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トリプル吸入療法:COPDに対するレルベア®+エンクラッセ®は呼吸機能を改善

e0156318_23175684.jpg トリプル吸入製剤が発売されるのであれば、GSKが一番乗りと思われます。

Thomas M. Siler, et al.
Efficacy and safety of umeclidinium added to fluticasone furoate/vilanterol in chronic obstructive pulmonary disease: results of two randomized studies
Respiratory Medicine, Articles in Press


目的:
 この研究(NCT01957163; NCT02119286)は、COPD患者においてフルチカゾンフランカルボン酸/ビランテロール(レルベア®:FF/VI 100/25μg)にウメクリジニウム(エンクラッセ®:UMEC 62.5μgおよび125μg)を追加することの効果と安全性を調べたものである。

方法:
 12週間におよぶ多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験が実施された。適格患者は、オープンラベルFF/VI(ITT 1238人)にUMEC62.5μg、UMEC125μg、プラセボを追加する群に1:1:1にランダム化割り付けされた。プライマリエンドポイントは85日目のトラフ1秒量とした。セカンダリエンドオピントは84日目の吸入後(0-6h)加重平均1秒量とした。健康関連QOLとしてSGRQスコアが用いられた。

結果:
 GOLD病期はII~IIIを合わせると80%以上であった。ベースラインのCATスコアはおおむね16~17点であった。
 両試験において、トラフ1秒量はプラセボと比較して有意にUMEC(62.5μg、125μg)追加群で改善がみられた(range: 0.111–0.128 L, p<0.001 [85日目])。吸入後加重平均1秒量についても有意な改善がみられた(range: 0.135–0.153 L, p<0.001 [84日目])。SGRQスコアは2試験において結果が一致しなかった。全治療群で、有害事象は同等であった。

結論:
 COPDに対してFF/VIにUMECを追加することで有意な呼吸機能の改善がみられた。


by otowelt | 2015-06-30 00:26 | 気管支喘息・COPD

高齢者は気管支喘息の治療失敗リスクが高い

e0156318_11175889.jpg 高齢者は、吸入手技やアドヒアランスという問題点を常に孕みます。

Ryan M Dunn, et al.
Impact of Age and Gender on Response to Asthma Therapy
Am J Respir Crit Care Med. First published online 11 Jun 2015 as DOI:10.1164/rccm.201503-0426OC


背景:
 気管支喘息の有病率・罹患率の差には、年齢と性別が関連している。

目的:
 年齢や性別が喘息フェノタイプと関連しているかどうか、また軽症~中等症の気管支喘息患者の治療反応に影響するかどうか調べる。

方法:
 1993年から2003年までの10の臨床試験に参加した患者において、年齢や性別が喘息フェノタイプに与える影響、治療失敗に与える影響を調べた。

結果:
 1200人の患者が登録された(年齢中央値30.4歳、男性43.3%、女性56.7%)。30歳以上の患者では高頻度で治療失敗が観察された(17.3% vs. 10.3%; オッズ比1.82, 95%信頼区間1.30-2.54; P < 0.001)。呼吸機能が不良の場合や喘息治療期間が長い場合には、治療失敗リスクは高かった。
 治療内容によって層別化を行うと、吸入ステロイド薬治療を受けている30歳以上の患者では治療失敗が多かった(オッズ比/年1.03、95%信頼区間1.01-1.07)。
 治療失敗に関して男女差はみられなかった(15.2% vs. 11.7%, P =0.088)。

結論:
 特に吸入ステロイド薬治療を受けている高齢者では喘息の治療失敗リスクが高かった。性別による治療失敗率の差は観察されなかった。


by otowelt | 2015-06-29 00:41 | 気管支喘息・COPD

胸膜癒着術

※2015年6月27日改訂

●はじめに
 胸膜癒着術は、気胸や癌性胸膜炎に適用されます。ただし、その方法についてはコンセンサスがなく、エビデンスも多くありません。この処置は、胸膜を癒着させ胸腔を閉鎖すれば気胸の再発を予防できるのではという発想のもと1930年代に自然気胸に用いられました。当時、既にタルクや自己血を胸腔内に注入しており、古い歴史を持ちます。
Bethune, N. Pleural poudrage: new technique for the deliberate production of pleural adhesion as preliminary to lobectomy. J Thorac Surg 1935; 4:251.

 癌性胸膜炎に一般的に使用されているピシバニール®(OK432)は1980年代から使用され始めました。自然気胸に対する5年再発率を16%減少することができたという報告があります(25% vs 41%)。タルクによる胸膜癒着術では、自然気胸がほとんど再発しなかったという報告があるため、欧米では自然気胸に対する胸膜癒着術はタルクが主流です。
Gyorik S et al; Long-term follow-up of thoracoscopic talc pleurodesis for primary spontaneous pneumothorax. Eur Respir J. 2007 Apr;29(4):757-60.

 胸膜癒着術の全例が成功するわけではありません。当然ながら肺の拡張が得られないようなケースではそもそも意味がありません。壁側胸膜と臓側胸膜の2つの胸膜が離れた状態では、それらがくっつく“糊”を入れても空振りに終わります。また胸膜播種が重度の場合、何度やっても癒着できないケースもあります。その他、胸膜癒着術が成功しにくい要因があります。例えば胸水中pHが7.28以下のような例だと、失敗率は増加します(オッズ比4.46, 95%信頼区間2.69-7.45, p<0.0001)。他にも胸水中%LDHの上昇が146%を上回るもの(オッズ比4.11,95%信頼区間1.81-9.64)、胸水糖の低下(72mg/dL以下)(オッズ比3.02,95%信頼区間1.77-5.21)は胸膜癒着術失敗のリスク因子とされています。
Heffner JE et al. Pleural fluid pH as a predictor of pleurodesis failure: analysis of primary data. Chest 2000 Jan;117(1):87-95.


●癒着剤
 癒着剤として何を投与するかですが、大きく分けると2種類あります。
・胸膜を化学的に刺激し、胸膜炎を惹起する薬剤:
  タルク(ユニタルク®)、テトラサイクリン系、ピシバニール®(OK432)、抗癌剤、ポビドンヨード、50%ブドウ糖
・それ自体に接着作用がある薬剤:
  フィブリン糊、自己血、50%ブドウ糖


(1)タルク(ユニタルク®)・・・癌性胸膜炎、気胸に使用されている
 2013年12月9日、悪性胸水の治療薬であるユニタルク®胸膜腔内注入用懸濁剤4gが発売されました。タルクは、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末です。癌性胸膜炎による悪性胸水に対する胸膜癒着術の第一選択とされています。メタアナリシスでは、タルクは最も胸膜癒着術の成績がよい薬剤とされており、最低でも78%の成功率が維持できるというすぐれものです。また、胸腔鏡下にタルクを散布する方法もかなり有効とされています。ただし日本では胸腔鏡下でのタルク散布は保険適用外です。
・Dresler CM et al. Phase III intergroup study of talc poudrage vs talc slurry sclerosis for malignant pleural effusion. Chest 2005 Mar;127(3):909-15.
・Tan C, et al. The evidence on the effectiveness of management for malignant pleural effusion: a systematic review. Eur J Cardiothorac Surg. 2006;29(5):829.


 ユニタルク®は1回4gを生食50mLとともに胸腔内に注入します。10gを超える使用では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの重篤な副作用も報告されています。また、タルク粒子の構成半分が10µmを下回るような微小粒子末は、早期の死亡リスクを上昇させます。
Arellano-Orden E, et al. Small Particle-Size Talc Is Associated with Poor Outcome and Increased Inflammation in Thoracoscopic Pleurodesis. Respiration. 2013;86(3):201-9.

 ユニタルクは生理食塩水で懸濁して使用します。放っておくと沈殿してしまうため、溶液内にタルクをまんべんなく行き渡らせて注入するよう心掛けましょう。ピシバニールと比較して発熱が軽度で済むのではないかと考えられていますが、実臨床ではそこまでの差は感じていません。

 参考記事:日本人の悪性胸水に対するタルクの胸膜癒着術は有効


(2)ピシバニール®(OK432)…癌性胸膜炎に使用されている、時に気胸に使用されている
 もともと抗癌剤というカテゴリーに入る薬剤で、注射用製剤で0.2・0.5・1・5KE/バイアルがあります。1KEはStreptococcus pyogenes (A群3型)Su株ペニシリン処理凍結乾燥粉末2.8mg乾燥菌体として0.1mgに相当し、KEとはドイツ語でKlinische einheit(臨床単位)のことを指します。ベンジルペニシリンカリウムを含有していますので、ペニシリンアレルギー患者には禁忌です。また、心臓疾患、腎臓疾患患者には慎重投与となっています。1回あたり5~10KEを胸腔内に注入します。1KEと比較して10KEを30分かけて1日目と3日目で投与したほうがドレナージ期間の短縮(4.0±1.3日 vs 7.0±1.6日, p=0.028)および総排液量の減少(675±215mL vs 1356±277mL, p<0.001)に有利であったという報告があります。
Kasahara K, et al. Randomized phase II trial of OK-432 in patients with malignant pleural effusion due to non-small cell lung cancer. Anticancer Res. 2006 Mar-Apr;26(2B):1495-9.

 またピシバニール®はシスプラチンやブレオマイシンの胸腔内投与よりも、私たち呼吸器内科医にとって使いやすいという側面もあります。白金製剤の胸腔内投与は激烈な症状が出ることがあり、安全性やエビデンスが蓄積されているピシバニール®の方がまだ安心できます。
Shimizu T, et al. Comparison of intrapleural OK-432 and cisplatin for malignant pleural effusion in lung cancer patients. Gan To Kagaku Ryoho 2005 Aug;32(8):1139-43.

 シスプラチン単独、ピシバニール®(OK432)単独、両者を併用する3群において、180日後の再発率が64.7%、52.9%、13.3%だったという報告があり、併用療法の有用性も指摘されています(ただしこの場合ドレーン留置期間は8.4日、5.5日、12.9日)。
Ishida A, et al. Intrapleural cisplatin and OK432 therapy for malignant pleural effusion caused by non-small cell lung cancer. Respirology. 2006 Jan;11(1):90-7.

 日本で行われたJCOG9515試験で、4週間の間の胸水無増悪生存率は、ピシバニール®(OK432)で75.8%、ブレオマイシン68.6%、シスプラチン+エトポシド70.6%で有意差はなかったものの、ピシバニール®(OK432)が良好な成績であったことから日本ではピシバニール®を含むメニューがよく使用されます。
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図:Yoshida K, et al. Randomized phase II trial of three intrapleural therapy regimens for the management of malignant pleural effusion in previously untreated non-small cell lung cancer: JCOG 9515. Lung Cancer. 2007 Dec;58(3):362-8.より引用


(3)自己血・・・気胸で使用されている
 癌性胸膜炎に対する自己血による胸膜癒着術の有効性も報告されていますが(テトラサイクリンとの比較)、日本では主に気胸に対して自己血を用います。
Keeratichananont W, et al.Efficacy and safety profile of autologous blood versus tetracycline pleurodesis for malignant pleural effusion. Ther Adv Respir Dis. 2015 Apr;9(2):42-8.

 特にエアリークがとまりにくい遷延性の気胸に対して有効です。自己血による胸膜癒着術の原理は非常に簡単で、傷口がふさがらない肺に“かさぶた”をつくって治療するというものです。自己血のよいところは、注入しても副作用がほとんどないことです。自身の血液を採取して、それを胸腔内に注入するため、最も安全です。間質性肺炎においても安全です。
Aihara K, et al. Efficacy of Blood-Patch Pleurodesis for Secondary Spontaneous Pneumothorax in Interstitial Lung Disease. Intern Med 50: 1157-1162, 2011.

 自然気胸に対して自己血を注入した32人の検討では、半数は12時間以内に効果がみられました。また、72時間以内に27人(84%)が72時間以内に効果がみられました。
Cagirici U, et al. Autologous blood patch pleurodesis in spontaneous pneumothorax with persistent air leak.Scand Cardiovasc J 1998;32(2):75-8.

 その他にも、14人の自然気胸の検討で、50mlの自己血を注入した報告では奏効率は92%で、53%は12時間以内に、23%が24時間以内、15%は48時間以内、15%が72時間以内にエアリークがなくなったとされています。
Blanco Blanco I, et al. Pleurodesis with the patient's own blood: the initial results in 14 cases. Arch Bronconeumol 1996 May;32(5):230-6.

 自己血の注入量は50mlとする報告が多いです。25人の遷延性気胸における血液量を比べた報告がありますが、0ml、50ml、100mlで、エアリークが止まるまでの日数が6.3±3.7日、2.3±0.6日、1.5±0.6日でした。有意に100mlのほうがエアリークが止まるまでの日数が短かったとされています。そのため、100ml程度の注入が望ましい。
Andreetti C, et al. Pleurodesis with an autologous blood patch to prevent persistent air leaks after lobectomy. J Thorac Cardiovasc Surg 2007 Mar;133(3):759-62.


(4)ブレオマイシン・・・癌性胸膜炎に使用されている
 言わずと知れた抗癌剤です。1mg/kg、多いときで50~60mg/kgを注入します。日本では抗癌剤による胸膜癒着術としてはシスプラチンがよく使われていますが、骨髄抑制や腎障害などの副作用が50~80%見られ、他の抗癌剤に比べて強い傾向にあります。ピシバニール®(OK432)の項にも記載しますが、統計学的には4週間の胸水無増悪生存率は、ピシバニール®(OK432)やシスプラチン+エトポシドと同等の成績です。
Yoshida K, et al. Randomized phase II trial of three intrapleural therapy regimens for the management of malignant pleural effusion in previously untreated non-small cell lung cancer: JCOG 9515. Lung Cancer. 2007 Dec;58(3):362-8.


(5)テトラサイクリン系抗菌薬・・・癌性胸膜炎、気胸に使用されている
 海外の文献ではタルクに劣る報告がいくつかあるため、アメリカではあまり使用されません。
・Tan C, et al. The evidence on the effectiveness of management for malignant pleural effusion: a systematic review. Eur J Cardiothorac Surg. 2006;29(5):829.
・Heffner JE et al ;Clinical efficacy of doxycycline for pleurodesis. Chest 1994 Jun;105(6):1743-7.


 日本ではまだ胸膜癒着剤の主役になっている施設もあります。ドキシサイクリン500mg,、ミノサイクリン300mg程度の量を50mlの生食に溶解して注入する方法が主流です。とても胸膜痛が強くでる薬剤ですので、キシロカインの注入を事前におこなっておくなど工夫が必要です。癌性胸膜炎に対する成功率はおよそ80%とされています。
・Bielsa S, et al. Tumor type influences the effectiveness of pleurodesis in malignant effusions. Lung 2011; 189:151.
・Porcel JM, et al. Rapid pleurodesis with doxycycline through a small-bore catheter for the treatment of metastatic malignant effusions. Support Care Cancer 2006; 14:475.


 自然気胸に対して胸腔ドレナージ単独よりもミノサイクリンによる胸膜癒着術を併用したほうが再発抑制効果が高かったという報告もあります(1年後の再発率:ミノサイクリン群29.2%、胸腔ドレナージ単独群49.1%、p=0.003)。
Chen JS, et al. Simple aspiration and drainage and intrapleural minocycline pleurodesis versus simple aspiration and drainage for the initial treatment of primary spontaneous pneumothorax: an open-label, parallel-group, prospective, randomised, controlled trial. Lancet. 2013 Apr 13;381(9874):1277-82.


(6)フィブリン糊・・・癌性胸膜炎、気胸で使用されている
 A液=フィブリノゲンをアプロチニンで溶解、B液=トロンビンを塩化カルシウムで溶解、この2種類を直前に混和して注入します。フィブリン生成過程を利用して組織の接着・閉鎖を行います。アプロチニンは牛肺を原料とするのでアレルギーに注意しなければなりません。最近はあまり臨床では目にしませんが、自己血パッチで成功しなかった気胸に効果があったという報告もあります。
Iyama S, et al. Successful treatment by fibrin glue sealant for pneumothorax with chronic GVHD resistant to autologous blood patch pleurodesis. Intern Med. 2012;51(15):2011-4.


(7)その他
 その他、ポビドンヨードによる癌性胸膜炎や気胸の再発予防の報告もあります。タルクに遜色ないという結果も報告されており、今後期待されます。
・Agarwal R, et al. Indian J Med Res. 2012 Mar;135:297-304.
・Ibrahim IM, et al. J Cardiothorac Surg. 2015 May 1;10:64.


 また、50%ブドウ糖を注入することで気胸の効果的であったという報告もあります(200mL注入)。薬効成分が入っていないので、副作用は少ないですが、注入後の胸膜痛が多いように感じます。
・Tsukioka T, et a. Pleurodesis with a 50% Glucose Solution in Patients with Spontaneous Pneumothorax in Whom an Operation is Contraindicated. Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2013;19(5):358-63.
・Tsukioka T, et al. Intraoperative mechanical and chemical pleurodesis with 50 % glucose solution for secondary spontaneous pneumothorax in patients with pulmonary emphysema. Surg Today. 2013 Aug;43(8):889-93.


 50%ブドウ糖は癌性胸膜炎に対しても有効です。ただし、胸水中の糖が高いと胸膜癒着術が失敗することが多いようです。一般的には胸水糖が低すぎる胸水例では成功率が低いと言われていますが、50%ブドウ糖の場合は高すぎることが失敗のリスクを高めます。
Pantazopoulos I, et al. Pleural fluid glucose: A predictor of unsuccessful pleurodesis in a preselected cohort of patients with malignant pleural effusion. J BUON. 2014 Oct-Dec;19(4):1018-23.



●実際の手順
 実際の手順についてです。使用する胸腔ドレーンですが、必ずしも20Fr以上の太い胸腔ドレーンを使用する必要はありません。疼痛の観点からも細径のドレーン(10~14Fr程度)でよいとされています。ただ、私は20Fr以上の胸腔ドレーンを使うことがほとんどです。
・Roberts ME, et al. Management of a malignant pleural effusion: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010. Thorax. 2010 Aug;65 Suppl 2:ii32-40.
・Light RW. Pleural controversy: optimal chest tube size for drainage. Respirology. 2011 Feb;16(2):244-8.



・癌性胸膜炎に対する胸膜癒着術(ユニタルク®、ピシバニール®など)
 肺の拡張が完全に得られていることが前提です。排液量が150mL/日くらいを下回れば、問題なく癒着術ができます。

1.全身ステロイドは事前にできるだけ減らしておくことが推奨されています。
Kennedy L et al. Pleurodesis using talc slurry. Chest 1994 Aug;106(2):342-6.

2.薬剤を胸腔に注入する前に1%キシロカインを20ml程胸腔内注入したり、解熱鎮痛薬を事前に内服してもらったりしてから治療を行います。胸膜痛を軽減することができるとされていますが、効果は定かではありません。

3.薬剤を入れて、胸腔ドレーンをクランプします。
 ・ピシバニール®5~10KE+生理食塩水50~100mL
 ・ユニタルク®4g+生理食塩水50mL (さらに生理食塩水50mL追加)
 ・ミノマイシン®200~300mg+生理食塩水50~100mL

4.クランプ中、肺尖部分を中心に癒着剤が胸腔に広がるように体位変換することが重要とされています。
 例)仰臥位10~20分・右側臥位10~20分・左側臥位10~20分・腹臥位10~20分・坐位10~20分
 ※ただし、体位変換そのものや変換時間のエビデンスは現時点ではほとんどありません。むしろ、体位変換自体あまり意味がないのではないかともされています。
・Tan C, et al. The evidence on the effectiveness of management for malignant pleural effusion: a systematic review. Eur J Cardiothorac Surg. 2006;29(5):829.
・Dryzer SR, et al. A comparison of rotation and nonrotation in tetracycline pleurodesis. Chest. 1993 Dec;104(6):1763-6.

 ※胸腔ドレーン側は下にすると痛いので、その手順だけスキップします。

5.臓側胸膜と壁側胸膜を癒着する必要があるので、クランプ開放後は陰圧(たとえば-15~20cmH2Oなど)で持続吸引するのが望ましいという意見が多いです。
 ※陰圧やクランプ時間のエビデンスは現時点ではほとんどありません。クランプ開放は2時間後というエキスパートオピニオンもあれば、5~6時間は必要という意見もあります。

6.1日150ml以下の胸水排液で胸腔ドレーンを抜去しても問題ありません。それ以上の胸水排液が24時間以上続く場合は、再度胸膜癒着術を考慮します。3回目以降についてはエビデンスはありません。


・気胸に対する自己血による胸膜癒着術
1.患者さんから採血した自己血をそのまま胸腔ドレーンに注入し、クランプします。
Lang-Lazdunski L, Coonar AS. A prospective study of autologous 'blood patch' pleurodesis for persistent air leak after pulmonary resection. Eur J Cardiothorac Surg 2004 Nov;26(5):897-900.
 ※陰圧をかけずに60cmの高さにチューブを持ち上げて、血液の逆流を防ぐなど工夫をする(ドレーンバッグを台の上に乗せる)という手法もある。
 ※個人的には、ドレーンが閉塞しないように適宜ごく少量のエアを注入して適宜開通を確認することもあります。
Dumire R, et al. Autologous "blood patch" pleurodesis for persistent pulmonary air leak. Chest 1992 Jan;101(1):64-6.

2.リーク部分を中心に自己血が胸腔に広がるように体位変換することが重要と考えられます。
 ※前述のように体位変換時間のエビデンスは現時点ではほとんどありません。
 ※血液注入後は、ドレーン内血液の凝固に注意。気胸の悪化を招きます。

3.臓側胸膜と壁側胸膜を癒着する必要があるので、クランプ開放後は陰圧(たとえば-15~20cmH2Oなど)で持続吸引するのが望ましいという意見が多いです。
 ※陰圧やクランプ時間のエビデンスは現時点ではありません。クランプ開放は2時間後というエキスパートオピニオンもあれば、5~6時間は必要という意見もあります。

4.エアリークが消失している場合、おそらく胸腔ドレーンが閉塞した気胸の傷口がふさがっているかのどちらかです。バイタルサインに問題がなければ翌日の胸部レントゲン写真で肺が全拡張しているかどうか確認します。
 肺が虚脱してエアリークがない場合は、血液によるドレーン閉塞が考えられます。翌日にこれを発見するのは嫌なので、個人的には陰圧をかけている間にドレーンが開通しているかどうか少量のエアを注入して確認します。適切な操作をおこなえば、ドレーン側管だけでなく本管からもエア注入が可能です(ただし推奨される医療行為ではない)。
 肺が全拡張してエアリークが消失していれば胸腔ドレーンは抜去可能と思われます。エアリークが続く場合は、再度胸膜癒着術を考慮してもよいです。3回目以降についてはエビデンスはありません。


●副作用
 胸膜癒着術の副作用としてよくみられるのは、発熱、疼痛、消化器症状です。特に発熱と疼痛は自己血以外ではほぼ必発です。重篤な副作用として呼吸不全、全身性炎症反応症候群、膿胸などがあります。
Shaw P et al;Pleurodesis for malignant pleural effusions. Cochrane Database Syst Rev 2004;(1):CD002916.

 副作用ではありませんが、自己血の場合は胸腔ドレーン閉塞と気胸治癒の判断が難しいことがあるため、翌日の胸部レントゲン撮影は必須です。



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by otowelt | 2015-06-27 08:15 | レクチャー

コントロール不良喘息のICSに加えるなら、LAMAか?LABAか?

e0156318_11175889.jpg 個人的にはACOSに対してはICS/LAMAの選択肢でいいのでは、と思います。

Kayleigh M Kew, et al
Long-acting muscarinic antagonists (LAMA) added to inhaled corticosteroids (ICS) versus addition of long-acting beta2-agonists (LABA) for adults with asthma
Cochrane Airways Group DOI: 10.1002/14651858.CD011438.pub2


背景:
 LABAはICSと組み合わせれて成人喘息に使用されているが、喘息に対する安全性の懸念が残る。LAMAはCOPDの長期管理薬として使用されているが、コントロール不良の患者に対する代替選択肢として有望である。

目的:
 ICS単独でコントロールがつかない気管支喘息患者に対してICSにLAMAを加えることの効果を、ICSにLABAを加えた効果と比較する。

方法:
 並行群間およびクロスオーバーデザインのランダム化比較試験を抽出し、ICS単独で効果がない場合にLAMAあるいはLABAを少なくとも12週間追加検証した研究を選んだ。
 事前に規定したプライマリアウトカムは、経口ステロイドを要する喘息発作、QOL、重篤な有害事象とした。

結果:
 8試験が適格基準を満たした。二重盲検ダブルダミー試験は4試験であり、治療期間は14~24週であった。ICSにチオトロピウム(レスピマット)、サルメテロールが併用されていた。
 経口ステロイドを要する喘息発作については2つの併用群で差はみられなかったが、試験間でのデータ不一致もみられた(オッズ比1.05, 95%信頼区間0.50 to 2.18; 1753 participants; 3 studies)。LAMA使用者はわずかにQOLやACT (AQLQ:平均差-0.12, 95%信頼区間-0.18 to -0.05; 1745 participants; 1745; 4 studies; ACQ:平均差0.06, 95%信頼区間0.00 to 0.13; 1483 participants; 3 studies)に変化を与えた。LABAよりもLAMAを上乗せする方がいくばくか呼吸機能上の恩恵は受けられそうだった(1秒量平均差0.05 L, 95%信頼区間0.01 to 0.09; 1745 participants, 4 studies)。しかしながら、データのばらつきが多い評価項目があり、臨床的に信頼性のある差を導き出すことは難しかった。

結論:
 ICSに加える合剤としてLAMAとLABAを比較した場合、限られたデータではあるもののLAMAの方がLABAよりも呼吸機能の改善という点ではよかったかもしれない。QOLについてはわずかな差はあるように思われたが、ほとんど差はみられなかった。現時点でICS/LABAよりもICS/LAMAを用いるべきと強くガイドラインに提唱するデータはそろっていない。


by otowelt | 2015-06-26 00:52 | 気管支喘息・COPD

COPDに対するワクチン

e0156318_23175684.jpg・インフルエンザワクチン
 COPDの患者さんに限らず、多くの日本人がインフルエンザワクチンを毎年摂取している最近。そりゃあインフルエンザにかからない方が安全だというのは分かりますが、インフルエンザワクチンを接種することでとういった効果が得られるでしょうか。

 最も重要なのは、やはり気道症状の軽減がはかれる点です1)。COPDの患者さんがインフルエンザに罹患すると、聴診すればヒューヒュー、ごはんは食べていない、ぐったりしてタイヘン!ということはよくあるのです。ワクチンそのものの有害事象で悪化しないの?と聞かれることがありますが、享受する利益の方が圧倒的に大きいのでCOPDの患者さんは全例インフルエンザワクチンを接種してよいと考えられます2)

 ちなみにメタアナリシスではインフルエンザワクチンを接種すると、COPD急性増悪の回数が有意に減ることがわかっています(加重平均差-0.37、95%信頼区間-0.64~-0.11、p=0.006)3)。ただこのメタアナリシス、組み込まれた研究の数が少ない。

 COPDに限らず、65歳以上の高齢者における研究ではインフルエンザワクチン接種によって肺炎またはインフルエンザによる入院のリスクが27%減少し(補正オッズ比 0.73、95%信頼区間0.68~0.77)、死亡リスクは48%減少しました(補正オッズ比 0.52、95%信頼区間0.50~0.55)と報告されています4)。日本のCOPDは高齢者が多いので、ワクチン接種による利益がある群としては一致した集団でしょうか。


・肺炎球菌ワクチン
 COPDの患者さんに限らず、成人に使用できる肺炎球菌ワクチンはニューモバックスNP®(23価肺炎球菌多糖体ワクチン:PPSV23)の一択だったのですが、現在はこれに加えてプレベナー13 ®(13価肺炎球菌結合型ワクチン:PCV13)が使用できます。これが非常にヤヤコシイ。

 日本は言わずと知れた先進国ですが、PPSV23の接種率はアメリカの3分の1くらいとものすごく低かったのです。在宅呼吸ケア白書というアンケート調査では、在宅酸素療法を要する慢性呼吸不全の患者さんに対してすら6割程度の接種率でした5)。「これはイカン、先進国の水準どころではないぞ」ということでワクチンの接種率向上を目指し 2014年10月より定期接種化された経緯があります。PCV13が成人の肺炎球菌ワクチンの世界に乗り込んできたのと時期を同じくしているため、何が助成で何が助成でないのかよくわからない医師も少なくありません。繰り返しますが、執筆時点では助成がおりるのはPPSV23のみです。PCV13は助成がおりません。この点は覚えておく必要があります。

 さて、ニューモバックスNP®の方から説明します。PPSV23は侵襲性肺炎球菌感染症を減らす可能性はありますが、COPD急性増悪や肺炎そのものを予防できるだけの威力があるかどうかは報告によってまちまちです6), 7)。「重篤な感染症を予防できるけど、肺炎そのものを予防できるワケではないんだよ」と指導医に教えてもらった人も多いでしょう。ただ、施設入所中の高齢者、といったベースラインの全身状態があまりよくない患者さんでは有効かもしれません8)。COPDの患者さんも高齢者が多いですから、一定の効果はあると私は思っています。

 一方、プレベナー13®はどうでしょうか。PCV13については小児ではまとまった報告はあるものの、特に高齢者ではエビデンスが少なかった。そこで、高齢者に対する臨床試験として2015年に発表されたCAPiTA試験に注目が集まりました9)。この試験によれば、高齢者に対するプレベナーはワクチン血清型の侵襲性肺炎球菌感染症、菌血症を伴わない細菌性肺炎をそれぞれ75%、45%予防可能という結果でした。しかし、市中肺炎全体の予防効果はみられませんでした。ワクチン血清型に限ったものとはいえ肺炎を予防できる可能性が示唆されました。

 以上をふまえ、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の予防接種諮問委員会(ACIP)は2014年に以下の内容を推奨しています10)

•肺炎球菌ワクチンの接種歴が無い、または接種歴が不明の65歳以上の成人は、PCV13をまず先に接種し、次いでPPSV23を接種。
•PCV13の接種歴が無く、かつPPSV23を1回以上接種したことがある65歳以上の成人は、PCV13を接種。
•65歳以上の成人に対するPCV13の推奨※については、2018年に再評価を行い必要に応じて内容を改定する。(※ACIPおよびCDC 所長が今回の推奨改定を承認した場合)


 では高齢者がその大部分を占めるCOPD患者さんのワクチン接種はどうすればいいのでしょう。片方接種?両方接種?

 アメリカの場合、典型的な高齢COPD患者さんは推奨に準じてPCV13+PPSV23を接種することになります。一方、イギリスやカナダなどの他の先進国では免疫不全のある患者さんに対してPCV13が推奨されていますが、一般的な高齢COPD患者さんに対してはPPSV23単独となります。日本はどうかといいますと、日本呼吸器学会と日本感染症学会が合同で「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(平成27~30年度の接種)」を発表しており、アメリカに準じてPCV13+PPSV23の両方接種を推奨しています。ただし、PCV13は助成がおりませんのでご注意を。

 なお、PCV13+PPSV23を接種する場合、ACIPはPCV13を先に接種した後にPPSV23を接種することを推奨しています。また、65歳未満であれば両者を8週間以上空け、65歳以上では1年以上空けます。過去にPPSV23を接種している患者さんに対しては、1年以上空けてPCV13を接種することを推奨しています。

 PPSV23に対する日本の助成は5歳ごとに定められており、しかも5の倍数の年齢のときだけという分かりにくい仕組みになっていますので、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(平成27~30年度の接種)」から図を引用しますので参考にしてください。
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(引用URL[日本感染症学会内]:http://www.kansensho.or.jp/guidelines/1501_teigen.html)

 なお、当院のある大阪府堺市は、
・予防接種法に基づく定期接種
・市独自の助成による任意接種 (満65歳以上で定期接種の対象者に該当しない方)
の2種類の助成があります。

(参考文献)
1) Wongsurakiat P, et al. Acute respiratory illness in patients with COPD and the effectiveness of influenza vaccination: a randomized controlled study. Chest. 2004 Jun;125(6):2011-20.
2) Tata LJ, et al. Does influenza vaccination increase consultations, corticosteroid prescriptions, or exacerbations in subjects with asthma or chronic obstructive pulmonary disease? Thorax. 2003 Oct;58(10):835-9.
3) Poole PJ, et al. Influenza vaccine for patients with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2006 Jan 25;(1):CD002733.
4) Nichol KL, et al. Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly. N Engl J Med. 2007 Oct 4;357(14):1373-81.
5)在宅呼吸ケア白書2010. 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 在宅呼吸ケア白書 COPD疾患別解析ワーキンググループ.
6) Walters JA, et al. Injectable vaccines for preventing pneumococcal infection in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Nov 10;(11):CD001390.
7) Huss A, et al. Efficacy of pneumococcal vaccination in adults: a meta-analysis. CMAJ. 2009 Jan 6;180(1):48-58.
8) Maruyama T, et al. Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial. BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004.
9) Bonten MJ, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25.
10) Tomczyk S, et al. Use of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine and 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine among adults aged ≥65 years: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014 Sep 19;63(37):822-5.

by otowelt | 2015-06-25 00:16 | レクチャー

血清および喀痰中のインターロイキンとCOPD急性増悪

e0156318_15554277.jpg CHESTからの報告です。

Juan-juan Fu, et al.
Airway IL-1β and systemic inflammation as predictors of future exacerbation risk in asthma and COPD
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.14-2337


概要:
 プロスペクティブコホート研究において、ベースラインのインターロイキン(IL)1β、血清CRP、血清IL-6が152人の患者(気管支喘息63人、COPD89人)で測定し、気道炎症、全身性炎症と将来的な増悪との関連について調べたもの。血清IL-6および喀痰中IL-1β遺伝子発現・タンパクレベルはCOPD急性増悪を繰り返す事例において高かった(P<0.001)。気管支喘息については有意な差は観察されなかった。
 これらの炎症性経路に対する治療介入によって将来COPD急性増悪を減少させることができるかもしれない。
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(文献より引用)


by otowelt | 2015-06-24 00:03 | 気管支喘息・COPD

ACOSはCOPDと比較して入院リスクを上昇させる

e0156318_1563737.jpg ACOSは「増えている(increasing)」というより、私たちが近年作り出した疾患概念だと思っています。

Kim MA, et al.
Asthma and COPD overlap syndrome is associated with increased risk of hospitalisation.
Int J Tuberc Lung Dis. 2015 Jul;19(7):864-9.


背景:
 COPDは予後不良の疾患であり、ヘルスケアの大きな障壁である。ACOSは近年増加しており、経済的にも健康予後にも悪影響を与える。

目的:
 アジア人のACOSの臨床的特徴を調べ、COPD単独と比較して呼吸器系の問題による入院や死亡にどういった影響を与えるか調べる。

方法:
 このレトロスペクティブコホート研究において、2933人のCOPD患者を登録した(牙山医療センター:2000年1月1日から2009年12月31日)。Kaplan-MeierおよびCox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、喫煙歴、BMI、気流制限の重症度、気道可逆性、呼吸器系の問題によって入院を要したACOSあるいはそれによる死亡を含む臨床パラメータについて解析をおこなった。

結果:
 ACOSは、COPD単独と比較して非入院期間および生存期間が短かった。また、ACOSは年齢、喫煙歴、BMI、%1秒量、1秒量変化で補正をおこなった場合、入院のリスクを有意に上昇させた(P < 0.001)。

結論:
 ACOSはCOPD単独と比較して、呼吸器系の問題による入院のリスクを上昇させた。


by otowelt | 2015-06-23 00:39 | 気管支喘息・COPD

出版のお知らせ:ねころんで読める呼吸のすべて および お詫びと訂正

 「ねころんで読める呼吸のすべて ナース・研修医のためのやさしい呼吸器診療とケア」という本をメディカ出版から出版します。告知から1ヶ月が経過してしまったので、発売に合わせて2回目のお知らせです。今回はお詫びと訂正も兼ねさせて下さい。
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発売日 : 2015年6月22日
価格 : 2,000 円 (税別)
出版社 : メディカ出版
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)

e0156318_13141310.jpgAmazonから購入する 

e0156318_13141310.jpgメディカ出版から購入する

・お詫びと訂正
 本書では第1版の刊行にあたり、下記内容の誤りがございました。読者の皆様に謹んでお詫び申し上げますとともに、ここに訂正いたします。


第4 章-5「最も出合いたくない呼吸器疾患」
<訂正箇所>
図13 に関する説明に誤りがございました。
① p.121 下から4 行目
誤)最後に、間質性肺炎の急性増悪の胸部CT 画像をお示しします(図13 上)。
正)最後に、急性間質性肺炎の胸部CT 画像をお示しします(図13 上)。

② p.121 下から2 行目
誤)見ての通り、間質性肺炎の急性増悪の患者さんは、
正)見ての通り、急性間質性肺炎の患者さんは、

③ p.122 図13 タイトル
誤)急性間質性肺炎の急性増悪
正)急性間質性肺炎

 実はこの「間質性肺炎の急性増悪」と「急性間質性肺炎」は天と地ほどの差がある用語です。今回の訂正は、校正にあたり出版社との綿密な疎通がはかれなかった自分の責任ですが、せっかくなのでこれを機に知っていただきたいと思います。
 普段から呼吸器内科の外来をしていると、ほとんどの間質性肺炎はイコール慢性間質性肺疾患です。つまり、慢性で徐々に進行する間質性の病気です(特発性肺線維症、慢性過敏性肺炎、じん肺などなど・・・)。中には亜急性~急性の型をとる間質性肺炎もありますが、一般的にこれらが間質性肺炎として認識されることはそうそうありません。私たちが普段の外来で気を付けているのは、「もともとの間質性肺炎が悪くならないこと」です。この「もともとの間質性肺炎」が何かの原因で急激に悪くなった時、私たちは「間質性肺炎の急性増悪」呼びます。「急性増悪」という言葉は、間質性肺炎に限らず、COPDのような慢性疾患でも使います。とにかく、もともとベースにある安定した病気が急に悪さをすることを私たちは「急性増悪」と呼んでいるのです。普段からイヤイヤ期にある私の長男が、おもちゃ売り場でトミカのプラレールを買ってくれとイヤイヤすること。まさにこれは「イヤイヤ期の急性増悪」です。
 一方、「急性間質性肺炎」はこれそのものが病名です。急性に間質性肺炎を起こす病気全体を表す言葉ではなく、「急性間質性肺炎」という1つの病名なのです。すさまじいスピードで肺の中にびまん性肺胞傷害という病態が起こり、あっという間に呼吸不全に陥る病気です。原因がよくわかっていないため、特発性間質性肺炎の1つとして扱われています。もし未知のウイルスが原因による間質性肺炎だと将来わかれば、○○ウイルス性間質性肺炎といった病名に変わるかもしれません。急性間質性肺炎は一刻を争う状態なので、これを基礎疾患に持つような患者さんは外来にはいません。そのため、「急性間質性肺炎の急性増悪」という言葉は、少なくとも日本の呼吸器診療では使わない用語です。
 初版での訂正につきましては、読者の皆様方に重ねてお詫び申し上げます。

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by otowelt | 2015-06-22 00:30 | 呼吸器その他

実臨床ではCOPDに対するトリプル吸入療法は結構頻繁に行われている!?

e0156318_10134879.jpg 意外な結果でした。 

Miyazaki M, et al.
The reasons for triple therapy in stable COPD patients in Japanese clinical practice
International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease, June 2015 Volume 2015:10(1) Pages 1053—1059


背景:
 トリプル吸入療法(ICS/LABA/LAMA)はCOPDの維持療法として近年治療選択肢の1つとなっている。いくつかの臨床試験においてこれら併用療法のメリットが報告されている。しかしながら、トリプル吸入療法へのステップアップは個々の症例によって違いがある。

方法:
 慶應義塾大学およびその関連病院において実施されたこのCOPDの観察研究において、COPDを有すると呼吸器内科医によって診断・あるいはCOPDの疑いがあるとされた患者を登録した。診療録や患者への質問を通して処方歴、臨床経過がレトロスペクティブに調べられた。

結果:
 445人のCOPD患者のうち95人(21%)がICS/LABA/LAMAのトリプル吸入療法を受けていた。12人がGOLD GradeI、31人がGrade II、38人がGrade III、14人がGrade IVだった。トリプル吸入療法を受けている患者の半分以上は、症状の改善が満足できなかったという理由で開始になっており、32%は喘息合併があるということで開始になっていた。

結論:
 患者の気流閉塞が重症であろうとなかろうと、トリプル吸入療法はCOPDのリアルライフマネジメントでは頻繁に行われている治療法である。症状をよりよくするために開始されている例が多いようである。


by otowelt | 2015-06-19 00:01 | 気管支喘息・COPD

Thoracic Ventを用いた気胸の外来治療は医療費を抑制

 日本では、Thoracic Ventはシーマン株式会社が取り扱っています。気胸治療においては革命児とも言える存在です。シーマン株式会社のウェブサイトには動画つきで紹介されていますので、是非ご覧ください。

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(Thoracic vent:シーマン株式会社より許諾を得て使用[http://www.sheen-man.co.jp/product/products_nonvas/kikyou.html])

Tsuchiya T, et al.
Outpatient Treatment of Pneumothorax with a Thoracic Vent: Economic Benefit
Respiration Online First (DOI:10.1159/000381958)


背景・目的:
 高い医療費は医療経済的にゆゆしき問題であるため、コスト対効果がよい治療法が重要である。われわれの病院において、気胸の外来治療をThoracic Ventによって2012年12月から開始した。Thoracic Ventを用いた外来気胸治療は医療費を節約できると考えた。

方法:
 患者は気胸治療に際して、4群に分けられた。
 ①Thoracic Vent+外科手術
 ②Thoracic Ventのみ
 ③通常の胸腔ドレナージ+外科手術
 ④通常の胸腔ドレナージのみ
 われわれは、平均医療費、入院期間、外来受診の頻度を4群で比較した。

結果:
 2年間の研究において、65人の気胸患者のうち36人がThoracic Ventで、29人が通常の胸腔ドレナージで治療された。
 手術を要した患者のうち、Thoracic Ventによる治療を受けた患者は通常の胸腔ドレナージで治療された患者と比べて平均入院期間が短く(5.0±1.3日 vs. 10.3±3.4日; p < 0.0001)、全体的な医療費が少なかった(971,830±81,291.8円 vs 1,179,791.1 ± 198,383.1円、p < 0.0001)。
 手術を要さなかった患者のうち、Thoracic Ventによる治療を受けた患者は通常の胸腔ドレナージで治療された患者と比べて全体的な医療費が少なかった(79,960± 25,643.6円 vs 268,588.8± 94,636.5円、p < 0.0001)。
 重篤な合併症は報告されなかった。

結論:
 外来でのThoracic Ventを用いた気胸治療は有意に医療費を抑制する。この経済的な意義は大きい。


by otowelt | 2015-06-18 00:31 | 呼吸器その他