC-P、34人がST合剤で治療された。

結果:
 有意ではなかったが、C-Pでは効果不良による治療失敗率が高かった(30.4% vs 20.6 %, p = 0.545)。この差は重症のPCPではさらに顕著にみられ(60% vs 37.5 %, p = 0.611)、サルベージ治療としてはC-Pは効果に乏しいと考えられた。ST合剤に不応性でC-P治療に切り替えられた2人の患者がC-P治療に失敗したが、C-P治療に失敗しST合剤に切り替えられた7人の患者は治癒した。

結論:
 C-Pは腎移植を受けたPCPの患者に忍容性が高かったが、ST合剤よりは効果が不良であった。しかしながら、ST合剤に禁忌や治療有害事象がある場合は代替治療としてC-Pを考慮してもよい。C-P治療が失敗した症例でもST合剤は効果的なサルベージ治療となろう。


by otowelt | 2014-10-25 00:15 | 感染症全般

胸腔鏡下の肺葉切除は開胸と同等の生存期間

e0156318_211867.jpg 意外にもこれまであまり検証されていなかったことのようです。

Subroto Paul, et al.
Long term survival with thoracoscopic versus open lobectomy: propensity matched comparative analysis using SEER-Medicare database
BMJ 2014; 349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g5575 (Published 02 October 2014)


目的:
 低侵襲の肺葉切除術と胸腔鏡下の肺葉切除術の長期生存を比較すること。

方法:
 SEERデータベースを用いて、2007年から2009年までに肺葉切除術を行われた肺癌の患者を抽出した。主要転帰は全生存期間、無再発生存、がん特異的生存に対する低侵襲性の肺葉切除術の影響とした。

結果:
 2007年から2009年まで6008人の肺葉切除術を施行された患者が登録された(うち4715人が開胸手術)。年齢中央値は74歳(IQR70-78)であった。フォローアップ期間中央値は40ヶ月であった。各群に1195人のマッチ患者を登録した。
 術後の合併症は、胸腔鏡群で1293人中629人(48.7%)、開胸群で4715人中2564人(54.4%)にみられた。マッチ患者ではそれぞれ48.9%、53.7%で、ほぼ同等であった。
 傾向マッチ解析において、全生存、無再発生存、がん特異的生存については両群とも差はみられなかった(全生存70.6% v 68.1%, P=0.55; 無再発生存86.2% v 85.4%, P=0.46; がん特異的生存92% v 89.5%, P=0.05)。
e0156318_2115133.jpg
(文献より引用:全生存)
e0156318_2122633.jpg
(文献より引用:無再発生存)
e0156318_2124799.jpg
(文献より引用:がん特異的生存)

結論:
 この傾向マッチ解析によれば、胸腔鏡下で肺葉切除を実施された患者は、開胸で肺葉切除を実施された場合と比較して全生存、無再発生存、がん特異的生存が同等だった。


by otowelt | 2014-10-24 00:18 | 呼吸器その他

患者さんに伝わりにくい医学用語 その1:狭窄(きょうさく)

e0156318_10161775.jpg・はじめに
 患者さんにとって分かりにくい医学用語がたくさんあります。しかし、病状説明の中にその言葉が登場してもその都度質問してこられる患者さんは少なく、理解できない単語として流されることもあります。私たち医療従事者は、普段当然のように使っている言葉が決して慣用的なものではないことを認識しなければなりません。


・狭窄(きょうさく)
医師:「---つまりここの気管支が狭窄しているわけです。」

患者さん:「はあ、キョウサクですか。」

医師:「はい、そうです。そのため気管支をカメラで直接のぞく必要があると思います。」

 この会話の場合、狭窄という言葉の意味がわからず、なぜカメラで気管支をのぞく必要があるのか、患者さんは理解できていません。

 狭窄は医学用語ではありません。ただし、日本の医療現場では頻繁に使われており、病名や症候にも登場するほどです(大動脈弁狭窄症、視野狭窄など)。狭窄の“狭”はその字の通り、“狭い”という意味です。そして、狭窄の“窄”は“窄(つぼ)む”という意味で、これは細長いものの先が小さくなることを表します。

 「気管支が狭窄している」ではなく、「気管支が狭くなっている」と説明する方がよいと思います。もちろん、気管支という言葉もなじみの薄い言葉であるため、気管・気管支・肺の絵を描いて説明した方がよいかもしれませんね。


by otowelt | 2014-10-23 00:01 | コラム:伝わりにくい医学用語

市中肺炎・医療ケア関連肺炎に対するGram染色は高い特異度を有し、標的治療に有用

e0156318_838672.jpg たった一言。素晴らしい研究です。

Fukuyama H, et al.
Validation of sputum Gram stain for treatment of community-acquired pneumonia and healthcareassociated pneumonia: a prospective observational study
BMC Infectious Diseases 2014, 14:534


背景:
 市中肺炎(CAP)に対する喀痰Gram染色の有用性については議論の余地がある。また、医療ケア関連肺炎(HCAP)の患者に対するこの手技の診断的価値を評価した報告はない。この研究の目的は、CAP・HCAPの患者において喀痰Gram染色の病原診断や標的治療に対する有用性を評価することである。

方法:
 われわれは2010年8月から2012年7月までに沖縄県立中部病院に入院した肺炎患者に対してプロスペクティブ観察試験を実施した。入院時に抗菌薬を投与する前に、訓練されたレジデントによって、得られた喀痰に対して迅速にGram染色を実施された。喀出困難な患者は、看護師が経鼻カテーテルによって喀痰を採取した。Gram染色の喀痰検体の質を解析した。また、Gram染色に基づいた病原微生物法的治療を経験的治療と比較した。単一の菌によるものと判断できない検体はpolymicrobialとした。
 肺炎の診断は、胸部レントゲン写真上新たな浸潤影の出現がみられ、下気道感染症を示唆する所見(発熱、咳嗽、喀痰、呼吸困難感、胸痛)があるものと定義された。

結果:
 670人の肺炎患者のうち、328人がCAP、342人がHCAPであった。喀痰検体は591人の患者から得られ、このうち478検体は良質の検体であった。HCAPの患者の方が有意にpolymicrobialパターンが多く、喀痰検体は不良であった。
 喀痰Gram染色の感度・特異度は、肺炎球菌に対して感度62.5%、特異度91.5%、インフルエンザ桿菌に対して感度60.9%、特異度98.2%、Moraxella catarrhalisに対して感度68.2%、特異度96.1%、Klebsiella pneumoniaeに対して感度39.5%、特異度98.2%、緑膿菌に対して感度22.2%、特異度99.8%、黄色ブドウ球菌に対して感度9.1%、特異度100%という結果だった。
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(文献より引用)
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(文献より引用)

 すでに抗菌薬を投与されている患者や誤嚥性肺炎が謳われる患者では診断能は低下した。病原微生物標的治療は、経験的治療と比較して、副作用を減少させたまま(p=0.049)同等の効果をもたらした。また、標的治療はICU入室率(p=0.017)や在院日数(p<0.001)が低かった。

結論:
 CAP・HCAPに対する喀痰Gram染色は高い特異度を有し、病原微生物の標的治療をすすめる上で有用である。

limitations:
・単一施設研究であること(Gram染色のメッカとも言える病院で、limitationとは思いませんが)
・非定型病原菌についての評価が不十分であること
・ランダム化比較試験でないこと


by otowelt | 2014-10-22 00:03 | 感染症全般

新刊案内:第2版 感染症診断に役立つグラム染色

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第2版 感染症診断に役立つグラム染色

 永田邦昭先生の感染症診断に役立つグラム染色第2版が発売されました。現在沖縄県立中部病院のGram染色の論文を読んでいるところで、Gram染色について考え直す良い機会になりました。最近はGram染色をしない環境なのでかなり腕がナマってしまいました。しかし、初期研修の頃に毎日のようにGram染色をしたことは私にとってかけがえのない経験です。

by otowelt | 2014-10-21 08:48 | その他