<   2015年 02月 ( 21 )   > この月の画像一覧

早期にピーナッツを摂取すれば、ピーナッツアレルギーは回避できる?

e0156318_1639861.jpg NEJMから、アレルギーに関する興味深い論文です。

George Du Toit, et al.
Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy.
N Engl J Med 2015; 372:803-813


背景:
 西欧では小児のピーナッツアレルギーの有病率がここ10年で倍増している。また、ピーナッツアレルギーはアフリカやアジアでもみられるようになってきた。そこでわれわれは、ピーナッツアレルギーのリスクが高い乳児におけるアレルギーの発症の予防に対して、ピーナッツを摂取する方法と摂取を回避する方法のどちらが有効かを調べた。

方法:
 重度の湿疹、卵アレルギー、またはその両方を有する乳児640人を、生後60ヶ月までの間、ピーナッツを摂取する群(ピーナッツ群)と、摂取を回避する群(回避群)にランダムに割り付けた。対象となった小児は、生後4ヶ月以上11ヶ月未満だった。
 プリックテストによるピーナッツ抽出物への反応の有無によって、測定可能な膨疹が観察されなかったコホートと、直径1~4mm膨疹が観察されたコホートに層別化し、ランダム化した。
 プライマリアウトカムは、生後60ヶ月時点でピーナッツアレルギーを有する参加者の割合とし、コホートごとに独立に評価した。

結果:
 プリックテストがベースラインで陰性だったITT530人では、生後60ヶ月時のピーナッツアレルギー有病率は、回避群13.7%、ピーナッツ群1.9%であった(P<0.001)。プリックテスト陽性であったITT98人では、同様に回避群35.3%、ピーナッツ群10.6%であった(P=0.004)。重篤な有害事象には群間差はなかった。
 ピーナッツ特異的IgG4抗体の上昇はピーナッツ群でみられ、回避群では同IgE 抗体価の上昇がみられた。プリックテストでの膨疹がより大きいこと、ピーナッツ特異的IgG4/IgE比がより小さいことは、ピーナッツアレルギーの発症と関連していた。

結論:
 ピーナッツに対するアレルギーのリスクが高い小児において、ピーナッツの摂取を早期に開始することで、アレルギーの発症頻度が有意に低下する。


by otowelt | 2015-02-27 00:23

肺癌が疑わしい患者に対してEBUS-TBNAによる初期診断は治療決定までの期間を短縮する

e0156318_16584987.jpg 最初からEBUS-TBNAをした方がいいのでは?という実臨床に即した論文です。

Neal Navani, et al.
Lung cancer diagnosis and staging with endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration compared with conventional approaches: an open-label, pragmatic, randomised controlled trial
The Lancet Respiratory Medicine, Published Online: 03 February 2015


背景:
 肺癌の診断および病期診断は、治療オプションや疾患予後を推定する重要なプロセスである。われわれは、肺癌を疑われた患者に対する初期の検索として気管支内超音波ガイド下経気管支生検(EBUS-TBNA)についてアセスメントした。

方法:
 このオープンラベル多施設共同ランダム化比較試験において、われわれはCTを行い病期I~IIIAの肺癌を疑われた患者をイギリスの6施設から登録し、ランダムにEBUS-TBNAあるいは通常の気管支鏡を用いて病期診断を進める群に割り付けた。EBUS-TBNAによってリンパ節診断ができない場合、超音波ガイド下の針生検(EUS-FNA)を代替手技として認めた。ランダム化は短径1cm以上の縦隔リンパ節の存在や登録施設によって層別化された。手技的な特性もあって、患者および術者への盲検化はできなかった。プライマリエンドポイントは病期診断手技後から治療決定までの期間とした。解析はintention-to-diagnose。

結果:
 2008年6月10日から2011年7月4日までの間、われわれは133人の患者をランダムにEBUS-TBNA群66人、通常気管支鏡群67人に割り付けた。2人のEBUS-TBNA群の患者がEUS-FNAを実施することになった。治療決定までの期間の中央地はEBUS-TBNA群の方が通常の気管支鏡群よりも短かった(14日; 95%信頼区間14–15 vs. 29日; 95%信頼区間23–35、ハザード比1.98, 95%信頼区間1.39–2.82, p<0.0001)。いずれの群も1人の患者がCTガイド下生検によって気胸になった。

結論:
 治療決定までの期間を短くする意味でも、肺癌を疑われた患者に対して初期の診断手技としてEBUS-TBNAを考慮すべきであろう。


by otowelt | 2015-02-26 00:30 | 気管支鏡

Anti-synthetase syndromeはNSIP/OPが多く、コンソリデーションは軽減するが線維化は悪化しやすい

e0156318_22444470.jpg 重症例が多く、まとまった画像所見の報告が少ないため参考になります。

Debray MP, et al.
Interstitial lung disease in anti-synthetase syndrome: Initial and follow-up CT findings.
Eur J Radiol. 2015 Mar;84(3):516-23.


目的:
 抗合成酵素症候群(Anti-synthetase syndrome、抗ARS抗体症候群)に関連した間質性肺疾患(AS-ILD)の胸部CTフォローアップ結果について記載する。

方法:
 AS-ILDと診断された33人(17人が抗Jo1抗体陽性、13人が抗PL12抗体陽性、3人が抗PL7抗体陽性)に対して、2人の独立した胸部放射線科医がレトロスペクティブに薄切スライスCTを評価した。そのCTパターン、分布、拡がりなどを評価した。また、26人の患者についてはフォローアップ期間中の変化について記載した(中央値27ヶ月、13-167ヶ月)

結果:
 診断時、スリガラス影(100%)、網状影(87%)、牽引性気管支拡張(76%)がもっともよく観察されたCT所見であった。45%の患者にコンソリデーションがみられた。NSIPパターン、OPパターン、あるいはその混合パターンはそれぞれ33人中15人(45%)、7人(21%)、8人(24%)に観察された。
 フォローアップ期間中、コンソリデーションは12人中11人(92%)で軽減ないし消失した。それらの患者のうち初期6ヶ月で観察されたのは7人だった。一方、蜂巣肺の進行や出現がみられたのは26人中10人(38%)だった。病変の拡大がみられたのは26人中9人(35%)だった。

結論:
 AS-ILDの診断時CTは、主にNSIP、OP、その混合パターンを示唆するものであった。多くの例でコンソリデーションは軽減ないし消失したが、3分の1以上の患者で線維化が進行した。


by otowelt | 2015-02-25 00:29 | びまん性肺疾患

特発性間質性肺炎を合併した肺癌の治療アウトカムは特にIPFで不良

e0156318_17553353.jpg IIPsにCOPが含まれるのは分かるのですが、肺癌などの合併症を論じる上で他のIIPsと一緒にすると違和感を感じます。また、治療モダリティがいっしょくたに解析されています。

Kreuter M, et al.
Treatment and outcome of lung cancer in idiopathic interstitial pneumonias.
Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2015 Jan 5;31(4):266-74.


背景:
 特発性間質性肺炎(IIPs)は肺癌のリスクを上昇させる。しかしながら、予後や治療効果についてのデータに乏しい。われわれは、肺癌を合併したIIPs患者のアウトカムを解析した。

方法:
 間質性肺疾患センターにおいてIIPsと診断された患者で、肺癌の診断を受けたものを本研究に登録した。

結果:
 265人の特発性肺線維症(IPF)、142人のNSIP、71人の特発性器質化肺炎(COP)のうち、それぞれ16%、4%、6%が肺癌と診断された。
 IPFの患者は93%が男性、年齢中央値は67歳、%努力性肺活量 82%、%DLCO 41%、平均生存期間20ヶ月であった。NSIPの患者は67%が男性、年齢中央値は70歳、%努力性肺活量 72%、%DLCO 43%、平均生存期間35ヶ月であった。COPの患者は50%が男性、年齢中央値は66歳、%努力性肺活量 93%、%DLCO 77%、平均生存期間88ヶ月であった。
 肺癌治療による有意な毒性は、IPF患者の55%、NSIP患者の20%、COP患者の0%に起こった。術後30日死亡はIPF患者で25%、NSIP/COP患者で0%だった。また放射線肺炎はIPF患者の24%に起こった。

結論:
 IIPsにおいて肺癌はよくみられる合併症であり、他のIIPsと比較して生存アウトカムが不良である。とりわけIPFでは、肺癌治療はその毒性の高さと関連していた。


by otowelt | 2015-02-24 00:13 | 肺癌・その他腫瘍

非小細胞肺癌の診断後,抗癌療法が実施できず緩和療法を行った患者の検討

e0156318_1458348.jpg  実臨床にマッチした、こういった報告はとても重要だと思います。

佐藤奈穂子ら.
非小細胞肺癌の診断後,抗癌療法が実施できず緩和療法を行った患者の検討.
日呼吸誌, 4(1): 59-65, 2015


背景:
 非小細胞肺癌診断後に抗癌治療ができずbest supportive care(BSC)となった患者の調査と緩和病棟転院(緩和転院)の指標を探索した.

方法:
 2004年11月~2012年12月に初回からBSCとなった75人を後方視調査した.

結果:
 年齢中央値は78 歳(45~99 歳),男性が59 人(78.7%)であった.腺癌45 人(60%),扁平上皮癌22 人(29.3%)の順で多く,その他8 人(多型癌2 人,神経内分泌大細胞癌2 人,非小細胞肺癌4 人)であった.診断時の病期はstage III~IV 期が全体の90.6%を占め多かった.PSは,PS 0~2 が36 人(48.0%),PS 3~4 が39 人(52.0%)であった.
 初回からBSC を選択した理由は,① PS 不良(PS 3~4)のため治療適応がなかったものが39 (52.0%)であった.
 転帰は在院死32.0%,緩和転院20.0%,在宅医療48.0%で,各生存期間中央値は24日,67日,218日であった.緩和転院の指標のため,その中央値(67日)以下の生存に関係する因子を多変量解析で同定すると低アルブミン値と低ヘモグロビン値が関係していた.

結論:
 非小細胞肺癌の診断後に,患者の治療希望がないことやすでに抗癌治療が実施できないことが原因でBSC のみとなった患者では,BSC 選択の背景に年齢や合併症の存在があり,生存にはAlb 値が関与し,緩和転院の判断にはアルブミン値やヘモグロビン値などの栄養状態が関係していた.


by otowelt | 2015-02-23 00:49 | 肺癌・その他腫瘍

中等症以上の気管支喘息の小児に対するネブライザーマグネシウムは有意な臨床的効果なし

e0156318_1432368.jpg コクランレビューでもネブライザーマグネシウムの効果については懐疑的です(Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD003898.)。

・マグネシウムは気管支喘息発作に本当に効果があるのか?

Alansari K, et al.
Nebulized magnesium for moderate and severe pediatric asthma: A randomized trial.
Pediatr Pulmonol. 2015 Feb 4. doi: 10.1002/ppul.23158.


背景:
 静注の硫酸マグネシウムは、中等症および重症気管支喘息に対する気管支拡張薬と全身性ステロイド治療に追加するレスキュー治療として稀に投与されることがある。われわれは、ネブライザーマグネシウムが過度のリスク上昇をもたらすことなく利益を与えることができるのではないかと仮説を立てた。

方法:
 2~14歳の中等症および重症の気管支喘息を有する小児(PRAM重症度スコア4点以上)を、通常の治療(アルブテロール・イプラトロピウムネブライザー+静注メチルプレドニゾロン)を加えた後にランダムにネブライザーマグネシウム800mgあるいはネブライザー生理食塩水(プラセボ)の治療に割り付けた。退院可能な状態になるまでの期間をプライマリアウトカムに設定した。また、PRAM重症度スコアの改善やそのほかのセカンダリアウトカムを両群で比較した。

結果:
 191人がマグネシウム群、174人がプラセボ群に割り付けられた。ベースラインの平均PRAMスコアは両群ともに同等であった。治療後2時間時点で、ネブライザーマグネシウム群は有意に血中マグネシウム濃度を上昇させた(0.85 vs 0.82 mmol/L, P = 0.001)。深刻な有害事象は観察されなかった。退院可能な状態になるまでの期間は、有意ではないもののマグネシウム群でやや短縮できた(オッズ比 1.14, 95%信頼区間0.93 to 1.40, P = 0.20、平均期間:14.7時間 vs. 15.6時間)。

結論:
 ネブライザー気管支拡張薬と全身性ステロイドにネブライザーマグネシウム治療を加えても、中等症あるいは重症の気管支喘息小児の退院までの期間を有意に短縮させることはできない。


by otowelt | 2015-02-20 00:53 | 気管支喘息・COPD

重症市中肺炎に対するメチルプレドニゾロン投与は治療失敗を減少させる

e0156318_16271270.jpg 先日Lancetにも類似の報告が掲載されたのが記憶に新しいですね。

入院を要する市中肺炎に対する全身性ステロイド投与は臨床的安定性をはやめる

TrialAntoni Torres, et al.
Effect of Corticosteroids on Treatment Failure Among Hospitalized Patients With Severe Community-Acquired Pneumonia and High Inflammatory ResponseA Randomized Clinical.
JAMA. 2015;313(7):677-686. doi:10.1001/jama.2015.88.


背景:
 重症市中肺炎の患者において、治療の失敗はさらなる炎症正反応やアウトカム不良と関連している。ステロイドはこうした患者においてサイトカイン遊離を軽減するが、併用治療についてはいまだ議論の余地がある。

目的:
 重症市中肺炎に対するステロイドの効果と高度炎症反応を調べること。

デザイン:
 スペインの3病院で実施された多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験である。登録患者は重症市中肺炎で、入院時に高度炎症反応(CRP150mg/L超)がみられたものとした。患者は2004年6月から2012年2月まで登録された。

介入:
 患者は入院36時間以内に、ランダムにメチルプレドニゾロン0.5mg/kg 12時間ごと(61人)あるいはプラセボ(59人)に5日間割り付けられた。

アウトカム:
 プライマリアウトカムは治療失敗(早期治療失敗の複合アウトカム[ショックへの進展などの臨床悪化、人工呼吸器装着を要する、治療72時間以内の死亡]あるいは後期治療失敗の複合アウトカム[画像上の悪化、遷延性の重症呼吸不全、ショックへの進展、人工呼吸器装着を要する、治療開始後72~120時間での死亡]、およびこれら早期・後期の複合アウトカムの両方)とした。院内死亡率はセカンダリアウトカムとし、有害事象についても調べた。

結果:
 両群とも使用した抗菌薬に差はみられず、セフトリアキソン+レボフロキサシンorアジスロマイシンのレジメンが最も多かった。PSIはI-IIIがメチルプレドニゾロン群18人(30%)、プラセボ群14人(24%)だった。PSI IVはそれぞれ21人(34%)・26人(44%)、Vは22人(36%)・19人(32%)だった。
 メチルプレドニゾロン群の患者の方が治療失敗が少なかった(8人[13%] vs.18人[31%]) (P = .02)。ステロイド治療は治療失敗のリスクを減少させた(オッズ比0.34、95%信頼区間0.14-0.87; P = .02)。両群において院内死亡率に差はみられなかった(6人[10%] vs. 9人[15%]; P = .37)。メチルプレドニゾロン群では高血糖が18%にみられ、プラセボ群では12%にみられた(P = .34)。
e0156318_18125465.jpg
(文献より引用)

結論:
 高度炎症反応を伴う重症市中肺炎の患者に対して、急性期のメチルプレドニゾロン使用はプラセボと比較して治療失敗を減少させる効果がある。


by otowelt | 2015-02-19 00:52 | 感染症全般

重症気管支喘息の気道リモデリングの軽減にカルシウム拮抗薬が有効

e0156318_1282240.jpg 筆者の研究グループは、気道リモデリングとカルシウムイオンについて注目しており、過去にも報告があります(J Exp Med. Dec 24, 2007; 204(13): 3173–3181.)。

Pierre-Olivier Girodet, et al.
Calcium Channel Blocker Reduces Airway Remodeling in Severe Asthma: a Proof-of-concept Study
Am J Respir Crit Care Med. First published online 29 Jan 2015 as DOI: 10.1164/rccm.201410-1874OC


背景:
 重症気管支喘息は世界において公衆衛生上大きな問題である。気管支平滑筋量の増大は、重症気管支喘息における気道リモデリングの特徴であり、これは治療抵抗性や予後不良と関連している。In vitroにおいて、カルシウム拮抗薬であるガロパミルは重症気管支喘息における気管支平滑筋細胞の増生を減少させると報告されている。

目的:
 重症気管支喘息患者における気道リモデリングに対するガロパミルの効果を評価するため、われわれは二重盲検ランダム化プラセボ対照比較試験を実施した。

方法:
 患者はガロパミルを投与される群(16人)あるいはプラセボ群(15人)に1年間割り付けられた。その後3ヶ月の追加期間フォローアップした。ベースラインおよび治療後の気道リモデリングは、気管支鏡およびCT検査で評価した。プライマリエンドポイントは気管支平滑筋領域とした。セカンダリエンドポイントは、標準化気管支平滑筋厚、喘息発作の頻度とした。

結果:
 気管支平滑筋領域は、ガロパミル群の治療前後で減少したが、プラセボ群では変化しなかった。気管支平滑筋領域の群間差は統計学的に有意ではなかった(-3.4±1.3%, 95%信頼区間6.1 to -0.8 vs. -2.8±1.6%, 95%信頼区間-6.1 to 0.5、p=0.75)。
e0156318_1202635.jpg
(文献より引用)

 反面、標準化気管支平滑筋厚は有意に群間差が観察された(p=0.03)。
e0156318_121046.jpg
(文献より引用)

 治療中の1ヶ月あたりの平均発作数にも差はみられなかったが、治療後のフォローアップ期間ではガロパミル群の方が有意に発作数が少なかった。また、QOLや呼吸機能検査に対するガロパミルの影響はみられなかった。有害事象にも差はみられなかった。

結論:
 1年間のガロパミル治療は気管支平滑筋のリモデリングを軽減し、喘息発作を予防する。


by otowelt | 2015-02-18 00:17 | 気管支喘息・COPD

進行IPFに対するピルフェニドン+吸入NACはピルフェニドン単剤よりも効果的

e0156318_9301181.jpg 昨年のATSの報告とNEJMの掲載について知らない呼吸器内科医はいないと思いますが、N-アセチルシステインは現時点ではIPFに対してネガティブと考えられています。

ATS2014:IPFに対するアセチルシステインはプラセボと差なし

 ただ、日本では錠剤ではなく吸入NACが使用されており、これについてはどうなのだろうかと現場で疑問は残ったままでした。
 経口N-アセチルシステインと吸入N-アセチルシステインの違いについて論文中に記載があります。そもそもN-アセチルシステインはグルタチオンの前駆物質であり、体内のグルタチオンの量を増やします。このグルタチオンの抗酸化作用がIPFに効果があるとされています。ただ、吸入N-アセチルシステインは直接肺胞に到達して作用するため、経口よりも効果が高いと考えられています(Thorax1994; 49: 670–5.、Eur J Respir Dis 1987; 70: 73–7.)。

Sakamoto S, et al.
Effectiveness of combined therapy with pirfenidone and inhaled N-acetylcysteine for advanced idiopathic pulmonary fibrosis: A case–control study
Respirology, Article first published online: 2 FEB 2015, DOI: 10.1111/resp.12477


背景および目的:
 特発性肺線維症(IPF)に対するピルフェニドン治療は、肺活量の減少を抑制し、無増悪生存期間(PFS)を延長させる。吸入N-アセチルシステイン(NAC)とピルフェニドンの併用療法の効果についてはよく分かっていない。われわれは、進行IPF患者に対するこの併用治療の効果について検証した。

方法:
 進行IPF(日本呼吸器学会stage III/IVのIPF)の診断を受け、努力性肺活量(FVC)が過去6ヶ月(±2ヶ月)に10%以上相対的に減少している患者を登録した。アウトカムは12か月フォローアップ時の呼吸機能検査とした。FVC10%以上の減少がある場合効果なし、FVC10%未満の減少は効果ありとした。臨床的特徴、効果、PFSをNAC+ピルフェニドン群(24人)とピルフェニドン単剤群(10人)で比較した。

結果:
 34人のIPF患者(59-82歳)から得られたデータを解析した。7人が副作用やコンプライアンス不良のため脱落した。そのため27人(男性23人、女性4人)が解析対象となった。
 12ヶ月フォローアップ時に、治療は併用群の17人中8人(47%)、ピルフェニドン単剤群10人中2人(20%)で効果がみられた。併用群では6ヶ月時のFVCの平均減少は210mLで、ピルフェニドン単剤群では610mLであった(P < 0.01)。また、併用群ではFVCの年減少は610mLであり、ピルフェニドン単剤群では1320mLであった(P < 0.01)。PFSは併用群の方が長かった(304日 vs. 168日、P = 0.016)。
 光線過敏症は1人のみにみられ、4人は消化器症状のため継続不能となった。吸入NACにより細菌性肺炎の報告も過去にあるが、本研究ではそういった有害事象は観察されなかった。

結論:
 進行IPF患者に対する吸入NACと経口ピルフェニドンの併用は、FVCの年減少を抑制し、PFSを改善させる。


by otowelt | 2015-02-17 00:41 | びまん性肺疾患

ガーシュウィンは多形膠芽腫だった?

e0156318_119452.jpg●はじめに
 ジョージ・ガーシュウィン(1898年~1937年)はアメリカの作曲家で、彼の作品はジャズテイストの混じった壮大な曲が多いことで知られています。ラプソディー・イン・ブルーという曲を誰しも一度は耳にしたことがあるでしょう。
e0156318_1182645.jpg
(ラプソディー・イン・ブルー[ピアノ編曲])

●脳腫瘍の手術翌日に急逝
 彼が亡くなる年の1937年2月。指揮のリハーサル中に指揮台の上で突然倒れそうになりました。その後、強い幻臭症状を訴え直後に意識障害を発症したそうです。このてんかん症状はその後も何度かみられるようになり、頭痛や嘔気を合併してきたそうです。同年6月にてんかんにしては症状が激烈であることから脳腫瘍を疑われました。

 7月に入って脳室造影検査(頭蓋骨に小さな穴をあけて行う造影法だったそうです)を行い、右側頭葉に巨大な腫瘍があることがわかりました。当時はCT検査なんてありませんでしたから、脳腫瘍の診断は極めて難しかったことと思います。

 開頭手術を行い、腫瘍は摘出されたそうです。しかしながら、術後ガーシュウィンの意識が戻ることはありませんでした。手術の翌日に亡くなりました。死亡原因が手術の合併症であったかどうかは調べてみてもよく分かりませんでした。

 ガーシュウィンの曲を聴いてみると分かりますが、遊園地のようにワクワクする曲が多いです。これまでのオーケストラとは違い、ジャズっぽい感じを抱く人も多いでしょう。38歳という若さでこの作曲家を失ったことは、アメリカ音楽界にとって大きな打撃でした。

 なお、脳腫瘍は多形膠芽腫だったとされています(Semin Neurol. 1999;19 Suppl 1:3-9.)。

<音楽と医学>
バッハの失明の原因は医療ミス?
チャイコフスキーの死因はコレラか自殺か?
モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒

<偉人たち>
Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
Clara細胞の発見者:Max Clara
サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram



by otowelt | 2015-02-16 00:07 | コラム:医学と偉人